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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147152
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 33/16 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
H02K33/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059979
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(74)【代理人】
【識別番号】100196140
【弁理士】
【氏名又は名称】岩垂 裕司
(72)【発明者】
【氏名】森 亮
【テーマコード(参考)】
5H633
【Fターム(参考)】
5H633BB08
5H633GG02
5H633GG06
5H633GG09
5H633GG26
5H633GG27
5H633HH03
5H633HH05
5H633HH14
5H633JA02
(57)【要約】
【課題】支持体に対して可動体が振動するアクチュエータにおいて、接続体と支軸との間に介在する内枠部材のコスト低減を図るとともに、支軸への固定強度を確保する。
【解決手段】アクチュエータ1は、筒状のケース20を備えた支持体2の内側に支軸30を備えた可動体3を配置し、可動体3を支軸30の軸線方向に振動させる。支軸30の両端を支持体2に接続する第1接続体11、第2接続体12は、支軸30を外周側から保持する第1内枠部36、第2内枠部37の外周面に接合される。第1内枠部36と第2内枠部37は、外周面に第1接続体11が接続される樹脂製の第1部材38と、第1部材38の内側に嵌合する金属製の第2部材39を備える。第2部材39の中心に支軸30を圧入することにより、第2部材39を介して第1部材38に支軸30が固定される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のケースおよび前記ケースの内側に配置される外枠部を備える支持体と、
前記ケースの中心に配置される支軸および前記支軸を外周側から保持する内枠部を備える可動体と、
前記外枠部および前記内枠部に接続され、弾性および粘弾性の少なくとも一方を備えた接続体と、
磁石およびコイルを備え、前記可動体を前記支持体に対して前記支軸の軸線方向に相対移動させる磁気駆動機構と、を有し、
前記内枠部は、外周面に前記接続体が接続される樹脂製の第1部材、および、前記第1部材の内側に嵌合する金属製の第2部材を備え、
前記第2部材の中心穴に前記支軸が圧入されることにより、前記第2部材を介して前記第1部材に支軸が固定されることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
前記第2部材は、平板状の板部と、前記板部の中心を貫通する前記中心穴の縁から立ち上がる立ち上がり部と、を備えるプレス加工品であることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記第1部材は、外周面に前記接続体が接続される外側筒部と、前記外側筒部の内側に配置される内側筒部と、前記外側筒部の内周面から突出して前記内側筒部に接続される接続部と、を備え、
前記第2部材は、前記外側筒部の内側に嵌合し、
前記支軸は、前記内側筒部の内側に中間ばめの状態で篏合することを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記外側筒部の肉厚と前記内側筒部の肉厚が略同一であることを特徴とする請求項3に記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記接続体は、ゲル状部材であることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項6】
前記内枠部、前記接続体、および前記外枠部は、前記支軸の前記軸線方向の両端に配置されることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項7】
前記コイルは、前記支持体に配置され、
前記可動体は、前記コイルの内周に配置される前記磁石と、前記磁石と前記軸線方向に重なるヨークを備え、前記支軸は前記磁石および前記ヨークの中心を貫通することを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動体を支持体に対して相対移動させるアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
