(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147117
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】状況発信装置、状況発信システム、及び、状況発信方法
(51)【国際特許分類】
G01V 1/01 20240101AFI20241008BHJP
G08B 27/00 20060101ALI20241008BHJP
G08B 25/04 20060101ALI20241008BHJP
G08B 21/10 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
G01V1/00 D
G08B27/00 C
G08B25/04 K
G08B21/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059906
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100214260
【弁理士】
【氏名又は名称】相羽 昌孝
(74)【代理人】
【識別番号】100227455
【弁理士】
【氏名又は名称】莊司 英史
(72)【発明者】
【氏名】神原 浩
【テーマコード(参考)】
2G105
5C086
5C087
【Fターム(参考)】
2G105AA03
2G105BB01
2G105MM01
2G105MM02
2G105NN02
5C086AA13
5C086DA08
5C086FA02
5C086FA06
5C086FA18
5C087AA02
5C087AA03
5C087AA25
5C087AA32
5C087AA37
5C087AA51
5C087BB20
5C087BB73
5C087DD02
5C087EE05
5C087EE14
5C087FF01
5C087FF02
5C087FF16
5C087FF23
5C087GG08
5C087GG66
5C087GG67
5C087GG68
5C087GG82
(57)【要約】
【課題】 施設の利用者に対して適切に避難誘導することができる状況発信装置、状況発信システム、及び、状況発信方法を提供する。
【解決手段】 状況発信装置3は、地震による施設の各位置の揺れの大きさを推定する揺れ推定部311と、揺れ推定部が推定した揺れの大きさから各位置の危険度を評価する危険度評価部と、危険度評価部312が評価した危険度に基づいて各位置の利用者の避難の必要性を判定する状況判定部と、状況判定部の避難が必要であるという判定に基づいて利用者の避難経路を取得する避難経路決定部と、を備えることを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地震による施設の各位置の揺れの大きさを推定する揺れ推定部と、
前記揺れ推定部が推定した揺れの大きさから前記各位置の危険度を評価する危険度評価部と、
前記危険度評価部が評価した前記危険度に基づいて前記各位置に居る利用者の避難の必要性を判定する状況判定部と、
前記状況判定部の避難が必要であるという判定に基づいて前記利用者の避難経路を取得する避難経路決定部と、
を備える
ことを特徴とする状況発信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の状況発信装置と、
前記状況発信装置から取得した前記危険度、前記避難の必要性、又は、前記避難経路のうち、少なくとも1つを前記施設の利用者に伝える連絡装置と、
を備え、
前記連絡装置は、前記状況発信装置から取得した前記危険度が、前記連絡装置が存在する位置の実際の状況と異なる場合、前記危険度を修正して前記状況発信装置に修正した危険度を送信する評価修正部を有する
ことを特徴とする状況発信システム。
【請求項3】
請求項1に記載の状況発信装置と、
前記状況発信装置から取得した前記危険度、前記避難の必要性、又は、前記避難経路のうち、少なくとも1つを前記施設の利用者に伝える連絡装置と、
を備え、
前記連絡装置は、前記利用者の位置に近い他の利用者が使用する周囲の連絡装置のうち、誘導者として登録された連絡装置を特定する誘導者特定部を有する
ことを特徴とする状況発信システム。
【請求項4】
地震による施設の各位置の揺れの大きさを推定する揺れ推定部を有する状況発信装置と、
前記揺れ推定部が推定した揺れの大きさから前記各位置の危険度を評価する危険度評価部、前記危険度評価部が評価した前記危険度に基づいて前記各位置に居る利用者の避難の必要性を判定する状況判定部、及び、前記状況判定部の避難が必要であるという判定に基づいて前記利用者の避難経路を取得する避難経路決定部、を有する連絡装置と、
を備える
ことを特徴とする状況発信システム。
【請求項5】
地震情報を取得するステップと、
取得した前記地震情報から施設の各階の揺れの大きさを推定するステップと、
地震発生時の前記施設の各階の揺れの大きさに対する危険度を評価するステップと、
前記危険度に基づいて、各位置の利用者の状況を判定するステップと、
前記各位置の前記利用者が避難する必要が有るか否かを判定するステップと、
前記利用者の避難が必要であると判定した場合、前記利用者の避難経路を決定するステップと、
を有する
