(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147070
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】スピーカ装置
(51)【国際特許分類】
H04R 1/34 20060101AFI20241008BHJP
H04R 7/04 20060101ALI20241008BHJP
H04R 1/02 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
H04R1/34 310
H04R7/04
H04R1/02 101E
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059843
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002022
【氏名又は名称】弁理士法人コスモ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱中 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】水品 隆広
(72)【発明者】
【氏名】太田 政典
【テーマコード(参考)】
5D016
5D017
5D018
【Fターム(参考)】
5D016BA04
5D016BA06
5D017AD24
5D017AD40
5D018AF11
(57)【要約】
【課題】指向性を高めたスピーカ装置を提供する。
【解決手段】スピーカ装置10は、第1面P1側及び第2面P2側の夫々に複数の放音孔35を備える平面スピーカ30と、平面スピーカ30の外周に設けられ、第2面P2側の複数の放音孔35から放音された音を第1面P1側に導く導出路60と、を有し、導出路60の放音方向T2は、第1面P1側の複数の放音孔35の放音方向T1に対して傾斜している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面側及び第2面側の夫々に複数の放音孔を備える平面スピーカと、
前記平面スピーカの外周に設けられ、前記第2面側の前記複数の放音孔から放音された音を前記第1面側に導く導出路と、
を有し、
前記導出路の放音方向は、前記第1面側の前記複数の放音孔の放音方向に対して傾斜している、スピーカ装置。
【請求項2】
前記導出路の放音方向と前記第1面側の前記複数の放音孔の放音方向のなす角は略45度である、請求項1に記載のスピーカ装置。
【請求項3】
前記導出路の開口寸法は略20mmである、請求項1に記載のスピーカ装置。
【請求項4】
前記導出路の開口は、前記平面スピーカの前記第1面側の外周に環状に設けられる、請求項1に記載のスピーカ装置。
【請求項5】
前記平面スピーカを保持する環状の枠部材と、
前記平面スピーカの前記第2面側に設けられる無孔板状のダクト部材と、
を有し、
前記導出路は、前記枠部材の外周面と、前記ダクト部材が前記枠部材の外周面と対向する内側面とにより設けられる、請求項1に記載のスピーカ装置。
【請求項6】
前記枠部材は、ボス又は前記ボスと篏合するボス孔の何れか一方を有し、前記ダクト部材は、前記ボス又は前記ボスと篏合する前記ボス孔の何れか他方を有する、請求項5に記載のスピーカ装置。
【請求項7】
前記枠部材の外周面及び前記ダクト部材の前記内側面は、前記平面スピーカの法線に対して略45度傾斜して設けられると共に、前記枠部材の外周面と前記ダクト部材の前記内側面との間は略20mmとされる、請求項5に記載のスピーカ装置。
【請求項8】
前記平面スピーカの前記第2面側には吸音材が設けられる、請求項1乃至請求項7の何れか記載のスピーカ装置。
【請求項9】
前記吸音材は、前記第2面側の前記複数の放音孔から放音された音のうち、前記導出路の開口寸法の1/2の長さの波長以上の音を吸収する性質を有する、請求項8記載のスピーカ装置。
【請求項10】
第1面側及び第2面側の夫々に複数の放音孔を備える平面スピーカと、
前記平面スピーカの外周に設けられ、前記第2面側の前記複数の放音孔から放音された音を前記第1面側に導く導出路と、
前記平面スピーカの前記第2面側に配置されている吸音材と、
を有し、
前記導出路の放音方向は、前記第1面側の前記複数の放音孔の放音方向に対して傾斜しており、
