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特開2024-147153測定装置、測定方法、および測定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147153
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】測定装置、測定方法、および測定プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/17 20060101AFI20241008BHJP
   G01N 21/59 20060101ALI20241008BHJP
   C02F 1/00 20230101ALI20241008BHJP
【FI】
G01N21/17 A
G01N21/59 Z
C02F1/00 V
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059984
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】593204650
【氏名又は名称】東西化学産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】北村 駿
(72)【発明者】
【氏名】平兼 正之
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB04
2G059BB06
2G059EE01
2G059KK04
2G059MM09
2G059MM10
(57)【要約】
【課題】属人的な因子が低減された透視度の測定装置、測定方法、および測定プログラムを実現する。
【解決手段】試料Wの透視度を測定する測定装置1であって、少なくとも一つの透視面21を有し、試料Wを収容する収容部2と、収容部2に収容されている試料Wを通して透視面21から見通せる位置に配置された目印3と、透視面21を介して目印3を撮影可能な位置に設置された撮影装置4と、演算装置5と、を備え、演算装置5が、撮影装置4が撮影した目印3の画像に基づいて試料Wの透視度を特定する透視度特定機能を実現可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の透視度を測定する測定装置であって、
少なくとも一つの透視面を有し、前記試料を収容する収容部と、
前記透視面から前記収容部に収容されている前記試料を通して見通せる位置に配置された目印と、
前記透視面を介して前記目印を撮影可能な位置に設置された撮影装置と、
演算装置と、を備え、
前記演算装置が、前記撮影装置が撮影した前記目印の画像に基づいて前記試料の透視度を特定する透視度特定機能を実現可能である測定装置。
【請求項2】
前記演算装置が、前記透視度特定機能において、前記画像上に設定される所定の線に沿う当該画像の変化挙動に基づいて前記試料の透視度を特定する請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記演算装置が、前記透視度特定機能において、前記撮影装置が撮影した前記目印の画像を入力すると当該画像から推定される前記試料の透視度の推定値を出力する学習済みモデルの出力値を、前記試料の透視度として特定する請求項1に記載の測定装置。
【請求項4】
前記演算装置が、透視度が既知である標準試料が前記収容部に収容されているときに前記撮影装置が撮影した前記目印の画像と、当該標準試料の透視度と、の組を複数用いて、前記撮影装置が撮影した前記目印の画像を入力すると当該画像から推定される前記試料の透視度の推定値を出力する学習済みモデルを生成するモデル生成機能をさらに実現可能である請求項1~3のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項5】
前記収容部が、前記試料が流入する流入口と、前記試料が流出する流出口と、を有する請求項1~3のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項6】
少なくとも一つの透視面を有する収容部に試料を収容する工程と、
前記透視面から前記収容部に収容されている前記試料を通して見通せる位置に配置された目印を、前記透視面を介して撮影して当該目印の画像を得る工程と、
前記画像に基づいて前記試料の透視度を特定する工程と、を備える測定方法。
【請求項7】
コンピュータにおいて実行されたときに、
少なくとも一つの透視面を有する収容部に収容されている試料を通して前記透視面から見通せる位置に配置された目印を、前記透視面を介して撮影して得た当該目印の画像に基づいて、前記試料の透視度を特定する透視度特定機能を実現させる測定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料の透視度を測定する測定装置、測定方法、および測定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
