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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147119
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】ステアリングホイール
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/10 20060101AFI20241008BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20241008BHJP
   B60R 21/203 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B62D1/10
F16F15/02 C
B60R21/203
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059908
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004152
【氏名又は名称】弁理士法人お茶の水内外特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100187193
【弁理士】
【氏名又は名称】林 司
(74)【代理人】
【識別番号】100181766
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 均
(72)【発明者】
【氏名】藤森 健志
【テーマコード(参考)】
3D030
3D054
3J048
【Fターム(参考)】
3D030DB07
3D030DB62
3D030DB77
3D054AA02
3D054AA13
3D054BB01
3J048AD07
3J048BC02
3J048BF04
3J048EA22
(57)【要約】
【課題】質量体の重さの影響を受け難くして、ダイナミックダンパーの性能を適切に発揮させることが可能なステアリングホイールを提供する。
【解決手段】本発明のステアリングホイール(1)は、ステアリングホイール本体(10)と、ステアリングホイール本体(10)にダンパー部(30,30a,30b)を介して取り付けられるモジュール部とを有し、ダンパー部(30,30a,30b)は、ステアリングホイール本体(10)又はモジュール部に保持されるダンパー軸部(32)と、ダンパー軸部(32)の外周部に配される筒状の弾性体(40,40a,40b)とを有し、弾性体(40,40a,40b)は、ダンパー軸部(32)の軸方向に直交する直交断面を見たときに、弾性体(40,40a,40b)の厚さ寸法が互いに異なる部分を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングホイール本体と、前記ステアリングホイール本体にダンパー部を介して取り付けられるモジュール部とを有するステアリングホイールであって、
前記ダンパー部は、前記ステアリングホイール本体又は前記モジュール部に保持されるダンパー軸部と、前記ダンパー軸部を囲むように前記ダンパー軸部の外周部に配される筒状の弾性体とを有し、
前記弾性体は、前記ダンパー軸部の軸方向に直交する直交断面を見たときに、前記弾性体の内周縁及び外周縁間の厚さ寸法が互いに異なる部分を有する
ことを特徴とするステアリングホイール。
【請求項2】
前記直交断面を見たときに、前記弾性体は、前記モジュール部の重量を最も大きく受ける部分を含むモジュール支持部を有し、前記モジュール支持部は、前記弾性体の前記モジュール支持部以外の部分よりも大きな厚さ寸法で形成される部分を有する
請求項1記載のステアリングホイール。
【請求項3】
前記直交断面を見たときに、前記弾性体における鉛直方向の上側に配される上端部、及び/又は鉛直方向の下側に配される下端部が、左右の側縁部よりも大きな厚さ寸法で形成されている
請求項1記載のステアリングホイール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用のステアリングホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
特開平4-262965号公報(特許文献1)に記載されているステアリングホイールでは、ステアリングホイールのステアリングホイール本体に、ホーンパッドが質量体として弾性体を介して取り付けられることにより、ダイナミックダンパーが形成されている。このようなダイナミックダンパーでは、例えば自動車走行時にエンジンの振動や路面から受ける振動等が車体に加えられても、質量体の重量と弾性体の弾性による共振現象を利用することにより、ステアリングホイールに伝わる振動を減衰させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4-262965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、ステアリングホイールに形成されるダイナミックダンパーの質量体として、エアバッグ装置が設置されたエアバッグモジュールが多く用いられてきている。このようなエアバッグモジュールやホーンパッド等により形成されるダイナミックダンパーの質量体は、鉛直方向に対し、斜め上向きに傾いた姿勢でステアリングホイール本体に固定されることが多い。
