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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147151
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】産業用ロボット
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/06 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
B25J19/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059978
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(74)【代理人】
【識別番号】100196140
【弁理士】
【氏名又は名称】岩垂 裕司
(72)【発明者】
【氏名】濱沖 孟
(72)【発明者】
【氏名】増澤 佳久
(72)【発明者】
【氏名】矢澤 隆之
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707BS15
3C707BS26
3C707CT04
3C707CY06
3C707ES17
3C707FS01
3C707FT02
3C707HS27
3C707NS12
(57)【要約】
【課題】ガラス基板などの搬送対象物を搬送する産業用ロボットにおいて、搬送対象物が載置されるフォークの帯電を抑制する。
【解決手段】ロボット1は、搬送対象物である基板2が載置されるハンド3がアーム4の先端に連結されており、アーム4はロボット本体部5に支持される。ハンド3は、アーム4の先端に連結されるハンド基部30から直線状に延びるフォーク40を備える。フォーク40は、ハンド基部30から直線状に延びる筒状の中空部材41と、中空部材41の内部空間においてフォーク40の長手方向に延びる導電性部材60と、中空部材41の内部空間において導電性部材60に接続されるフレームグランド線65と、を備える。導電性部材60は、中空部材41の内側面に当接している。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送対象物を搬送する産業用ロボットであって、
前記搬送対象物が載置されるハンドと、前記ハンドが先端に連結されるアームと、前記アームを支持するロボット本体部と、を有し、
前記ハンドは、前記アームの先端に連結されるハンド基部と、前記ハンド基部から直線状に延びるフォークと、を備え、
前記フォークは、前記ハンド基部から直線状に延びる筒状の中空部材と、前記中空部材の内部空間において前記フォークの長手方向に延びる導電性部材と、前記中空部材の内部空間において前記導電性部材に接続されるフレームグランド線と、を備え、
前記導電性部材は、前記中空部材の内側面に当接することを特徴とする産業用ロボット。
【請求項2】
前記中空部材は、前記搬送対象物に対向する上板部を備え、
前記導電性部材は板状であり、前記上板部に内側から当接することを特徴とする請求項1に記載の産業用ロボット。
【請求項3】
前記フォークは、前記搬送対象物に向けて突出する複数の受け部を備え、
前記複数の受け部の少なくとも一部は、前記上板部に重なる取付板を介して前記中空部材に固定され、
前記取付板および前記上板部を貫通して前記中空部材の内側に突出する固定ねじの先端が前記導電性部材にねじ止めされることを特徴とする請求項2に記載の産業用ロボット。
【請求項4】
前記固定ねじは、硬質樹脂からなることを特徴とする請求項3に記載の産業用ロボット。
【請求項5】
前記複数の受け部は、前記搬送対象物を吸着する吸着部を含むことを特徴とする請求項3に記載の産業用ロボット。
【請求項6】
前記中空部材は、前記ハンド基部に接続されるフォーク基部と、前記フォーク基部から前記フォークの先端まで伸びる搬送対象物載置部と、を備え、
前記吸着部は、前記搬送対象物載置部の長手方向の両端部に配置されることを特徴とする請求項5に記載の産業用ロボット。
【請求項7】
前記搬送対象物載置部の長手方向の両端部には、前記搬送対象物の位置を規制するストッパーが配置され、
