(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147144
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】車両バッテリ充電装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
H02J7/00 303C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059969
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 哲雄
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA04
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA11
5G503DA07
5G503GD03
5G503GD06
(57)【要約】
【課題】シガージャックのない車両に適用可能な汎用性を有し、車両のバッテリの放電状態に応じた電圧で充電を行うことにより構成の小型化が可能な車両バッテリ充電装置を提供すること。
【解決手段】車両バッテリ充電装置100は、自装置がUSB Type-C端子を介して電力の供給側あるいは受給側として電力の入出力動作を選択的に行うUSB電源部116と、車両に搭載されたバッテリ200の充電の要否を判定する充電判定部114と、充電判定部114によって充電が必要である旨の判定が行われたときに、モバイルバッテリ300に対して、電力の供給側としての動作を要求するとともに、USB電源部116に対して、電力の受給側としての動作する設定を行うPD制御部118とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
USB PD(Power Delivery)規格に対応した携帯型充電器がUSB Type-CケーブルとUSB Type-C端子を介して接続される車両バッテリ充電装置であって、
自装置が前記USB Type-C端子を介して電力の供給側あるいは受給側として電力の入出力動作を選択的に行う電力供給/受給手段と、
車両に搭載されたバッテリの充電の要否を判定する充電判定手段と、
前記充電判定手段によって充電が必要である旨の判定が行われたときに、前記携帯型充電器に対して、電力の供給側としての動作を要求するとともに、前記電力供給/受給手段に対して、電力の受給側としての動作する設定を行う供給/受給要求・設定手段と、
を備えることを特徴とする車両バッテリ充電装置。
【請求項2】
前記バッテリの端子電圧を検出するバッテリ電圧検出手段をさらに備え、
前記充電判定手段は、前記バッテリ電圧検出手段によって検出した前記端子電圧が所定のしきい値より低下したときに充電が必要である旨の判定を行うことを特徴とする請求項1に記載の車両バッテリ充電装置。
【請求項3】
前記供給/受給要求・設定手段は、前記バッテリ電圧検出手段によって検出した前記端子電圧の高低に対応する電圧値による電力の供給/受給を行うように前記要求および前記設定を行うことを特徴とする請求項2に記載の車両バッテリ充電装置。
【請求項4】
前記バッテリは、定格電圧が12Vであり、
前記供給/受給要求・設定手段は、前記端子電圧が9V以下の所定値よりも低いときに9V3Aのプロファイルに対応する前記要求および前記設定を行い、前記端子電圧が前記所定値よりも高いときに15V3Aのプロファイルに対応する前記要求および前記設定を行うことを特徴とする請求項3に記載の車両バッテリ充電装置。
【請求項5】
利用者によって操作される操作手段をさらに備え、
前記充電判定手段は、前記操作手段が操作されて充電が指示されたときに充電が必要である旨の判定を行うことを特徴とする請求項1に記載の車両バッテリ充電装置。
【請求項6】
前記バッテリの端子電圧を検出するバッテリ電圧検出手段をさらに備え、
前記供給/受給要求・設定手段は、前記バッテリ電圧検出手段によって検出した前記端子電圧の高低に対応する電圧値による電力の供給/受給を行うように前記要求および前記設定を行うことを特徴とする請求項5に記載の車両バッテリ充電装置。
【請求項7】
前記バッテリは、定格電圧が12Vであり、