ことを特徴とする状況発信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震が発生した場合に、施設の利用者に状況を発信する状況発信装置、状況発信システム、及び、状況発信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、地震が発生した場合、大規模な施設は、地震及びその影響に関する情報を館内放送や電子掲示板によって利用者に伝える。利用者は、携帯電話や専用アプリで緊急地震速報等を受信することによっても地震の発生を認識する。地震発生後、施設の管理者等は、地震及びその影響に関する情報に基づいて、避難行動等の対応を利用者に伝える。
【0003】
しかしながら、高層建物は、階によって揺れの大きさが異なり、情報の捉え方が利用者の居場所によって異なるため、施設内で一斉に発信される館内放送等による地震情報は、地震後の適切な対応につながらない可能性がある。
【0004】
また、地震発生後の施設内の施設の利用者への避難の必要性は、構造健全性を評価するためのモニタリング装置が設置されている場合、その評価結果に基づいて伝えることができる。しかしながら、地震による施設の揺れの大きさから構造健全性を推定した場合、実際の被害状況と異なる可能性がある。
【0005】
さらに、大きな揺れを経験したことが少ない施設の利用者は、家具や什器が転倒しないレベルの揺れであっても建物が倒壊しないか不安となる。そのような施設の利用者は、避難をするために非常階段等に殺到して、転倒等の2次被害を受ける可能性がある。
【0006】
これに対して、長時間揺れる地震に対して、高精度に揺れの大きさや継続時間の目安を建物在館者に知らせる地震情報提供システムが開示されている(特許文献1参照)。特許文献1に記載された地震情報提供システムは、発生した地震に関する情報発信を建物在館者が存在する階数、区画に応じて行うことで、建物館内の人の心理的な不安を払拭したり、適切な対応を促す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】司・翠川(1999):断層タイプおよび地盤条件を考慮した最大加速度・最大速度の距離減衰式 日本建築学会構造系論文集, 523, 63-70
【非特許文献2】神原・林・田村(2004):アンケート調査に基づく建物の非構造部材被害と地震動強さとの関係,日本建築学会構造系論文集,No.578,pp.155-161
【非特許文献3】金子・神原・田村(2005):非構造部材の耐震実験結果に基づく耐震性能の整理,日本建築学会技術報告集,No.21,pp.39-44
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載された地震情報提供システムは、揺れの大きさ又は継続時間等をもとに、地震に関する情報及び注意喚起等を提供することに留まっている。そのため、地震発生時に建物在館者がどのような状況にあるかを把握するシステムにはなっていない。
【0010】
本発明は、地震発生時に、施設の利用者の所在位置、及び、所在位置の状況を把握した上で、施設の利用者に対して適切に知らせることができる状況発信装置、状況発信システム、及び、状況発信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明にかかる状況発信装置は、
地震による施設の各位置の揺れの大きさを推定する揺れ推定部と、
前記揺れ推定部が推定した揺れの大きさから前記各位置の危険度を評価する危険度評価部と、
前記危険度評価部が評価した危険度に基づいて前記各位置に居る利用者の避難の必要性を判定する状況判定部と、
前記状況判定部の避難が必要であるという判定に基づいて利用者の避難経路を取得する避難経路決定部と、
を備える
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかる状況発信装置、状況発信システム、及び、状況発信方法によれば、地震発生時に、施設の利用者の所在位置、及び、所在位置の状況を把握した上で、施設の利用者に対して適切に知らせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態の状況発信システムのイメージの一例を示す。
【
図2】本実施形態の状況発信装置の構成の一例を示す。
【
図3】本実施形態の危険度評価部が用いる揺れの大きさに対する家具及び什器の転倒可能性を示す。
【
図4】本実施形態の危険度評価部が用いる建物部材の耐震実験結果を示す。
【
図5】本実施形態の危険度評価部が用いる揺れの大きさに対する扉の開閉困難性を示す。
【
図6】本実施形態の状況判定部が判定する内容の一例を示す。
【
図7】本実施形態の避難経路決定部が決定した内容の一例を示す。
【
図8】本実施形態の状況発信方法のフローチャートの一例を示す。
【
図9】本実施形態の状況発信システムに用いられる連絡装置の構成の一例を示す。
【
図10】本実施形態の状況発信システムに用いられる連絡装置の表示画面の一例を示す。
【
図11】本実施形態の連絡装置が評価の修正を行う場合の一例を示す。
【
図12】本実施形態の連絡装置が誘導者を特定する場合の一例を示す。
【