前記ストッパーは、硬質樹脂からなるストッパー固定ねじによって前記取付板に固定されることを特徴とする請求項6に記載の産業用ロボット。
【請求項8】
前記導電性部材は、前記複数の受け部の全てが配置される領域にわたって連続して延びていることを特徴とする請求項3に記載の産業用ロボット。
【請求項9】
前記導電性部材は、アルミニウム合金からなることを特徴とする請求項1に記載の産業用ロボット。
【請求項10】
前記中空部材は、炭素繊維強化プラスチックからなることを特徴とする請求項1に記載の産業用ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板などの搬送対象物を搬送する産業用ロボットに関し、特に、搬送対象物を載せて移動するハンドの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、液晶ディスプレイなどに用いられるガラス基板を搬送する産業用ロボットが記載される。特許文献1に記載の産業用ロボットは、複数本のフォークを有するハンドに大型のガラス基板を載せて搬送する。フォークは、剛性の確保と軽量化を両立するため、中空の筒状に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-020360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガラス基板などの搬送対象物を取り扱う際、搬送対象物が帯電していると、搬送対象物を取り扱う部位(フォーク)との摩擦により静電気放電が発生して搬送対象物の破損などのトラブルが発生する。従来、静電気放電の対策として、イオナイザーなどを用いて搬送対象物を除電することが提案されている。
【0005】
しかしながら、イオナイザーの設置コストが発生するため、産業用ロボットの側で搬送対象物を取り扱う部位の帯電を抑制することにより、静電気放電によるトラブルを抑制したいという要望がある。
【0006】
本発明の課題は、上記の課題を解決するため、ガラス基板などの搬送対象物を搬送する産業用ロボットにおいて、搬送対象物を載せるフォークの帯電を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、搬送対象物を搬送する産業用ロボットであって、前記搬送対象物が載置されるハンドと、前記ハンドが先端に連結されるアームと、前記アームを支持するロボット本体部と、を有し、前記ハンドは、前記アームの先端に連結されるハンド基部と、前記ハンド基部から直線状に延びるフォークと、を備え、前記フォークは、前記ハンド基部から直線状に延びる筒状の中空部材と、前記中空部材の内部空間において前記フォークの長手方向に延びる導電性部材と、前記中空部材の内部空間において前記導電性部材に接続されるフレームグランド線と、を備え、前記導電性部材は、前記中空部材の内側面に当接することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、フォークを構成する中空部材の内部空間にフレームグランド線が接続された導電性部材を配置して、中空部材の内側面に導電性部材を当接させる。このようにすると、導電性部材をフォーク内の任意の位置まで延ばすことができ、1部材でフォーク全体に発生した電荷をフレームグランド線を経由して逃がすことができる。従って、簡単な構造でありながら、フォーク全体の帯電を抑制することができる。よって、搬送対象物が帯電している場合でも、静電気放電によるトラブルを抑制できる。
【0009】
また、本発明では、中空部材に直接フレームグランド線を接続しないように構成しているので、固定用の穴を中空部材に形成する際に発生した切削屑などの異物が搬送対象物を
取り扱う空間に飛散することを抑制できる。さらに、フレームグランド線を接続する箇所は1箇所でよく、しかも、フレームグランド線は、中空部材に挿入される前に導電性部材に接続しておくことができるので、中空部材の内側の狭い空間でフレームグランド線を接続する作業を行う必要がない。従って、フレームグランド線を接続する作業が容易である。
【0010】
本発明において、前記中空部材は、前記搬送対象物に対向する上板部を備え、前記導電性部材は板状であり、前記上板部に内側から当接することが好ましい。このようにすると、搬送対象物に近い部位の電荷を逃がしやすい。従って、静電気放電の発生を抑制できる。
