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特開2024-147122燃焼ボイラ制御システムおよびその方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147122
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】燃焼ボイラ制御システムおよびその方法
(51)【国際特許分類】
   F23N 5/00 20060101AFI20241008BHJP
   F22B 35/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
F23N5/00 J
F23N5/00 T
F23N5/00 U
F22B35/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059914
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000133032
【氏名又は名称】株式会社タクマ
(71)【出願人】
【識別番号】800000068
【氏名又は名称】学校法人東京電機大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 孝弘
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 和宏
(72)【発明者】
【氏名】松田 由美
(72)【発明者】
【氏名】加藤 政一
(72)【発明者】
【氏名】菅原 秀雄
【テーマコード(参考)】
3K003
3L021
【Fターム(参考)】
3K003EA07
3K003EA10
3K003FA03
3K003FB01
3K003GA05
3L021AA08
3L021BA08
3L021DA28
3L021FA12
3L021FA13
(57)【要約】
【課題】発熱量の変動による炉の燃焼熱量を検出して、先回りのフィードフォワード制御を従来のフィードバック制御に付加して、ボイラ系の時定数の影響を除去して制御性の改善を図ることが可能な燃焼ボイラ制御システムを提供する。
【解決手段】燃焼ボイラ制御システム1は、燃焼ガスのガス組成(C)およびガス量(V)から実熱量(Qfr)を演算する実熱量演算部と、前記実熱量演算部からの出力に基づいて燃焼部(G)の入力値を演算する燃焼部入力演算部50と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼ガスのガス組成(C)およびガス量(V)から実熱量(Qfr)を演算する実熱量演算部と、
前記実熱量演算部からの出力に基づいて燃焼部(G)の入力値を演算する燃焼部入力演算部と、
を備える、燃焼ボイラ制御システム。
【請求項2】
目標値である設定蒸発量(G)とボイラ部の実蒸発量(Gsr)との差分をとり、主調節部の入力値(E)を演算する主調節部入力演算部と、
前記設定蒸発量(G)から基準熱量(Qfs)を演算する基準熱量演算部と、
前記実熱量(Qfr)から前記基準熱量(Qfs)を引いて外乱(D)を演算する外乱演算部と、
前記外乱(D)に基づいて外乱補正信号(S)を演算する外乱補正信号演算部と、
前記外乱補正信号(S)と、前記主調節部からの出力とを加算し、空気量操作部の入力値を演算する空気量操作部入力演算部と、をさらに備え、
前記燃焼部入力演算部は、前記外乱(D)と、前記空気量操作部の出力とを加算し、燃焼部(G)の入力値を演算する、
請求項1に記載の燃焼ボイラ制御システム。
【請求項3】
前記空気量操作部入力演算部で得られた前記空気量操作部の入力値に基づいて前記空気量操作部を制御する空気量操作部制御部と、
前記燃焼部入力演算部で得られた前記燃焼部の入力値に基づいて前記燃焼部を制御する燃焼部制御部と、
を備える、
請求項2に記載の燃焼ボイラ制御システム。
【請求項4】
前記外乱補正信号演算部で得られた外乱補正信号(S)で燃料の供給装置を制御する燃料供給装置制御部を備える、
請求項2に記載の燃焼ボイラ制御システム。
【請求項5】
燃焼ガスのガス組成(C)およびガス量(V)から実熱量(Qfr)を演算する実熱量演算ステップと、
前記実熱量(Qfr)に基づいて、燃焼部の入力値を演算する燃焼部入力演算ステップと、を含む、
燃焼ボイラ制御方法。