図13】他の実施形態の状況発信システムに用いられる連絡装置の構成の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明を実施するための実施形態について説明する。以下では、本発明の目的を達成するための説明に必要な範囲を模式的に示し、本発明の該当部分の説明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する箇所については公知技術によるものとする。
【0015】
図1は、本実施形態の状況発信システム1のイメージの一例を示す。状況発信システム1は、情報を取得する情報取得部2と、情報取得部2が取得した情報に基づいて状況内容を発信する状況発信装置3と、状況発信装置3から取得した状況内容を施設10の利用者に伝える連絡装置4と、を備える。例えば、本実施形態の状況発信システム1は、4階の施設10において、1階のロビーを避難場所として設定している。なお、本実施形態の状況発信装置3は、1階に設置しているが、必ずしも1階に設置する必要はなく、2階以上に設置してもよい。
【0016】
本実施形態の情報取得部2は、緊急地震速報等の地震情報21を取得する。地震情報21は、インターネット等の有線又は無線のネットワーク等を介して受信すればよい。また、地震情報21は、地震発生時の揺れに対する加速度を計測する加速度センサ等から取得してもよい。例えば、施設10の振動の加速度等が予め定めた閾値を超過した場合に地震情報21を発信するようなセンサを用いてもよい。センサは、各階に少なくとも1つ設置することが好ましいが、全ての階に設置する必要はない。
【0017】
位置情報22は、利用者が存在する位置の情報である。位置情報22は、外部の機関が提供しているサービス又はビーコン等との通信を利用して連絡装置4等から取得し、状況発信装置3に送信すればよい。
【0018】
連絡装置4は、状況発信装置3と有線又は無線により接続され、地震による状況や避難経路等を表示すればよい。連絡装置4は、タブレット又はスマートフォン等の携帯端末、及び、コンピュータ等の情報機器でよい。連絡装置4は、施設の利用者のタブレット又はスマートフォン等の携帯端末も含む。
【0019】
ネットワーク5は、任意の通信規格に従って有線通信又は無線通信、あるいは、有線通信と無線通信の組合せにより構成される。具体的には、例えば、インターネット等の標準化された通信網、又はローカルネットワーク等の建物内で管理される通信網、あるいは、これらの通信網の組合せを利用することができる。また、無線通信の通信規格としては、典型的には国際規格が用いられる。国際規格の通信手段として、IEEE802.15.4、IEEE802.15.1、IEEE802.15.11a、11b、11g、11n、11ac、11ad、ISO/IEC14513-3-10、IEEE802.15.4g等の方式がある。また、Bluetooth(登録商標)、BluetoothLowEnergy、Wi-Fi、ZigBee(登録商標)、Sub-GHz、EnOcean(登録商標)、LTE等の方式を用いることもできる。
【0020】
図2は、本実施形態の状況発信装置3の構成の一例を示す。状況発信装置3は、汎用又は専用のコンピュータにより構成される。コンピュータは、例えば、据置型コンピュータや携帯型コンピュータで構成され、任意の形態の電子機器である。コンピュータは、クライアント型コンピュータでもよいし、サーバ型コンピュータやクラウド型コンピュータでもよいし、例えば、制御盤、コントローラ(マイコン、プログラマブルロジックコントローラ、シーケンサを含む)等と呼ばれる組込型コンピュータでもよい。
【0021】
本実施形態の状況発信装置3は、情報取得部2から取得した情報等に基づいて状況内容を算出する状況制御部31と、地震情報21等の入力に基づいて状況内容を算出するためのデータを管理するデータ管理プログラム321、並びに、ユーザ情報、地図、平面図、避難場所、部屋の位置、仕様等の施設10の情報、及び、地震情報21で想定される状況等の設定情報322を記憶する状況記憶部32と、情報取得部2又は連絡装置4と通信する状況通信部33と、プログラム又は各種情報等をユーザが入力可能な状況入力部34と、各種情報等を表示画面又は音声を介して出力する状況出力部35と、を有する。
【0022】
状況制御部31は、プロセッサであって、1つ又は複数の演算処理装置(CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphics Processing Unit)、NPU(Neural Processing Unit)等)で構成される。
【0023】
状況制御部31は、地震による各位置の揺れの大きさを推定する揺れ推定部311、揺れ推定部311が推定した揺れの大きさから施設10の各位置の危険度を評価する危険度評価部312、危険度評価部312が評価した危険度に基づいて各位置に居る利用者の避難の必要性を判定する状況判定部313、及び、状況判定部313の避難が必要であるという判定に基づいて利用者の避難経路を取得する避難経路決定部314を有する。
【0024】
