(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147194
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】等速ジョイント用グリース組成物及びそれを封入した等速ジョイント
(51)【国際特許分類】
C10M 169/02 20060101AFI20241008BHJP
F16D 3/20 20060101ALI20241008BHJP
C10M 115/08 20060101ALN20241008BHJP
C10M 135/18 20060101ALN20241008BHJP
C10M 137/10 20060101ALN20241008BHJP
C10M 159/22 20060101ALN20241008BHJP
C10M 159/24 20060101ALN20241008BHJP
C10M 135/10 20060101ALN20241008BHJP
C10M 129/10 20060101ALN20241008BHJP
C10N 50/10 20060101ALN20241008BHJP
C10N 10/12 20060101ALN20241008BHJP
C10N 30/06 20060101ALN20241008BHJP
C10N 30/08 20060101ALN20241008BHJP
C10N 40/04 20060101ALN20241008BHJP
【FI】
C10M169/02
F16D3/20 Z
C10M115/08
C10M135/18
C10M137/10 A
C10M159/22
C10M159/24
C10M135/10
C10M129/10
C10N50:10
C10N10:12
C10N30:06
C10N30:08
C10N40:04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060053
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000162423
【氏名又は名称】協同油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】角田 純平
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA07A
4H104BB05C
4H104BB08A
4H104BE13B
4H104BG10C
4H104BH07C
4H104DA02A
4H104DA06A
4H104DB06C
4H104DB07C
4H104FA06
4H104LA03
4H104LA04
4H104PA03
4H104QA18
(57)【要約】
【課題】高温環境でも低摩擦特性を示すことにより耐久性に優れる等速ジョイント用グリース組成物を提供すること。
【解決手段】(a)式(1)のジウレア系増ちょう剤、
R1NH-CO-NH-C6H4-p-CH2-C6H4-p-NH-CO-NHR2 (1)
(R1及びR2は独立して、C8~18アルキル基である)、
(b)基油、
(c)25℃で固体であるモリブデンジチオカルバメート、
(d)25℃で液体であるモリブデンジチオカルバメート及び25℃で液体であるモリブデンジチオホスフェートからなる群から選ばれる少なくとも1種、
(e)Caフェネート、
(f)Caスルホネート、及び
(g)有機硫黄リン化合物、
を含有し、
(c):(d)=1:2.6~1:5.2(質量比)であり、
(g)の含有量が、組成物の全質量を基準として、0.05~0.30質量%である、等速ジョイント用グリース組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)式(1)により表されるジウレア系増ちょう剤、
R1NH-CO-NH-C6H4-p-CH2-C6H4-p-NH-CO-NHR2 (1)
(R1及びR2は独立して、炭素原子数8~18のアルキル基である)、
(b)基油、
(c)25℃で固体であるモリブデンジチオカルバメート、
(d)25℃で液体であるモリブデンジチオカルバメート及び25℃で液体であるモリブデンジチオホスフェートからなる群から選ばれる少なくとも1種、
(e)カルシウムフェネート、
(f)カルシウムスルホネート、及び
(g)有機硫黄リン化合物、
を含有し、
(c)と(d)との質量比が、(c):(d)=1:2.6~1:5.2の範囲であり、
(g)の含有量が、組成物の全質量を基準として、0.05~0.30質量%である、等速ジョイント用グリース組成物。
【請求項2】
(d)の含有量が、組成物の全質量を基準として、1.95~3.90質量%である請求項1に記載の等速ジョイント用グリース組成物。
【請求項3】
(e)と(f)との質量比が、(e):(f)=1:1~1:3の範囲である、請求項1に記載の等速ジョイント用グリース組成物。
【請求項4】
(f)の含有量が、組成物の全質量を基準として、2.0~6.0質量%である、請求項1に記載の等速ジョイント用グリース組成物。
【請求項5】
摺動式等速ジョイント用である、請求項1~4のいずれかに記載の等速ジョイント用グリース組成物。