【請求項6】
目標値である設定蒸発量(G)とボイラ部の実蒸発量(Gsr)との差分をとり、主調節部の入力値(E)を演算する主調節部入力演算ステップと、
前記設定蒸発量(G)から基準熱量(Qfs)を演算する基準熱量演算ステップと、
前記実熱量(Qfr)から前記基準熱量(Qfs)を引いて外乱(D)を演算する外乱演算ステップと、
前記外乱(D)に基づいて外乱補正信号(S)を演算する外乱補正信号演算ステップと、
前記外乱補正信号(S)と、前記主調節部からの出力とを加算し、空気量操作部の入力値を演算する空気量操作部入力演算ステップと、をさらに含み、
前記燃焼部入力演算ステップにおいて、前記外乱(D)と、前記空気量操作部の出力とを加算し、燃焼部の入力値を演算する、
請求項5に記載の燃焼ボイラ制御方法。
【請求項7】
前記空気量操作部入力演算ステップで得られた前記空気量操作部の入力値に基づいて前記空気量操作部を制御する空気量操作部制御ステップと、
前記燃焼部入力演算部で得られた前記燃焼部の入力値に基づいて前記燃焼部を制御する燃焼部制御ステップと、
を含む、
請求項6に記載の燃焼ボイラ制御方法。
【請求項8】
前記外乱補正信号演算ステップで得られた外乱補正信号(S)で燃料の供給装置を制御する燃料供給装置制御ステップを含む、
請求項6に記載の燃焼ボイラ制御方法。
【請求項9】
燃焼ボイラ制御プログラムであって
少なくとも1つのプロセッサーあるいは情報処理装置により、前記請求項5~8のいずれか1項に記載の燃焼ボイラ制御方法を実現するプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ごみ焼却施設の焼却炉、廃棄物焼却炉、バイオマス発電などの燃焼ボイラの燃焼制御システムおよびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、都市ごみ焼却炉では、燃料である都市ごみの発熱量などのごみ質が変動するために、廃熱ボイラの蒸発量を一定に制御することが難しい場合がある。特に近時はごみ発電の出力の安定化が要請されるために、蒸発量の変動を抑えることが極めて重要である。
【0003】
特許文献1は、廃熱ボイラから発生する蒸気量が制御目標値に追従するよう焼却炉のフィードバック制御を行う燃焼制御装置において、蒸気量によるフィードバック制御に加え、廃熱ボイラ入口における燃焼排ガスが有する熱量を先行要素として焼却炉の制御を行うことを開示している。燃焼制御装置は、制御目標値と蒸気量との差分に基づいて第一の制御量を出力する第一調節部と、焼却炉で発生した燃焼排ガスが有する熱量を先行要素として第二の制御量を出力する第二調節部とを備え、焼却炉は第一の制御量と第二の制御量との差分に基づいて制御が行われる。
【0004】
特許文献2は、排ガスの炉出口温度を測定するための排ガス温度測定器と、排ガスの流量を測定するための排ガス流量測定器と、ボイラ水の蒸発量を測定するための蒸気量測定器と、が備えられてなり、更に、前記蒸気量測定器によって測定されたボイラ水の蒸発量の変化に応じて、二次燃焼空気の供給量を変えるフィードバック制御と、前記排ガス温度測定器によって測定された排ガスの温度及び前記排ガス流量測定器によって測定された排ガスの流量の変化により予想される排ガス熱量の変化に応じて、二次燃焼空気の供給量を変える先行要素制御と、を行う制御装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-76570号公報
【特許文献2】特開2020-190364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に従来型の単純フィードバック制御装置の説明がある(明細書の段落0007から0013、図5参照。)。これと同様に、ごみ燃焼ボイラの燃焼空気制御系の従来の一般的な制御ブロック線図を図3に示す。
ごみを燃焼する燃焼系Gfと、燃焼系で発生する燃焼ガスを熱交換して蒸気を発生するボイラ系Gbに分かれる。これらの系は、図3に示すように直列に接続される。燃焼系Gfとボイラ系Gbは何れもある時定数の1次遅れで近似できる。ここで、燃焼系Gfの時定数Tfは30秒~1分程度であるが、ボイラ系Gbの時定数Tbは通常のごみボイラでは3~5分程度で相当長い。このTbの長いことが、ごみ燃焼ボイラの燃焼制御を難しくしている。
