(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147071
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/16 20060101AFI20241008BHJP
G03G 15/20 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
G03G21/16 185
G03G15/20 535
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059845
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】福江 修平
(72)【発明者】
【氏名】池上 悠介
(72)【発明者】
【氏名】西村 祥一郎
【テーマコード(参考)】
2H033
2H171
【Fターム(参考)】
2H033AA01
2H033BA11
2H033BA25
2H033BB01
2H033BB28
2H033BB33
2H033BB34
2H033CA39
2H171FA03
2H171FA04
2H171FA19
2H171GA13
2H171JA33
2H171JA34
2H171KA05
2H171KA25
2H171LA10
2H171QC36
(57)【要約】
【課題】本体筐体に着脱可能な定着装置の位置決めが不安定になるのを抑制することを目的とする。
【解決手段】画像形成装置1は、本体筐体10と、本体筐体10に着脱可能な定着装置80と、本体筐体10に配置される第1本体ギヤ310を備える。定着装置は、加熱部材と、加圧部材と、フレームと、加熱部材と加圧部材を圧接させるバネと、フレームに回転可能に支持されるカムと、カムを回転させるカムギヤ88を備える。カムは、バネの付勢力に抗して加圧部材を移動させることでニップ圧を変更する。第1本体ギヤ310は、カムギヤ88と噛み合う。フレーム83は、本体筐体10に位置決めされる第1基準部83Aを有する。本体筐体10は、第1基準部83Aと接触する基準面10Aを有する。第1基準部83Aは、カムが第1方向D1に回転するときにおける第1本体ギヤ310からカムギヤ88に伝わる力によって、基準面10Aに押し付けられる。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体筐体と、
前記本体筐体に着脱可能な定着装置であって、
ヒータを有する加熱部材と、
前記加熱部材との間でニップ部を形成する加圧部材と、
前記加熱部材および前記加圧部材を支持するフレームと、
前記加熱部材と前記加圧部材を圧接させるバネと、
前記フレームに回転可能に支持され、前記バネの付勢力に抗して前記加熱部材または前記加圧部材を移動させることで前記ニップ部のニップ圧を変更するカムと、
前記カムを回転させるカムギヤと、を備える定着装置と、
前記本体筐体に配置され、前記定着装置が前記本体筐体に装着された状態において前記カムギヤと噛み合う第1本体ギヤと、を備え、
前記フレームは、前記本体筐体に位置決めされる第1基準部を有し、
前記本体筐体は、前記定着装置が前記本体筐体に装着された状態において前記第1基準部と接触する基準面を有し、
前記カムが第1方向に回転するときにおける前記第1本体ギヤから前記カムギヤに伝わる力によって、前記第1基準部が前記基準面に押し付けられることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記基準面は、前記本体筐体に対する前記定着装置の装着方向に沿っていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記カムは、
前記ニップ圧が第1ニップ圧となる第1位置と、前記ニップ圧が前記第1ニップ圧より小さい第2ニップ圧となる第2位置との間で回転可能であり、
前記第1方向は、前記第1位置から前記第2位置に向かう方向であることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記フレームは、
前記装着方向において、前記第1基準部から離れて配置される第2基準部を有し、
前記本体筐体は、
前記第2基準部と接触可能であり、前記第2基準部が前記装着方向と直交する方向に移動するのを止めるストッパ面を有し、
前記カムが第1方向に回転するとき、前記第1本体ギヤから前記カムギヤに伝わる力に起因した、前記第2基準部を中心とする第1モーメントが発生し、当該第1モーメントによって、前記第1基準部が前記基準面に押し付けられることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記定着装置は、前記加熱部材または前記加圧部材とともに回転する駆動ギヤを備え、
前記本体筐体には、前記定着装置が前記本体筐体に装着されているときに前記駆動ギヤと噛み合う第2本体ギヤが配置され、
前記カムが前記第1方向とは反対の第2方向に回転するとき、前記第1本体ギヤから前記カムギヤに伝わる力に起因した、前記第1モーメントとは逆方向の第2モーメントが発生し、
前記第2本体ギヤが回転して前記加熱部材または前記加圧部材が回転するとき、前記第2本体ギヤから前記駆動ギヤに伝わる力に起因した、前記第2モーメントとは逆方向の第3モーメントが発生し、
前記カムが前記第2方向に回転するときには、前記加熱部材または前記加圧部材が回転していることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記第2モーメントの大きさは、前記第1モーメントの大きさよりも小さいことを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記第1本体ギヤおよび前記第2本体ギヤを駆動させるモータと、
