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特開2024-147061液体入り容器の製造方法、及び液体入り容器
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147061
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】液体入り容器の製造方法、及び液体入り容器
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/00 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
A61M5/00 518
A61M5/00 514
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059832
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】523122355
【氏名又は名称】太陽ファルマテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【弁理士】
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】杉本 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】小澤 待子
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066EE06
4C066HH13
(57)【要約】
【課題】 栓部材の摺動性を高めつつ、容器内に塗布した潤滑剤の液体中への混入を抑えられる液体入り容器の製造方法、及び液体入り容器を提供する。
【解決手段】 本発明の液体入り容器の製造方法では、シリンジ12の内周面のうち、シリンジ12の延出方向における一部の領域にシリコーンオイルを塗布し、先端部16aの外表面にコーティング層16sが形成されたガスケット16を、シリンジ12の開口端からシリンジ12内に挿入し、延出方向において先端部16aの外周面がシリンジ12の内周面中、シリコーンオイルの塗布領域12cを避け、且つ、ガスケット16の中で先端部16aよりも開口端側に位置する胴部16bの外周面が塗布領域12cと対向する位置にガスケット16を配置する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が注入された筒状の容器内に栓部材が配置されて構成される液体入り容器の製造方法であって、
前記容器の内周面のうち、前記容器の延出方向における一部の領域に潤滑剤を塗布する塗布工程と、
先端部の外表面にコーティング層が形成された前記栓部材を、前記容器の開口端から前記容器内に挿入して前記容器内に配置する配置工程と、を実施し、
前記配置工程にて前記容器内で前記栓部材を配置する位置は、前記延出方向において、前記先端部の外周面が前記内周面における前記潤滑剤の塗布領域を避け、且つ、前記栓部材の中で前記先端部よりも前記開口端側に位置する非先端部の外周面が前記塗布領域と対向する位置である、液体入り容器の製造方法。
【請求項2】
前記配置工程では、前記先端部及び前記非先端部のうち、前記先端部の外表面にのみ前記コーティング層が形成された前記栓部材を、前記容器内に配置する、請求項1に記載の液体入り容器の製造方法。
【請求項3】
前記塗布工程の前に、前記潤滑剤を担持した第1外周面を備える第1ローラを回転させながら、前記第1外周面を、第2ローラが備える第2外周面に接触させて、前記第1外周面に担持された前記潤滑剤を前記第2外周面に転写させる転写工程を実施し、
前記塗布工程では、前記第2外周面に前記潤滑剤が転写された状態の前記第2ローラを前記容器内に配置し、前記内周面のうちの前記一部の領域に前記第2外周面と接触させて前記潤滑剤を塗布し、
前記第1外周面から前記第2外周面への前記潤滑剤の転写量が、前記第1外周面と対向する第3外周面を有する第3ローラと前記第1ローラとの間隔によって調整可能である、請求項1又は2に記載の液体入り容器の製造方法。
【請求項4】
前記配置工程では、前記栓部材の周方向の全域に亘って、前記非先端部の外周面を前記塗布領域に接触させる、請求項1又は2に記載の液体入り容器の製造方法。
【請求項5】
前記配置工程では、
前記栓部材をガイドスリーブ内に押し込み、前記ガイドスリーブの内部で前記栓部材を前記ガイドスリーブの径方向に縮むように弾性変形させ、
内部に前記栓部材が押し込まれた前記ガイドスリーブを前記開口端から前記容器内に挿入し、
前記容器内における前記栓部材の配置位置を維持しながら、前記ガイドスリーブを前記容器から引き抜く、請求項1又は2に記載の液体入り容器の製造方法。
【請求項6】
液体が注入された筒状の容器内に栓部材が配置されて構成される液体入り容器であって、
前記容器の内周面のうち、前記容器の延出方向における一部の領域には潤滑剤が塗布されており、
前記栓部材の先端部の外表面には、コーティング層が形成されており、
