IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電産サンキョー株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-モータ制御装置 図1
  • 特開-モータ制御装置 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147130
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】モータ制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 29/032 20160101AFI20241008BHJP
【FI】
H02P29/032
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059947
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(72)【発明者】
【氏名】林 昂樹
(72)【発明者】
【氏名】吉田 零
【テーマコード(参考)】
5H501
【Fターム(参考)】
5H501AA22
5H501FF01
5H501FF05
5H501JJ17
5H501LL51
5H501MM01
5H501MM04
(57)【要約】
【課題】サーボモータの動力で動作する動作対象物が障害物に衝突したときの動作対象物等の損傷を軽減することが可能であっても、動作対象物の衝突を検知した後のサーボモータの復旧作業を容易に行うことが可能となるモータ制御装置を提供する。
【解決手段】このモータ制御装置は、動作対象物の衝突を検知すると、衝突検知時のサーボモータの回転方向である衝突時モータ回転方向を記憶するとともに、サーボモータを制御しながらサーボモータを停止させ、その後、上位装置から制御指令が入力されると、制御指令に基づくサーボモータの回転方向が衝突時モータ回転方向と同方向である場合には、サーボモータの停止状態を維持し、制御指令に基づくサーボモータの回転方向が衝突時モータ回転方向と逆方向である場合には、制御指令に基づいてサーボモータを駆動する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上位装置からの制御指令に基づいてサーボモータを駆動制御するモータ制御装置において、
前記サーボモータの動力で動作する動作対象物が障害物に衝突したことを検知する衝突検知機能を備え、前記動作対象物の衝突を検知すると、衝突検知時の前記サーボモータの回転方向である衝突時モータ回転方向を記憶するとともに、前記サーボモータを制御しながら前記サーボモータを停止させ、その後、前記上位装置から前記制御指令が入力されると、前記制御指令に基づく前記サーボモータの回転方向が前記衝突時モータ回転方向と同方向である場合には、前記サーボモータの停止状態を維持し、前記制御指令に基づく前記サーボモータの回転方向が前記衝突時モータ回転方向と逆方向である場合には、前記制御指令に基づいて前記サーボモータを駆動することを特徴とするモータ制御装置。
【請求項2】
前記動作対象物の衝突を検知すると、衝突検知信号を前記上位装置に送信することを特徴とする請求項1記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記動作対象物の衝突を検知すると、予め設定された減速時間で前記サーボモータを減速して停止させることを特徴とする請求項1または2記載のモータ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上位装置からの制御指令に基づいてサーボモータを駆動制御するモータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、産業用ロボットや産業用機械で使用されるサーボモータを駆動制御するモータ制御装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のモータ制御装置は、デジタルサーボ回路とサーボアンプとによって構成されている。デジタルサーボ回路には、上位装置である数値制御装置から共有メモリを介して制御指令が入力される。モータ制御装置は、数値制御装置から入力される制御指令に基づいてサーボモータを駆動制御する。
【0003】
