(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147173
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】溶接装置
(51)【国際特許分類】
B23K 9/32 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
B23K9/32 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060015
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】脇田 淳一
(57)【要約】
【課題】カバーを任意の位置で開状態に保持可能であって、その保持力を容易に調節可能である、溶接装置を提供する。
【解決手段】本開示に基づく溶接装置1において、第1壁部11には、軸部30を位置固定可能に支持する支持孔111が形成されている。第2壁部12は、嵌合部20から見て第1壁部11とは反対側に位置している。第1面部21には摺接孔211が形成されている。摺接孔211には、軸部30が摺接可能に挿入されている。第1面部21は、第1壁部11に対向している。第2面部22は、第2壁部12に接している。押圧部31は、第2面部22と第2壁部12との間に作用する摩擦力によってカバー1Bが筐体部1Aに対して開状態で静止できるように、第1面部21を軸部30の軸方向DAに押圧している。位置調節部32は、押圧部31による押圧力を調節するために第1壁部11に対する軸部30の相対的な位置を調節可能に構成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被嵌合部および該被嵌合部に嵌合する嵌合部のうちの一方を有する、筐体部と、
前記被嵌合部および前記嵌合部のうちの他方を有し、前記筐体部の一部を覆うカバーと、
前記被嵌合部および前記嵌合部に軸支され、前記カバーが前記筐体部に対して開閉可能となるように設けられた、軸部とを備え、
前記被嵌合部は、前記軸部を位置固定可能に支持する支持孔が形成された第1壁部と、前記嵌合部から見て前記第1壁部とは反対側に位置する第2壁部とを有し、
前記嵌合部は、前記軸部が摺接可能に挿入された摺接孔が形成され、前記第1壁部に対向する第1面部と、前記第2壁部に接する第2面部とを有し、
前記軸部は、前記第2面部と前記第2壁部との間に作用する摩擦力によって前記カバーが前記筐体部に対して開状態で静止できるように、前記第1面部を前記軸部の軸方向に押圧する押圧部と、前記押圧部による押圧力を調節するために前記第1壁部に対する前記軸部の相対的な位置を調節可能に構成された位置調節部とを有する、溶接装置。
【請求項2】
前記第1面部と前記押圧部との間において、前記軸方向に圧縮された状態で設けられた付勢部材をさらに備える、請求項1に記載の溶接装置。
【請求項3】
前記第2壁部は樹脂組成物から構成され、
前記第2面部は樹脂組成物から構成されている、請求項1に記載の溶接装置。
【請求項4】
前記カバーは、前記筐体部の表面に設けられた操作面、または、前記筐体部に設けられたワイヤリール取付部、または、前記筐体部に収容されたモータを点検可能に前記筐体部に形成された開口を覆っている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の溶接装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、溶接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特許第3900164号公報)には、保護カバーを備えた溶接装置が開示されている。特許文献2(特開2003-136241号公報)には、パネルが設けられたケースを有する溶接機用電源装置が開示されており、このパネルを開閉可能にカバーが設けられている。当該カバーは、上部に全開する以外に、上部近傍の途中で停止させる構造であってもよいことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3900164号公報
【特許文献2】特開2003-136241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業効率向上等の観点から、溶接装置は、カバーを任意の位置で開状態に保持可能であることが望ましい。しかしながら、カバーの開閉が繰り返されると、カバーの開状態を保持するための部材の劣化により、保持力が低下する場合がある。このため、当該保持力を調節可能な溶接装置が求められている。
【0005】