プールや浴場などの水質管理に用いられる指標の一つに、透視度がある。従来、透視度を測定は、検査員の目視による検査を要する方法で行われることが一般的だった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-153238号公報
【特許文献2】特開2009-222719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の方法によって正確かつ再現性がある測定を行おうとすると、検査員の熟練が求められた。そのため、検査対象の設備および検査頻度の増やすことが難しかった。また、検査員の目視による検査の結果をプールや浴場などの循環設備の運転条件に適時に反映することが難しかった。
【0005】
そこで、属人的な因子が低減された透視度の測定装置、測定方法、および測定プログラムの実現が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る測定装置は、試料の透視度を測定する測定装置であって、少なくとも一つの透視面を有し、前記試料を収容する収容部と、前記透視面から前記収容部に収容されている前記試料を通して見通せる位置に配置された目印と、前記透視面を介して前記目印を撮影可能な位置に設置された撮影装置と、演算装置と、を備え、前記演算装置が、前記撮影装置が撮影した前記目印の画像に基づいて前記試料の透視度を特定する透視度特定機能を実現可能であることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る測定方法は、少なくとも一つの透視面を有する収容部に試料を収容する工程と、前記透視面から前記収容部に収容されている前記試料を通して見通せる位置に配置された目印を、前記透視面を介して撮影して当該目印の画像を得る工程と、前記画像に基づいて前記試料の透視度を特定する工程と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る測定プログラムは、コンピュータにおいて実行されたときに、少なくとも一つの透視面を有する収容部に収容されている試料を通して前記透視面から見通せる位置に配置された目印を、前記透視面を介して撮影して得た当該目印の画像に基づいて、前記試料の透視度を特定する透視度特定機能を実現させることを特徴とする。
【0009】
これらの構成によれば、検査員による検査を介在させることなく、試料の透視度を測定できる。すなわち、透視度の測定において、属人的な因子を低減できる。
【0010】
以下、本発明の好適な態様について説明する。ただし、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定されるわけではない。
【0011】
本発明に係る測定装置は、一態様として、前記演算装置が、前記透視度特定機能において、前記画像上に設定される所定の線に沿う当該画像の変化挙動に基づいて前記試料の透視度を特定することが好ましい。
【0012】
この構成によれば、画像から透視度を特定する条件が比較的単純になりやすい。
【0013】
本発明に係る測定装置は、一態様として、前記演算装置が、前記透視度特定機能において、前記撮影装置が撮影した前記目印の画像を入力すると当該画像から推定される前記試料の透視度の推定値を出力する学習済みモデルの出力値を、前記試料の透視度として特定することが好ましい。
【0014】
この構成によれば、学習済みモデルの生成に用いた教師データの範囲外にある透視度についても、測定の精度を高めやすい。
【0015】
本発明に係る測定装置は、一態様として、前記演算装置が、透視度が既知である標準試料が前記収容部に収容されているときに前記撮影装置が撮影した前記目印の画像と、当該標準試料の透視度と、の組を複数用いて、前記撮影装置が撮影した前記目印の画像を入力すると当該画像から推定される前記試料の透視度の推定値を出力する学習済みモデルを生成するモデル生成機能をさらに実現可能であることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、測定に用いる学習済みモデルを測定装置自身が生成できる。
【0017】
本発明に係る測定装置は、一態様として、前記収容部が、前記試料が流入する流入口と、前記試料が流出する流出口と、を有することが好ましい。
【0018】
この構成によれば、試料の透視度を連続的に測定できる。
【0019】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態に係る測定装置の模式図である。
図2】実施形態に係る目印を示す図である。
図3】実施形態に係る透視度特定機能に使用される評価画像の一例である。
図4】実施形態に係る透視度特定機能に使用される評価画像の一例である。