アクチュエータとして、可動体および支持体に接続された接続体と、支持体に対して可動体を移動させる磁気駆動機構とを備えた構成が提案されている。特許文献1には、接続体としてゲル状部材を用いたアクチュエータが記載される。特許文献1のアクチュエータでは、支持体は、円筒形のケースを備える。可動体は、磁石およびヨークと、磁石およびヨークの中心を貫通する支軸を備えており、支軸の軸線方向の両端が円筒状の接続体を介してケースに接続される。接続体はゲル状部材である。
【0003】
円筒状のゲル状部材は、筒状の内枠部材と外枠部材との間に配置され、内枠部材と外枠部材とを接続する。内枠部材は可動体側の部品である支軸に固定され、外枠部材は支持体側の部品であるコイルホルダを介してケースに固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-083510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、ゲル状部材と支軸とを接続する内枠部材として、金属製の第1部材を用いる。内枠部材は、例えば削り出し加工により製造され、圧入により支軸に固定される。しかしながら、アクチュエータの部品の中で、金属の削り出し部品である内枠部材はコストが高いため、コストダウンが求められている。内枠部材の素材をコストの安い樹脂に置き換えると、支軸に対する固定強度が不足するおそれがある。
【0006】
また、特許文献1では、接続体の内周面に内枠部材が接合され、接続体の外周面に外枠部材が接合されることによりゲル状部材である接続体の取り扱いを容易にしているが、内枠部材を支軸に圧入する作業は、内枠部材に接続体(ゲル状部材)が接合された状態で行わなければならないため、組立時に接続体が傷つくおそれがある。例えば、圧入用の治具に内枠部材を保持させる際、治具によって接続体が傷つくおそれがある。従って、部品の取り扱いに注意が必要となり、組立作業が困難である。
【0007】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、内枠部材の部品コストの低減を図るとともに、支軸への固定強度を確保し、かつ、アクチュエータの組立容易性を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係るアクチュエータは、筒状のケースおよび前記ケースの内側に配置される外枠部を備える支持体と、前記ケースの中心に配置される支軸および前記支軸を外周側から保持する内枠部を備える可動体と、前記外枠部および前記内枠部に接続され、弾性および粘弾性の少なくとも一方を備えた接続体と、磁石およびコイルを備え、前記可動体を前記支持体に対して前記支軸の軸線方向に相対移動させる磁気駆動機構と、を有し、前記内枠部は、外周面に前記接続体が接続される樹脂製の第1部材、および、前記第1部材の内側に圧入される金属製の第2部材を備え、前記第2部材の中心穴に前記支軸が圧入されることにより、前記第2部材を介して前記第1部材に支軸が固定されることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、可動体に設けられた内枠部と支持体に設けられた外枠部とを接続体により接続する。内枠部は、接続体が接続される部品(樹脂製の第1部材)と、支軸が圧入される部品(金属製の第2部材)が別部材とされ、2部材を組み立てて構成する。このようにすると、支軸に対する固定強度を確保するための金属部品(第2部材)を小型化できるので、部品コストを下げることができる。また、支軸を圧入して固定する部品(第2部品)は、接続体を接続した部品(第1部材)から分離可能であるため、圧入時の部品の取り扱いが容易であり、接続体が傷つくおそれが少ない。従って、内枠部の部品コストの低減を図るとともに、内枠部の支軸への固定強度を確保し、かつ、アクチュエータの組立容易性を高めることができる。
【0010】
本発明において、前記第2部材は、平板状の板部と、前記板部の中心を貫通する前記中心穴の縁から立ち上がる立ち上がり部と、を備えるプレス加工品であることが好ましい。このようにすると、第2部材の部品コストを下げることができる。また、立ち上がり部を設けることにより、支軸の圧入しろを確保できる。従って、第2部材に対する支軸の固定強度を確保できる。
【0011】