本開示は上記の課題に鑑みてなされたものであり、本開示の目的は、カバーを任意の位置で開状態に保持可能であって、その保持力を容易に調節可能である、溶接装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に基づく溶接装置は、溶接装置は、筐体部と、カバーと、軸部とを備えている。筐体部は、被嵌合部および該被嵌合部に嵌合する嵌合部のうちの一方を有している。カバーは、被嵌合部および嵌合部のうちの他方を有し、筐体部の一部を覆っている。軸部は、被嵌合部および嵌合部に軸支され、カバーが筐体部に対して開閉可能となるように設けられている。被嵌合部は、第1壁部と、第2壁部とを有している。第1壁部には、軸部を位置固定可能に支持する支持孔が形成されている。第2壁部は、嵌合部から見て第1壁部とは反対側に位置している。嵌合部は、第1面部と、第2面部とを有している。第1面部には摺接孔が形成されている。摺接孔には、軸部が摺接可能に挿入されている。第1面部は、第1壁部に対向している。第2面部は、第2壁部に接している。軸部は、押圧部と、位置調節部とを有している。押圧部は、第2面部と第2壁部との間に作用する摩擦力によってカバーが筐体部に対して開状態で静止できるように、第1面部を軸部の軸方向に押圧している。位置調節部は、押圧部による押圧力を調節するために第1壁部に対する軸部の相対的な位置を調節可能に構成されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、カバーを任意の位置で開状態に保持可能であって、その保持力を容易に調節可能である溶接装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態に係る溶接装置を示す斜視図である。
【
図2】カバーが開状態の溶接装置を示す斜視図である。
【
図3】本開示の一実施形態に係る溶接装置の部分的な正面図である。
【
図4】
図3の溶接装置をIV-IV線矢印方向に見た部分的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の一実施形態に係る溶接装置について図を参照して説明する。以下の実施形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0010】
図1は、本開示の一実施形態に係る溶接装置を示す斜視図である。
図1に示すように、溶接装置1は、具体的にはワイヤ送給装置であって、筐体部1Aと、カバー1Bとを備えている。
【0011】
筐体部1Aの表面には、操作面2が設けられている。操作面2には、液晶ディスプレイが設けられている。筐体部1Aに収容された制御部(図示せず)によって、液晶ディスプレイに所定の情報が表示される。また、作業者は、操作面2に設けられたスイッチなどにより、所定の信号を制御部に入力することができる。
【0012】
筐体部1Aには、ワイヤリール取付部3がさらに設けられている。および開口4が形成されている。ワイヤリール取付部3には、溶接ワイヤが巻き回されたリール(図示せず)が取り付けられる。溶接ワイヤは、筐体部1Aから送り出されて、その先端が消耗電強として用いられる。
【0013】
筐体部1Aには、開口4が形成されている。開口4は、筐体部1Aに収容されたモータ(図示せず)などを点検可能に形成されている。当該モータが駆動することで、溶接ワイヤが筐体部1Aから送り出される。
【0014】
カバー1Bは、筐体部1Aの一部を覆っている。本実施形態において、カバー1Bは、操作面2を覆っている。カバー1Bは、斜め下方または下方に延びている。
【0015】
図2は、カバーが開状態の溶接装置を示す斜視図である。
図2に示すように、カバー1Bは、カバー1Bは端部が上方に持ち上げられることで、筐体部1Aに対して開閉可能に設けられている。
【0016】
本実施形態において、筐体部1Aは、被嵌合部10を有しており、カバー1Bは、嵌合部20を有している。嵌合部20は、被嵌合部10に嵌合する。しかしながら、筐体部1Aが嵌合部20を有し、カバー1Bが、被嵌合部10を有していてもよい。すなわち、筐体部1Aが、被嵌合部10および嵌合部20のうちの一方を有し、カバー1Bが、被嵌合部10および嵌合部20のうちの他方を有していればよい。
【0017】
図3は、本開示の一実施形態に係る溶接装置の部分的な正面図である。
図4は、
図3の溶接装置をIV-IV線矢印方向に見た部分的な断面図である。
図3および
図4に示すように、溶接装置1は、軸部30をさらに備えている。軸部30は、被嵌合部10および嵌合部20に軸支され、カバー1Bが筐体部1Aに対して開閉可能となるように設けられている(