前記吸音材は、前記第2面側の前記複数の放音孔から放音された音のうち、前記導出路の開口寸法の1/2の長さの波長以上の音を吸収する性質を有する、スピーカ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、指向性の高い平面スピーカを用いたスピーカ装置が開示されている。例えば、特許文献1には、平面スピーカを備える2台のスピーカ装置が対向して配置された音響設備が開示されている。各スピーカ装置の平面スピーカの背面側には、平面スピーカから少し離れた位置に吸音材が設けられている。この吸音材は、平面スピーカの背面側から放音される音のうち、比較的高音域の音を吸音する。比較的低音域の音は、吸音材により吸音されずに回折し、平面スピーカの背面側の空間における側方から放音される。側方に放音された音は、平面スピーカの正面側から放音された音における平面スピーカの側方に近い場所で干渉する。よって、平面スピーカの正面側から放音される音の指向性を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
平面スピーカの背面から放音される音が側方に放音されことで干渉し、平面スピーカの正面から放音される音の指向性を高めることができるが、更に指向性を高めることで、オフィスや自習室等の静かな環境であっても、ヘッドフォン等を使用することなく音を聞くことができるスピーカ装置が望まれることがある。
【0005】
本発明は、指向性を高めたスピーカ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るスピーカ装置は、第1面側及び第2面側の夫々に複数の放音孔を備える平面スピーカと、前記平面スピーカの外周に設けられ、前記第2面側の前記複数の放音孔から放音された音を前記第1面側に導く導出路と、を有し、前記導出路の放音方向は、前記第1面側の前記複数の放音孔の放音方向に対して傾斜している。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、指向性を高めたスピーカ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係るスピーカ装置を取り付けた個人用の椅子型スピーカ装置を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るスピーカ装置を示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るスピーカ装置の平面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るスピーカ装置の
図3のIV-IV断面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るスピーカ装置の分解斜視図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るスピーカ装置が発する音波の状態を説明するための模式図である。
【
図7】平面スピーカの第2面側からの放音を側方に向けて放音する形式のスピーカ装置が発する音波の状態を説明するための模式図である。
【
図8】平面スピーカの第2面側からの放音を第1面側に向けて放音する形式のスピーカ装置が発する音波の状態を説明するための模式図である。
【
図9】本発明の実施形態に係るスピーカ装置の開口寸法を異ならせて、距離が異なる2か所のマイクで収音した際の音圧を測定した実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。
図1に示す椅子型スピーカ装置100Aは、スピーカ装置10と、椅子(シート)100とを有する。椅子100は、脚部151、座部152、背凭れ153、ヘッドレスト154を備える。ヘッドレスト154は、人の頭の後頭部から左右の耳部に対応する位置まで延びて、略U字状とされている。スピーカ装置10は、ヘッドレスト154における人の耳部に対応する位置に設けられている。
【0010】
スピーカ装置10は、椅子100に着座した際の人の耳部の右側に対応する位置に右スピーカ部10が設けられ、左側の耳部に対応する位置に左スピーカ部10が設けられている。左スピーカ部10と右スピーカ部10は、配線を含むフレーム120により接続されている。また、右スピーカ部10は、配線を含む支持部材131に支持されるコントローラ130と接続されている。
【0011】
コントローラ130は、スピーカ装置10の各種設定や、再生、停止、早送り等の楽音に対する操作をするための各種操作用のボタン及びスピーカ装置10の動作状態等を制御部からの指示に基づいて表示するディスプレイを備えている。
【0012】
また、ヘッドレスト154には、人の耳部に対応する領域を含むスピーカ装置10の外側に吸音材155が設けられている。吸音材155の材料は、吸音効果のある種々の材料を選択することができる。例えば、綿やスポンジ等の多孔質材を用いることができる。
【0013】
椅子型スピーカ装置100Aは、スピーカ装置10が椅子100のヘッドレスト154における人の耳部に対応する位置にそれぞれ設けられている。これにより、使用者は、良好に放音されるスピーカ装置10により立体音響を感じながら、椅子150に座ってくつろぐことができる。