図5】透視度が高い場合の画素値の変化の一例である。
図6】透視度が低い場合の画素値の変化の一例である。
図7】変形例に係る測定装置の模式図である。
図8】変形例に係る測定装置の使用状態を示す模式図である。
図9】変形例に係る目印を示す図である。
図10】変形例に係る透視度特定機能に使用される評価画像の一例である。
図11】第一の実施例に係る分散値と石鹸水の累積添加量とのプロット図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る測定装置、測定方法、および測定プログラムの実施形態について、図面を参照して説明する。以下では、本発明に係る測定装置を、水(試料の一例である。)の透視度を測定する測定装置1、測定装置1を用いる測定方法、および測定装置1に用いられている測定プログラム、に適用した例について説明する。
【0022】
〔測定装置の構成〕
本実施形態に係る測定装置1は、収容部2と、目印3と、撮影装置4と、演算装置5と、を備える(図1)。図1では、収容部2に水Wが収容されている状態を示している。
【0023】
収容部2は、略直方体状の槽であり、四方の壁材が無色透明である。収容部2の壁材を構成する材料は限定されず、ガラス、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂など、の無色透明な材料でありうる。四方の壁材のうちの一つが、撮影装置4が配置される透視面21であり、透視面21に正対する面が対向面22である。
【0024】
本実施形態では、目印3は白黒二色の縞模様が印刷された印刷物である(図2)。目印3として、たとえば紙や板などに縞模様が印刷されたものが、印刷面を収容部2の内側に向けた姿勢で対向面22に配置されている。したがって目印3は、収容部2に収容されている水Wを通して透視面21から見通せる位置に配置されている。なお、目印3を裏側(撮影装置4から見た場合の裏側をいう。)から照明する照明装置31が設置されている。
【0025】
撮影装置4は、対象物を撮影した画像に係る画像データを生成可能な装置であり、公知のデジタルカメラを使用できる。撮影装置4が撮影した画像は、演算装置5に送信される。撮影装置4は、その視野が透視面21から収容部2の内側を向くように配置されている。したがって撮影装置4は、透視面21を介して、水W越しに目印3を撮影可能である。
【0026】
演算装置5としては、公知のコンピュータ等を使用できる。したがって演算装置5は、CPUなどの演算デバイス、ハードディスクドライブ等の記憶デバイス、液晶ディスプレイ等の表示デバイス、マウスおよびキーボードなどの入力デバイス、などを有する。演算装置5には、本実施形態に係る測定プログラムがインストールされている。
【0027】
〔測定装置の機能〕
次に、測定装置1の機能について説明する。測定装置1は、撮影装置4が撮影した目印3の画像に基づいて水Wの透視度を特定する透視度特定機能を実現可能であるが、その具体的な実施形態として二通りの実施形態を説明する。なお、特筆しない限り、以下の各機能は演算装置5による演算処理によって実現され、したがって各演算処理の実行主体は演算装置5である。
【0028】
(1)透視度特定機能の第一の実施形態
透視度特定機能の第一の実施形態では、まず、撮影装置4が撮影した目印3の画像のうち所定の範囲A(図2)に対応する部分を切り抜いたものをグレースケール処理して評価画像6(図3図4)を得る。評価画像6では、各画素の色の濃淡が256階調の画素値で表されている。
【0029】
次に、評価画像6における縞模様61(目印3の縞模様が撮影されたものである。)と交差する直線62(所定の線の一例である。)を設定し、当該直線62に沿って画素値の変化挙動を特定する(図5図6)。
【0030】
図3は、水Wの透視度が比較的高い場合に得られる評価画像6Aの模式図である。この場合は、撮影装置4が水W越しに撮影した画像において目印3が明瞭に現れやすいため、評価画像6Aにおいて縞模様61の境界線が明瞭になる。そのため、直線62が縞模様61の境界を横切る点において画素値が非連続的に変化する(図5)。
【0031】
図4は、水Wの透視度が比較的低い場合に得られる評価画像6Bの模式図である。この場合は、撮影装置4が水W越しに撮影した画像において目印3が不明瞭に現れやすいため、評価画像6Bにおいて縞模様61の境界線が不明瞭になる。そのため、直線62が縞模様61の境界を横切る点の前後で画素値が連続的に変化する(図6)。
【0032】
このように、直線62に沿う画素値の変化挙動は、水Wの透視度が高い場合には非連続的であり(図5)、水Wの透視度が低い場合には連続的である(図6)。この変化挙動の違いを用いて、水Wの透視度を特定できる。なお、画素値の変化挙動は、たとえば画素値の変化量の微分値(変化率)の分散値として数値化されうる。一例として、透視度が既知の複数の標準試料を用いて、透視度の値と画素値の変化挙動との相関関係をあらかじめ明らかにしておき、当該相関関係を演算装置5に記憶させておけば、測定時における画素値の変化挙動を当該相関関係と照合することによって測定試料(水W)の透視度を特定できる。