前記モータの駆動力を前記第1本体ギヤに伝達する第1伝達状態と、前記モータの駆動力を前記第1本体ギヤに伝達させない第1切断状態とに切替可能な第1切替機構と、
前記モータの駆動力を前記第2本体ギヤに伝達する第2伝達状態と、前記モータの駆動力を前記第2本体ギヤに伝達させない第2切断状態とに切替可能な第2切替機構と、を備え、
前記第1切替機構が前記第1伝達状態で、かつ、前記第2切替機構が前記第2伝達状態であるときに前記モータが正回転することで、前記カムが前記第2方向に回転し、かつ、前記加熱部材または前記加圧部材が回転し、
前記第1切替機構が前記第1伝達状態で、かつ、前記第2切替機構が前記第2切断状態であるときに前記モータが逆回転することで、前記加熱部材または前記加圧部材が停止した状態で前記カムが前記第1方向に回転することを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記カムギヤは、前記本体筐体に対する前記定着装置の装着方向と直交する方向において、前記第1本体ギヤと前記第1基準部の間に位置することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記本体筐体に対する前記定着装置の装着方向において、前記駆動ギヤの回転中心は、前記カムギヤの回転中心よりも下流側に配置されることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記駆動ギヤは、前記装着方向と直交する方向において、前記カムギヤと前記第1基準部の間に位置することを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記定着装置は、前記加熱部材または前記加圧部材を支持し、前記フレームに回転可能に支持されるアームを備え、
前記バネは、前記アームを介して前記加熱部材と前記加圧部材を圧接させることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記アームは、
一端部が前記フレームに回転可能に支持され、
他端部に前記カムと接触可能なカムフォロアを有し、
前記一端部と前記他端部の間に、前記加熱部材または前記加圧部材を支持する第1部位と、前記バネが接続される第2部位と、を有し、
前記一端部から前記第1部位までの距離は、前記一端部から前記第2部位までの距離よりも小さいことを特徴とする請求項11に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記アームは、アーム軸を中心に回転可能であり、
前記本体筐体に対する前記定着装置の装着方向において、前記アーム軸が前記ニップ部の下流側に位置し、前記カムギヤが前記ニップ部の上流側に位置することを特徴とする請求項11に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記カムは、前記第1位置と、前記第2位置と、前記第1位置と前記第2位置の間の第3位置とに切替可能であり、
前記カムが前記第3位置に位置するとき、前記ニップ圧は、前記第1ニップ圧より小さく、かつ、前記第2ニップ圧より大きい第3ニップ圧となることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記第1基準部を前記基準面に付勢する取付バネを備え、
前記定着装置は、締結部材を使わずに前記取付バネによって前記本体筐体に固定されることを特徴とする請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、本体筐体に着脱可能な定着装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置として、本体筐体と、本体筐体に着脱可能な定着装置とを備えたものが知られている(特許文献1参照)。定着装置は、加圧ローラと、加圧ローラの加圧力を調整するためのカムと、カムを駆動するためのカムギヤとを備えている。本体筐体には、カムギヤと噛み合う本体ギヤと、本体ギヤに駆動力を伝達するモータとが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術では、モータを駆動させると、本体ギヤからカムギヤに伝わる力によって定着装置が装着位置からずれ、定着装置の位置決めが不安定になるおそれがある。
【0005】
そこで、本開示は、本体筐体に着脱可能な定着装置の位置決めが不安定になるのを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本願の画像形成装置は、本体筐体と、定着装置と、第1本体ギヤと、を備える。
定着装置は、本体筐体に着脱可能である。定着装置は、加熱部材と、加圧部材と、フレームと、バネと、カムと、カムギヤと、を備える。
加熱部材は、ヒータを有する。
加圧部材は、加熱部材との間でニップ部を形成する。
フレームは、加熱部材および加圧部材を支持する。
バネは、加熱部材と加圧部材を圧接させる。
カムは、フレームに回転可能に支持される。カムは、バネの付勢力に抗して加熱部材または加圧部材を移動させることでニップ部のニップ圧を変更する。
カムギヤは、カムを回転させる。
第1本体ギヤは、本体筐体に配置される。第1本体ギヤは、定着装置が本体筐体に装着された状態においてカムギヤと噛み合う。
フレームは、第1基準部を有する。
第1基準部は、本体筐体に位置決めされる。
本体筐体は、基準面を有する。