特許文献1に記載のモータ制御装置は、サーボモータの動力で動作する動作対象物(被駆動体)が障害物(異物)に衝突したことを検知する衝突検知機能を備えている。このモータ制御装置は、動作対象物の衝突を検知すると、数値制御装置からの制御指令に関係なく、衝突時のサーボモータの回転方向と逆方向にサーボモータを回転させる。そのため、特許文献1に記載のモータ制御装置でサーボモータを制御すれば、動作対象物が障害物に衝突したときの動作対象物等の損傷を軽減することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3-3687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のモータ制御装置は、動作対象物の衝突を検知すると、数値制御装置からの制御指令に関係なく、衝突時のサーボモータの回転方向と逆方向にサーボモータを回転させるため、上位装置である数値制御装置は、逆方向に回転した後のサーボモータの状態を把握するのが困難になる。したがって、特許文献1に記載のモータ制御装置でサーボモータを制御すると、動作対象物の衝突を検知した後のサーボモータの復旧作業が困難になるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明の課題は、サーボモータの動力で動作する動作対象物が障害物に衝突したときの動作対象物等の損傷を軽減することが可能であっても、動作対象物の衝突を検知した後のサーボモータの復旧作業を容易に行うことが可能となるモータ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明のモータ制御装置は、上位装置からの制御指令に基づいてサーボモータを駆動制御するモータ制御装置において、サーボモータの動力で動作する動作対象物が障害物に衝突したことを検知する衝突検知機能を備え、動作対象物の衝突を検知すると、衝突検知時のサーボモータの回転方向である衝突時モータ回転方向を記憶するとともに、サーボモータを制御しながらサーボモータを停止させ、その後、上位装置から制御指令が入力されると、制御指令に基づくサーボモータの回転方向が衝突時モータ回転方向と同方向である場合には、サーボモータの停止状態を維持し、制御指令に基づくサーボモータの回転方向が衝突時モータ回転方向と逆方向である場合には、制御指令に基づいてサーボモータを駆動することを特徴とする。
【0008】
本発明のモータ制御装置は、動作対象物の衝突を検知すると、サーボモータを制御しながらサーボモータを停止させている。また、本発明のモータ制御装置は、サーボモータを停止させた後、上位装置から入力される制御指令に基づくサーボモータの回転方向が衝突時のサーボモータの回転方向である衝突時モータ回転方向と逆方向である場合には、制御指令に基づいてサーボモータを駆動する一方で、上位装置から入力される制御指令に基づくサーボモータの回転方向が衝突時モータ回転方向と同方向である場合には、サーボモータの停止状態を維持している。そのため、本発明では、停止しているサーボモータは、動作対象物が障害物から離れる方向のみに回転する。したがって、本発明のモータ制御装置でサーボモータを制御すれば、動作対象物が障害物に衝突したときの動作対象物等の損傷を軽減することが可能になる。
【0009】
また、本発明のモータ制御装置は、サーボモータを停止させた後、上位装置から入力される制御指令に基づくサーボモータの回転方向が衝突時モータ回転方向と逆方向である場合に、制御指令に基づいてサーボモータを駆動している。すなわち、本発明のモータ制御装置は、上位装置からの制御指令に基づいてサーボモータを逆方向に回転させている。そのため、本発明では、上位装置は、逆方向に回転した後のサーボモータの状態を把握しやすくなる。したがって、本発明のモータ制御装置でサーボモータを制御すれば、動作対象物の衝突を検知した後のサーボモータの復旧作業を容易に行うことが可能になる。すなわち、本発明のモータ制御装置でサーボモータを制御すれば、動作対象物が障害物に衝突したときの動作対象物等の損傷を軽減することが可能であっても、動作対象物の衝突を検知した後のサーボモータの復旧作業を容易に行うことが可能になる。
【0010】
本発明において、モータ制御装置は、動作対象物の衝突を検知すると、衝突検知信号を上位装置に送信することが好ましい。このように構成すると、上位装置は、動作対象物の衝突が発生していることを認識することが可能になる。
【0011】