【請求項6】
請求項1~4のいずれかに記載の等速ジョイント用グリース組成物を封入したトリポードタイプの摺動式等速ジョイント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、等速ジョイント用グリース組成物及びそれを封入した等速ジョイントに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車においては、車両の環境対策(CO2削減)を目的とした軽量化かつ居住空間の確保の点からFF車が広く普及し、FF車の動力伝達に不可欠な等速ジョイント(CVJ)が用いられている。
CVJは角度の付いた状態で回転する2本の軸の間で回転を伝達する装置であるため、ジョイント内部において部品同士が複雑なころがりすべり運動を行う。また、プランジング型CVJは、軸方向への摺動機構も併せ持つため、内部部品の摩擦により軸方向へのスライド抵抗を生じ、このスライド抵抗が大きいと振動や騒音の原因となる場合がある。
近年の自動車の騒音規制、燃費向上の要求に伴う車両仕様変更でプランジング型等速ジョイントが高温環境に曝される様になり、高温時耐フレーキング性の低下による耐久性低下を引き起こす場合がある。フレーキング性の低下は高温域における摩擦上昇に起因しており、高温環境下の低摩擦化が対策手法とされている。
これらの問題解決のため、CVJ自体の構造改良もなされてきたが、コスト面の課題が大きく、高温下での耐久性に優れるグリース(高温下で低摩擦を維持するグリース)が要求されるようになった。
CVJの常温での耐フレーキング性に優れたグリースとして、ウレアグリースにジアルキルジチオリン酸亜鉛、硫化ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデン、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、及びヘテロサイクリック硫黄窒素化合物を配合したグリース(特許文献1参照)、又はウレアグリースに、二硫化モリブデン、ジチオカルバミン酸モリブデン、石油スルホン酸のカルシウム塩、硫黄系極圧剤、植物性油脂、及びジアルキルジチオカルバミン酸亜鉛を配合したグリースも提案されている(特許文献2参照)。
また常温での耐久性に加え、振動抑制性能も考慮したグリースとして、ウレアグリースにカルシウムフェネート、モリブデンジチオカルバメート、カルシウムスルホネート、及びチオホスフェートを配合したグリースが提案されている(特許文献3参照)。
このように、これまでのCVJ用グリース組成物でも、常温での耐久性における検討はされてきたが、一方で、高温での耐久性の課題、特に高摩擦係数で発生するフレーキングや焼付きによる耐久性の低下の課題においては必ずしも十分な検討がされてきたとはいえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-297402号公報
【特許文献2】特開2010-90243号公報
【特許文献3】特開2004-323672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明は、高温環境でも低摩擦特性を示すことにより耐久性に優れる等速ジョイント用グリース組成物及びそれを封入した等速ジョイントを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1.(a)式(1)により表されるジウレア系増ちょう剤、
R1NH-CO-NH-C6H4-p-CH2-C6H4-p-NH-CO-NHR2 (1)
(R1及びR2は独立して、炭素原子数8~18のアルキル基である)、
(b)基油、
(c)25℃で固体であるモリブデンジチオカルバメート、
(d)25℃で液体であるモリブデンジチオカルバメート及び25℃で液体であるモリブデンジチオホスフェートからなる群から選ばれる少なくとも1種、
(e)カルシウムフェネート、
(f)カルシウムスルホネート、及び
(g)有機硫黄リン化合物、
を含有し、
(c)と(d)との質量比が、(c):(d)=1:2.6~1:5.2の範囲であり、
(g)の含有量が、組成物の全質量を基準として、0.05~0.30質量%である、等速ジョイント用グリース組成物。
2.(d)の含有量が、組成物の全質量を基準として、1.95~3.90質量%である前記1に記載の等速ジョイント用グリース組成物。
3.(e)と(f)との質量比が、(e):(f)=1:1~1:3の範囲である、前記1に記載の等速ジョイント用グリース組成物。
4.(f)の含有量が、組成物の全質量を基準として、2.0~6.0質量%である、前記1に記載の等速ジョイント用グリース組成物。
5.摺動式等速ジョイント用である、前記1~4のいずれかに記載の等速ジョイント用グリース組成物。
6.前記1~4のいずれかに記載の等速ジョイント用グリース組成物を封入したトリポードタイプの摺動式等速ジョイント。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、高温環境下でも低摩擦特性に優れ、耐久性に優れたグリース組成物を提供することができる。また、本発明によれば高温環境下でも低摩擦特性に優れるグリース組成物を封入してなる、高温耐久性に優れた等速ジョイントが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(a)増ちょう剤
