(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147057
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】カードリーダ及びローラ状態判定方法
(51)【国際特許分類】
B65H 7/02 20060101AFI20241008BHJP
G06K 13/05 20060101ALI20241008BHJP
G06K 7/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B65H7/02
G06K13/05
G06K7/00 095
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059828
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(74)【代理人】
【識別番号】100194283
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 大勇
(72)【発明者】
【氏名】黒岩 幸生
【テーマコード(参考)】
3F048
5B023
【Fターム(参考)】
3F048AA08
3F048AB05
3F048BB02
3F048BB10
3F048CC13
3F048DA06
3F048DC02
3F048DC05
3F048DC06
3F048EB24
3F048EB29
5B023BA01
5B023DA00
(57)【要約】
【課題】搬送ローラ14の劣化の状態を確実に判定可能なカードリーダを提供する。
【解決手段】
カードリーダ1において、搬送ローラ14は、搬送路内でカードを搬送する。搬送部12のモータは、搬送ローラ14を駆動する。情報取得部100は、搬送部12のモータにより搬送ローラ14が駆動された際に、カードの搬送速度情報200を取得する。変動算出部110は、情報取得部100で取得された搬送速度情報200から、カードの搬送速度が一定となるように搬送されている間の変動値を算出する。状態判定部120は、変動算出部110により算出された変動値に基づいて搬送ローラ14の状態を判定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入されたカードが搬送される搬送路と、
前記搬送路内で前記カードを搬送する搬送ローラと、
前記搬送ローラを駆動する駆動部と、
前記駆動部により前記搬送ローラが駆動された際に、前記カードの搬送速度情報を取得する情報取得部と、
前記情報取得部で取得された前記搬送速度情報から、前記カードの搬送速度が一定となるように搬送されている間の変動値を算出する変動算出部と、
前記変動算出部により算出された変動値に基づいて前記搬送ローラの状態を判定する状態判定部とを備える
ことを特徴とするカードリーダ。
【請求項2】
前記情報取得部は、エンコーダローラで測定された前記カードの搬送速度情報を取得する
ことを特徴とする請求項1に記載のカードリーダ。
【請求項3】
前記変動値は、前記搬送ローラの搬送速度に対応する周期的な変動に基づく値である
ことを特徴とする請求項1に記載のカードリーダ。
【請求項4】
前記状態判定部は、前記変動値が特定の閾値以上の値であった場合に、前記搬送ローラが破損した状態と判定する
ことを特徴とする請求項1に記載のカードリーダ。
【請求項5】
前記情報取得部は、前記カードの磁気データのビットインターバルから前記カードの搬送速度情報を取得する
ことを特徴とする請求項1、3、及び4のいずれか1項に記載のカードリーダ。
【請求項6】
挿入されたカードが搬送される搬送路と、
前記搬送路内で前記カードを搬送する搬送ローラと、
前記搬送ローラを駆動する駆動部とを備えるカードリーダの前記搬送ローラの状態を判定するローラ状態判定方法であって、
前記駆動部により前記搬送ローラが駆動された際に、前記カードの搬送速度情報を取得し、
取得された前記搬送速度情報から、前記カードの搬送速度が一定となるように搬送されている間の変動値を算出し、
算出された変動値に基づいて前記搬送ローラの状態を判定する
ことを特徴とするローラ状態判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に搬送路内に搬送ローラを備えたカードリーダ、及び搬送ローラのローラ状態判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、媒体の搬送を行うローラの劣化を検出する技術が存在する。
たとえば、特許文献1には、記録用紙を搬送する画像形成装置において、エンジン制御部は、第1の記録材が分離ニップ部に給送された状態で、分離ローラが所定の方向へ回転させられている所定の期間におけるエンコーダからの信号によって表される分離ローラの回転速度のばらつきに基づいて、分離ローラの寿命を判断する技術が記載されている。
