(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147058
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】粘着テープ繰出装置
(51)【国際特許分類】
B26D 1/11 20060101AFI20241008BHJP
B26D 5/10 20060101ALI20241008BHJP
B26D 5/16 20060101ALI20241008BHJP
B65H 35/07 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B26D1/11
B26D5/10
B26D5/16
B65H35/07 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059829
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】591189258
【氏名又は名称】カモ井加工紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】弁理士法人森特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 真司
(72)【発明者】
【氏名】黒瀬 哲男
(72)【発明者】
【氏名】谷口 幸生
【テーマコード(参考)】
3C024
3F062
【Fターム(参考)】
3C024BB06
3F062AA11
3F062AB03
3F062BA01
3F062BC02
3F062BD02
3F062BG01
3F062BG04
3F062BG09
(57)【要約】
【課題】積層型マスキングテープの切断にも好適に利用しうる切断カッタを有する切断機構を備えた粘着テープ繰出装置を提供する。
【解決手段】切断機構4は、片刃の切断カッタ424をそれぞれ保持した2基のカッタ部42を取り付けた操作部41が、繰り出された粘着テープ1,2から遠ざかる後退方向に付勢された状態で、繰り出された粘着テープ1,2に向けて進退自在にケース31に保持された構成で、2基のカッタ部42は、保持した切断カッタ424それぞれの鋭角な先端を突き合わせるように左右対称で操作部41にそれぞれ軸着されてなり、操作部41が前進すれば2基のカッタ部42が揺動してそれぞれの切断カッタ424の鋭角な先端を左右に広げ、操作部41が後退すれば2基のカッタ部42が揺動してそれぞれの切断カッタ424の鋭角な先端を再び突き合せる粘着テープ繰出装置3である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースに保持するロールから繰り出された粘着テープを、ケースに設けた切断機構の切断カッタにより切断する粘着テープ繰出装置において、
切断機構は、片刃の切断カッタをそれぞれ保持した2基のカッタ部を取り付けた操作部が、繰り出された粘着テープから遠ざかる後退方向に付勢された状態で、繰り出された粘着テープに向けて進退自在にケースに保持された構成で、
2基のカッタ部は、保持した切断カッタそれぞれの鋭角な先端を突き合わせるように左右対称で操作部にそれぞれ軸着されてなり、
操作部が前進すれば2基のカッタ部が揺動してそれぞれの切断カッタの鋭角な先端を左右に広げ、操作部が後退すれば2基のカッタ部が揺動してそれぞれの切断カッタの鋭角な先端を再び突き合せる
ことを特徴とする粘着テープ繰出装置。
【請求項2】
切断機構は、間隔を広げながら操作部の前進方向に延びてケースに設けられた左右2条のカム溝に、左右のカッタ部から突出させたカム突起を嵌合させた
請求項1記載の粘着テープ繰出装置。
【請求項3】
切断機構は、略等幅で操作部の前進方向に延びてケースに設けられた左右2条のガイド溝にそれぞれガイド軸を貫通させ、左右のカッタ部と操作部とをガイド軸により軸着状態で連結させ、
間隔を広げながら操作部の前進方向に延びてケースに設けられた左右2条のカム溝に、左右のカッタ部から突出させたカム突起を嵌合させた
請求項1記載の粘着テープ繰出装置。
【請求項4】