【0014】
図2~
図5により、スピーカ装置10の構造を説明する。スピーカ装置10は、平面波としての音を出力する平面スピーカ30を備えるスピーカ本体20と、スピーカ本体20が固定される枠部材40と、枠部材40の背面側で枠部材40と固定される略平板状のダクト部材50とを有する。
【0015】
スピーカ本体20は、
図2及び
図3で見て左右方向が若干長い略長矩形状に設けられている。スピーカ本体20は、
図5に示すように、略長矩形状のスピーカ本体ケース25を備えている。スピーカ本体ケース25は、第1カバー21と第2カバー22が組み合わされてなる。スピーカ本体ケース25は、正面側である第1面P1側に第1カバー21が設けられ、第1面P1側と反対側の第2面P2側に第2カバー22が設けられている。第1カバー21及び第2カバー22は、共に環状の側壁21e,22eを備えた略長矩形状の板状とされている。
【0016】
第1カバー21には、対向する2つの長辺側の側壁21eから突出するねじ孔収納部21bが夫々2か所ずつ設けられている。一方、第2カバー22には、ねじ孔収納部21bと対応するねじ部を備えるボス22bが対向する2つの長辺側の側壁22eから突出して設けられている。第1カバー21と第2カバー22が組み合わされると(
図4参照)、第1カバー21の側壁21eの内側面に第2カバー22の側壁22eの外側面が近接又は接触して、第1カバー21に第2カバー22が収納される。そして、第2カバー22のボス22bは、第1カバー21のねじ孔収納部21bの内部に収められる。第1カバー21と第2カバー22は、図示しないねじ部材がねじ孔収納部21bを介してボス22bの雌ねじ部に螺合して固定される。
【0017】
第1カバー21及び第2カバー22は、中心部に大きく略長矩形の開口がスピーカ音孔面21d,22dとされ、複数のリブ部21a,22aが格子状に配置されている。これにより、スピーカ本体ケース25には、表側の第1面P1側の格子状の位置に、リブ部21aに囲まれた略矩形の複数の開口部24が設けられており、裏側の第2面P2側の格子状の位置に、リブ部22aに囲まれた略矩形の複数の開口部24が設けられている。
【0018】
図4及び
図5に示すように、スピーカ本体ケース25の内部には、平面スピーカ30が設けられている。平面スピーカ30は、第1面P1側及び第2面P2側に、それぞれ、略長矩形状の磁石板31a,32aと、ヨーク31b,32bが設けられている。ヨーク31bは磁石板31aの第1面P1側に接合して設けられ、ヨーク32bは磁石板32aの第2面P2側に接合して設けられている。磁石板31a,32aの間には、1枚の振動板33が設けられている。
【0019】
より詳細に説明すると、磁石板31a,32aは、それぞれ四隅のうちの二箇所に厚さ方向に貫通している孔31e,32eを有し、ヨーク31b,32bは、それぞれ四隅に厚さ方向に貫通している孔31d,32dを有し、磁石板31a,32aの孔31e,32eは、それぞれヨーク31b,32bのうちの二箇所の孔31d,32dに対向した位置に設けられている。
【0020】
組み立て前のケース21には、磁石板31aの孔31eに対応する二箇所に孔31eに対向する向きに突出している突起が設けられている。そして、組み立て時にケース21の突起を、二箇所のヨーク31bの孔31d、磁石板31aの孔31eに順に挿入させ、その後、ケース21の突起の頭頂部を、振動板33の第1面P1側の面に配置される直方体状の複数のクッション34に当接させてから押しつぶすように溶かして、ケース21に、ヨーク31b、磁石板31a及びクッション34を溶着させる。同様に、組み立て前のケース22には、磁石板32aの孔32eに対応する二箇所に孔32eに対向する向きに突出している突起が設けられている。そして、組み立て時にケース22の突起を、二箇所のヨーク32bの孔32d、磁石板32aの孔32eに順に挿入させ、その後、ケース22の突起の頭頂部を、振動板33の第2面P2裏側の面に配置される直方体状の複数のクッション34に当接させてから押しつぶすように溶かして、ケース22に、ヨーク32b、磁石板32a及びクッション34を溶着させる。そしてケース21側のクッション34と、ケース22側のクッション34との間に振動板33を挟みこんでいる。振動板33は、薄い金属板により略長矩形状に設けられ、一辺の縁部に基板33aが設けられている。
【0021】
ヨーク31b,32bは、磁石板31a,32aよりも十分に薄い金属板により設けられている。磁石板31a,32a及びヨーク31b,32bには、互いに対応する位置に、放音孔35を構成する複数の丸孔が設けられている。磁石板31a,32aと振動板33は、所定間隔を空けて略平行に配置されている。
