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特開2024-147155慣性センサー、慣性計測装置、および慣性センサーの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147155
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】慣性センサー、慣性計測装置、および慣性センサーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01P 15/08 20060101AFI20241008BHJP
   G01P 15/125 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
G01P15/08 102F
G01P15/125 Z
G01P15/08 101B
G01P15/08 102D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059986
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】江口 芳和
(57)【要約】
【課題】スティッキングの欠損を抑制できる慣性センサーを提供すること。
【解決手段】支持基板10と、支持基板10の主面17に設けられた第1固定電極11と第2固定電極12と、第1固定電極11および第2固定電極12に対して揺動可能に設けられた可動体20と、主面17に設けられた突起15と、を備え、突起15は、頂部に平坦面f1を有し、根元部に主面17に連続する凹状曲面c2を有し、頂部と根元部との間の中間部に平坦斜面f2を有する。
【選択図】図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の第1面に設けられた固定電極と、
前記固定電極に対して揺動可能に設けられた可動体と、
前記第1面に設けられた突起と、を備え、
前記突起は、頂部に平坦面を有し、根元部に前記第1面に連続する凹状曲面を有し、前記頂部と前記根元部との間の中間部に平坦斜面を有する、
慣性センサー。
【請求項2】
前記頂部は、前記平坦斜面と前記平坦面との間に凸状曲面をさらに有し、
前記可動体が前記突起に接触する場合、前記可動体は前記凸状曲面に接触する、
請求項1に記載の慣性センサー。
【請求項3】
前記突起の平面形状は、円形である、
請求項1に記載の慣性センサー。
【請求項4】
前記突起の平面形状は、多角形である、
請求項1に記載の慣性センサー。
【請求項5】
前記突起は、球台を含む、
請求項1に記載の慣性センサー。
【請求項6】
前記突起の表面に設けられ、前記可動体と同電位とされる被覆電極と、を備える、
請求項1に記載の慣性センサー。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の慣性センサーを備えた慣性計測装置。
【請求項8】
基板と、前記基板の第1面に設けられた固定電極と、前記固定電極に対して揺動可能に設けられた可動体と、前記第1面に設けられた突起と、を備えた慣性センサーの製造方法において、
前記慣性センサーの製造方法は、
前記基板をエッチングして、前記突起の第1の先駆体を形成する第1エッチング工程と、
前記第1の先駆体にハードマスクを形成するハードマスク形成工程と、
前記ハードマスクを用いて、前記第1の先駆体を等方性エッチングして、第2の先駆体を形成する第2エッチング工程と、
前記ハードマスクを除去するハードマスク除去工程と、
前記第2の先駆体を等方性エッチングして、前記突起を形成する第3エッチング工程と、を含む、
慣性センサーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、慣性センサー、当該慣性センサーを備えた慣性計測装置、および慣性センサーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板に対して揺動可能に設けられた可動体と、基板から可動体側に突出して設けられた突起と、突起に設けられ、可動体と同電位の被覆電極を有する慣性センサーが、特許文献1に記載されている。
突起は、可動体の過度の揺動を規制するストッパーである。突起は、可動体が過度に揺動した際に、可動体が突起に接触することによって、可動体のそれ以上の変位を規制する。
特許文献1に記載の慣性センサーでは、可動体が突起に接触した際に、可動体が突起に貼り付いてしまう現象、所謂「スティッキング」の発生を抑制するために、突起を、可動体と同電位の被覆電極で覆っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-21676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の慣性センサーによっても、スティッキングの発生を完全に抑制することは難しく、スティッキングの抑制について、さらなる改善が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の一態様に係る慣性センサーは、基板と、前記基板の第1面に設けられた固定電極と、前記固定電極に対して揺動可能に設けられた可動体と、前記第1面に設けられた突起と、を備え、前記突起は、頂部に平坦面を有し、根元部に前記第1面に連続する凹状曲面を有し、前記頂部と前記根元部との間の中間部に平坦斜面を有する。
【0006】
本願の一態様に係る慣性計測装置は、上記に記載の慣性センサーを備える。
【0007】