揺れ推定部311は、情報取得部2から取得した地震情報21及び状況記憶部32に記憶された施設10の設定情報322を用いて、データ管理プログラム321によって施設10の各位置の揺れの大きさを推定する。例えば、地震情報21は、震源地、マグニチュード、又は、震度等のうち少なくとも1つでよい。また、揺れの大きさを推定する際に用いられる施設10の設定情報322は、施設10の地図及び仕様等でよい。データ管理プログラム321は、地震情報21及び設定情報322から施設10の各位置の揺れの大きさを求める演算式又はマップ等を記憶している。揺れの大きさは、加速度又は予め定めた独自の指標等でよい。
【0025】
例えば、本実施形態の揺れ推定部311は、震源の情報から以下の式(1)で示す距離減衰式を用いて施設10が建つ位置の地盤の揺れを求める。
【数1】
ここで、
Aは最大振幅(加速度:地盤上で岩盤上の1.4倍程度、速度:平均S波速度600m/s程度)水平2成分の最大値、
Mwはモーメントマグニチュード、
Xは断層最短距離[km]、
Dは震源深さ[km]、
Sは断層タイプ、
εは標準偏差、
である。
【0026】
また、拘束条件を与えた場合の係数の値は、非特許文献1に記載された以下の表1を用いればよい。
【表1】
【0027】
次に、揺れ推定部311は、地盤の揺れから応答倍率を用いて各階の揺れの大きさを求める。各階の揺れの大きさRiは、式(1)で推定した地盤の揺れAに対して以下の式(2)のように表すことができる。
【数2】
ただし、
iは階数、
Riは各階の揺れの大きさ、
kiは入力地震動の大きさと各階の最大応答との比、
を示す。
また、kiは予め設計図書に基づいた地震応答解析から定めておけばよい。
【0028】
危険度評価部312は、揺れ推定部311が推定した揺れの大きさ及び状況記憶部32に記憶された施設10の設定情報322を用いて、データ管理プログラム321によって施設10の各位置又は各部屋の危険度を評価する。危険度の評価に用いられる施設10の設定情報322は、施設10の各位置又は部屋の仕様及び家具の数や配置等でよい。データ管理プログラム321は、揺れの大きさ及び設定情報322から施設10の各位置の危険度を評価する演算式又はマップ等を記憶している。危険度は、予め定めた独自の指標等でよい。例えば、揺れの大きさの加速度が家具の移動限界加速度よりも大きい場合には危険度が高いと評価し、揺れの大きさの加速度が家具の移動限界加速度よりも小さい場合には危険度が低いと評価すればよい。危険度は、数値化して示してもよい。
【0029】
例えば、本実施形態の危険度評価部312は、それぞれ揺れの大きさに対応した、家具及び什器の転倒可能性、間仕切りの損傷度、及び、扉の損傷度のうち、少なくとも1つを指標とする。危険度評価部312は、これらの指標に限らず、他の指標を用いてもよく、予め定めた条件に応じて危険度を評価する。複数の指標を用いる場合は、人への影響が大きいと思われる指標を適宜選択すればよい。
【0030】
図3は、本実施形態の危険度評価部312が用いる揺れの大きさに対する家具及び什器の転倒可能性を示す。家具及び什器の転倒可能性は、
図3に示す非特許文献2に記載されたグラフを参考に用いればよい。
図3に示すグラフは、計測震度に対する家具転倒の被害率を示しており、計測震度が5以上の場合に被害率が上昇することがわかる。したがって、本実施形態の危険度評価部312は、閾値を計測震度が5の場合の揺れの大きさに設定し、計測震度5以上で高危険度、計測震度5未満で低危険度に評価すればよい。また、危険度を数値化する場合は、例えば、
図3に示すグラフの被害率にあわせて、計測震度が5未満の場合に危険度0、計測震度が5以上5.5未満の場合に危険度1、計測震度が5.5以上5.7未満の場合に危険度2、計測震度5.7以上の場合に危険度3等に評価すればよい。そして、高危険度の場合又は危険度1以上の場合、危険度評価部312は、家具及び什器が転倒する可能性があると評価する。なお、計測震度と危険度の関係は、使用者が適宜決定してもよい。
【0031】
図4は、本実施形態の危険度評価部312が用いる建物部材の耐震実験結果を示す。危険度評価部312は、危険度を評価する際に、
図4に示す非特許文献3に記載された表を参考に用いればよい。例えば、施設10の種類及び仕様によって振り分けし、加力実験した結果の層間変形角が、予め定めた閾値より大きい場合に危険度が高いと評価し、予め定めた閾値より小さい場合に危険度が低いと評価する。軽量鉄骨の下地がフレキシブルボードの乾式間仕切壁の場合、ビスめり込みが生じる層間変形角1/40以上を高危険度、1/40未満を低危険度に設定すればよい。また、危険度を数値化する場合は例えば、軽量鉄骨の下地がフレキシブルボードの乾式間仕切壁の場合、隅部ひび割れが生じる層間変形角1/170迄を危険度0、層間変形角1/170から銅線チャネルの開きが生じる層間変形角1/125迄を危険度1、層間変形角1/125からビスめり込みが生じる1/40迄を危険度2等に設定すればよい。そして、高危険度の場合又は危険度1以上の場合、危険度評価部312は、間仕切が損傷する可能性があると評価する。なお、層間変形角と危険度の関係は、使用者が適宜決定してもよい。
【0032】
図5は、本実施形態の危険度評価部312が用いる揺れの大きさに対する扉の開閉困難性を示す。扉の開閉困難性は、
図5に示す非特許文献2に記載されたグラフを参考に用いればよい。