【0022】
そして、ヨーク31b,32bと接合された磁石板31a,32a及びクッション34で挟み込まれた振動板33は、スピーカ本体ケース25により挟まれるようにして内部に収められている。このようにして、スピーカ本体20は、スピーカ本体ケース25(第1カバー21、第2カバー22)の内部に平面スピーカ30が設けられて、一体的に形成されている。
【0023】
一方、枠部材40は、略長矩形状に設けられるスピーカ本体20と長尺方向を同じとする略長矩形状の環状に設けられている。枠部材40の環状の内側は、開口41とされている。開口41には、内側に向かって保持板43が略長矩形状の環状に設けられている。スピーカ本体20は、第2カバー22の第2面P2側の面における側縁近傍が保持板43に載置されるようにして枠部材40に設けられる。また、第1カバー21の短辺側の2つの側壁21eには、それぞれ2か所ずつ突出して設けられる計4つのねじ孔部21cが設けられている。ねじ孔部21cは、対応して設けられる枠部材40の座繰り部48に組み付けられて、ねじ孔部21bは、対応して設けられる枠部材40の座繰り部49に組み付けられて、ビス(不図示)により枠部材40に固定されている。
【0024】
枠部材40の第2面P2側には、4つのボス44が略矩形状に配置されている。
図4に示すように、枠部材40の略長矩形環状の外周面40cは、枠部材40の第1面P1側の面40a及び第2面P2側の面40bに対して傾斜して設けられている。外周面40cは、第1面P1側の面40a、第2面P2側の面40bとのなす角θ1≒45度の角度で設けられている。換言すれば、第1面P1側の正面を向く軸(第1面P1側において最も大きい音圧の方向)に対し、それぞれ上下左右に位置する4つの外周面40cは、45°外側に向いている。
【0025】
ダクト部材50は、平面スピーカ30(スピーカ本体20)の背面側(第2面P2側)に設けられている。枠部材40に保持されたスピーカ本体20とダクト部材50は、略平行に設けられている。
【0026】
ダクト部材50は、略矩形の板状に設けられている。ダクト部材50は、外周を第1面P1側に折り曲げられている。この折り曲げられている部分である環状傾斜部51は、環状傾斜部51の基端側の矩形板部52に対してθ2≒45度で設けられている。換言すれば、環状傾斜部51の内側面51aは、矩形板部52のP1側の面52aとのなす角θ2≒45度で設けられており、第1面P1側の正面を向く軸方向(第1面P1側において最も大きい音圧の方向)に対し、それぞれ上下左右に位置する4つの内側面51aは、略45度外側に向いており、外周面40cと平行になっている。
いる。
【0027】
ダクト部材50の環状傾斜部51の内側面51aは、枠部材40の外周面40cと対向している。また、内側面51aと外周面40cは、共に水平面(例えば、ダクト部材50の矩形板部52の板面である第1面P1側の面52a及び第2面P2側の面52b)とのなす角が略45度(θ1=θ2)であり、平行である。環状傾斜部51の内側面51aと外周面40cにより設けられる部分は、導出路60とされる。導出路60は、枠部材40(平面スピーカ30)の外周に設けられ、第2面P2側の複数の放音孔35から放音された音を第1面P1側に導く。
【0028】
また、
図4に示すように、導出路60の開口61の開口寸法L1(外周面40c及び内側面51aの各突端部分の最短距離)は、略20mmとされている。なお、外周面40cと内側面51aは平行に設けられるので、外周面40cと内側面51aとの距離も略20mmとされている。
【0029】
図5に示すように、ダクト部材50の第1面P1側の面52aには、ボス孔53aを備える4つのボス53が設けられている。ボス53は、有底筒状に設けられ、底部は閉塞されている。枠部材40に設けられる各ボス44は、各ボス孔53aに篏合し、枠部材40とダクト部材50が固定されている。
【0030】
また、ダクト部材50の第1面P1側の面52aには、4つの取付部54が設けられている。取付部54は、有底円筒状に設けられ、第2面P2側の面52b側が開口されている。取付部54の第1面P1側の面52a側(すなわち、取付部54の底部)は閉塞されている。取付部54により、壁面等にスピーカ装置10を取り付けることができる。ダクト部材50は、内側(第1面P1側)と外側(第2面P2)に貫通する孔が設けられていない、無孔板状とされている。
【0031】
また、
図4に示すように、ダクト部材50の第1面P1側の面52aには、吸音材55が設けられている。吸音材55は、吸音材55の投影面に複数の放音孔35がすべて含まれる程度の大きさで設けられている。なお、吸音材55は、
図5では図示が省略されている。
【0032】
スピーカ装置10の平面スピーカ30は、第1面P1側と第2面P2側の両方向に放音する。
