(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147142
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】バッテリパック
(51)【国際特許分類】
H01M 50/204 20210101AFI20241008BHJP
H01M 50/342 20210101ALI20241008BHJP
H01M 50/358 20210101ALI20241008BHJP
【FI】
H01M50/204 401D
H01M50/342 201
H01M50/358
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059965
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲
(74)【代理人】
【識別番号】100137316
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 宏
(72)【発明者】
【氏名】楊 チイ曄
【テーマコード(参考)】
5H012
5H040
【Fターム(参考)】
5H012BB01
5H012CC10
5H040AA03
5H040AS07
5H040AT06
5H040AY04
5H040AY05
5H040AY08
5H040NN03
(57)【要約】
【課題】少ないセンサで熱暴走を正確に検知できるバッテリパックを提供する。
【解決手段】本発明のバッテリパックは、複数のバッテリモジュールと、上記バッテリモジュールの熱暴走を検知するセンサと、を備える。
そして、上記熱暴走を検知するセンサが、温度センサ、煙センサ及びガスセンサから成る群から選ばれたセンサであり、
上記バッテリモジュールは、それぞれガス放出口を有し、各ガス放出口に向けて開口したガス流路で繋って群を形成しており、上記バッテリモジュール群は、少なくとも2つのガス放出口の近傍に上記センサが設けることとしたため、少ないセンサで熱暴走を正確に検知できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバッテリモジュールと、上記バッテリモジュールの熱暴走を検知するセンサと、を備えたバッテリパックであって、
上記熱暴走を検知するセンサが、温度センサ、煙センサ及びガスセンサから成る群から選ばれたセンサであり、
上記バッテリモジュールは、それぞれガス放出口を有し、各ガス放出口に向けて開口したガス流路で繋って群を形成しており、
上記バッテリモジュール群は、少なくとも2つのガス放出口の近傍に上記センサが設けられ、上記センサの数が上記バッテリモジュールの数よりも少ないことを特徴とするバッテリパック。
【請求項2】
上記バッテリモジュールを複数備えたバッテリユニットを並列接続したことを特徴とする請求項1に記載のバッテリパック。
【請求項3】
上記ガス流路が逆止弁を有し、
上記センサを近傍に備えるガス放出口の方向にガスを流すことを特徴とする請求項1に記載のバッテリパック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリパックに係り、更に詳細には、バッテリの熱暴走を検知できるバッテリパックに関する。
【背景技術】
【0002】
電動車のバッテリパックは、複数のバッテリモジュールを直列接続して電圧を高めており、バッテリパックの安全性確保のため、バッテリの熱暴走を検知する必要がある。
【0003】
特許文献1には、各バッテリモジュールに温度センサを設けて温度上昇率を測定し、バッテリモジュールの熱暴走の予兆を検知することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バッテリモジュールの熱暴走を早期に検知するには、バッテリモジュールの近傍にセンサを設けることが好ましく、すべてのバッテリモジュールにセンサを設けるとセンサ数が多くなってしまう。
【0006】
また、バッテリモジュールの熱暴走の検知精度を向上させるためには、外部から受けた熱による誤検知を防止するため、例えば、温度と放出ガス圧との組み合わせや、温度と電圧値との組み合わせなど、離れた位置に設けられた2つ以上のセンサを用いることが好ましい。
【0007】
しかしながら、バッテリの放出ガス圧を測定するには、バッテリモジュールのガス放出口に繋がるガス流路を気密にする必要があり、生産性が低下してしまう。
【0008】
また、上記バッテリモジュールを直列接続したバッテリユニットを複数設け、これらを並列接続して電池容量増大させたバッテリパックは、一方のバッテリユニットで熱暴走が生じても電圧値が大きく変化しないため、電圧値によってはバッテリモジュールの熱暴走を検出することができない。
【0009】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、バッテリモジュールの数が多くても、少ないセンサで熱暴走を正確に検知できるバッテリパックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、複数のバッテリモジュールを、それらのガス放出口に向けて開口したガス流路で繋ぐことにより、必要となるセンサの数を減少させても熱暴走を正確に検知できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明のバッテリパックは、複数のバッテリモジュールと、上記バッテリモジュールの熱暴走を検知するセンサと、を備える。
そして、上記熱暴走を検知するセンサが、温度センサ、煙センサ及びガスセンサから成る群から選ばれたセンサであり、
上記バッテリモジュールは、それぞれガス放出口を有し、各ガス放出口に向けて開口したガス流路で繋って群を形成しており、