前記供給/受給要求・設定手段は、前記端子電圧が9V以下の所定値よりも低いときに9V3Aのプロファイルに対応する前記要求および前記設定を行い、前記端子電圧が前記所定値よりも高いときに15V3Aのプロファイルに対応する前記要求および前記設定を行うことを特徴とする請求項6に記載の車両バッテリ充電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されたバッテリに電力を供給する車両バッテリ充電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、第1の出力部を車両のシガージャックに接続し、バッテリ部に充電された電力を保護回路部と放電回路部を通して車両のバッテリに供給することにより、簡便に車両のバッテリを充電できるようにした自動車用の携帯用バッテリー充電装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この装置を用いることにより、車両のバッテリ上がり時に、シガージャックを介して充電電力を供給して、速やかに過放電状態から抜け出すことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した特許文献1に開示された自動車用の携帯用バッテリー充電装置は、シガージャックに接続して車両のバッテリを充電することができるため、専用の充電用端子を追加する必要がない利点を有するが、最近ではシガージャックがない車両が増えており、そのような車両についてはバッテリの充電を行うことができず、汎用性がないという問題があった。また、シガージャックに接続する第1の出力部の出力電圧を例えば16.8Vとしているため、車両のバッテリが過度に放電してその端子電圧が極端に低下している場合(例えば8.5V以下)には、これらの電位差を吸収するための回路が必要になり、構成が大型化するという問題があった。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、シガージャックのない車両に適用可能な汎用性を有し、車両のバッテリの放電状態に応じた電圧で充電を行うことにより構成の小型化が可能な車両バッテリ充電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の車両バッテリ充電装置は、USB PD(Universal Serial Bus Power Delivery)規格に対応した携帯型充電器がUSB Type-CケーブルとUSB Type-C端子を介して接続される車両バッテリ充電装置であって、自装置がUSB Type-C端子を介して電力の供給側あるいは受給側として電力の入出力動作を選択的に行う電力供給/受給手段と、車両に搭載されたバッテリの充電の要否を判定する充電判定手段と、充電判定手段によって充電が必要である旨の判定が行われたときに、携帯型充電器に対して、電力の供給側としての動作を要求するとともに、電力供給/受給手段に対して、電力の受給側として動作する設定を行う供給/受給要求・設定手段とを備えている。
【0007】
近年、携帯端末装置等の接続が可能なUSB端子を備える車両が増加しており、このような普及が進んでいるUSB端子に、外付けの携帯型充電器(モバイルバッテリ)を接続するだけで、車両のバッテリに対して充電を行うことができる。特に、外付けする携帯型充電器自体は、近年一般的なものになりつつあるUSB PD規格に対応したものであればよく、携帯端末装置やノートパソコンなどの充電用として所持あるいは購入するものをそのまま用いることができる。また、車両側についても、USB PD規格に対応したUSB端子に付随した構成を利用することができるため、本発明のために追加する構成を少なくすることが可能となる。
【0008】
また、上述したバッテリの端子電圧を検出するバッテリ電圧検出手段をさらに備え、充電判定手段は、バッテリ電圧検出手段によって検出した端子電圧が所定のしきい値より低下したときに充電が必要である旨の判定を行うことが望ましい。これにより、車両のバッテリの放電が進んで端子電圧が低下したときに、携帯型充電器を接続するだけで自動的にバッテリの充電を開始することが可能となる。
【0009】
あるいは、利用者によって操作される操作手段をさらに備え、上述した充電判定手段は、操作手段が操作されて充電が指示されたときに充電が必要である旨の判定を行うことが望ましい。これにより、車両のバッテリが過度に放電していることを利用者が認識したときや、過度な放電を未然に回避しようと考えたときなどに利用者自身が所定の操作を行った後、携帯型充電器を接続するだけでバッテリの充電を開始することが可能となる。
【0010】