基準面は、定着装置が本体筐体に装着された状態において、第1基準部と接触する。
第1基準部は、カムが第1方向に回転するときにおける第1本体ギヤからカムギヤに伝わる力によって、基準面に押し付けられる。
【0007】
カムが第1方向に回転するときに、第1本体ギヤからカムギヤに伝わる力によって、第1基準部が基準面に押し付けられる構成とすることで、第1基準部が基準面から離れることが抑制され、定着装置の位置決めが不安定になるのを抑制できる。
【0008】
また、基準面は、本体筐体に対する定着装置の装着方向に沿っていてもよい。
【0009】
また、カムは、第1位置と、第2位置との間で回転可能であってもよい。
この場合、第1位置は、ニップ圧が第1ニップ圧となる位置である。
第2位置は、ニップ圧が第1ニップ圧より小さい第2ニップ圧となる位置である。
第1方向は、第1位置から第2位置に向かう方向である。
【0010】
カムが第1位置から第2位置に回転するときに第1基準部が基準面に押し付けられる構成とすることで、ニップ圧を小さくする場合に、定着装置の位置決めが不安定になるのを抑制できる。
【0011】
また、フレームは、第2基準部を有していてもよい。
この場合、第2基準部は、本体筐体に対する定着装置の装着方向において、第1基準部から離れて配置される。
本体筐体は、ストッパ面を有する。
ストッパ面は、第2基準部と接触可能である。ストッパ面は、第2基準部が装着方向と直交する方向に移動するのを止める。
この場合、カムが第1方向に回転するときに、第1本体ギヤからカムギヤに伝わる力に起因した、第2基準部を中心とする第1モーメントが発生し、当該第1モーメントによって、第1基準部が基準面に押し付けられる。
【0012】
また、定着装置は、駆動ギヤを備えていてもよい。
この場合、駆動ギヤは、加熱部材または加圧部材とともに回転する。
本体筐体には、第2本体ギヤが配置される。
第2本体ギヤは、定着装置が本体筐体に装着されているときに、駆動ギヤと噛み合う。
カムが第1方向とは反対の第2方向に回転するとき、第1本体ギヤからカムギヤに伝わる力に起因した、第1モーメントとは逆方向の第2モーメントが発生する。
第2本体ギヤが回転して加熱部材または加圧部材が回転するとき、第2本体ギヤから駆動ギヤに伝わる力に起因した、第2モーメントとは逆方向の第3モーメントが発生する。
カムが第2方向に回転するときには、加熱部材または加圧部材が回転している。
【0013】
カムが第2方向に回転するときに加熱部材または加圧部材が回転する構成とすることで、定着装置には第2モーメントと、第2モーメントとは逆方向の第3モーメントがかかる。そのため、第2モーメントによって第1基準部が基準面から離れようとするのを、第3モーメントで抑制することができるので、定着装置の位置決めが不安定になるのを抑制できる。
【0014】
また、第2モーメントの大きさは、第1モーメントの大きさよりも小さくてもよい。
【0015】
第2モーメントの大きさを第1モーメントの大きさよりも小さくすることで、第3モーメントで第2モーメントを十分打ち消すことができる。
【0016】
また、画像形成装置は、モータと、第1切替機構と、第2切替機構と、を備えていてもよい。
この場合、モータは、第1本体ギヤおよび第2本体ギヤを駆動させる。
第1切替機構は、第1伝達状態と、第1切断状態とに切替可能である。
第1伝達状態は、モータの駆動力を第1本体ギヤに伝達する状態である。
第1切断状態は、モータの駆動力を第1本体ギヤに伝達させない状態である。
第2切替機構は、第2伝達状態と、第2切断状態とに切替可能である。
第2伝達状態は、モータの駆動力を第2本体ギヤに伝達する状態である。
第2切断状態は、モータの駆動力を第2本体ギヤに伝達させない状態である。
第1切替機構が第1伝達状態で、かつ、第2切替機構が第2伝達状態であるときにモータが正回転することで、カムが第2方向に回転し、かつ、加熱部材または加圧部材が回転する。
第1切替機構が第1伝達状態で、かつ、第2切替機構が第2切断状態であるときにモータが逆回転することで、加熱部材または加圧部材が停止した状態でカムが第1方向に回転する。
【0017】
画像形成装置が第1切替機構および第2切替機構を備える構成とすることで、1つのモータで、加熱部材または加圧部材の回転とニップ圧の変更を行うことができるので、コストダウンを図ることができる。
【0018】
また、カムギヤは、本体筐体に対する定着装置の装着方向と直交する方向において、第1本体ギヤと第1基準部の間に位置していてもよい。
【0019】
また、本体筐体に対する定着装置の装着方向において、駆動ギヤの回転中心は、カムギヤの回転中心よりも下流側に配置されていてもよい。
【0020】
また、駆動ギヤは、装着方向と直交する方向において、カムギヤと第1基準部の間に位置していてもよい。
【0021】
また、定着装置は、アームを備えていてもよい。
この場合、アームは、加熱部材または加圧部材を支持する。アームは、フレームに回転可能に支持される。
バネは、アームを介して加熱部材と加圧部材を圧接させる。
【0022】
また、アームは、一端部と、他端部と、第1部位と、第2部位と、を有していてもよい。
この場合、一端部は、フレームに回転可能に支持される。
他端部は、カムフォロアを有する。
カムフォロアは、カムと接触可能である。
第1部位と第2部位は、一端部と他端部の間に位置する。
第1部位は、加熱部材または加圧部材を支持する。
第2部位には、バネが接続される。
一端部から第1部位までの距離は、一端部から第2部位までの距離よりも小さい。
【0023】
また、アームは、アーム軸を中心に回転可能であってもよい。