ボイラ系Gbの出力Cはボイラの実際蒸発量Gsrであるが外乱Dの影響により変動する。Cは主調節部Gc1の部分にフィードバック(FB経路)されて、蒸発量の設定値Gsとの偏差Eを求める。Eが生じれば、Gc1において常に訂正動作が行われて、※の位置にある空気量操作器(例えば、空気ダンパなど)に出力信号が送られて、燃焼空気量が適切に調節される。Gc1では通常PID制御が採用されて、偏差量や偏差の時間変化に応じた制御動作を行う。設定値Rは、通常の場合一定値とする定値制御である。
しかしながら、ごみ質の急激な変動があると(大きな外乱の発生とみなされる。)、ボイラ系Gbの時定数Tbが長いことに起因して制御の遅れが生じ、Gsrの変動が起こることになる。
【0007】
ボイラ系の時定数が長いことに起因して、従来の技術では以下のような欠点がある。
(1)ごみ質の変化が大きい場合には、ボイラの蒸発量の偏差のみにより燃焼空気量の操作を行うと、時間遅れが発生して蒸発量の変動が大きくなる。この場合、調節部の比例ゲイン等を強めて対処することになるが系の安定性などから限界がある。
(2)近時は燃焼に関係すると考えられる個々の現象の頻度等に着目して、人工知能(AI)を用いた補正手法がみられる。しかし、各現象が蒸発量に与える因果関係を必ずしも明確に説明できない場合があり、理論的な根拠が薄弱であることも多い。
(3)特許文献1では、フィードバック制御に加え、廃熱ボイラ入口における燃焼排ガスが有する熱量を先行要素として焼却炉の制御することで対応している。先回りのフィードフォワード制御ではない。
(4)特許文献2では、排ガスの温度及び排ガスの流量の変化により予想される排ガス熱量の変化に応じて、二次燃焼空気の供給量を変える先行要素制御で対応している。先回りのフィードフォワード制御ではない。
【0008】
本開示では、発熱量の変動による炉の燃焼熱量を検出して、先回りのフィードフォワード制御を従来のフィードバック制御に付加して、ボイラ系の時定数の影響を除去して制御性の改善を図ることが可能な燃焼ボイラ制御システムおよびその方法を提供する。
また、本開示は、都市ごみ焼却炉に限らず、類似の燃料を用いる産業廃棄物焼却炉ボイラやバイオマス発電設備などにも適用可能な燃焼ボイラ制御システムおよびその方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の燃焼ボイラ制御システムは、
燃焼装置とボイラを備える燃焼ボイラを制御対象とする動的システムの数式モデルをラプラス変換して得られる伝達関数を使用して制御をすることが好ましい。
【0010】
前記燃焼ボイラ制御システム(1)は、
燃焼部(Gf)を燃焼制御するための主調節部(Gc1)と、
熱量変化による外乱(D)に基づいてフィードフォワード制御を行うための外乱調節部(Gc2)と、
前記主調節部(Gc1)からの出力および前記外乱調節部(Gc2)からの出力に基づいて、燃焼部(Gf)へ供給される空気(酸化剤を含む)の量を操作するための空気量操作部(Ad)と、
前記空気量操作部(Ad)で操作された空気(酸化剤を含む)により燃料(例えば、ごみ、廃棄物、バイオマス)を燃焼して燃焼ガスを発生する燃焼部(Gf)と、
前記燃焼部(Gf)から送られる燃焼ガスと液体(水)を熱交換して蒸気(水蒸気)を発生させるボイラ部(Gb)と、を有する制御対象において実行されてもよい。
【0011】
燃焼ボイラ制御システム(1)は、
燃焼ガスのガス組成(C)およびガス量(V)から実熱量(Qfr)を演算する実熱量演算部と、
前記実熱量演算部からの出力に基づいて燃焼部(G)の入力値を演算する燃焼部入力演算部と、を備える。
【0012】
前記燃焼ボイラ制御システム(1)は、
目標値である設定蒸発量(G)とボイラ部の実蒸発量(Gsr)との差分をとり、主調節部の入力値(E)を演算する主調節部入力演算部と、
前記設定蒸発量(G)から基準熱量(Qfs)を演算する基準熱量演算部と、
前記実熱量(Qfr)から前記基準熱量(Qfs)を引いて外乱(D)を演算する外乱演算部と、
前記外乱(D)に基づいて外乱補正信号(S)を演算する外乱補正信号演算部と、
前記外乱補正信号(S)と、前記主調節部からの出力とを加算し、空気量操作部の入力値を演算する空気量操作部入力演算部と、をさらに備え、
前記燃焼部入力演算部は、前記外乱(D)と、前記空気量操作部の出力とを加算し、燃焼部(G)の入力値を演算してもよい。
【0013】
前記燃焼ボイラ制御システム(1)は、