本願の一態様に係る慣性センサーの製造方法は、基板と、前記基板の第1面に設けられた固定電極と、前記固定電極に対して揺動可能に設けられた可動体と、前記第1面に設けられた突起と、を備えた慣性センサーの製造方法において、前記慣性センサーの製造方法は、前記基板をエッチングして、前記突起の第1の先駆体を形成する第1エッチング工程と、前記第1の先駆体にハードマスクを形成するハードマスク形成工程と、前記ハードマスクを用いて、前記第1の先駆体を等方性エッチングして、第2の先駆体を形成する第2エッチング工程と、前記ハードマスクを除去するハードマスク除去工程と、前記第2の先駆体を等方性エッチングして、前記突起を形成する第3エッチング工程と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態1に係る慣性センサーの平面図。
図2A図1のA-A線に沿う慣性センサーの断面図。
図2B図1のB-B線に沿う慣性センサーの断面図。
図3A図2Aの範囲IIIに係る突起の拡大断面図。
図3B図3Aに対応する拡大平面図。
図4】慣性センサーの製造工程を説明するフローチャート。
図5図4のステップS1の詳細を示すフローチャート。
図6】製造過程における一態様を示す断面図。
図7】製造過程における一態様を示す断面図。
図8】製造過程における一態様を示す断面図。
図9】製造過程における一態様を示す断面図。
図10】製造過程における一態様を示す断面図。
図11A】製造過程における一態様を示す平面図。
図11B】製造過程における一態様を示す断面図。
図12】製造過程における一態様を示す断面図。
図13】製造過程における一態様を示す断面図。
図14A】変形例1に係る突起の拡大断面図。
図14B図14Aの平面図。
図15】変形例2に係る突起の拡大平面図。
図16】変形例に係る慣性センサーの製造工程を説明するフローチャート。
図17】慣性計測装置の概略構成を示す分解斜視図。
図18】慣性センサーが実装された基板の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
なお、以下の各図面においては各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法の縮尺を異ならせて示すことがある。
また、以下では、説明の便宜上、互いに直交する、X軸、Y軸、およびZ軸の3軸を図示しており、軸方向を図示した矢印の先端側を「プラス側」、基端側を「マイナス側」としている。また、以下では、X軸に平行な方向を「X軸方向」、Y軸に平行な方向を「Y軸方向」、Z軸に平行な方向を「Z軸方向」という。また、以下では、Z軸方向に見ることを「平面視」とし、Z軸を含む断面に対してY軸方向から見ることを「断面視」とする。
【0010】
さらに、以下の説明において、例えば基板に対して、「基板上に」との記載は、基板の上に接して配置される場合、基板の上に他の構造物を介して配置される場合、または基板の上に一部が接して配置され、一部が他の構造物を介して配置される場合のいずれかを表すものとする。また、ある構成の上面との記載は、当該構成のZ軸方向プラス側の面、例えば「支柱の上面」は支柱のZ軸方向プラス側の面、を示すものとする。また、ある構成の下面との記載は、当該構成のZ軸方向マイナス側の面、例えば「可動体の下面」は可動体のZ軸方向マイナス側の面、を示すものとする。
【0011】
1.実施形態1
1.1.慣性センサーの構成
実施形態に係る慣性センサー100の概略構成について、図1図2A、および図2Bを参照して説明する。なお、図1では、説明の便宜上、蓋体30の図示を省略している。
図1は、実施形態1に係る慣性センサーを模式的に示す平面図である。図2Aは、図1におけるA-A線での断面図である。図2Bは、図1におけるB-B線での断面図である。
【0012】
本実施形態の慣性センサー100は、可動体20の変位に基づく静電容量の変化、換言すると、可動体20の変位に基づく物理量の変化を検出する物理量センサーである。
慣性センサー100は、例えば、加速度を測定する加速度センサー、いわゆる、静電容量型加速度センサーまたは静電容量型MEMS加速度センサーに用いられる。例えば、慣性センサー100としての加速度センサーは、鉛直方向の加速度を検出してもよい。
【0013】
図1図2A、および図2Bに示すように、慣性センサー100は、平板状の可動体20、可動体20を支持する基板としての支持基板10、支持基板10と共に可動体20を内包する蓋体30を含んでいる。
【0014】
図2Aおよび図2Bに示すように、支持基板10は、凹状のキャビティー16を有している。
キャビティー16内の第1面としての主面17上には、固定電極または検出電極としての第1固定電極11および第2固定電極12、被覆電極としてのダミー電極13、支柱14、および突起15が設けられている。
【0015】
支柱14は、可動体20を、第1固定電極11および第2固定電極12上に所定の間隙を空けて、支持する。
突起15は、支柱14のX軸方向プラス側およびX軸方向マイナス側のそれぞれに、設けられる。突起15は、支持基板10の主面17から可動体20側に、換言すると、Z軸方向プラス側に突出する。
【0016】
支柱14および突起15は、後述する製造方法によって、支持基板10と一体に形成される。支持基板10の材料は、特に限定されないが、本実施形態では、好適例として、絶縁性材料であるホウ珪酸ガラスからなるガラス基板を採用している。
【0017】
第1固定電極11は、断面視において、支柱14のX軸方向マイナス側に位置し、平面視において、可動体20の第1質量部21と重なる領域に設けられる。
第2固定電極12は、断面視において、支柱14のX軸方向プラス側に位置し、平面視において、可動体20の第2質量部22と重なる領域に設けられる。
【0018】
ダミー電極13は、第1固定電極11および第2固定電極12以外の主面17上に設けられている。ダミー電極13は、突起15の表面を覆うように設けられている。
ダミー電極13のうち、可動体20の第3質量部23と対向する部分は、主面17の凹部17cに設けられている。凹部17cは、主面17において一段凹んだ部分であり、可動体20の第3質量部23が衝突しないように、逃げとして設けられた部分である。