この場合、本体筐体に対する定着装置の装着方向において、アーム軸は、ニップ部の下流側に位置する。本体筐体に対する定着装置の装着方向において、カムギヤは、ニップ部の上流側に位置する。
【0024】
また、カムは、第1位置と、第2位置と、第3位置とに切替可能であってもよい。
この場合、第3位置は、第1位置と第2位置の間の位置である。
カムが第3位置に位置するとき、ニップ圧は、第3ニップ圧となる。
第3ニップ圧は、第1ニップ圧より小さく、かつ、第2ニップ圧より大きい。
【0025】
また、画像形成装置は、取付バネを備えていてもよい。
この場合、取付バネは、第1基準部を基準面に付勢する。
定着装置は、締結部材を使わずに取付バネによって本体筐体に固定される。
【発明の効果】
【0026】
本開示によれば、本体筐体に着脱可能な定着装置の位置決めが不安定になるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】実施形態に係る画像形成装置の断面図である。
【
図2】定着装置を本体筐体から外した状態を示す図である。
【
図3】フレームの一部を取り除いた状態の定着装置を、カムギヤ側から見た斜視図である。
【
図4】フレームの一部を取り除いた状態の定着装置を、カムギヤとは反対側から見た斜視図である。
【
図5】ニップ圧を変更する機構を示す図であり、カムが第1位置に位置するときの状態を示す図である。
【
図6】ニップ圧を変更する機構を示す図であり、カムが第3位置に位置するときの状態を示す図である。
【
図7】ニップ圧を変更する機構を示す図であり、カムが第2位置に位置するときの状態を示す図である。
【
図8】本体筐体に設けられるモータとギヤ機構を示す図である。
【
図9】定着装置が本体筐体に装着されたときの定着装置側の構造と本体筐体側の構造の関係を示す図(a)と、第1基準部周りの構造を拡大して示す図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、本開示の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように、画像形成装置1は、本体筐体10と、シート供給部20と、画像形成部30と、シート排出部90とを備える。
【0029】
本体筐体10は、フロントカバー11と、排出トレイ12と、リアカバー13とを有する。フロントカバー11は、本体筐体10の前側の開口を開閉する。リアカバー13は、本体筐体10の後側の開口を開閉する。
【0030】
シート供給部20は、シートトレイ21と、供給機構22とを備える。シートトレイ21は、紙などのシートSを収容する。供給機構22は、シートトレイ21内のシートSを画像形成部30に供給する。
【0031】
画像形成部30は、露光装置40と、プロセスユニットPUと、転写ユニット70と、定着装置80とを備える。
【0032】
露光装置40は、プロセスユニットPUの上に位置する。露光装置40は、光ビームを出射して感光ドラム51の表面を露光する。
【0033】
プロセスユニットPUは、シートトレイ21と露光装置40の間に位置する。プロセスユニットPUは、フロントカバー11を開くことで開放される本体筐体10の開口を通して、本体筐体10に着脱可能である。プロセスユニットPUは、ドラムカートリッジ50と、複数のトナーカートリッジ60とを備える。
【0034】
ドラムカートリッジ50は、複数の感光ドラム51と、複数の感光ドラム51に対応する複数の帯電器52と、ドラムフレーム53とを備える。
【0035】
ドラムフレーム53は、感光ドラム51および帯電器52を支持する。ドラムフレーム53は、本体筐体10に移動可能に支持される。ドラムフレーム53には、トナーカートリッジ60が着脱可能である。
【0036】
複数のトナーカートリッジ60は、互いに異なる色のトナーを収容する。トナーカートリッジ60は、現像ローラ61と、供給ローラ62と、層厚規制ブレード63と、トナーを収容するトナー収容部64と、アジテータ65とを備える。
【0037】
アジテータ65は、トナー収容部64内のトナーを攪拌する。アジテータ65は、トナーを供給ローラ62に供給する。供給ローラ62は、トナーを現像ローラ61に供給する。層厚規制ブレード63は、現像ローラ61上のトナーを一定の厚さに規定する。
【0038】
転写ユニット70は、シートトレイ21とプロセスユニットPUの間に位置する。転写ユニット70は、駆動ローラ71と、従動ローラ72と、搬送ベルト73と、複数の転写ローラ74とを備える。搬送ベルト73は、シートSを搬送するための無端状のベルトである。駆動ローラ71および従動ローラ72は、搬送ベルト73を回転させる。転写ローラ74は、搬送ベルト73の内側に位置する。転写ローラ74は、感光ドラム51との間で搬送ベルト73を挟む。
【0039】
定着装置80は、加熱部材の一例としての加熱ローラ81と、加圧部材の一例としての加圧ローラ82と、フレーム83とを備える。加熱ローラ81は、シートSを加熱する。加熱ローラ81は、2つのヒータ81Aを有する。加熱ローラ81は、図示せぬ駆動源の駆動力を受けて回転する。
【0040】
加圧ローラ82は、加熱ローラ81との間でシートSを挟む。加圧ローラ82は、加熱ローラ81との間でニップ部NPを形成する。加圧ローラ82は、加熱ローラ81に従動して回転する。
【0041】
フレーム83は、加熱ローラ81および加圧ローラ82を支持する。
【0042】
帯電器52は、感光ドラム51の表面を帯電する。露光装置40は、感光ドラム51の表面を露光する。これにより、感光ドラム51上には、静電潜像が形成される。現像ローラ61は、感光ドラム51にトナーを供給する。これにより、感光ドラム51上には、トナー像が形成される。