前記空気量操作部入力演算部(40)で得られた前記空気量操作部(A)の入力値に基づいて前記空気量操作部(A)を制御する空気量操作部制御部(41)と、
前記燃焼部入力演算部(50)で得られた前記燃焼部(G)の入力値に基づいて前記燃焼部(G)を制御する燃焼部制御部(51)と、
を備えていてもよい。
上記各制御部は、同じ制御装置(81)で構成されていてもよい。
【0014】
前記燃焼ボイラ制御システム(1)は、
前記主調節部入力演算部(10)で得られた入力値(E)を記憶する主調節部入力値記憶部(12)と、
前記外乱補正信号演算部(30)で得られた外乱補正信号(S)を記憶する外乱補正信号記憶部(32)と、
前記空気量操作部入力演算部(40)で得られた前記空気量操作部(A)の入力値を記憶する空気量操作部入力値記憶部(42)と、
前記燃焼部入力演算部(50)で得られた前記燃焼部(G)の入力値を記憶する燃焼部入力値記憶部(52)と、
を備えていてもよい。
前記燃焼ボイラ制御システム(1)は、
前記基準熱量演算部(21)で得られた基準熱量(Qfs)を記憶する基準熱量記憶部(212)と、
前記実熱量演算部(22)で得られた実熱量(Qfr)を記憶する実熱量記憶部(222)と、
前記外乱演算部(20)で得られた外乱(D)を記憶する外乱記憶部(202)と、
を備えていてもよい。
上記各記憶部は、同じ記憶装置(82)で構成されていてもよく、ローカルストレージ、クラウドストレージであってもよい。
【0015】
前記燃焼ボイラ制御システム(1)は、
前記主調節部入力演算部(10)で得られた入力値(E)を前記主調節部(Gc1)へ送信する第一送信部(13)と、
前記外乱補正信号演算部(30)で得られた外乱補正信号(S)を前記外乱調節部(Gc2)へ送信する第二送信部(33)と、
前記空気量操作部入力演算部(40)で得られた前記空気量操作部(A)の入力値を前記空気量操作部(Ad)へ送信する第三送信部(43)と、
前記燃焼部入力演算部(50)で得られた前記燃焼部(G)の入力値を前記燃焼部(Gf)へ送信する第四送信部(53)と、
を備えていてもよい。
上記各送信部は、同じ通信装置(83)で構成されていてもよく、通信装置は、無線通信手段、有線通信手段のいずれであってもよく、両手段で構成されていてもよい。
【0016】
前記燃焼ボイラ制御システム(1)は、
前記主調節部入力演算部(10)で得られた入力値(E)を表示する主調節部入力値表示部(14)と、
前記外乱補正信号演算部(30)で得られた外乱補正信号(S)を表示する外乱補正信号表示部(34)と、
前記空気量操作部入力演算部(40)で得られた前記空気量操作部(A)の入力値を表示する空気量操作部入力値表示部(44)と、
前記燃焼部入力演算部(50)で得られた前記燃焼部(G)の入力値を表示する燃焼部入力値表示部(54)と、
を備えていてもよい。
前記燃焼ボイラ制御システム(1)は、
前記基準熱量演算部(21)で得られた基準熱量(Qfs)を表示する基準熱量表示部(214)と、
前記実熱量演算部(22)で得られた実熱量(Qfr)を表示する実熱量表示部(224)と、
前記外乱演算部(20)で得られた外乱(D)を表示する外乱表示部(204)と、
を備えていてもよい。
上記各表示部は、同じ表示装置(84)で構成されていてもよい。
【0017】
前記燃焼ボイラ制御システム(1)は、
前記外乱補正信号演算部(30)で得られた外乱補正信号(S)で燃料の供給装置を制御する燃料供給装置制御部(60)を備えていてもよい。
前記燃焼ボイラ制御システムは、
前記外乱補正信号演算部(30)で得られた外乱補正信号(S)を、燃料の供給装置へ送信する送信部(63)を備えていてもよい。
「燃料の供給装置」は、例えば、燃料の供給搬送部(コンベア、クレーン)の速度制御装置、トラベリングストーカや階段式ストーカなどの送り速度制御装置などが挙げられる。
【0018】
「主調節部入力演算部(10)」、「基準熱量演算部(21)」、「実熱量演算部(22)」、「外乱演算部(20)」、「外乱補正信号演算部(30)」、「空気量操作部入力演算部(40)」、「燃焼部入力演算部(50)」は、情報処理装置で構成されていてもよく、その手順を含むプログラムとプロセッサーの協動作用で構成されていてもよい。
【0019】