前記容器内において、前記先端部の外周面が前記内周面における前記潤滑剤の塗布領域を避け、且つ、前記栓部材の中で前記先端部よりも前記容器の開口端側に位置する非先端部の外周面が前記塗布領域と対向する、液体入り容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体が注入された筒状の容器内に栓部材が配置されて構成される液体入り容器の製造方法、及び液体入り容器に関する。
【背景技術】
【0002】
液体入り容器は、液体が注入された筒状の容器内に栓部材を挿入して打栓することで構成され、例えば、医療分野では、シリンジ内に薬液が充填された注射器等が、液体入り容器の一例として利用されている。
【0003】
容器内に配置された栓部材については、栓部材と容器の内周面との密着性、すなわち、密封性を確保するとともに、栓部材が容器内でスムーズに摺動できることが求められる。このような理由から、容器の内周面にはオイル等の潤滑剤を塗布し、潤滑剤の塗布領域と栓部材の外周面とを対向させ、厳密には接触させることがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4-246364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
容器の内周面に潤滑剤を塗布する場合には、栓部材の摺動性を高めつつ、容器内に注入された液体中に潤滑剤が極力混入しないように塗布する必要がある。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、以下に示す課題を解決することを目的とする。すなわち、本発明は、上記従来技術の問題点を解決し、具体的には、栓部材の摺動性を高めつつ、容器内に塗布した潤滑剤の液体中への混入を抑えられる液体入り容器の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、上記の課題が解決された液体入り容器を実現することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の液体入り容器の製造方法は、液体が注入された筒状の容器内に栓部材が配置されて構成される液体入り容器の製造方法であって、容器の内周面のうち、容器の延出方向における一部の領域に潤滑剤を塗布する塗布工程と、先端部の外表面にコーティング層が形成された栓部材を、容器の開口端から容器内に挿入して容器内に配置する配置工程と、を実施し、配置工程にて容器内で栓部材を配置する位置は、延出方向において、先端部の外周面が内周面における潤滑剤の塗布領域を避け、且つ、栓部材の中で先端部よりも開口端側に位置する非先端部の外周面が塗布領域と対向する位置であることを特徴とする。
上記の方法により、栓部材の先端部については、その外表面にコーティング層を形成することで摺動性を確保し、非先端部については、潤滑剤の塗布領域と対向することで摺動性を確保することができる。これにより、栓部材全体の摺動性を高めつつ、容器内に塗布した潤滑剤の液体中への混入を抑えることができる液体入り容器を製造することができる。
【0008】
また、配置工程では、先端部及び非先端部のうち、先端部の外表面にのみコーティング層が形成された栓部材を、容器内に配置するとよい。このように栓部材のうち、先端部についてのみ、外表面にコーティング層を形成することにより、栓部材の圧縮時にコーティング層にシワが生じることに起因して、容器の内周面と栓部材との間に隙間が生じるのを防ぐことができる。したがって、密封性を向上させることができる。
【0009】
また、塗布工程の前に、潤滑剤を担持した第1外周面を備える第1ローラを回転させながら、第1外周面を、第2ローラが備える第2外周面に接触させて、第1外周面に担持された潤滑剤を第2外周面に転写させる転写工程を実施してもよい。この場合、塗布工程では、第2外周面に潤滑剤が転写された状態の第2ローラを容器内に配置し、内周面のうちの一部の領域に第2外周面と接触させて潤滑剤を塗布するとよい。そして、第1外周面から第2外周面への潤滑剤の転写量が、第1外周面と対向する第3外周面を有する第3ローラと第1ローラとの間隔によって調整可能であると、好適である。
上記の構成によれば、第2ローラへの潤滑剤の転写量を調整することができる。また、第2ローラの第2外周面を容器の内周面に当接させることで、第2ローラに転写された潤滑剤が、容器の内周面に塗布される。これにより、容器の内周面に、適正量の潤滑剤を塗布することができる。
【0010】
また、配置工程では、栓部材の周方向の全域に亘って、非先端部の外周面を上記の塗布領域に接触させてもよい。この場合には、栓部材の摺動性を高めつつ、容器内に塗布した潤滑剤の液体中への混入を抑えることができる。
【0011】
また、配置工程では、栓部材をガイドスリーブ内に押し込み、ガイドスリーブの内部で栓部材をガイドスリーブの径方向に縮むように弾性変形させ、内部に栓部材が押し込まれたガイドスリーブを開口端から容器内に挿入し、容器内における栓部材の配置位置を維持しながら、ガイドスリーブを容器から引き抜いてもよい。このような手順によれば、容器内の所定位置に栓部材を正確に配置することができる。
【0012】
