(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147177
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】溶接装置
(51)【国際特許分類】
B23K 9/18 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
B23K9/18 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060023
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 健一
【テーマコード(参考)】
4E001
【Fターム(参考)】
4E001AA03
4E001BB05
4E001DC05
(57)【要約】
【課題】ホッパの蓄積容量を変化させることができる構成を備える溶接装置を提供する。
【解決手段】この溶接装置においては、移動可能な台車部50と、台車部50に支持され、溶接対象箇所にワイヤ2を供給するワイヤ供給部20と、ワイヤ供給部20から溶接対象箇所の下方に向かって延び、ワイヤ供給部20から供給されるワイヤ2を、溶接対象箇所に案内するトーチ部30と、溶接対象箇所にフラックスを供給するため、フラックスを蓄積するホッパ40と、を備え、ホッパ40は、蓄積するフラックスの容量を減少させたり増加させたりすることができる容量可変機構を含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動可能な台車部と、
前記台車部に支持され、溶接対象箇所にワイヤを供給するワイヤ供給部と、
前記ワイヤ供給部から前記溶接対象箇所の下方に向かって延び、前記ワイヤ供給部から供給される前記ワイヤを、前記溶接対象箇所に案内するトーチ部と、
前記溶接対象箇所にフラックスを供給するため、前記フラックスを蓄積するホッパと、
を備え、
前記ホッパは、蓄積する前記フラックスの容量を減少させたり増加させたりすることができる容量可変機構を含む、
溶接装置。
【請求項2】
前記ホッパは、
筒状の第1胴部、および、前記第1胴部の下端側において下方に前記フラックスを前記溶接対象箇所に吐出するための吐出口が設けられる漏斗部を有する下部ホッパと、
前記第1胴部の上側に連結される筒状の第2胴部を有する中間ホッパと、
前記中間ホッパの上側に連結される筒状の第3胴部を有する上部ホッパと、
を含み、
前記容量可変機構として、
前記第2胴部の下側においては、前記第1胴部の上側が前記第2胴部の外側に位置して、前記下部ホッパが前記中間ホッパに対して、上下方向にスライド可能に固定される機構、および/または、前記第2胴部の上側においては、前記第3胴部の下側が前記第2胴部の内側に位置して、前記上部ホッパが前記中間ホッパに対して、上下方向にスライド可能に固定される機構、
を有する請求項1に記載の溶接装置。
【請求項3】
前記中間ホッパが、前記台車部に固定されている、
請求項2に記載の溶接装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
サブマージアーク自動溶接を行なうための溶接装置においては、溶接対象箇所にフラックスを供給しながら溶接が行なわれる。フラックスはホッパと呼ばれる容器にフラックスを蓄えて溶接を行なう。フラックスの構成を開示する特許文献として、特開平11-347735号公報(特許文献1)が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的な溶接装置に採用されるホッパの容量は固定されたものである。使用するフラックスがホッパの容量以下であれば問題はない。しかし、使用するフラックスがホッパの容量以上の場合には、フラックスを継ぎ足しながら溶接を行なうか、または、容量の大きいなホッパに交換することが考えられる。
【0005】
しかしながら、フラックスを継ぎ足しながら溶接を行なう場合には、別途フラックスの継ぎ足し作業が必要になる。容量の大きいなホッパに交換する場合には、容量の異なるホッパを予め準備しておく必要がある。
【0006】