【0019】
第1固定電極11、第2固定電極12、およびダミー電極13の材料としては、例えば、Pt(プラチナ)、Al(アルミニウム)、Mo(モリブデン)、Cr(クロム)、Ti(チタン)、Ni(ニッケル)、Cu(銅)、Ag(銀)、Au(金)、または、ITO(Indium Tin Oxide)などの導電膜を採用することができる。
【0020】
可動体20は、梁部25を有し、加速度が加わった際に、梁部25を中心として、梁部25の軸線方向まわりに揺動する。すなわち、梁部25は、可動体20の回転軸または揺動軸としての機能を有する。
【0021】
突起15は支持基板10の主面17に設けられている。突起15は、可動体20が過度の振れ幅で揺動することを規制するストッパーである。例えば、可動体20に測定範囲を超えるような大きな加速度が加わった場合、可動体20は大きく振れて、可動体20の下面が突起15に接触する。そして、可動体20の下面が突起15に接触すると、可動体20は、それ以上の振れ幅で揺動することが制限される。
【0022】
また、突起15は、可動体20が支持基板10の主面17に接触することを防止する。上述したような可動体20の過度の揺動は、突起15によって制限される。より具体的には、突起15は、可動体20が揺動した際に、第1固定電極11または第2固定電極12よりも先に、可動体20に接触するように設けられている。それゆえ、可動体20が過度に揺動して、可動体20の先端部分が支持基板10の主面17に衝突することは、回避される。
【0023】
可動体20の先端部分が、支持基板10の主面17に衝突した際の衝突エネルギーは、可動体20の下面が、突起15に衝突した時の衝突エネルギーよりも大きい。したがって、突起15を有することで、可動体20の破損を回避ないし抑制することができる。
【0024】
突起15は、第1質量部21と対向して重なる領域および第2質量部22と対向して重なる領域のそれぞれに設けられる。各突起15は、支持基板10の主面17から第1質量部21または支持基板10の主面17から第2質量部22に向かって突出する。
【0025】
可動体20は、支持部24を含む。可動体20は、支持部24によって、支柱14に固定され、支持基板10と連結される。
図1に示すように、支持部24は、平面視でH形状に設けられる。支持部24は、梁部25を挟んで設けられ、Y軸方向に長い長方形の部分と、長方形の中央と梁部25とを連結する部分とを有する。
【0026】
梁部25は、中央の部分が、支持部24に支持される。また、梁部25は、支持部24に支持された部分からY軸方向プラス側およびY軸方向マイナス側に延在する部分を有する。梁部25において、Y軸方向に延在する部分は、梁部25の軸線方向に延在する部分であり、回転軸または揺動軸として機能する。
【0027】
梁部25は、支持部24および支柱14を介して、可動体20全体を、支持基板10に対して揺動可能に支持している。換言すると、梁部25は、ねじりばねとしての機能を有し、梁部25の軸線方向を、回転軸または揺動軸として、可動体20を、梁部25まわりに揺動可能に支持している。
【0028】
可動体20は、連結部28を含む。連結部28は、梁部25と、第1質量部21および第2質量部22とを接続する。連結部28は、梁部25と第1質量部21および第2質量部22との間において、梁部25と交差する交差方向、すなわち、X軸方向に設けられている。
【0029】
可動体20は、第1可動体20aと第2可動体20bとを有する。
第1可動体20aは、梁部25の中心線CL2からX軸方向マイナス側の領域であり、第2可動体20bは、中心線CL2からX軸方向プラス側の領域である。中心線CL2は、梁部25の回転軸または揺動軸と一致する。なお、中心線CL2は、梁部25の回転中心または揺動中心と、平面視で重なっている。
【0030】
第1可動体20aは、梁部25からX軸方向マイナス側に向かって順に設けられた、第1質量部21と第3質量部23とを有する。
第2可動体20bは、第2質量部22を有する。
【0031】
可動体20は、梁部25を回転軸または揺動軸として揺動可能である。可動体20が、梁部25を支点としてシーソー揺動、換言すれば、交互に傾倒することで、第1質量部21と第1固定電極11との間隙、および第2質量部22と第2固定電極12との間隙が変化する。なお、間隙は、距離で言い換えることができる。
【0032】
慣性センサー100は、可動体20の変位に基づく物理量を検出する。具体的には、可動体20の傾倒に応じて、第1質量部21と第1固定電極11との間に生じる静電容量C1の変化および第2質量部22と第2固定電極12との間で生じる静電容量C2の変化を検出する。後述する慣性計測装置3000は、慣性センサー100が検出した静電容量C1の変化および静電容量C2の変化によって、加速度を求めることができる。
【0033】
可動体20に鉛直方向の加速度、例えば重力加速度が加わった場合、第1可動体20aと第2可動体20bの各々に力のモーメントと称される回転力が生じる。
【0034】
ここで、第1可動体20aの回転力、例えば、第1可動体20aを、梁部25を支点として反時計回りに回転させる力と、第2可動体20bの回転力、例えば、第2可動体20bを、梁部25を支点として時計回りに回転させる力と、が均衡した場合を考える。この場合、可動体20の傾きに変化が生じないため、慣性センサー100は、静電容量C1の変化および静電容量C2の変化を検出することができない。
【0035】
したがって、慣性センサー100は、静電容量C1の変化および静電容量C2の変化を検出できるように、鉛直方向の加速度が加わった時に、可動体20に所定の傾きが生じるように、設計されている。具体的には、第1可動体20aは、第3質量部23を有し、梁部25は、可動体20のX軸方向の重心から外れた位置に配置されている。
【0036】