切断機構は、繰り出された粘着テープに押し付ける押さえローラを支持する支持部を操作部の前進方向に位置させ、弾性体を挟んだ操作部と支持部とを一体にしてケースに保持させた
請求項1記載の粘着テープ繰出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケースに保持するロールから繰り出された粘着テープを、ケースに設けた切断機構の切断カッタにより切断する粘着テープ繰出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着テープ繰出装置は、例えば特許文献1に見られるように、樹脂製のケースに粘着テープのロールを回転自在に内蔵し、ロールから繰り出された粘着テープを、ケースに設けた切断機構の切断カッタにより切断する構成が多い。特許文献1が開示する粘着テープ繰出装置の切断機構は、後退方向に付勢させた切断カッタ(切断刃)を前進させて、繰り出された粘着テープを切断する。切断カッタの形状や具体的な切断方法の記載はないが、例示を見る限り、特許文献1が開示する切断カッタは、左右中央が突出した山形の刃を有し、粘着テープの幅方向中央に突き刺さり、粘着テープを左右に割いて切断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1が開示する切断機構の切断カッタは、左右中央が突出した山形の刃を有し、粘着テープの幅方向中央に突き刺さり、粘着テープを左右に割いて切断することから、粘着テープを確実かつ綺麗に切断できる。しかし、切断できる粘着テープは、切断カッタの幅より狭い幅の粘着テープに限られるため、例えば広幅のマスキングテープを切断するには、マスキングテープ以上に広幅の切断カッタが必要となる。広幅の切断カッタは、刃が長くなることから、当然に危険性が増す。また、広幅の切断カッタは後退方向に付勢する付勢手段を含めた切断機構を大きくする。
【0005】
近年、幅の異なるマスキングテープを繰り出す際に幅方向にずらして重ねる積層型マスクングテープが利用される。積層型マスキングテープは、全体の幅が広いだけでなく、部分的に2枚が重なり、厚みが増している。厚みの増した積層型マスキングテープの切断は、特許文献1が開示する山形の刃を有する切断カッタが好ましいが、刃が長くなることから危険性が増す観点で利用が好ましくない。そこで、積層型マスキングテープの切断にも好適に利用しうる切断カッタを有する切断機構を備えた粘着テープ繰出装置について検討した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
検討の結果開発したものが、ケースに保持するロールから繰り出された粘着テープを、ケースに設けた切断機構の切断カッタにより切断する粘着テープ繰出装置において、切断機構は、片刃の切断カッタをそれぞれ保持した2基のカッタ部を取り付けた操作部が、繰り出された粘着テープから遠ざかる後退方向に付勢された状態で、繰り出された粘着テープに向けて進退自在にケースに保持された構成で、2基のカッタ部は、保持した切断カッタそれぞれの鋭角な先端を突き合わせるように左右対称で操作部にそれぞれ軸着されてなり、操作部が前進すれば2基のカッタ部が揺動してそれぞれの切断カッタの鋭角な先端を左右に広げ、操作部が後退すれば2基のカッタ部が揺動してそれぞれの切断カッタの鋭角な先端を再び突き合せることを特徴とする粘着テープ繰出装置である。
【0007】
本発明の粘着テープ繰出装置は、繰り出された粘着テープに向けて進退自在にケースに保持された操作部に2基のカッタ部をそれぞれ軸着し、操作部の進退に連動させて、カッタ部と共に切断カッタを開閉させる。2枚の切断カッタは、それぞれの鋭角な先端を突き合わせるようにカッタ部が操作部に軸着されているので、常態とし一体の山形の刃になっている。これにより、2枚の切断カッタは、鋭角な先端を突き合わせた状態で粘着テープに突き刺さり、操作部の前進に応じて鋭角な先端を開くことにより、粘着テープを左右に割いて切断する。
【0008】