【0033】
(2)透視度特定機能の第二の実施形態
透視度特定機能の第二の実施形態では、学習済みモデルが用いられる。当該学習済みモデルは、撮影装置4が撮影した目印3の画像を入力すると当該画像から推定される試料の透視度の推定値を出力するものである。
【0034】
(モデル生成機能)
本実施形態では、測定装置1が、学習済みモデルを生成するモデル生成機能を実現可能である。モデル生成機能では、透視度が既知である標準試料が収容部2に収容されているときに撮影装置4が撮影した目印3の画像と、当該標準試料の透視度と、の組を教師データとして用いる教師あり学習によって、学習済みモデルが生成される。互いに透視度が異なる複数の標準試料を用意し、それぞれの標準試料を用いた場合の目印3の画像を撮影することで、透視度の値のラベルが付された画像を複数得ることができる。この画像群を教師データとして用いる。
【0035】
教師データから学習済みモデルを生成する際に使用するアルゴリズムは、特に限定されない。たとえば、サポートベクタマシン(回帰、分類)、決定木、ランダムフォレスト、勾配ブースティング、ロジスティック回帰、ニューラルネットワーク(単純パーセプトロン、多層パーセプトロン)、ガウス過程回帰、ベイジアンネットワーク、k近傍法、ラッソ回帰、重回帰分析、リッジ回帰、エラスティックネット、部分的最小二乗回帰、などが例示されるが、これらに限定されない。
【0036】
(透視度特定機能)
透視度特定機能の第二の実施形態では、まず、上記のモデル生成機能によって生成された学習済みモデルに、撮影装置4が撮影した目印3の画像を入力して、当該画像から推定される水Wの透視度の推定値を出力させる。そして、学習済みモデルの出力値を、試料の透視度として特定する。
【0037】
なお、透視度特定機能の第二の実施形態において、撮影装置4が撮影した目印3の画像に前処理を加えることは妨げられない。たとえば第一の実施形態と同様のグレースケール処理が施された画像を用いて、学習済みモデルの生成および透視度の特定が行われてもよい。
【0038】
〔変形例〕
次に、本実施形態の変形例について説明する。変形例の説明では、上記の実施形態と同一の構成要素には同じ符号を付し、説明を省略または簡略化する。
【0039】
変形例に係る測定装置1Aは、略円筒状の収容部7を備える(図7)。収容部7の側面および二つの底面は、いずれも無色透明である。二つの底面の一方は透視面71であり、透視面71に正対する面は対向面72である。透視面71に撮影装置4が配置され、対向面72に目印8が配置されている。収容部7は、透視面71および対向面72が垂直方向に沿う姿勢、すなわち円筒を横倒しにした姿勢で設置されている。また、当変形例では目印8を白黒二色の十字模様が印刷された印刷物としてある(図8)。なお、上記の実施形態と同様に、目印8を裏側から照明する照明装置81が設置されている。
【0040】
収容部7は、水Wが流入する流入口73と、水Wが流出する流出口74と、を有する。流入口73および流出口74は、いずれも収容部7の側面に設けられている。収容部7が流入口73および流出口74を有することによって、収容部7を流通する水Wの透視度を連続的に測定することが可能になる。たとえばプールや浴槽などの設備において水が循環する循環経路の中途に測定装置1(収容部7)を設ければ、当該設備を循環する水の透視度を連続的に測定できる。
【0041】
図8は、本変形例に係る測定装置1Aをプールの循環システム100に適用した例を示す。循環システム100はプール101の水を循環および濾過するシステムであり、プール101からオーバーフロー水槽102、濾過ポンプ103、濾過装置104、測定装置1A、および制御装置(不図示)を備える。プール101からオーバーフローした水はオーバーフロー水槽102に貯留され、濾過ポンプ103によって濾過装置104に送られ、濾過されたのちにプール101に戻される。測定装置1Aは、濾過ポンプ103の二次側かつ濾過装置104の一次側に設けられた分岐点から分岐した経路に接続されており、測定装置1Aを通過した水は濾過ポンプ103の一次側に戻される。
【0042】
測定装置1Aが特定した透視度は、制御装置に入力される。制御装置は、測定装置1Aから入力された透視度に基づいて、濾過ポンプ103の出力を調整する。たとえば透視度が比較的低い場合は、水中の異物が多く濾過の必要性が高い状況であると考えられるため、濾過ポンプ103の出力を増して濾過流量を大きくするように制御を行う。このような制御を行うことによって、プール101の水質を一定の水準以上に維持しやすい。これによって、利用者の快適性の向上に資する。なお、透視度が所定の基準値を超える場合に循環システム100の管理者に対して警報を発する制御を行うようにしてもよい。