これらの画像形成装置のローラは、成形されて品質の揃った記録用紙を搬送するだけなので、単に摩耗等により寿命となることが多い。
【0003】
一方、キャッシュカード、クレジットカード等のカードが挿入され、このカードの情報を取り込んで磁気情報、ICデータ情報等の読み込みを行うカードリーダが存在する。
これらのカードリーダのカードを搬送する搬送ローラでは、摩耗に加え、カードに付着した皮脂や汚れに含まれる化学物質の影響等で、徐々にローラのゴム等が変質して破損することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された技術は、品質の揃った記録用紙の搬送によるローラの摩耗を検出する技術であった。
このため、特許文献1の技術は、そもそもカード自体に傷があったり異物が付着したりして搬送速度がバラつくことがある、カードリーダの搬送ローラには適用できなかった。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、搬送ローラの劣化の状態を確実に判定可能なカードリーダを提供し、上述の課題を解消することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態に係るカードリーダは、挿入されたカードが搬送される搬送路と、前記搬送路内で前記カードを搬送する搬送ローラと、前記搬送ローラを駆動する駆動部と、前記駆動部により前記搬送ローラが駆動された際に、前記カードの搬送速度情報を取得する情報取得部と、前記取得部で取得された前記搬送速度情報から、前記カードの搬送速度が一定となるように搬送されている間の変動値を算出する変動算出部と、前記変動算出部により算出された変動値に基づいて前記搬送ローラの状態を判定する状態判定部とを備えることを特徴とする。
このように構成することで、搬送ローラの劣化の状態を確実に判定できる。
【0008】
本発明の一形態に係るカードリーダは、前記情報取得部は、エンコーダローラで測定された前記カードの搬送速度情報を取得することを特徴とする。
このように構成することで、より精度高く、搬送ローラの搬送速度の変化を検出することができる。
【0009】
本発明の一形態に係るカードリーダは、前記変動値は、前記搬送ローラの搬送速度に対応する周期的な変動に基づく値であることを特徴とする。
このように構成することで、カードの異物等ではない搬送ローラのゴム自体の劣化を、カードの搬送速度の周期的な変動にて判定することができる。
【0010】
本発明の一形態に係るカードリーダは、前記状態判定部は、前記変動値が特定の閾値以上の値であった場合に、前記搬送ローラが破損した状態と判定することを特徴とする。
このように構成することで、カードの搬送速度の局所的な変動を検出して、誤検知する可能性を減じることができる。
【0011】
本発明の一形態に係るカードリーダは、前記情報取得部は、前記カードの磁気データのビットインターバルから前記カードの搬送速度情報を取得することを特徴とする。
このように構成することで、搬送速度の変動をビットインターバルの変動から検出することができる。
【0012】
本発明の一形態に係るローラ状態判定方法は、挿入されたカードが搬送される搬送路と、前記搬送路内で前記カードを搬送する搬送ローラと、前記搬送ローラを駆動する駆動部とを備えるカードリーダの前記搬送ローラの状態を判定するローラ状態判定方法であって、前記駆動部により前記搬送ローラが駆動された際に、前記カードの搬送速度情報を取得し、取得された前記搬送速度情報から、前記カードの搬送速度が一定となるように搬送されている間の変動値を算出し、算出された変動値に基づいて前記搬送ローラの状態を判定することを特徴とする。
このように構成することで、搬送ローラの劣化の状態を確実に判定できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の形態によれば、駆動部により搬送ローラが駆動された際に、カードの搬送速度情報を取得し、この搬送速度情報からカードの搬送速度が一定となるように搬送されている間の変動値を算出し、この変動値に基づいて搬送ローラの状態を判定することで、搬送ローラの劣化の状態を確実に判定可能なカードリーダを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態に係るカードリーダの制御構成図である。
【
図2】
図1に示すカードリーダの略側断面図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係るローラ状態判定処理のフローチャートである。
