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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147124
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】培養システム
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20241008BHJP
   C12M 1/04 20060101ALI20241008BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20241008BHJP
   C12M 1/02 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
C12M1/00 E
C12M1/04
C12M1/34 D
C12M1/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059922
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100161425
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100171583
【弁理士】
【氏名又は名称】梅景 篤
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 淳志
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029AA07
4B029BB04
4B029CC01
4B029DB11
4B029FA10
4B029GB03
4B029GB04
(57)【要約】
【課題】コンタミネーションが生じる可能性を低減すること。
【解決手段】培養システム1は、光合成微生物P及び培養液Cを含む混合液Mを気密に収容する収容空間V1を画定する培養槽31と、上下方向に延び、収容空間V1と連通する内部空間V2を画定する筒体32と、収容空間V1にガスを供給し、収容空間V1からガスを排出する給排気装置4と、給排気装置4を制御することによって、混合液Mの状態を調整する制御装置5と、を備え、筒体32の下部分には、収容空間V1と内部空間V2とを連通する連通口が設けられ、制御装置5は、給排気装置4を制御することによって、内部空間V2における混合液Mの液面が筒体32の下部分に留まる第1状態と、内部空間V2における混合液Mの液面が筒体32の上部分に達する第2状態との間で、混合液Mの状態を切り替える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光合成微生物及び培養液を含む混合液を気密に収容する収容空間を画定する培養槽と、
上下方向に延び、前記収容空間と連通する内部空間を画定する筒体と、
前記収容空間にガスを供給し、前記収容空間からガスを排出する給排気装置と、
前記給排気装置を制御することによって、前記混合液の状態を調整する制御装置と、
を備え、
前記筒体は、
前記培養槽の外部に露出するとともに前記培養槽の外部と連通する上部分であって、光透過性を有する前記上部分と、
前記収容空間と前記内部空間とを連通する連通口が設けられた下部分と、を有し、
前記連通口は、前記収容空間に前記混合液が収容されている状態で前記混合液中に位置し、
前記制御装置は、前記給排気装置を制御することによって、前記内部空間における前記混合液の液面が前記下部分に留まる第1状態と、前記内部空間における前記混合液の前記液面が前記上部分に達する第2状態との間で、前記混合液の状態を切り替える、培養システム。
【請求項2】
前記収容空間内の圧力を計測する圧力計を更に備え、
前記制御装置は、前記収容空間内の圧力が設定圧力に達するまで前記給排気装置にガスを供給させることにより、前記混合液の状態を前記第1状態から前記第2状態に切り替える、請求項1に記載の培養システム。
【請求項3】
前記給排気装置は、前記収容空間にガスを供給するための第1給気管と、前記内部空間の下部にガスを供給するための第2給気管と、を備え、
前記制御装置は、前記混合液の状態が前記第2状態である場合に、前記第2給気管を介して前記内部空間にガスを供給するように前記給排気装置を制御することによって、前記内部空間内の前記混合液を撹拌する、請求項1又は請求項2に記載の培養システム。
【請求項4】
前記収容空間における前記混合液の液面の高さを計測する液面計を更に備え、
前記制御装置は、前記混合液の状態が前記第1状態である場合の前記収容空間における前記混合液の前記液面の第1高さと、前記混合液の状態が前記第2状態である場合の前記収容空間における前記混合液の前記液面の第2高さと、に基づいて、前記第1状態と前記第2状態との切替サイクルを実施する時間を設定する、請求項1又は請求項2に記載の培養システム。
【請求項5】
前記混合液の温度を計測する温度計を更に備え、
前記制御装置は、前記混合液の温度に基づいて、前記混合液の状態が前記第2状態である場合の前記内部空間における前記混合液の前記液面の高さを調整する、請求項1又は請求項2に記載の培養システム。
【請求項6】
前記混合液の温度を計測する温度計を更に備え、
前記制御装置は、前記混合液の温度に基づいて、前記第2状態を維持する時間を調整する、請求項1又は請求項2に記載の培養システム。
【請求項7】
前記上部分に設けられ、前記内部空間と前記培養槽の外部とを連通する連通管と、
前記連通管に設けられたフィルタと、
を更に備える、請求項1又は請求項2に記載の培養システム。
【請求項8】
前記培養槽に前記混合液を供給する受槽と、
前記上部分に設けられ、前記内部空間と前記培養槽の外部とを連通する連通管と、
前記連通管に接続され、前記内部空間から溢れた前記混合液を前記受槽に戻す回収管と、
を更に備える、請求項1又は請求項2に記載の培養システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、培養システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光合成によって増殖する光合成微生物が注目されている。光合成微生物の一種である藻類は、栄養素を含む液体中で細胞分裂を繰り返すことで増殖する微細な植物プランクトンである。藻類は、成長が早く、培養しやすいので、様々な産業で利用可能な有機性資源として有効活用が期待されている。例えば、藻類は、食品、薬品、吸着材又は油の原料として利用される。
【0003】