操作部の進退に連動してカッタ部を開閉する切断機構は、間隔を広げながら操作部の前進方向に延びてケースに設けられた左右2条のカム溝に、左右のカッタ部から突出させたカム突起を嵌合させた構成が例示される。カム溝は、カッタ部の進退方向に平行な面を有するケースの壁面に設けられる。壁面は、ケースと一体でも、別体でもよい。左右のカッタ部は、操作部に軸着されているから操作部と連動し、カム突起がカム溝に沿って左右方向に変位することで揺動し、切断カッタの鋭角な先端を左右に広げる。
【0009】
好ましい切断機構は、設計誤差を許容して、略等幅で操作部の前進方向に延びてケースに設けられた左右2条のガイド溝にそれぞれガイド軸を貫通させ、左右のカッタ部と操作部とをガイド軸により軸着状態で連結させ、間隔を広げながら操作部の前進方向に延びてケースに設けられた左右2条のカム溝に、左右のカッタ部から突出させたカム突起を嵌合させた構成である。ガイド溝は、ガイド軸を操作部の進退方向に拘束し、カッタ部の揺動中心のブレを防止する。ガイド溝は、ケースと一体又は別体の壁面に設けられ、カム溝と同じ又は別の壁面に設けられる。同じ壁面に設けられたガイド溝及びカム溝は、2条の溝でもよいし、操作部の後退方向寄りガイド溝、前進方向寄りにカム溝を並べた1条の溝でもよい。
【0010】
切断機構は、例えば操作部とケースとの間に挟んだ弾性体により、操作部を後退方向へ付勢する。この場合、切断機構は、繰り出された粘着テープに押し付ける押さえローラを支持する支持部を操作部の前進方向に位置させ、弾性体を挟んだ操作部と支持部とを一体にしてケースに保持させると、同じ弾性体で操作部の後退方向への付勢と支持部の粘着テープに向けた付勢とを同時に実現できる。また、操作部を前進させると、弾性体が圧縮されて支持部に加わる反発力が高まる。弾性体は、主な弾性変形方向が操作部の進退方向に一致するコイルバネ、板バネ、弾性ゴム等が例示される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の粘着テープ繰出装置は、2枚の切断カッタの鋭角な先端を突き合わせた状態で繰り出した粘着テープに突き立て、操作部の前進に合わせて2枚の切断カッタの鋭角な先端を広げて粘着テープを左右に割いて切断できるから、切断カッタより広幅な粘着テープだけでなく、例えば厚みのある積層型マスキングテープの切断もできる。このように、本発明の粘着テープ繰出装置は、従来同種の装置より切断できる粘着テープの幅及び厚みが大きくなる効果がある。
【0012】
カム溝にカム突起を嵌合させた切断機構は、操作部の前進に連動してカッタ部を前進させながら、カム溝を移動するカム突起に従ってカッタ部を揺動させ、切断カッタを左右に開くことができる。カッタ部は、カム溝の軌道を変えれば、操作部の進退に対するカッタ部の開閉タイミング等を調整できる。ガイド溝に貫通させたガイド軸でカッタ部及び操作部を軸着状態で連結させた切断機構は、カッタ部の揺動中心となるガイド軸のブレを防止して、カッタ部を安定かつ確実に揺動させ、切断カッタを円滑かつ確実に開閉させる。
【0013】
弾性体を挟んだ操作部と支持部とを一体にしてケースに保持させた切断機構は、操作部の後退方向への付勢と、支持部の粘着テープに向けた付勢とを、同じ弾性体で実現することにより、部品点数の削減が図れる。また、操作部を前進させて圧縮される弾性体は、支持部に加える反発力を高め、粘着テープから押さえローラが離れることを防止し、粘着テープの高い緊張状態を維持させる。高い緊張状態の粘着テープは、切断機構の切断カッタを突き刺し、左右に切り裂きやすい。こうして、粘着テープを綺麗に切断できる効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明を適用した粘着テープ繰出装置の一例を表す斜視図である。
【
図3】本例の粘着テープ繰出装置の左右中間を切断面とする縦断面図である。
【
図4】本例の粘着テープ繰出装置における切断機構を表す斜視図である。
【
図6】繰り出した第1粘着テープ及び第2粘着テープを切断した状態における本例の粘着テープ繰出装置を表す斜視図である。
【
図7】繰り出した第1粘着テープ及び第2粘着テープを切断した状態における本例の粘着テープ繰出装置を表す正面図である。
【
図8】繰り出した第1粘着テープ及び第2粘着テープを切断する手順1における切断機構の正面図である。