図5に示すグラフは、計測震度に対する扉開閉困難の被害率を示しており、計測震度が5以上の場合に被害率が上昇することがわかる。したがって、本実施形態の危険度評価部312は、閾値を計測震度が5の場合の揺れの大きさに設定し、計測震度5以上で高危険度、計測震度5未満で低危険度に評価すればよい。また、危険度を数値化する場合は、例えば、
図3に示すグラフの被害率にあわせて、計測震度が5の場合に危険度1、計測震度が5.5の場合に危険度2、計測震度5.7の場合に危険度3等に評価すればよい。そして、高危険度の場合又は危険度1以上の場合、危険度評価部312は、扉が損傷する可能性があると評価する。なお、計測震度と危険度の関係は、使用者が適宜決定してもよい。
【0033】
状況判定部313は、予測震度と危険度評価部312が評価した危険度等に基づいて、各位置の施設の利用者の状況を判定する。状況判定部313は、危険度評価部312が評価した危険度が高い場合、状況を判定し、施設の利用者に情報を提供する。また、危険度評価部312が評価した危険度が数値化されている場合には、危険度の数値に応じて、状況判定部313は、施設の利用者に情報を提供する。提供する情報の内容は、施設の利用者の存在する位置の揺れの大きさ、揺れの影響、及び、注意喚起のうち少なくとも1つでよい。
【0034】
図6は、本実施形態の状況判定部313が判定する内容の一例を示す。状況判定部313は、例えば
図6に示す表等を参考に用いればよい。
図6に示す表は、揺れ推定部311が推定した予測震度と危険度評価部312が評価した室内の危険度に対して施設の利用者に伝える情報の内容を示す。
図6に示す例では、情報の内容は、揺れの大きさ、揺れの影響、及び、注意喚起である。
【0035】
例えば、施設の利用者の存在する位置において、揺れ推定部311が推定した予測震度が5+の場合、状況判定部313は、揺れの大きさを「やや大きい」又は「震度5以上」と判定し、揺れの影響を「立っていられない」と判定し、「安全な場所に移動」、「安全な姿勢」、又は、「まもなく揺れが大きくなります」のうち、少なくとも1つの注意喚起をする。また、危険度評価部312が評価した室内の危険度が「扉損傷可能性あり」と評価した場合、揺れの影響として「扉が開かなくなる可能性あり」と判定し、「近くに出口があれば扉を開けてください」と注意喚起をする。
【0036】
避難経路決定部314は、状況判定部313が判定した結果に基づいて、設定情報322に記憶された施設10の地図又は平面図等を用いて施設の利用者を誘導する避難経路等を算出する。避難経路は、施設の利用者の位置に応じて算出する。例えば、避難経路決定部314は、施設の利用者の現在位置から安全な場所又は避難階段等までの道順を求めればよい。
【0037】
図7は、本実施形態の避難経路決定部314が決定した内容の一例を示す。施設の利用者は、状況発信装置3から連絡装置4としての携帯端末に、
図7に示すような地図が通信される。施設の利用者は、現在地を確認し、部屋3が危険であると認識することができる。また、施設の利用者は、
図6に示したような状況判定部313が判定した状況を受け取ることもできる。状況判定部313によって現在地が危険であると判定された場合、
図7に示す破線の矢印のように避難経路が示される。施設の利用者は避難経路に沿って避難すればよい。なお、安全な部屋4、部屋6又はエレベーターホールに避難してもよい。
【0038】
本実施形態の状況記憶部32は、地震情報21に基づいて状況内容を算出するデータ管理プログラム321及び施設10の地図、各部屋内の家具の数等の設定情報322等を記憶し、例えば、メインメモリとして機能する揮発性メモリ(DRAM、SRAM等)と、不揮発性メモリ(ROM)、フラッシュメモリ等と、HDD、SSD等のストレージ装置と、で構成される。また、状況記憶部32は、一時的にユーザ情報を記憶してもよい。ユーザ情報は、端末等の連絡装置4の接続数、属性、接続位置等でよい。
【0039】
本実施形態の状況通信部33は、インターネットやイントラネット等のネットワーク5に、有線又は無線により接続され、所定の通信規格に従って他のコンピュータとの間でデータの送受信を行う。本実施形態の状況入力部34は、例えば、キーボード、マウス、テンキー、電子ペン等で構成される入力デバイスでよい。状況入力部34からは、施設10の設定情報322等を入力する。本実施形態の状況出力部35は、例えば、音(音声)出力装置、バイブレーション装置等で構成される出力デバイスでよい。
【0040】
このような状況発信装置3、及び、状況発信システム1によれば、地震発生時に、利用者が存在する場所に応じて施設10の状況を適切に発信することができる。また、避難経路決定部314が施設の利用者の現在位置から安全な場所又は避難階段等までの避難経路を発信するので、施設の利用者が容易に安全な場所に移動することができる。
【0041】
次に、本実施形態の状況発信方法を説明する。
【0042】
図8は、本実施形態の状況発信方法のフローチャートの一例を示す。本実施形態の状況発進方法の説明で用いる施設10のフロアは、
図7に示すように、6つの部屋、エレベーターホール、トイレ、及び、階段等を有する。避難誘導は、各部屋から1階のロビーを避難場所として避難する場合で説明する。
【0043】