【0043】
当変形例では、透視度特定機能の態様を、上記の透視度特定機能の第一の実施形態の変形例としてある。まず、撮影装置4が撮影した目印8の画像のうち所定の範囲B(図9)に対応する部分を切り抜いたものをグレースケール処理して評価画像9(図10)を得る。次に、評価画像9における十字模様91と交差する三つの直線92(92a、92b、92c)を設定し、直線92のそれぞれに沿う画素値の変化挙動を、画素値の変化量の微分値(変化率)の分散値として数値化する。最後に、それぞれの直線92に係る分散値の平均値を、測定対象の試料についての分散値として決定する。その他の点では、上記の透視度特定機能の第一の実施形態と同様である。
【0044】
〔実施例〕
以下では、実施例を示して本発明をさらに説明する。ただし、以下の実施例は本発明を限定しない。
【0045】
(1)第一の実施例
上記の実施形態に係る測定装置1を用いて試験を行った。なお、透視面21と対向面22との離間距離を600mmとし、透視度特定機能を第一の実施形態に即した態様とした。
【0046】
収容部2に試料として15Lの純水を収容し、上記の実施形態(透視度特定機能の第一の実施形態)に即して画像の撮影および画素値の変化率の分散値の特定を行った。次に、試料に5mLの石鹸水を滴下し、均一に混合した後に、画像の撮影および分散値の特定を行った。さらに、試料に5mLの石鹸水を追加して累計10mLの石鹸水を加えた試料とした上で、画像の撮影および分散値の特定を行った。以降同様に、石鹸水の累積添加量を、順に15mL、20mL、25mL、30mL、35mL、40mL、45mL、50mL、60mL、70mL、80mL、90mL、および100mLとして、それぞれの累積添加量において画像の撮影および分散値の特定を順次行った。
【0047】
一連の測定において特定された分散値と、各分散値が得られた時点の石鹸水の累積添加量と、をプロットして、分散値と石鹸水の累積添加量との相関関係を特定した(図11)。図11に示すように、分散値と石鹸水の累積添加量との相関関係が連続的な曲線として特定された。
【0048】
純水に石鹸水を添加するとき、石鹸水の添加量が多いほど試料の透視度が低下する関係が成立する。本実施例では、透視度を定量化することに替えて、石鹸水の添加量を透視度の指標値としている。すなわち、指標値である石鹸水の添加量が大きいほど、試料の透視度が低いことを表す。上記の一連の手順は、石鹸水の添加量(透視度)が既知の複数の標準試料を用いて、石鹸水の添加量(透視度)の値と分散値(画素値の変化挙動)との相関関係をあらかじめ明らかにした例である。
【0049】
このプロット図(図11)を用いれば、石鹸水の添加量が未知である試料について、石鹸水の添加量を特定できる。すなわち、試料を収容部2に収容し、上記の実施形態に即して画像の撮影および分散値の特定を行い、特定された分散値をプロット図(図11)において内挿すれば、当該試料における石鹸水の添加量を特定できる。なお、石鹸水の添加量と透視度の実測値との関係を別途明らかにすれば、試料における石鹸水の添加量を、試料の透視度に変換できる。
【0050】
(2)第二の実施例
上記の変形例に係る測定装置1Aを用いて試験を行った。なお、透視面71と対向面72との離間距離を400mmとし、透視度特定機能を第二の実施形態に即した態様とした。また、学習済みモデルを生成する手法を、ニューラルネットワークを用いる深層学習とした。
【0051】
学習済みモデルの生成に用いる標準試料として、濁度値が異なる16点の試料を調整した。それぞれの標準試料について、標準試料を収容部7に収容し、1000通りの外乱光環境下で撮影して1000点の画像を得た。以上の手順により、0.2以上2.1以下の既知の濁度値を有する試料の撮影画像に相当する16000点(1試料あたり1000点×16試料)の画像からなる画像群を得た。画像群を構成する16000点の画像のうち12800点(80%)の画像を教師データとし、残りをテストデータとして、学習済みモデルの生成および検証を行った。テストデータについて、画像を学習済みモデルに入力した際に出力される濁度値の推定値と、実際の濁度値と、の差がいずれも0.15以下だった。したがって、生成された学習済みモデルを用いれば、±0.15程度の精度で濁度値を推定できるといえる。
【0052】
濁度値と透視度とは、試料の濁度値が高いほど試料の透視度が低いという関係にある。本実施例では、透視度を定量化することに替えて、濁度値を透視度の指標値としている。すなわち、指標値である濁度値が大きいほど、試料の透視度が低いことを表す。上記の一連の手順は、目印の画像を入力すると当該画像から推定される試料の濁度値(透視度)の推定値を出力する学習済みモデルの出力値を、試料の濁度値(透視度)として特定するようにした例である。
【0053】