【
図9】繰り出した第1粘着テープ及び第2粘着テープを切断する手順2における切断機構の正面図である。
【
図10】繰り出した第1粘着テープ及び第2粘着テープを切断する手順3における切断機構の正面図である。
【
図11】カッタ部の切断カッタを取り外す状態における本例の粘着テープ繰出装置を表す斜視図である。
【
図12】カッタ部の切断カッタを取り外す状態における本例の粘着テープ繰出装置を表す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について図を参照しながら説明する。本発明は、例えば
図1~
図3に見られるように、第1粘着テープ1の第1ロール11と第2粘着テープ2の第2ロール21とをケース31に内蔵した粘着テープ繰出装置3として構成される。本例の粘着テープ繰出装置3は、マスキングテープである第1粘着テープ1及び第2粘着テープ2がずれて重ねられた積層型マスキングテープを繰り出し、適当長で切断する。本発明は、広幅で厚みのある粘着テープの切断に適しており、積層型マスキングテープを切断する本例の粘着テープ繰出装置3は、本発明の好適例である。
【0016】
ケース31は、切断機構4を備えた前端部分の後方に第1ロール11の収納空間を、第1ロール11の収納空間の後方に第2ロール21の収納空間を設けた構成で、切断機構4を備えた前端部分を除いて左右に分割される。左右に分割されたケース31の片側は、第1ロール11の収納空間に第1ロール軸311、第2ロール21の収納空間に第2ロール軸312が設けられ、切断機構4の押さえローラ431に対向する位置にある終端ガイドローラ32と、第1ロール軸311及び第2ロール軸312の中間位置にある中間ガイドローラ33とが設けられている。終端ガイドローラ32及び中間ガイドローラ33は、いずれも回転自在である。
【0017】
第1ロール11は、左右に分割されたケース31の片側の前方空間に設けた第1ロール軸311に、回転自在に装着される。また、第2ロール21は、左右に分割されたケース31の片側の後方空間に設けた第1ロール軸311に、回転自在に装着される。第2ロール21から繰り出される第2粘着テープ2は、中間ガイドローラ33に掛け回された後、第1ロール11から繰り出される第1粘着テープ1に重ねられる。そして、第1ロール11から繰り出される第1粘着テープ1と第1粘着テープ1に重ねられた第2粘着テープ2とは、一体となって終端ガイドローラ32に掛け回され、切断機構4下方を通って前方へ繰り出される。
【0018】
切断機構4は、
図4及び
図5に見られるように、操作部41及びカッタ部42の前後方向の間に、ガイド溝441及びカム溝442を設けた仕切り壁44を挟んで構成される。本例の切断機構4は、終端ガイドローラ32に掛け回して繰り出される第1粘着テープ1及び第2粘着テープ2に押さえローラ431が押しつけられるように、押さえローラ431が支持された支持部43を操作部41の前進方向(例えば
図4中下方)に位置させ、操作部41の進退方向にコイルバネ45を挟んだ操作部41と支持部43とを一体にして、ケース31の収容部35に保持させている。
【0019】
本例の操作部41は、下面が開放された直方体外形の中空な箱体で、左右に並ぶ2本の円柱状の揺動軸411を前面から突出させ、左右に延びる掛合段差413を後面に設け、内部上面から下方に向けて中空円筒状のバネガイド412を突出させ、左右側面の下縁に円弧状の切り欠き414を設けている。左右側面に設けた切り欠き414は、支持部43に接近する操作部41が支持部43のローラ支持腕432との干渉を避ける部位で、ローラ支持腕432が操作部41に干渉しなければ、なくてもよい。
【0020】
揺動軸411は、カッタ部42の軸着突起421に嵌合し、カッタ部42を操作部41に同期させて進退させながら、カッタ部42の揺動中心を与える。バネガイド412は、支持部43のガイド軸433を差し込ませ、操作部41及び支持部43の接近離反方向を操作部41の進退方向に限定する。ガイド軸433を差し込ませたバネガイド412は、一端を操作部41の内部上面、他端を支持部43の内部下面に当接させたコイルバネ45を遊嵌させる。操作部41は、後退限度(例えば