本発明において、前記第1部材は、外周面に前記接続体が接続される外側筒部と、前記外側筒部の内側に配置される内側筒部と、前記外側筒部の内周面から突出して前記内側筒部に接続される接続部と、を備え、前記第2部材は、前記外側筒部の内側に嵌合し、前記支軸は、前記内側筒部の内側に中間ばめの状態で篏合することが好ましい。このようにすると、支軸と第1部材とを容易に組み立てることができるので、第1部材に接続体が接合された状態であっても、接続体が傷つくおそれが少ない。また、第1部材を製造する際、外側筒部と内側筒部の間に肉抜き部を設けることができ、支軸を嵌合させる部位の肉厚が厚くなりすぎないようにすることができる。
【0012】
本発明において、前記外側筒部の肉厚と前記内側筒部の肉厚が略同一であることが好ましい。このようにすると、第1部材の各部の肉厚の均一性を高めることができる。従って、成形不良を抑制できる。
【0013】
本発明において、前記接続体は、ゲル状部材である。ゲル状部材は粘弾性体であり、せん断変形する際のばね定数は線形の成分が大きいので、可動体の振動特性として、リニアリティが良好な振動特性を得ることができる。また、ゲル状部材が圧縮変形する際のばね定数は、せん断変形する際のばね定数の3倍程度になるため、可動体が振動方向と異なる方向へ移動することを抑制でき、可動体と支持体との衝突を抑制できる。
【0014】
本発明において、前記内枠部、前記接続体、および前記外枠部は、前記支軸の前記軸線方向の両端に配置されることが好ましい。このようにすると、可動体を軸線方向の両端で接続体を介して保持できる。従って、可動体を安定して振動させることができる。
【0015】
本発明において、前記コイルは、前記支持体に配置され、前記可動体は、前記コイルの内周に配置される前記磁石と、前記磁石と前記軸線方向に重なるヨークを備え、前記支軸は前記磁石および前記ヨークの中心を貫通することが好ましい。このようにすると、磁石およびヨークにより、可動体の重量を確保できる。従って、アクチュエータから出力される振動の強度を大きくすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、可動体に設けられた内枠部と支持体に設けられた外枠部とを接続体により接続する。内枠部は、接続体が接続される部品(樹脂製の第1部材)と、支軸が圧入される部品(金属製の第2部材)が別部材とされ、2部材を組み立てて構成する。このよ
うにすると、支軸に対する固定強度を確保するための金属部品(第2部材)を小型化できるので、部品コストを下げることができる。また、支軸を圧入して固定する部品(第2部品)は、接続体を接続した部品(第1部材)から分離可能であるため、圧入時の部品の取り扱いが容易であり、接続体が傷つくおそれが少ない。従って、内枠部の部品コストの低減を図るとともに、内枠部の支軸への固定強度を確保し、かつ、アクチュエータの組立容易性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係るアクチュエータの斜視図である。
図2図1に示すアクチュエータの分解斜視図である。
図3図1に示すアクチュエータの断面図(図1のA-A断面図)である。
図4図1に示すアクチュエータの断面図(図1のB-B断面図)である。
図5】可動体の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(全体構成)
以下に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。図1は、本発明の実施形態に係るアクチュエータ1の斜視図である。図2は、図1に示すアクチュエータ1の分解斜視図である。図3図4は、図1に示すアクチュエータ1の断面図である。図3は、図1のA-A位置で切断した断面図である。図4は、図1のB-B位置で切断した断面図であり、図3と直交する方向で切断した断面図である。以下の説明において、可動体3の中心軸線Lが延在する方向を軸線方向とし、軸線方向の一方側をL1とし、軸線方向の他方側をL2とする。
【0019】
図1図4に示すように、アクチュエータ1は、支持体2と、可動体3と、支持体2および可動体3に接続された接続体10と、可動体3を支持体2に対して相対移動させる磁気駆動機構6とを備える。接続体10は、弾性および粘弾性のうちの少なくとも一方を備える。磁気駆動機構6は、可動体3に配置される磁石61と、支持体2に配置されるコイル62とを備えており、支持体2に対して可動体3を軸線方向に相対移動させる。図3図4に示すように、可動体3は、軸線方向の一方側L1の端部、および軸線方向の他方側L2の端部の各位置において、接続体10を介して支持体2と接続される。
【0020】
(支持体)
図2図4に示すように、支持体2は、筒状のケース20と、ケース20の軸線方向の一方側L1の開口を塞ぐ第1蓋部材21と、ケース20の軸線方向の他方側L2の開口を塞ぐ第2蓋部材22と、ケース20の内周側で第1蓋部材21と第2蓋部材22との間に配置されるコイルホルダ4を有する。本形態では、ケース20、第1蓋部材21、第2蓋部材22、およびコイルホルダ4は樹脂製である。また、支持体2は、コイルホルダ4の内周側に嵌まる第1外枠部51と、第1外枠部51に対して軸線方向の他方側L2に離間した位置でケース20の内周側に嵌まる第2外枠部52を有する。