このような光合成微生物を培養する技術として、特許文献1には、培養液を収容する培養槽と、培養液内に設けられたエアリフトポンプと、エアリフトポンプに二酸化炭素を含むガスを供給するラインと、エアリフトポンプから上方に延びるエアリフト管と、を備える装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4-370087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の装置では、培養槽内の培養液が、エアリフトポンプを介してエアリフト管内を上昇してエアリフト管の上端から吐出され、エアリフト管の外面上を流下する培養液に光が照射される。培養液がエアリフト管の外面上を流下するので、培養液は外気に曝される。したがって、虫及び雑菌などの異物が培養液に混入するコンタミネーションが生じるおそれがある。
【0006】
本開示は、コンタミネーションが生じる可能性を低減可能な培養システムを説明する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面に係る培養システムは、光合成微生物及び培養液を含む混合液を気密に収容する収容空間を画定する培養槽と、上下方向に延び、収容空間と連通する内部空間を画定する筒体と、収容空間にガスを供給し、収容空間からガスを排出する給排気装置と、給排気装置を制御することによって、混合液の状態を調整する制御装置と、を備える。筒体は、培養槽の外部に露出するとともに培養槽の外部と連通する上部分であって、光透過性を有する上部分と、収容空間と内部空間とを連通する連通口が設けられた下部分と、を有する。連通口は、収容空間に混合液が収容されている状態で混合液中に位置する。制御装置は、給排気装置を制御することによって、内部空間における混合液の液面が下部分に留まる第1状態と、内部空間における混合液の液面が上部分に達する第2状態との間で、混合液の状態を切り替える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の各側面及び各実施形態によれば、コンタミネーションが生じる可能性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施形態に係る培養システムを概略的に示す構成図である。
図2図2は、混合液の第1状態を説明するための図である。
図3図3は、混合液の第2状態を説明するための図である。
図4図4は、図1に示される制御装置が実施する培養方法の一例を示すフローチャートである。
図5図5は、別の実施形態に係る培養システムを概略的に示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の概要]
最初に、本開示の実施形態の概要を説明する。
【0011】
(条項1) 本開示の一側面に係る培養システムは、光合成微生物及び培養液を含む混合液を気密に収容する収容空間を画定する培養槽と、上下方向に延び、収容空間と連通する内部空間を画定する筒体と、収容空間にガスを供給し、収容空間からガスを排出する給排気装置と、給排気装置を制御することによって、混合液の状態を調整する制御装置と、を備える。筒体は、培養槽の外部に露出するとともに培養槽の外部と連通する上部分であって、光透過性を有する上部分と、収容空間と内部空間とを連通する連通口が設けられた下部分と、を有する。連通口は、収容空間に混合液が収容されている状態で混合液中に位置する。制御装置は、給排気装置を制御することによって、内部空間における混合液の液面が下部分に留まる第1状態と、内部空間における混合液の液面が上部分に達する第2状態との間で、混合液の状態を切り替える。
【0012】
この培養システムでは、培養槽の収容空間内に混合液が気密に収容され、筒体の下部分に設けられた連通口が混合液中に位置し、筒体の上部分が培養槽の外部に露出している。給排気装置を制御することによって、内部空間における混合液の液面が下部分に留まる第1状態と、内部空間における混合液の液面が上部分に達する第2状態との間で、混合液の状態が切り替えられる。上部分は光透過性を有しており、培養槽の外部に露出しているので、混合液の状態が第2状態である場合に上部分が受光することによって、混合液に含まれる光合成微生物に光合成を行わせることができる。混合液は収容空間内及び内部空間内に留まっているので、混合液が外気に曝される機会を減らすことができる。その結果、コンタミネーションが生じる可能性を低減することが可能となる。
【0013】
(条項2) 条項1に記載の培養システムは、収容空間内の圧力を計測する圧力計を更に備えてもよい。制御装置は、収容空間内の圧力が設定圧力に達するまで給排気装置にガスを供給させることにより、混合液の状態を第1状態から第2状態に切り替えてもよい。
【0014】
給排気装置によってガスが収容空間に供給されると、収容空間内の圧力が高くなり、収容空間内の圧力と培養槽の外部の気圧との差圧に応じて、収容空間内の混合液が連通口を介して内部空間に流れ込む。混合液の密度は概ね一定であるので、収容空間内の圧力が設定圧力に達したときの内部空間内の混合液の液面の高さは実質的に一定となる。したがって、受光する混合液の量を均一化することができる。
【0015】
(条項3) 条項1又は条項2に記載の培養システムにおいて、給排気装置は、収容空間にガスを供給するための第1給気管と、内部空間の下部にガスを供給するための第2給気管と、を備えてもよい。制御装置は、混合液の状態が第2状態である場合に、第2給気管を介して内部空間にガスを供給するように給排気装置を制御することによって、内部空間内の混合液を撹拌してもよい。
【0016】
内部空間内の混合液が撹拌されることによって、光合成微生物が内部空間内の混合液の上部に集まることなく、混合液中に分散される。したがって、受光率の低下を抑制することができるので、光合成の効率を向上させることが可能となる。
【0017】
(条項4) 条項1~条項3のいずれか一項に記載の培養システムは、収容空間における混合液の液面の高さを計測する液面計を更に備えてもよい。制御装置は、混合液の状態が第1状態である場合の収容空間における混合液の液面の第1高さと、混合液の状態が第2状態である場合の収容空間における混合液の液面の第2高さと、に基づいて、第1状態と第2状態との切替サイクルを実施する時間を設定してもよい。
【0018】
第1高さは、第2高さよりも高い。混合液の状態が第1状態から第2状態に切り替えられたことによって、第1高さと第2高さとの差に相当する量の混合液が収容空間から内部空間に流れ込み、混合液の状態が第2状態から第1状態に切り替えられたことによって、同量の混合液が内部空間から収容空間に流れ出す。したがって、培養槽内のすべての混合液の量を、第1高さと第2高さとの差に相当する量で除算することによって、培養槽内のすべての混合液を内部空間に供給するのに要する切替サイクルの回数が得られる。例えば、所望の時間内に培養槽内のすべての混合液を内部空間に供給する場合には、所望の時間を上記回数で除算することによって、1回の切替サイクルに割り当てられる時間を算出することができる。当該時間で切替サイクルを実施することによって、混合液の全体が満遍なく受光することができる。これにより、混合液に含まれるすべての光合成微生物に光合成を行わせる機会を与えることができるので、細胞分裂が活発となり、単位時間当たりの光合成微生物の増殖量を増加させることが可能となる。
【0019】