【0043】
シート供給部20は、シートSを感光ドラム51と転写ローラ74の間に搬送する。感光ドラム51上のトナー像は、シートSに転写される。トナー像が転写されたシートSは、加熱ローラ81と加圧ローラ82の間に搬送される。定着装置80は、シートSにトナー像を熱定着させる。
【0044】
シート排出部90は、搬送ローラ91と、排出ローラ92とを有する。搬送ローラ91は、シートSを排出ローラ92に搬送する。排出ローラ92は、シートSを排出トレイ12上に排出する。
【0045】
図2に示すように、定着装置80は、リアカバー13を開くことで開放される本体筐体10の開口を通して、本体筐体10に着脱可能である。つまり、本体筐体10は、定着装置80を着脱可能に支持する。
【0046】
図3および
図4に示すように、定着装置80は、アーム84と、バネ85と、カム86と、シャフト87と、カムギヤ88と、駆動ギヤ89とを備える。なお、
図3および
図4では、フレーム83の一部について、図示は省略する。
【0047】
アーム84およびバネ85は、加熱ローラ81と加圧ローラ82を圧接させるための部材である。バネ85は、引張コイルバネである。アーム84およびバネ85は、加熱ローラ81の軸方向において、定着装置80の一端部と他端部に1つずつ配置されている。以下の説明では、加熱ローラ81の軸方向を、単に「軸方向」ともいう。
【0048】
カム86は、バネ85の付勢力に抗してアーム84を押すことで、加圧ローラ82を移動させて、ニップ部NPのニップ圧を変更する部材である。カム86は、軸方向において、定着装置80の一端部と他端部に1つずつ配置されている。
【0049】
シャフト87は、一方のカム86から他方のカム86に向けて軸方向に沿って延びている。シャフト87は、2つのカム86を連結している。シャフト87は、2つのカム86とともに回転する。シャフト87の両端部に固定された各カム86は、フレーム83に回転可能に支持されている。
【0050】
カムギヤ88は、カム86を回転させるためのギヤである。カムギヤ88は、シャフト87の一端部に固定されている。カムギヤ88は、シャフト87およびカム86とともに回転する。
【0051】
駆動ギヤ89は、加熱ローラ81とともに回転するギヤである。駆動ギヤ89は、加熱ローラ81の一端部に固定されている。
【0052】
フレーム83は、第1基準部83Aと、第2基準部83Bとを有する。第1基準部83Aおよび第2基準部83Bは、軸方向において、加熱ローラ81から離れる方向に突出する。第2基準部83Bは、装着方向において、第1基準部83Aから離れて配置される。
【0053】
第1基準部83Aは、軸方向において、フレーム83の一端部と他端部に1つずつ配置されている。第2基準部83Bは、軸方向において、フレーム83の一端部と他端部に1つずつ配置されている。
【0054】
以下、
図5~
図7を参照して、アーム84、バネ85およびカム86について詳細に説明する。
図5に示すように、アーム84は、アーム軸X1を中心に回転可能である。本体筐体10に対する定着装置80の装着方向において、アーム軸X1は、ニップ部NPの下流側に位置する。
【0055】
アーム84は、フレーム83に回転可能に支持される。アーム84は、一端部84Aと、他端部84Bと、第1部位84Cと、第2部位84Dとを有する。
【0056】
一端部84Aは、フレーム83に回転可能に支持される。
他端部84Bは、カムフォロア84Eを有する。カムフォロア84Eは、カム86と接触可能である。
【0057】
第1部位84Cと第2部位84Dは、一端部84Aと他端部84Bの間に位置する。
第1部位84Cは、加圧ローラ82のシャフト82Aを支持する。
【0058】
第2部位84Dは、バネ85が接続される部位である。一端部84Aから第1部位84Cまでの距離は、一端部84Aから第2部位84Dまでの距離よりも小さい。
【0059】
バネ85の一端は、第2部位84Dに引っ掛かり、他端は、フレーム83に引っ掛かっている。バネ85は、アーム84を介して、加圧ローラ82を加熱ローラ81に圧接させる。
【0060】
カム86は、
図5に示す第1位置と、
図6に示す第3位置と、
図7に示す第2位置との間で回転可能である。カム86は、第1位置と、第3位置と、第2位置とに切替可能である。
【0061】
第1位置は、ニップ圧が第1ニップ圧となる位置である。第2位置は、ニップ圧が第1ニップ圧より小さい第2ニップ圧となる位置である。第3位置は、第1位置と第2位置の間の位置である。
【0062】
カム86が第3位置に位置するとき、ニップ圧は、第3ニップ圧となる。第3ニップ圧は、第1ニップ圧より小さく、かつ、第2ニップ圧より大きい。
【0063】
カム86は、第1位置から、
図5に示す第1方向D1に回転することで、第3位置を経て第2位置まで回転可能となっている。また、カム86は、
図7の第2位置から、第1方向D1とは反対の第2方向D2に回転することで、第3位置を経て第1位置まで回転可能となっている。
【0064】
つまり、第1方向D1は、第1位置から第2位置に向かう方向である。また、第2方向D2は、第2位置から第1位置に向かう方向である。
図5に示すように、カムギヤ88は、本体筐体10に対する定着装置80の装着方向において、ニップ部NPの上流側に位置する。
【0065】
図8に示すように、画像形成装置1は、モータ110と、第1ギヤ120と、第2ギヤ130と、第3ギヤ140と、第1切替機構210と、第4ギヤ150と、第1本体ギヤ310と、第2切替機構220と、第2本体ギヤ320とを備える。モータ110、第1ギヤ120、第2ギヤ130、第3ギヤ140、第1切替機構210、第4ギヤ150、第1本体ギヤ310、第2切替機構220および第2本体ギヤ320は、本体筐体10に配置される。