この開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、ホッパの蓄積容量を変化させることができる構成を備える溶接装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]本開示の溶接装置においては、移動可能な台車部と、上記台車部に支持され、溶接対象箇所にワイヤを供給するワイヤ供給部と、上記ワイヤ供給部から上記溶接対象箇所の下方に向かって延び、上記ワイヤ供給部から供給される上記ワイヤを、上記溶接対象箇所に案内するトーチ部と、上記溶接対象箇所にフラックスを供給するため、上記フラックスを蓄積するホッパと、を備え、上記ホッパは、蓄積する上記フラックスの容量を減少させたり増加させたりすることができる容量可変機構を含む。
【0008】
[2]:[1]に記載の溶接装置において、上記ホッパは、筒状の第1胴部、および、上記第1胴部の下端側において下方に上記フラックスを上記溶接対象箇所に吐出するための吐出口が設けられる漏斗部を有する下部ホッパと、上記第1胴部の上側に連結される筒状の第2胴部を有する中間ホッパと、上記中間ホッパの上側に連結される筒状の第3胴部を有する上部ホッパと、を含み、上記容量可変機構として、上記第2胴部の下側においては、上記第1胴部の上側が上記第2胴部の外側に位置して、上記下部ホッパが上記中間ホッパに対して、上下方向にスライド可能に固定される機構、および/または、上記第2胴部の上側においては、上記第3胴部の下側が上記第2胴部の内側に位置して、上記上部ホッパが上記中間ホッパに対して、上下方向にスライド可能に固定される機構、を有する。
【0009】
[3]:[2]に記載の溶接装置において、上記中間ホッパが、上記台車部に固定されている。
【発明の効果】
【0010】
本開示の溶接装置によれば、ホッパの蓄積容量を変化させることができる構成を備える溶接装置の提供を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態の溶接装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本実施の形態の溶接装置の構成について、以下、図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。実施の形態における構成を適宜組み合わせて用いることは当初から予定されていることである。
【0013】
(溶接装置1)
図1を参照して、本実施の形態の溶接装置1の構成について説明する。
図1は、本実施の形態の溶接装置1の構成を示す図である。この溶接装置1は、サブマージアーク自動溶接を行なうための装置である。
【0014】
溶接装置1は、ワイヤリール10と、ワイヤ供給部20と、トーチ部30と、ホッパ40と、台車部50とを備える。
【0015】
ワイヤリール10は、溶接ワイヤ2を保持する部分である。ワイヤリール10は、軸部11を含む。軸部11は、軸部11の周面に巻き回された溶接ワイヤ2を支持している。溶接ワイヤ2は、軸部11に対して周方向に回転しながら一端がワイヤ供給部20へ引き出される。溶接ワイヤ2は、溶接ワイヤリールカバー100によって覆われている。
【0016】
ワイヤリール10から引き出された溶接ワイヤ2の一端は、ワイヤ供給部20の内部を挿通する。ワイヤ供給部20は、溶接ワイヤ2をトーチ部30へ供給する。溶接ワイヤ2は、ワイヤリール10から引き出されてワイヤ供給部20に供給されるまでの間において、その周囲をコンジットにより被覆されることによって保護されていてもよい。溶接ワイヤ2は、トーチ部30に送られる。
【0017】
トーチ部30の先端部では、溶接ワイヤ2が溶接対象箇所へ向かって突出する。溶接ワイヤ2および溶接対象箇所に電流を流すことにより、溶接ワイヤ2と溶接対象箇所との間にアークが発生して、溶接対象箇所が溶接される。
【0018】
ホッパ40は、フラックス4を収容する。フラックス4は、ホース44を通じて、溶接ワイヤ2および溶接対象箇所の周囲に供給される。フラックス4がアークおよび溶融金属を覆うことによって、溶接箇所への大気の侵入が抑制される。
【0019】
ホッパ40は、ワイヤ供給部20または台車部50に設けられた支持部材70により保持されている。支持部材70は、垂直支持バー71と水平支持バー72とを含み、ホッパ40は、水平支持バー72に固定されている。ホッパ40の詳細構造については、後述する。
【0020】
台車部50は、溶接装置1の下方側に位置している。台車部50は、たとえば、図示しないレールに載置される。溶接装置1は、台車部50が駆動することによって、溶接時にレール上を走行する。
【0021】
台車部50は、アーム51を含む。アーム51は、ワイヤリール10などの他の構成を支持している。アーム51は、台車部50上に設けられた回転軸を中心として、台車部50上を旋回することが可能である。アーム51が旋回することによって、ワイヤリール10などの向きを変更することができる。本実施の形態においては、たとえば、溶接ワイヤリールカバー100に取り付けられた取っ手12を把持してワイヤリール10を旋回させることによって、ワイヤリール10などの向きを変更することができる。
