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特開2024-147172搬送タスク管理システムと、搬送タスク管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147172
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】搬送タスク管理システムと、搬送タスク管理方法
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/43 20240101AFI20241008BHJP
   B65G 1/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
G05D1/02 P
B65G1/00 501C
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060014
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】奥野 東
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 潔人
(72)【発明者】
【氏名】寧 鋭
【テーマコード(参考)】
3F022
5H301
【Fターム(参考)】
3F022AA15
3F022JJ11
3F022LL07
5H301AA02
5H301AA10
5H301BB05
5H301BB14
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD07
5H301KK02
5H301KK03
5H301KK08
5H301KK09
5H301KK18
5H301KK19
(57)【要約】
【課題】搬送ロボットによる搬送時間にばらつきが生じても、搬送の遅延を少なくすることができる、搬送タスク管理システムを提供する。
【解決手段】本発明による搬送タスク管理システムは、搬送タスクに関するタスク情報と、ロボットに関するロボット情報とを入力する搬送情報受付部110と、ロボットによる搬送タスクが遅延する確率である遅延リスクを算出する遅延リスク算出部111と、タスク情報に含まれる搬送タスクに対して、ロボット情報に含まれるロボットを、遅延リスクが最小になるように割り当てる処理である、タスク割り当て処理を実行するタスク割り当て部112と、タスク割り当て結果を出力する結果出力部113とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送タスクに関するタスク情報と、前記搬送タスクを実行するロボットに関するロボット情報とを入力する搬送情報受付部と、
前記ロボットによる前記搬送タスクが遅延する確率である遅延リスクを算出する遅延リスク算出部と、
前記タスク情報に含まれる前記搬送タスクに対して、前記ロボット情報に含まれる前記ロボットを、前記遅延リスクが最小になるように割り当てる処理である、タスク割り当て処理を実行するタスク割り当て部と、
前記タスク割り当て処理の結果であるタスク割り当て結果を出力する結果出力部と、
を備える、
ことを特徴とする搬送タスク管理システム。
【請求項2】
前記遅延リスク算出部は、前記遅延リスクを、前記ロボットの搬送時間の確率密度分布を基に算出し、
前記確率密度分布は、前記タスク情報に含まれる前記搬送タスクと、前記ロボット情報に含まれる前記ロボットとの組合せごとに設定されている、
請求項1に記載の搬送タスク管理システム。
【請求項3】
前記搬送タスクに対して、前記ロボットの移動経路を計画する経路計画部と、
シミュレーションを行い、前記搬送タスクに対して、前記経路計画部が計画した前記移動経路を用いて前記確率密度分布を求める搬送シミュレーション実行部を備え、
前記遅延リスク算出部は、前記搬送シミュレーション実行部が求めた前記確率密度分布を基に、前記遅延リスクを算出する、
請求項2に記載の搬送タスク管理システム。
【請求項4】
前記搬送タスクに対して、前記ロボットの移動経路を計画する経路計画部と、
前記ロボットが実際に前記搬送タスクを実行したときの実測データを保存しており、前記搬送タスクに対して、前記経路計画部が計画した前記移動経路について、前記実測データに含まれる前記搬送時間から前記確率密度分布を求める実測データ評価部を備え、
前記遅延リスク算出部は、前記実測データ評価部が求めた前記確率密度分布を基に、前記遅延リスクを算出する、
請求項2に記載の搬送タスク管理システム。
【請求項5】
前記遅延リスク算出部は、前記タスク情報に含まれる全ての前記搬送タスクに対して前記遅延リスクを求め、
前記タスク割り当て部は、前記遅延リスクの総和または最大値が最小となるように、前記搬送タスクに対して前記ロボットを割り当てる、
請求項1に記載の搬送タスク管理システム。
【請求項6】
前記遅延リスク算出部は、前記確率密度分布の代表値を用いて、前記搬送時間を求める、
請求項2に記載の搬送タスク管理システム。
【請求項7】
前記ロボットの最適台数を求める最適化部を備え、
前記タスク割り当て部は、前記タスク割り当て処理を、前記ロボットの台数を変えて複数回実施し、
前記最適化部は、前記ロボットの台数のそれぞれについて、前記遅延リスクに関する評価指標を導出し、前記評価指標を用いて前記ロボットの最適台数を求める、
請求項1に記載の搬送タスク管理システム。
【請求項8】
前記ロボットが前記搬送タスクを実行する搬送エリアのレイアウトを最適化する最適化部を備え、
前記タスク割り当て部は、前記タスク割り当て処理を、前記レイアウトを変えて複数回実施し、
前記最適化部は、前記レイアウトのそれぞれについて、前記遅延リスクに関する評価指標を導出し、前記評価指標を用いて最適な前記レイアウトを求める、
請求項1に記載の搬送タスク管理システム。
【請求項9】
前記タスク割り当て結果を基に、前記ロボットに制御指令を与える制御指令部と、
前記ロボットの前記搬送タスクの実行状況を含むタスク実行状況データを、前記ロボットから取得するタスク実行状況取得部と、
を備える、
請求項1に記載の搬送タスク管理システム。
【請求項10】
前記タスク実行状況取得部は、予め定められた時間間隔で、前記タスク実行状況データを前記ロボットから取得し、
前記タスク割り当て部は、前記タスク実行状況取得部から前記タスク実行状況データを取得し、取得した前記タスク実行状況データを基に、前記タスク割り当て処理を実行する、
請求項9に記載の搬送タスク管理システム。
【請求項11】
前記タスク実行状況取得部は、前記タスク実行状況データを前記ロボットから取得し、
前記タスク割り当て部は、前記タスク実行状況取得部から前記タスク実行状況データを取得し、取得した前記タスク実行状況データに応じて、前記タスク割り当て処理を実行する、
請求項9に記載の搬送タスク管理システム。
【請求項12】
画面を備える入出力端末を備え、
前記入出力端末は、前記タスク割り当て結果と前記遅延リスクを前記画面に表示する、
請求項1に記載の搬送タスク管理システム。
【請求項13】
演算処理部を備える搬送タスク管理システムが実行し、
前記演算処理部が、搬送タスクに関するタスク情報と、前記搬送タスクを実行するロボットに関するロボット情報とを入力する搬送データ入力工程と、
前記演算処理部が、前記ロボットによる前記搬送タスクが遅延する確率である遅延リスクを算出する遅延リスク算出工程と、