また、前述した課題を解決するため、本発明の液体入り容器は、液体が注入された筒状の容器内に栓部材が配置されて構成される液体入り容器であって、容器の内周面のうち、容器の延出方向における一部の領域には潤滑剤が塗布されており、栓部材の先端部の外表面には、コーティング層が形成されており、容器内において、先端部の外周面が内周面における潤滑剤の塗布領域を避け、且つ、栓部材の中で先端部よりも容器の開口端側に位置する非先端部の外周面が塗布領域と対向することを特徴とする。
上記の構成を有する液体入り容器によれば、栓部材の摺動性を高めつつ、容器内に塗布した潤滑剤の液体中への混入を抑えることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、栓部材の摺動性を高めつつ、容器内に塗布した潤滑剤の液体中への混入を抑えることができる液体入り容器の製造方法、及びそのような効果を奏する液体入り容器が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一つの実施形態に係る製造方法によって製造される液体入り容器の構成を示す図である。
図2】本発明の一つの実施形態に係る栓部材の正面図であり、一部は、栓部材の断面を示している。
図3A】液体入り容器の製造手順を示す図である(その1)。
図3B】液体入り容器の製造手順を示す図である(その2)。
図3C】液体入り容器の製造手順を示す図である(その3)。
図3D】液体入り容器の製造手順を示す図である(その4)。
図4】転写工程を実施する装置の構成を示す図である。
図5A】塗布工程の手順を示す図である(その1)。
図5B】塗布工程の手順を示す図である(その2)。
図6】容器内での栓部材の配置位置についての説明図である。
図7A】配置工程の手順を示す図である(その1)。
図7B】配置工程の手順を示す図である(その2)。
図7C】配置工程の手順を示す図である(その3)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明について、添付の図面に示す好適な実施形態を参照しながら具体的に説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例であり、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱しない限り、以下に説明する実施形態から変更又は改良され得る。また、本発明には、その等価物が含まれる。
【0016】
また、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、「水平」、「垂直」、「直交」及び「平行」は、本発明の技術分野において一般的に許容される誤差の範囲を含み、厳密な水平、垂直、直交及び平行に対して数度(例えば2~3°)未満の範囲内でずれている場合が含まれ得る。
また、本明細書において、「同じ、「同一」、「均一」及び「等しい」という意味には、本発明が属する技術分野で一般的に許容される誤差の範囲が含まれ得る。
また、本明細書において、「全部」、「いずれも」及び「すべて」という意味には、100%である場合のほか、本発明が属する技術分野で一般的に許容される誤差の範囲が含まれ、例えば99%以上、95%以上、または90%以上である場合が含まれ得る。
【0017】
[液体入り容器の基本構成]
本発明の製造方法によって製造される液体入り容器として、図1に示す薬剤充填シリンジ10(プレフィルドシリンジ)を例に挙げて、その基本構成を説明する。薬剤充填シリンジ10は、液体の一例である薬液、具体的には注射剤が充填されたシリンジからなる製剤である。薬剤充填シリンジ10は、図1に示すように、シリンジ12、キャップ14及びガスケット16を主要構成部品として備える。
【0018】
シリンジ12は、円筒状の容器であり、内部に薬液が注入される。シリンジ12の材質は、ガラスでもプラスチックでもよい。シリンジ12の先端は、使用時を除き、その開口がキャップ14によって封止されて閉塞端となっている。シリンジ12の先端側とは反対側に位置する後端は、開口端である。シリンジ12の後端からは、図1に示すように同径部12aが延出している。シリンジ12の延出方向における同径部12aの各部の内径及び外径は均一である。ここで、シリンジ12の延出方向は、同径部12aの中心軸方向と一致する。また、シリンジ12の後端部分の外周面には、フランジ部12bが設けられている。
【0019】
シリンジ12内には打栓用のガスケット16が配置される。ガスケット16は、ゴム又はエラストマ製の栓部材であり、図1に示すように、シリンジ12の開口端である後端からシリンジ12の同径部12a内に挿入される。ガスケット16の径(外径)は、自然状態では、同径部12aの内径よりも僅かに大きい。したがって、ガスケット16は、同径部12a内に挿入される際には、同径部12aの内周面から圧縮力を受けて弾性変形して縮径する。
【0020】