図2参照)。以下、カバー1Bの開閉機構に関わる被嵌合部10、嵌合部20および軸部30の詳細について説明する。
【0018】
被嵌合部10は、第1壁部11と、第2壁部12とを有している。第1壁部11には、軸部30を位置固定可能に支持する支持孔111が形成されている。支持孔111は、雌ねじ部112を介して軸部30を支持している。雌ねじ部112は、具体的には支持孔111に圧入された金属製のインサートナットである。
【0019】
第2壁部12は、嵌合部20から見て第1壁部11とは反対側に位置している。第1壁部11および第2壁部12は、軸部30の軸方向DAに並んでおり、本実施形態においては水平方向に並んでいる。
【0020】
第1壁部11および第2壁部12は、それぞれ樹脂組成物から構成されている。本実施形態において、第1壁部11および第2壁部12は一体の樹脂成形体で構成されている。
【0021】
嵌合部20は、第1面部21と、第2面部22と、筒部23とを有している。第1面部21には摺接孔211が形成されている。摺接孔211には、軸部30が摺接可能に挿入されている。第1面部21は、第1壁部11に対向している。
【0022】
第2面部22は、第2壁部12に接している。第1面部21と第2面部22は、軸方向DAおよび水平方向において互いに反対方向を向いている。上述の摺接孔211は貫通孔であって、第2面部22にまで達している。
【0023】
筒部23は、第1面部21から第1壁部11に向かって延びている。筒部23は、摺接孔211の開口方向から見て摺接孔211を取り囲むように位置している。
【0024】
第1面部21、第2面部22および筒部23は、それぞれ樹脂組成物から構成されている。本実施形態において、第1面部21、第2面部22および筒部23は、一体の樹脂成形体で構成されている。
【0025】
軸部30は、押圧部31と、位置調節部32と、頭部33とを有している。押圧部31は、第2面部22と第2壁部12との間に作用する摩擦力によってカバー1Bが筐体部1Aに対して開状態で静止できるように(
図2参照)、第1面部21を軸部30の軸方向DAに押圧している。本実施形態において、押圧部31は、後述する他の部材を介して第1面部21を押圧している。押圧部31は、直接、第1面部21を押圧してもよい。
【0026】
押圧部31は、段差状の外形を有している。具体的には、押圧部31は、第1面部21から見て軸部30の径方向外側に張り出している部分である。
【0027】
位置調節部32は、押圧部31から見て第1面部21とは反対側に位置している。位置調節部32は、具体的には雄ねじ状の外形を有している。位置調節部32は、雌ねじ部112と螺合している。このため、軸部30を被嵌合部10に対して回動させることで、軸部30は、被嵌合部10に対して軸方向DAに変位する。これに伴い、押圧部31も軸方向DAに変位するため、押圧部31による第1面部21への押圧力が変化する。このように、位置調節部32は、押圧部31による押圧力を調節するために第1壁部11に対する軸部30の相対的な位置を調節可能に構成されている。
【0028】
頭部33は、第1壁部11から見て嵌合部20とは反対側に位置している。頭部33は、第1壁部11と係止している。頭部33は、作業者が軸部30を容易に回動するために、六角孔や溝が形成されてもよい。
【0029】
溶接装置1は、付勢部材40をさらに備えている。付勢部材40は、第1面部21と押圧部31との間において、軸方向DAに圧縮された状態で設けられている。すなわち、押圧部31は、付勢部材40を介して第1面部21を押圧している。
【0030】
付勢部材40は、たとえばバネ部材であり、具体的には金属製のバネ座金である。付勢部材40には軸部30が挿通されている。付勢部材40は筒部23に収容されている。
【0031】
溶接装置1は、複数の緩衝部材50をさらに備えている。複数の緩衝部材50は、第1面部21と付勢部材40との間、および、押圧部31と付勢部材40との間に、それぞれ設けられている。すなわち、押圧部31は、付勢部材40と複数の緩衝部材50を介して第1面部21を押圧している。
【0032】
また、本実施形態においては、
図3に示すように、筐体部1Aおよびカバー1Bはそれぞれ第2の被嵌合部60、第2の嵌合部70および第2の軸部(図示せず)を備えていてもよい。第2の被嵌合部60、第2の嵌合部70および第2の軸部は、被嵌合部10、嵌合部20および軸部30のそれぞれと同様の構成を有してもよい。
【0033】