前記演算処理部が、前記タスク情報に含まれる前記搬送タスクに対して、前記ロボット情報に含まれる前記ロボットを、前記遅延リスクが最小になるように割り当てる処理である、タスク割り当て処理を実行するタスク割り当て工程と、
前記演算処理部が、前記タスク割り当て処理の結果であるタスク割り当て結果を出力する結果出力工程と、
を備えることを特徴とする搬送タスク管理方法。
【請求項14】
前記遅延リスク算出工程では、前記演算処理部が、前記遅延リスクを、前記ロボットの搬送時間の確率密度分布を基に算出し、
前記確率密度分布は、前記タスク情報に含まれる前記搬送タスクと、前記ロボット情報に含まれる前記ロボットとの組合せごとに設定されている、
請求項13に記載の搬送タスク管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の搬送ロボットによる搬送タスクの管理システムと管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製造工場や物流倉庫において、AGV(無人搬送車)やAMR(自律走行車)などの搬送ロボットによる搬送の自動化が進んでいる。これに伴い、最小限の台数のロボットで効率的に物品を搬送することができるように、搬送タスクの管理について研究開発が行われている。搬送タスクの従来の管理システムと管理方法の例は、特許文献1と特許文献2に記載されている。
【0003】
特許文献1に記載された搬送管理システムは、各々が始点と終点を有する搬送タスクを示すp個の搬送タスク情報を受け付ける受付部と、p個の搬送タスク情報を互いに連結してq(q<p)個の連結タスク情報を生成する連結部と、q個の連結タスク情報をq個の搬送移動装置にそれぞれ割り当てる割当部とを含む。連結部は、q個の搬送移動装置がq個の連結タスク情報をそれぞれ実行するのに要する、q個の搬送移動装置の移動距離の合計である総移動距離が短くなるようにq個の連結タスク情報を生成する。
【0004】
特許文献2に記載された方法は、複数のタスクを定義し、該複数のタスクをマージし、オンライン最小性能損失スケジューリング(OMPLS)技術を実装することにより、最初により高い性能損失値を有するタスクを、次いで、デッドライン内でスケジューリングすることができ且つマージされたタスクの中で低い性能損失値を有するタスクをスケジューリングし、最後に、予め定義されたデッドライン内にスケジューリングすることができないタスクの残りのサブセットの性能損失値を最小にすることによって、マルチロボット環境におけるノンプリエンプティブタスクのスケジューリングの最適化を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-134834号公報
【特許文献2】特開2020-149675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
工場や倉庫において搬送ロボットで物品を搬送する場合には、搬送が遅延しないことが重要である。例えば、製造工場で複数の組み立てライン間での搬送に搬送ロボットを導入する場合、搬送先のラインでの生産工程に影響を及ぼさないように、搬送が遅延しないことが求められる。特に、既存の工場に搬送ロボットを導入する場合には、新たに搬送ロボット専用の移動スペースを確保することが難しく、搬送ロボットの移動空間を人と共有することになる。移動空間を搬送ロボットと人とで共有していると、安全性の確保のために、人が周囲にいるときには搬送ロボットが減速したり一時停止したりする。このため、搬送ロボットの搬送時間にばらつきが生じたり、搬送に遅延が生じたりすることがある。
【0007】
従来の技術、例えば特許文献1に記載された技術では、搬送ロボットの総移動距離を短くして搬送効率を改善するが、上述したような、搬送ロボットの搬送時間のばらつきを考慮しておらず、搬送が遅延することが考慮されていない。また、従来の技術、例えば特許文献2に記載された技術では、デッドラインを超えた遅延で生じた損失を最小化するようにタスクをスケジューリングするが、搬送ロボットの搬送時間のばらつきや遅延が発生する確率を定量的に評価しておらず、遅延の発生を正しく把握できない。
【0008】
このように、従来の技術では、人とロボットが移動空間を共有することなどにより生じる搬送時間のばらつきが十分に考慮されておらず、搬送ロボットによる搬送の遅延を減らす点で課題がある。
【0009】
本発明の目的は、搬送ロボットによる搬送時間にばらつきが生じても、搬送の遅延を少なくすることができる、搬送タスク管理システムと搬送タスク管理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による搬送タスク管理システムは、搬送タスクに関するタスク情報と、前記搬送タスクを実行するロボットに関するロボット情報とを入力する搬送情報受付部と、前記ロボットによる前記搬送タスクが遅延する確率である遅延リスクを算出する遅延リスク算出部と、前記タスク情報に含まれる前記搬送タスクに対して、前記ロボット情報に含まれる前記ロボットを、前記遅延リスクが最小になるように割り当てる処理である、タスク割り当て処理を実行するタスク割り当て部と、前記タスク割り当て処理の結果であるタスク割り当て結果を出力する結果出力部とを備える。
【0011】
本発明による搬送タスク管理方法は、演算処理部を備える搬送タスク管理システムが実行し、前記演算処理部が、搬送タスクに関するタスク情報と、前記搬送タスクを実行するロボットに関するロボット情報とを入力する搬送データ入力工程と、前記演算処理部が、前記ロボットによる前記搬送タスクが遅延する確率である遅延リスクを算出する遅延リスク算出工程と、前記演算処理部が、前記タスク情報に含まれる前記搬送タスクに対して、前記ロボット情報に含まれる前記ロボットを、前記遅延リスクが最小になるように割り当てる処理である、タスク割り当て処理を実行するタスク割り当て工程と、前記演算処理部が、前記タスク割り当て処理の結果であるタスク割り当て結果を出力する結果出力工程とを備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、搬送ロボットによる搬送時間にばらつきが生じても、搬送の遅延を少なくすることができる、搬送タスク管理システムと搬送タスク管理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例1による搬送タスク管理システムの構成の例を示す図である。
図2】搬送データの例を示す図である。
図3】遅延リスクの例を説明する図であり、搬送ロボットの搬送時間の確率密度分布を示す図である
図4】タスク割り当て部が、任意の1つのタスクに搬送ロボットを割り当てる処理のフローチャートの例を示す図である。
図5A】タスク割り当て処理の結果を出力した例を示す図であり、タスク割り当て結果データの例を示す図である。
図5B】タスク割り当て処理の結果を出力した例を示す図であり、タスク割り当て結果の可視化表示510の例を示す図である。
図6】本実施例による搬送タスク管理システムのハードウェア構成の例を示す図である。
図7】本発明の実施例2による搬送タスク管理システムの構成の例を示す図である。
図8】、搬送ロボットが搬送タスクを実行する搬送エリアのレイアウトの例を示す図である。