また、上述した供給/受給要求・設定手段は、バッテリ電圧検出手段によって検出した端子電圧の高低に対応する電圧値による電力の供給/受給を行うように要求および設定を行うことが望ましい。具体的には、上述したバッテリは、定格電圧が12Vであり、供給/受給要求・設定手段は、端子電圧が9V以下の所定値(例えば7V)よりも低いときに9V3Aのプロファイルに対応する要求および設定を行い、端子電圧が所定値よりも高いときに15V3Aのプロファイルに対応する要求および設定を行うことが望ましい。このように、車両のバッテリの放電状態(端子電圧)に応じた充電電圧で充電を行うことにより、充電電圧とバッテリの端子電圧と間の電位差を小さくし、この電位差を吸収するための回路を簡略化することができるため、構成の小型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態の車両バッテリ充電装置の構成を示す図である。
【
図2】本実施形態の車両バッテリ充電装置の動作手順を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を適用した一実施形態の車両バッテリ充電装置について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1は、一実施形態の車両バッテリ充電装置の構成を示す図である。
図1に示すように、本実施形態の車両バッテリ充電装置100は、電源回路110、電圧検出部112、充電判定部114、USB電源部116、PD(パワーデリバリ)制御部118を含んでいる。
【0014】
電源回路110は、車両バッテリ充電装置100の各部の動作電圧Vdd(例えば3.3V)を生成する。
【0015】
電圧検出部112は、車両に搭載されたバッテリ200の端子電圧を検出する。バッテリ200は、例えば定格電圧が12Vであり、満充電時には14V以上の端子電圧を有する。
【0016】
充電判定部114は、バッテリ200の充電の要否を判定する。例えば、充電判定部114は、電圧検出部112によって検出したバッテリ200の端子電圧が所定のしきい値(過度に放電しているときであって、例えば9V)より低下したときに充電が必要である旨の判定を行う。あるいは、充電判定部114は、バッテリ200が過度の放電状態にあることを認識している利用者によって所定の操作(例えば、緊急充電を指示するための操作手段としてのスイッチの操作)が行われて充電指示が行われたときに充電が必要である旨の判定を行う。
【0017】
USB電源部116は、USB PD(Power Delivery)規格に対応した電力の送受信を行うスイッチング動作を行う。例えば、ソース(供給側)として動作する場合には、USB電源部116は、N-ch FET116aとチャージポンプ116bを用いて、バッテリ200から印加される電圧から、5V、9V、15V、20V(それぞれ3Aまたは5A)の出力電圧の電力を生成し、USB Type-C端子120から外部に供給する。また、シンク(受給側)として動作する場合には、USB電源部116は、USB Type-C端子120に送られてくる各種電圧の電力を、ハイサイドSW(スイッチ)116cを介してバッテリ200側に供給する。
【0018】
PD制御部118は、充電判定部114によってバッテリ200の充電が必要である旨の判定が行われたときであって、USB Type-C端子120にUSB Type-Cケーブル400を介してモバイルバッテリ(携帯型充電器)300が接続されたときに、このモバイルバッテリ300に対して、ソースとして動作して9V/3Aあるいは15V/3Aの電力を供給するプロファイル(PDの設定)を要求するとともに、このプロファイルの内容に対応するシンクとしての動作をUSB電源部116に設定する。
【0019】
上述したUSB電源部116が電力供給/受給手段に、充電判定部114が充電判定手段に、PD制御部118が供給/受給要求・設定手段に、電圧検出部112がバッテリ電圧検出手段にそれぞれ対応する。
【0020】
本実施形態の車両バッテリ充電装置100はこのような構成を有しており、次に、その動作を説明する。
【0021】
図2は、本実施形態の車両バッテリ充電装置100の動作手順を示す流れ図である。車両のアクセサリスイッチ(図示せず)がオンされて電源回路110による動作電圧Vddの各部への供給が開始されると、まず、電圧検出部112は、バッテリ200の端子電圧を検出する(ステップ100)。
【0022】
次に、充電判定部114は、バッテリ200の充電が必要か否かを判定する(ステップ102)。充電が必要ない場合には否定判断が行われ、この判定が繰り返される。また、充電が必要な場合、例えば、上述したようにバッテリ200の端子電圧が所定のしきい値(9V)より低下している場合や、利用者が所定の操作によって充電を指示した場合にはステップ102の判定において肯定判断が行われる。
【0023】