【0021】
(接続体)
接続体10は、第1外枠部51の内周面に接合された環状の第1接続体11と、第2外枠部52の内周面に接合された環状の第2接続体12を備える。本形態では、後述するように、第1接続体11および第2接続体12はゲル材料を成形したゲル状部材であり、ゲル状部材自身の粘着性によって、第1外枠部51および第2外枠部52に接合されている。
【0022】
(コイルホルダ)
図2に示すように、コイルホルダ4は、環状の第1外枠部固定部41と、第1外枠部固
定部41から軸線方向の他方側L2へ突出する胴部42とを備えており、胴部42の周りにコイル62が配置される。コイル62から引き出されたコイル線63の端部は、コイルホルダ4の第1外枠部固定部41から径方向外側へ突出する2本の端子ピン64に絡げられている。図1に示すように、端子ピン64はケース20の外部へ突出しており、配線基板7に接続される。
【0023】
図4に示すように、コイルホルダ4は、第1外枠部51を軸線方向に位置決めする第1段部44を備える。第1外枠部固定部41は第1外枠部51の外周側を囲んでいる。第1外枠部固定部41の内周面には、軸線方向の他方側L2に凹む第1凹部43が設けられ、第1外枠部51は、第1凹部43に圧入される。第1段部44は、第1凹部43の軸線方向の他方側L2の端部に設けられている。本形態では、第1外枠部51の外周面に形成された環状段部511が第1段部44に対して軸線方向に当接する。
【0024】
(ケース)
ケース20は、円筒状のケース本体24と、ケース本体24の内周側に配置される第2外枠部固定部25を備える。第2外枠部固定部25は、コイルホルダ4に対して軸線方向の他方側L2に離間した位置に配置される。図2図4に示すように、第2外枠部固定部25は、ケース本体24の内周面から内周側に突出しており、ケース本体24と一体に成形される。
【0025】
図3図4に示すように、第2外枠部固定部25の内周面には、軸線方向の一方側L1に凹む第2凹部46が設けられ、第2外枠部52は、第2凹部46に圧入される。第2段部45は、第2凹部46の軸線方向の一方側L1の端部に設けられている。本形態では、第2外枠部52の外周面に形成された環状段部521が第2段部45に対して軸線方向に当接する。
【0026】
図1図4に示すように、コイルホルダ4が嵌まるケース本体24の内周面には、軸線方向に延びる複数の溝部29が形成され、各溝部29の軸線方向の他方側L2の端部に第3段部47が形成されている。図2に示すように、コイルホルダ4は、第1外枠部固定部41の外周面から突出する複数の凸部49を備える。支持体2を組み立てる際、コイルホルダ4の各凸部49は、ケース本体24の各溝部29に軸線方向の一方側L1から嵌め込まれ、第3段部47に対して軸線方向に当接する。これにより、コイルホルダ4がケース本体24に圧入されて固定される。
【0027】
(蓋部材)
図3図4に示すように、第1蓋部材21は、コイルホルダ4に設けられた第1外枠部固定部41の軸線方向の一方側L1からケース本体24に固定される。また、第2蓋部材22は、第2外枠部固定部25の軸線方向の他方側L2からケース本体24に固定される。図2に示すように、第1蓋部材21および第2蓋部材22は、それぞれ、軸線方向から見て円形の蓋部26と、蓋部26の外周縁に周方向で等間隔で配置された複数の係止部27を備える。本形態では、第1蓋部材21および第2蓋部材22は、それぞれ、3個所の係止部27を備える。係止部27は、蓋部26から外周側へ拡がる方向に傾斜して延びる爪部である。
【0028】
係止部27は、径方向に弾性変形して蓋部26と共にケース本体24の内周側に押し込まれる。ケース20は、係止部27がケース20の内側から外れることを規制する規制部28を備える。規制部28は、ケース本体24の端部から内周側に突出する凸部である。図1図2に示すように、規制部28は、ケース本体24の軸線方向の一方側L1および他方側L2の端部に、それぞれ、3個所ずつ等間隔で配置される。規制部28は、係止部27の先端に対して軸線方向に当接する。第1蓋部材21および第2蓋部材22は、係止
部27および規制部28による係止構造と、接着剤による固定と併用してケース20に固定される。第1外枠部固定部41は、ケース本体24に設けられた3個所の規制部28と軸線方向で重なる部分が切り欠かれている。従って、コイルホルダ4をケース本体24の内部に挿入する際に、第1外枠部固定部41と規制部28とが干渉することが回避される。