【
図4】
図3に示す搬送ローラ状態判定処理で判定する搬送ローラの状態の概念図である。
【
図5】
図3に示す搬送ローラ状態判定処理で測定された搬送速度情報の概念図である。
【
図6】本発明の他の実施の形態に係る磁気データの記録の例である。
【
図7】本発明の他の実施の形態に係る磁気データのビットインターバルから取得された搬送速度情報の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施の形態>
〔カードリーダ1の構成〕
図1~
図2を参照して、本発明の実施の形態に係るカードリーダ1の構成について説明する。
まず、
図1により、カードリーダ1のシステム構成について説明する。
カードリーダ1は、例えば、新規のカード2を発行するための装置である。カードリーダ1は、例えば、ATM(Automated Teller Machine)、キオスク(Kiosk)の端末、交通機関のチケット発行システム、コンビニエンスストア等のポイントカードシステム、小売店のメンバーカードシステム、遊技機のカード支払システム、入退場管理システム等(以下、単に「ATM等」と省略して記載する。)である上位装置に搭載されて使用される。
【0016】
本実施形態のカードリーダ1に対応したカード2は、磁気ストライプを備えた磁気カード、及び/又は非接触型ICカード、接触型ICカード等である。カード2は、例えば、厚さが0.7~0.8mm程度の矩形状の塩化ビニール製である。カード2が磁気カードの場合、例えば、磁気データが記録される磁気ストライプが形成されている。また、カード2が非接触型ICカード及び/又は接触型ICカードの場合、例えば、ICチップが内蔵されている。ここで、カード2には、ICチップと磁気ストライプとが両方設けられていてもよい。これに加え、カード2が非接触型ICカードの場合、近距離無線用のR/W(Read / Write)アンテナが内蔵されていてもよい。
なお、カード2は、厚さが0.18~0.36mm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート)カードや、所定の厚さの紙カード等であってもよい。
【0017】
次に、カードリーダ1の制御構成について説明する。
カードリーダ1は、主に、制御部10、記憶部11、搬送部12、エンコーダローラ13、センサ15、及び磁気ヘッド16を含んで構成される。
【0018】
制御部10は、カードリーダ1全体の制御を行う。制御部10は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等を含む制御演算部である。
本実施形態においては、制御部10は、記憶部11に格納されたプログラムを実行して、カード2の搬送、読み込み、書き込みの制御、各部の診断(状態の判定)等を行う。
【0019】
記憶部11は、不揮発性のROM(Read Only Memory)及び揮発性のRAM(Random Access Memory)のような一時的でない記録媒体である。
【0020】
ROMは、カードリーダ1の各種動作に必要な作業データや制御プログラム等を格納する不揮発性メモリである。また、ROMは、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)やフラッシュメモリ(Flash Memory)等の書き換え可能な一時的でない記録媒体であってもよい。ROMは、制御部10により実行されるプログラム、及び各種データが格納されていてもよい。
【0021】
RAMは、制御部10がROMに格納されているプログラムを実行する際に、ワーキングエリア等として使用される。また、RAMは、DRAM(Dynamic RAM)のような、書換え可能な揮発性メモリであってもよい。
本実施形態においては、RAMは、各部から取得された一時的に格納されるデータ(以下、「一時データ」という。)、データ、制御部10が直前まで実行していた処理の履歴データ、上位装置との通信データ等が格納される。この一時データは、例えば、エンコーダローラ13で取得されたカード2の搬送時の速度データ、磁気ヘッド16で読み込まれた若しくは書き込まれる磁気信号に基づいた磁気データ、センサ15の各センサの検出状態等が含まれる。
なお、RAMは、バッテリバックアップSRAMのような不揮発性メモリを含んでいてもよい。
【0022】
搬送部12は、カードリーダ1の搬送路4(
図2)内でカード2を搬送する機構である。搬送部12は、搬送ローラ14を含んでいる。
搬送部12の詳細については後述する。
【0023】
エンコーダローラ13は、搬送路4内で、搬送されるカード2の速度を取得するローラである。エンコーダローラ13は、例えば、搬送ローラ14と同様のローラと、このローラの軸の回転位置や速度を検出可能なロータリーエンコーダ(以下、単に「エンコーダ」とも記載する。)が軸着されたような構成であってもよい。