第1可動体20aは、第3質量部23を有するため、中心線CL2から第1可動体20aの端面までの距離Raと、中心線CL2から第2可動体20bの端面までの距離Rbとが異なる。したがって、第1可動体20aと第2可動体20bとは、互いに異なる質量を有する。
【0037】
このように、第1可動体20aと第2可動体20bとの質量を異ならせることにより、可動体20に鉛直方向の加速度が加わった時に生じる、第1可動体20aの回転力と第2可動体20bの回転力とを不均衡にすることができる。これにより、慣性センサー100に鉛直方向の加速度が加わった時、可動体20は、傾倒する。
【0038】
可変静電容量としての静電容量C1は、第1質量部21と第1固定電極11との間隙に応じて静電容量が変化し、可変静電容量としての静電容量C2は、第2質量部22と第2固定電極12との間隙に応じて静電容量が変化する。
【0039】
例えば、可動体20が支持基板10に対して水平の場合、静電容量C1,C2は、互いに略等しい静電容量値となる。静電容量C1の静電容量値と静電容量C2の静電容量値とが等しくなるように、可動体20が支持基板10に対して水平の場合、第1質量部21と第1固定電極11との重なり合う面積と、第2質量部22と第2固定電極12との重なり合う面積と、が等しく、また、第1質量部21と第1固定電極11との間隙と、第2質量部22と第2固定電極12との間隙と、が等しくなるように構成されている。
【0040】
また、例えば、可動体20に鉛直方向の加速度が加わり、可動体20が傾倒すると、静電容量C1および静電容量C2は、可動体20の傾倒に応じて、静電容量C1および静電容量C2の各静電容量値が変化する。可動体20が傾倒した場合、第1質量部21と第1固定電極11との間隙と、第2質量部22と第2固定電極12との間隙と、が異なるため、静電容量C1の静電容量値と静電容量C2の静電容量値とは異なる。
【0041】
可動体20は、複数の開口26を有する。開口26は、可動体20が揺動する際に、気体の粘性により生じるダンピングを低減するために設けられる。なお、ダンピングは、可動体20の動きを止めようとする働き、または、流動抵抗で言い換えることができる。
【0042】
本実施形態において、第1質量部21、第2質量部22、および第3質量部23は、それぞれ格子状に貫通する正方形の開口26を有する。開口26を有することによって、可動体20のダンピングが低減され、加速度の検出感度は向上する。なお、複数の開口26は、個々に異なる形状であってもよい。また、開口26を配置する位置や数量も自由に設定することができる。
【0043】
このような可動体20の材料は、特に限定されないが、本実施形態では、好適例として、導電性材料であるシリコンを採用している。可動体20に導電性材料を用いることで、第1質量部21と第2質量部22とに電極としての機能を持たせることができる。なお、可動体20に非電導性の基板を用いて、第1質量部21および第2質量部22を非導電性の基板の上に設けられた導電性の電極層によって形成してもよい。
【0044】
次に、突起15の配置について説明する。
図1に示すように、本実施形態では、突起15は、第1質量部21と重なる2カ所と、第2質量部22と重なる2カ所との合計4カ所に、1個ずつ、合計4個設けられている。なお、突起15を設ける箇所は、4カ所に限定されない。突起15は、2カ所、6カ所、または8カ所以上に設けてもよい。
【0045】
突起15は、梁部25に並行な直線上に、2個ずつ設けられている。これにより、可動体20と突起15とが接触した際に受ける衝撃を分散することができる。
また、梁部25に並行な直線上に設けられた2個の突起15の中心は、中心線CL1に対して線対称の距離R2の位置に設けられている。ここで、中心線CL1は、梁部25の軸線方向であるY軸方向において可動体20を2等分する。これにより、第1質量部21およびまたは第2質量部22が突起15に接触した際、可動体20の姿勢を安定させることができる。
【0046】
突起15の中心は、梁部25の回転中心と重なる中心線CL2に対して線対称の距離R1の位置に設けられている。同じ高さの突起15を梁部25に対して線対称に設けることで、梁部25を中心に揺動する第1質量部21の最大揺動角と、第2質量部22の最大揺動角とを同じにすることができる。これにより、慣性センサー100の物理量を検出する精度を向上させることができる。なお、揺動角は、回転角で言い換えることができる。
【0047】
このような突起15は、2行2列をなす4つの開口26の中心に対応する位置に設けられている。換言すると、突起15は、開口26と一致しない位置に設けられている。これにより、突起15が開口26の端部と接触することにより第1質量部21および第2質量部22が破損することを抑制することができる。また、突起15は、開口26と接触しない位置に設けられていることが好ましい。
【0048】
1.2.突起の構成
次に、突起15の構造について、図3Aおよび図3Bを参照して説明する。
図3Aは、図2Aにおいて、破線で囲った範囲IIIの突起15の拡大断面図である。図3Bは、図3Aに対応する突起15の拡大平面図であり、突起15をZ軸方向プラス側からZ軸方向マイナス側に見た平面図である。
【0049】
突起15は、支持基板10と一体に設けられており、本実施形態において、突起15の直径は、およそ3~15μmである。
突起15は、頂部と、根元部と、頂部と根元部との間の中間部とを有する。
【0050】
頂部は、突起15の頂上部分に対応する。頂部は、平坦面f1を有する。平坦面f1は、主面17に平行な平面である。
根元部は、突起15の裾野又は麓の部分に対応する。根元部は、凹状曲面c2を有する。凹状曲面c2は、主面17から頂部に向かって緩やかに立ち上がるように傾斜した凹状の曲面である。
中間部は、平坦斜面f2を有する。平坦斜面f2は、傾斜した平面である。