図9】搬送シミュレーション実行部が、モンテカルロ法を用いて搬送時間の確率密度分布を求める処理のフローチャートの例を示す図である。
図10】搬送シミュレーション実行部が搬送時間の確率密度分布を推定する方法の例を説明するための図である。
図11】本発明の実施例3による搬送タスク管理システムの構成の例を示す図である。
図12】本発明の実施例4による搬送タスク管理システムの構成の例を示す図である。
図13】最適化部が求めた、搬送ロボットの台数と評価指標との関係の例を示す図である。
図14】本発明の実施例5による搬送タスク管理システムの構成の例を示す図である。
図15】タスク実行状況データの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明による搬送タスク管理システムと搬送タスク管理方法では、例えば搬送ロボットがその移動空間を人と共有するなどのために、搬送ロボットによる搬送時間にばらつきが生じても、物品の搬送に遅延が生じないようにロボットをタスクに割り当てることができ、搬送の遅延を少なくすることができる。
【0015】
本明細書において、物品を搬送するタスクを搬送タスク、または単にタスクと呼ぶ。また、搬送タスクを実行するロボットを搬送ロボット、または単にロボットと呼ぶ。
【0016】
以下、本発明の実施例による、搬送タスク管理システムと搬送タスク管理方法を説明する。本実施例による搬送タスク管理方法は、本実施例による搬送タスク管理システムが実行する。以下の実施例では、搬送タスクが主に製造工場で行われる例について説明する。但し、本発明は、物流倉庫やレストランなど、搬送ロボットによる搬送タスクが行われるあらゆる場所に適用可能である。なお、本明細書で用いる図面において、同一のまたは対応する構成要素には同一の符号を付け、これらの構成要素については繰り返しの説明を省略する場合がある。
【実施例0017】
本発明の実施例1による、搬送タスク管理システムと搬送タスク管理方法を説明する。
【0018】
図1は、本実施例による搬送タスク管理システム100の構成の例を示す図である。搬送タスク管理システム100は、コンピュータで構成することができ、演算処理部101と入出力端末120を備える。
【0019】
入出力端末120は、入力部121、及び出力部122を備え、演算処理部101に接続される。入力部121は、演算処理部101へ指示やデータなどを入力するための構成要素であり、キーボード、マウス、及びタッチパネルなどで構成することができる。出力部122は、演算処理部101の計算結果などを出力するための構成要素であり、モニターなどの画面を備える機器で構成することができる。
【0020】
演算処理部101は、搬送情報受付部110、遅延リスク算出部111、タスク割り当て部112、及び結果出力部113を備える。
【0021】
搬送情報受付部110は、搬送データを入力する。
【0022】
図2は、搬送データの例を示す図である。搬送データは、少なくともタスクデータ200とロボットデータ210を含む。
【0023】
タスクデータ200は、搬送タスクに関する情報であるタスク情報を示し、タスクID201、搬送品ID202、搬送可能時刻203、納期204、始点205、及び終点206を含む。タスクデータ200は、搬送タスク管理システム100の上位のシステムまたは作業員によって生成され、搬送情報受付部110によって演算処理部101に入力される。例えば、製造工場での搬送の場合には、タスクデータ200は、MES(製造実行システム、Manufacturing Execution System)によって、製造ラインへの指令と共に生成される。
【0024】
タスクID201は、搬送ロボットが実行する搬送タスクを特定する値である。
【0025】
搬送品ID202は、搬送ロボットが搬送する物品を特定する値である。
【0026】
搬送可能時刻203は、搬送ロボットによる物品の搬送が可能になる時刻であり、例えば、搬送される物品が製造されて搬送可能となる時刻である。搬送可能時刻203は、工場で工程を実施する設備の間での搬送のような場合には存在するが、部品庫などから物品を搬送する場合には、タスクデータ200に含まれないこともある。本実施例では、タスクデータ200に搬送可能時刻203が含まれている例を説明する。
【0027】
納期204は、搬送ロボットが物品を搬送する期限である。
【0028】
始点205と終点206は、それぞれ、搬送ロボットが物品を搬送する出発点と到着点である。
【0029】
ロボットデータ210は、搬送タスクを実行する搬送ロボットに関する情報であるロボット情報を示し、ロボットID211、タイプ212、標準速度213、及び初期位置214を含む。ロボットデータ210は、例えば予め生成されたデータや作業員が入出力端末120により入力したデータであり、搬送情報受付部110によって演算処理部101に入力される。
【0030】
ロボットID211は、搬送ロボットを特定する値である。
【0031】
タイプ212は、搬送ロボットの種類や型式を特定する値である。
【0032】
標準速度213は、搬送ロボットが移動するときの標準的な移動速度である。
【0033】
初期位置214は、搬送ロボットの初期位置を座標で表したものである。
【0034】
本実施例では、搬送ロボットのみが物品を搬送するとし、ロボットデータ210には搬送ロボットのみのデータが含まれている。搬送ロボットだけでなく人も物品を搬送する場合には、物品を搬送する人のデータをロボットデータ210に含めてもよい。例えば、タイプ212の値により、物品を搬送するのが人であることを示すことができる。
【0035】
図1の搬送タスク管理システム100の説明に戻る。
【0036】
遅延リスク算出部111は、搬送ロボットの搬送時間の確率密度分布を基に、遅延リスクを算出する。遅延リスクは、搬送ロボットによる搬送タスクの実行が、タスクデータ200に設定された納期204よりも遅れる確率(すなわち、搬送ロボットが、搬送タスクごとに設定された納期204を超えて物品を搬送する確率)である。
【0037】
図3は、遅延リスクの例を説明する図であり、搬送ロボットの搬送時間の確率密度分布302を示す図である。遅延リスクは、搬送ロボットによる搬送タスクが遅延する確率である。本実施例1においては、遅延リスクは、横軸が搬送時間で縦軸が確率密度の値で表された確率密度分布302において、搬送時間が納期204を超える時間となる領域304の面積で表される。搬送時間の確率密度分布302は、タスクデータ200に含まれる各タスクとロボットデータ210に含まれる各ロボットとの組合せごとに設定されており、遅延リスク算出部111に保存されている。
【0038】
遅延リスク算出部111は、各タスクと各ロボットとの組合せごとに、確率密度分布302を用いて領域304の面積を計算することで、遅延リスクを算出する。
【0039】
搬送時間の確率密度分布302は、任意に定めることができる。図3には、一例として、確率密度分布302が対数正規分布である例を示している。確率密度分布302は、対数分布、指数分布、または一様分布などでもよい。また、確率密度分布302は、シミュレーションで得られた分布や、実測データから得られた分布でもよい。例えば、遅延リスク算出部111は、タスクデータ200の各タスクとロボットデータ210の各ロボットとの組合せに対し、各タスクを各ロボットが仮に実施した場合に搬送時間がどのくらいであるかをシミュレーション結果や実測データから推定することで、確率密度分布302を算出することができる。