【0024】
センサ15は、カードリーダ1内で搬送されるカード2の位置を検知する複数のセンサ15である。センサ15は、例えば、発光素子(フォトダイオード)と受光素子(フォトセンサ)とからなる光学式センサ、カード2と接触した際の押圧の圧力を検出する圧電センサ、カード2の静電容量を検知する静電容量センサ、物理的なスイッチ等を含んでいてもよい。このようなセンサ15の各センサを、搬送路4内で位置を変化させて複数個配置することによって、搬送路4内におけるカード2の位置を検出可能としてもよい。
【0025】
磁気ヘッド16は、カード2上に形成された磁気ストライプに接触、摺動させることで、記録された磁気データを読み取り、又は磁気ストライプに対して新たな磁気データを書き込む電磁素子である。このため、磁気ヘッド16には、出力されるアナログ状の出力信号を復調してデジタル状の復調信号を生成する復調用電子部品である復調ICが接続され、これを介して制御部10と接続されている。なお、磁気ヘッド16は、磁気信号の暗号化に対応した暗号化磁気ヘッドであってもよい。
【0026】
次に、カードリーダ1の機能的な構成について説明する。
制御部10は、記憶部11に格納されたプログラムを実行することで、情報取得部100、変動算出部110、及び状態判定部120として機能する。
また、これらに関連して、記憶部11は、搬送速度情報200を格納する。
【0027】
情報取得部100は、搬送部12により搬送ローラ14が駆動された際に、カード2の搬送速度情報200を取得する。
この際、本実施形態においては、情報取得部100は、エンコーダローラ13で測定されたカード2の搬送速度情報200を取得する。
【0028】
変動算出部110は、情報取得部100で取得された搬送速度情報200から、カード2の搬送速度が一定となるように搬送されている間の変動値を算出する。
【0029】
状態判定部120は、変動算出部110により算出された変動値に基づいて搬送ローラ14の状態を判定する。
この変動値は、搬送速度に関する各種パラメータである。変動値は、例えば、最大値、最小値、平均値、分散値、偏差、搬送ローラ14の搬送速度に対応する周期的な変動に基づく値等の統計指標であってもよい。
具体的には、状態判定部120は、変動値が特定の閾値以上の値であった場合に、搬送ローラ14が破損した状態と判定してもよい。この特定の閾値は、設置環境、ローラの材質、想定寿命等に合わせて、最適な値を設定することが可能である。
【0030】
搬送速度情報200は、カード2の搬送速度の情報である。本実施形態においては、搬送速度情報200は、エンコーダローラ13で測定されたエンコーダの位置情報から算出された所定時間内の変化の情報(速度情報)を含む時系列データであってもよい。この所定時間は、例えば、数ミリ秒~数秒程度であってもよい。
【0031】
なお、カードリーダ1は、この他にも、カードリーダ1にカード2が挿入されたことを検出するためだけに使用される磁気ヘッドであるプリヘッド、シャッタを開閉状態とするシャッタ部材等を駆動するシャッタ機構等が含まれていてもよい。さらに、カードリーダ1は、ICカードのIC情報を読み書きするIC接点ブロック、非接触型ICカードへの情報の読み取りや書き込みに対応したRF(Radio Frequency)アンテナや回路等を含んでいてもよい。さらに、カードリーダ1は、カード回収庫、カード回転ユニット、カード印刷用のプリンター等も含んでいてもよい。
【0032】
次に、
図2を参照して、本実施形態に係るカードリーダ1のカード2の搬送時の構成について説明する。
図2において、X方向はカードリーダ1の前後方向であり、Z方向はカードリーダ1の上下方向であり、Y方向は前後方向と上下方向とに直交するカードリーダ1の左右方向である。本実施形態において、前後方向のうちのX1方向(排出方向)側は、カードリーダ1の手前側であり、その反対側であるX2方向(引き込み、挿入方向)側は、カードリーダ1の奥側(後ろ側)である。
【0033】
カードリーダ1は、ATM等の前面側にカードリーダ1の前端側が配置されるように、上位装置に搭載される。加えて、以下、本実施形態においては、カード2が奥側に向かって、下記で説明する挿入排出口4aに挿入される側の端を先端、手前側の端を後端であるとして説明する。
【0034】
図2によれば、カードリーダ1は、カード2が挿入及び排出される挿入排出口4aが設けられ、カードリーダ1の内部に形成された搬送路4に対して、手前側から奥側に、それぞれ、センサ15、エンコーダローラ13、磁気ヘッド16、及び搬送ローラ14(ローラ対)が設けられている。磁気ヘッド16は、上側及び/又は下側から搬送路4に臨むように配置されている。