「燃料」は、例えば、ごみ(都市ごみ、家庭ごみ)、産業廃棄物、バイオマスが挙げられる。バイオマスには、廃棄物系バイオマス(家畜排せつ物、食品廃棄物、廃棄紙、パルプ工場廃液、下水汚泥、し尿汚泥、建設発生木材、製材工場等残材など)、未利用バイオマス(稲わら、麦わら、もみがら、林地残材など)、資源作物(糖質資源、でんぷん資源、油脂資源)、柳、ポプラ、スイッチグラスなど)が含まれる。
【0020】
他の開示の燃焼ボイラ制御方法は、
目標値である設定蒸発量(G)と前記ボイラ部(G)の実蒸発量(Gsr)との差分(偏差)をとり(フィードバック演算し)、前記主調節部(Gc1)の入力値(E)を演算する主調節部入力演算ステップと、
前記設定蒸発量(G)から基準熱量(Qfs)を演算する基準熱量演算ステップと、
前記燃焼ガスのガス組成(C)およびガス量(V)から実熱量(Qfr)を演算する実熱量演算ステップと、
前記実熱量(Qfr)から前記基準熱量(Qfs)を引いて外乱(D)を演算する外乱演算ステップと、
前記外乱(D)に基づいて外乱補正信号(S=-D)を演算する外乱補正信号演算ステップと、
前記外乱補正信号(S)と、前記主調節部(Gc1)からの出力(PID制御信号)とを加算し(フィードフォワード演算し)、前記空気量操作部(Ad)の入力値を演算する空気量操作部入力演算ステップと、
前記外乱(D)と、前記空気量操作部(A)の出力とを加算し(フィードフォワード演算し)、前記燃焼部(G)の入力値を演算する燃焼部入力演算ステップと、
を含んでいてもよい。
【0021】
前記燃焼ボイラ制御方法は、
燃焼ガスのガス組成(Cg)およびガス量(Vg)から実熱量(Qfr)を演算する実熱量演算ステップと、
前記実熱量(Qfr)に基づいて、燃焼部の入力値を演算する燃焼部入力演算ステップと、を含む。
前記燃焼ボイラ制御方法は、
目標値である設定蒸発量(Gs)とボイラ部の実蒸発量(Gsr)との差分をとり、主調節部の入力値(E)を演算する主調節部入力演算ステップと、
前記設定蒸発量(Gs)から基準熱量(Qfs)を演算する基準熱量演算ステップと、
前記実熱量(Qfr)から前記基準熱量(Qfs)を引いて外乱(D)を演算する外乱演算ステップと、
前記外乱(D)に基づいて外乱補正信号(S)を演算する外乱補正信号演算ステップと、
前記外乱補正信号(S)と、前記主調節部からの出力とを加算し、空気量操作部の入力値を演算する空気量操作部入力演算ステップと、をさらに含んでいてもよく、
前記燃焼部入力演算ステップにおいて、前記外乱(D)と、前記空気量操作部の出力とを加算し、燃焼部の入力値を演算してもよい。
前記燃焼ボイラ制御方法は、
前記空気量操作部入力演算ステップで得られた前記空気量操作部(A)の入力値に基づいて前記空気量操作部(A)を制御する空気量操作部制御ステップと、
前記燃焼部入力演算ステップで得られた前記燃焼部(G)の入力値に基づいて前記燃焼部(G)を制御する燃焼部制御ステップを含んでいてもよい。
前記燃焼ボイラ制御方法は、
前記外乱補正信号演算ステップで得られた外乱補正信号(S)で燃料の供給装置を制御する燃料供給装置制御ステップを含んでいてもよい。
前記燃焼ボイラ制御方法は、
前記外乱補正信号演算ステップで得られた外乱補正信号(S)を、燃料の供給装置へ送信する送信ステップを含んでいてもよい。
前記燃焼ボイラ制御方法は、
前記主調節部入力演算ステップで得られた入力値(E)を前記主調節部(Gc1)へ送信する第一送信ステップと、
前記外乱補正信号演算ステップで得られた外乱補正信号(S)を前記外乱調節部(Gc2)へ送信する第二送信ステップと、
前記空気量操作部入力演算ステップで得られた前記空気量操作部(A)の入力値を前記空気量操作部(A)へ送信する第三送信ステップと、
前記燃焼部入力演算ステップで得られた前記燃焼部(G)の入力値を前記燃焼部(G)へ送信する第四送信ステップを含んでいてもよい。
【0022】
他の開示の燃焼ボイラ制御プログラムは、少なくとも1つのプロセッサーあるいは情報処理装置により、上記燃焼ボイラ制御方法を実現するプログラムである。
前記プログラムの各ステップは、同一の装置内で全ステップが実行されてもよく、1以上の装置で各ステップが分散処理あるいは並列処理で実行されてもよく、装置はオンプレミスでもよくクラウドでもよい。
他の開示のコンピュータ命令が記憶されているコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、前記コンピュータ命令がプロセッサーにより実行されることで、上記燃焼ボイラ制御プログラムのステップを実現するコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【0023】