図6では、スピーカ装置10の第1面P1側の放音孔35から放音された音を音波W1で示し、第2面P2側の放音孔35から放音された音をW2で示す。平面スピーカ30の第2面P2側から放音された音は、平面スピーカ30の第2面P2側から導出路60及び導出路60の開口61を介して第1面P1側に放音される。
【0033】
このとき、平面スピーカ30の第1面P1側の放音孔35から放音される音の放音方向T1は、放音孔35の軸線T1a(
図4参照、換言すれば、平面スピーカ30の法線)と平行であって、第1面P1側(外側)に向かった方向となる。一方、導出路60の開口61から放音される音の放音方向T2は、枠部材40の外周面40c及びダクト部材50の環状傾斜部51の内側面51aに沿った方向の第1面P1側の方向となる。すなわち、導出路60の放音方向T2は、第1面P1側の複数の放音孔35の放音方向T1に対して傾斜している。そして、導出路60の放音方向T2と第1面P1側の複数の放音孔35の放音方向T1のなす角θt=θ1=θ2≒45度である。
【0034】
スピーカ装置10では、音波W2の放音方向T2が音波W1の放音方向T1に対して略45度傾斜していることで、音波W2で囲まれるエリアFを音波W1が進み、音波W2のエリアでは音波W1と音波W2が干渉する。ここで、音波W1と音波W2は逆位相とされるので、音波W1と音波W2が干渉すると消音する。よって、スピーカ装置10は、第1面P1側方向(放音方向T1)の指向性が高められている。
【0035】
ここで、ダクト部材50の矩形板部52は、無孔板状に設けられるため、遮音板として機能する。そして、
図4に示すように、平面スピーカ30における第2面P2側の面(ヨーク32bの外側の面)から矩形板部52の第1面P1側の面52aまでの距離(寸法L2)は略20mmとされている。この20mmは、8.5kHzの1/2波長に相当する。1/2波長以下の空間では、周波数は波の特性よりも粒子の特性を示すと思われるので、反射や定在波は発生し難くなる。反射や定在波が無いと、反射特性による周波数特性の変化や波長のズレは発生し難い。
【0036】
また、吸音材55は、一般的な吸音材として構成され、8.5kHz以上の可聴帯域の音は十分吸収できる周波数とされている。よって、吸音材55により8.5kHz以上の周波数は吸音されるので、反射や定在波は減衰するので無視することができると思われる。吸音材55及び寸法L2によって導出路60の開口61から放音される音波W2の主たる波長は8.5kHz以下になる傾向がある。吸音材55を経た音の圧力が導出路60から放出されると、正確な正面側(第1面P1側)とは逆位相の音が遅延なく出力されると思われる。導出路60の開口61の開口寸法L1は、寸法L2と同じ寸法にすることで空気が流体として流れるインピーダンスを最小限にすることができると思われる。このようにして、導出路60から放音される音と平面スピーカ30の第1面P1側から放音される音が干渉することによって消音するポイントが発生し、指向性が向上する。
【0037】
ここで、例えば、
図7に示すように、θt=90度、すなわち、放音方向T1,T2が直交するように、平面スピーカ30に対して導出路60が側方に向けられている場合には、放音方向T1の音波W1が干渉しないエリアFが広くなり、音波W1が広がって伝搬される。従って、スピーカ装置10の音の指向性は低いものとなる。
【0038】
また、
図8に示すように、θt=0度、すなわち、放音方向T1,T1が同じ方向である場合には、スピーカ装置10の正面側の領域FNで音波W1と音波W2が干渉してしまうことで、音波W1が消音されてしまい、正面方向で音波W1が聴こえにくくなってしまう。
【0039】
ここで、導出路60の開口寸法L1を異ならせてスピーカ装置10の指向性を試験した結果を
図9に示す。スピーカ装置10からの音を収音する2つのマイクは、マイクMC1をスピーカ装置10から50cmの位置に配置し、マイクMC2をスピーカ装置10から100cmの位置に配置した。
図9では、開口寸法L1=5mmとした場合の音圧(dB)を破線(細い破線Q1がマイクMC1、太い破線Q2がマイクMC2)で示し、開口寸法L1=10mmとした場合の音圧(dB)を一点鎖線(細い一点鎖線J1がマイクMC1、太い一点鎖線J2がマイクMC2)で示し、開口寸法L1≒20mmとした場合の音圧(dB)を実線(細い実線K1がマイクMC1、太い実線K2がマイクMC2)で示している。
【0040】
スピーカ装置10の第2面P2側(
図9中、0度の反対側であり、-180度の方向)は、マイクMC1,MC2共に、開口寸法L1≒20mmの減衰が一番よく、次いでL1=5mmがよく、L1=10mmが一番悪かった。指向性は、第1面P1側(0度の方向)において、左右方向(-90度及び90度)の幅が狭いほど高いとされる。指向性においても、L1≒20mmの場合が一番良い結果となった。指向性については、その次にL1=10mmがよく、L1=5mmが一番悪かった。
