(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147143
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】バッテリパック
(51)【国際特許分類】
H01M 50/392 20210101AFI20241008BHJP
H01M 50/367 20210101ALI20241008BHJP
【FI】
H01M50/392
H01M50/367
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059966
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲
(74)【代理人】
【識別番号】100137316
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 宏
(72)【発明者】
【氏名】楊 チイ曄
【テーマコード(参考)】
5H012
【Fターム(参考)】
5H012AA07
5H012CC08
(57)【要約】
【課題】バッテリモジュールが熱暴走したとしても、ケースの絶縁抵抗の低下を抑制できるバッテリパックを提供すること。
【解決手段】本発明のバッテリパックは、バッテリモジュールをケース内に収容して成る。
そして、上記バッテリモジュールが、その内部で発生したガスを外部に放出するダクトを有し、上記ダクトが、フィンが設けられた冷却水流路を有する冷却部を備え、
さらに、上記ガスを上記冷却部で冷却して凝縮させた液体を受けるタンクを有することとしたため、電解液の飛散が防止され、ケースの絶縁抵抗の低下を防止できる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリモジュールをケース内に収容したバッテリパックであって、
上記バッテリモジュールが、その内部で発生したガスを外部に放出するダクトを有し、
上記ダクトが、フィンが設けられた冷却水流路を有する冷却部を備え、
さらに、上記ガスを上記冷却部で冷却して凝縮させた液体を受けるタンクを有することを特徴とするバッテリパック。
【請求項2】
さらに、制御部と上記タンク内に設けられた比重計を備え、
制御部が、上記タンクに流入した液体が、その比重から冷却水であると判断したとき、上記冷却部への冷却水の流れを止めることを特徴とする請求項1に記載のバッテリパック。
【請求項3】
上記冷却部の冷却水流路が、上記バッテリモジュールを冷却する冷却水流路に繋がっていることを特徴とする請求項1に記載のバッテリパック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリパックに係り、更に詳細には、バッテリモジュールを複数備えたバッテリパックに関する。
【背景技術】
【0002】
電動車などのバッテリパックは、複数のバッテリモジュールを直列に接続して電圧を高め、また並列に接続して電池容量を大きくしている。
【0003】
上記バッテリモジュールは、内部ショートや過充電などの様々な原因により熱暴走を起こすことがあり、バッテリパックは、仕切り部材で区画された複数の収容室を有するケース内にバッテリモジュールを分けて収容し、すべてのバッテリモジュールに熱暴走が伝搬することを防止している。
【0004】
特許文献1には、異なる収容室に収容されたバッテリモジュール同士を繋ぐリード線によって生じる仕切り部材の隙間を小さくすると共に、熱暴走時の排炎方向を規制して熱暴走の伝搬を防止したバッテリパックが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2019/150771号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、複数の収容室を有するケースにバッテリモジュールを分けて収容したバッテリパックは、他の収容室のバッテリモジュールに熱暴走が伝搬しないので、熱暴走が生じたバッテリモジュールを交換すれば、再使用が可能である。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のものにあっては、熱暴走によって放出されたガスに含まれる電解液がケース内に散らばって絶縁抵抗を低下させるため、バッテリモジュールを交換する際、所望の絶縁抵抗が得られるまで入念にケース内を洗浄する必要がある。
【0008】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、バッテリモジュールが熱暴走したとしても、ケースの絶縁抵抗の低下を抑制できるバッテリパックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、バッテリモジュールから放出されたガスを凝縮させてタンク内に溜めることにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明のバッテリパックは、バッテリモジュールをケース内に収容して成る。