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明に係る測定装置、測定方法、測定プログラムのその他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0054】
上記の実施形態では、四方の壁材が無色透明である例について説明した。しかし、本発明に係る測定装置において、透視面の数は目印の位置および態様に応じて適宜選択可能である。たとえば、上記の実施形態に替えて四方の壁材のうち透視面21および対向面22以外の二つの壁材が不透明である態様も、本発明の一実施形態である。また、対向面22を透視面とすることに替えて、対向面22自体を目印3が印刷、刻印等された不透明な面としてもよい。このように、本発明における収容部の構成は、少なくとも一つの透視面を有する限りにおいて限定されない。また、上記の実施形態では収容部が略直方体状である例および略円筒状である例について説明したが、本発明において収容部の形状は限定されない。なお、明瞭な画像を得やすくする観点から、撮影装置と目印とを結ぶ直線と透視面とが直交するように、収容部の形状および透視面の配置が決定されることが好ましい。
【0055】
上記の実施形態では、目印が白黒二色の縞模様の印刷物である構成および白黒二色の十字模様の印刷物である構成を例として説明した。しかし、本発明において目印の態様は特に限定されない。目印が印刷物である場合、当該印刷物は上記に例示した縞模様および十字模様の他に、同心円、市松模様などが印刷されたものであってもよい。また、目印は撮影装置によって撮影可能である限りにおいて印刷物に限定されず、金属、樹脂、木材などの任意の材料で形成された物体や収容部の壁面に直接描画、刻印等された模様などであってもよい。ただし、透視度特定機能における演算処理の負荷を低減する観点から、形状および色彩が単純な目印を用いることが好ましい。特に、透視度特定機能として、画像上に設定される所定の線に沿う当該画像の変化挙動に基づいて試料の透視度を特定する態様を取る場合、目印を撮影した画像に濃淡が明確であるほど、試料の透視度の違いによる画像の変化挙動の違いが明確に現れやすくなるため、好適である。したがって上記に例示したように目印に係る模様が白黒二色であることは、好適な一態様だといえる。
【0056】
上記の実施形態では、目印を裏側から照明する照明装置が設置されている例に付いて説明した。しかし本発明において照明装置の有無は任意である。また、照明装置が設置される場合の位置も任意である。たとえば、上記に例示した目印を裏側から照明する位置に替えて、目印を表側から照明する位置に照明装置を設けてもよい。また、この場合、照明装置を収容部内(すなわち試料に浸漬される。)に設けてもよいし、収容部外に設けてもよい。
【0057】
上記の実施形態では、透視度特定機能の第一の実施形態として評価画像6における直線62に沿う画素値の変化挙動に基づいて透視度を特定する例を示し、変形例として評価画像9における三つの直線92に沿う画素値の変化挙動に基づいて透視度を特定する例を示した。このように、本発明の透視度特定機能として画像上に設定される所定の線に沿う当該画像の変化挙動に基づいて試料の透視度を特定する態様を取る場合、所定の線は単数であっても複数であってもよい。また、所定の線は直線に限定されない。さらに、変化挙動を特定する対象とする数値は画素値に限定されず、明度、彩度、濃度、輝度などの画像から抽出されうる任意の数値でありうる。
【0058】
上記の実施形態では、透視度特定機能の第二の実施形態として学習済みモデルを用いて試料の透視度を特定する例を示し、使用される学習済みモデルの生成を測定装置1が行う構成を例として説明した。しかし本発明において学習済みモデルを利用する場合、その学習済みモデルの生成は、本発明に係る測定装置が行ってもよいし、他の装置が行ってもよい。
【0059】
その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、たとえばプールや浴場などの水の透視度の測定に利用できる。
【符号の説明】
【0061】
1 :測定装置
2 :収容部
21 :透視面
22 :対向面
3 :目印
31 :照明装置
4 :撮影装置
5 :演算装置
6 :評価画像
61 :縞模様
62 :直線
W :水
1A :測定装置(変形例)
7 :収容部(変形例)
71 :透視面(変形例)
72 :対向面(変形例)
73 :流入口(変形例)
74 :流出口(変形例)
8 :目印(変形例)
81 :照明装置(変形例)
9 :評価画像(変形例)
91 :十字模様(変形例)
92 :直線(変形例)
100:循環システム
101:プール
102:オーバーフロー水槽
103:濾過ポンプ
104:濾過装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図9
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図11