【0066】
モータ110は、第1本体ギヤ310および第2本体ギヤ320を駆動させる駆動源である。モータ110の出力軸は、ギヤ111を有する。
【0067】
第1ギヤ120は、大径ギヤ部121と、大径ギヤ部121より径が小さい小径ギヤ部122とを有する。大径ギヤ部121は、モータ110のギヤ111と噛み合う。
【0068】
小径ギヤ部122は、第2ギヤ130と噛み合う。第2ギヤ130は、第3ギヤ140と噛み合う。
【0069】
第1切替機構210は、例えば電磁クラッチである。第1切替機構210は、第1伝達状態と、第1切断状態とに切替可能である。第1伝達状態は、モータ110の駆動力を第1本体ギヤ310に伝達する状態である。第1切断状態は、モータ110の駆動力を第1本体ギヤ310に伝達させない状態である。第1切替機構210は、第3ギヤ140と噛み合う。第1切替機構210は、第4ギヤ150と噛み合う。
【0070】
図9(a)に示すように、第1本体ギヤ310は、定着装置80が本体筐体10に装着された状態において、カムギヤ88と噛み合うギヤである。
図8に戻って、第1本体ギヤ310は、第4ギヤ150と噛み合う。
【0071】
第2切替機構220は、例えば揺動ギヤ221を備えた機構である。第2切替機構220は、第2伝達状態と、第2切断状態とに切替可能である。第2伝達状態は、モータ110の駆動力を第2本体ギヤ320に伝達する状態である。第2切断状態は、モータ110の駆動力を第2本体ギヤ320に伝達させない状態である。
【0072】
揺動ギヤ221は、第3ギヤ140の回転に応じて、実線で示す第1ギヤ位置と、二点鎖線で示す第2ギヤ位置とに切替可能である。揺動ギヤ221は、第3ギヤ140と噛み合いながら、第1ギヤ位置と第2ギヤ位置との間を、第3ギヤ140の回転軸を中心に回動可能である。
【0073】
揺動ギヤ221が第1ギヤ位置に位置するとき、揺動ギヤ221は第2本体ギヤ320と噛み合う。これにより、第2切替機構220は、第2伝達状態となる。揺動ギヤ221が第2ギヤ位置に位置するとき、揺動ギヤ221は第2本体ギヤ320から離れる。これにより、第2切替機構220は、第2切断状態となる。
【0074】
図9(a)に示すように、第2本体ギヤ320は、定着装置80が本体筐体10に装着されているときに、駆動ギヤ89と噛み合うギヤである。第2本体ギヤ320は、第1本体ギヤ310に対して、装着方向の下流側、かつ、下に位置する。第2本体ギヤ320は、駆動ギヤ89の回転中心C1に対して、装着方向の下流側、かつ、上に位置する。
【0075】
第1本体ギヤ310は、カムギヤ88の上に位置する。言い換えると、カムギヤ88は、装着方向と直交する方向において、第1本体ギヤ310と第1基準部83Aの間に位置する。
【0076】
カムギヤ88は、駆動ギヤ89よりも上に位置する。言い換えると、駆動ギヤ89は、装着方向と直交する方向において、カムギヤ88と第1基準部83Aの間に位置する。装着方向において、駆動ギヤ89の回転中心C1は、カムギヤ88の回転中心C2よりも下流側に配置される。
【0077】
第1基準部83Aは、駆動ギヤ89の回転中心C1よりも装着方向の下流側に位置する。第2基準部83Bは、駆動ギヤ89の回転中心C1よりも装着方向の上流側に位置する。
【0078】
本体筐体10は、
図9(b)に示す基準面10Aおよび第2基準面10Bと、
図9(a)に示すストッパ面10C,10Dとを有する。
【0079】
基準面10Aは、定着装置80が本体筐体10に装着された状態において、第1基準部83Aと接触する。基準面10Aは、装着方向に沿っている。基準面10Aは、第1基準部83Aの下に位置する。言い換えると、第1基準部83Aは、装着方向と直交する方向において、基準面10Aと駆動ギヤ89の間に位置する。第1基準部83Aは、基準面10Aと接触することで、本体筐体10に対して、装着方向と直交する方向、つまり上下方向に位置決めされる。
【0080】
第2基準面10Bは、定着装置80が本体筐体10に装着された状態において、第1基準部83Aと接触する。第2基準面10Bは、装着方向において、第1基準部83Aの上流側に位置する。第1基準部83Aは、第2基準面10Bと接触することで、本体筐体10に対して、装着方向に位置決めされる。
【0081】
ストッパ面10C,10Dは、第2基準部83Bと接触可能な面である。2つのうち一方のストッパ面10Cは、定着装置80が本体筐体10に装着された状態において、第2基準部83Bの上に位置する。2つのうち他方のストッパ面10Dは、定着装置80が本体筐体10に装着された状態において、第2基準部83Bの下に位置する。言い換えると、第2基準部83Bは、装着方向と直交する方向において、ストッパ面10Cとストッパ面10Dの間に位置する。
【0082】
ストッパ面10Cとストッパ面10Dは、第2基準部83Bを装着方向に移動可能に支持する。ストッパ面10C,10Dは、第2基準部83Bが装着方向と直交する方向、つまり上下方向に移動するのを止める。
【0083】
画像形成装置1は、取付バネ400をさらに備える。取付バネ400は、第1基準部83Aを基準面10Aおよび第2基準面10Bに付勢するバネである。取付バネ400は、軸方向において、定着装置80の一端部と他端部に1つずつ配置されている。定着装置80は、ネジ等の締結部材を使わずに取付バネ400によって本体筐体10に固定される。
【0084】
図8に示すように、画像形成装置1は、制御部500をさらに備える。