【0005】
しかし、このようにダイナミックダンパーの質量体が、斜め上向きの姿勢でステアリングホイール本体に弾性体を介して取り付けられていると、弾性体の一部分に質量体の重さが集中し易くなり、ダイナミックダンパーの性能が、質量体の部分的な重さの集中による影響を受ける可能性が懸念されてきている。
【0006】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、質量体の重さの集中による影響を受け難くして、ダイナミックダンパーの性能を適切に発揮させることが可能なステアリングホイールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明により提供されるステアリングホイールは、ステアリングホイール本体と、前記ステアリングホイール本体にダンパー部を介して取り付けられるモジュール部とを有するステアリングホイールであって、前記ダンパー部は、前記ステアリングホイール本体又は前記モジュール部に保持されるダンパー軸部と、前記ダンパー軸部を囲むように前記ダンパー軸部の外周部に配される筒状の弾性体とを有し、前記弾性体は、前記ダンパー軸部の軸方向に直交する直交断面を見たときに、前記弾性体の内周縁及び外周縁間の厚さ寸法が互いに異なる部分を有するステアリングホイールである。
【0008】
本発明のステアリングホイールにおいて、前記直交断面を見たときに、前記弾性体は、前記モジュール部の重量を最も大きく受ける部分を含むモジュール支持部を有し、前記モジュール支持部は、前記弾性体の前記モジュール支持部以外の部分よりも大きな厚さ寸法で形成される部分を有することが好ましい。
【0009】
また、前記直交断面を見たときに、前記弾性体における鉛直方向の上側に配される上端部、及び/又は鉛直方向の下側に配される下端部が、左右の側縁部よりも大きな厚さ寸法で形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のステアリングホイールによれば、質量体の重さの集中による影響を受け難くして、ダイナミックダンパーの性能を適切に安定して発揮させることができるため、ステアリングホイールに伝わる振動をダイナミックダンパーによって減衰させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例に係るステアリングホイールのステアリングホイール本体を模式的に示す正面図である。
図2図1に示したステアリングホイール本体に取り付けられるダンパー部を模式的に示す斜視図である。
図3図2に示したダンパー部の軸方向に沿った断面を模式的に示す断面図である。
図4図3に示したIV-IV線におけるダンパー部の一部の断面を模式的に示す断面図である。
図5】本発明の第1変形例に係るダンパー部の一部の断面を模式的に示す断面図である。
図6】本発明の第2変形例に係るダンパー部の一部の断面を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施の形態について、実施例を挙げて図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施例に係るステアリングホイールのステアリングホイール本体を模式的に示す正面図である。図2は、図1に示したステアリングホイール本体に取り付けられるダンパー部を模式的に示す斜視図であり、図3は、本実施例のダンパー部の軸方向に沿うとともに上下方向に直交する断面を模式的に示す断面図である。
【0013】
なお、以下の説明において、上下方向及び左右方向とは、ステアリングホイールが装着されるステアリングシャフトの軸方向に直交する方向で、且つ、ステアリングホイールをニュートラル位置の状態で運転者側から見たときの同ステアリングホイールにおける上下方向(図1の紙面においてリム部の位置を時計の文字盤で例えたときのリム部の12時の位置と6時の位置を結ぶ方向)及び左右方向(図1の紙面においてリム部の9時の位置と3時の位置を結ぶ方向)を言う。また、前後方向は、ステアリングシャフトの軸方向に平行な方向である。この場合、前後方向の前方とは、運転者側から見たときのステアリングホイールの手前側(図1の紙面に対して手前側)の方向を言い、後方とは、ステアリングホイールの奥側(図1の紙面に対して奥側)の方向を言う。
【0014】