【0022】
(ホッパ40の構成)
図2から
図4を参照して、ホッパ40の構成について説明する。
図2は、ホッパ40の構成を示す図、
図3は、ホッパ40の縦断面図、
図4は、
図2中のIV-IV線矢視断面図である。
【0023】
このホッパ40は、蓄積するフラックスの容量を減少させたり増加させたりすることができる容量可変機構を含む。ホッパ40は、台車部50に対して、支持部材70により保持されている。支持部材70は、垂直支持バー71と、この垂直支持バー71に固定された水平支持バー72とを有する。ホッパ40は水平支持バー72に固定されている。
【0024】
ホッパ40は、下部ホッパ41、中間ホッパ42、および、上部ホッパ43とを有する。中間ホッパ42が水平支持バー72に固定されている。なお、ホッパ40として、以下では、円筒形状を採用した場合について説明しているが、円筒形状に限定されるものではなく、平面視した場合に、楕円、多角形等の筒形状であってもよい。
【0025】
下部ホッパ41は、円筒状の第1胴部41a、および、第1胴部41aの下端側において下方にフラックスを溶接対象箇所に吐出するための吐出口41cが設けられる漏斗部41bを有する下部ホッパ41を含む。漏斗部41bは、第1胴部41a側に位置する第1円錐部41b1と、吐出口41c側に位置する第2円錐部41b2とにより、第1胴部41aの内径が徐々に吐出口41c側に向かって窄む形状を有している。
【0026】
中間ホッパ42は、円筒状の第2胴部42aから構成される。第2胴部42aの外径は、第1胴部41aの内径に略等しく設けられ、第1胴部41aは、第2胴部42aに対して上下方向にスライド可能である(
図2中の矢印Y1,Y2方向)。第1胴部41aの外周面上には、120度ピッチでボルト45が設けられ、ボルト45を締め込むことで、第1胴部41aが第2胴部42aに対して位置決め固定される。
【0027】
上部ホッパ43は、円筒状の第3胴部43bおよび上方に向かうにしたがって直径が拡大するテーパ部43aを有する。テーパ部43aを設けることで、ホッパ40の内部にフラックスを導入する作業を容易にする。第2胴部42aの内径は、第3胴部43bの外径に略等しく設けられ、第3胴部43bは、第2胴部42aに対して上下方向にスライド可能である(
図2中の矢印Y1,Y2方向)。第2胴部42aの外周面上には、120度ピッチでボルト45が設けられ、ボルト45を締め込むことで、第3胴部43bが第2胴部42aに対して位置決め固定される。
【0028】
上記構成において、容量可変機構として、第2胴部42aの下側においては、第1胴部41aの上側が第2胴部42aの外側に位置して、下部ホッパ41が中間ホッパ42に対して、上下方向にスライド可能に固定される機構(下側容量可変機構)が採用されている。さらに、第2胴部42aの上側においては、第3胴部43bの下側が第2胴部42aの内側に位置して、上部ホッパ43が中間ホッパ42に対して、上下方向にスライド可能に固定される機構(上側容量可変機構)が採用されている。
【0029】
なお、本実施の形態では、下側容量可変機構および上側容量可変機構の両方をホッパ40に採用した場合を説明しているが、下側容量可変機構および上側容量可変機構のいずれか一方をホッパ40に採用することも可能である。
【0030】
このように、ホッパ40に下側容量可変機構および/または上側容量可変機構を採用することで、ホッパの蓄積容量を変化させることができる構成を備える溶接装置の提供を可能とし、フラックスの継ぎ足しながら溶接を行なうことや、容量の異なるホッパを予め準備しておく必要がなくなる。
【0031】
以上、実施の形態において溶接装置について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0032】
1 溶接装置、2 溶接ワイヤ、4 フラックス、10 ワイヤリール、11 軸部、12 取っ手、20 ワイヤ供給部、30 トーチ部、40 ホッパ、41 下部ホッパ、41a 第1胴部、41b 漏斗部、41b1 第1円錐部、41b2 第2円錐部、41c 吐出口、42 中間ホッパ、42a 第2胴部、43 上部ホッパ、43a テーパ部、43b 第3胴部、44 ホース、45 ボルト、50 台車部、51 アーム、70 支持部材、71 垂直支持バー、72 水平支持バー、100 溶接ワイヤリールカバー。