【0011】
本発明において、前記フォークは、前記搬送対象物に向けて突出する複数の受け部を備え、前記複数の受け部の少なくとも一部は、前記上板部に重なる取付板を介して前記中空部材に固定され、前記取付板および前記上板部を貫通して前記中空部材の内側に突出する固定ねじの先端が前記導電性部材にねじ止めされることが好ましい。このようにすると、受け部を取り付けるための取付板に導電性部材を共締めして固定できるので、固定用のねじおよびねじ穴の数を少なくすることができる。従って、部品コストおよび組立工数を削減できる。
【0012】
本発明において、固定ねじは、硬質樹脂からなることが好ましい。このようにすると、金属製のねじを使用する場合と比較して、フォークの軽量化を図ることができる。また、金属粉などの異物が搬送対象物を取り扱う空間に飛散することを抑制できる。
【0013】
本発明において、前記複数の受け部は、前記搬送対象物を吸着する吸着部を含むことが好ましい。このようにすると、搬送対象物の落下や位置ずれを抑制できる。また、フォークは中空部材により構成されているので、吸引装置と吸着部とを接続するエアチューブを吸着部まで引き回す空間を確保できる。
【0014】
本発明において、前記中空部材は、前記ハンド基部に接続されるフォーク基部と、前記フォーク基部から前記フォークの先端まで伸びる搬送対象物載置部と、を備え、前記吸着部は、前記搬送対象物載置部の長手方向の両端部に配置されることが好ましい。このようにすると、搬送対象物の両端を吸着できるので、搬送対象物を安定して保持できる。
【0015】
本発明において、前記搬送対象物載置部の長手方向の両端部には、前記搬送対象物の位置を規制するストッパーが配置され、前記ストッパーは、硬質樹脂からなるストッパー固定ねじによって前記取付板に固定されることが好ましい。このようにすると、中空部材に直接ストッパーを固定するための穴を設ける必要がない。従って、固定用の穴を中空部材に形成する際に発生した切削屑などの異物が搬送対象物を取り扱う空間に飛散することを抑制できる。また、ストッパー固定ねじは樹脂製であるため、金属製のねじを使用する場合と比較して、フォークの軽量化を図ることができ、金属粉などの異物が搬送対象物を取り扱う空間に飛散することを抑制できる。
【0016】
本発明において、前記導電性部材は、前記複数の受け部の全てが配置される領域にわたって連続して延びていることが好ましい。このようにすると、1部材で搬送対象物と接触する全範囲をカバーできるので、フレームグランド線を1本接続するだけでよく、各受け部に配置される複数の部材にそれぞれフレームグランド線を引き回して接続する作業を行う必要がない。従って、簡単な構造でありながら、搬送対象物が載せられる領域全体の帯電を抑制することができる。
【0017】
本発明において、前記導電性部材は、アルミニウム合金からなることが好ましい。この
ようにすると、フォークの軽量化を図ることができるとともに、導電性部材の部品コストを抑制できる。
【0018】
本発明において、前記中空部材は、炭素繊維強化プラスチックからなることが好ましい。このようにすると、フォークの軽量化を図り、且つ、強度を確保できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、フォークを構成する中空部材の内部空間にフレームグランド線が接続された導電性部材を配置して、中空部材の内側面に導電性部材を当接させる。このようにすると、導電性部材をフォーク内の任意の位置まで延ばすことができ、1部材でフォーク全体に発生した電荷をフレームグランド線を経由して逃がすことができる。従って、簡単な構造でありながら、フォーク全体の帯電を抑制することができる。よって、搬送対象物が帯電している場合でも、静電気放電によるトラブルを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る産業用ロボットの平面図である。
図2図1の産業用ロボットの側面図である。
図3図1の産業用ロボットを備えたガラス基板の製造システムの概略平面図である。
図4】ハンドの部分平面図および断面図である。
図5図4の領域A(第1吸着部の位置)におけるフォークの平面図および断面図である。
図6図4の領域B(第2吸着部の位置)におけるフォークの平面図および断面図と、先端側から見たフォークの端面図である。