ガスケット16の構成について図2を参照しながら説明すると、ガスケット16は、厚みを有し、その厚み方向に連続する先端部16aと胴部16bとを備える。先端部16aは、円環の一端に先細り型の部分を連結させた形状をなしている。胴部16bの、先端部16aとは反対側に位置する後端は、開口端であり、ガスケット16の内側には開口端から先端に向けて円形孔が延出している。また、先端部16aの外表面(先端部16aにおける円環部及び先細り型の部分の側面)には、図2に示すように、コーティング層16sが形成されており、具体的には、先端部16aの外表面がフィルムによってラミネートされている。なお、先端部16aの外表面の全部がフィルムで覆われている必要はなく、一部に覆われていない部分を有してもよい。コーティング層16sを構成するフィルムの種類は、ゴム等のガスケット16に用いられる材質よりも摺動性の優れる材質(ゴムより摩擦係数の小さい材質)であれば、特に限定されず、超高分子量ポリエチレン、シリコーン系樹脂及びフッ素系樹脂のフィルム等が利用できる。
【0021】
ガスケット16において、先端部16aの外表面にのみ、コーティング層16sが形成されていることが好ましい。ガスケット16は、後述するように、配置工程においてガスケット16の径方向に圧縮される。このガスケット16の圧縮時に、コーティング層16sがガスケット16に追随して変形せず、コーティング層16sにシワが生じる場合がある。コーティング層16sにシワが生じると、ガスケット16とシリンジ12との間に隙間が生じ、その隙間を通じて潤滑剤(詳しくは、シリコーンオイル)が薬液中へ混入してしまう虞がある。ガスケット16の先端部16aの外表面にのみコーティング層16sを形成することにより、圧縮時にコーティング層16sにシワが生じるのを抑制することができる。この結果、ガスケット16の摺動性を高めつつ、シリンジ12内に塗布された潤滑剤の薬液中への混入を、より効果的に抑制することができる。
【0022】
胴部16bは、非先端部に相当し、環状をなす部分である。また、ガスケット16が同径部12a内に配置された状態では、胴部16bが先端部16aよりもシリンジ12の開口端側(つまり、後端側)に位置する(例えば、図3D参照)。また、図2に示すように、胴部16bの外周面(すなわち、胴部16bの側面)には、ガスケット16の厚み方向において間隔を空けて複数の環状溝16cが設けられている。ガスケット16が環状溝16cを備えることで、ガスケット16とシリンジ12の接触面積を減らすことができるため、ガスケット16の摺動性が向上する。複数の環状溝16cは、それぞれ、胴部16bの全周に亘って形成されており、そのうちの一つは、胴部16bのうち、先端部16aとの境界部分に設けられている。換言すると、先端部16aは、図2に示すように、ガスケット16の先端16dから、ガスケット16の先端に最も近い環状溝16cにおける先端側の端位置までの範囲に位置する部分である。
【0023】
本発明の一つの実施形態では、胴部16bの外周面にはコーティング層16sが形成されておらず、つまり、ガスケット本体を構成する弾性体の表面が胴部16bの外周面をなしている。ただし、これに限定されず、胴部16bの外周面にもコーティング層16sが形成されてもよい。
また、ガスケット16の厚み方向において、図2に示すように、胴部16bが先端部16aより長く設定されているのが好ましい。
【0024】
そして、本発明の一つの実施形態に係る薬剤充填シリンジ10では、ガスケット16の先端部16aの外周面がシリンジ12内における潤滑剤の塗布領域12cを避け、胴部16bの外周面が塗布領域12cと対向している。すなわち、最終製品としての薬剤充填シリンジ10は、先端部16aの外周面が塗布領域12cと接触しておらず、胴部16の外周面のみが塗布領域12cと接触した状態にある。
なお、ガスケット16の胴部16bの外周面のみが塗布領域12cと接触しているか否かは、例えば、後述の実施例にて説明する方法で判定できる。具体的には、薬剤充填シリンジ10をシリンジ12の中央部分で切断し、切断後のガスケット16を切断面の方向へ押し出す。その後、押し出したガスケット16について、先端部及び非先端部のそれぞれの側面をFT-IR(Fourier Transform Infrared Spectroscopy)にて分析し、潤滑剤由来のピークが非先端部にのみ現れるか否かによって上記の判定を行ってもよい。
【0025】
[薬剤充填シリンジの製造方法の概要]
次に、本発明の液体入り容器の製造方法の一例として、上述した薬剤充填シリンジ10の製造方法の概要について、図3A~3Dを参照しながら説明する。なお、以降に参照する図では、説明の便宜上、シリンジ12を断面図にて図示することとする。ここで、断面とは、シリンジ12の中心軸を含み、且つ、その中心軸に沿う平面にてシリンジ12を切断した際の断面である。
【0026】
先ず、シリンジ12の同径部12aの内周面のうち、シリンジ12の延出方向(以下、単に延出方向と称する)における一部の領域に、潤滑剤としてのシリコーンオイルを塗布する。これにより、図3Aに示すように、同径部12aの内周面にシリコーンオイルの塗布領域12cが形成される。塗布領域12cは、同径部12a内に配置されるガスケット16の摺動性を高める目的で同径部12aの全周に亘って形成され、延出方向において若干の幅を有する。
なお、シリコーンオイルを塗布する装置、及びシリコーンオイルを塗布する手順については、後に改めて説明することとする。
【0027】
次に、シリンジ12の先端がキャップ14によって封止された状態で、図3Bに示すように、シリンジ12内に所定量の薬液を注入する。なお、薬液の注入は、前述したシリコーンオイルの塗布よりも前の段階で実施されてもよい。