「燃焼ボイラ制御システム」の各要素は、メモリ、プロセッサー、ソフトウエアプログラムを有する情報処理装置(例えば、コンピュータ、サーバ)や、専用回路、ファームウエアなどで構成してもよい。
「情報処理装置」は、例えば、汎用コンピュータ、オンプレミスサーバ、クラウドサーバ、エッジコンピュータなど1つあるいは2つ以上で構成されてもよい。
【0024】
(作用効果)
(1)燃焼部の外乱を明確に定義して、これを連続的に演算で想定して外乱の打消しを行える。時間遅れを考慮した制御が可能になる。また、理論的な考え方が制御システムに照らして明瞭である。
(2)外乱は、燃焼熱量そのものではなく、設定蒸発量により定めた基準熱量からの変化量としているので、物理的なイメージが明瞭である。
(3)制御部は、主調節部(Gc1)と外乱調節部(Gc2)の2つの調節部を有し、これらは並列システムであるから、相互の干渉がなく良好な制御結果を得られる。
(4)燃焼熱量は、燃焼ガスの成分により求めておりガス温度に依存しない。よって、ガス温度の不明確さによる影響から免れることができる。
(5)燃焼熱量の計算では、燃焼水素量を明確に把握できる燃焼性水素を用いたDulongの式により、かつ、熱量補正係数をかけるので算定の誤差が少ない。
(6)本発明で求めた外乱(燃焼熱量の変化)は、空気量制御系のみならず、ごみ送り速度の制御系の基準として用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施形態1の燃焼ボイラ制御システムの制御モデルを示す図である。
図2A】実施形態1の燃焼ボイラ制御システムの機能構成を示す図である。
図2B】別実施形態の燃焼ボイラ制御システムの機能構成を示す図である。
図3】従来の燃焼ボイラ制御システムの制御モデルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に本発明のいくつかの実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の一例を説明するものである。本発明は以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお、以下で説明される構成の全てが本発明の必須の構成であるとは限らない。
【0027】
図1に燃焼ボイラ制御システム1の制御モデルを示す。
主調節部Gc1は、燃焼部Gfを燃焼制御する。後述する入力値E(偏差E)が入力されてPID制御を行う制御モデルである。
【0028】
外乱調節部Gc2は、熱量変化による外乱Dに基づいてフィードフォワード制御を行う制御モデルである。
燃焼部Gは、空気量操作部Aで操作された空気量により燃料を燃焼して燃焼ガスを発生する制御モデルである。
ボイラ部Gbは、燃焼部Gfから送られる燃焼ガスと水を熱交換して蒸気(水蒸気)を発生させる制御モデルである。
ボイラ部Gからの出力Cは、実蒸発量Gsrである。主調節部Gc1にフィードバックされて、偏差E(=入力値E)があれば訂正動作を主調節部Gc1で行う。
【0029】
図2Aに燃焼ボイラ制御システム1の機能構成を示す。
主調節部入力演算部10は、ボイラ部の目標値(R)である設定蒸発量Gとボイラ部Gの実蒸発量Gsrとの差分(偏差)をとり(フィードバック演算し)、主調節部Gc1の入力値Eを演算する。
【0030】
基準熱量演算部21は、設定蒸発量Gsから基準熱量Qfsを演算する。基準熱量Qfsは、ボイラ出口蒸気比エンタルピーh、同入口給水比エンタルピーh、およびボイラ効率ηから求めることができる。なおηは一定値である。
【数1】
【0031】
実熱量演算部22は、燃焼ガスのガス組成Cおよびガス量Vから実熱量Qfrを演算する。
【0032】
本実施形態では、ボイラ蒸発量やごみ投入ホッパからのごみ投入量に基づく燃焼熱量Qを使用していないため、ボイラ部Gによる時間遅れやごみ投入後の燃焼開始までのむだ時間の影響がないことが特徴である。また、ガス温度により前記Qfを計算していないために、ガス温度の変動による誤差の発生の恐れがない。つまり、ガス組成C、湿りガス量V、乾きガス量V、空気量Aを使用して実熱量Qfr(=燃焼熱量Q)を燃焼完了から遅滞なく即時的に正確に求めることができる。