【0029】
(配線基板)
図2に示すように、ケース20は、軸線方向の一方側L1の縁を軸線方向の他方側L2に切り欠いた切欠き部65と、切欠き部65の他方側L2に形成された基板固定部69を備える。配線基板7は、基板固定部69の軸線方向の一方側L1の端部に設けられた爪部691、および、基板固定部69の軸線方向の他方側L2の端部に設けられた係止溝692による係止構造と、接着剤による固定とを併用して基板固定部69に固定される。図1に示すように、配線基板7には、コイル62に対する給電用のリード線8が接続される。基板固定部69には、配線基板7に対して周方向に隣接する位置でリード線8を保持するリード線保持部80が設けられている。
【0030】
アクチュエータ1を組み立てると、ケース20の切欠き部65の内周側には、コイルホルダ4の第1外枠部固定部41が配置される。図2に示すように、第1外枠部固定部41から突出する2本の端子ピン64の根本には、コイル62から引き出されたコイル線63が絡げられている。2本の端子ピン64は、第1蓋部材21の外周縁の周方向の一部から軸線方向の他方側L2に延びるカバー66と、ケース20の切欠き部65との隙間からケース20の外周側に突出し、配線基板7に設けられた2箇所の穴71に通されて、穴71の縁に設けられたランドと電気的に接続される。
【0031】
(可動体)
図5は、可動体3の分解斜視図である。図3図4図5に示すように、可動体3は、支持体2の径方向の中心において軸線方向に延びる支軸30と、支軸30の軸線方向の中央に固定された磁石61およびヨーク35と、支軸30の軸線方向の一方側L1の端部に固定された第1内枠部36と、支軸30の軸線方向の一方側L1の端部に固定された第2内枠部37を備える。支軸30は、第1内枠部36および第2内枠部37によって外周側から保持される。磁石61およびヨーク35は、支軸30に第1内枠部36および第2内枠部37が固定されることにより、支軸30の軸線方向の中央に保持される。
【0032】
支軸30は金属製の丸棒である。第1内枠部36および第2内枠部37は、同一の構成であり、軸線方向で逆向きに配置される。第1内枠部36および第2内枠部37は、それぞれ、樹脂製の第1部材38と、金属製の第2部材39を備える。第2部材39は、例えば、SECC(電気亜鉛めっき鋼板)からなる。なお、第2部材39は、SECCとは異なる金属で形成されていてもよい。図5に示すように、第2部材39は、円形の板部391と、板部391の中心を貫通する中心穴392の縁から軸線方向に立ち上がる立ち上がり部393を備える。第2部材39は、プレス加工品であり、立ち上がり部393は、バーリング加工により形成される。
【0033】
図3図4図5に示すように、第1部材38は、外側筒部381と、外側筒部381の内周に配置される内側筒部382と、外側筒部381と内側筒部382とを接続する接続部383、384を備える。外側筒部381と内側筒部382は円筒形であり、同軸に配置される。内側筒部382は、軸線方向の長さ(高さ)が外側筒部381よりも短く、外側筒部381の軸線方向の一方側L1または他方側L2の端部に配置される。接続部383は、軸線方向から見て環状であり、外側筒部381の内周面から内周側に突出して内側筒部382の外周面に接続される。接続部384は、内側筒部382の外周面から放射状に延びるリブであり、外側筒部381の内周面に接続される。図5に示すように、本形
態では、120°の角度間隔で3箇所に接続部384が配置される。
【0034】
第1内枠部36では、内側筒部382は、外側筒部381の軸線方向の他方側L2の端部に配置される。接続部383は、外側筒部381の軸線方向の略中央に配置され、内側筒部382の軸線方向の一方側L1の端部に接続される。第2部材39は、軸線方向の一方側L1から外側筒部381の内側に嵌め込まれている。
【0035】
第2内枠部37では、内側筒部382は、外側筒部381の軸線方向の一方側L1の端部に配置される。接続部383は、外側筒部381の軸線方向の略中央に配置され、内側筒部382の軸線方向の他方側L2の端部に接続される。第2部材39は、軸線方向の他方側L2から外側筒部381の内側に嵌め込まれている。
【0036】
第1内枠部36の外周面は第1接続体11に接合され、第2内枠部37の外周面は第2接続体12に接合される。本形態では、第1内枠部36の外周面および第2内枠部37の外周面は、第1部材38の外側筒部381の外周面である。第1接続体11および第2接続体12は、ゲル状部材自身の粘着性によって、樹脂製の第1部材38に接合されている。
【0037】