上述のように、本開示の一実施形態に係る溶接装置1は、筐体部1Aと、カバー1Bと、軸部30とを備えている。筐体部1Aは、被嵌合部10および該被嵌合部10に嵌合する嵌合部20のうちの一方を有している。カバー1Bは、被嵌合部10および嵌合部20のうちの他方を有し、筐体部1Aの一部を覆っている。軸部30は、被嵌合部10および嵌合部20に軸支され、カバー1Bが筐体部1Aに対して開閉可能となるように設けられている。被嵌合部10は、第1壁部11と、第2壁部12とを有している。第1壁部11には、軸部30を位置固定可能に支持する支持孔111が形成されている。第2壁部12は、嵌合部20から見て第1壁部11とは反対側に位置している。嵌合部20は、第1面部21と、第2面部22とを有している。第1面部21には摺接孔211が形成されている。摺接孔211には、軸部30が摺接可能に挿入されている。第1面部21は、第1壁部11に対向している。第2面部22は、第2壁部12に接している。軸部30は、押圧部31と、位置調節部32とを有している。押圧部31は、第2面部22と第2壁部12との間に作用する摩擦力によってカバー1Bが筐体部1Aに対して開状態で静止できるように、第1面部21を軸部30の軸方向DAに押圧している。位置調節部32は、押圧部31による押圧力を調節するために第1壁部11に対する軸部30の相対的な位置を調節可能に構成されている。
【0034】
上記の構成によれば、押圧部31が第1面部21を押圧することで第2面部22と第2壁部12との間に摩擦力が作用している。作業者は、この摩擦力に逆らってカバー1Bを開状態にした後、当該摩擦力により任意の位置でカバー1Bを開状態に保持させることができる。また、位置調節部32によって第1壁部11に対する軸部30の相対的な位置を調節することで、押圧部31による第1壁部11への押圧力を調節することができるため、カバー1Bの開状態の保持力を容易に調節することができる。
【0035】
さらに、本実施形態に係る溶接装置1は、第1面部21と押圧部31との間において、軸方向DAに圧縮された状態で設けられた付勢部材40をさらに備えている。
【0036】
これにより、押圧部31は付勢部材40を介して第1面部21を押圧することになるため、第2面部22が第2壁部12を押圧する力が大きくなる。よって、第2面部22と第2壁部12との間に作用する摩擦力がより大きくなる。ひいては、カバー1Bの開状態を操作に適した状態に維持するに十分な保持力が得られる。
【0037】
さらに、本実施形態において、第2壁部12は樹脂組成物から構成され、第2面部22は樹脂組成物から構成されている。
【0038】
樹脂組成物は金属より静止摩擦係数が比較的大きいため、上記の構成よれば、第2面部22と第2壁部12との間に作用する摩擦力をより大きくできる。ひいては、カバー1Bの開状態を操作に適した状態に維持するに十分な保持力がより得られる。
【0039】
なお、本実施形態においては、筐体部1Aが、被嵌合部10および嵌合部20のうちの一方を有し、筐体部1Aの表面に設けられた操作面2を覆うカバー1Bが、被嵌合部10および嵌合部20のうちの他方を有している、溶接装置1について説明した。しかしながら、
図1および
図2に示されるカバー1Cおよびカバー1Dも、カバー1Bと同様の開閉機構を有していてもよい。具体的には、ワイヤリール取付部3を覆うカバー1Cが、被嵌合部10および嵌合部20のうちの他方を有し、筐体部1Aに対して開閉可能に設けられてもよい。また、開口4を覆うカバー1Dが、被嵌合部10および嵌合部20のうちの他方を有し、筐体部1Aに対して開閉可能に設けられてもよい。
【0040】
すなわち、本実施形態におけるカバー1B,1C,1Dは、筐体部1Aの表面に設けられた操作面2、または、筐体部1Aに設けられたワイヤリール取付部3、または、筐体部1A内に収容されたモータを点検可能に筐体部1Aに形成された開口4を覆っていてもよい。
【0041】
本実施形態に係るカバー1Bが操作面2を覆っている場合、カバー1Bは開状態で保持可能であるため、操作面2の操作が容易となる。本実施形態に係るカバー1Cがワイヤリール取付部3を覆っている場合、カバー1Cは開状態で保持可能であるため、溶接ワイヤリールの取り付けが容易となる。さらに、本実施形態に係るカバー1Dが開口4を覆っている場合、カバー1Dは開状態で保持可能であるため、モータの点検作業などが容易となる。
【0042】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0043】
1 溶接装置、1A 筐体部、1B,1C,1D カバー、2 操作面、3 ワイヤリール取付部、4 開口、10 被嵌合部、11 第1壁部、111 支持孔、112 雌ねじ部、12 第2壁部、20 嵌合部、21 第1面部、211 摺接孔、22 第2面部、23 筒部、30 軸部、31 押圧部、32 位置調節部、33 頭部、40 付勢部材、50 緩衝部材、60 第2の被嵌合部、70 第2の嵌合部。