【0028】
次に、図3Cに示すように、シリンジ12の開口端である後端からガスケット16を同径部12a内に挿入する。この際、ガスケット16は、弾性変形して縮径した状態で先端部16a側から同径部12a内に挿入される。最終的にガスケット16は、図3Dに示すように、同径部12a内の所定位置に配置される。この時点のガスケット16の配置位置は、ガスケット16の先端部16aの外周面(すなわち、先端部16aの円環部の側面)が塗布領域12cと対向せず、且つ胴部16b(非先端部)の外周面が塗布領域12cと対向し、詳しくは塗布領域12cと接触する位置である。
なお、ガスケット16をシリンジ12内に挿入する手順については、後に改めて説明することとする。
【0029】
その後、薬液が充填されたシリンジ12内に不図示のプランジャをシリンジ12の開口端から挿入し、また、必要に応じて滅菌処理等を実施する。以上までの手順により、薬剤充填シリンジ10が完成する。
【0030】
[薬剤充填シリンジの製造フロー]
次に、薬剤充填シリンジ10の製造フロー(以下、単に製造フローと称する)について説明する。製造フローでは、転写工程と、塗布工程と、配置工程とを、この順に実施する。以下、それぞれの工程について説明する。
【0031】
(転写工程)
転写工程は、塗布工程の前に、図4に示す装置(以下、塗布装置20)にて行われる。塗布装置20は、第1ローラ21、第2ローラ22及び第3ローラ23と、吐出台24とを有する。第1ローラ21は、例えばSUSからなり、不図示の支持機構によって回転自在に支持されている。なお、第1ローラ21の回転速度(周速)は、特に限定されないが、例えば50mm/s~1000mm/sに設定される。そして、図4に示すように、第1ローラ21の回転方向における上流側から、吐出台24、第3ローラ23、及び第2ローラ22が、それぞれ、第1ローラ21と隣接する位置に配置されている。
【0032】
第2ローラ22は、シリコンゴム等の弾性体からなり、第1ローラ21の直上位置にて回転自在な状態で配置されている。また、第1ローラ21の外周面(以下、第1外周面21aと称する)と、第2ローラ22の外周面(以下、第2外周面22aと称する)とは、互いに接触している。また、第2ローラ22は、第1ローラ21とは独立して駆動(回転)可能である。
【0033】
第3ローラ23は、例えばSUSからなり、第1ローラ21の脇位置にて回転自在な状態で配置されている。第3ローラ23の外周面(以下、第3外周面23aと称する)は、第1外周面21aと対向し、第1外周面21aから僅かに離れている。つまり、第1外周面21aと第3外周面23aとの間には微小な隙間d1が形成されており、この隙間d1が、第1ローラ21と第3ローラ23との間隔を規定している。また、第3ローラ23は、第1ローラ21に対して近接又は離間する方向に移動可能であり、第3ローラ23の移動により上記の隙間d1(すなわち、ローラ間の間隔)が調整可能である。隙間d1は、例えば、0.01mm~1mmに調整するとよい。
【0034】
吐出台24は、第1ローラ21の直下に位置し、図4に示すように、吐出台24に備えられたノズル24aの先端が、吐出台24の上端面にて露出し、第1外周面21aの下端と対向している。吐出台24のノズル24aからはシリコーンオイルが吐出され、吐出されたシリコーンオイルは、第1外周面21aに付着する。また、ノズル24aの先端が露出した吐出台24の上端面と、第1外周面21aとの間には、微小な隙間d2が形成されている。この隙間d2は、吐出台24から吐出されたシリコーンオイルが第1外周面21aに適切に付着するように設定されるのが好ましく、例えば、0.01mm~1mmに調整されるとよい。
【0035】
また、図4に示すように、吐出台24の周りにはオイル受け26が設けられている。オイル受け26は、その周辺より沈降した部分であり、その内部には、吐出台24から吐出後に消費されなかったシリコーンオイルが溜められる。具体的に説明すると、オイル受け26の一部は、第1外周面21aと第3外周面23aとの間に形成された隙間d1の直下に位置する。これにより、第3ローラ23によって第1ローラ21から掻き取られたシリコーンオイルが、落下してオイル受け26によって受けられる。
【0036】
以上のように構成された塗布装置20の動作例について説明すると、吐出台24からシリコーンオイルが吐出されると、シリコーンオイルが第1ローラ21の第1外周面21aに付着する。第1ローラ21は、第1外周面21aにシリコーンオイルを担持しながら回転する。これに伴い、第1外周面21aのうち、シリコーンオイルが担持された領域(以下、オイル担持領域と称する)は、ローラ回転方向において下流側へ移動する。
【0037】
オイル担持領域が第3ローラ23の第3外周面23aとの対向位置に到達すると、オイル担持領域に第3外周面23aが摺接することで、オイル担持領域に担持されたシリコーンオイルの層厚が規制される。詳しくは、層厚が隙間d1に応じた厚みとなるように第3ローラ23がオイル担持領域上のシリコーンオイルを掻き取り、掻き取られたシリコーンオイルがオイル受け26まで落下する。
【0038】