本発明の増ちょう剤は下記式(1)で示されるジウレア系増ちょう剤である。
R1NH-CO-NH-C6H4-p-CH2-C6H4-p-NH-CO-NHR2(1)
式(1)中のR1及びR2は互いに独立して、炭素原子数8~18のアルキル基である。
増ちょう剤はグリース流動性に強く影響しており、CVJ内においては摺動部にグリースが十分に供給される必要があることから、せん断によって早期に軟化しやすい脂肪族ジウレア増ちょう剤であることが好ましく、式(1)中のR1及びR3が、炭素原子数8又は18のアルキル基である脂肪族ジウレア増ちょう剤がより好ましく、一方がオクチル基であり、他方がオクタデシル基である脂肪族ジウレア増ちょう剤がさらに好ましい。
増ちょう剤の含有量は、グリースのちょう度を、等速ジョイント用グリースのちょう度として通常の範囲である310~340に調整できる量であればよく、具体的には、組成物の全質量を基準として、3~10質量%であるのが好ましく、4~9質量%であるのがより好ましく、5~8質量%であるのがさらに好ましい。なお、本明細書において、「ちょう度」は、JIS K 2220.7により測定される60回混和ちょう度を意味する。
【0008】
(b)基油
本発明に使用できる基油は特に限定されず、鉱油又は合成油、あるいは上記基油の混合油を使用することが出来る。鉱物油としては、パラフィン系、ナフテン系があげられる。合成油としては、ポリαオレフィン等の炭化水素系合成油、アルキルジフェニルエーテルに代表されるエーテル系合成油等があげられる。なお、合成油は、動植物などから生まれた生物資源を原料として製造される、所謂バイオマス油でもよい。例えば、植物油を原料とする各種脂肪酸とアルコールとから合成されるバイオマスエステル油や、パーム油、コーン油、大豆油などの植物油を用いたバイオマス炭化水素油を使用することもできる。本発明の基油としては、コストの観点から鉱油を用いることが好ましい。
本発明の基油の100℃における動粘度は、油膜形成の観点から、5~25mm2/sであるのが好ましく、7~20mm2/sであるのがより好ましく、9~15mm2/sであるのがさらに好ましい。
本発明の組成物中の基油の含有量は、組成物の全質量を基準にして、好ましくは50~91質量%、より好ましくは60~90質量%、さらに好ましくは70~88質量%である。このような範囲で基油を含ませることにより、優れた流入性を担保できる。
【0009】
(c)25℃で固体であるモリブデンジチオカルバメート
(d)25℃で液体であるモリブデンジチオカルバメート及び25℃で液体であるモリブデンジチオホスフェートからなる群から選ばれる少なくとも1種
本発明の(c)又は(d)として使用できるモリブデンジチオカルバメートは、有機金属系耐荷重添加剤のうち、金属基がモリブデンであるものの総称であり、一般に極圧剤として広く用いられている。モリブデンジチオカルバメートには、非油溶性(すなわち、25℃で固体)と、油溶性(すなわち、25℃で液体)とが存在する。
モリブデンジチオカルバメートの好ましい例としては、式(2)で示される化合物があげられる。
[R3R4N-CS-S]2-Mo2OmSn (2)
式(2)中、R3及びR4は、互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれが独立して、炭素数1~24、好ましくは3~18の直鎖又は分岐アルキル基を表し、mは0~3、nは4~1、m+n=4である。
本発明の(d)として使用できるモリブデンジチオホスフェートの好ましい例としては、式(3)により示される油溶性のモリブデンジチオホスフェートが挙げられる。
[(R5O)(R6O)PS-S]2-Mo2Om1Sn1 (3)
式(3)中、R5及びR6はそれぞれ独立して、炭素数1~24のアルキル基又は炭素6~30のアリール基であり、m1は0~3、n1は4~1、m1+n1=4である。
成分(c)と成分(d)は、低摩擦特性の観点から、(c)と(d)との質量比が、1:2.6~1:5.2の範囲、好ましくは1:2.8~5.0の範囲、より好ましくは1:3.0~1:4.8の範囲である。
成分(c)の含有量は、低摩擦特性の観点から、組成物の全質量を基準として、0.4~1.5質量%、好ましくは0.5~1.3質量%、より好ましくは0.6~1.1質量%である。
成分(d)の含有量は、組成物の全質量を基準として、1.95~3.90質量%、好ましくは2.10~3.75質量%、より好ましくは2.25~3.60質量%である。この範囲で低摩擦が得られる。
【0010】
(e)カルシウムフェネート
本発明に使用するカルシウムフェネートは、炭酸カルシウムにより過塩基性とされているもの、中性とされているもの、いずれも使用することが出来る。低摩擦の観点から、塩基価が100~300mgKOH/g、好ましくは120~290mgKOH/g、より好ましくは125~280mgKOH/gである。なお、本発明における塩基価は、JIS K 2501に準拠して測定した値である。