(条項5) 条項1~条項4のいずれか一項に記載の培養システムは、混合液の温度を計測する温度計を更に備えてもよい。制御装置は、混合液の温度に基づいて、混合液の状態が第2状態である場合の内部空間における混合液の液面の高さを調整してもよい。
【0020】
混合液の温度が高くなると、光合成微生物が死滅するおそれがある。混合液の状態が第2状態である場合の内部空間における混合液の液面の高さが高いと、受光量が増大するので、混合液の温度が高くなり得る。したがって、例えば、混合液の温度が高い場合には、混合液の状態が第2状態である場合の内部空間における混合液の液面の高さを低くすることによって、受光量を減らすことができ、混合液の温度が高くなり過ぎないように調整することができる。
【0021】
(条項6) 条項1~条項4のいずれか一項に記載の培養システムは、混合液の温度を計測する温度計を更に備えてもよい。制御装置は、混合液の温度に基づいて、第2状態を維持する時間を調整してもよい。
【0022】
第2状態を維持する時間が長いと、受光量が増大するので、混合液の温度が高くなり得る。したがって、例えば、混合液の温度が高い場合には、第2状態を維持する時間を短くすることによって、受光量を減らすことができ、混合液の温度が高くなり過ぎないように調整することができる。
【0023】
(条項7) 条項1~条項6のいずれか一項に記載の培養システムは、上部分に設けられ、内部空間と培養槽の外部とを連通する連通管と、連通管に設けられたフィルタと、を更に備えてもよい。
【0024】
この構成によれば、連通管を介して混合液に異物が混入する可能性を低減することができる。したがって、コンタミネーションが生じる可能性を一層低減することが可能となる。
【0025】
(条項8) 条項1~条項6のいずれか一項に記載の培養システムは、培養槽に混合液を供給する受槽と、上部分に設けられ、内部空間と培養槽の外部とを連通する連通管と、連通管に接続され、内部空間から溢れた混合液を受槽に戻す回収管と、を更に備えてもよい。
【0026】
例えば、収容空間に過剰な量のガスが供給されると、混合液が筒体の上部分から溢れることがある。上記構成によれば、筒体の上部分から溢れた混合液は、連通管及び回収管を通って受槽に戻される。したがって、混合液の漏洩を抑制することができるので、光合成微生物の回収量の減少を抑制することができる。
【0027】
[本開示の実施形態の例示]
以下、図面を参照しながら本開示の実施形態が詳細に説明される。なお、図面の説明において同一要素には同一符号が付され、重複する説明は省略される。
【0028】
図1図3を参照しながら、一実施形態に係る培養システムを説明する。図1は、一実施形態に係る培養システムを概略的に示す構成図である。図2は、混合液の第1状態を説明するための図である。図3は、混合液の第2状態を説明するための図である。図1に示される培養システム1は、光合成微生物Pを培養するシステムである。培養システム1は、閉鎖型の培養システムである。
【0029】
光合成微生物Pは、例えば藻類である。藻類は、培養液C中で光合成を行って細胞分裂を繰り返すことで増殖する微細な植物プランクトンである。このような藻類としては、緑藻(クロレラ、クラミドモナス、ヘマトコッカス、ボトリオコッカス及びドナリエラ)、トレボキシア藻(パラクロレラ)、プラシノ藻、シアノバクテリア(スピルリナ、アルスロステラ、シネココッカス、シネコキスティス及びノストック)、ハプト藻(プレウロクリシス)、珪藻(キートケロス)、真眼点藻鋼(ナンノクロロプシス)、及びユーグレナが例示される。例えば、スピルリナは、500μm~600μmの長さを有する微細藻類であり、豊富な栄養素を含む食品の原料となり得る。
【0030】
培養システム1は、供給回収装置2と、1又は複数のリアクター3と、給排気装置4と、制御装置5と、を含む。培養システム1に含まれるリアクター3の数は、必要とする混合液Mの総量によって決定される。
【0031】
供給回収装置2は、混合液Mを各リアクター3に供給し、各リアクター3から混合液Mを回収する装置である。混合液Mは、光合成微生物P及び培養液Cを含む。供給回収装置2は、受槽21と、配管22と、ポンプ23と、ポンプ24と、バルブ25と、バルブ26と、リアクター3の数と同数のバルブ27と、を含む。
【0032】
受槽21は、混合液Mを貯留し、各リアクター3に混合液Mを供給する槽である。配管22は、混合液Mが流通可能に受槽21と各リアクター3とを接続している。配管22の一端は、受槽21の側壁の下端近傍に接続されている。配管22は、その途中で配管部22a及び配管部22bに分岐し、再び配管部22a及び配管部22bが合流している。配管22の他端部は、リアクター3の数と同数の枝管22cに分岐しており、各枝管22cは当該枝管22cに対応するリアクター3に接続されている。
【0033】
ポンプ23及びバルブ25は、配管部22aに設けられている。ポンプ24及びバルブ26は、配管部22bに設けられている。各バルブ27は、当該バルブ27に対応する枝管22cに設けられている。バルブ25,27が開放され、バルブ26が閉鎖されている状態で、ポンプ23が駆動されると、受槽21内の混合液Mが配管22を通ってリアクター3に供給される。バルブ25が閉鎖され、バルブ26,27が開放されている状態で、ポンプ24が駆動されると、リアクター3から混合液Mが供給回収装置2に回収される。
【0034】
供給回収装置2は、温度計61と、pH計62と、濃度計63と、電気伝導度計64と、液面計65と、を更に含む。温度計61は、混合液Mの温度を計測する計測器である。温度計61は、受槽21内の混合液Mの温度を計測可能なように受槽21に設けられている。温度計61は、温度の計測値を制御装置5に送信する。pH計62は、混合液MのpHを計測する計測器である。pH計62は、受槽21内の混合液MのpHを計測可能なように受槽21に設けられている。pH計62は、pHの計測値を制御装置5に送信する。
【0035】
濃度計63は、混合液Mの濃度を計測する計測器である。濃度計63は、受槽21内の混合液Mの濃度を計測可能なように受槽21に設けられている。濃度計63は、濃度の計測値を制御装置5に送信する。電気伝導度計64は、混合液Mの電気伝導度を計測する計測器である。混合液Mには、ミネラルなどの栄養塩が含まれている。栄養塩に含まれる金属成分により、混合液Mは電気伝導性を有する。電気伝導度計64は、受槽21内の混合液Mの電気伝導度を計測可能なように受槽21に設けられている。電気伝導度計64は、電気伝導度の計測値を制御装置5に送信する。
【0036】
液面計65は、受槽21内の混合液Mの液面を計測する計測器である。液面計65としては、例えば、ガイドパルス式又は超音波式の液面計が用いられる。液面計65は、受槽21内の混合液Mの液面の高さを計測可能なように受槽21に設けられている。液面計65は、液面の高さの計測値を制御装置5に送信する。
【0037】
各リアクター3は、培養液C中で光合成微生物Pを培養する装置である。本実施形態では、培養システム1は、3つのリアクター3を含む。各リアクター3は、培養槽31と、1又は複数の筒体32と、連通管33と、フィルタ34と、圧力計35と、液面計36と、を含む。