【0035】
ここで、本実施形態に係る搬送部12は、例えば、モータM、プーリP、ベルトB、及び搬送ローラ14により構成される。搬送部12は、内部に形成されている搬送路4を介して、カード2を搬送する。
【0036】
モータMは、ベルトBを介してプーリPに駆動力を伝えるステッピングモータ等の駆動源(駆動部)である。モータMは、時計回りの正方向、又は正方向と反対方向の逆方向にプーリPを回動させる。さらに、モータMにも、エンコーダが軸着されており、モータMの軸の回転位置や速度を検出可能である。このモータMの軸の回転速度は、制御部10により制御可能であり、これに応じてプーリPの回転速度も変化させられる。すなわち、プーリPの回転速度の変化により、カード2を駆動する各駆動ローラ(駆動機構)による搬送スピードも変化させられる。
【0037】
プーリPは、カードリーダ1の筐体に回転可能に支持される滑車又は歯車である。本実施形態においては、プーリPは、同軸で搬送ローラ14と連動するよう構成されている。
【0038】
ベルトBは、モータMとプーリPとの間で連結されたゴム又はエラストマー等の動力伝達用の駆動ベルトである。本実施形態において、ベルトBは、プーリPを回動させて、連動する搬送ローラ14を駆動させる。
【0039】
搬送ローラ14は、搬送路4内でカード2を前後方向へ搬送する駆動ローラである。搬送ローラ14は、例えば、金属製の芯金の円周方向に、ゴム、シリコーン、エラストマー等で形成された押圧部材(以下、単に「ゴム」という。)が形成されている。
本実施形態においては、搬送ローラ14は、付勢されながら対向配置されるパッドローラとの間でローラ対を形成している。搬送ローラ14は、挿入されたカード2を奥側に搬送し、読取/書込後にカード2を手前側に搬送し、カード2を挿入排出口4aから突出させ排出させる。
【0040】
本実施形態においては、搬送ローラ14は、カード2の情報を読み取る磁気ヘッド16の近傍に設けられている。
このため、本実施形態において、搬送ローラ14は、カード2の磁気ストライプと密着させるため、対抗するパッドローラとの間で強い圧がかかるように構成されている。
【0041】
なお、
図2では、単独の搬送ローラ14(ローラ対)が備えられた例について記載しているものの、搬送部12は、張力を保持するためのプラテンローラ及び複数の搬送ローラ14等で構成されていてもよい。
【0042】
センサ15は、搬送路4内で、手前側から奥側に、複数設けられてもよい。
センサ15は、例えば、カード2の読取/書込時後に、カード2が排出されているか、搬送ローラ14がカード2を把持しているか、磁気ヘッド16にカード2が接触しているか、カード2の手前側から奥側への搬送が終了したか等を検知するために用いられてもよい。
【0043】
〔ローラ状態判定処理〕
次に、
図3~
図5により、本発明の実施の形態に係るローラ状態判定処理の説明を行う。
図3のフローチャートの概略を説明すると、本実施形態に係るローラ状態判定処理では、決済等による通常のカード2の読み取り時に、カード2の搬送速度の変化により、搬送ローラ14が劣化して破損している状態か否かを判定する。
【0044】
ここで、
図4により、搬送ローラ14の劣化の状態について説明する。
図4(a)は、標準の状態の搬送ローラ14であり、芯金に均等な厚みでゴムが付着している。このような搬送ローラ14では、カード決済時に挿入されるカード2を介して、搬送ローラ14のゴムに皮脂等が付着して変質することがある。
図4(b)は、ゴムの変質により、ひび割れのようなゴムの劣化が発生した例である。
図4(c)は、膨潤によるゴムの劣化が発生した例である。このように、ゴムが劣化した状態になった場合、カード2の搬送の全般において、周期的な搬送速度の変動が生じる。
一方、カード2に、異物、傷、汚れ等(以下、「異物等」という。)が付着していた場合には、搬送速度が一時的に変動するだけとなる。
【0045】
本実施形態に係るローラ状態判定処理では、カード2が原因の一時的な速度変動か、上述の周期的な変動かを区別して、搬送ローラ14のゴムの劣化の状態を判定する。
本実施形態の処理では、ローラ状態判定処理は、主に制御部10が、記憶部11に格納されたプログラムを、各部と協働し、ハードウェア資源を用いて実行する。
以下で、
図3のフローチャートにより、ローラ状態判定処理の詳細についてス、テップ毎に説明する。
【0046】
(ステップS101)
まず、情報取得部100が、搬送速度情報取得処理を行う。
情報取得部100は、搬送部12のモータM等の駆動部により搬送ローラ14が駆動された際に、カード2の搬送速度情報200を取得する。
本実施形態においては、情報取得部100は、カード2をカードリーダ1の手前から奥側、又は奥側から前方に搬送する際に、エンコーダローラ13のエンコーダの軸の回転位置の位置情報を取得する。