支軸30の端部に第1内枠部36および第2内枠部37を取り付ける際は、第1部材38と第2部材39を分離した状態で、第1部材38の中心に設けられた軸穴385に支軸30の端部を通す。後述するように、第1接続体11と第2接続体12を製造する際、インサート成形によって第1接続体11、第2接続体12にそれぞれ第1部材38を一体化させる。従って、外側筒部381の外周面に第1接続体11または第2接続体12が接合された状態の第1部材38の軸穴385に支軸30の端部を通す作業を行う。第1部材38の軸穴385は、内側筒部382を貫通する貫通穴である。軸穴385の内径は、支軸30が中間ばめの状態で嵌合する寸法である。
【0038】
次に、第2部材39を第1部材38の外側筒部381の内側に嵌め込み、第2部材39の中心穴392に支軸30の端部を圧入して、第2部材39の板部391を第1部材38の接続部383に当接させる。これにより、第2部材39を介して第1部材38に支軸30が固定される。
【0039】
図3図4に示すように、磁石61は、支軸30が貫通する軸穴610が設けられており、支軸30の軸線方向の略中央に固定される。ヨーク35は、磁石61に軸線方向の一方側L1で重なる第1ヨーク31と、磁石61に軸線方向の他方側L2で重なる第2ヨーク32を備える。
【0040】
第1ヨーク31の中央には、支軸30が貫通する軸穴310が設けられている。本形態では、第1ヨーク32は、外径寸法が磁石61の外径寸法よりわずかに大きい磁性板であり、第1ヨーク32の外周面は、磁石61の外周面より径方向外側に張り出している。第1ヨーク32は、磁石61の一方側L1の面に接着等の方法で固定されている。
【0041】
第2ヨーク32は、カップ状の第1磁性部材33と、円板状の第2磁性部材34の2つの部材からなる。第1磁性部材33は、支軸30が貫通する軸穴330が設けられた円形の端板部331と、端板部331の外縁から軸線方向の一方側L1に曲げられた曲げ部332と、曲げ部332から軸線方向の一方側L1に延びる円筒部333とを有する。本形態では、第1磁性部材33の端板部331が磁石61の軸線方向の他方側L2の端面に固定される。第2磁性部材34は、支軸30が貫通する軸穴340を備えており、第1磁性部材33の端板部331に対して磁石61とは反対側から固定される。
【0042】
可動体3は、磁石61およびヨーク35を構成する各部材の軸穴310、610、330、340に支軸30を貫通させた状態で、磁石61およびヨーク35の軸線方向の両側で第1内枠部36および第2内枠部37を支軸30に固定する。その結果、第1内枠部36が軸線方向の一方側L1から磁石61およびヨーク35を支持し、第2内枠部37が軸線方向の他方側L2から磁石61およびヨーク35を支持する結果、磁石61およびヨーク35は、支軸30に固定される。
【0043】
第2ヨークの円筒部333は、磁石61の外周面および第1ヨーク31の外周面から径方向外側に離間した位置で磁石61の外周面および第1ヨーク31の外周面に対向する。コイルホルダ4は、磁石61および第1ヨーク31の外周側を囲む円筒形の胴部42を備えており、胴部42にコイル62が巻かれている。従って、円筒部333と磁石61の外周面との間にコイル62の一部が配置される。また、円筒部333と第1ヨーク31の外周面との間にコイル62の一部が配置される。
【0044】
図2図3図4に示すように、第2磁性部材34には、円形の貫通孔341が設けられている。貫通孔341は、可動体3の重量を調整する重量調整部である。貫通孔341の数やサイズは、第2磁性部材34の外形を変更することなく、第2磁性部材34の重量を設計値に一致させるように設定されている。
【0045】
(接続体の製造方法)
第1接続体11および第2接続体12は粘弾性体からなる。例えば、第1接続体11および第2接続体12として、シリコーンゲル等からなるゲル状部材、天然ゴム、ジエン系ゴム(例えば、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム等)、非ジエン系ゴム(例えば、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等)、熱可塑性エラストマー等の各種ゴム材料及びそれらの変性材料を用いることができる。また、接続体10として用いることが可能な粘弾性体は、ゲル状部材、ゴム、あるいはその変性材料と、バネなどの弾性体とを組み合わせた複合部材であってもよい。
【0046】
