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  • 特開-超微細気泡を含む燃料の給油装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147174
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】超微細気泡を含む燃料の給油装置
(51)【国際特許分類】
   B67D 7/42 20100101AFI20241008BHJP
【FI】
B67D7/42 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060016
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】518199849
【氏名又は名称】大煌工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520393428
【氏名又は名称】合同会社スペースK
(74)【代理人】
【識別番号】100092679
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 盛之助
(72)【発明者】
【氏名】山下 将弘
(72)【発明者】
【氏名】金井 誠
【テーマコード(参考)】
3E083
【Fターム(参考)】
3E083AA02
3E083AG01
3E083AH01
(57)【要約】
【課題】
液体燃料と気体をマイクロバブル状に微細化する機能を有するノズルを燃料の供給系に備えた給油装置を提供する。
【解決手段】
貯蔵タンク1の液体燃料を給油ポンプ5で吸上げ、給油時に前記自動車の燃料タンクに接続される給油ピストル9に送り込むため、前記給油ポンプ5と給油ピストル9の間に配置されているパイプによる燃料送給系7,10の中間部に、前記給油ポンプ5で送給される液体燃料と前記送給に伴って吸入される空気とを混合して微細気泡に形成するノズル体15,16を配置した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵タンクの液体燃料を、内燃機関をエンジンとして備える自動車の燃料タンクに供給する給油装置であって、前記貯蔵タンクの液体燃料を給油ポンプで吸上げ、給油時に前記自動車の燃料タンクに接続される給油ピストルに送り込むため、前記給油ポンプと給油ピストルの間に配置されているパイプによる燃料送給系の中間部に、前記給油ポンプで送給される液体燃料と前記送給に伴って吸入される空気とを混合して微細気泡に形成するノズル体を配置したことを特徴とする給油装置。
【請求項2】
燃料送給系の中間部に挿入されるノズル体は、1個または2個若しくは3個以上である請求項1の給油装置。
【請求項3】
請求項1又は2の給油装置は、燃料ポンプから給油ピストルまでの給油系統を2系統備えている給油装置。
【請求項4】
給油する液体燃料は、軽油である請求項1又は2の給油装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関エンジンを備える自動車の燃料タンクに軽油等の液体燃料(以下、燃料という。)給油する給油装置に関する。具体的には、前記燃料を超微細な気泡(以下、Ultra Fine Bubble=UFBという。)を抱いた燃料に形成し、このUFB混入燃料を燃料タンクに供給できるように構成した給油装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、軽油を使用するエンジンで発生するNOxを低減させるため乳化剤と水を加えて混合したエマルジョン燃料があり、これを製造するためのエマルジョン製造技術が特許文献1~3などによって知られている。
【0003】
一方、エジェクター構造の微細流体発生手段を用いて気体と液体をマイクロバブル状に微細化し、この微細化流体を液体燃料の中に混入する装置が、微細液体を混入した液体燃料の製造装置として提案されている(特許文献4参照)。
【0004】
特許文献4の微細流体混入液体燃料の製造装置は、エジェクター構造の微細流体発生器を自動車の燃料タンクと自動車エンジンの燃焼室とを繋ぐ燃料供給系の中間に配置する形態であるため、既存自動車の燃料供給系統の改造が不可欠であった。
【0005】
しかし乍ら、既存自動車の燃料供給系統の改造をしなければ適用できない装置では、微細流体混入の液体燃料装置により生成される燃料自体の効果が優れたものであっても、直ちにかつ容易に実車に適用して運用するには、製造手間やコストなど解決すべき課題が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平07-24284号公報