【0040】
搬送時間の確率密度分布302がシミュレーションで得られた分布である例は、実施例2で説明する。搬送時間の確率密度分布302が実測データから得られた分布である例は、実施例3で説明する。
【0041】
図1の搬送タスク管理システム100の説明に戻る。
【0042】
タスク割り当て部112は、タスク割り当て処理を実行する。タスク割り当て処理とは、タスクデータ200で示された各タスクに対して、ロボットデータ210の中にある搬送ロボットを、遅延リスクが最小になるように割り当てる処理である。タスク割り当て部112は、各タスクに搬送ロボットを割り当てるのに、例えば、厳密解法、近似解法、及びA*アルゴリズム(エースターアルゴリズム)などの任意の既存の方法を用いることができる。本実施例では、一例として、タスク割り当て部112が、近似解法の一種である貪欲法を用いる例を説明する。
【0043】
以下では、タスクに対して搬送ロボットを割り当てることを、タスク割り当てと呼ぶ。
【0044】
図4は、タスク割り当て部112が、貪欲法を用いて、任意の1つのタスクに搬送ロボットを割り当てる処理のフローチャートの例を示す図である。タスク割り当て部112は、図4に示す処理を実行し、搬送ロボットの割り当てを検討している1つのタスク(割当検討タスク)について、このタスクを実行するロボットを決定する。
【0045】
S401で、タスク割り当て部112は、タスク単位で図4の処理ループを開始する。タスク割り当て部112は、搬送データ(図2)のタスクデータ200の搬送可能時刻203または納期204の順に従い、タスクを1つ選んで処理ループを開始する。S401で選ばれたタスクが、割当検討タスクである。
【0046】
S402で、遅延リスク算出部111は、搬送データのロボットデータ210の中のロボットについて、それぞれの搬送ロボットが割当検討タスクを実行したと仮定した場合の搬送時間(仮想の搬送時間)とこの場合の遅延リスクを計算する。仮想の搬送時間は、搬送時間の確率密度分布302の代表値を用いて求めることができる。代表値とは、例えば、平均値や中央値などがある。遅延リスクは、図3を用いて説明したように、搬送時間の確率密度分布302と納期204から求めることができる。遅延リスク算出部111は、任意の方法を用いて、それぞれの搬送ロボットについて仮想の搬送時間と遅延リスクを計算する。なお、本実施例では、遅延リスク算出部111は、実施例2で説明する経路計画や搬送シミュレーションを用いて、搬送ロボット毎の仮想の搬送時間と遅延リスクを計算する。
【0047】
S403で、タスク割り当て部112は、ロボットデータ210の中のそれぞれのロボットについて、タスクデータ200の搬送可能時刻203に空いているロボットがあるか否かを判定する。ロボットが搬送可能時刻203に何らかのタスクを実行していなければ、タスク割り当て部112は、そのロボットが空いていると判断する。タスク割り当て部112は、搬送可能時刻203に空いているロボットがあれば、S404の処理を実行し、搬送可能時刻203に空いているロボットがなければ、S405の処理を実行する。
【0048】
S404で、タスク割り当て部112は、S402で計算した遅延リスクを用いて、空いているロボットのうち遅延リスクが最小のロボットを割当検討タスクに割り当てる。
【0049】
S405で、タスク割り当て部112は、ロボットが、搬送可能時刻203に実行しているタスクの実行が終わった後に割当検討タスクを実行した場合において、遅延リスクが最小のロボットを割当検討タスクに割り当てる。
【0050】
S406で、タスク割り当て部112は、S401で選んだ1つのタスク(割当検討タスク)について、処理ループを終了する。
【0051】
タスク割り当て部112と遅延リスク算出部111は、S401からS406までの処理を全てのタスクについて行って、タスク割り当て処理を実行する。以上のようにして、タスクデータ200で示された各タスクに対して、遅延リスクが最小になるロボットを割り当てることができる。
【0052】
また、遅延リスク算出部111は、タスクデータ200で示された全てのタスクに対して遅延リスクを求め、タスク割り当て部112は、この遅延リスクの総和または最大値が最小となるように、それぞれのタスクに対してロボットを割り当ててもよい。
【0053】
なお、本実施例では、タスク割り当て部112が、貪欲法を用いたタスク割り当て手法(遅延リスクが最小で空いているロボットをタスクに割り当てる手法)を実行する例を説明した。タスク割り当て部112は、貪欲法により求めたタスク割り当てを初期解として、局所探索法などの近似解法やメタヒューリスティックスなどの手法を用いてさらに解を探索することで、貪欲法により求めたタスク割り当てを改善してもよい。また、タスク割り当て部112は、最適なタスク割り当てのデータが十分多く得られる場合には、機械学習や深層学習などの手法を用いて、タスク割り当てを実行してもよい。
【0054】
図5A図5Bは、タスクにロボットを割り当てる処理の結果を出力した例を示す図である。タスクにロボットを割り当てる処理の結果は、例えば、図5Aに示すタスク割り当て結果データ500と、図5Bに示すタスク割り当て結果の可視化表示510で表される。
【0055】
以下では、タスク割り当て部112が各タスクに搬送ロボットを割り当てた結果、すなわちタスク割り当て部112のタスク割り当て処理の結果を、タスク割り当て結果とも呼ぶ。
【0056】
搬送タスク管理システム100(図1)の結果出力部113は、入出力端末120の出力部122に、タスク割り当て部112のタスク割り当て結果を出力する。具体的には、結果出力部113は、タスク割り当て結果データ500とタスク割り当て結果の可視化表示510とに用いるデータを出力する。また、結果出力部113は、出力部122に、遅延リスク算出部111が求めた遅延リスクを出力する。
【0057】
出力部122は、タスク割り当て結果データ500とタスク割り当て結果の可視化表示510を画面に表示することができる。出力部122は、タスク割り当て結果データ500だけを画面に表示してもよい。また、出力部122は、遅延リスクを画面に表示することができる。
【0058】
図5Aに示すタスク割り当て結果データ500は、タスクID201、ロボットID211、開始予定時刻503、終了予定時刻504、及び遅延リスク505を含む。
【0059】
タスク割り当て結果データ500では、タスクID201と、このタスクID201で表されるタスクに割り当てられた搬送ロボットのロボットID211が、互いに対応付けられている。
【0060】
開始予定時刻503の値には、図4のS404の処理でロボットが割り当てられたタスクについては、図2に示した搬送可能時刻203が使用され、S405の処理でロボットが割り当てられたタスクについては、実行しているタスクの終了予定時刻(例えば、タスク割り当て結果データ500の終了予定時刻504で示されている時刻)が使用される。
【0061】
終了予定時刻504の値は、開始予定時刻503の値に、搬送に要する予想時間を加えて求める。搬送に要する予想時間は、図3に示した搬送時間の確率密度分布302の代表値(例えば平均値または中央値)を用いて算出することができる。
【0062】