次に、モバイルバッテリ300が接続されると(ステップ104)、PD制御部118は、モバイルバッテリ300を電力の供給側としてのソースとして動作させるために、検出されたバッテリ200の端子電圧に応じたPDプロファイルをモバイルバッテリ300に要求する(ステップ106)。具体的には、PD制御部118は、検出電圧が7V以下の場合には9V/3Aの電力を供給するプロファイルをモバイルバッテリ300に要求し、検出電圧が7Vより高い場合には15V/3Aの電力を供給するプロファイルをモバイルバッテリ300に要求する。また、PD制御部118は、モバイルバッテリ300に要求したプロファイルに対応するシンク側(USB電源部116)の設定を行う(ステップ108)。
【0024】
このようにして充電の準備が完了した後、USB電源部116は、モバイルバッテリ300から供給される電力によってバッテリ200の充電を開始する(ステップ110)。
【0025】
このように、本実施形態の車両バッテリ充電装置100では、近年、普及が進んでいる車両のUSB Type-C端子120に、外付けのモバイルバッテリ300を接続するだけで、車両のバッテリ200に対して充電を行うことができる。特に、外付けするモバイルバッテリ300自体は、近年一般的なものになりつつあるUSB PD規格に対応したものであればよく、スマートホン等の携帯端末装置やノートパソコンなどの充電用として所持あるいは購入するものをそのまま用いることができる。また、車両側についても、USB PD規格に対応したUSB Type-C端子120に付随した構成を利用することができるため、本発明のために追加する構成(電圧検出部112や充電判定部114など)を少なくすることが可能となる。
【0026】
また、電圧検出部112によって検出したバッテリ200の端子電圧が所定のしきい値より低下したときに充電が必要である旨の判定を行う場合には、バッテリ200の放電が進んで端子電圧が低下したときに、モバイルバッテリ300を接続するだけで自動的にバッテリ200の充電を開始することが可能となる。また、車両のバッテリ200が過度に放電していることを利用者が認識したときや、過度な放電を未然に回避しようと考えたときなどに利用者自身が所定の操作を行った場合にも、モバイルバッテリ300を接続するだけでバッテリ200の充電を開始することが可能となる。
【0027】
また、バッテリ200の端子電圧の高低に応じて、具体的には、検出した端子電圧が7V以下の場合には9V3Aで、7Vよりも高い場合には15V3Aで充電を行っている。このようにして、バッテリ200の放電状態(端子電圧)に応じた充電電圧で充電を行うことにより、充電電圧とバッテリ200の端子電圧と間の電位差を小さくし、この電位差を吸収するための回路(USB電源部116内のハイサイドSW116cなど)を簡略化することができるため、構成の小型化が可能となる。
【0028】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。上述した実施形態では、1つのUSB Type-C端子120を介して1台のモバイルバッテリ300を接続する場合について説明したが、複数のUSB Type-C端子120を備える場合には、複数のモバイルバッテリ300を接続し、各端子に対応して設けられた複数の車両バッテリ充電装置100を並列接続してバッテリ200に対して同時に充電電力を供給するようにしてもよい。
【0029】
また、上述した実施形態では、バッテリ200を充電するためにシンク(受給側)としての車両バッテリ充電装置100について説明したが、携帯端末装置等から送られてくるデータをUSB Type-C端子120を介して車載のヘッドユニットなどで受信する場合には、車両バッテリ充電装置100をソース(供給側)として動作させるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
上述したように、本発明によれば、普及が進んでいる車両のUSB端子に、外付けの携帯型充電器(モバイルバッテリ)を接続するだけで、車両のバッテリに対して充電を行うことができる。特に、外付けする携帯型充電器自体は、近年一般的なものになりつつあるUSB PD規格に対応したものであればよく、携帯端末装置やノートパソコンなどの充電用として所持あるいは購入するものをそのまま用いることができる。また、車両側についても、USB PD規格に対応したUSB端子に付随した構成を利用することができるため、本発明のために追加する構成を少なくすることが可能となる。
【符号の説明】
【0031】
100 車両バッテリ充電装置
110 電源回路
112 電圧検出部
114 充電判定部
116 USB電源部
118 PD(パワーデリバリ)制御部