また、頂部は、凸状曲面c1を有する。凸状曲面c1は、平坦面f1と中間部の平坦斜面f2との間をつなぐ部分であり、平坦面f1と平坦斜面f2との間を緩やかにつなぐ凸状の曲面を有する。
【0051】
本実施形態では、突起15の根元部に、凹状曲面c2を有するため、凹状曲面を有さないものよりも根元部の面積、すなわち、突起15の底面積が広い。したがって、突起15に可動体20が衝突しても、衝突した際の衝撃力を支持基板10に広く分散させることができる。
また、突起15の根元部が、凹状曲面c2であるため、突起15と主面17との間に明確な境界がない。したがって、突起15と主面17との間に角等の明確な境界がある場合に比べて、突起15に可動体20が衝突しても、衝突した際の衝撃力が、突起15と主面17との境界に集中しない。
このように、本実施形態では、突起15に可動体20が衝突した際の衝撃力を広く分散させることができるので、突起15が剥がれたり、割れたり、などして欠損しまうことを回避ないし抑制することができる。
【0052】
ここで、突起15の欠損がすると、可動体20は、第1固定電極11または第2固定電極12と接触する。この場合、可動体20は、突起15と衝突する場合よりも、より広い面積またはより多い個所で、第1固定電極11または第2固定電極12と接触するため、容易にスティッキングを発生してしまう。
しかし、本実施形態によれば、突起15の欠損が回避または抑制されるため、スティッキングの発生も抑制することができる。
【0053】
また、突起15の頂部は、凸状曲面c1を有するため、頂部の端が角になっている場合よりも、突起15に可動体20が衝突した際の衝撃力を緩やかに受け止めることができる。したがって、突起15が剥がれたり、割れたり、などして欠損することを回避ないし抑制することができる。
【0054】
また、突起15の頂部は、平坦面f1を有するため、裾野の部分を広くしても突起15の高さを低く抑えることができる。したがって、薄型の慣性センサー100とすることができる。
【0055】
突起15は、ダミー電極13によって被覆されている。ダミー電極13は、薄膜であるため、ダミー電極13の上面は、突起15の形状を忠実に転写する。したがって、突起15をダミー電極13で被覆しても、突起15の作用効果が損なわれることはない。
【0056】
ダミー電極13は、図示しない接続配線を介して可動体20と電気的に接続されており、ダミー電極13は、可動体20と同電位になっている。また、ダミー電極13は、第1固定電極11および第2固定電極12と電気的に絶縁されている。
【0057】
突起15を、可動体20と同電位であるダミー電極13で覆うことにより、可動体20と突起15とは同電位となり、これらの間に静電引力が実質的に生じない。したがって、可動体20が突起15に貼り付くスティッキングを抑制することができる。
【0058】
1.3.慣性センサーおよび突起の製造方法
次に、慣性センサー100および突起15の製造方法について、図4から図13を参照して説明する。
図4は、慣性センサー100の製造工程を説明するフローチャートである。図5は、図4のステップS1である支持基板形成工程の詳細な工程を示すフローチャートであり、特に、突起15の製造方法を説明するフローチャートである。図6から図13は、慣性センサー100の各製造工程における断面図または平面図であり、断面図は、図2Aと同様の位置における断面を示す。
【0059】
ステップS1では、支持基板10を形成する。なお、ステップS1の詳細は、図5のフローチャートを参照して説明する。図5は、特に、支持基板10に突起15を形成する工程を示す。
【0060】
ステップS11では、ガラス基板をエッチングする。
用意したガラス基板をフォトリソグラフィー技法およびエッチング技法を用いてパターニングすることで、図6に示すように、凹部17cを含む主面17を有する凹状のキャビティー16と、主面17に支柱14および突起15aとを備えた支持基板10を形成する。本実施形態において、突起15aは、第1の先駆体に対応する。
突起15aの断面形状は、矩形である。また、図示しないが、突起15aの上面の平面形状は、円である。したがって、突起15aの立体形状は、円柱である。
【0061】
ステップS12では、ハードマスク40を形成する。
支持基板10の上面全体に、ハードマスク40を成膜した後、図7に示すように、突起15aの上面にハードマスク40が残り、突起15aの側面および主面17が露出するように、ハードマスク40をパターニングする。なお、ハードマスク40は、支柱14の上面およびキャビティー16を囲む壁の上面にも残る。
【0062】
ハードマスク40は、次のステップS13で実施するエッチングに対して耐性を有する。ハードマスク40は、例えば、タングステンシリサイドまたは窒化チタンを含む金属材料を成膜した後、パターニングすることで形成できる。なお、ハードマスク40の材料や形成方法は、その機能を発揮することができれば、特に限定されない。
【0063】
ステップS13では、等方性エッチングを行う。
等方性エッチングによって、突起15aの側面および主面17がエッチングされる。この工程によって、突起15aは、図8に示した突起15bのように形状を変える。本実施形態において、突起15bは、第2の先駆体に対応する。
【0064】
ステップS14では、ハードマスク40を除去する。
図9に示すように、ここまでの工程によって、突起15bは、平坦面f1a、平坦斜面f2a、および凹状曲面c2aを有する形状に形成される。平坦面f1aは頂部の平坦面f1に対応する部分であり、平坦斜面f2aは中間部の平坦斜面f2に対応する部分であり、凹状曲面c2aは、根元部の凹状曲面c2に対応する部分である。
【0065】
ステップS15では、2回目の等方性エッチングを行う。
この工程では、突起15bが、さらにエッチングされる。この工程によって、図10に示すように、突起15が形成される。凸状曲面c1が形成されるまで、突起15bをエッチングすることで、平坦面f1、凸状曲面c1、平坦斜面f2、および凹状曲面c2を有する突起15を形成する。