乾きガス量Vは、一般的な都市ごみでは、空気量をAとすると、次式で近似できる。若しくは係数0.98に代えて、空気比mを用いて算出した係数によりVをより正確に算定しても良い。
【数2】
ガス組成C(=炭素量C)は、余剰空気をA[mN/h]とすると、次式で近似できる。
【数3】
は、空気比をmとすると、次式で求められる。
【数4】
燃焼性水素Hは全消費酸素から、炭素Cで消費した酸素を除いたものを基にした次式で求め得る。
【数5】
ガス水分量GH2O[kg/h] は次式で求められる。
【数6】
燃焼熱量Qは、Dulongの式により次式で算定できる。なお、Kは補正係数であり、通常は1.1程度であるが、(5)式で求めたHと(3)式で求めたCの比H/Cの値から近似式により求めたKの値を用いてもよい。
【数7】
また、別実施形態として、再循環ガスや燃焼空気の持込熱がある場合には、これらを考慮して熱量を演算することができる。
【0033】
外乱演算部20は、実熱量Qfrから基準熱量Qfsを引いて外乱Dを演算する。
【0034】
空気量操作部入力演算部40は、外乱補正信号Sと、主調節部Gc1からの出力(PID制御信号)とを加算し(フィードフォワード演算し)、空気量操作部Adの入力値Eを演算する。
【0035】
燃焼部入力演算部50は、外乱Dと、空気量操作部Aの出力Adoutとを加算し(フィードフォワード演算し)、燃焼部Gの入力値Eを演算する。燃焼部Gの出力Fがボイラ部Gの入力値となる。
【0036】
図2Aにおいて、燃焼ボイラ制御システム1は、制御装置81を備える。制御装置81は、空気量操作部入力演算部40で得られた空気量操作部Aの入力値に基づいて空気量操作部Aを制御する空気量操作部制御部41と、燃焼部入力演算部50で得られた燃焼部Gの入力値に基づいて燃焼部Gを制御する燃焼部制御部51とを備える。
【0037】
図2Aにおいて、燃焼ボイラ制御システム1は、記憶装置82を備える。記憶装置82は、主調節部入力演算部10で得られた入力値Eを、演算時刻と対応づけて記憶する主調節部入力値記憶部12と、外乱補正信号演算部30で得られた外乱補正信号Sを、演算時刻と対応づけて記憶する外乱補正信号記憶部32と、空気量操作部入力演算部40で得られた空気量操作部Aの入力値を、演算時刻と対応づけて記憶する空気量操作部入力値記憶部42と、燃焼部入力演算部50で得られた燃焼部Gの入力値を、演算時刻と対応づけて記憶する燃焼部入力値記憶部52とを備える。記憶装置82は、基準熱量演算部21で得られた基準熱量Qfsを、演算時刻と対応づけて記憶する基準熱量記憶部212と、実熱量演算部22で得られた実熱量Qfrを、演算時刻と対応づけて記憶する実熱量記憶部222と、外乱演算部20で得られた外乱Dを、演算時刻と対応づけて記憶する外乱記憶部202とを備える。
【0038】
図2Aにおいて、燃焼ボイラ制御システム1は、表示装置84を備える。表示装置84は、主調節部入力演算部10で得られた入力値Eを表示する主調節部入力値表示部14と、外乱補正信号演算部30で得られた外乱補正信号Sを表示する外乱補正信号表示部34と、空気量操作部入力演算部40で得られた前記空気量操作部Aの入力値を表示する空気量操作部入力値表示部44と、燃焼部入力演算部50で得られた燃焼部Gの入力値を表示する燃焼部入力値表示部54とを備える。表示装置84は、基準熱量演算部21で得られた基準熱量Qfsを表示する基準熱量表示部214と、実熱量演算部22で得られた実熱量Qfrを表示する実熱量表示部224と、外乱演算部20で得られた外乱Dを表示する外乱表示部204とを備える。
【0039】
(構成・作用)
図2Aの制御モデルは、主調節部Gc1の設定値R(設定蒸発量G)を一定として制御を行う。ボイラ部Gの出力C(実際蒸発量Gsr)を主調節部Gc1の入口へフィードバック(FB)し、[R-C]の演算により偏差Eを算出する。
偏差Eが生じれば主調節部Gc1でPID制御による訂正動作を行い、空気量操作部Aに出力する。空気量操作部Aで操作された空気量は燃焼部Gでごみ燃焼に用いられ燃焼ガスを発生し燃焼熱量Fが生じる。
燃焼熱量Fはボイラ部Gで熱交換して実際の蒸発量の出力Cを得る。出力Cの信号は上述のように主調節部Gc1にフィードバックされて、上述の訂正動作を繰り返して行う。