図5Bに示すタスク割り当て結果の可視化表示510は、タスク情報と、各ロボットに対して割り当てられたタスクを示しており、横軸を時刻とし、縦軸をロボットID211としている。タスク割り当て結果の可視化表示510では、タスク情報として、少なくとも、タスクに設定された搬送可能時刻203と納期204(図2のタスクデータ200)を示す。タスク割り当て結果の可視化表示510には、各ロボットに対して、両矢印線511とボックス(横棒)512が描かれている。両矢印線511とボックス512は、横軸(時刻)に沿って伸びている。
【0063】
両矢印線511は、両端に矢印が付いた線であり、タスク情報を示す。凡例に示すように、両矢印線511の上方にある数字は、タスクID201を表す。両矢印線511の左端(時刻の早い方の端)は、搬送可能時刻203を表す。両矢印線511の右端(時刻の遅い方の端)は、納期204を表す。
【0064】
ボックス512は、ロボットに割り当てられたタスクを示す。凡例に示すように、ボックス512の左端は、開始予定時刻503を表す。ボックス512の右端は、終了予定時刻504を表す。ボックス512の内部には、遅延リスク505を表す色が付けられている。例えば、凡例に示すように、ボックス512の内部の色が濃いほど、遅延リスク505が大きいことを示す。本実施例では、色の濃淡で遅延リスク505の大小を示しているが、赤や青など色を付けて遅延リスク505の大小を示しても良い。
【0065】
例えば、ロボットID211が「RobotA」のロボットは、タスクID201が「001」のタスクが割り当てられており、ボックス512で示すように、タスクの開始予定時刻503が時刻9:00であり、終了予定時刻504が時刻9:12である。このタスクは、両矢印線511で示すように、搬送可能時刻203が時刻9:00であり、納期204が時刻9:20である。
【0066】
ロボットID211が「RobotA」のロボットは、納期204よりも早く搬送を終えることができるので、物品の搬送に遅延が生じない。ロボットID211が「RobotB」のロボットも、物品の搬送に遅延が生じない。すなわち、本実施例では、物品の搬送に遅延が生じないように、タスクにロボットを割り当てることができる。
【0067】
図6は、本実施例による搬送タスク管理システム100のハードウェア構成の例を示す図である。搬送タスク管理システム100は、コンピュータ600と、入出力装置である入出力端末120とを備え、これらを互いに接続することで構成される。
【0068】
コンピュータ600は、CPU601、RAM602、ROM603、HDD604、通信インターフェース605、入出力インターフェース606、及びメディアインターフェース607を備える。
【0069】
通信インターフェース605は、外部の通信装置615と接続される。入出力インターフェース606は、入出力端末120と接続される。メディアインターフェース607は、記録媒体617に対してデータを読み書きする。
【0070】
CPU601は、RAM602に読み込んだプログラム(アプリケーションソフトウェア)を実行することにより、演算処理部101(図1)の各処理部を制御する。このプログラムは、通信回線を介して配布したり、CD-ROM等の記録媒体617に記録して配布したりすることが可能である。
【0071】
本実施例による搬送タスク管理システム100と搬送タスク管理方法では、以上説明したように、搬送ロボットの搬送時間の確率密度分布302を基に遅延リスクを算出することで、物品の搬送に遅延が生じないようにロボットをタスクに割り当てることができる。このため、例えば搬送ロボットがその移動空間を人と共有するなどのために、搬送ロボットによる搬送時間にばらつきが生じても、搬送の遅延を少なくすることができる。
【実施例0072】
本発明の実施例2による、搬送タスク管理システムと搬送タスク管理方法を説明する。以下では、本実施例による管理システムと管理方法について、実施例1による管理システムと管理方法と異なる点を主に説明する。
【0073】
本実施例では、搬送時間の確率密度分布302を、経路計画と搬送シミュレーションによって求める構成について説明する。遅延リスク算出部111は、搬送シミュレーションにより求められた、搬送時間の確率密度分布302を用いて、遅延リスクを算出する。
【0074】
図7は、本実施例による搬送タスク管理システム100の構成の例を示す図である。本実施例による搬送タスク管理システム100は、実施例1による搬送タスク管理システム100(図1)において、演算処理部101が経路計画部701と搬送シミュレーション実行部702をさらに備える。
【0075】
図8は、搬送ロボットが搬送タスクを実行する搬送エリア800のレイアウトの例を示す図である。例えば搬送エリア800が倉庫であるとすると、搬送エリア800は、複数のエリア801~805に区分されている。図8では、搬送エリア800が複数のパターンで描き分けられており、パターンが同一の範囲は、同一の種類のエリアを示す。
【0076】
エリア801は、搬送ロボットと人が移動可能なエリアを示す。図8に示す例では、移動可能エリアは1種類だが、人の移動可能エリアと搬送ロボットの移動可能エリアを分けてもよい。エリア802は、製造ラインのエリアを示す。エリア803は、作業員の作業エリアを示す。エリア804は、生産セルのエリアを示す。本実施例では、生産セルのエリア804は、搬送の始点205または終点206である。エリア805は、部品庫のエリアを示す。本実施例では、部品庫のエリア805は、搬送の始点205である。
【0077】
生産セルのエリア804にはCell1-1のような値が、部品庫のエリア805にはDeptA-1のような値が、それぞれIDとして与えられている。これらのIDは、タスクデータ200(図2)の始点205と終点206の値に対応する。
【0078】
搬送エリア800のレイアウト(例えば、エリア801~805の位置と大きさ)は、レイアウト情報として、搬送タスク管理システム100に予め与えられている。
【0079】
経路計画部701と搬送シミュレーション実行部702は、搬送エリア800のレイアウト情報を用いて、経路計画と搬送シミュレーションをそれぞれ実行する。
【0080】
経路計画部701は、タスクデータ200で示された各タスクに対して、搬送エリア800のレイアウト情報を用い、予め定めた任意の評価指標に従って、タスクの始点205から終点206までの搬送ロボットの移動経路を計画する。例えば、経路計画部701は、搬送ロボットの移動距離が最短であるという評価指標を用いて、移動経路を求める。この経路計画には、例えばA*アルゴリズムなどの任意の既存の手法を用いることができる。
【0081】
経路計画部701は、計画した移動経路を遅延リスク算出部111に出力する。経路計画部701が計画した移動経路は、図4のS402において、遅延リスク算出部111が搬送ロボット毎の仮想の搬送時間を計算する際に用いられる。すなわち、本実施例では、図4のS402において、経路計画部701が計画した移動経路についての搬送時間の確率密度分布302から、仮想の搬送時間を求める。
【0082】
搬送シミュレーション実行部702は、搬送エリア800のレイアウト情報を用いて搬送シミュレーションを行い、タスクデータ200で示された各タスクに対して、経路計画部701が計画した移動経路を用いて、搬送ロボット毎に搬送時間の確率密度分布を求める。この搬送シミュレーションでは、搬送シミュレーション実行部702は、搬送エリア800に存在する搬送ロボットと人(例えば、搬送作業員またはそれ以外の人)を含めて、ロボット同士の間やロボットと人との間の輻輳を考慮した詳細なシミュレーションを行う。