本実施例のステアリングホイール1は、図1に示すステアリングホイール本体10と、ステアリングホイール本体10の運転者に対向する乗員対向表面(前面)側に取り付けられるとともに運転者用のエアバッグ装置を内部に収納するエアバッグモジュール部(不図示)と、エアバッグモジュール部から下側及び左右両側に延びるように配されるフィニッシャ21と、ステアリングホイール本体10の乗員対向表面とは反対となる裏面(後面)側を被覆するロアカバー(不図示)とを有する。なお、図1では、エアバッグモジュール部と、ステアリングパッドの左右両側に配されるフィニッシャ21とが、ステアリングホイール本体10から取り外されている状態でステアリングホイール1が図示されている。
【0015】
また、このステアリングホイール1には、エアバッグモジュール部をステアリングホイール本体10に取り付けるとともに支持するために用いられる3つのダンパー部30と、ホーンスイッチ機構(不図示)とが設置されている。なお、ダンパー部30は、ダンパーユニットと呼ばれることもある。また本発明において、ホーンスイッチ機構の構造は特に限定されない。
【0016】
ステアリングホイール本体10は、運転者が把持する環状のリム部11と、リム部11の中央部に配されるとともにステアリングパッドを支持するボス部(ボス芯金部)12と、リム部11及びボス部12間を連結する3つのスポーク部(スポーク芯金部)13とを有する。
【0017】
このステアリングホイール本体10は、上斜め前方に延びるステアリングシャフト(不図示)の先端部にボス部12が連結されることにより、ステアリングシャフトに回転可能に保持されている。これにより、ステアリングホイール本体10は、ステアリングホイール本体10の回転軸に直交する面(例えばリム部11の前面)が、鉛直方向に対して斜め上向きに傾いた姿勢で車体に配されている。
【0018】
ステアリングホイール本体10のボス部12には、ボス部12の前面部にダンパー部30を取り付けて保持する3つのダンパー保持部(不図示)が設けられている。この場合、ダンパー保持部は、ボス部12の下端中央部と、上側左側縁部と、上側右側縁部とに配されている。なお本発明において、ボス部12に設けるダンパー保持部の設置位置、設置数、ダンパー部を取り付ける構造等は特に限定されない。
【0019】
本実施例のエアバッグモジュール部は、具体的な図示を省略するが、エアバッグ装置と、エアバッグ装置を覆って内部に収容するカバー体とを有する。エアバッグ装置は、エアバッグ装置の作動時に膨張展開するエアバッグ本体部と、エアバッグ本体部内にガスを供給するインフレーターと、エアバッグ本体部及びインフレーターを保持するリテーナーとを有する。エアバッグモジュール部のカバー体は、エアバッグ装置のリテーナーに係止されて保持される。
【0020】
エアバッグ装置のリテーナーには、ステアリングホイール本体10のボス部12に取り付けられたダンパー部30が挿入されて接続される3つの接続開口部と、その接続開口部に挿入されたダンパー部30を係止するための係止部材(例えば、係止用ワイヤー)とが設けられている。リテーナーの3つの接続開口部は、ボス部12に取り付けられた3つのダンパー部30の設置位置に対応して設置されている。
【0021】
本実施例のエアバッグモジュール部は、ボス部12に取り付けられた3つのダンパー部30がそれぞれリテーナーの各接続開口部に挿入されてリテーナーに係止されることにより、前後方向に揺動可能にボス部12に取り付けられる。なお本発明において、エアバッグモジュール部は、3つのダンパー部30を介して、ステアリングホイール本体10のボス部12に前後方向に揺動可能に取り付けられ、且つ、ダイナミックダンパーの質量体として用いることができれば、エアバッグモジュール部の具体的な構造は、特に限定されない。
【0022】
本実施例の3つのダンパー部30は、互いに同じ構造を有する。本実施例のダンパー部30は、ステアリングホイール本体10のボス部12に固定されるステアリング固定用ダンパー部30として形成されている。本実施例の3つのダンパー部30は、それぞれ、エアバッグモジュール部を、前後方向(ステアリングシャフトの軸方向)と、前後方向に直交する直交方向(上下方向及び左右方向を含む方向)とに弾性的に支持している。
【0023】
ダンパー部30は、図2及び図3に示すように、ステアリングホイール本体10のボス部12に固定される固定台座部31と、固定台座部31に保持される金属製のダンパー軸部32と、ダンパー軸部32の後述する軸胴部32bに取り付けられるインシュレーター部33と、インシュレーター部33及び固定台座部31間に保持される弾性体40と、ダンパー軸部32に保持されるコイルスプリング34及びガイドブッシュ35とを有する。このダンパー部30は、上述した複数の部品が一体的に組み立てられてユニット化されている。
【0024】
ダンパー部30の固定台座部31は、ステアリングホイール本体10のボス部12に設けられたダンパー保持部(不図示)に取り付けられて固定可能な形状を有する。固定台座部31には、ダンパー軸部32の後述するベース部32aを固定するベース固定部31aが設けられているとともに、固定台座部31の中央部には、ダンパー軸部32を挿通させる挿通開口部が形成されている。