【0038】
培養槽31は、混合液Mを気密に収容する容器である。培養槽31は、上壁31aと、底壁31bと、側壁31cと、を含む。上壁31a、底壁31b及び側壁31cによって、収容空間V1が画定される。
【0039】
各筒体32は、上下方向に延びる筒状の部材である。各筒体32は、例えば、円筒の形状を有する。各筒体32の直径は、例えば、80mm~150mmである。各筒体32は、光透過性(透光性)を有している。具体的には、各筒体32は、高い透明度を有する材料から構成された透明管である。筒体32の構成材料の例として、ガラス、アクリル樹脂及び塩化ビニル樹脂が挙げられる。各筒体32は、培養槽31の上壁31aを上下方向に貫通して延びている。各筒体32は、収容空間V1と連通する内部空間V2を画定する。なお、「Aと連通する」とは、流体が流通できるように、Aと連なっていることを意味する。筒体32の上端は閉塞されており、筒体32の下端は開放されている。筒体32は、上部分32aと下部分32bとを含む。
【0040】
上部分32aは、培養槽31の外部に露出する部分である。上部分32aは、培養槽31の外部と連通している。本実施形態では、上部分32aの上端に連通管33が接続されており、上部分32aは、連通管33及びフィルタ34を介して培養槽31の外部と連通している。
【0041】
下部分32bは、培養槽31内に位置する部分であり、培養槽31の外部には露出していない。下部分32bには、連通口32cが設けられている。連通口32cは、収容空間V1と内部空間V2とを連通する開口である。本実施形態では、筒体32の下端が開放されているので、筒体32の下端縁によって連通口32cが画定されている。連通口32cは、収容空間V1に混合液Mが収容されている状態で混合液M中に位置する。
【0042】
連通管33は、各筒体32の内部空間V2と培養槽31の外部とを連通する配管である。連通管33は、各筒体32の上部分32aに設けられている。連通管33は主管33aと枝管33bとを含む。連通管33は、筒体32の数と同数の枝管33bを含む。各枝管33bの一端は、枝管33bに対応する筒体32の上部分32aの上端に接続されている。各枝管33bの他端は、主管33aに接続されている。主管33aの先端は、フィルタ34を介して培養槽31の外部と連通している。
【0043】
フィルタ34は、培養槽31及び筒体32に収容されている混合液Mに培養槽31の外部から異物が混入するのを防止するためのフィルタである。フィルタ34は、通気性を有する。フィルタ34は、連通管33に設けられている。具体的には、フィルタ34は、主管33aの先端に設けられ、主管33aの先端に設けられた開口を閉塞している。
【0044】
圧力計35は、収容空間V1内の圧力を計測する計測器である。圧力計35は、収容空間V1内の圧力を計測可能なように培養槽31に設けられている。圧力計35は、圧力の計測値を制御装置5に送信する。液面計36は、収容空間V1における混合液Mの液面の高さを計測する計測器である。液面計36としては、例えば、ガイドパルス式又は超音波式の液面計が用いられる。液面計36は、収容空間V1における混合液Mの液面の高さを計測可能なように培養槽31に設けられている。液面計36は、液面の高さの計測値を制御装置5に送信する。
【0045】
給排気装置4は、収容空間V1にガスを供給し、収容空間V1からガスを排出する装置である。収容空間V1に供給されるガスの例としては、二酸化炭素及び空気が挙げられる。給排気装置4は、ブロワ41と、主管42と、リアクター3の数と同数の枝管43と、リアクター3の数と同数の給気管44(第1給気管)と、リアクター3の数と同数の給気管45(第2給気管)と、リアクター3の数と同数の排気管46と、リアクター3の数と同数のバルブ47と、リアクター3の数と同数のバルブ48と、リアクター3の数と同数のバルブ49と、を含む。
【0046】
ブロワ41は、ガスを供給する装置である。主管42は、ブロワ41と各枝管43とを連通する配管である。主管42の一端は、ブロワ41に接続されている。
【0047】
各枝管43は、主管42から分岐して延びる配管である。各枝管43の一端は、主管42に接続されている。1つのリアクター3ごとに1つの枝管43、1つの給気管44、1つの給気管45、1つの排気管46、1つのバルブ47、1つのバルブ48、及び1つのバルブ49が設けられている。各リアクター3に対応する給気管44,45、排気管46、及びバルブ47~49は、同様の構成を有するので、以下では、1つのリアクター3に対応する給気管44,45、排気管46、及びバルブ47~49のみを説明する。
【0048】
給気管44は、収容空間V1にガスを供給するための配管である。給気管44は、枝管43から分岐して延びている。給気管44は、例えば、培養槽31の上壁31aを貫通して収容空間V1内まで延びている。給気管44の基端は枝管43に接続されており、給気管44の先端は開放されている。給気管44の先端は、培養槽31の底壁31b近傍に位置し、収容空間V1に混合液Mが収容されている状態で混合液M中に位置する。
【0049】
給気管45は、内部空間V2の下部にガスを供給するための配管である。給気管45は、枝管43から分岐して延びている。給気管45は、本体部45aと、筒体32の数と同数の枝部45bと、を含む。本体部45aは、一本の配管を成している部分である。本体部45aは、上壁31aを貫通して枝管43から収容空間V1内まで延び、すべての筒体32の下を通るように敷設されている。本体部45aの一端は、枝管43に接続されている。
【0050】
各枝部45bは、本体部45aから分岐して延びる枝管を成している。1つの筒体32ごとに1つの枝部45bが設けられている。複数の枝部45bは互いに同様の構成を有するので、以下では、1つの枝部45bのみを説明する。枝部45bは、本体部45aから、枝部45bに対応する筒体32の内部空間V2内に向けて上方に延びている。枝部45bの基端は本体部45aに接続されており、枝部45bの先端は開放されている。枝部45bの先端は、内部空間V2の下部に位置し、収容空間V1に混合液Mが収容されている状態で混合液M中に位置する。枝部45bの先端は、例えば、図2に示されるように連通口32cからわずかに上方に位置している。枝部45bの先端は、連通口32cの上方に位置していなくてもよい。
【0051】
排気管46は、収容空間V1からガスを排出するための配管である。排気管46は、例えば、培養槽31の上壁31aを貫通して、収容空間V1内から培養槽31の外部まで延びている。
【0052】
バルブ47は、収容空間V1にガスを供給するためのバルブである。バルブ47は、給気管44に設けられている。バルブ48は、内部空間V2内の混合液Mを撹拌するためのバルブである。バルブ48は、給気管45に設けられている。バルブ49は、収容空間V1からガスを排出するためのバルブである。バルブ49は、排気管46に設けられている。
【0053】