制御部500は、CPU,ROM,RAM、不揮発性メモリなどを有し、予め用意されたプログラムに基づいて各種制御を行う。制御部500は、モータ110、第1切替機構210および第2切替機構220を制御する機能を有する。
【0085】
制御部500は、加熱ローラ81を回転させる場合には、モータ110を正回転させる。モータ110が正回転すると、第2切替機構220は第2伝達状態になる。これにより、
図8および
図9に破線の矢印で示すように、モータ110の駆動力が、第1ギヤ120、第2ギヤ130、第3ギヤ140、第2切替機構220および第2本体ギヤ320を介して駆動ギヤ89に伝達され、加熱ローラ81が回転する。
【0086】
制御部500は、カム86を第2方向D2に回転させる場合には、モータ110を正回転させ、かつ、第1切替機構210を第1伝達状態にする。これにより、
図8および
図9に破線の矢印で示すように、モータ110の駆動力が、第1ギヤ120、第2ギヤ130、第3ギヤ140、第1切替機構210、第4ギヤ150および第1本体ギヤ310を介してカムギヤ88に伝達され、カム86が第2方向D2に回転する。
【0087】
制御部500は、カム86を第1方向D1に回転させる場合には、モータ110を逆回転させ、かつ、第1切替機構210を第1伝達状態にする。これにより、
図8および
図9に実線の矢印で示すように、モータ110の駆動力が、第1ギヤ120、第2ギヤ130、第3ギヤ140、第1切替機構210、第4ギヤ150および第1本体ギヤ310を介してカムギヤ88に伝達され、カム86が第1方向D1に回転する。
【0088】
モータ110を逆回転させる場合、第2切替機構220は、第2切断状態となる。そのため、モータ110の駆動力は、第2本体ギヤ320には伝わらない。
【0089】
なお、制御部500は、カム86を回転させる場合、カム86が現在位置から目標位置まで回転する時間だけ、第1切替機構210を第1伝達状態にする。制御部500は、カム86を停止させる場合、第1切替機構210を第1切断状態にする。
【0090】
次に、印刷動作の一例について説明する。
例えば、カム86が
図7の第2位置に位置する状態において、ニップ圧を第1ニップ圧にして印刷を行う場合、制御部500は、モータ110を正回転させ、第1切替機構210を所定時間の間第1伝達状態とする。この際、第2切替機構220は、モータ110の正回転により第2伝達状態となる。第1切替機構210が所定時間の間第1伝達状態で、かつ、第2切替機構220が第2伝達状態であるときにモータ110が正回転すると、カム86が第2方向D2に回転して、第2位置から第1位置に移動し、かつ、加熱ローラ81が回転する。
【0091】
ここで、カム86を第2方向D2に回転させることは、印刷のためにニップ圧を高くする場合に行うことである。そのため、カム86が第2方向D2に回転するときには、通常、加熱ローラ81が回転している。
【0092】
第1ニップ圧での印刷が終了した後、制御部500は、モータ110を停止させる。その後、制御部500は、モータ110を逆回転させ、第1切替機構210を所定時間の間第1伝達状態とする。この際、第2切替機構220は、モータ110の逆回転により第2切断状態となる。第1切替機構210が第1伝達状態で、かつ、第2切替機構220が第2切断状態であるときにモータ110が逆回転すると、加熱ローラ81が停止した状態でカム86が第1方向D1に回転して、第1位置から第2位置に戻る。
【0093】
図9に示すように、カム86が第1方向D1に回転するときには、第1本体ギヤ310からカムギヤ88に装着方向の下流側、かつ、下に向かう力F1が加わる。この際、第2本体ギヤ320にはモータ110の駆動力が伝達されていない。そのため、カム86が第1方向D1に回転するときには、定着装置80に加わる力は、第1本体ギヤ310からの力F1だけとなる。
【0094】
カム86が第1方向D1に回転するときには、第1本体ギヤ310からカムギヤ88に伝わる力F1に起因した、第2基準部83Bを中心とする図示時計回りの第1モーメントM1が発生する。第1モーメントM1が発生すると、第1モーメントM1によって、第1基準部83Aは、基準面10Aに押し付けられる。これにより、定着装置80の位置決めが不安定になることが抑制される。
【0095】
カム86が第2方向D2に回転するとともに、加熱ローラ81が回転するときには、第1本体ギヤ310からカムギヤ88に対して、装着方向の上流側、かつ、下に向かう力F2が加わるとともに、第2本体ギヤ320から駆動ギヤ89に対して、装着方向の下流側、かつ、下に向かう力F3が加わる。そのため、カム86が第2方向D2に回転するときには、定着装置80には、第1本体ギヤ310からの力F2と、第2本体ギヤ320からの力F3が加わる。以下、第1本体ギヤ310からの力を「第1外力F2」ともいい、第2本体ギヤ320からの力を「第2外力F3」ともいう。
【0096】
定着装置80に第1外力F2および第2外力F3が加わると、定着装置80には、第1外力F2に起因した、第2基準部83Bを中心とする第2モーメントM2が発生するとともに、第2外力F3に起因した、第2基準部83Bを中心とする第3モーメントM3が発生する。
【0097】
第2モーメントM2は、第1モーメントM1とは逆方向のモーメントである。第3モーメントM3は、第2モーメントM2とは逆方向のモーメントである。
【0098】
第3モーメントM3が第2モーメントM2よりも大きい場合には、第1基準部83Aは、基準面10Aに押し付けられる。これにより、定着装置80の位置決めが不安定になることが抑制される。
【0099】