【0083】
搬送シミュレーション実行部702は、搬送時間の確率密度分布を求めるために、例えばモンテカルロ法を用いる。
【0084】
図9は、搬送シミュレーション実行部702が、モンテカルロ法を用いて搬送時間の確率密度分布を求める処理のフローチャートの例を示す図である。
【0085】
S901で、搬送シミュレーション実行部702は、入力パラメータの確率密度分布を入力する。入力パラメータとは、搬送ロボットの搬送時間のばらつきの要因となるパラメータのことであり、主に、搬送エリア800の内部で搬送ロボットの移動に影響を与える事項(例えば、人と物体と環境)についてのパラメータである。例えば、搬送シミュレーション実行部702は、これらの入力パラメータの分布が例えば正規分布であると仮定し、この正規分布の平均と標準偏差を入力する。
【0086】
入力パラメータの例には、人の数、人の移動速度、人の移動の始点と終点、人の位置、物体(搬送ロボットの障害物)の位置、搬送ロボットの通信環境、及び搬送エリア800の内部の明るさが含まれる。搬送ロボットが無線通信で制御される場合には、搬送ロボットの搬送時間は、通信環境に依存することがある。搬送ロボットがカメラで撮影した画像を基に移動する場合には、搬送ロボットの搬送時間は、搬送エリア800の明るさに依存する画像の鮮明度で決まることがある。
【0087】
S902で、搬送シミュレーション実行部702は、搬送時間の確率密度分布を推定する。S902の処理は、S903からS905の処理で構成される。
【0088】
S903で、搬送シミュレーション実行部702は、S901で入力した入力パラメータの確率密度分布を用いて、予め定めた回数分(例えば100回分)の乱数を発生させる。
【0089】
S904で、搬送シミュレーション実行部702は、S903で発生させた乱数を入力データとして、搬送シミュレーションを実行する。搬送シミュレーション実行部702は、乱数で決定される入力パラメータの条件の下で物品を搬送する場合の搬送時間を計算して求める。
【0090】
S905で、搬送シミュレーション実行部702は、求めた搬送時間を用いて搬送時間の確率密度分布を推定する。
【0091】
S906で、搬送シミュレーション実行部702は、推定した、搬送時間の確率密度分布を遅延リスク算出部111に出力する。
【0092】
図10は、図9のS905で、搬送シミュレーション実行部702が搬送時間の確率密度分布を推定する方法の例を説明するための図である。図10には、搬送時間のヒストグラム1001を左の図に示しており、このヒストグラム1001から得られた確率密度分布302を右の図に示している。
【0093】
搬送シミュレーション実行部702は、求めた搬送時間を用いて、搬送時間のヒストグラム1001を導出する。そして、搬送シミュレーション実行部702は、このヒストグラム1001から、例えば、KDE(カーネル密度推定)などの手法を用い、搬送時間の確率密度分布302を推定する。
【0094】
また、搬送シミュレーション実行部702は、搬送時間の確率密度分布302が特定の分布である(例えば、図3に示す対数正規分布である)と想定する場合には、最少二乗法などを用いて、この分布のパラメータを求めることができる。
【0095】
遅延リスク算出部111は、以上のようにして推定した、搬送時間の確率密度分布302を用いて、図4のS402で遅延リスクを計算する。
【0096】
本実施例では、経路計画部701が経路計画を実行し、搬送シミュレーション実行部702が搬送シミュレーションを実行する例を説明した。本実施例による搬送タスク管理システム100では、搬送シミュレーション実行部702(または経路計画部701)が、搬送シミュレーションとともに経路計画を実行してもよい。また、搬送ロボットの移動経路が予め設定されていて固定されている場合には、経路計画を実行せず、予め設定された移動経路を用いて搬送シミュレーションを実行してもよい。
【0097】
また、次のようにして、タスクに対してロボットを割り当てるタスク割り当てを実行してもよい。経路計画を先に実行して搬送ロボットの移動経路を求めるとともに、適当な搬送時間の確率密度分布を仮定する。タスク割り当て部112は、この移動経路と搬送時間の確率密度分布とを用いて、ロボットをタスクに仮に割り当てる。搬送シミュレーション実行部702は、タスク割り当て部112が生成したタスク割り当て結果を用いて搬送シミュレーションを実行し、搬送時間の確率密度分布を求める。タスク割り当て部112は、搬送シミュレーションで求めた、搬送時間の確率密度分布を用いて、再度タスク割り当てを実行する。
【0098】
本実施例では、搬送ロボットの移動に影響を与えるパラメータを考慮した搬送シミュレーションにより、搬送時間の確率密度分布302を求め、求められた確率密度分布302を用いて遅延リスクを算出するので、遅延リスクをより正確に求めることができ、搬送の遅延をより少なくすることができる。
【実施例0099】
本発明の実施例3による、搬送タスク管理システムと搬送タスク管理方法を説明する。以下では、本実施例による管理システムと管理方法について、実施例2による管理システムと管理方法と異なる点を主に説明する。
【0100】
本実施例では、搬送時間の確率密度分布302を実測データから求める構成について説明する。遅延リスク算出部111は、実測データから求められた、搬送時間の確率密度分布302を用いて、遅延リスクを算出する。
【0101】
図11は、本実施例による搬送タスク管理システム100の構成の例を示す図である。本実施例による搬送タスク管理システム100は、実施例2による搬送タスク管理システム100(図7)において、演算処理部101が搬送シミュレーション実行部702を備えず、実測データ評価部1101を備える。
【0102】
本実施例では、搬送ロボットが実際に搬送タスクを実行したときのデータを実測データとし、この実測データが十分に存在する場合を想定する。実測データには、経路計画部701が計画した移動経路における、予め実施した搬送実験での搬送ロボットによる物品の搬送時間と、搬送ロボットが実際に物品を搬送したときの搬送時間とのうち、少なくとも一方が含まれている。なお、実測データは、実際に人と搬送ロボットが混在する搬送エリア800において、搬送ロボットが物品を搬送した場合の搬送時間のデータである。
【0103】
実測データ評価部1101は、図9に示した処理のうち、S905の搬送時間の確率密度分布302を推定する処理と、S906の搬送時間の確率密度分布302を遅延リスク算出部111に出力する処理を実行する。
【0104】
実測データ評価部1101は、実測データを保存している。実測データ評価部1101は、実施例2の搬送シミュレーション実行部702と同様に、図9のS905の処理で、タスクデータ200で示された各タスクに対して、経路計画部701が計画した移動経路について、実測データに含まれる搬送時間から、搬送時間のヒストグラム1001(図10)を導出し、搬送時間の確率密度分布302を求める。
【0105】
ただし、複数の異なる状態からほぼ同一の複数の実測データが得られている場合(例えば、実測データがほぼ同一でも、人の人数や移動速度などにバラツキがある場合)には、複数の実測データの中から評価したい状態での実測データを用いて、搬送時間の確率密度分布302を推定することができる。この場合には、例えば、ランダムフォレスト等の機械学習の手法を用いて、搬送時間の確率密度分布302を推定してもよい。