バルブ47が開放され、バルブ48,49が閉鎖されている状態で、ブロワ41が駆動されると、ブロワ41から主管42、枝管43及び給気管44を通って収容空間V1にガスが供給される。バルブ48が開放され、バルブ47,49が閉鎖されている状態で、ブロワ41が駆動されると、ブロワ41から主管42、枝管43及び給気管45を通って内部空間V2にガスが供給される。収容空間V1内の圧力が培養槽31の外部の気圧よりも高い状態で、バルブ47,48が閉鎖され、バルブ49が開放されると、収容空間V1から排気管46を通って培養槽31の外部にガスが排出される。
【0054】
制御装置5は、培養システム1を統括制御する装置(コントローラ)である。制御装置5は、供給回収装置2及び給排気装置4を制御する。制御装置5は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサと、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)などのメモリと、タッチパネル、マウス及びキーボードなどの入力装置と、ディスプレイなどの出力装置と、ネットワークカードなどの通信装置と、を含むコンピュータとして構成されている。メモリに記憶されているコンピュータプログラムに基づくプロセッサの制御のもとで各ハードウェアを動作させることにより、制御装置5の機能が実現される。
【0055】
制御装置5は、光合成微生物Pを培養する培養方法を実施する。培養方法の詳細は後述するが、ここでは、培養方法において行われる混合液Mの状態の切り替えを説明する。制御装置5は、給排気装置4を制御することによって、混合液Mの状態を調整する。具体的には、制御装置5は、給排気装置4を制御することによって、混合液Mの状態を第1状態と第2状態との間で切り替える。
【0056】
図2に示されるように、第1状態は、内部空間V2における混合液Mの液面が筒体32の下部分32bに留まる状態である。制御装置5は、例えば、収容空間V1内の圧力と培養槽31の外部の気圧とが実質的に等しくなるように給排気装置4を制御することで、混合液Mの状態を第1状態に設定する。具体的には、制御装置5は、バルブ47,48を閉鎖し、バルブ49を開放することで、混合液Mの状態を第1状態に設定する。この場合、収容空間V1内の混合液Mの液面には、培養槽31の外部の気圧(例えば、大気圧)が下向きに加わる。筒体32の上部分32aは培養槽31の外部と連通しているので、内部空間V2内の混合液Mの液面には、培養槽31の外部の気圧(例えば、大気圧)が下向きに加わる。したがって、収容空間V1における混合液Mの液面の高さは、内部空間V2における混合液Mの液面の高さと実質的に同じとなる。
【0057】
図3に示されるように、第2状態は、内部空間V2における混合液Mの液面が筒体32の上部分32aに達する状態である。制御装置5は、例えば、混合液Mが筒体32の上部分32aに達する程度に収容空間V1内の圧力が高くなるように給排気装置4を制御することで、混合液Mの状態を第2状態に設定する。具体的には、制御装置5は、バルブ47を開放し、バルブ48,49を閉鎖して、ブロワ41を駆動することで、ブロワ41から主管42、枝管43及び給気管44を通って収容空間V1にガスを供給する。
【0058】
この場合、収容空間V1内の圧力が高くなり、収容空間V1における混合液Mの液面に下向きに加わる力が、内部空間V2内の混合液Mの液面に下向きに加わる力よりも大きくなる。これらの力の差に応じて、収容空間V1内の混合液Mが連通口32cを介して内部空間V2に流れ込む。したがって、内部空間V2における混合液Mの液面の高さは、収容空間V1における混合液Mの液面の高さよりも高くなる。第2状態では、内部空間V2における混合液Mの液面は、例えば、筒体32の上端付近に位置している。
【0059】
制御装置5は、収容空間V1内の圧力が設定圧力に達するまで給排気装置4にガスを供給させることにより、混合液Mの状態を第1状態から第2状態に切り替える。設定圧力は、内部空間V2における混合液Mの液面が所望の高さ(以下、「リフトアップ高さ」と称する。)に到達するときの収容空間V1内の圧力であり、予め計測されて不図示のメモリに格納されている。制御装置5は、給排気装置4に収容空間V1からガスを排出させることによって、混合液Mの状態を第2状態から第1状態に切り替える。
【0060】
混合液Mの状態が第2状態である場合に、上部分32aが受光することによって、混合液Mに含まれる光合成微生物Pが光合成を行う。筒体32の上部分32aが受光する光は、太陽光でもよく、LED(light-emitting diode)などの人工光でもよい。
【0061】
次に、図4を更に参照しながら、制御装置5が実施する培養方法を詳細に説明する。図4は、図1に示される制御装置が実施する培養方法の一例を示すフローチャートである。培養方法を実施する前に、ユーザは、培養方法に関する初期設定を行う。例えば、ユーザは、初期設定として、開始時刻、終了時刻、設定圧力、及び設定時間を設定する。開始時刻は、培養方法の一連の処理を開始する時刻である。終了時刻は、培養方法の一連の処理を終了する時刻である。設定時間は、リアクター3に供給された混合液Mの全量分の混合液Mが内部空間V2に供給される(以下、「循環」と称する。)のに掛ける時間である。開始時刻、終了時刻、設定圧力、及び設定時間は、不図示のメモリに格納される。すべてのリアクター3に対して共通に初期設定が行われてもよく、リアクター3ごとに個別に初期設定が行われてもよい。
【0062】
図4に示される一連の処理は、開始条件が満たされた場合に開始される。例えば、時刻が開始時刻に達した場合に開始条件が満たされる。図4に示される一連の処理は、すべてのリアクター3に同時に行われてもよく、1つのリアクター3ずつ順番に行われてもよい。なお、受槽21には、すべてのリアクター3に供給可能な混合液Mが貯留されていてもよく、1つのリアクター3に供給可能な混合液Mが貯留されていてもよい。各リアクター3は、筒体32の上部分32aが受光可能となるように配置されている。培養システム1の初期状態では、ブロワ41は停止しており、バルブ47,48は閉鎖され、バルブ49は開放されている。
【0063】
図4に示されるように、制御装置5は、まず、供給回収装置2を制御することによって、各リアクター3の培養槽31に混合液Mを供給する(ステップS1)。ステップS1では、制御装置5は、バルブ25,27を開放し、バルブ26を閉鎖して、ポンプ23を駆動する。これにより、受槽21内の混合液Mが配管22を通って各培養槽31に供給される。制御装置5は、例えば、液面計65によって計測された受槽21の液面が所定の高さまで減少したことに応じて、ポンプ23を停止し、バルブ25,27を閉鎖する。各リアクター3において、混合液Mの状態は第1状態となる。このとき、制御装置5は、混合液Mの状態が第1状態である場合の、収容空間V1における混合液Mの液面の高さ(以下、「第1高さ」と称する。)を各液面計36から取得する。以下、1つのリアクター3について説明を行うが、他のリアクター3についても同様である。
【0064】