図7図4の領域C(支持部の位置)におけるフォークの平面図および断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した産業用ロボット1の実施形態を説明する。
【0022】
(産業用ロボットの全体構成)
図1は、本発明の実施形態に係る産業用ロボットの平面図である。図2は、図1に示す産業用ロボットの側面図である。図3は、図1に示す産業用ロボットを備えるガラス基板製造システム100の概略平面図である。本明細書において、X方向、Y方向、Z方向の3方向は互いに直交する方向である。Z方向は鉛直方向(上下方向)である。X方向およびY方向は、水平方向である。
【0023】
図1図2図3に示すように、産業用ロボット1(以下、「ロボット1」とする。)は、搬送対象物である液晶ディスプレイのガラス基板2(以下、「基板2」とする。)を搬送する水平多関節型ロボットである。ロボット1は、基板2が載置される2個のハンド3と、先端側にハンド3が連結される2本のアーム4と、2本のアーム4を支持するロボット本体部5と、ロボット本体部5を水平方向に移動可能に支持するベース部材6とを備える。ロボット本体部5は、アーム4の基端側を支持するとともに昇降可能なアームサポート7と、アームサポート7を昇降可能に支持する支持フレーム8と、ロボット本体部5の下端部分を構成するとともにベース部材6に対して水平移動可能な基台9と、支持フレーム8の下端が固定されるとともに基台9に対して回転可能な旋回フレーム10とを備える。
【0024】
図3に示すように、ロボット1は、たとえば、ガラス基板製造システム100に組み込まれて使用される。ガラス基板製造システム100は、たとえば、基板2に対して所定の処理を行う4個の基板処理装置13と、処理前または処理後の基板2が収容される2個の基板収容装置14とを備える。ロボット1は、基板処理装置13への基板2の搬入および基板処理装置13からの基板2の搬出を行うとともに、基板収容装置14への基板2の搬
入および基板収容装置14からの基板2の搬出の少なくとも一方を行う。
【0025】
図3に示すように、2個の基板収容装置14は、ベース部材6に対するロボット本体部5の移動方向であるX方向において、ロボット1を挟むように配置される。4個の基板処理装置13のうちの2個の基板処理装置13は、ロボット1のY方向の一方側においてX方向に並んでいる。残りの2個の基板処理装置13は、ロボット1のY方向の他方側においてX方向に並んでいる。
【0026】
アーム4は、第1アーム部17と第2アーム部18を備える。第1アーム部17の基端側は、アームサポート7に回転可能に連結される。第1アーム部17の先端側には、第2アーム部18の基端側が回転可能に連結される。第2アーム部18の先端側には、ハンド3が回転可能に連結される。図1において2点鎖線で示すように、アーム4は、ハンド3が一定方向を向いた状態で略直線的に移動するように水平方向へ伸縮可能となっている。ロボット1は、2本のアーム4を個別に駆動する2個のアーム駆動機構を備える。
【0027】
図2図3において2点鎖線で示すように、支持フレーム8は、アームサポート7を介してハンド3およびアーム4をZ方向に昇降可能に保持する。支持フレーム8は、アームサポート7をZ方向に昇降可能に保持する柱状の第1支持フレーム20と、第1支持フレーム20を昇降可能に保持する柱状の第2支持フレーム21を備える。ロボット1は、第1支持フレーム20に対してアームサポート7を昇降させるとともに第2支持フレーム21に対して第1支持フレーム20を昇降させる昇降機構を備える。
【0028】
旋回フレーム10は、基台9の上側に配置される。旋回フレーム10の基端側は、Z方向を回転の軸方向とする回転が可能となるように基台9に支持される。旋回フレーム10の先端側の上面には、第2支持フレーム21の下端部が固定される。本形態では、アームサポート7と支持フレーム8と旋回フレーム10とによって、アーム4の基端側が回転可能に連結されるアーム支持部が構成されており、基台9は、Z方向を回転の軸方向とする回転が可能となるようにアーム支持部を支持する。ロボット1は、旋回フレーム10を回転させる回転機構を備える。
【0029】
ロボット1は、ベース部材6に対して基台9を水平移動させる水平移動機構と、基台9を水平方向へ案内するガイド機構とを備える。