【0066】
ステップS2では、固定電極としての第1固定電極11および第2固定電極12を形成する。なお、この工程では、被覆電極としてのダミー電極13も形成する。
支持基板10の主面17上に、スパッタ法等により導電膜を成膜した後、導電膜をパターニングすることで第1固定電極11、第2固定電極12、およびダミー電極13を形成する。
これにより、図11Aおよび図11Bに示すように、支持基板10のキャビティー16内の主面17上に第1固定電極11、第2固定電極12、およびダミー電極13を設ける。
【0067】
ステップS3では、図12に示すように、支持基板10とシリコン基板20sとを接合する。支持基板10とシリコン基板20sとの接合には、陽極接合等の直接接合、又は接着剤や金属、低融点ガラス等を用いた間接接合を用いることができる。
【0068】
ステップS4では、シリコン基板20sを加工して、開口26を有する可動体20を形成する。
シリコン基板20sを、例えば、研削機を用いて研削し、所定の厚さに薄膜化する。その後、シリコン基板20sをフォトリソグラフィー技法およびエッチング技法を用いてパターニングすることで可動体20を形成する。
例えば、シリコン基板20sは、RIE(Reactive Ion Etching)装置を用いたボッシュプロセスによってエッチングすることができる。これにより、図13に示すように、開口26、支持部24および梁部25を含む可動体20を、支柱14上に固定された状態で形成することができる。
【0069】
ステップS5では、可動体20を封止する。
支持基板10に蓋体30を接合して、支持基板10および蓋体30によって形成される空間に可動体20を収容する。
支持基板10と蓋体30とは、例えば、陽極接合や接着剤等を用いて接合する。
以上により、図2Aおよび図2Bに示した慣性センサー100が得られる。なお、本実施形態では、第1固定電極11および第2固定電極12以外の主面17上に、シリコン基板20sと同電位のダミー電極13を形成しているため、封止工程で陽極接合を用いた場合でも、可動体20が静電力により支持基板10に貼り付くことを防止することができる。
【0070】
1.4.変形例
前述した突起15の実施形態は多様に変形され得る。突起15の具体的な変形の態様を以下に例示する。
【0071】
1.4.1.変形例1
図14Aは、変形例1に係る突起151の拡大断面図であり、図3Aと同様の範囲を拡大した図である。図14Bは、図14Aに対応する突起151の拡大平面図であり、突起151をZ軸方向プラス側からZ軸方向マイナス側に見た平面図である。
【0072】
突起151は、平坦面f1、凸状曲面c1、および凹状曲面c2を有する。また、突起151は、平坦斜面f2を有さない。このような突起151は、ステップS15の等方性エッチングの処理時間を長くすることで形成することができる。換言すると、突起151は、平坦斜面f2が消失するまで、等方性エッチングを行った形状である。
【0073】
突起151の平面形状は、楕円である。なお、突起151の平面形状は、突起15と同様に、円であってもよい。
また、突起151は、頂部が平坦面f1であるため、頂部が、凸形状のものよりも突起151の高さを低くすることができる。したがって、慣性センサー100の厚みを薄くすることができる。
【0074】
1.4.2.変形例2
図15は、変形例2に係る突起152の拡大平面図である。
突起152の平面形状は、角の丸まった四角形である。また、突起152の平面形状は、三角形または五角形以上の多角形であってもよい。なお、多角形は、等方性エッチングによって、角の丸まった多角形となる。
【0075】
突起152は、平坦面f1、凸状曲面c1、平坦斜面f2、および凹状曲面c2を有する。なお、突起152は、変形例1と同様に、平坦斜面f2を無くした形状としてもよい。
【0076】
1.4.3.変形例3
上述した突起15,151,152は、頂部が球台であってもよい。中間部と根元部は、上述した実施形態と同様の形状に形成する。中間部の平坦斜面f2は、変形例1のように無くてもよい。
【0077】
1.4.4.変形例4
図16は、変形例に係る慣性センサー100の製造工程を説明するフローチャートである。この製造工程は、図5に示したフローチャートを簡略化したものである。
この実施形態では、ステップS11において、円柱形状の突起15aを形成した後、ハードマスク40を形成することなく、ステップS13の等方性エッチングを行う。
【0078】
この実施形態では、ハードマスク40を用いることなく、突起15aを等方性エッチングすることのみで、突起15を形成する。したがって、ハードマスク40を用いて突起15を形成する場合よりも、突起15の形状の制御が難しい。
しかし、この実施形態によっても、平坦面f1、凸状曲面c1、平坦斜面f2、および凹状曲面c2を有する突起15を形成することができる。なお、変形例1と同様に、平坦斜面f2はなくしてもよい。
【0079】
以上、述べたとおり、本実施形態の慣性センサー100は、基板としての支持基板10と、支持基板10の第1面としての主面17に設けられた固定電極としての第1固定電極11および第2固定電極12と、第1固定電極11および第2固定電極12に対して揺動可能に設けられた可動体20と、主面17に設けられた突起15と、を備え、突起15は、頂部に平坦面f1を有し、根元部に主面17に連続する凹状曲面c2を有し、頂部と根元部との間の中間部に平坦斜面f2を有する。
【0080】
このように、突起15は、根元部に主面17に連続する凹状曲面c2を有するため、可動体20が突起15に接触したとても、突起15が主面17から剥がれる等して、欠損することを回避ないし抑制できる。よって、突起15が欠損することによって、スティッキングの発生リスクが高くなることを回避ないし抑制することができる。