続いて、制御装置5は、リフトアップ処理を実施する(ステップS2)。リフトアップ処理は、内部空間V2における混合液Mの液面を高くする処理である。ステップS2では、制御装置5は、バルブ47を開放し、バルブ48,49を閉鎖して、ブロワ41を駆動することで、ブロワ41から主管42、枝管43及び給気管44を通って収容空間V1にガスを供給する。上述のように、ガスの供給量が多くなるにつれて、収容空間V1内の圧力が高くなり、内部空間V2における混合液Mの液面が上昇する。なお、制御装置5は、不図示のタイマーにより、リフトアップ処理を開始した時点からの経過時間を計測する。
【0065】
続いて、制御装置5は、収容空間V1内の圧力が設定圧力に到達したか否かを判定する(ステップS3)。ステップS3では、制御装置5は、圧力計35から計測値を取得し、収容空間V1内の圧力が、メモリに格納されている設定圧力に到達したか否かを判定する。収容空間V1内の圧力が設定圧力に到達していないと判定された場合(ステップS3:NO)、制御装置5は、収容空間V1内の圧力が設定圧力に到達するまでステップS2及びステップS3を繰り返す。
【0066】
一方、ステップS3において、収容空間V1内の圧力が設定圧力に到達したと判定された場合(ステップS3:YES)、制御装置5は、混合液Mの状態が初めて第2状態になったか否かを判定する(ステップS4)。ステップS4では、制御装置5は、例えば、循環を実施した回数をカウントする不図示のカウンタを有し、カウンタのカウント値がゼロである場合に、混合液Mの状態が初めて第2状態になったと判定する。
【0067】
ステップS4において混合液Mの状態が初めて第2状態になったと判定された場合には(ステップS4:YES)、制御装置5は、サイクルタイムを算出する(ステップS5)。サイクルタイムは、1回の切替サイクルに割り当てられる時間である。切替サイクルは、混合液Mの状態を第1状態から第2状態に切り替える処理が開始された時点から、第2状態から第1状態に切り替える処理が終了する時点までの期間である。
【0068】
ステップS5では、制御装置5は、混合液Mの状態が第2状態である場合の、収容空間V1における混合液Mの液面の高さ(以下、「第2高さ」と称する。)を液面計36から取得する。そして、制御装置5は、第1高さ及び第2高さに基づいて、サイクルタイムを算出する。例えば、制御装置5は、リアクター3内の混合液Mを上述の設定時間で循環させるよう、サイクルタイムを算出する。
【0069】
ここで、リアクター3内のすべての混合液Mが内部空間V2に流れ込むまで、混合液Mの同じ部分が内部空間V2に再び流れ込まないと仮定する。この仮定のもとで、制御装置5は、リアクター3内のすべての混合液Mが内部空間V2に流れ込むのに要する切替サイクルの回数(サイクル回数)を算出し、サイクル回数からサイクルタイムを算出する。
【0070】
混合液Mの状態が第1状態から第2状態に切り替えられたことによって、第1高さと第2高さとの差に相当する量の混合液Mが収容空間V1から内部空間V2に流れ込み、混合液Mの状態が第2状態から第1状態に切り替えられたことによって、同量の混合液Mが内部空間V2から収容空間V1に流れ出す。したがって、制御装置5は、リアクター3に供給されている混合液Mの総量を、収容空間V1から内部空間V2に流れ込んだ混合液Mの総量で除算することによって得られる値の小数点以下を切り上げることによって、サイクル回数を算出する。そして、制御装置5は、上述の設定時間をサイクル回数で除算することによってサイクルタイムを算出する。
【0071】
続いて、制御装置5は、撹拌処理を実施する(ステップS6)。ステップS6では、制御装置5は、バルブ48を開放し、バルブ47,49を閉鎖して、ブロワ41を駆動することで、ブロワ41から主管42、枝管43及び給気管45を通って内部空間V2の下部にガスを供給する。収容空間V1内の圧力が培養槽31の外部の気圧よりも高く、筒体32の上部分32aは培養槽31の外部と連通しているので、内部空間V2の下部に供給されたガスは、気泡Bとなって上部分32aに向かって上昇する。このとき、気泡Bの周囲の混合液Mは、エアリフト効果により気泡Bとともに上昇し、混合液Mが混合液Mの液面に達すると下降する。これにより、内部空間V2内において上昇流と下降流とが同時に生じ、内部空間V2内の混合液Mが撹拌される。
【0072】
続いて、制御装置5は、タイマーによって計測されている経過時間がサイクルタイムに到達したか否かを判定する(ステップS7)。経過時間がサイクルタイムに到達していないと判定された場合(ステップS7:NO)、制御装置5は、経過時間がサイクルタイムに到達するまでステップS6及びステップS7を繰り返す。この間、上部分32aが受光しているので、光合成微生物Pは混合液M中で光合成を行って細胞分裂を繰り返すことで増殖する。光合成微生物Pは光合成を行うと酸素を発生するので、光合成微生物Pには酸素による浮力が作用する。混合液Mが撹拌されることによって、光合成微生物Pが内部空間V2内の混合液Mの上部に集まることなく、混合液M中に分散される。
【0073】
ステップS7において経過時間がサイクルタイムに到達したと判定された場合(ステップS7:YES)、制御装置5は、撹拌処理を停止し、収容空間V1を開放する(ステップS8)。ステップS8では、制御装置5は、ブロワ41を停止してバルブ47,48を閉鎖するとともに、バルブ49を開放することで、収容空間V1から排気管46を通って培養槽31の外部にガスを排出する。これにより、収容空間V1内の圧力が低くなり、内部空間V2における混合液Mの液面が下降する。そして、収容空間V1内の圧力が培養槽31の外部の気圧と実質的に等しくなると、混合液Mの状態が第1状態に戻る。
【0074】
続いて、制御装置5は、カウント値を1増加し、終了条件が満たされたか否かを判定する(ステップS9)。ステップS9では、制御装置5は、例えば、時刻が終了時刻に達している場合に終了条件が満たされたと判定し、時刻が終了時刻に達していない場合に終了条件が満たされていないと判定する。
【0075】
ステップS9において終了条件が満たされていないと判定された場合(ステップS9:NO)、制御装置5は、終了条件が満たされるまでステップS2~S9を繰り返す。なお、2回目以降に実施されるステップS4では、カウント値が1以上であるので、制御装置5は、混合液Mの状態が2回以上第2状態になったと判定し(ステップS4:NO)、ステップS5を実施することなく、ステップS6を実施する。
【0076】
ステップS9において終了条件が満たされたと判定された場合(ステップS9:YES)、制御装置5は、供給回収装置2を制御することによって、各培養槽31から混合液Mを受槽21に回収する(ステップS10)。ステップS10では、制御装置5は、バルブ25を閉鎖し、バルブ26,27を開放して、ポンプ24を駆動する。これにより、各培養槽31内の混合液Mが配管22を通って受槽21に回収される。制御装置5は、例えば、液面計65によって計測された受槽21の液面が所定の高さに到達したことに応じて、ポンプ24を停止し、バルブ26を閉鎖する。そして、制御装置5は、受槽21に回収された混合液Mに対して、栄養素の補給、水質測定、及び光合成微生物Pの回収などを行う。