【0030】
ロボット1の制御部には、アーム駆動機構、昇降機構、回転機構、および水平移動機構のそれぞれに設けられたモータおよびエンコーダが接続される。制御部は、エンコーダの検知信号に基づき各モータを制御する。ロボット1は、アーム4の伸縮動作と、アーム4等の昇降動作、回転動作および水平移動動作との組合せによって、基板処理装置13または基板収容装置14に対する基板2の搬送を行う。
【0031】
(ハンド)
図4は、ハンド3の部分平面図および断面図である。ハンド3は、アーム4の先端側に連結されるハンド基部30と、ハンド基部30から同一方向に直線状に延びる複数本のフォーク40を備える。図1に示すように、本形態のハンド3は、一定間隔で並ぶ4本のフォーク40を備える。なお、フォーク40の本数や配置間隔は、適宜変更可能である。ハンド基部30の長手方向の中央には、第2アーム部18の先端部がZ方向を回転の軸方向とする回転が可能となるように連結される。4本のフォーク40は、ハンド基部30の長手方向と直交する方向に延びている。
【0032】
(フォーク)
図1図4に示すように、各フォーク40は、ハンド基部30に接続されるフォーク基
部40Aと、フォーク基部40Aからフォーク40の先端まで伸びる搬送対象物載置部40Bを備える。ロボット1の搬送対象物である基板2は、フォーク40の搬送対象物載置部40Bに載置される。図4に示すように、搬送対象物載置部40Bは、基板2に下側から接触して基板2を支持可能な受け部50を備える。受け部50は、基板2に向けて突出する。
【0033】
本形態では、フォーク40の長手方向に一定間隔で並ぶ複数の受け部50を備える。複数の受け部50は、基板2を吸着する第1吸着部50Aおよび第2吸着部50Bを含む。本形態では、複数の受け部50のうちで最もハンド基部30に近い受け部50が、第1吸着部50Aであり、最もフォーク40の先端に近い受け部50が第2吸着部50Bである。第1吸着部50Aと第2吸着部50Bは、搬送対象物載置部40Bの長手方向の両端に配置される。
【0034】
図5(a)は、図4の領域Aにおけるフォーク40の平面図であり、図5(b)は、図4の領域Aにおけるフォーク40の断面図である。図4の領域Aには、第1吸着部50Aが設けられている。図6(a)は、図4の領域Bにおけるフォーク40の平面図であり、図6(b)は、図4の領域Bにおけるフォーク40の断面図であり、図6(c)は、先端側から見たフォーク40の端面図である。図4の領域Bには、第2吸着部50Bが設けられている。
【0035】
図4図5図6に示すように、フォーク40は、細長い筒状の中空部材41を備える。中空部材41は、ハンド基部30からフォーク40の先端まで直線状に延びている。図6(c)に示すように、中空部材41の断面形状は、角筒状である。中空部材41は、Z方向に対向する上板部42および底板部43と、X方向に対向する側板部44、45を備える。側板部44は、上板部42と底板部43の幅方向(X方向)の一方側の端縁を接続し、側板部45は、上板部42と底板部43の幅方向(X方向)の他方側の端縁を接続する。図6(b)に示すように、中空部材41の先端は、フォーク40の先端に配置される端板46によって塞がれている。基板2を支持する受け部50は、基板2と対向する上板部42に配置される。
【0036】
中空部材41は、フォーク40の剛性を確保するとともに軽量化を図るため、炭素繊維と樹脂との複合材料、例えば、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)で形成されている。図6(c)に示すように、搬送対象物載置部40Bでは、中空部材41の各部の板厚は一定である。一方、図4(b)、図5(b)に示すように、フォーク基部40Aでは、中空部材41の板厚は一定ではなく、上板部42と底板部43の板厚が搬送対象物載置部40Bにおける各部の板厚よりも大きい。従って、フォーク40は、フォーク基部40Aの剛性が搬送対象物載置部40Bの剛性よりも大きい。
【0037】
(導電性部材)