この上で、情報取得部100は、所定時間内で、この位置情報の変化を搬送の速度として算出し、この速度の値を所定時間毎に、時系列データとして記憶部11に格納する。この時系列データは、カード2の読み取り毎に、一時的に保持されてもよい。
【0047】
図5(a)に、この時系列データとして格納された搬送速度情報200-1の例を示す。グラフにおいて、横軸は、カード2の読み取り開始から経過した時間t、縦軸は速度を示す。
この搬送速度情報200-1は、搬送ローラ14が正常で、カード2の異物等がなく、正常に搬送された状態の搬送速度の変化の例を示す。すなわち、カード2が挿入されて搬送開始されてから、モータMは回転速度制御を行うので、所定時間で、搬送の速度が一定速度となる。そして、モータMの停止(搬送停止)後に、搬送速度が減衰して停止する。
【0048】
(ステップS102)
次に、変動算出部110が、一定速度か否かを判定する。
変動算出部110は、搬送速度情報200において、カード2の搬送の速度が一定速度となった場合、すなわちカード2が一定となるように搬送されている場合に、Yesと判定する。変動算出部110は、それ以外の場合には、Noと判定する。
Yesの場合、変動算出部110は、処理をステップS103に進める。
Noの場合、変動算出部110は、処理をステップS101に戻して、搬送速度情報200の取得を続ける。
【0049】
(ステップS103)
一定速度であった場合、変動算出部110が、変動値算出処理を行う。
変動算出部110は、搬送速度情報200から変動値を算出する。
本実施形態においては、変動算出部110は、例えば、搬送速度情報200のうち、一定速度となった箇所についてカード2の搬送の速度の最大値、最小値、平均値、分散値、偏差等の統計指標を、搬送の変動値(群)として算出する。これは、単に最大値、最小値だけでは、異物等による局所的な変動を検出して誤検知する可能性があるためである。
【0050】
または、変動算出部110は、上述の統計指標に加えて、又は他に搬送ローラ14の搬送速度に対応する周期的な値を変動値として取得することも可能である。変動算出部110は、例えば、搬送速度情報200の一定速度となった箇所をFFT(Fast Fourier Transform)して、搬送ローラ14の周期に関する値を、変動値として取得してもよい。
【0051】
図5(b)の搬送速度情報200-2は、カード2等の異物等による速度変動の例を示す。このように、カード2に異物等があると、速度変動が局所的となり、一時的に大きくなる。このため、搬送速度情報200-2において、変動値を算出すると、このような一時的な変動の傾向であることを判定可能である。
【0052】
一方、
図5(c)の搬送速度情報200-3は、搬送ローラ14の破損による速度変動の例を示す。このような場合、搬送ローラ14のゴムの変形の影響で、搬送時全域で周期的に振動するような速度変動が生じて、速度変動が大きくなる。このため、搬送速度情報200-3において、変動値を算出すると、周期的な変動の傾向であることを判定可能である。
【0053】
(ステップS104)
次に、状態判定部120が、搬送全般における変動か否かを判定する。
状態判定部120は、上述の変動値から、搬送全般における変動か否かを判定する。状態判定部120は、上述の統計指標等に基づいて、搬送ローラ14の搬送全般の速度変動が偏差により検出された場合、及び/又は周期的な変動を示していた場合に、Yesと判定する。状態判定部120は、それ以外の場合には、Noと判定する。
Yesの場合、状態判定部120は、処理をステップS105に進める。
Noの場合、状態判定部120は、処理をステップS106に進める。
【0054】
(ステップS105)
周期的な変動の場合、状態判定部120が、破損状態予測通知処理を行う。
状態判定部120は、変動値に基づいて搬送ローラ14の状態が正常に搬送を行えない破損状態であるとして、エラーや警告等のアラームを上位装置へ送信する。これにより、サービスパーソンに上位装置から連絡がされ、搬送ローラ14を交換することが可能となる。
【0055】
(ステップS106)
周期的な変動でなかった場合、状態判定部120が、異物状態通知処理を行う。この場合も、上位装置に、異物等がカード2に付着している等のアラームを上位装置へ送信することが可能である。
以上により、本発明の実施の形態に係るローラ状態判定処理を終了する。
【0056】
〔本実施形態の主な効果〕
以上のように構成することで、以下のような効果を得ることができる。
従来、ATM等に搭載のカードリーダにおいては、使用している間に異物等による影響で、徐々にカードリーダの搬送ローラ等の部品がダメージを受けることがあった。