【0025】
本実施例の固定台座部31は、インシュレーター部33に保持されている弾性体40を、弾性体40の外周面側から押さえて支持する外側支持部31bを有する。なお本実施例において、ダンパー部の固定台座部は、ステアリングホイール本体のボス部に固定されること、ダンパー軸部を固定すること、及び、弾性体を外周面側から支持することが可能に形成されていれば、固定台座部の具体的な形状及び材質は特に限定されない。
【0026】
ダンパー部30のダンパー軸部32は、薄い円板状のベース部32aと、ベース部32aから一方(前方)に向けてまっすぐに延びる円柱状の軸胴部32bと、軸胴部32bの先端部から更に延びるとともに括れた形状を有する軸首部32cと、軸首部32cの先端部に一体的に形成される係合頭部32dとを有する。ダンパー軸部32は、エアバッグモジュール部のリテーナーに設けた接続開口部に、係合頭部32dから挿入され、更に、ダンパー軸部32の係合頭部32dと軸首部32cとの間の段差部に、エアバッグモジュール部の係止部材が引っ掛かって当該係止部材に係合頭部32dが係止されることによって、ダンパー部30にエアバッグモジュール部が取り付けられる。ダンパー軸部32の軸胴部32bは、前後方向(ダンパー軸部32の軸方向)に直交する直交断面を見たときに、円形の断面を呈するように形成されている(図4を参照)。
【0027】
ダンパー部30のインシュレーター部33は、合成樹脂により形成されている。このインシュレーター部33は、円筒状に形成された円筒部33aと、円筒部33aの前端部に一体的に設けられたスプリング保持部33bとを有する。インシュレーター部33の円筒部33aは、円筒部33aの内周面から外周面までの厚さ寸法が円筒部33aの全周で一定の大きさとなるように形成されている(図4を参照)。
【0028】
弾性体40は、弾性を有する合成ゴムにより形成されており、また、略円筒状の形状を有する。本実施例の弾性体40は、インシュレーター部33の円筒部33aの外側に取り付けられるとともに、固定台座部31の一部によって外側から覆われて支持されている。すなわち、略円柱状の弾性体40は、インシュレーター部33の円筒部33aと、固定台座部31の一部とによって、挟まれるように保持されている。この場合、弾性体40の内周面の少なくとも一部は、弾性体40の周方向の全体に亘ってインシュレーター部33に接触(面接触)している。また、弾性体40の外周面は、固定台座部31の内面に部分的に接触(面接触)している。
【0029】
弾性体40の内側には、例えば図3及び図4に示すように、ダンパー軸部32の軸胴部32bとインシュレーター部33の円筒部33aとが挿通されている。この弾性体40は、前後方向(ダンパー軸部32の軸方向)に直交する直交断面を見たときに、弾性体40の厚さ寸法が互いに異なる部分を備える断面形状を有する。
【0030】
ここで、弾性体40の厚さ寸法とは、弾性体40の内周面及び外周面間の厚さの大きさを意味する。また、弾性体40の前記直交断面を見たときの弾性体40の位置を例えば時計の文字盤で例えた場合、弾性体40の上下方向(鉛直方向)を弾性体40の12時の位置と6時の位置を結ぶ方向とし、弾性体40の左右方向を弾性体40の9時の位置と3時の位置を結ぶ方向とする。
【0031】
更に、以下の説明において、弾性体40の上端部とは、弾性体40の前記直交断面において、弾性体40の10時30分の位置から1時30分の位置までの範囲(中心角が90°となる範囲)、好ましくは11時の位置から1時の位置までの範囲(中心角が60°となる範囲)の部分を言う。弾性体40の下端部とは、弾性体40の前記直交断面において、弾性体40の4時30分の位置から7時30分の位置までの範囲(中心角が90°となる範囲)、好ましくは5時の位置から7時の位置までの範囲(中心角が60°となる範囲)の部分を言う。
【0032】
本実施例のステアリングホイール1では、ステアリングホイール本体10のボス部12にエアバッグモジュール部が3つのダンパー部30を介して取り付けられた場合、エアバッグモジュール部の重量が、ダンパー軸部32及びインシュレーター部33を介して弾性体40に加えられる。この場合、エアバッグモジュール部の重量は、図4に示す断面視において、弾性体40の6時の位置を含む下端部の範囲に集中し易くなる。
【0033】
このため、本実施例の弾性体40は、図4に示したように、弾性体40の厚さ寸法が弾性体40の最も下端となる6時の位置で最も大きくなるように形成されている。また、弾性体40は、弾性体40の厚さ寸法を6時の位置から3時の位置に向けて、また、6時の位置から9時の位置に向けて漸減させるように形成されている。このため、本実施例の弾性体40は、下端部の厚さ寸法を左右の側縁部の厚さ寸法よりも大きくして形成されている。一方、弾性体40の厚さ寸法は、10時の位置から2時の位置までの範囲において、一定の大きさに設定されている。
【0034】