図5(b)、図6(b)、図6(c)に示すように、中空部材41の内部空間には、フォーク40の電荷を逃がすための板状の導電性部材60が配置される。導電性部材60は、中空部材41の上板部42に内側から当接する。図4に示すように、導電性部材60は、一定幅の板状の部材であり、フォーク40の長手方向に直線状に延びる。本形態では、搬送対象物載置部40Bの全範囲にわたって導電性部材60が配置される。導電性部材60は、例えば、A5052などのアルミニウム合金からなる。なお、導電性部材60は、導電性の素材からなるものであればよく、アルミニウム合金製に限定されない。
【0038】
図5(a)、図5(b)に示すように、導電性部材60のハンド基部30側の端部には、配線接続部61が設けられている。配線接続部61には、導電性のねじによってフレームグランド線65が固定される。フレームグランド線65は、中空部材41の内部空間に
通され、ハンド基部30の側から導電性部材60の位置まで延びている。導電性部材60は、フレームグランド線65を介してロボット1のフレームグランドに電気的に接続されている。例えば、アーム4を回転可能に支持する軸が設けられたアームサポート7に接続される。なお、フレームグランド線65の接続先は、電荷を逃がすことができる部位であればよく、アームサポート7に限定されない。
【0039】
(導電性部材の取付構造)
導電性部材60は、中空部材41の上板部42に内側から当接する。本形態では、複数の受け部50のそれぞれが設けられた位置において、受け部50に用いられているねじを利用して導電性部材60が中空部材41に固定される。
【0040】
図5(b)、図6(b)に示すように、第1吸着部50Aおよび第2吸着部50Bのそれぞれは、上板部42に重なる平板状の取付板55を介して中空部材41に固定される。取付板55と導電性部材60は、上板部42をZ方向の両側から挟むように配置される。第1吸着部50AのY方向の両側、および、第2吸着部50BのY方向の両側の各位置において、取付板55および上板部42を貫通する固定ねじ56の先端を導電性部材60にねじ止めすることにより、導電性部材60および取付板55が上板部42に固定される。
【0041】
図5(b)、図6(b)に示すように、第1吸着部50Aおよび第2吸着部50Bのそれぞれは、中空部材41の内側に配置される吸着部本体51を備える。第1吸着部50Aおよび第2吸着部50Bのそれぞれは、吸着部本体51に接続されるエアチューブ54を介して、ロボット本体部5の側に配置される吸引装置に接続される。エアチューブ54は、ハンド基部30の側から中空部材41の内側を第1吸着部50Aおよび第2吸着部50Bの位置まで延びている。
【0042】
第1吸着部50Aおよび第2吸着部50Bが設けられた位置では、吸着部本体51が配置される上板部42の開口部47を塞ぐように取付板55が取り付けられている。導電性部材60には、上板部42の開口部47と重なる形状の開口部62が設けられている。吸着部本体51は、取付板55を貫通して上方に突出する突出部52を備えており、突出部52の先端に配置される吸着パッド53に基板2を吸着する。吸着パッド53は、例えば、フッ素ゴムからなる。
【0043】
図7(a)は、図4の領域Cにおけるフォーク40の平面図であり、図7(b)は、図4の領域Cにおけるフォーク40の断面図である。図4に示すように、本形態では、各フォーク40に6か所の受け部50が設けられている。6か所の受け部50のうち、第1吸着部50Aおよび第2吸着部50Bを除く4か所の受け部50は、吸着機能を持たない受け部50である。図7は、吸着機能を持たない受け部50の構成を示す。
【0044】
図7(b)に示すように、受け部50は、基板2に下側から接触する基板受け部材59を備える。基板受け部材59は、上板部42の開口部48を塞ぐように配置された取付板57に固定され、取付板57を介して上板部42に固定される。第1吸着部50Aおよび第2吸着部50Bが設けられた箇所と同様に、この部位でも、取付板57と導電性部材60は上板部42を挟むように配置される。取付板57および上板部42を貫通する固定ねじ58の先端を導電性部材60のねじ穴にねじ止めすることにより、導電性部材60および取付板55が上板部42に固定される。
【0045】
(ストッパー)
中空部材41には、フォーク40の長手方向における基板2の両端の位置を規制するストッパー70が取り付けられている。ストッパー70は、搬送対象物載置部40Bの長手方向の両端部に配置される。図5(b)に示すように、ストッパー70は、取付板55を