第1ローラ21の更なる回転により、オイル担持領域が第2ローラ22の第2外周面22aと接触する位置に到達すると、オイル担持領域に担持されたシリコーンオイルが第2外周面22aに転写される。
以上までの一連の動作が連続的に実施される結果、第2外周面22aの全周に亘って均一な量のシリコーンオイルが転写される。この時点で塗布装置20による転写工程が完了する。
【0039】
(塗布工程)
塗布工程では、シリンジ12の同径部12aの内周面のうち、延出方向における一部の領域にシリコーンオイルを塗布して塗布領域12cを形成する。塗布工程の手順の一例について説明すると、不図示の挿入機構により、第2外周面22aにシリコーンオイルが転写された状態の第2ローラ22を、シリンジ12の内部に挿入する。第2ローラ22が自然状態にあるとき、第2ローラ22の外径は、同径部12aの内径より幾分短い。そのため、図5Aに示すように、第2ローラ22は、シリンジ12内にスムーズに挿入されて同径部12a内に配置される。このときの第2ローラ22の配置位置は、延出方向において、第2外周面22aが同径部12aの内周面中、塗布領域12cとなる領域に対向する位置である。
【0040】
その後、第2ローラ22を支持する装置が、第2ローラ22を弾性変形させる。具体的に説明すると、第2ローラ22の支持装置28は、図5A及び5Bに示すように、第2ローラ22を挟んで保持する2つの保持ピース31、32を備える。一方の保持ピース31は、他方の保持ピース32に対して接近及び離間可能であり、保持ピース31、32同士が接近してピース間の間隔が狭くなると、第2ローラ22が押し潰れてローラ径(外径)が拡径する。拡径後の第2ローラ22のローラ径は、第2ローラ22がシリンジ12の内周面に接触可能な大きさとなる。
【0041】
そして、第2ローラ22が同径部12a内に配置された状態で第2ローラ22が押し潰れて拡径すると、図5Bに示すように、第2外周面22aが同径部12aの内周面中、塗布領域12cとなる領域に密着する。これにより、第2外周面22a上に担持されたシリコーンオイルが、上記の領域に、同径部12aの内周面の全周に亘って塗布される。この際、第2外周面22aには、その全周に亘って均一な量のシリコーンオイルが担持されているため、同径部12aの内周面には、その全周に亘ってシリコーンオイルが均一に塗布される。
【0042】
また、第2外周面22aのシリコーンオイルの担持量、換言すると、第1ローラ21から第2ローラ22へ転写されるシリコーンオイルの量(転写量)は、第1ローラ21と第3ローラ23との間の隙間d1によって調整される。そして、転写量が調整される結果、第2外周面22aが同径部12aの内周面中の所定領域(塗布領域12c)に接触した際には、その領域に適正量のシリコーンオイルが塗布される。これにより、塗布量過多によりシリコーンオイルが薬液中に混入する事態を防ぎ、また、塗布量不足によってガスケット16の摺動性が低下するのを回避することができる。
【0043】
シリコーンオイルの塗布が終了すると、一方の保持ピース31が他方の保持ピース32から遠ざかり、それまで押し潰れていた第2ローラ22が元の状態に復元する。その後、第2ローラ22をシリンジ12の外に移動させる(詳しくは、シリンジ12を第2ローラ22から抜き取る)と、その時点で塗布工程が完了する。
【0044】
(配置工程)
配置工程では、ガスケット16をシリンジ12の開口端から同径部12a内に挿入し、延出方向において所定位置(以下、打栓位置)に配置する。打栓位置は、図6に示すように、延出方向において、ガスケット16の先端部16aの外周面が塗布領域12cを避け、且つ、胴部16bの外周面が塗布領域12cと対向する位置である。より詳しくは、打栓位置は、先端部16aが塗布領域12cよりもシリンジ12の先端側に位置する一方で、胴部16bの外周面がガスケット16の周方向の全域に亘って塗布領域12cに接触する位置である。このような打栓位置にガスケット16を配置することで、ガスケット16の摺動性を高めつつ、且つ、塗布領域12cのシリコーンオイルの薬液中への混入を適切に抑えることができる。
【0045】
詳しく説明すると、同径部12aの内周面中に塗布領域12cが設けられていることで、ガスケット16の摺動性を高めることができ、塗布領域12cの幅(延出方向における塗布領域12cの長さ)が長くなるほど、その効果がより顕著に発揮される。ただし、塗布領域12cが幅広になり、例えば、ガスケット16の先端部16a及び胴部16bの双方の外周面と対向する程度の幅を有すると、塗布領域12cのシリコーンオイルが薬液中に混入する可能性がある。特に、同径部12a内でガスケット16を配置した際に先端部16aの外周面が塗布領域12cと接すると、塗布領域12cのシリコーンオイルがガスケット16の先端側からはみ出て薬液中に混入する虞がある。
【0046】
一方、ガスケット16の先端部16aの外表面にコーティング層16sを設けた場合には、塗布領域12cと接触させなくとも先端部16aの摺動性を確保することができる。これを踏まえて、シリンジ12内におけるガスケット16の配置位置を上記の打栓位置に設定すれば、先端部16a及び胴部16bのそれぞれの摺動性を高めることができる。一方で、先端部16aが塗布領域12cを避けた位置に在るため、ガスケット16の先端からシリコーンオイルがはみ出て薬液中に混入するのを防ぐことができる。