搬送ローラが破損した場合、カード等の媒体の搬送速度の変動が大きくなり、磁気読み取り不良エラー等となることがあった。また、搬送ローラのゴムが外れると、搬送路中に詰まって、媒体詰まりエラーとなる可能性もあった。カードリーダから、これらのエラーを応答すると、例えばATMの取引休止となる等、上位装置の運用に影響がある可能性がある。このため、搬送ローラの劣化の状態を判定する技術が求められていた。
しかしながら、特許文献1の技術は、これに適用できなかった。
【0057】
これに対して、(1)本実施形態に係るカードリーダ1は、挿入されたカード2が搬送される搬送路4と、搬送路4内でカード2を搬送する搬送ローラ14と、搬送ローラ14を駆動する搬送部12のモータMと、モータMにより搬送ローラ14が駆動された際に、カード2の搬送速度情報200を取得する情報取得部100と、情報取得部100で取得された搬送速度情報200から、カード2の搬送速度が一定となるように搬送されている間の変動値を算出する変動算出部110と、変動算出部110により算出された変動値に基づいて搬送ローラ14の状態を判定する状態判定部120とを備えることを特徴とする。
【0058】
このように構成し、カード2が挿入される挿入排出口4aと、挿入されたカード2が搬送される搬送路4と、搬送路4でカード2を挟持して搬送する搬送ローラ14と、搬送ローラ14を駆動する搬送部12のモータMと、搬送路4を搬送されるカード2の搬送速度に関する各種パラメータを取得する情報取得部100と、情報取得部100で取得された搬送速度に関する各種パラメータの、カード2の搬送速度が一定となるように制御されている間の変動に関する値を算出し、算出された値から搬送ローラ14の状態を判定する制御部10とを備える。
これにより、搬送ローラ14の劣化の状態を確実に判定可能となる。結果として、搬送ローラ14のゴムのひび割れ、膨潤等のダメージが発生している状態をより確実に判定できる。
【0059】
また、本実施形態に係るカードリーダ1では、速度データから統計指標を算出しているため、ローラ破損状態が軽度の内にアラームを応答して装置交換や搬送ローラ14修理を行うことができる。このため、上位装置が運用可能な状態の内にアラームを通知して、カードリーダ1の交換や搬送ローラ14の修理等の対応を行うようにすることができる。よって、カードリーダ1の故障によるATM等の上位装置の取引休止を防ぐことができ、上位装置の運用に影響がでないようにすることができる。
【0060】
また、(2)本実施形態に係るカードリーダ1において、情報取得部100は、エンコーダローラ13で測定されたカード2の搬送速度情報200を取得する(1)に記載のカードリーダであることを特徴とする。
このように構成することで、エンコーダローラ13の情報を用いて、精度高く搬送速度の変化を検出することができる。具体的には、搬送ローラ14にひび割れや膨潤が発生すると搬送ローラ14が変形し、カード2の搬送速度に影響が生じる。このため、例えば、搬送ローラ14で搬送時のスリップや不定的なブレ等が生じても、エンコーダローラ13で速度変化を正確に測定することができる。すなわち、カード2をカードリーダ1の手前から奥側、又は奥側から前方に搬送する際に、エンコーダローラ13で、正確に搬送速度を検出できる。
【0061】
また、(3)本実施形態に係るカードリーダ1において、変動値は、搬送ローラ14の搬送速度に対応する周期的な変動に基づく値である(1)又は(2)に記載のカードリーダであることを特徴とする。
このように構成することで、カード2の異物等ではない、搬送ローラ14のゴムのひび割れや膨潤等の劣化のみを、より確実に判定することができる。つまり、異物等による搬送速度の局所的な変動があっても、その局所的な変動と搬送ローラ14のゴムの劣化とを明確に区別することが可能となる。
【0062】
また、(4)本実施形態に係るカードリーダ1において、状態判定部120は、変動値が特定の閾値以上の値であった場合に、搬送ローラ14が破損した状態と判定する(1)乃至(3)のいずれかに記載のカードリーダであることを特徴とする。
このように構成することで、カード2の搬送速度の局所的な変動を検出して誤検知する可能性を減じて、搬送ローラ14の速度変動を判断することができる。
【0063】
〔他の実施の形態〕
なお、上述の実施形態においては、エンコーダローラ13によりカード2の搬送速度を検出したものの、エンコーダローラ13が設けられていない装置については、モータMのエンコーダ又はトルクセンサ等を用いて、搬送速度を検出してもよい。
【0064】
または、(5)本実施形態に係るカードリーダ1において、情報取得部100は、カード2の磁気データのビットインターバルからカード2の搬送速度情報200を取得する(1)乃至(4)のいずれかに記載のカードリーダであってもよい。