【0077】
以上により、培養方法の一連の処理が終了する。なお、サイクルタイムは予め設定されていてもよい。この場合、ステップS4及びステップS5は省略される。ステップS1は、ステップS10の後に行われてもよい。この場合、制御装置5は、開始条件が満たされるまで、バルブ47~49を開放して、ブロワ41を駆動することで、収容空間V1及び内部空間V2内の混合液Mを撹拌する。そして、制御装置5は、開始条件が満たされると、ステップS2以降の処理を行う。
【0078】
光合成微生物Pが増殖するにつれて、混合液MのpHが上昇する。制御装置5は、pH計62によって計測されたpHが所定値を超えた場合に、受槽21に回収された混合液Mに二酸化炭素を供給するように培養システム1を制御する。制御装置5は、pH計62によって計測されたpHが所定値を超えた場合に、ブロワ41から二酸化炭素を供給するように給排気装置4を制御してもよい。これにより、混合液MのpHが低下される。
【0079】
制御装置5は、濃度計63によって計測された濃度が所定の濃度を超えた場合に、混合液Mから光合成微生物Pを抽出するように培養システム1を制御する。例えば、不図示のろ過装置によって混合液Mから光合成微生物Pが抽出される。
【0080】
培養方法を実施している間に、混合液Mに含まれる水分が蒸発することがある。この場合、受槽21に回収された混合液Mの濃度及び電気伝導度が高くなる。制御装置5は、電気伝導度計64によって計測された電気伝導度に応じた量の水を混合液Mに追加するように培養システム1を制御する。これにより、蒸発した水分が補われる。
【0081】
以上説明した培養システム1では、培養槽31の収容空間V1内に混合液Mが気密に収容され、筒体32の下部分32bに設けられた連通口32cが混合液M中に位置し、筒体32の上部分32aが培養槽31の外部に露出している。給排気装置4を制御することによって、混合液Mが下部分32bに留まる第1状態と、混合液Mが上部分32aに達する第2状態との間で、混合液Mの状態が切り替えられる。上部分32aは光透過性を有しており、培養槽31の外部に露出しているので、混合液Mの状態が第2状態である場合に上部分32aが受光することによって、混合液Mに含まれる光合成微生物Pに光合成を行わせることができる。混合液Mは収容空間V1内及び内部空間V2内に留まっているので、混合液Mが外気に曝される機会を減らすことができる。その結果、コンタミネーションが生じる可能性を低減することが可能となる。
【0082】
給排気装置4によってガスが収容空間V1に供給されると、収容空間V1内の圧力が高くなり、収容空間V1内の圧力と培養槽31の外部の気圧との差圧に応じて、収容空間V1内の混合液Mが連通口32cを介して内部空間V2に流れ込む。混合液Mの密度は概ね一定であるので、収容空間V1内の圧力が設定圧力に達したときの内部空間V2内の混合液Mの液面の高さ(リフトアップ高さ)は実質的に一定となる。したがって、受光する混合液Mの量を均一化することができる。これにより、切替サイクルごとに収容空間V1と内部空間V2との間で入れ替わる混合液Mの量を実質的に一定にすることができる。
【0083】
混合液Mの状態が第2状態である場合、収容空間V1内の圧力は培養槽31の外部の気圧よりも高い。収容空間V1からガスを排出することによって収容空間V1内の圧力が低下するので、収容空間V1内の圧力と培養槽31の外部の気圧との差圧が小さくなり、内部空間V2内の混合液Mの液面の高さが低くなる。これにより、混合液Mの状態を第1状態とすることができる。
【0084】
光合成微生物Pは混合液M中で光合成を行って細胞分裂を繰り返すことで増殖する。光合成微生物Pは光合成を行うと酸素を発生するので、光合成微生物Pには酸素による浮力が作用する。したがって、混合液Mが撹拌されないと、光合成微生物Pが混合液Mの液面に集まって受光率が低下するおそれがある。これに対し、培養システム1においては、制御装置5は、混合液Mの状態が第2状態である場合に、給気管45を介して内部空間V2にガスを供給するように給排気装置4を制御することによって、内部空間V2内の混合液Mを撹拌する。これにより、光合成微生物Pが内部空間V2内の混合液Mの上部に集まることなく、混合液M中に分散される。したがって、受光率の低下を抑制することができるので、光合成の効率を向上させることが可能となる。
【0085】
混合液Mの状態が第1状態から第2状態に切り替えられたことによって、第1高さと第2高さとの差に相当する量の混合液Mが収容空間V1から内部空間V2に流れ込み、混合液Mの状態が第2状態から第1状態に切り替えられたことによって、同量の混合液Mが内部空間V2から収容空間V1に流れ出す。したがって、リアクター3内のすべての混合液Mの量を、第1高さと第2高さとの差に相当する量で除算することによって、リアクター3内のすべての混合液Mを内部空間V2に供給するのに要するサイクル回数が得られる。例えば、設定時間内にリアクター3内のすべての混合液Mを内部空間V2に供給する場合には、設定時間をサイクル回数で除算することによって、サイクルタイムを算出することができる。サイクルタイムで切替サイクルを実施することによって、混合液Mの全体が満遍なく受光することができる。これにより、混合液Mに含まれるすべての光合成微生物Pに光合成を行わせる機会を与えることができるので、細胞分裂が活発となり、単位時間当たりの光合成微生物Pの増殖量を増加させることが可能となる。
【0086】
培養システム1においては、培養槽31は密閉されており、筒体32の上部分32aは連通管33及びフィルタ34を介して培養槽31の外部と連通している。この構成によれば、連通管33を介して混合液Mに異物が混入する可能性を低減することができる。したがって、コンタミネーションが生じる可能性を一層低減することが可能となる。
【0087】
培養システム1では、筒体32の上部分32aが受光することによって、混合液Mに含まれる光合成微生物Pに光合成を行わせる。したがって、広大な設置面積を要することなく、受光面積を広げることができ、光合成の効率を向上させることが可能となる。
【0088】
例えば、水中ポンプを用いて混合液Mを撹拌することが考えられる。この場合、ポンプのインペラに光合成微生物Pが巻き込まれることによって、光合成微生物Pが切断されるおそれがある。培養システム1においては、ブロワ41によってガスを内部空間V2に供給することによって、混合液Mが撹拌される。したがって、光合成微生物Pが切断されることを回避することができる。
【0089】
次に、図5を参照しながら、別の実施形態に係る培養システムを説明する。図5は、別の実施形態に係る培養システムを概略的に示す構成図である。図5に示される培養システム1Aは、各リアクター3がフィルタ34を含まない点、及び回収管37を更に含む点において、培養システム1と主に相違する。
【0090】
回収管37は、内部空間V2から溢れた混合液Mを受槽21に戻す配管である。回収管37は、各リアクター3の連通管33に接続されている。具体的には、各リアクター3の主管33aの先端は、回収管37に接続されている。回収管37の先端は、受槽21の上方に位置し、培養槽31の外部と連通している。