図3中上方移動の限度)において、ケース31の収容部35の開口縁部である上限ストッパ351に掛合段差413を掛合させる。また、操作部41は、前進限度(例えば
図3中下方移動の限度)において、収容部35の底面である下限ストッパ352に、開放された下面の周縁を当接させる。
【0021】
本例の操作部41は、支持部43に一端が支持されるコイルバネ45の反発により、終端ガイドローラ32に掛け回された第1粘着テープ1及び第2粘着テープ2から遠ざかる後退方向(例えば
図3中上方)に付勢されながら上半分を突出させた状態で、平面視が操作部41の水平断面に相似であるケース31の収容部35に保持される。収容部35に保持された操作部41は、掛合段差413が収容部35の上限ストッパ351に掛合させることにより後退が制限され、収容部35から逸脱しない。また、収容部35に保持された操作部41は、開放された下面の周縁を当接させることにより前進が制限される。
【0022】
本例のカッタ部42は、正面視略平行四辺形の扁平な部材で、後面の上端付近に軸着突起421を、後面の上下方向中間付近にカム突起422をそれぞれ突出させている。軸着突起421は、正面視円形の突起で、後方に開口した正面視円形の穴に、操作部41の揺動軸411を差し込ませる。カム突起422は、軸着突起421より低い正面視円形の突起で、前方に開口した正面視円形の穴に、磁石423を嵌合させる。本例のカッタ部42は、切断カッタ424を嵌め込める凹み面425を前面に形成し、正面視略平行四辺形である金属製の切断カッタ424を磁石423に吸着させて嵌め込ませ、保持している。左右の切断カッタ424は、鋭角な先端を突き合わせ、それぞれの刃を下方に向けている。
【0023】
仕切り壁44は、操作部41及びカッタ部42に挟まれる位置関係で、ケース31に固定される。本例の仕切り壁44は、ケース31と別部材であるが、ケース31と一体に設けてもよい。本例の仕切り壁44は、操作部41の進退方向に延びるガイド溝441を上流側、間隔を広げながら操作部41の前進方向に延びるカム溝442を下流側とする左右に屈曲する溝が、左右対称に2本設けられている。カッタ部42の軸着突起421は、ガイド溝441の上端に嵌合させ、操作部41の揺動軸411を差し込ませて、操作部41の進退に連動してガイド溝441の範囲で移動させる。カッタ部42のカム突起422は、ガイド溝441の下端に嵌合させ、操作部41の進退に連動してガイド溝441からカム溝442の範囲で移動させる。
【0024】
左右のカッタ部42は、保持した切断カッタ424それぞれの鋭角な先端を突き合わせて左右対称に配置され、操作部41の揺動軸411をそれぞれの軸着突起421の穴に差し込まれる。これにより、カッタ部42は、揺動軸411が差し込まれた軸着突起421を介して、操作部41に従って進退する。このとき、左右のカッタ部42は、操作部41の進退方向に延びるガイド溝441に沿って移動する軸着突起421の間隔をそのままとして、ガイド軸441からカム溝442に移って移動するカム突起422の間隔が広げられることにより、操作部41の揺動軸411を中心に揺動し、それぞれの切断カッタ424の鋭角な先端を左右に広げる。
【0025】
支持部43は、上面が開放された直方体外形で、操作部41に嵌まり込む大きさの箱体であり、内部下面から上方に向けて棒状のガイド軸433を突出させ、左右側面にローラ支持腕432を設け、左右のローラ支持腕432に掛け渡した回転軸(図示略)に押さえローラ431を回転自在に軸着している。ガイド軸433は、操作部41のバネガイド412を差し込ませて、操作部41及び支持部43の接近離反方向を限定する。支持部43は、支持部43の前進方向で、収容部35の底面である下限ストッパ352に当接させると、ケース31の収容部35の底面に設けた開口から露出させた押さえローラ431を、終端ガイドローラ32に押し当てることができる。
【0026】