【0047】
なお、摺動性を高める観点では、延出方向において、塗布領域12cが胴部16bの一端から他端までの範囲全域に亘って胴部16bと対向する(詳しくは、当接する)のが好ましい。換言すると、塗布工程では、ガスケット16の厚み方向における胴部16bの長さと塗布領域12cの幅(延出方向の長さ)とが等しくなるように、同径部12aの内周面の所定領域にシリコーンオイルを塗布するとよい。
【0048】
配置工程の説明に戻ると、配置工程は、例えば、図7A~7Cに示すガイドスリーブ33、及び押し込み部材34を用いて実施される。ガイドスリーブ33の内径は、自然状態にあるガスケット16の外径よりも若干小さい。また、ガイドスリーブ33の外径は、シリンジ12の同径部12aの内径よりも若干小さく、すなわち、同径部12aの内周面とガイドスリーブ33の外周面との間に若干のクリアランスを設けた状態でガイドスリーブ33が同径部12a内に挿入可能な大きさに設定されている。また、ガイドスリーブ33の後端部の外周面には、鍔部が設けられており、その外径は、同径部12aの内径よりも十分大きく設定されている。
【0049】
押し込み部材34は、棒状又はパイプ状の部材であり、不図示のピストンに連結され、ピストンの往復移動動作により、押し込み部材34の延出方向に進退自在である。押し込み部材34の外径は、自然状態にあるガスケット16の内径(円形孔の径)よりも僅かに小さく、且つ同径部12aの内径よりも小さい。また、押し込み部材34は、その外径がガイドスリーブ33の内径よりも若干小さいため、ガイドスリーブ33内を貫通することが可能である。
【0050】
配置工程では、先ず、図7Aに示すように、シリンジ12、ガイドスリーブ33、ガスケット16、及び押し込み部材34が、この順序で、それぞれの軸心が一致した状態で直線状に並べられる。その後、押し込み部材34がガスケット16側に移動することで、押し込み部材34の先端部分が、ガスケット16に設けられた円形孔内に入り込む。やがて、押し込み部材34の先端部は、上記円形孔の最奥部に押し当たる。
【0051】
その後、押し込み部材34は、ガイドスリーブ33側に更に移動する。これにより、押し込み部材34及びガスケット16が一体的にガイドスリーブ33に接近し、ガイドスリーブ33の後端側からガイドスリーブ33内に押し込まれる。ここで、ガイドスリーブ33の内径は、前述の通り、自然状態にあるガスケット16の外径より小さい。そのため、ガスケット16は、ガイドスリーブ33内に押し込まれるにつれて、徐々に弾性変形してガイドスリーブ33の径方向に縮む(縮径する)。そして、押し込み部材34の押し込み動作は、ガスケット16がガイドスリーブ33の先端付近に到達するまで継続し、その段階で中断する。
【0052】
その後、ガイドスリーブ33及び押し込み部材34が同期ながらシリンジ12側に一定量の距離を移動する。これにより、ガスケット16を内包したガイドスリーブ33が、図7Bに示すように、シリンジ12の開口端からシリンジ12の同径部12a内に挿入される。これにより、ガイドスリーブ33内に押し込まれたガスケット16が、同径部12a内に位置する。
なお、ガイドスリーブ33は、その外周面と同径部12aの内周面との間に若干(例えば、0.5mm)のクリアランスが設けられた状態で同径部12a内に挿入される。これにより、ガイドスリーブ33の挿入時にガイドスリーブ33が同径部12aの内周面を擦って同径部12aが傷つくのを抑えるとともに、シリンジ12の内周面に塗布したシリコーンオイルが塗布領域12c以外の領域に広がるのを回避することができる。
【0053】
やがてガイドスリーブ33の先端部が同径部12a内の所定位置に到達すると、図7Cに示すように、押し込み部材34の位置を固定した状態で、ガイドスリーブ33のみが後退してシリンジ12の外に出る。つまり、同径部12a内におけるガスケット16の配置位置を維持しながら、ガイドスリーブ33をシリンジ12から引き抜く。この結果、押し込み部材34の先端部分に保持されたガスケット16は、そのまま同径部12a内に残留し、その時点でのガスケット16の配置位置は、前述の打栓位置に該当する。
【0054】
そして、ガスケット16は、ガイドスリーブ33から脱することで圧縮状態(縮径された状態)から解放されて同径部12aの径方向に広がる(拡径する)。これにより、ガスケット16の外周面が同径部12aの内周面に当接し、特に、胴部16bの外周面が塗布領域12cと密着するようになる。この際、ガスケット16は、前述した打栓位置にあり、つまり、ガスケット16の先端部16aの外周面が塗布領域12cを避け、且つ、胴部16bの外周面が塗布領域12cと対向した状態にある。そのため、ガスケット16が圧縮状態から解放されて拡径することでガスケット16の外周面が塗布領域12cに接触した際に、塗布領域12cのシリコーンオイルがガスケット16の先端側からはみ出て薬液中に混入するのを防ぐことができる。
【0055】
その後、押し込み部材34を後退させてシリンジ12から抜き出し、初期位置に戻す。そして、押し込み部材34が初期位置に戻った時点で配置工程が完了する。以上の手順によれば、ガスケット16を同径部12a内における所定位置、すなわち打栓位置に正確に配置することができる。この結果、シリコーンオイルがガスケット16の先端側からはみ出て薬液中に混入することを防ぐことができるとともに、摺動性をより効果的に得ることができる。