本発明において、モータ制御装置は、たとえば、動作対象物の衝突を検知すると、予め設定された減速時間でサーボモータを減速して停止させる。この場合には、動作対象物の動作条件等に応じて適切な減速時間を予め設定することで、動作対象物の衝突が検知されたときにサーボモータを適切に減速して停止させることが可能になる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明のモータ制御装置でサーボモータを制御すれば、サーボモータの動力で動作する動作対象物が障害物に衝突したときの動作対象物等の損傷を軽減することが可能であっても、動作対象物の衝突を検知した後のサーボモータの復旧作業を容易に行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態にかかるモータ制御装置に関連する構成を説明するためのブロック図である。
図2図1に示す動作対象物の衝突が検知されたときのサーボモータの制御方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0015】
(モータ制御装置の概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるモータ制御装置1に関連する構成を説明するためのブロック図である。
【0016】
本形態のモータ制御装置1は、上位装置2からの制御指令に基づいてサーボモータ3を制御する。サーボモータ3は、産業用ロボットや産業用機械等に搭載されて使用される。サーボモータ3が搭載される産業用ロボット等では、サーボモータ3の動力によって各種の動作対象物4が動作する。モータ制御装置1とサーボモータ3とは所定のケーブルを介して電気的に接続され、モータ制御装置1と上位装置2とは所定のケーブルを介して電気的に接続されている。
【0017】
上位装置2は、たとえば、PLC(Programmable Logic Controller)である。本形態の上位装置2は、比較的安価な汎用のPLCである。上位装置2は、サーボモータ3を駆動制御するための制御指令をモータ制御装置1に送信する。制御指令には、位置指令や速度指令等が含まれている。また、上位装置2は、モータ制御装置1から各種の情報を受信する。
【0018】
サーボモータ3は、サーボモータ3の回転位置および回転速度を検知するためのエンコーダ5を備えている。エンコーダ5は、たとえば、サーボモータ3の回転軸に取り付けられる円板状のスリット板と、スリット板を挟むように配置される発光部と受光部とを有する光学式のセンサとによって構成されている。サーボモータ3のフィードバック制御を行うために、エンコーダ5の出力信号(より具体的には、センサの出力信号)は、モータ制御装置1に入力される。また、エンコーダ5の出力信号は、モータ制御装置1を介して上位装置2に入力される。
【0019】
モータ制御装置1は、汎用のサーボアンプであり、サーボモータ3に駆動用の電力を供給する。モータ制御装置1は、動作対象物4が所定の障害物に衝突したことを検知する衝突検知機能を備えている。モータ制御装置1は、エンコーダ5の検知結果に基づくサーボモータ3の回転位置と上位装置2からの制御指令に基づくサーボモータ3の回転位置との差である位置偏差に基づいて動作対象物4の衝突を検知する。あるいは、モータ制御装置1は、サーボモータ3へのトルク指令値に基づいて動作対象物4の衝突を検知する。具体的には、動作対象物4が障害物に衝突して停止すると、位置偏差やトルク指令値が大きくなるため、モータ制御装置1は、位置偏差やトルク指令値が所定の閾値を超えると、動作対象物4の衝突を検知する。以下、動作対象物4の衝突が検知されたときのサーボモータ3の制御方法を説明する。
【0020】
(動作対象物の衝突検知時のサーボモータの制御方法)
図2は、図1に示す動作対象物4の衝突が検知されたときのサーボモータ3の制御方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【0021】
動作対象物4の動作を開始するときには、モータ制御装置1は、上位装置2から入力される制御指令に基づいてサーボモータ3の回転を開始する(ステップS1)。モータ制御装置1は、動作対象物4の動作中に動作対象物4の衝突を検知すると(ステップS2において“Yes”になると)、衝突検知信号を上位装置2に送信する(ステップS3)。また、モータ制御装置1は、衝突検知時のサーボモータ3の回転方向である衝突時モータ回転方向を記憶するとともに(ステップS4)、サーボモータ3を制御しながらサーボモータ3を停止させるサーボモータ停止処理を行う(ステップS5)。
【0022】