本実施形態の状況発信方法は、まず、ステップ1で、状況制御部31の揺れ推定部311が状況通信部33を介して地震情報21を取得する(ST1)。取得した地震情報21は、状況記憶部32に記憶する。
【0044】
続いて、ステップ2で、揺れ推定部311は、取得した地震情報21から各階の揺れの大きさを推定する(ST2)。各階の揺れの大きさは、例えば、式(1)及び式(2)から推定すればよい。
【0045】
次に、ステップ3で、危険度評価部312が、地震発生時の施設10の各階の揺れに対する危険度を評価する(ST3)。危険度の評価は、例えば、
図3乃至
図5に示したような指標を用いればよい。
【0046】
次に、ステップ4で、状況判定部313は、予測震度と危険度評価部312が評価した危険度等に基づいて、各位置の施設の利用者の状況を判定する(ST4)。状況判定部313は、
図6に示すように、危険度評価部312が評価した危険度に応じて、状況を判定する。
【0047】
続いて、ステップ5で、状況判定部313は、各部屋の施設の利用者が避難する必要が有るか否かを判定する(ST5)。ステップ5において、利用者に避難が必要であると判定した場合、ステップ6で、避難経路決定部314は、利用者の避難経路を決定する(ST6)。例えば、避難経路決定部314は、
図7に示すように、フロアの地図に避難経路を示せばよい。なお、注意喚起と共に避難経路を示してもよい。ステップ5において、利用者に避難が必要ないと判定した場合、ステップ7で、避難経路決定部314は、利用者に注意喚起する(ST7)。注意喚起は、
図6に示した情報の内容でよい。避難経路及び注意喚起は、連絡装置4に出力させてよい。
【0048】
このような状況発信方法によれば、地震発生時に、利用者が存在する場所に応じて施設10の状況を適切に発信することができる。また、施設の利用者の現在位置から安全な場所又は避難階段等までの避難経路を発信するので、施設の利用者が容易に安全な場所に移動することができる。
【0049】
次に、本実施形態の状況発信システム1の拡張性について説明する。本実施形態の状況発信システム1は、連絡装置4が危険度評価の修正又は施設10を日常的に利用している誘導者の特定のうち、少なくとも1つを行うことが可能である。
【0050】
図9は、本実施形態の状況発信システム1に用いられる連絡装置4の構成の一例を示す。
図9に示す連絡装置4は、状況発信装置3と有線又は無線により接続され、少なくとも状況判定部313が判定した結果や避難経路決定部314が算出した避難経路等を表示する。連絡装置4は、タブレット又はスマートフォン等の携帯端末、及び、コンピュータ等の情報機器でよい。連絡装置4は、施設の利用者のタブレット又はスマートフォン等の携帯端末も含む。
【0051】
本実施形態の連絡装置4は、状況発信装置3から取得した情報等に基づいて状況内容を算出する連絡制御部41と、地震情報21等の入力に基づいて状況内容を算出するためのデータ管理プログラム421、並びに、ユーザ情報、地図、平面図、避難場所、部屋の位置、仕様等の施設10の情報、及び、地震情報21で想定される状況等の設定情報422を記憶する連絡記憶部42と、状況発信装置3と通信する連絡通信部43と、プログラム又は各種情報等をユーザが入力可能な連絡入力部44と、各種情報等を表示画面又は音声を介して出力する連絡出力部45と、を有する。
【0052】
連絡制御部41は、プロセッサであって、1つ又は複数の演算処理装置(CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphics Processing Unit)、NPU(Neural Processing Unit)等)で構成される。
【0053】
連絡制御部41は、危険度評価部312が評価した危険度に基づいた情報を連絡装置4が存在する位置の状況にあわせて修正する評価修正部411、及び、利用者の位置に近い他の連絡装置4のうち、施設10を日常的に利用し、誘導者として連絡記憶部42に登録されている誘導者の連絡装置4を特定する誘導者特定部412、の少なくとも1つを有する。
【0054】
評価修正部411は、状況発信装置3が連絡装置4に出力した情報内容が、連絡装置4が存在する位置の実際の状況と異なる場合、情報内容を修正して状況発信装置3に修正した情報内容を送信する。状況発信装置3は、修正した情報内容を他の連絡装置4に発信する。情報内容を修正した場合、連絡装置4は、修正された情報内容に応じた避難経路及び注意喚起を出力すればよい。
【0055】
例えば、状況発信装置3が連絡装置4に危険であるという情報内容を送信したが、利用者が実際の状況は危険でないと認識した場合、評価修正部411は、状況発信装置3へ安全であるという修正した情報内容を送信すればよい。また、状況発信装置3が連絡装置4に安全であるという情報内容を送信したが、利用者が実際の状況は安全でないと認識した場合、評価修正部411は、状況発信装置3へ危険であるという修正した情報内容を送信すればよい。
【0056】
図10は、本実施形態の状況発信システム1に用いられる連絡装置4の表示画面の一例を示す。
【0057】