【実施例0106】
本発明の実施例4による、搬送タスク管理システムと搬送タスク管理方法を説明する。以下では、本実施例による管理システムと管理方法について、実施例1による管理システムと管理方法と異なる点を主に説明する。
【0107】
本実施例では、タスクに対して搬送ロボットを割り当てた結果(タスク割り当て結果)を用いて、物品を搬送する搬送ロボットの台数を最適化する構成について説明する。搬送ロボットの台数の最適化は、例えば、搬送の事前検討で行うことができる。
【0108】
図12は、本実施例による搬送タスク管理システム100の構成の例を示す図である。本実施例による搬送タスク管理システム100は、実施例1による搬送タスク管理システム100(図1)において、演算処理部101が最適化部1201をさらに備える。
【0109】
タスク割り当て部112は、タスク割り当て処理(図4)を、搬送ロボットの台数を変えて複数回実施する。
【0110】
最適化部1201は、搬送ロボットの台数が変わるたびに(すなわち、搬送ロボットの台数のそれぞれについて)、タスク割り当て部112のタスク割り当て結果から、遅延リスク505に関する評価指標を導出する。この評価指標は、遅延リスク505を許容できる値にするために予め定められた指標であり、例えば、全てのタスクの遅延リスク505の最大値や平均値などとすることができる。本実施例では、全ての遅延リスク505の最大値を評価指標とする。
【0111】
最適化部1201は、搬送ロボットの台数と評価指標との関係、すなわち、搬送ロボットの台数が変化すると評価指標がどのように変化するかを求める。
【0112】
図13は、最適化部1201が求めた、搬送ロボットの台数と評価指標1301との関係の例を示す図である。図13に示す例では、評価指標1301は、全ての遅延リスク505の最大値である。図13には、搬送ロボットの台数が増加すると評価指標1301が低下するという関係が示されている。
【0113】
図13には、評価指標1301について予め定めた閾値1302も示されている。閾値1302は、評価指標1301とタスクに応じて、任意に定めることができる。
【0114】
最適化部1201は、導出した評価指標1301を閾値1302と比較する。評価指標1301が、閾値1302以上または閾値1302以下となる台数が、搬送ロボットの好ましい台数である。そして、搬送ロボットの好ましい台数のうち最小または最大の台数を、搬送ロボットの最適台数とすることができる。最適化部1201は、このようにして評価指標1301を用いて、搬送ロボットの最適台数を求めることができる。
【0115】
図13に示す例では、評価指標1301が遅延リスク505の最大値であるので、評価指標1301が閾値1302以下となる台数が、搬送ロボットの好ましい台数である。そして、搬送ロボットの好ましい台数のうち最小の台数が、搬送ロボットの最適台数である。図13に示す例では、搬送ロボットの好ましい台数は、37台以上であり、搬送ロボットの最適台数は、37台である。
【0116】
最適化部1201は、以上のようにして、遅延リスクを許容できる値にするために必要な搬送ロボットの台数を求めたり最適化したりすることができる。
【0117】
なお、最適化部1201は、搬送ロボットの台数を最適化するだけでなく、タスク割り当て結果を用いて、搬送エリア800のレイアウトの最適化、一度に搬送する搬送量の最適化、及びみずすまし(搬送ロボットへの積み下ろしをする人)の配置の検討などの様々な処理を、搬送の事前検討として実行してもよい。
【0118】
本実施例では、一例として、最適化部1201が、タスク割り当て部112のタスク割り当て結果を用いて搬送エリア800のレイアウト(図8)を最適化する例を、簡単に説明する。
【0119】
タスク割り当て部112は、タスク割り当て処理(図4)を、搬送エリア800のレイアウトを変えて複数回実施する。
【0120】
最適化部1201は、搬送エリア800のレイアウトが変わるたびに(すなわち、搬送エリア800のレイアウトのそれぞれについて)評価指標を導出し、レイアウトと評価指標との関係、すなわち、レイアウトが変化すると評価指標がどのように変化するかを求める。そして、最適化部1201は、導出した評価指標を閾値と比較し、好ましいレイアウトや最適なレイアウトを求める。例えば、評価指標1301が閾値1302以上または閾値1302以下となるレイアウトを、好ましいレイアウトとし、好ましいレイアウトのうち評価指標1301が最小または最大となるレイアウトを、最適レイアウトとすることができる。
【0121】
レイアウトの変更には、例えば、搬送する物品の位置(部品庫の位置)の変更、生産設備の位置(生産セルの位置)の変更、及び搬送エリア800に存在する物体の位置の変更が含まれる。
【0122】
本実施例による、搬送タスク管理システムと搬送タスク管理方法では、以上説明したように、タスク割り当て結果を用いて、搬送ロボットの台数や搬送エリア800のレイアウトなどを最適化することができる。
【実施例0123】
本発明の実施例5による、搬送タスク管理システムと搬送タスク管理方法を説明する。以下では、本実施例による管理システムと管理方法について、実施例1による管理システムと管理方法と異なる点を主に説明する。
【0124】
本実施例では、タスク割り当て処理(図4)を動的に実行し、搬送ロボットの制御に活用する構成について説明する。タスク割り当て処理を動的に実行するとは、搬送ロボットのタスクの実行状況に合わせて、タスクに対して搬送ロボットを割り当てることである。
【0125】
図14は、本実施例による搬送タスク管理システム100の構成の例を示す図である。本実施例による搬送タスク管理システム100は、実施例1による搬送タスク管理システム100(図1)において、演算処理部101が搬送ロボット制御指令部1401とタスク実行状況取得部1402をさらに備える。
【0126】
搬送ロボット制御指令部1401は、タスク割り当て部112のタスク割り当て結果を基に、搬送ロボットに制御指令を与え、搬送ロボットにタスクを実行させる。
【0127】
タスク実行状況取得部1402は、タスク実行状況データを搬送ロボットから取得する。タスク実行状況データには、搬送ロボットのタスクの実行状況、すなわち、制御指令が与えられた搬送ロボットが実際にタスクを実行したか否かと、実行したタスクの開始時刻と終了時刻などが含まれる。
【0128】
図15は、タスク実行状況データの例を示す図である。タスク実行状況データは、タスクID201、ロボットID211、開始時刻1503、終了時刻1504、及びステータス1505を含む。開始時刻1503は、ロボットID211の搬送ロボットが、タスクID201のタスクを実行したときのタスクの開始時刻である。終了時刻1504は、ロボットID211の搬送ロボットが、タスクID201のタスクを実行したときのタスクの終了時刻である。ステータス1505は、タスクの状態を示す。例えば、タスクID201が001のタスクは、完了しており、タスクID201が002のタスクは、終了時刻が記録されておらず、実行中である。
【0129】