【特許文献2】特開2001-348581号公報
【特許文献3】特開2002-159832号公報
【特許文献4】特許5124145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、液体燃料と気体をマイクロバブル状に微細化する機能を有するノズルを燃料の供給系に備えた給油装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた本発明給油装置の構成は、貯蔵タンクの液体燃料を、内燃機関をエンジンとして備える自動車の燃料タンクに供給する給油装置であって、前記貯蔵タンクの液体燃料を給油ポンプで吸上げ、給油時に前記自動車の燃料タンクに接続される給油ピストルに送り込むため、前記給油ポンプと給油ピストルの間に配置されているパイプによる燃料送給系の中間部に、前記給油ポンプで送給される液体燃料と前記送給に伴って吸入される空気とを混合して微細気泡に形成するノズル体を配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
給油装置において貯蔵タンクの液体燃料を吸上げる給油ポンプと給油ポンプで送られる前記液体燃料を自動車の燃料タンクに送り込む給油ピストルとの間に、前記給油ポンプで送給される液体燃料と前記送給に伴って吸入される空気とを混合して微細気泡に形成するノズル体を挿入、配置したから、自動車の燃料タンクとエンジンの間の燃料送給系を一切改造することなく、当該自動車の燃料タンクに、燃料と空気が混合されて微細気泡化された燃料を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明給油装置FSの一例を説明するためのブロック図。
図2図1の給油装置FSにおける給油装置本体の内部構造を説明するための模式図。
図3】本発明給油装置FSにおいて微細気泡を生成するノズル体の一例を模式的に示す拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に本発明の実施の形態例について図を参照して説明する。
【0012】
図2は、ガソリンスタンド等に給油装置として設置されている計量機(以下、本発明においては、「給油装置FS」という。)の構造の一例を模式的に示したものである。
【0013】
図2において、1はガソリンスタンドの地下などに埋設されている燃料貯蔵タンク、2は本発明を適用する給油装置FSで、ハウジング状のアップライトタイプの筐体3の内部に、以下の構成を備える。
【0014】
筐体3の内部において、4は前記貯蔵タンク1が貯蔵している液体燃料を燃料ポンプ5へ送るための吸込管、6は前記燃料ポンプ5を駆動する電気モータ、6aは前記燃料ポンプ5の入力プーリと電気モータの出力プーリに掛回された駆動ベルト、7は途中に流量計8を備え前記燃料ポンプ6の吐出側と、後述する給油ピストル9の給油ホース10の末端とを繋ぐ吐出管である。本発明では吐出管7と給油ホース10がパイプによる燃料送給系を構成する。
【0015】
流量計8が計測する流量は、流量カウンタ11によって計数されてコントローラ12に送られる。コントローラ12では、設定部13によって設定された流量値になるまで電気モータ6を駆動制御し、流量計8の計量カウント値と設定部13の設定値が比較演算されて一致したら電気モータ6を停止させる制御をする。設定部13の設定値とコントローラ12の演算値は、表示器14に減算式又は加算式で表示される。
【0016】
以上は公知の計量機(給油装置FS)2の構成の一例である。
本発明給油装置FSは、上記の給油装置FSの給油ピストル9に接続される給油ホース10に2個の微細気泡を生成する第1と第2のノズル体15と同16を適用したものである。
以下、第1ノズル体15と第2ノズル体16について図3を参照しつつ説明する。
ここで、第1と第2のノズル体15と16は同一構造のものであるから以下の説明は第1ノズル体15についてのものであり、第2ノズル体16についての説明は省略する。なお本発明はノズル体を1個だけ使用したもの、或いは2個以上使用したものであってもよい。
【0017】
図3に例示した第1ノズル体15(以下、単にノズル体15という。)は、一例として砲金等の銅合金や真鍮などの金属塊を切削加工により削り出したものである。
【0018】