ガイド軸433を差し込ませたバネガイド412は、一端を操作部41の内部上面、他端を支持部43の内部下面に当接させたコイルバネ45を遊嵌させる。コイルバネ45は、操作部41及び支持部43を互いに離反する方向、すなわち操作部41を繰り出された第1粘着テープ1及び第2粘着テープ2から遠ざかる後退方向に、支持部43を繰り出された第1粘着テープ1及び第2粘着テープ2に近づく前進方向に、それぞれ付勢する。これにより、支持部43の押さえローラ431は、終端ガイドローラ32に向けて付勢され、第1テープ1及び第2テープ2を終端ガイドローラ32と対になって挟み込む。
【0027】
本例の粘着テープ繰出装置3は、第1粘着テープ1及び第2粘着テープ2を切断する際に切断機構4下方から突出する切断カッタ424から使用者を保護する目的で、切断カッタ424が突出しながら揺動する範囲を覆う保護カバー34を、切断機構4の前方位置でケース31に取り付けている。本例の保護カバー34は、通常、切断カッタ424を左右方向から挟む突片を降ろした状態にあり、第1粘着テープ1及び第2粘着テープ2は、左右の突片の間から繰り出される。また、本例の保護カバー34は、カッタ部42から切断カッタ424を着脱する際に邪魔となるため、前方に持ち上げて待避できるように、ケース31に軸着している(後掲
図11及び
図12参照)。
【0028】
本例の粘着テープ繰出装置3は、保護カバー34の突片の間から繰り出した第1粘着テープ1及び第2粘着テープ2を、操作部41を収容部35に押し込む操作により、
図6(保護カバー34は仮装線表示)及び
図7に見られるように、先端を突き合わせた状態で第1粘着テープ1及び第2粘着テープ2に突き立てた切断カッタ424を徐々に左右に開くことにより、第1粘着テープ1及び第2粘着テープ2を左右に割いて切断する。第1粘着テープ1及び第2粘着テープ2を切断する際、左右に開いた切断カッタ424は、保護カバー34の突片により左右方向から隠され、安全性が担保されている(
図7参照)。
【0029】
切断カッタ424による第1粘着テープ1及び第2粘着テープ2の切断する手順を説明する。操作部41を収容部35に押し込む前の手順1では、
図8に見られるように、左右のカッタ部42は、それぞれの軸着突起421及びカム突起422を対応するガイド溝441に共に嵌合させているため、切断カッタ424の鋭角な先端を突き合わせた状態にある。切断カッタ424が突き合わせた鋭角な先端は、第1粘着テープ1及び第2粘着テープ2から離れている。また、第1粘着テープ1及び第2粘着テープ2を挟む押さえローラ431及び終端ガイドローラ32は、いずれも回転自在である。これにより、操作部41を収容部35に押し込む前の手順1では、第1粘着テープ1及び第2粘着テープ2を必要量だけ繰り出すことができる。
【0030】
繰り出しておいた第1粘着テープ1及び第2粘着テープ2を対象部位に貼り付けた状態で粘着テープ繰出装置3を引くと、第1粘着テープ1及び第2粘着テープ2が更に繰り出される。そして、必要量繰り出された第1粘着テープ1及び第2粘着テープ2は、切断機構4の操作部41を収容部35に押し込む操作により、切断を始める。操作部41を収容部35に押し込み始めた手順2では、
図9に見られるように、左右のカッタ部42は、それぞれの軸着突起421及びカム突起422を対応するガイド溝441に嵌合させたまま、操作部41の前進(
図9中下方への移動)に連動して移動するので、鋭角な先端を突き合わせた切断カッタ424を第1粘着テープ1及び第2粘着テープ2に突き立てる。
【0031】
鋭角な先端を突き合わせた切断カッタ424を第1粘着テープ1及び第2粘着テープ2に突き立てた状態から、切断機構4の操作部41を収容部35に更に押し込むと、第1粘着テープ1及び第2粘着テープ2が完全に切断される。操作部41を収容部35に十分に押し込んだ手順3に至ると、
図10に見られるように、左右のカッタ部42は、それぞれの軸着突起421を対応するガイド溝441に嵌合させたまま、カム突起422をカム溝442に移らせて移動させるので、それぞれが左右に遠ざかるように揺動する。これにより、左右の切断カッタ424は、操作部41の前進(
図9中下方への移動)に連動して鋭角な先端を開いて、第1粘着テープ1及び第2粘着テープ2を左右に割いて切断する。
【0032】