本実施例の弾性体40において、エアバッグモジュール部の重量が集中し易い部分(言い換えると、エアバッグモジュール部の重量を最も大きく受ける部分)を含む領域を、弾性体40のモジュール支持部41と規定する。本実施例の場合、弾性体40のモジュール支持部41は、弾性体40の下端部の範囲、すなわち、4時30分の位置から7時30分の位置までの範囲、好ましくは5時の位置から7時の位置までの範囲に配されている。また、弾性体40のモジュール支持部41は、図4に示す断面視において、弾性体40の全周のうちで最も大きな厚さ寸法を有する6時の位置を含んで形成されている。
【0035】
ダンパー部30のガイドブッシュ35は、ダンパー軸部32に摺動可能に保持されている。また、ガイドブッシュ35は、ダンパー軸部32に取り付けられているコイルスプリング34をインシュレーター部33のスプリング保持部33bとの間に保持する。また、ガイドブッシュ35は、インシュレーター部33に近付く方向にダンパー軸部32に沿って摺動することにより、コイルスプリング34を圧縮させることができる。
【0036】
上述のようなダンパー部30がボス部12に固定されたステアリングホイール本体10にエアバッグモジュール部(不図示)を取り付ける場合は、エアバッグモジュール部のリテーナーに設けた接続開口部の位置を、ボス部12に固定されたダンパー部30に合わせながら、エアバッグモジュール部をボス部12の前側からボス部12に近付けて、更に、リテーナーの各接続開口部に、ダンパー部30の先端部(ダンパー軸部32の係合頭部32d)を挿入する。
【0037】
また、ダンパー部30をリテーナーの接続開口部に挿入した後、エアバッグモジュール部をボス部12に向けて押し込むことにより、ダンパー部30のダンパー軸部32をリテーナーの係止部材(係止用ワイヤー)に係止させる。これにより、エアバッグモジュール部がボス部12に取り付けられた本実施例のステアリングホイール1が得られる。
【0038】
以上のような本実施例のステアリングホイール1では、エアバッグモジュール部が、3つのダンパー部30を介して、ステアリングホイール本体10のボス部12に取り付けられている。本実施例では、上述したように、弾性体40のモジュール支持部41が、図4に示す断面視において、弾性体40の厚さ寸法が最も大きい6時の位置を含んで形成されている(言い換えると、弾性体40の厚さ寸法を最も大きくした部分が、弾性体40でエアバッグモジュール部の重量が集中し易い部分に設けられている)。
【0039】
このため、エアバッグモジュール部の重量が、弾性体40のモジュール支持部41に集中しても、厚さ寸法が大きい部分を含むモジュール支持部41によって、エアバッグモジュール部の重量を安定して支持できるため、ダイナミックダンパーを形成する弾性体40の弾性が、エアバッグモジュール部の重量の集中による影響を受け難くすることができる。従って、本実施例のステアリングホイール1では、ダイナミックダンパーの性能を安定して発揮させることができるため、自動車走行時に車体が振動を受けても、ステアリングホイール1に伝えられる振動を、ダイナミックダンパーによって吸収して、安定して減衰させること(制振すること)ができる。
【0040】
また本実施例では、ダンパー部30の弾性体40の厚さ寸法を、上述のようにエアバッグモジュール部の重量を受け易い部分と、その重量を受け難い部分とで異ならせていることにより、ダンパー部30のチューニングを行い易くすること、ダンパー部30のチューニング性能の幅を広げること、及びダイナミックダンパーの性能を向上させること等の効果が期待できる。
【0041】
更に本実施例では、弾性体40に厚い部分と薄い部分とを設けることによって、例えば弾性体の厚さ寸法を、エアバッグモジュール部の重量を支持するために全周に亘って大きくする場合に比べて、材料コストを削減できる。
【0042】
更にまた、本実施例のステアリングホイール1では、弾性体40の厚さ寸法を異ならせるという比較的簡単な構造によって、弾性体40がエアバッグモジュール部の重量の集中による影響を受け難くすることができるため、本実施例のダンパー部30の設置が、ステアリングホイール1のレイアウトやデザインの自由度に与える影響を小さく抑えることができる。
【0043】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載した構成と実質的に同一な構成を有し、且つ、同様な作用効果を奏する範囲において多様な変更が可能である。本発明では、例えばステアリングホイールの形状、寸法、及びデザイン等については特に限定されず、変更可能である。
【0044】