そして、上記バッテリモジュールが、その内部で発生したガスを外部に放出するダクトを有し、上記ダクトが、フィンが設けられた冷却水流路を有する冷却部を備え、
さらに、上記ガスを上記冷却部で冷却して凝縮させた液体を受けるタンクを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、バッテリモジュールから放出されたガスを凝縮させてタンク内に溜めることとしたため、バッテリモジュールが熱暴走したとしても、ケースの絶縁抵抗の低下を防止できるバッテリパックを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明のバッテリパックの一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のバッテリパックについて詳細に説明する。
本発明のバッテリパックは、ケース内に複数のバッテリモジュールを収容して成り、各バッテリモジュールの充放電など、バッテリパック全体の監視、制御を行う(図示しない)制御部を有する。
【0014】
上記バッテリパックは、
図1に示すように、複数バッテリモジュールが、仕切り部材で区画された複数の収容室に分けて収容されている。
【0015】
このようにケース内が仕切り部材によって複数の収容室に分かれていることで、バッテリモジュールが熱暴走したとしても、他の収容室に収容されたバッテリモジュールに伝搬することが防止される。
【0016】
上記バッテリモジュールは、複数のリチウムイオン電池を備え、その内部で発生したガスを放出するダクトを有する。このダクトは、外部に開口したガス流路に繋がっており、バッテリモジュールから放出されたガスは、上記ダクトを介してガス流路を流れてバッテリパックの外部に放出される。
【0017】
しかし、上記ガス流路によっては、バッテリモジュールが熱暴走して放出されたガスをケース内に充満させずに外部にすべて放出させることは困難である。
【0018】
このケース内に充満したガスは、電解液に由来する成分を多く含み、熱暴走の停止と共に冷却されて凝縮してケース内を濡らし、ケースの絶縁抵抗を低下させる。
【0019】
本発明のバッテリパックは、
図2に示すように、上記ダクトに冷却部が設けられている。この冷却部は、ラジエタのような形状をした、フィンが設けられて表面積が増大した冷却水流路を備えており、バッテリモジュールから放出されたガスは、上記冷却部を通ることで冷却されて凝縮する。
【0020】
上記冷却部は、上記ダクトよりも径が大きなチャンバ内に設けられており、このチャンバによってバッテリモジュールから放出されたガスの流速が遅くなり、上記チャンバ内に滞留する時間が長くなるため、上記ガスを確実に凝縮させることができる。
【0021】
そして、本発明のバッテリパックは、さらに上記冷却部に繋がるタンクを有するので、上記冷却部で凝縮した液体をタンク内に溜めることができ、液体がケース内に漏れることがないので、バッテリモジュールが熱暴走したとしても、ケースの絶縁抵抗の低下を抑制することができ、バッテリパックの再生作業が容易である。
【0022】
上記冷却部の冷却水流路は、バッテリモジュールを冷却する冷却水流路とは別に設けてもよいが、バッテリモジュールを冷却する冷却水流路に繋がっていることが好ましい。
【0023】
バッテリパックのケースには、バッテリモジュールを冷却するための冷却水流路が設けられており、この冷却水流路と冷却部の冷却水流路とを繋ぎ、冷却水を還流させることで、バッテリパックのケースを大幅に変更する必要がなく、従来から用いられているケースを利用できるので安価である。
【0024】
また、上記タンクは、その内部に比重計を備えることが好ましい。
バッテリモジュールから放出されたガスと空気中の水分とが反応して酸を生じることがあり、上記冷却部は、熱伝導性が高い金属で形成されているので、上記酸によって破損し、冷却液が漏れる可能性がある。
【0025】
タンク内に流入した液体の比重を測定することで、その液体が、有機電解液であるか又は冷却水であるかを検知することができる。
【0026】
そして、上記制御部が、タンク内に溜まった液体がその比重から冷却水であると判断したとき、上記冷却部に繋がる冷却水流路に設けられたバルブを閉め、上記冷却部への冷却水の流れを止めることで、ケース内に漏れる冷却水の量を最小限にすることができ、他の収容室への浸水を防止できる。
【0027】
また、本発明のバッテリパックは、
図2に示すように、上記チャンバとタンクとを繋ぐパイプをチャンバの最下端(底)ではなく、最下端よりも少し上に設けている。
【0028】
これにより、空気中の水分が冷却部で冷やされて結露したとしても、結露水はチャンバ内に留まり、比重が小さな有機電解液のみが上記タンクに流入し、結露水がタンク内に流入することが防止されるので冷却部破損の検知精度が向上する。
【符号の説明】
【0029】
1 バッテリパック
2 ケース
21 仕切り部材
22 収容室
23 ガス流路
3 バッテリモジュール
31 ダクト
32 チャンバ
4 冷却部
41 バルブ
5 タンク
51 比重計
6 冷却水流路