本形態では、第1接続体11および第2接続体12は、針入度が90度から110度のシリコーンゲルからなる。第1接続体11および第2接続体12は、ゲル材料を型に充填して硬化させる方法(注型)により製造される。第1接続体11を成形するときは、治具によって第1内枠部36の第1部材38と第1外枠部51とを同軸に位置決めして第1外枠部51と第1部材38との間に環状の隙間を形成し、この隙間にゲル材料を充填して熱硬化させる。これにより、ゲル状部材自身の粘着性によって、第1接続体11が第1外枠部51の内周面、および、第1部材38の外周面に接合される。なお、ゲル材料を充填する前に、第1外枠部51の内周面、および第1部材38の外周面にプライマー等の接合促進剤を塗布することによって接合強度を高めることができる。
【0047】
第2接続体12についても、同様に、第2内枠部37の第1部材38と第2外枠部52との間に環状の隙間を形成し、この隙間にゲル材料を充填して熱硬化させることにより成形される。従って、アクチュエータ1を組み立てる際には、ゲル状部材を接着する工程を行わずに、支持体2と可動体3とを接続することができる。
【0048】
(アクチュエータの動作)
アクチュエータ1は、コイル62に通電することにより、磁気駆動機構6が、可動体3を軸線方向に駆動する駆動力を発生させる。コイル62への通電を切ると、可動体3は、接続体10の復帰力によって原点位置へ戻る。従って、コイル62への通電を断続的に行うことにより、可動体3は、軸線方向で振動する。また、コイル62に印加する交流波形
を調整することで、可動体3が軸線方向の一方側L1に移動する加速度と、可動体3が軸線方向の他方側L2に移動する加速度を異なるものとすることができる。それ故、アクチュエータ1を触覚デバイスとして取り付けた機器を手にした者は、軸線方向において方向性を有する振動を体感することができる。また、アクチュエータ1を利用してスピーカを構成することもできる。
【0049】
本形態では、接続体10は、支持体2と可動体3が第1方向(径方向)で対向する位置に配置され、可動体3は第1方向(径方向)に対して交差する第2方向(軸線方向)に振動する。可動体3が支持体2に対して第2方向(軸線方向)に振動する際、第1接続体11および第2接続体12は、可動体3の振動に追従してせん断方向に変形する。シリコーンゲル等のゲル状部材は、その伸縮方向によって、線形あるいは非線形の伸縮特性を備える。ゲル状部材がせん断方向に変形する際は、非線形の成分よりも線形の成分が大きい変形特性を持つ。従って、可動体3が支持体2に対して軸線方向に振動する際、第1接続体11および第2接続体12は、線形性が高い範囲で変形するので、リニアリティが良好な振動特性を得ることができる。
【0050】
なお、可動体3が径方向に移動する場合には、第1接続体11および第2接続体12が潰れる方向に変形する。ここで、ゲル状部材が潰れる方向に変形する場合のバネ定数は、ゲル状部材がせん断方向に変形する場合のバネ定数の3倍程度である。このため、可動体3が振動方向(軸線方向)とは異なる方向に移動することを抑制でき、可動体3と支持体2との衝突を抑制できる。
【0051】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態のアクチュエータ1は、筒状のケース20およびケース20の内側に配置される第1外枠部51、第2外枠部52を備える支持体2と、ケース20の中心に配置される支軸30および支軸30を外周側から保持する第1内枠部36、第2内枠部37を備える可動体3と、第1外枠部51および第1内枠部36に接続され、弾性および粘弾性の少なくとも一方を備えた第1接続体11、および、第2外枠部52および第2内枠部37に接続され、弾性および粘弾性の少なくとも一方を備えた第2接続体12と、磁石61およびコイル62を備え、可動体3を支持体2に対して支軸30の軸線方向に相対移動させる磁気駆動機構6と、を有する。第1内枠部36は、外周面に第1接続体11が接続される樹脂製の第1部材38、および、第1部材38の内側に圧入される金属製の第2部材39を備える。同様に、第2内枠部37は、外周面に第2接続体12が接続される樹脂製の第1部材38、および、第1部材38の内側に嵌合する金属製の第2部材39を備える。第1内枠部36と第2内枠部37は、いずれも、第2部材39の中心穴392に支軸30を圧入することにより、第2部材39を介して第1部材38に支軸30が固定される。
【0052】
本形態によれば、可動体3に設けられた第1内枠部36と第2内枠部37は、いずれも、第1接続体11もしくは第2接続体12が接続される部品(樹脂製の第1部材38)と、支軸30が圧入される部品(金属製の第2部材39)が別部材であり、2部材を組み立てて構成する。これにより、支軸30に対する固定強度を確保するための金属部品(第2部材39)を小型化できるので、第1内枠部36と第2内枠部37の全体を金属製とするよりも、部品コストを下げることができる。また、支軸30を圧入固定する部品(第2部品)は、ゲル状部材である第1接続体11、第2接続体12を接続した部品(第1部材38)から分離可能である。従って、圧入工程では、ゲル状部材が接合されていない部品(第2部材39)を治具に保持させて圧入工程を行うので、部品の取り扱いが容易であるとともに、ゲル状部材(第1接続体11、第2接続体12)が傷つくおそれが少ない。従って、第1内枠部36、第2内枠部37の部品コストの低減を図るとともに、第1内枠部36、第2内枠部37の支軸30への固定強度を確保し、かつ、アクチュエータ1の組立容