また、上述した実施例のステアリングホイール1において、ダンパー部30は、ステアリングホイール本体10のボス部12に取り付けられて固定されるとともに、ダンパー軸部32にエアバッグモジュール部が前後方向に揺動可能に取り付けられることによって、ダイナミックダンパーが形成されている。しかし本発明では、ステアリングホイール本体とエアバッグモジュール部の何れか一方にダンパー部を固定するとともに、他方を、ダイナミックダンパーの被取付側の部材として、ダンパー部のダンパー軸部に摺動可能に取り付けることが可能であり、またこの場合、ダンパー部の弾性体において、エアバッグモジュール部の重量が集中し易い部分に対応して、厚さ寸法を大きくする部分の位置を変えることによって、ダイナミックダンパーの性能を安定して発揮させることができる。
【0045】
例えば本発明では、ダンパー部がエアバッグモジュール部のリテーナーに固定されるとともに、ステアリングホイール本体のボス部がダンパー部のダンパー軸部に取り付けられることによって、ダイナミックダンパーが形成されていてもよい。この場合、ダンパー部は、エアバッグモジュール部に固定される質量体固定用ダンパー部として形成される。また、エアバッグモジュール部及びダンパー部は、ステアリングホイール本体のボス部に対して前後方向に揺動可能に設けられる。
【0046】
このようにダンパー部がエアバッグモジュール部に固定される場合には、エアバッグモジュール部の重量は、弾性体の前後方向に直交する直交断面を見たときに、弾性体の12時の位置を含む上端部の範囲に集中し易くなる。このため、例えば図5に第1変形例に係るダンパー部30aの弾性体40aの直交断面を示すように、ダンパー部30aの弾性体40aは、弾性体40aの厚さ寸法が、弾性体40aの最も上端となる12時の位置で最も大きくなるように形成される。
【0047】
また、この第1変形例の弾性体40aは、弾性体40aの厚さ寸法を12時の位置から3時の位置に向けて、また、12時の位置から9時の位置に向けて漸減させるように形成される。更に、第1変形例の弾性体40aは、4時の位置から8時の位置までの範囲において、弾性体40aの厚さ寸法を一定の大きさにして形成される。この場合、弾性体40aでエアバッグモジュール部の重量を主に支持するモジュール支持部41aは、図5に示す断面視において、弾性体40aの全周のうちで、最も大きな厚さ寸法を有する12時の位置を含む上端部(例えば、10時30分の位置から1時30分の位置までの範囲)に設けられている。
【0048】
このような第1変形例の弾性体40aがダンパー部30aに設けられたステアリングホイールでは、エアバッグモジュール部の重量が、弾性体40aの12時の位置を含むモジュール支持部41aに集中して加えられるものの、厚さ寸法が大きいモジュール支持部41aでエアバッグモジュール部の重量を安定して支持できるため、ダイナミックダンパーの性能を安定して発揮させることができる。
【0049】
更に本発明においては、例えば図6に、第2変形例に係るダンパー部30bの弾性体40bの直交断面を示すように、ダンパー部30bの弾性体40bが、弾性体40bの厚さ寸法を、弾性体40bの最も上端となる12時の位置と、弾性体40bの最も下端となる6時の位置とにおいて最も大きくするように形成されていてもよい。
【0050】
この場合、第2変形例の弾性体40bは、12時の位置を含む上端部の厚さ寸法と、6時の位置を含む下端部の厚さ寸法とを、例えば弾性体40bの左右の側縁部の厚さ寸法よりも大きくして形成されている。このような第2変形例のダンパー部30bは、ステアリングホイール本体のボス部にダンパー部30bが固定されてダイナミックダンパーが形成される(すなわち、ダンパー部30bが、ステアリング固定用ダンパー部30bである)場合にも、また、エアバッグモジュール部にダンパー部30bが固定されてダイナミックダンパーが形成される(すなわち、ダンパー部30bが、質量体固定用ダンパー部30bである)場合にも用いることが可能である。このため、ダンパー部30bの汎用性が高められて、ダンパー部30bの製造コストを削減できる。また、ダンパー部30bの部品管理の効率化を図ることも可能となる。
【0051】
また、上述した実施例のステアリングホイール1では、エアバッグモジュール部がダイナミックダンパーの質量体として用いられている。しかし本発明のステアリングホイールでは、適度な重量を有していれば、エアバッグモジュール部以外のモジュール部(部材又は部品)が、ダイナミックダンパーの質量体として、ダンパー部を介してステアリングホイール本体に取り付けられていてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 ステアリングホイール
10 ステアリングホイール本体
11 リム部
12 ボス部(ボス芯金部)
13 スポーク部(スポーク芯金部)
21 フィニッシャ
30 ダンパー部
30a,30b ダンパー部
31 固定台座部
31a ベース固定部
31b 外側支持部
32 ダンパー軸部
32a ベース部
32b 軸胴部
32c 軸首部
32d 係合頭部
33 インシュレーター部
33a 円筒部
33b スプリング保持部
34 コイルスプリング
35 ガイドブッシュ
40 弾性体
40a,40b 弾性体
41,41a モジュール支持部
図1
図2
図3
図4
図5
図6