さらには、頂部は、平坦面f1を有するため、根元部に凹状曲面c2を有することで、裾野の部分が広くなったとしても、突起15の高さを低く抑えることができる。したがって、慣性センサー100の厚みを薄くすることができる。
【0081】
本実施形態の慣性センサー100において、頂部は、平坦斜面f2と平坦面f1との間に凸状曲面c1をさらに有し、可動体20が突起15に接触する場合、可動体20は凸状曲面c1に接触する。
このように、突起15の頂部は、凸状曲面c1を有するため、頂部の端が角になっている場合よりも、突起15に可動体20が衝突した際の衝撃力を緩やかに受け止めることができる。したがって、突起15が剥がれたり、割れたり、などして欠損することを回避ないし抑制することができる。
【0082】
本実施形態の慣性センサー100において、突起15の平面形状は、円形である。
このように、突起15の平面形状が、円形であるため、根元部に凹状曲面c2を有することで、裾野の部分が広くなる。したがって、突起15の剥がれを抑制することができる。
【0083】
本実施形態の慣性センサー100において、突起152の平面形状は、多角形である。
このように、突起152の平面形状を、多角形とすることで、パターンの自由度を向上させることができる。したがって、機種ごとに突起15の平面形状を最適化して、剥がれ難い突起15を実現することができる。
また、生産工程内の管理が容易になる。例えば、触針方式で突起152の高さを測定する場合、一般的には2次元測定となるが、突起152の平面形状が多角形なので、触針位置が、X、Y方向に変動しても突起高さを正確に測定できる。
【0084】
本実施形態の慣性センサー100において、突起15は、球台を含む。
このように、突起15は、球台を含むため、突起15に可動体20が衝突した際の衝撃力を緩やかに受け止めることができる。したがって、突起15が、剥がれたり、割れたり、などして欠損することを回避ないし抑制することができる。
【0085】
本実施形態の慣性センサー100は、さらに、突起15の表面に設けられ、可動体20と同電位とされる被覆電極としての、ダミー電極13を備える。
このように、突起15を、可動体20と同電位とされるダミー電極13で覆うことにより、可動体20と突起15とは同電位となり、これらの間に静電引力が実質的に生じない。したがって、可動体20が突起15に貼り付くスティッキングを抑制することができる。
【0086】
本実施形態の慣性センサー100の製造方法は、基板としての支持基板10と、支持基板10の第1面としての主面17に設けられた固定電極としての第1固定電極11および第2固定電極12と、第1固定電極11および第2固定電極12に対して揺動可能に設けられた可動体20と、主面17に設けられた突起15と、を備えた慣性センサー100の製造方法において、慣性センサー100の製造方法は、支持基板10をエッチングして、突起15の第1の先駆体としての突起15aを形成する第1エッチング工程としてのステップS11と、突起15aにハードマスク40を形成するハードマスク形成工程としてのステップS12と、ハードマスク40を用いて、突起15aを等方性エッチングして、第2の先駆体としての突起15bを形成する第2エッチング工程としてのステップS13と、ハードマスク40を除去するハードマスク除去工程としてのステップS14と、突起15bを等方性エッチングして、突起15を形成する第3エッチング工程としてのステップS15と、を含む。
【0087】
このように本実施形態の慣性センサー100の製造方法では、支持基板10をエッチングすることで、突起15aを形成した後、ハードマスク40を用いて等方性エッチングすることで、突起15bを形成した後、ハードマスク40を除去した上で、さらに、突起15bを等方性エッチングすることで、突起15を形成する。
したがって、突起15の根元部に、主面17に連続する凹状曲面c2を形成することができるため、可動体20が突起15に接触したとても、突起15が主面17から剥がれる等して、欠損することを回避ないし抑制できる。
さらには、突起15の頂部に、平坦面f1を形成するため、根元部に凹状曲面c2を形成することで、裾野の部分が広くなったとしても、突起15の高さを低く抑えることができる。したがって、薄型の慣性センサー100とすることができる。
【0088】
2.実施形態2
2.1.慣性計測装置の概要
次に、図17および図18を参照して、慣性センサー100を備えた慣性計測装置3000について、説明する。
図17は、本実施形態に係る慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)の概略構成を示す分解斜視図である。図18は、慣性計測装置3000に搭載され、慣性センサーが実装された基板の斜視図である。
【0089】
慣性計測装置3000は、自動車、ロボット、スマートホン、携帯型の活動量計などの被装着装置に搭載され、被装着装置の姿勢や、挙動などを検出する装置として用いられる。
【0090】
図17に示すように、慣性計測装置3000は、アウターケース301、接合部材310、センサーモジュール325を含み、アウターケース301の内部303に、接合部材310を介在させて、センサーモジュール325を篏合または挿入した構成となっている。
【0091】
アウターケース301は、外形が直方体で蓋のない箱状の容器であり、その内部303は、底壁305と側壁304とで囲まれた内部空間となっている。アウターケース301の材質は、例えば、アルミニウムである。なお、亜鉛やステンレスなど他の金属や、樹脂、または、金属と樹脂の複合材などを用いても良い。
【0092】
アウターケース301の外形は、平面形状が略正方形の直方体であり、正方形の対角線方向に位置する2ヶ所の頂点近傍に、それぞれ通し孔302が形成されている。通し孔302は、被装着装置に、慣性計測装置3000を取り付ける際に用いる。
アウターケース301の内部303は、側壁304、底壁305、および接合面306とで囲まれた空間となっている。