介して中空部材41に固定される。ストッパー70は、ストッパー固定ねじ71によって取付板55に固定される。ストッパー70は、第1吸着部50Aおよび第2吸着部50Bの吸着パッド53よりも上方に突出する形状をしている。
【0046】
本形態では、取付板55、57を介して部品を中空部材41に固定するねじは、硬質樹脂からなる。例えば、取付板55と導電性部材60とを共締めする固定ねじ56、取付板57と導電性部材60とを共締めする固定ねじ58、および、ストッパー固定ねじ71は、いずれもポリエーテルエーテルケトン(PEEK)からなる。なお、固定ねじ56、58およびストッパー固定ねじ71は、ポリエーテルエーテルケトン製に限定されるものではなく、他の素材からなるものであってもよい。
【0047】
(本形態の主な作用効果)
以上説明したように、本形態のロボット1(産業用ロボット)は、基板2が載置されるハンド3と、ハンド3が先端に連結されるアーム4と、アーム4を支持するロボット本体部5と、を有する。ハンド3は、アーム4の先端に連結されるハンド基部30と、ハンド基部30から直線状に延びるフォーク40と、を備える。フォーク40は、ハンド基部30から直線状に延びる筒状の中空部材41と、中空部材41の内部空間においてフォーク40の長手方向に延びる導電性部材60と、中空部材41の内部空間において導電性部材60に接続されるフレームグランド線65と、を備える。導電性部材60は、中空部材41の内側面に当接する。
【0048】
本形態は、フォーク40を構成する中空部材41の内部空間にフレームグランド線65が接続された導電性部材60を配置して、中空部材41の内側面に導電性部材60を当接させる。このようにすると、中空部材41の内部空間を利用して、導電性部材60をフォーク40の任意の位置まで延ばすことができるので、1部材でフォーク40全体に発生した電荷をフレームグランド線65を経由して逃がすことが可能である。従って、簡単な構造でありながら、基板2が載せられる領域全体の帯電を抑制することができる。よって、基板2が帯電している場合でも、静電気放電による基板2の損傷などのトラブルを抑制できる。
【0049】
また、本形態では、中空部材41に直接フレームグランド線65を接続しないように構成しているので、フレームグランド線65を接続するための穴を中空部材41に形成する必要がない。従って、中空部材41に穴を形成する際に発生した切削屑などの異物が基板2を取り扱う空間に飛散することを抑制できる。さらに、1部材でフォーク40全体の帯電を抑制できるので、フレームグランド線65を接続する箇所は1箇所でよく、しかも、フレームグランド線65は、中空部材41に挿入される前に導電性部材60に接続しておくことができるので、中空部材41の内側の狭い空間でフレームグランド線65を接続する作業を行う必要がない。従って、フレームグランド線65を接続する作業が容易である。
【0050】
本形態では、中空部材41は、基板2に対向する上板部42を備え、導電性部材60は板状であり、上板部42に内側から当接する。このような位置に導電性部材60を配置することにより、基板2に近い部位の電荷を逃がしやすい。従って、静電気放電の発生を抑制できる。
【0051】
本形態では、フォーク40は、基板2を支持する複数の受け部50を備える。複数の受け部50のそれぞれは、上板部42に重なる取付板55もしくは取付板57を介して中空部材41に固定される。複数の受け部50のうちの一部(第1吸着部50Aおよび第2吸着部50B)では、取付板55および上板部42を貫通して中空部材41の内側に突出する固定ねじ56の先端が導電性部材60にねじ止めされる。他の受け部50では、取付板
57および上板部42を貫通して中空部材41の内側に突出する固定ねじ58の先端が導電性部材60にねじ止めされる。このように、本形態では、複数の受け部50のそれぞれに対応する位置で導電性部材60を固定することができるので、長尺の導電性部材60を中空部材41の内面に確実に接触させることができる。また、複数の受け部50のそれぞれに対応する位置で、各受け部50を中空部材41に取り付けるための取付板55、57に導電性部材60を共締めして固定するように構成したので、固定用のねじおよびねじ穴の数を少なくすることができる。従って、部品コストおよび組立工数を削減できる。
【0052】