易性を高めることができる。
【0053】
本形態では、第2部材39は、平板状の板部391と、板部391の中心を貫通する中心穴392の縁から立ち上がる立ち上がり部393と、を備えるプレス加工品であり、支軸30は、中心穴392および立ち上がり部393の内側に圧入される。従って、第2部材の製造コストが低いため、部品コストを下げることができる。また、バーリング加工によって立ち上がり部393を設けることにより、支軸30を圧入固定する際の圧入しろを確保できる。従って、第2部材39に対する支軸30の固定強度を確保できる。
【0054】
本形態では、第1部材38は、外周面に第1接続体11もしくは第2接続体12が接続される外側筒部381と、外側筒部381の内側に配置される内側筒部382と、外側筒部381の内周面から突出して内側筒部382に接続される接続部383、384を備える。第2部材39は、外側筒部381の内側に圧入される。支軸30は、内側筒部382の内側に中間ばめの状態で篏合する。このようにすると、支軸30と第1部材38とを容易に組み立てることができるので、第1部材38にゲル状部材が接合された状態であっても、ゲル状部材が傷つくおそれが少ない。また、第1部材38を製造する際、外側筒部381と内側筒部382の間に肉抜き部を設けることができ、支軸30を嵌合させる部位の肉厚が厚くなりすぎないようにすることができる。従って、成形不良を抑制できる。本形態では、外側筒部381の肉厚と内側筒部382の肉厚が略同一にしており、第1部材38の各部の肉厚の均一性が高い。従って、成形不良を抑制できる。
【0055】
本形態では、第1接続体11および第2接続体12は、シリコーンゲルなどのゲル状部材である。ゲル状部材は粘弾性体であり、せん断変形する際のばね定数は非線形の成分よりも線形の成分が大きいので、可動体3の振動特性として、リニアリティが良好な振動特性を得ることができる。また、ゲル状部材が圧縮変形する際のばね定数は、せん断変形する際のばね定数の3倍程度になるため、可動体3が振動方向と異なる方向へ移動することを抑制できる。従って、可動体3と支持体2との衝突を抑制できる。
【0056】
本形態では、第1内枠部36と第1外枠部51とを第1接続体11により接続したダンパー部材と、第2内枠部37と第2外枠部52とを第2接続体12により接続したダンパー部材が支軸30の軸線方向の両端に配置される。従って、可動体3を軸線方向の両端で第1接続体11と第2接続体12を介して保持できるため、可動体3を安定して振動させることができる。
【0057】
本形態では、コイル62は、支持体2に配置され、可動体3は、コイル62の内周に配置される磁石61と、磁石61と軸線方向に重なるヨーク35を備え、支軸30は磁石61およびヨーク35の中心を貫通する。従って、磁石61およびヨーク35により、可動体3の重量を確保できるため、アクチュエータ1から強い振動を出力することができる。
【符号の説明】
【0058】
1…アクチュエータ、2…支持体、3…可動体、4…コイルホルダ、6…磁気駆動機構、7…配線基板、8…リード線、10…接続体、11…第1接続体、12…第2接続体、20…ケース、21…第1蓋部材、22…第2蓋部材、24…ケース本体、25…第2外枠部固定部、26…蓋部、27…係止部、28…規制部、29…溝部、30…支軸、31…第1ヨーク、32…第2ヨーク、33…第1磁性部材、34…第2磁性部材、35…ヨーク、36…第1内枠部、37…第2内枠部、38…第1部材、39…第2部材、41…第1外枠部固定部、42…胴部、43…第1凹部、44…第1段部、45…第2段部、46…第2凹部、47…第3段部、49…凸部、51…第1外枠部、52…第2外枠部、61…磁石、62…コイル、63…コイル線、64…端子ピン、65…切欠き部、66…カバー、69…基板固定部、71…穴、80…リード線保持部、310、330、340、6
10…軸穴、331…端板部、332…曲げ部、333…円筒部、341…貫通孔、381…外側筒部、382…内側筒部、383、384…接続部、385…軸穴、391…板部、392…中心穴、393…立ち上がり部、511…環状段部、521…環状段部、691…爪部、692…係止溝、L…中心軸線、L1…軸線方向の一方側、L2…軸線方向の他方側
図1
図2
図3
図4
図5