【0091】
培養システム1Aにおいても、培養システム1と共通の構成については、培養システム1と同様の効果が奏される。収容空間V1に過剰な量のガスが供給されると、混合液Mが筒体32の上部分32a(内部空間V2)から溢れることがある。培養システム1Aでは、筒体32の上部分32a(内部空間V2)から溢れた混合液Mは、連通管33及び回収管37を通って受槽21に戻される。したがって、混合液Mの漏洩を抑制することができるので、光合成微生物Pの回収量の減少を抑制することができる。
【0092】
なお、本開示に係る培養システムは上記実施形態に限定されない。
【0093】
上記実施形態では、筒体32は光透過性を有しているが、筒体32のうちの少なくとも上部分32aが光透過性を有していればよく、下部分32bは光透過性を有していなくてもよい。
【0094】
季節及び天候によっては、受光量が多くなり、混合液Mの温度が上昇する。混合液Mの温度が高くなり過ぎると、光合成微生物Pが死滅するおそれがある。この問題に対し、制御装置5は、混合液Mの温度に基づいて、受光面積(受光量)を調整してもよい。具体的に説明すると、ユーザは、図4に示される培養方法が1日に2回実施されるように、開始時刻及び終了時刻を設定しておく。ユーザは、そのうちの初回の培養方法の終了時刻を受光量が多くなると予想される時間帯に含まれる時刻に設定しておく。
【0095】
そして、制御装置5は、初回の培養方法において時刻が終了時刻に達すると、バルブ25を閉鎖し、バルブ26を開放して、ポンプ24を駆動する。これにより、各培養槽31内の混合液Mが配管22を通って受槽21に回収される。そして、制御装置5は、温度計61によって計測された混合液Mの温度を取得し、2回目の培養方法を実施する。
【0096】
そして、制御装置5は、混合液Mの温度に基づいて、混合液Mの状態が第2状態である場合の内部空間V2における混合液Mの液面の高さ(リフトアップ高さ)を調整する。例えば、制御装置5は、混合液Mの温度が予め設定された温度閾値を超えている場合に、混合液Mの温度が温度閾値以下である場合よりも、設定圧力を低くしてリフトアップ高さを低くする。制御装置5は、混合液Mの温度が高くなるにつれて、設定圧力を低くしてリフトアップ高さを低くしてもよい。
【0097】
リフトアップ高さが高いと、受光面積(受光量)が増大するので、混合液Mの温度が高くなり得る。したがって、混合液Mの温度が高い場合には、リフトアップ高さを低くして受光面積(受光量)を減らすことによって、混合液Mの温度が高くなり過ぎないように調整することができる。
【0098】
制御装置5は、混合液Mの温度に基づいて、混合液Mの状態が第2状態である状態を維持する時間(以下、「受光時間」と称する。)を調整してもよい。例えば、制御装置5は、混合液Mの温度が予め設定された温度閾値を超えている場合に、混合液Mの温度が温度閾値以下である場合よりも、受光時間を短くする。制御装置5は、混合液Mの温度が高くなるにつれて、受光時間を短くしてもよい。
【0099】
受光時間が長いと、受光量が増大するので、混合液Mの温度が高くなり得る。したがって、混合液Mの温度が高い場合には、受光時間を短くすることによって、混合液Mの温度が高くなり過ぎないように調整することができる。
【0100】
制御装置5は、混合液Mの温度に基づいて、リフトアップ高さ及び受光時間の両方を調整してもよい。なお、温度計61に代えて、各リアクター3が、培養槽31内の混合液Mの温度を計測する温度計を含んでもよい。この場合、制御装置5は、温度計によって計測された培養槽31内の混合液Mの温度に基づいて、リフトアップ高さ及び受光時間の少なくとも1つを調整する。この構成によれば、混合液Mの温度変化を即座に受光量の調整に反映することができるので、混合液Mの温度を精度良く調整することができる。
【0101】
pH計62に代えて、各リアクター3が、培養槽31内の混合液MのpHを計測するpH計を含んでもよい。同様に、濃度計63に代えて、各リアクター3が、培養槽31内の混合液Mの濃度を計測する濃度計を含んでもよく、電気伝導度計64に代えて、各リアクター3が、培養槽31内の混合液Mの電気伝導度を計測する電気伝導度計を含んでもよい。
【0102】
光合成微生物Pが増殖するにつれて、混合液Mの比重が大きくなることがある。この場合、収容空間V1内の圧力が設定圧力に到達したときの内部空間V2における混合液Mの液面が低くなる。この問題に対して、制御装置5は、収容空間V1内の圧力が設定圧力に到達したときの収容空間V1における混合液Mの液面の高さに応じて、設定圧力を調整してもよい。
【0103】
例えば、制御装置5は、収容空間V1内の圧力が初めて設定圧力に到達したとき(言い換えると、混合液Mの状態が初めて第2状態となったとき)の第2高さを目標高さとして記憶する。そして、制御装置5は、収容空間V1内の圧力が2回目以降に設定圧力に到達したときの第2高さが、目標高さよりも高い場合に、第2高さが目標高さと同じになるように設定圧力を増加する。
【0104】
混合液Mは、夜間のように光合成を行わない時間帯に、受槽21に回収されることなく培養槽31内に保持されてもよい。光合成微生物Pは呼吸することにより二酸化炭素を排出するので、光合成微生物Pには二酸化炭素による浮力が作用する。この場合、混合液Mの液面付近に光合成微生物Pが集まって、互いに絡まるおそれがある。この問題に対し、制御装置5は、給排気装置4を制御することによって、収容空間V1内の混合液Mを撹拌してもよい。具体的には、制御装置5は、バルブ47,49を開放し、バルブ48を閉鎖して、ブロワ41を駆動することで、ブロワ41から主管42、枝管43及び給気管44を通って収容空間V1にガスを供給する。
【0105】
給気管44の先端は培養槽31の底壁31b近傍に位置しているので、収容空間V1内の混合液Mの下部にガスが供給され、供給されたガスが気泡となって混合液Mの液面に向かって上昇する。このとき、エアリフト効果により、収容空間V1内において上昇流と下降流とが同時に生じ、収容空間V1内の混合液Mが撹拌される。収容空間V1に供給されたガスは、排気管46を通って培養槽31の外部に排出される。混合液Mが撹拌されることによって、光合成微生物Pが収容空間V1内の混合液Mの上部に集まることなく、混合液M中に分散される。制御装置5は、バルブ47,49に加えてバルブ48を更に開放することで、収容空間V1内の混合液Mだけでなく、内部空間V2内の混合液Mを撹拌してもよい。
【符号の説明】
【0106】
1…培養システム、3…リアクター、4…給排気装置、5…制御装置、21…受槽、31…培養槽、32…筒体、32a…上部分、32b…下部分、32c…連通口、33…連通管、34…フィルタ、35…圧力計、36…液面計、37…回収管、44…給気管(第1給気管)、45…給気管(第2給気管)、61…温度計、62…pH計、63…濃度計、64…電気伝導度計、65…液面計、C…培養液、M…混合液、P…光合成微生物、V1…収容空間、V2…内部空間。
図1
図2
図3
図4
図5