【0056】
<その他の実施形態>
以上までに本発明の液体入り容器の製造方法について具体例を挙げて説明してきたが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするために挙げた一例に過ぎず、上記以外の実施形態も考えられ得る。
【0057】
上記の実施形態では、潤滑剤の一例としてシリコーンオイルを用いたが、ガスケット16の摺動性を高める目的でシリンジ12の内周面に塗布するものであれば、シリコーンオイル以外の潤滑剤を用いてもよい。
【0058】
上記の実施形態では、ガスケット16の胴部16b(非先端部)の外周面が、その全周に亘ってシリコーンオイルの塗布領域12cに接触することとしたが、これに限定されるものではない。例えば、塗布領域12cがシリンジ12の周方向において断続的に形成されてもよく、この場合には、胴部16bの周方向において胴部16bの外周面が塗布領域12cに断続的に接触することになる。
【0059】
上記の実施形態では、第1ローラ21の第1外周面21aにシリコーンオイルを担持し、第1外周面21aから第2ローラ22の第2外周面22aにシリコーンオイルを転写することとした。そして、シリンジ12の内周面に第2外周面22aを当接させることで、シリコーンオイルをシリンジ12の内周面に塗布することとした。ただし、これに限定されず、シリンジ12の内周面の所定位置にシリコーンオイル等の潤滑剤を正確に塗布することができる手段であれば、制限なく利用することができ、例えば吹き付けによって潤滑剤を塗布することもできる。
【0060】
上記の実施形態において、第1ローラ21から第2ローラ22へのシリコーンオイルの転写量は、第2ローラ22におけるシリコーンオイルの担持量に応じて決まり、その担持量は、第2ローラ22と第3ローラ23との間の間隔(詳しくは、隙間d1)により調整可能であることとした。ただし、これに限定されず、シリコーンオイルの転写量を調整することができれば、上記以外の手段を用いてもよい。
【0061】
上記の実施形態には、ガイドスリーブ33及び押し込み部材34を用いてガスケット16をシリンジ12内の打栓位置に配置することとしたが、これに限定されるものではない。ガスケット16を適切に打栓位置に配置することができれば、上記以外の手段を用いてもよい。
【実施例0062】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は、以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0063】
実施例では、本発明の製造方法に基づき、ガスケットの非先端部にのみシリコーンオイルが接触するように、薬剤充填シリンジを作成した。
一方、比較例では、ガスケットの非先端部のみならず先端部にもシリコーンオイルが接触するように薬剤充填シリンジを作成した。
【0064】
実施例及び比較例のそれぞれで作成した薬剤充填シリンジを目視にて観察すると、比較例の薬剤充填シリンジでは、薬液にシリコーンオイル由来であると考えられる微粒子状の分離物が確認され、製品不良が発生した。これに対して、実施例の薬剤充填シリンジでは、上記の分離物は確認されなかった。
【0065】
また、実施例及び比較例のそれぞれで作成した薬剤充填シリンジをシリンジの中央部(ガスケットの先端とキャップの間)で切断し、ガスケットを切断面の方向へ押し出した。押し出したガスケットの側面について、先端部及び非先端部のそれぞれをFT-IRにて分析を行った。実施例の薬剤充填シリンジでは、シリコーンオイル由来のピーク(例えば、1260cm-1付近の鋭いピーク、1000~1100cm-1付近のブロードピーク、及び、800cm-1付近のピーク等)が非先端部のみに検出され、非先端部にのみシリコーンオイルが塗布されていることが確認された。
一方、比較例の薬剤充填シリンジでは、先端部と非先端部のいずれにもシリコーンオイル由来のピークが検出され、ガスケットの側面全面にシリコーンオイルが塗布されていた。なお、いずれの薬剤充填シリンジにおいても、ガスケットの摺動性は良好であった。
【0066】
以上のように、本発明の製造方法を用いて作成された薬剤充填シリンジは、ガスケットの摺動性が良好でありながら、薬液へのシリコーンオイルの混入が抑えられた薬剤充填シリンジとなることが確認された。
【符号の説明】
【0067】
10 薬剤充填シリンジ(液体入り容器)
12 シリンジ(容器)
12a 同径部
12b フランジ部
12c 塗布領域
14 キャップ
16 ガスケット(栓部材)
16a 先端部
16b 胴部
16c 環状溝
16d 先端
16s コーティング層
20 塗布装置
21 第1ローラ
21a 第1外周面
22 第2ローラ
22a 第2外周面
23 第3ローラ
23a 第3外周面
24 吐出台
24a ノズル
26 オイル受け
28 支持装置
31,32 保持ピース
33 ガイドスリーブ
34 押し込み部材
d1,d2 隙間
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C