【0065】
図6により、このビットインターバルからカード2の搬送速度を検出する例について説明する。
図6(a)は、磁気信号の概念図である。カード2が磁気カードの場合、磁気ストライプに記録された磁気信号は、強弱のある波形となる。
図6(b)は、この波形をA/D変換した整形波形を示す。このうち「H」を「1」とし、「L」を「0」とすると、整形波形は、「1」「0」「1」「0」……の続くような波形となる。この「0」と「1」の反転の間隔がビットインターバルである。このビットインターバルは、カード2の搬送速度に比例する。
【0066】
このため、情報取得部100は、各「1」「0」間のビットインターバルから、搬送速度情報200を算出することが可能である。この搬送速度情報200の算出以外の処理は、上述の実施形態のエンコーダローラ13、モータMのエンコーダ、トルクセンサ等を用いたものと同様に実行可能である。
【0067】
図7により、このビットインターバルから算出された搬送速度情報200にみられる搬送ローラ14の劣化の状態について説明する。
図7(a)の搬送速度情報200-4は、
図5(a)の搬送速度情報200-1と同様に、標準の状態の搬送ローラ14において、ビットインターバルから搬送速度情報200を算出した例である。カード2の搬送開始後、磁気信号の読み取りが開始されてから、ビットインターバルが算出されるため、急峻な値となる。
図7(b)の搬送速度情報200-5は、
図5(b)の搬送速度情報200-2と同様に、異物等により、搬送速度が一時的に変動した例である。
図7(c)の搬送速度情報200-6は、
図5(c)の搬送速度情報200-3と同様に、ゴムの変質により、搬送ローラ14が劣化した状態となった場合の搬送速度の例である。この場合も、上述のエンコーダローラ13等で算出された速度変化と同様に、周期的な変動が生じるため、これを判定可能である。
【0068】
このように構成し、カード2上の磁気データを読み取り、搬送速度の変動をビットインターバルの変動から検出することが可能である。これにより、上述と同様に、エンコーダローラ13がない装置でも、カード2の搬送速度を検出できる。さらに、ビットインターバルは、特別なデバイス等がなくてもよいため、記憶部11に格納されたファームウェア等のプログラムの更新だけで、搬送ローラ14の劣化を算出可能となる。
【0069】
また、上述の実施形態においては、どのようなタイミングで搬送ローラ14の劣化を判定するかについては記載していなかった。
これについて、毎回、カード2の読み取りの際に搬送ローラ14の劣化を判定するようにしてもよい。または、毎回の起動時、数回~数百回に一度、その他の定期的なタイミング等で判定するようにしてもよい。
また、このタイミングについては、製造時や搬送ローラ14の交換時を基準として、想定寿命に近づいた場合に、頻度を増やす等してもよい。
このように構成することで、設置環境、機種の想定使用状況等に合わせて、搬送ローラ14の劣化を判定可能となる。
【0070】
さらに、上述の実施形態においては、カード2の一回の搬送で変動値を算出する例について記載した。
しかしながら、カード2の搬送を複数回行った際に、この変動値を蓄積し平均化等して、より統計的に周期的な変動を検出しやすくすることも可能である。
一方、一時的な変動については、カード2の前側から奥側への搬送、及び奥側から前側への搬送の両方で一時的な変動が検出された場合、カード2自体に異物等があると判定するようにしてもよい。
このように構成することで、より正確に、搬送ローラ14の劣化を検出可能となる。
【0071】
さらに、上述の実施形態においては、搬送ローラ14が劣化したか否かを判定する閾値を固定とする例について記載した。
しかしながら、閾値を可変として、多少の変動でも許容範囲とするか、すぐ交換するか等をユーザに選択させることも可能である。または、上述の磁気読み取り不良エラーの発生頻度等に応じた閾値を設定することも可能である。
このように構成することで、搬送ローラ14の劣化を、より実使用に適合して検出可能となる。
【0072】
なお、上記実施の形態の構成及び動作は例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実行することができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0073】
1 カードリーダ
2 カード
4 搬送路
4a 挿入排出口
10 制御部
11 記憶部
12 搬送部
13 エンコーダローラ
14 搬送ローラ
15 センサ
16 磁気ヘッド
100 情報取得部
110 変動算出部
120 状態判定部
200、200-1~200-6 搬送速度情報
B ベルト
P プーリ
M モータ