誘導者特定部412は、利用者の位置に近い他の利用者が使用する周囲の連絡装置4aのうち、施設10を日常的に利用しており、避難路に詳しく、誘導が可能な誘導者の連絡装置4bを特定する。例えば、利用者の連絡装置4は、連絡通信部43によって、同じ部屋又は隣の部屋に居る利用者が使用する周囲の連絡装置4aを特定し、周囲の連絡装置4aの設定情報422aから施設10を日常的に利用している誘導者の連絡装置4bを取得する。利用者の連絡装置4による周囲の連絡装置4aの特定は、Bluetooth(登録商標)又はWi-Fi等の無線通信によって行われればよい。なお、誘導者は、予め誘導者であることを連絡入力部44から入力しておき、誘導者の連絡装置4bの設定情報422bに記憶させておくとよい。利用者の連絡装置4の連絡通信部43から誘導者を探している情報が届いた場合、誘導者の連絡装置4bは、利用者の連絡装置4に誘導者の位置と誘導者である情報を送信する。
【0058】
図10に示すように、誘導者特定部412は、誘導者の連絡装置4bを特定した場合、表示画面等の連絡出力部45に対して、自分の連絡装置4の近くに誘導者有と表示させ、誘導者の連絡装置4bの近くに誘導者と表示させる。その結果、利用者は誘導者と一緒に避難することができる。
【0059】
このような状況発信システム1によれば、施設の利用者が誘導者を特定でき、誘導者が施設の利用者を適切に誘導して避難するので、施設の利用者がより安全に避難することができる。
【0060】
本実施形態の連絡記憶部42は、状況発信装置3から取得した避難判定に基づいて状況内容を算出するデータ管理プログラム421及び施設10の地図、各部屋内の家具の数等の設定情報422等を記憶し、例えば、メインメモリとして機能する揮発性メモリ(DRAM、SRAM等)と、不揮発性メモリ(ROM)、フラッシュメモリ等と、HDD、SSD等のストレージ装置と、で構成される。また、連絡記憶部42は、属性や接続位置等のユーザ情報を記憶してもよい。
【0061】
本実施形態の連絡通信部43は、インターネットやイントラネット等のネットワーク5に、有線又は無線により接続され、所定の通信規格に従って他のコンピュータとの間でデータの送受信を行う。本実施形態の連絡入力部44は、例えば、タッチ画面、キーボード、マウス、テンキー、電子ペン等で構成される入力デバイスでよい。連絡入力部44からは、施設10の設定情報422等を入力する。本実施形態の連絡出力部45は、例えば、施設10の地図や平面図等の画像を表示するディスプレイ、音(音声)出力装置、バイブレーション装置等で構成される出力デバイスでよい。
【0062】
図11は、本実施形態の連絡装置4が評価の修正を行う場合の一例を示す。
【0063】
図11に示す例では、
図8に示したフローチャートの後に、ステップ11で、連絡装置4が実際の状況と状況発信装置3からの状況とが異なるか否かを判定する(ST11)。連絡装置4は、連絡装置4に内蔵された加速度センサの検出値、部屋の状況を撮影した映像、利用者の入力信号等から実際の状況を認識すればよい。
【0064】
ステップ11において、連絡装置4は、状況発信システム1の状況発信装置3が連絡装置4に出力した情報内容が、連絡装置4が存在する位置の実際の状況と異なる場合、ステップ12で、情報内容を修正して状況発信装置3へ送信する(ST12)。また、情報内容を修正した場合、連絡装置4は、修正された情報内容に応じた避難経路及び注意喚起を出力すればよい。ステップ11において、連絡装置4は、状況発信システム1の状況発信装置3が連絡装置4に出力した情報内容が、連絡装置4が存在する位置の実際の状況と同じ場合、制御を終了する。
【0065】
例えば、状況発信装置3が連絡装置4に危険であるという情報内容を送信したが、利用者が実際の状況は危険でないと認識した場合、連絡装置4から状況発信装置3に安全であるという修正した情報内容を送信すればよい。また、状況発信装置3が連絡装置4に安全であるという情報内容を送信したが、利用者が実際の状況は安全でないと認識した場合、連絡装置4から状況発信装置3に危険であるという修正した情報内容を送信すればよい。
【0066】
このような状況発信方法によれば、利用者の実際の状況を適切に認識することができ、より適切な施設10の状況を発信することができる。
【0067】
図12は、本実施形態の連絡装置4が誘導者を特定する場合の一例を示す。
【0068】
まず、ステップ21で、連絡装置4の誘導者特定部412は、隣接する連絡装置4aの中に誘導者が存在するか否かを判定する(ST21)。誘導者は、予め誘導者であることを連絡入力部44から入力しておき、誘導者の連絡装置4bの設定情報422bに記憶させておく。利用者の連絡装置4の連絡通信部43から誘導者を探している情報が届いた場合、誘導者の連絡装置4bは、利用者の連絡装置4に利用者の位置と誘導者である情報を送信する。
【0069】
ステップ21において、連絡装置4の誘導者特定部412は、隣接する連絡装置4aの中に誘導者が存在すると判定した場合、ステップ22で、誘導者の連絡装置4bを特定し、表示画面等の連絡出力部45に対して、誘導者の連絡装置4bの近くに誘導者と表示させる(ST22)。その結果、利用者は誘導者と一緒に避難することができる。ステップ21において、連絡装置4の誘導者特定部412は、隣接する連絡装置4aの中に誘導者が存在しないと判定した場合、制御を終了する。
【0070】
このような状況発信方法によれば、施設の利用者が誘導者を特定でき、誘導者が施設の利用者を適切に誘導して避難するので、施設の利用者がより安全に避難することができる。