支持部43は、操作部41との間のコイルバネ45により、第1粘着テープ1及び第2粘着テープ2に接近する前進方向に付勢され、繰り出す第1粘着テープ1及び第2粘着テープ2を押さえローラ431及び終端ガイドローラ32で挟んでいる。ここで、切断カッタ424により第1粘着テープ1及び第2粘着テープ2を切断するために操作部41を前進させると、コイルバネ45が圧縮されて支持部43に与える付勢力が増し、押さえローラ431及び終端ガイドローラ32が第1粘着テープ1及び第2粘着テープ2を挟む力が増強される。こうして、第1粘着テープ1及び第2粘着テープ2は、対象部位に貼り付けた部分と押さえローラ431及び終端ガイドローラ32に挟まれた部分との間で緊張状態となり、開閉する切断カッタ424で綺麗に切断される。
【0033】
操作部41は、支持部43との間に介在させたコイルバネ45により、常に第1粘着テープ1及び第2粘着テープ2から遠ざかる後退方向に付勢されている。このため、操作部41は、押し込みをやめた段階で自律的に後退する。そして、上述までの手順1~手順3と逆に、切断カッタ424は、操作部41の後退に合わせてカッタ部42が互いに接近することにより内向きに揺動して閉じ、鋭角な先端を再び突き合わせる。本例の粘着テープ繰出装置3は、保護カバー34に囲まれた範囲で切断カッタ424が突出し、開閉するため、切断カッタ424の刃が使用者の指が触れる虞がなく、安全である。
【0034】
本例の粘着テープ繰出装置3は、切断カッタ424をカッタ部42に着脱自在にし、例えば切断カッタ424の切れ味が低下すれば、交換できるようにしている。具体的には、
図11及び
図12に見られるように、保護カバー34を持ち上げるように開いた状態で操作部41を押し込むと、第1粘着テープ1及び第2粘着テープ2の切断時同様、切断カッタ424が下方に突出し、左右に開く。保護カバー34を持ち上げて待避させることにより露出した切断カッタ424は、磁石423の吸着に反して、捻ったり、下方にずらしたりして、カッタ部42の凹み面425から取り外せる。新たな切断カッタ424は、空になった凹み面425に嵌め込んで装着する。そして、操作部41の押し込みをやめて切断カッタ424を初期位置に復帰させ、保護カバー34を下ろして使用状態に戻せば、切断カッタ424の交換作業が完了する。
【0035】
本例の粘着テープ繰出装置3は、カッターナイフの折れ刃式ブレードを折って分離した刃要素を、切断カッタ424として利用している。折れ刃式ブレードは、容易に入手可能な鉄製の刃部材で、折溝を挟んで分離される刃要素が均等に形成できる特徴を有する。本例の切断カッタ424は、折れ刃式ブレードの特徴を利用して、入手される刃要素を左右のカッタ部42に装着している。この場合、左右のカッタ部42は、左右対称であるため、それぞれのカッタ部42に装着する折れ刃式ブレードの刃要素は、左右で面裏を反転させて使用している(各図では、図示の便宜上、表裏を区別していない)。
【0036】
本例の粘着テープ繰出装置3は、広幅で厚みのある粘着テープの切断に適している本発明に鑑みて、幅方向にずれて積層され、全体として広幅となった第1粘着テープ1及び第2テープ2を一体に切断する構成である。このため、ケース31は、第1粘着テープ1を繰り出す第1ロール11と、第2粘着テープ2を繰り出す第2ロール21とを内蔵している。しかし、本発明は、粘着テープの厚み及び幅を問わないから、粘着テープが1体だけである一般的な粘着テープ繰出装置にはもちろん、3本以上の粘着テープを積層又はずらして積層し、一体として繰り出しながら切断する粘着テープ繰出装置にも利用しうる。
【符号の説明】
【0037】
1 第1粘着テープ
2 第2粘着テープ
3 粘着テープ繰出装置
31 ケース
32 終端ガイドローラ
33 中間ガイドローラ
34 保護カバー
35 収容部
4 切断機構
41 操作部
411 揺動軸
412 バネガイド
413 掛合段差
414 切り欠き
42 カッタ部
421 軸着突起
422 カム突起
423 磁石
424 切断カッタ
425 凹み面
43 支持部
431 押さえローラ
432 ローラ支持腕
433 ガイド軸
44 仕切り壁
441 ガイド溝
442 カム溝
45 コイルバネ