第2モーメントM2が第3モーメントM3より大きい場合、定着装置80は、第2基準部83Bを中心に図示反時計回りに回転しようとする。これにより、第1基準部83Aが基準面10Aから離れる方向に移動しようとするが、この移動は、取付バネ400によって止められる。
【0100】
ここで、仮に、第3モーメントM3の向きが第2モーメントM2と同じである場合には、定着装置80に対して図示反時計回りに加わるトータルのモーメントが大きくなる。この場合、取付バネ400のバネ荷重を大きくする必要がある。そして、バネ荷重の大きな取付バネ400を採用した場合、定着装置80の着脱作業に大きな力が必要になる。
【0101】
これに対し、本実施形態では、第3モーメントM3の向きを第2モーメントM2の向きと逆にしているので、取付バネ400のバネ荷重を小さくすることができ、その結果、定着装置80の着脱作業に必要な力を小さくできる。
【0102】
第2モーメントM2の大きさは、第1モーメントM1の大きさよりも小さい。詳しくは、
図5から
図7の順に示すように、カム86が第1方向D1に回転する場合には、カム86がバネ85の付勢力に抗してアーム84を押す必要があるため、第1本体ギヤ310からカムギヤ88に加わる第1外力も大きくなり、その結果、第1モーメントM1が大きくなる。逆に、
図7から
図5の順に示すように、カム86が第2方向D2に回転する場合には、カム86がアーム84を押さないので、第1本体ギヤ310からカムギヤ88に加わる第2外力も小さくなり、その結果、第2モーメントM2が小さくなる。
【0103】
以上、本実施形態によれば以下のような効果を得ることができる。
カム86を第1方向D1に回転させるときには、第1本体ギヤ310からカムギヤ88に伝わる力によって、第1基準部83Aが基準面10Aに押し付けられるので、第1基準部83Aが基準面10Aから離れることが抑制され、定着装置80の位置決めが不安定になるのを抑制できる。
【0104】
カム86を第1方向D1に回転させるとニップ圧が小さくなるように構成したので、ニップ圧を小さくする場合、つまり印刷時において、第1基準部83Aを基準面10Aに押し付けて、定着装置80の位置決めが不安定になるのを抑制できる。
【0105】
カム86が第2方向D2に回転するときには加熱ローラ81が回転しているので、定着装置80には第2モーメントM2と、第2モーメントM2とは逆方向の第3モーメントM3がかかる。そのため、第2モーメントM2によって第1基準部83Aが基準面10Aから離れようとするのを、第3モーメントM3で抑制することができるので、定着装置80の位置決めが不安定になるのを抑制できる。また、第3モーメントM3が第2モーメントM2を打ち消す方向に働くので、取付バネ400のバネ荷重を小さくすることができ、その結果、定着装置80の着脱作業に必要な力を小さくできる。
【0106】
第2モーメントM2の大きさが第1モーメントM1の大きさよりも小さいので、第3モーメントM3で第2モーメントM2を十分打ち消すことができる。
【0107】
1つのモータ110で、加熱ローラ81の回転とニップ圧の変更を行うことができるので、コストダウンを図ることができる。
【0108】
なお、本開示は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。
【0109】
加熱部材は、加熱ローラに限らず、例えば、セラミックヒータであってもよいし、ベルトと、ベルトの内周面に接触するニップ板と、ベルトおよびニップ板を加熱するヒータとを備える構成などであってもよい。
【0110】
ヒータは、ハロゲンランプ、発熱抵抗体などであってもよい。
【0111】
加圧部材は、加圧ローラに限らず、例えば、ベルトと、ベルトの内側に配置されるゴムパッドとを備える構成などであってもよい。
【0112】
バネは、引張コイルバネに限らず、線バネ、板バネなどであってもよい。
【0113】
第1基準部および第2基準部は、例えば、金属からなるシャフトであってもよいし、樹脂からなるフレームの一部として形成される突起であってもよい。
【0114】
基準面の位置は、第1基準部の下に限らず、第1基準部に対して、例えば、上、装着方向下流側または装着方向上流側であってもよい。
【0115】
第1方向は、第2位置から第1位置に向かう方向であってもよい。
【0116】
第2基準部は、なくてもよい。
【0117】
駆動ギヤは、加圧部材とともに回転するギヤであってもよい。例えば、駆動ギヤは、加圧ローラの一端部に固定されていてもよい。
【0118】
カムを回転させるためのモータと、加熱部材または加圧部材を回転させるためのモータを、別のモータとしてもよい。
【0119】
第1切替機構は、電磁クラッチに限らず、例えば、揺動ギヤを備えた機構であってもよい。
第2切替機構は、揺動ギヤを備えた機構に限らず、例えば、電磁クラッチであってもよい。
【0120】
取付バネは、トーションバネに限らず、線バネ、板バネなどであってもよい。
【0121】
締結部材は、ネジ、ボルトなどであってもよい。
【0122】
カムは、バネの付勢力に抗して加熱部材を移動させてもよい。
【0123】
アームは、なくてもよい。例えば、バネで加熱部材を直接付勢する場合、カムは加熱部材を直接押してもよい。
【0124】
前記した実施形態および変形例で説明した各要素を、任意に組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0125】
1 画像形成装置
10 本体筐体
10A 基準面
80 定着装置
81 加熱ローラ
81A ヒータ
82 加圧ローラ
83 フレーム
83A 第1基準部
85 バネ
86 カム
88 カムギヤ
310 第1本体ギヤ
NP ニップ部