ステップS5では、モータ制御装置1は、予め設定された減速時間でサーボモータ3を減速して停止させる。また、ステップS5では、モータ制御装置1は、エンコーダ5の検知結果に基づいてサーボモータ3を減速して停止させる。ステップS5でのサーボモータ3の減速時間は、動作対象物4の動作条件や設置箇所等に応じた適切な減速時間となっている。なお、ステップS5でのサーボモータ3の減速時間が「0」となっていて、ステップS5でサーボモータ3を急停止させることもある。
【0023】
サーボモータ停止処理が行われた後、上位装置2から制御指令が入力されると(ステップS6において“Yes”になると)、モータ制御装置1は、制御指令に基づくサーボモータ3の回転方向が、ステップS4で記憶された衝突時モータ回転方向と同方向であるのか否かを判断する(ステップS7)。制御指令に基づくサーボモータ3の回転方向が衝突時モータ回転方向と同方向である場合には、モータ制御装置1は、サーボモータ3の停止状態を維持する(ステップS8)。すなわち、ステップS8では、モータ制御装置1は、サーボモータ3の駆動を禁止する。
【0024】
一方、制御指令に基づくサーボモータ3の回転方向が衝突時モータ回転方向と逆方向である場合には、モータ制御装置1は、衝突検知解除信号を上位装置2に送信するとともに(ステップS9)、制御指令に基づいてサーボモータ3を駆動する(ステップS10)。ステップS10では、モータ制御装置1は、上位装置2からの制御指令に基づいて衝突時モータ回転方向と逆方向にサーボモータ3を回転させる。また、ステップS10では、モータ制御装置1は、エンコーダ5の検知結果に基づいてサーボモータ3を回転させる。本形態では、ステップS1~S10のいずれのステップにおいても、サーボモータ3のサーボ状態が維持されている。
【0025】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、モータ制御装置1は、動作対象物4の衝突を検知すると、サーボモータ3を制御しながらサーボモータ3を停止させている。また、本形態では、モータ制御装置1は、サーボモータ3を停止させた後、上位装置2から入力される制御指令に基づくサーボモータ3の回転方向が衝突時モータ回転方向と逆方向である場合には、制御指令に基づいてサーボモータ3を駆動する一方で、上位装置2から入力される制御指令に基づくサーボモータ3の回転方向が衝突時モータ回転方向と同方向である場合には、サーボモータ3の停止状態を維持している。そのため、本形態では、停止しているサーボモータ3は、動作対象物4が障害物から離れる方向のみに回転する。したがって、本形態のモータ制御装置1でサーボモータ3を制御すれば、動作対象物4が障害物に衝突したときの動作対象物4等の損傷を軽減することが可能になる。
【0026】
また、本形態では、モータ制御装置1は、サーボモータ3を停止させた後、上位装置2から入力される制御指令に基づくサーボモータ3の回転方向が衝突時モータ回転方向と逆方向である場合に、制御指令に基づいてサーボモータ3を駆動している。すなわち、モータ制御装置1は、上位装置2からの制御指令に基づいてサーボモータ3を逆方向に回転させている。そのため、本形態では、上位装置2は、逆方向に回転した後のサーボモータ3の状態を把握しやすくなる。したがって、本形態のモータ制御装置1でサーボモータ3を制御すれば、動作対象物4の衝突を検知した後のサーボモータ3の復旧作業を容易に行うことが可能になる。すなわち、本形態のモータ制御装置1でサーボモータ3を制御すれば、動作対象物4が障害物に衝突したときの動作対象物4等の損傷を軽減することが可能であっても、動作対象物4の衝突を検知した後のサーボモータ3の復旧作業を容易に行うことが可能になる。
【0027】
本形態では、モータ制御装置1は、動作対象物4の衝突を検知すると、衝突検知信号を上位装置2に送信している。そのため、本形態では、上位装置2は、動作対象物4の衝突が発生していることを認識することが可能になる。
【0028】
本形態では、モータ制御装置1は、動作対象物4の衝突を検知すると、予め設定された減速時間でサーボモータ3を減速して停止させており、このときのサーボモータ3の減速時間は、動作対象物4の動作条件や設置箇所等に応じた適切な減速時間となっている。そのため、本形態では、動作対象物4の衝突が検知されたときにサーボモータ3を適切に減速して停止させることが可能になる。
【0029】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。たとえば、上述した形態において、モータ制御装置1は、動作対象物4の衝突を検知したときに、衝突検知信号を上位装置2に送信しなくても良い。
【符号の説明】
【0030】
1 モータ制御装置
2 上位装置
3 サーボモータ
4 動作対象物
図1
図2