図3のノズル体15において、21は液体燃料の吸入口、22は吐出口である。前記吸入口21と吐出口22は、ノズル体本体15を形成するブロック状の金属塊を、旋盤等の切削機械によって外形を短円柱状に形成した本体20において、その長手方向の中心軸上に、送り込まれる燃料が旋回して乱流になる乱流室と断面がベンチュリー管状の貫通孔(乱流路)として形成されている。
【0019】
すなわち、本体20における吸入口21と吐出口22の間には、吸入口21の側に切削形成されたチャンバ状の乱流室23と、この乱流室23の下流側に吐出口22に向けて切削形成されたベンチュリ管状の乱流路24とが切削形成されている。
【0020】
上記本体20において前記乱流室23と乱流路24との境界部には、乱流路24の入口を囲む形で環状の空気流路25が形成されている。空気流路25の大きさは一例としては断面において高さを0.8mm、左右幅を2mmにした。26は空気流路25に空気を供給するための空気導入口である。
【0021】
図3に示すノズル体15の一例においては、本体20の外径Dが26mm、長さLが45mmであり、空気導入口26の内径d1は8mm、吸入口21は内径d2が3mm、乱流室23の内径が23mm、乱流路24の入口の内径が22mm、吐出口22は内径d3が19mm、乱流路24の入口の内径が22mm、ノド部の内径d4は7mm、に形成したものを用いた。
【0022】
本発明のノズル体15(16)では、吐出管7(給油ホース10)の内径とノド部となる吸入口21と乱流室23の内径によって前段のベンチュリー管が形成され、乱流室23は連続した乱流路24の入り口と、ノド部と、吐出口22によって後段のベンチュリー管が形成されるから、超微細な気泡(UFB)が吐出口22から送出されるのである。なお、上記ノズル体15の数値は一例であって、各部の大きさ(ノズル体の外径や長さ、各部の内径)の比率が上記例に数値の比率と同じであれば、どのような数値とするかは、任意の設計事項である。
【0023】
いま、上記ノズル体15の吸入口21に、燃料ポンプ5が作動してその吐出管7から液体燃料の一例として、例えば軽油が80L/minで供給されると、その燃料は、前段のベンチュリー管の効果で本体20の乱流室23において、図3に模式的に示すような流れで高速回転する乱流になる。
【0024】
乱流室23に生じる高速の回転乱流と乱流路24に流入する乱流は、環状の空気流路25に負圧を生じさせ、この負圧によって空気流路25に外気が導入される。
導入された空気は、燃料の高速回転乱流と混じりあって1μm未満の細かい気泡になり、この気泡がベンチュリー断面の乱流路24を通って吐出口22から外部に吐出される。この吐出の際、気泡はさらに微細化され、超微細気泡(UFB)として吐出される。
【0025】
本発明給油装置において、ノズル体15から吐出されるUFB化(超微細気泡化)した燃料は、給油ホース10を通って第2ノズル体16に至り、このノズル体16で再び超微細気泡化(UFB化)されて、給油ピストル9から自動車の燃料タンク(図示せず)に供給される。
【0026】
本発明給油装置を通常の軽油について適用した結果、通常軽油の品質特性である(イ)引火点、(ロ)蒸留性状90%留出温度、(ハ)流動点、(ニ)目詰まり点、(ホ)10%残油の残量炭素成分、(ヘ)セタン指数、(ト)重粘度(30°C)(チ)硫黄分、(リ)密度(15°C)の各特性に対し、本発明給油装置FSでUFB化して給油される軽油は、(ヘ)のセタン指数の向上(着火性向上)、(リ)の密度の低下で重粘度が小さくなる(伝播性向上)ことが判った。
【0027】
また、上記本発明を適用した超微細化軽油の特性によって、エンジン内での燃焼動率の向上と燃費の改善とが見られた。一例として排気量8.86Lのエンジンを搭載した10t積みダンプカーを、略2年間で126,321.94km走行させた結果、通常軽油を用いた同仕様のダンプカーに比べ最大22%の燃費向上が得られた。さらに、エンジン内で燃焼状態がより完全燃焼に近づくことにより、有害物質の発生も抑制された。
本発明給油装置FSは、既存の燃料装置の燃料ポンプと給油ピストルを繋ぐ給油ホースに図3によるノズル体本体を配置するだけで構成できるから、設備的にも複雑にならず採用し易い。
【0028】
本発明は以上の通りであるから、液体燃料を超微細気泡化してガソリンタンクに給油する給油装置として極めて好適である。
【符号の説明】
【0029】
1.燃料貯蔵タンク
2.本発明給油装置FS
3.筐体
4.吸込管
5.電気モータ
6.燃料ポンプ
7.吐出管
8.流量計
9.給油ピストル
10.給油ホース
11.流量カウンタ
12.コントローラ
13.設定部
14.表示器
15.第1ノズル体
16.第2ノズル体
図1
図2
図3