本形態では、複数の受け部50は、基板2を吸着する第1吸着部50Aおよび第2吸着部50Bを含むため、フォーク40からの基板2の落下や位置ずれを抑制できる。また、フォーク40は中空部材41により構成されているので、吸引装置と第1吸着部50Aおよび第2吸着部50Bとを接続するエアチューブ54を引き回す空間を確保できる。
【0053】
なお、導電性部材60を中空部材41に固定する位置は、複数の受け部50の全ての位置に限定されるものではなく、複数の受け部50のうちの一部の位置であってもよい。
【0054】
本形態では、固定ねじ56、58は硬質樹脂からなる。例えば、固定ねじ56、58は硬質の非導電性樹脂であるポリエーテルエーテルケトン(PEEK)からなる。樹脂製のねじを用いることにより、金属製のねじを使用する場合と比較して、フォーク40の軽量化を図ることができる。また、金属粉などの異物が基板2を取り扱う空間に飛散することを抑制できる。
【0055】
本形態では、中空部材41は、ハンド基部30に接続されるフォーク基部40Aと、フォーク基部40Aからフォーク40の先端まで伸びる搬送対象物載置部40Bと、を備える。第1吸着部50Aおよび第2吸着部50Bは、搬送対象物載置部40Bの長手方向の両端部に配置される。このように、本形態では、基板2の両端を吸着できるように構成しているので、基板2を安定して保持することができる。
【0056】
本形態では、搬送対象物載置部40Bの長手方向の両端部には、基板2の位置を規制するストッパー70が配置される。ストッパー70は、硬質樹脂からなるストッパー固定ねじ71によって取付板55に固定される。このように、取付板55、57を介してストッパー70を固定する場合には、中空部材41に直接ストッパー70を固定するための穴を設ける必要がない。従って、固定用の穴を中空部材41に形成する際に発生した切削屑などの異物が基板2を取り扱う空間に飛散することを抑制できる。また、樹脂製のねじを用いることにより、金属製のねじを使用する場合と比較して、フォーク40の軽量化を図ることができ、金属粉などの異物が基板2を取り扱う空間に飛散することを抑制できる。
【0057】
本形態では、導電性部材60は、複数の受け部50の全てが配置される領域にわたって連続して延びている。このようにすると、1部材で基板2と接触する全範囲をカバーできるので、フレームグランド線65を1本接続するだけでよく、各受け部50に配置される複数の部材にそれぞれフレームグランド線65を引き回して接続する作業を行う必要がない。従って、簡単な構造でありながら、基板2が載せられる領域全体の帯電を抑制することができる。なお、導電性部材60が配置される範囲は、搬送対象物載置部40Bの全範囲(すなわち、複数の受け部50の全てが配置される)でなくてもよく、その一部であってもよい。
【0058】
本形態では、導電性部材60は、アルミニウム合金からなる。従って、フォーク40の軽量化を図ることができるとともに、導電性部材60の部品コストを抑制できる。
【0059】
本形態では、中空部材41は、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)からなる。従っ
て、フォーク40の軽量化を図り、且つ、強度を確保できる。
【符号の説明】
【0060】
1…ロボット(産業用ロボット)、2…基板(ガラス基板)、3…ハンド、4…アーム、5…ロボット本体部、6…ベース部材、7…アームサポート、8…支持フレーム、9…基台、10…旋回フレーム、13…基板処理装置、14…基板収容装置、17…第1アーム部、18…第2アーム部、20…第1支持フレーム、21…第2支持フレーム、30…ハンド基部、40…フォーク、40A…フォーク基部、40B…搬送対象物載置部、41…中空部材、42…上板部、43…底板部、44、45…側板部、46…端板、47、48…開口部、50A…第1吸着部、50B…第2吸着部、50…受け部、51…吸着部本体、52…突出部、53…吸着パッド、54…エアチューブ、55、57…取付板、56、58…固定ねじ、59…基板受け部材、60…導電性部材、61…配線接続部、62…開口部、65…フレームグランド線、70…ストッパー、71…ストッパー固定ねじ、100…ガラス基板製造システム
図1
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図7