【0071】
次に、他の実施形態の状況発信システム1について説明する。他の実施形態の状況発信システム1は、連絡装置4が危険度の評価、状況の判定、避難経路の決定等を行うことが可能である。
【0072】
図13は、他の実施形態の状況発信システム1に用いられる連絡装置4の構成の一例を示す。
図13に示す連絡装置4は、状況発信装置3と有線又は無線により接続される。連絡装置4は、タブレット又はスマートフォン等の携帯端末、及び、コンピュータ等の情報機器でよい。連絡装置4は、施設の利用者のタブレット又はスマートフォン等の携帯端末も含む。
【0073】
連絡制御部41は、状況発信装置3の揺れ推定部311が推定した揺れの大きさから施設10の各位置の危険度を評価する危険度評価部413、危険度評価部413が評価した危険度に基づいて各位置に居る利用者の避難の必要性を判定する状況判定部414、状況判定部414の避難が必要であるという判定に基づいて利用者の避難経路を取得する避難経路決定部415、危険度評価部413が評価した危険度に基づいた情報を連絡装置4が存在する位置の状況にあわせて修正する評価修正部411、及び、利用者の位置に近い他の連絡装置4のうち、施設10を日常的に利用している利用者の連絡装置4を選定する誘導者特定部412、を有する。
【0074】
危険度評価部413、状況判定部414、及び、避難経路決定部415は、
図2に示した状況発信装置3の状況制御部31が有する危険度評価部312、状況判定部313、及び、避難経路決定部314と同様の構成でよいので、説明は省略する。また、その他の構成は、
図9に示した連絡装置4と同様の構成なので、説明は省略する。
【0075】
このような状況発信システム1によれば、地震発生時に、利用者が存在する場所に応じて施設10の状況を適切に発信することができる。また、避難経路決定部415が施設の利用者の現在位置から安全な場所又は避難階段等までの避難経路を発信するので、施設の利用者が容易に安全な場所に移動することができる。さらに、評価修正部411が、利用者の実際の状況を適切に認識し修正するので、より適切な施設10の状況を発信することができる。また、誘導者特定部412が、施設の利用者が誘導者を特定するので、誘導者が施設の利用者を適切に誘導して避難するので、施設の利用者がより安全に避難することができる。
【0076】
以上、本実施形態の状況発信装置3は、地震による施設10の各位置の揺れの大きさを推定する揺れ推定部311と、揺れ推定部311が推定した揺れの大きさから各位置の危険度を評価する危険度評価部312と、危険度評価部312が評価した危険度に基づいて各位置の利用者の避難の必要性を判定する状況判定部313と、状況判定部313の避難が必要であるという判定に基づいて利用者の避難経路を取得する避難経路決定部314と、を備える。したがって、本実施形態の状況発信装置3によれば、施設の利用者に対して適切に避難誘導することができる。
【0077】
また、本実施形態の状況発信システム1は、前記状況発信装置3と、状況発信装置3から取得した危険度、避難の必要性、又は、避難経路のうち、少なくとも1つを施設10の利用者に伝える連絡装置4と、を備え、連絡装置4は、状況発信装置3から取得した危険度が、連絡装置4が存在する位置の実際の状況と異なる場合、危険度を修正して状況発信装置3に修正した危険度を送信する評価修正部411を有する。したがって、本実施形態の状況発信システム1によれば、施設の利用者に対してより適切に避難誘導することができる。
【0078】
また、本実施形態の状況発信システム1は、前記状況発信装置3と、状況発信装置3から取得した危険度、避難の必要性、又は、避難経路のうち、少なくとも1つを施設10の利用者に伝える連絡装置4と、を備え、連絡装置4は、利用者の位置に近い他の利用者が使用する周囲の連絡装置4aのうち、誘導者として登録された連絡装置4bを特定する誘導者特定部412を有する。したがって、本実施形態の状況発信システム1によれば、施設の利用者が誘導者を特定でき、誘導者が施設の利用者を適切に誘導して避難するので、施設の利用者がより安全に避難することができる。
【0079】
なお、本発明は上述した実施形態に制約されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。そして、それらはすべて、本発明の技術思想に含まれるものである。
【0080】
上記実施形態では、各実施形態の状況発信システム1及び状況発信装置3が有する特徴をそれぞれ説明したが、各実施形態の特徴を適宜組み合わせてもよく、例えば、任意の2つ以上を適宜組み合わせてもよいし、全てを組み合わせてもよい。
【0081】
上記実施形態では、状況発信システム1が備える各部の機能は、1つの装置で実現されるものとして説明したが、各部の機能が複数の装置に分散されることで複数の装置で実現されてもよい。
【符号の説明】
【0082】
1…状況発信システム、
2…情報取得部、21…地震情報、22…位置情報、
3…状況発信装置、311…揺れ推定部、312…危険度評価部、313…状況判定部、314…避難経路決定部、
4…連絡装置、411…評価修正部、412…誘導者特定部、
5…ネットワーク、10…施設