タスク割り当て部112は、タスク割り当て処理(図4)を動的に実行する。本実施例では、タスク割り当て部112が、タスク割り当て処理を、予め定められた時間間隔(例えば10分間隔)で実行する例と、必要な時点で実行する例について説明する。
【0130】
初めに、タスク割り当て処理を、予め定められた時間間隔で実行する場合について説明する。タスク実行状況取得部1402は、この時間間隔で搬送ロボットからタスク実行状況データを取得する。タスク割り当て部112は、タスク実行状況取得部1402からタスク実行状況データを取得し、この時点における搬送ロボットのタスクの実行状況(例えば、ステータス1505や、開始時刻1503から現時点までの時間)と、MES等からのタスクの指令を基に、例えば実施例1や実施例2と同様にして、タスク割り当て処理を実行し、タスクにロボットを割り当てる。タスク割り当て部112は、取得したタスク実行状況データに含まれる搬送ロボットのタスクの実行状況から、実際に空いているロボットや、タスクを実行しているロボットがタスクを終了する予定時刻などを求めることができる。
【0131】
次に、タスク割り当て処理を、必要な時点で実行する場合について説明する。タスク割り当て部112は、予め、例えば1日分のタスク割り当て処理を実行しておく。タスク実行状況取得部1402は、任意のタイミングで、搬送ロボットのタスクの実行状況を取得する。タスク割り当て部112は、タスク実行状況取得部1402から取得したタスク実行状況データに応じて、タスク割り当て処理を再実行する。タスク実行状況データにより、タスクが遅延しているか否かと、タスクが実行されたか否かなどが分かる。
【0132】
例えば、タスク割り当て部112は、タスク実行状況取得部1402が取得した搬送ロボットのタスクの実行状況を、事前に定められたタスクの計画と比較する。そして、タスク割り当て部112は、タスクの実行状況が事前の計画から外れている場合には、タスク割り当て処理を再実行し、タスクにロボットを再度割り当てる。
例えば、タスク割り当て部112は、タスクの実行状況が、事前の計画から予め定めた閾値以上に乖離している場合に、タスクの実行状況が事前の計画から外れていると判断する。また、タスク割り当て部112は、MES等からのタスクの指令が、生産計画の変更などにより事前の指令から変更されて改めて入力された場合などに、タスク割り当て処理を再実行してもよい。
【0133】
また、本実施例による搬送タスク管理システム100は、実施例2で説明した搬送シミュレーション実行部702(図7)を備えて、タスク割り当て処理を動的に実行することができる。この場合には、搬送シミュレーション実行部702は、人の数などタスクの実行に関連する様々な状況を仮定した条件の下で、事前に搬送シミュレーションを行って搬送時間の確率密度分布302を求め、求めた搬送時間の確率密度分布302をデータベースに保存する。遅延リスク算出部111は、データベースに保存された搬送時間の確率密度分布302のうち、現在の状況に最も近い状況で得られた確率密度分布302を用いて、遅延リスクを算出する。このようにすると、現実の状況を反映させて、より正確に遅延リスクを算出することができる。
【0134】
また、搬送シミュレーション実行部702は、タスクの実行状況に合わせてリアルタイムにタスク割り当て処理を実行するときに、実際のタスクの実行状況(例えば、タスク実行状況取得部1402が取得した搬送ロボットのタスクの実行状況)を反映して搬送シミュレーションを行って、搬送時間の確率密度分布302を求めてもよい。この場合には、人流計測センサなどの搬送エリア800の状況を取得できるセンサを用いると、搬送エリア800の状況をシミュレーションで再現することで、さらに現実に近い搬送時間の確率密度分布302を得ることができ、より正確に遅延リスクを算出することができる。
【0135】
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記の実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備える態様に限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能である。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、削除したり、他の構成を追加・置換したりすることが可能である。
【0136】
また、本発明による搬送タスク管理システムの各構成は、これらの一部または全部を、例えば集積回路で設計する等により、ハードウェアで実現してもよい。また、これらの一部または全部は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し実行するようにして、ソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル、測定情報、及び算出情報等の情報は、メモリ、ハードディスクドライブ、及びSSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、及びDVD等の記録媒体に記録することができる。よって、本発明による制御装置の各構成は、処理部、処理ユニット、及びプログラムモジュールなどとして、各機能の実現が可能である。
【0137】
また、各図面において、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを記載しており、必ずしも製品として必要な全ての制御線や情報線を記載しているとは限らない。実際の製品では、殆ど全ての構成要素が相互に接続されていると考えてもよい。
【0138】
さらに、各装置を繋ぐ通信手段は、有線LANや無線LANに限定せず、その他の通信手段に変更してもよい。
【符号の説明】
【0139】
100…搬送タスク管理システム、101…演算処理部、110…搬送情報受付部、111…遅延リスク算出部、112…タスク割り当て部、113…結果出力部、120…入出力端末、121…入力部、122…出力部、200…タスクデータ、201…タスクID、202…搬送品ID、203…搬送可能時刻、204…納期、205…始点、206…終点、210…ロボットデータ、211…ロボットID、212…タイプ、213…標準速度、214…初期位置、302…確率密度分布、304…搬送時間が納期を超える時間となる領域、500…タスク割り当て結果データ、503…開始予定時刻、504…終了予定時刻、505…遅延リスク、510…タスク割り当て結果の可視化表示、511…両矢印線、512…ボックス、600…コンピュータ、601…CPU、602…RAM、603…ROM、604…HDD、605…通信インターフェース、606…入出力インターフェース、607…メディアインターフェース、615…通信装置、617…記録媒体、701…経路計画部、702…搬送シミュレーション実行部、800…搬送エリア、801~805…エリア、1001…ヒストグラム、1101…実測データ評価部、1201…最適化部、1301…評価指標、1302…閾値、1401…搬送ロボット制御指令部、1402…タスク実行状況取得部、1503…開始時刻、1504…終了時刻、1505…ステータス。
図1
図2
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図5A
図5B
図6
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