燃焼部Gの入力である燃料(例えば、都市ごみ)は、発熱量などのごみ質が頻繁に変化する。このため、燃焼空気量が一定であっても燃焼部Gの出力の燃焼熱量Fは変化する。よって、ボイラ部Gの出力Cもまた変化することになり、制御系の乱れが生じる。
本実施形態では、図2Aの外乱Dの信号が、燃焼部Gの入力として加算され、フィードフォワード制御が実行される。
S=-(Qfs-Qfr)の信号は、ごみ供給系のシステム(ストーカ送り速度制御系)にも出力される。供給系の基準的な信号として利用できる。
【0040】
(別実施形態)
図2Bに別実施形態の燃焼ボイラ制御システム1Bの機能構成を示す。燃焼ボイラ制御システム1Bは、制御装置81に替わり、通信装置83を備える。通信装置83は、主調節部入力演算部10で得られた入力値Eを主調節部Gc1へ送信する第一送信部13と、外乱補正信号演算部30で得られた外乱補正信号Sを外乱調節部Gc2へ送信する第二送信部33と、空気量操作部入力演算部40で得られた空気量操作部Adの入力値を空気量操作部Adへ送信する第三送信部43と、燃焼部入力演算部50で得られた燃焼部Gfの入力値を燃焼部Gfへ送信する第四送信部53とを備える。
送信されたデータに基づいて、各部の制御が行われる。
【0041】
(方法)
燃焼ボイラ制御方法は、
目標値である設定蒸発量(G)と前記ボイラ部(G)の実蒸発量(Gsr)との差分(偏差)をとり(フィードバック演算し)、前記主調節部(Gc1)の入力値(E)を演算する主調節部入力演算ステップと、
前記設定蒸発量(G)から基準熱量(Qfs)を演算する基準熱量演算ステップと、
前記燃焼ガスのガス組成(C)およびガス量(V)から実熱量(Qfr)を演算する実熱量演算ステップと、
前記実熱量(Qfr)から前記基準熱量(Qfs)を引いて外乱(D)を演算する外乱演算ステップと、
前記外乱(D)に基づいて外乱補正信号(S=-D)を演算する外乱補正信号演算ステップと、
前記外乱補正信号(S)と、前記主調節部(Gc1)からの出力(PID制御信号)とを加算し(フィードフォワード演算し)、前記空気量操作部(Ad)の入力値を演算する空気量操作部入力演算ステップと、
前記外乱(D)と、前記空気量操作部(A)の出力とを加算し(フィードフォワード演算し)、前記燃焼部(G)の入力値を演算する燃焼部入力演算ステップと、
前記空気量操作部入力演算ステップで得られた前記空気量操作部(A)の入力値に基づいて前記空気量操作部(A)を制御する空気量操作部制御ステップと、
前記燃焼部入力演算部(50)で得られた前記燃焼部(G)の入力値に基づいて前記燃焼部(G)を制御する燃焼部制御ステップと、
を含む。
【0042】
(プログラム)
燃焼ボイラ制御プログラムは、少なくとも1つのプロセッサーあるいは情報処理装置により、
目標値である設定蒸発量(G)と前記ボイラ部(G)の実蒸発量(Gsr)との差分(偏差)をとり(フィードバック演算し)、前記主調節部(Gc1)の入力値(E)を演算する主調節部入力演算ステップと、
前記設定蒸発量(G)から基準熱量(Qfs)を演算する基準熱量演算ステップと、
前記燃焼ガスのガス組成(C)およびガス量(V)から実熱量(Qfr)を演算する実熱量演算ステップと、
前記実熱量(Qfr)から前記基準熱量(Qfs)を引いて外乱(D)を演算する外乱演算ステップと、
前記外乱(D)に基づいて外乱補正信号(S=-D)を演算する外乱補正信号演算ステップと、
前記外乱補正信号(S)と、前記主調節部(Gc1)からの出力(PID制御信号)とを加算し(フィードフォワード演算し)、前記空気量操作部(Ad)の入力値を演算する空気量操作部入力演算ステップと、
前記外乱(D)と、前記空気量操作部(A)の出力とを加算し(フィードフォワード演算し)、前記燃焼部(G)の入力値を演算する燃焼部入力演算ステップと、
前記空気量操作部入力演算ステップで得られた前記空気量操作部(A)の入力値に基づいて前記空気量操作部(A)を制御する空気量操作部制御ステップと、
前記燃焼部入力演算部(50)で得られた前記燃焼部(G)の入力値に基づいて前記燃焼部(G)を制御する燃焼部制御ステップと、
を実現するプログラムである。
【符号の説明】
【0043】
1 燃焼ボイラ制御システム
1B 燃焼ボイラ制御システム
10 主調節部入力演算部
20 外乱演算部
21 基準熱量演算部
22 実熱量演算部
30 外乱補正信号演算部
40 空気量操作部入力演算部
50 燃焼部入力演算部
図1
図2A
図2B
図3