上記バッテリモジュール群は、少なくとも2つのガス放出口の近傍に上記センサが設けられ、上記センサの数が上記バッテリモジュールの数よりも少ないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数のバッテリモジュールを、それらのガス放出口に向けて開口したガス流路で繋ぐこととしたため、少ない数のセンサで熱暴走を正確に検知できるバッテリパックを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明のバッテリパックの一例を示す平面図である。
【
図2】本発明のバッテリパックの他の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のバッテリパックについて詳細に説明する。
本発明のバッテリパック1は、
図1に示すように、複数のバッテリモジュール2と、上記バッテリモジュールの熱暴走を検知するセンサ3と、を備える。
【0015】
上記バッテリモジュール2は、複数のリチウムイオン電池を配列してケースに収容して成り、上記ケースは、その一端に内部で発生したガスを放出するガス放出口21を有する。
【0016】
上記熱暴走を検知するセンサ3は、上記ガス放出口21の近傍に設けられ、該ガス放出口から放出されたガスに基いてバッテリモジュールの熱暴走を検知する。
【0017】
上記センサとしては、温度センサの他、煙センサやガスセンサを挙げることができる。
【0018】
上記煙センサは、光学的手法などで熱暴走煙を検知することにより熱暴走を検知することができ、また、ガスセンサは、電池セル内部の電解液が燃焼することや分解することなどで発生するガスを検知することで熱暴走を検知することができる。
【0019】
なかでも温度センサは、バッテリモジュールの温度上昇を直接的に検知することができるので好ましく使用できる。
【0020】
上記センサでバッテリモジュールの熱暴走を検出し、熱暴走の検出にバッテリパック全体の電圧値を用いないことで、複数のバッテリモジュールを直列接続してバッテリユニットを形成し、このバッテリユニットを並列接続して電池容量増大させたバッテリパックであっても熱暴走を検知することが可能である。
【0021】
本発明のバッテリパック1は、
図1に示すように、バッテリモジュールのガス放出口21に向けて開口したガス流路4を有し、複数のバッテリモジュールが上記ガス流路で繋って群5を形成している。
【0022】
上記バッテリモジュール群5中の1つのバッテリモジュールが熱暴走し、そのガス放出口21からガスが放出されたとき、放出したガスは、上記ガス流路の開口部41からガス流路4に入り、ガス流路の内部を流れて同じバッテリモジュール群の他のバッテリモジュールのガス放出口21、すなわち、センサ3に向けて放出される。
【0023】
このため、ガス流路で繋がったバッテリモジュール群5のすべてのバッテリモジュール2にセンサ3を設ける必要がなく、バッテリモジュールの数よりも少ない数のセンサでバッテリモジュールの熱暴走を検知することができ、さらに、ガス流路を気密にする必要もないので生産性が向上する。
【0024】
また、上記バッテリモジュール群は、少なくとも2つのセンサを有し、これらのセンサ3は異なるバッテリモジュールのガス放出口21の近傍に設けられる。
【0025】
上記センサがガス放出口の近傍に設けられていることで、バッテリモジュールの熱暴走を早期に検知することができ、また、バッテリモジュール群が2つ以上のセンサを備えていることで、外部から受けた熱による誤検知を防止することができる。
【0026】
バッテリモジュール群5を構成するバッテリモジュール2は、同じバッテリユニット6を構成しているバッテリモジュール2であっても、異なるバッテリユニット6を構成しているバッテリモジュールであっても構わないが、近くに配置された4~6つのバッテリモジュールで群を形成することが好ましい。
【0027】
具体的には、バッテリモジュール群を構成するバッテリモジュールが、例えば、
図1に示すように、あるバッテリモジュールと、それと隣接するバッテリモジュール及び対向する位置のバッテリモジュールと、上記隣接したバッテリモジュールに対向する位置のバッテリモジュールと、で形成されていることで、検知精度の向上と早期の検知とを両立させることができる。
【0028】
つまり、バッテリモジュール群を形成しているバッテリモジュールが遠く離れていると、ガス流路が長くなるため、熱暴走の検知時期が遅くなったり、また、放出されたガスがガス流路を流れる間に温度が低下したりすることによって検知精度が低下したりすることがある。
【0029】
上記ガス流路の開口部は、ガス放出口に向けて拡径するロート型であることが好ましい。開口部がロート型をしていることで、ガス放出口から放出したガスを確実にガス流路内に導入することができ、熱暴走の検知精度が向上する。
【0030】
また、上記ガス流路は、図示しない逆止弁を有することが好ましい。
放出されたガスを、上記逆止弁によってセンサを近傍に備えるガス放出口の方向にのみ流し、センサのないところには流さないことで、放出されたガスが確実にセンサの近傍に到達するため熱暴走の検知精度が向上する。
【0031】
さらに、上記ガス流路は、近傍にセンサのない開口部と近傍にセンサがある開口部とを繋ぐ流路形状が直線的でないことが好ましい。
【0032】
本発明のバッテリモジュール群は、ガス流路の異なる開口部の近傍に少なくとも2つのセンサが設けられており、上記2つ以上のセンサによって熱暴走の検知精度を高めている。
【0033】
図2に示すように、近傍にセンサのない開口部からの流路と、近傍にセンサがある開口部からの流路とが、オフセットして繋がり、放出されたガスが少なくとも1回はガス流路の内壁に当たるように繋がっていることで、放出されたガスが1つのセンサの方向に流れるのではなく、複数のセンサの方向に分散して流れるため、さらに熱暴走の検知精度を高めることができる。
【符号の説明】
【0034】
1 バッテリパック
2 バッテリモジュール
21 ガス放出口
3 センサ
4 ガス流路
41 開口部
5 バッテリモジュール群
6 バッテリユニット