【0093】
センサーモジュール325は、インナーケース320と、基板315とから構成されている。
基板315には、慣性センサー100が組み込まれた加速度検出ユニット1や外部接続用のコネクター316などが実装されている。
【0094】
インナーケース320は、基板315を支持する部材であり、アウターケース301の内部303に収まる形状となっている。インナーケース320の厚さ、換言すると、Z軸方向の高さは、アウターケース301の上面307から接合面306までの高さと、同等か、それよりも、低くなっている。インナーケース320の材質には、アウターケース301と同様の材質を用いることができる。
インナーケース320の下面には、基板315との接触を防止するための凹部331やコネクター316を露出させるための開口321が形成されている。
【0095】
図18を参照して、慣性センサー100が実装された基板315の構成について説明する。
図18に示すように、基板315は、複数のスルーホールが形成された多層基板であり、ガラスエポキシ基板を用いている。なお、ガラスエポキシ基板に限定するものではなく、例えば、コンポジット基板やセラミック基板などのリジット基板を用いても良い。
【0096】
基板315の上面および側面には、コネクター316、加速度検出ユニット1、および角速度センサー317x,317y,317zなどが実装されている。
加速度検出ユニット1は、慣性センサー100を搭載し、Z軸方向の加速度を測定するための加速度センサーである。
コネクター316は、プラグ型のコネクターであり、X軸方向に等ピッチで配置された二列の接続端子を備えている。本実施形態では、一列10ピンで二列の合計20ピンの接続端子を備えるが、接続端子の数は、設計仕様に応じて適宜変更しても良い。
【0097】
角速度センサー317zは、Z軸方向における1軸の角速度を検出するジャイロセンサーである。好適例として、水晶を振動子として用い、振動する物体に加わるコリオリの力から角速度を検出する振動ジャイロセンサーを用いている。なお、振動ジャイロセンサーに限定するものではなく、振動子としてセラミックや、シリコンを用いたセンサーを用いても良い。
【0098】
また、基板315のX軸方向の側面には、実装面がX軸と直交するように、X軸方向における1軸の角速度を検出する角速度センサー317xが実装されている。同様に、基板315のY軸方向の側面には、実装面がY軸と直交するように、Y軸方向における1軸の角速度を検出する角速度センサー317yが実装されている。
【0099】
なお、角速度センサー317x,317y,317zは、X軸、Y軸、Z軸の軸ごとの三つの角速度センサーを用いる構成に限定するものではなく、3軸の角速度が検出可能なセンサーであれば良く、例えば、一つのデバイスまたはパッケージで3軸の角速度が検出可能なセンサーデバイスを用いても良い。
【0100】
加速度検出ユニット1は、Z軸方向の加速度を測定するための加速度センサーであるが、X軸方向またはY軸方向を測定するものであってもよい。また、複数の慣性センサー100を搭載して、二軸方向、例えばZ軸方向とY軸方向、Z軸方向とX軸方向など、あるいは、三軸方向、すなわち、X軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向の加速度を検出するものとしてもよい。
【0101】
基板315の下面には、制御部としての制御IC319が実装されている。
制御IC319は、MCU(Micro Controller Unit)であり、不揮発性メモリーを含む記憶部や、A/Dコンバーターなどを内蔵しており、慣性計測装置3000の各部を制御する。記憶部には、加速度、および角速度を検出するための順序と内容を規定したプログラムや、検出データをデジタル化してパケットデータに組込むプログラム、付随するデータなどが記憶されている。なお、基板315には、その他にも複数の電子部品が実装されている。
【0102】
このような慣性計測装置3000によれば、慣性センサー100を含む加速度検出ユニット1を用いているため、耐衝撃性に優れ、信頼性を向上させた慣性計測装置3000を提供することができる。
【0103】
以上、述べたとおり、本実施形態の慣性センサー100を備えた慣性計測装置3000によれば、実施形態1の効果に加え、信頼性の高い慣性計測装置を提供することができる。
【0104】
以上、好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されない。また、本発明の各部の構成は、上述の実施形態の同様の機能を発揮する任意の構成に置換でき、また、任意の構成を付加できる。
【符号の説明】
【0105】
1…加速度検出ユニット、10…支持基板、11…第1固定電極、12…第2固定電極、13…ダミー電極、14…支柱、15,15a,15b,151,152…突起、16…キャビティー、17…主面、17c…凹部、20…可動体、20a…第1可動体、20b…第2可動体、20s…シリコン基板、21…第1質量部、22…第2質量部、23…第3質量部、24…支持部、25…梁部、26…開口、28…連結部、30…蓋体、40…ハードマスク、100…慣性センサー、301…アウターケース、302…通し孔、303…内部、304…側壁、305…底壁、306…接合面、307…上面、310…接合部材、315…基板、316…コネクター、317x,317y,317z…角速度センサー、319…制御IC、320…インナーケース、321…開口、325…センサーモジュール、331…凹部、3000…慣性計測装置、f1…平坦面、f2…平坦斜面、c1…凸状曲面、c2…凹状曲面、C1,C2…静電容量、CL1,CL2…中心線、R1,R2…距離。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14A
図14B
図15
図16
図17
図18