【0041】
このように指向性の高いスピーカ装置10を用いて、例えば
図1に示す椅子型スピーカ装置100を構成することで、スピーカ装置10の第2面P2側、つまり椅子型スピーカ装置100Aの左右外側や上方が開放された空間への音漏れを抑えることができ、個人で音を楽しむことができる。なお、スピーカ装置10の取付位置は、通常の人の着座状態における耳の位置に合わせて設置すると好適である。ここで、スピーカ装置10は、開口61の一部を塞ぐことで、音が向かう方向を変更することができる。例えば、椅子型スピーカ装置100において、前屈みで着座する場合には、開口61の後側を塞ぐことで、前屈みに着座する人の耳に音が届くように調節することができる。
【0042】
以上、本発明の実施形態によれば、スピーカ装置10は、第1面P1側及び第2面P2側の夫々に複数の放音孔35を備える平面スピーカ30と、平面スピーカ30の外周に設けられ、第2面P2側の複数の放音孔35から放音された音を第1面P1側に導く導出路60と、を有し、導出路60の放音方向T2は、第1面P1側の複数の放音孔35の放音方向T1に対して傾斜している。
【0043】
これにより、スピーカ装置10の第1面P1側で、平面スピーカ30の第1面P1側から放音される音の広がりと減衰をバランスよく抑えることができるので、音の指向性を高めたスピーカ装置10を提供することができる。
【0044】
また、導出路60の放音方向T2と、第1面P1側の複数の放音孔35の放音方向T1のなす角は略45度である。これにより、更に指向性の高いスピーカ装置10を提供することができる。
【0045】
また、導出路60の開口寸法L1は略20mmである。これにより、スピーカ装置10の背面側(第2面P2側)の音は遮音しつつ、正面側(第1面P1側)の音の指向性と音の減衰を低減させたスピーカ装置10を提供することができる。
【0046】
また、導出路60の開口61は、平面スピーカ30の第1面P1側の外周に環状に設けられる。これにより、平面スピーカ30周りの音の広がりを抑制しつつ、音の指向性を高めることができる。
【0047】
また、スピーカ装置10は、平面スピーカ30を保持する環状の枠部材40と、平面スピーカ30の第2面P2側に設けられる無孔板状のダクト部材50と、を有し、導出路60は、枠部材40の外周面40cと、ダクト部材50が枠部材40の外周面40cと対向する内側面51aとにより設けられる。これにより、指向性を高めたスピーカ装置10を簡単な構造とすることができる。
【0048】
枠部材40は、ボス44を有し、ダクト部材50は、ボス44と嵌合するボス孔53aを有する。これにより、枠部材40(スピーカ本体20)とダクト部材50との距離を精度よく一定に保つことができる。なお、枠部材40側にボス孔を設け、ダクト部材50側にボスを設けることもできる。
【0049】
また、枠部材40の外周面40c及びダクト部材50の内側面51aは、平面スピーカ30の法線である放音孔35の軸線T1a方向に対して略45度傾斜して設けられると共に、枠部材40の外周面40cとダクト部材50の内側面51aとの間は略20mmとされる。これにより、指向性を高めつつ、第2面P2側の音漏れを低減させ、簡単な構成としたスピーカ装置10を提供することができる。
【0050】
また、平面スピーカ30の第2面P2側には、吸音材55が設けられる。これにより、平面スピーカ30の第2面P2側から第1面P1側に放音される音について8.5kHz以上の音を吸音した音とすることができる。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0052】
10 スピーカ装置 20 スピーカ本体
21 第1カバー 21a リブ部
21b ねじ孔収納部 21c ねじ孔部
21d スピーカ音孔面 21e 側壁
22 第2カバー 22a リブ部
22b ボス 22d スピーカ音孔面
22e 側壁 24 開口孔
25 スピーカ本体ケース 30 平面スピーカ
31a 磁石板 31b ヨーク
31c 舌片突起 32a 磁石板
32b ヨーク 32c 舌片突起
33 振動板 33a 基板
34 クッション 35 放音孔
40 枠部材 40a 第1面側の面
40b 第2面側の面 40c 外周面
41 開口 43 保持板
44 ボス 48 座繰り部
50 ダクト部材 51 環状傾斜部
51a 内側面 52 矩形板部
52a 第1面側の面 52b 第2面側の面
53 ボス 53a ボス孔
54 取付部 55 吸音材
60 導出路 61 開口
100 椅子型スピーカ装置
P1 第1面 P2 第2面