(f)カルシウムスルホネート
本発明に使用するカルシウムスルホネートは、炭酸カルシウムにより過塩基性とされているもの、中性とされているもの、いずれも使用することが出来る。低摩擦性の観点からカルシウムスルホネートの塩基価が0.5~50mgKOH/gが好ましく、0.5~35mgKOH/gがより好ましい。
成分(e)及び(f)の含有比率は、低摩擦性の観点から、(e)カルシウムフェネート:(f)カルシウムスルホネート=1:1~1:3が好ましい。またカルシウムスルホネートは清浄分散剤としての効果があり、過剰に含有することで、グリース性状の耐熱性指標である滴点を低下させることがある。耐熱性を確保できる滴点を考慮すると、成分(e)及び(f)の含有比率は、(e)カルシウムフェネート:(f)カルシウムスルホネート=1:1~1:2が、より好ましい。
また低摩擦の観点から、成分(e)の含有量は、組成物の全質量を基準として、0.7~6.0質量%が好ましく、1.0~5.0質量%がより好ましい。
また低摩擦の観点から、成分(f)の含有量は、組成物の全質量を基準として、2.0~6.0質量%が好ましく、耐熱性を確保できる滴点を考慮すると2.0~4.0質量%がより好ましい。
なお、本発明における滴点はJIS K 2220 8.に準拠して測定した値である。
【0011】
(g)有機硫黄リン化合物
本発明における有機硫黄リン化合物として好ましいのは、硫黄分が15~35%質量%であり、リン分が0.5~3.0質量%であって、硫黄主成分として硫化オレフィン、リン主成分としてリン酸エステルアミン塩を含み、金属成分を含まないものである。なお、本明細書において、硫黄分はJIS K 2541に準拠して測定した値であり、リン分はASTM D1091に準拠して測定した値である。
成分(g)は優れた耐摩耗性及び極圧性を示す一方で、過剰に含有すると腐食を誘発し、摩擦係数上昇の要因となる。本発明において、低摩擦の観点から、成分(g)の含有量は、組成物の全質量を基準として、0.05~0.30質量%であるのが好ましい。より好ましくは0.08~0.25質量%であり、さらに好ましくは0.10~0.20質量%である。
【0012】
本発明の組成物は、成分(a)~(g)以外にも、グリースに一般的に使用される添加剤を必要に応じて含むことができる。
このような添加剤としては、固体潤滑剤、酸化防止剤、防錆剤、極圧剤、油性剤が挙げられる。固体潤滑剤としては、二硫化モリブデン、土壌黒鉛、鱗状黒鉛、カーボンブラック、窒化ホウ素、ホウ酸カリウム、炭酸カルシウム等があげられ、有機物としてメラミンシアヌレート、ポリテトラフルオロエチレン、ジチオカルバミン酸の銅塩や鉄塩、ステアリン酸、セバシン酸のカルシウム塩、アルミニウム塩、ナトリウム塩やリチウム塩が挙げられる。酸化防止剤としてはアミン系、フェノール系、キノリン系、又は硫黄系等が挙げられる。防錆剤としては、亜鉛系、カルボン酸系、カルボン酸塩(例えばセバシン酸ナトリウムなどの二塩基酸塩)、又はアミン系等が挙げられる。極圧剤としては、トリフェニルホスフェート、トリアリールフォスフェート、トリクレジルホスフェートなどのリン酸エステル類、ベンゾトリアゾール、ジアルキルメルカプトチアジアゾール等のアゾール化合物、動物および植物から得られる油脂類を分解および変性して得られる脂肪酸、モノ・ジグリセライド、グリセリン等の多価アルコール、アルキド樹脂、硬化油、塩素化油脂、硫化油脂、硫化オレフィン、チオリン酸等が挙げられる。油性剤としては、動物および植物から得られる牛脂、豚脂、魚油、ひまし油、パーム油、大豆油、菜種油などの油脂、トリメチロールプロパンオレイン酸エステル、ペンタエリスリトールステアリン酸エステル、セバシン酸ジオクチル、アジピン酸ジオクチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチルなどのエステル、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコールなどの高級アルコール等があげられる。
これら任意の添加剤の含有量は、組成物の全質量を基準として、例えば、0.1~7.0質量%、好ましくは0.3~5.0質量%、より好ましくは0.5~4.0質量%である。
【0013】
また本発明は等速ジョイント用グリース組成物として使用した場合に、その性能を最も効果的に発揮する事は言うまでもないが、摺動式等速ジョイント(すなわち、プランジング型等速ジョイント)に使用した場合により効果的に性能を発揮し、摺動式等速ジョイントにおいてトリポードタイプの摺動式等速ジョイントに使用した場合には更に効果的に性能を発揮する。
【実施例0014】
下記の成分を用いて、実施例及び比較例のグリース組成物を調製した。具体的には、基油中で、4’,4-ジフェニルメタンジイソシアネート1モルと所定のアミン2モルとを反応させ、昇温、冷却した後、3本ロールミルで混練し、ベースグリースを得た。そこに、添加剤を、表1又は表2に示す割合(表中の数字は、組成物の全質量を基準とした質量%である)で配合し、表1又は表2に示す割合の増ちょう剤量になるように更に基油を添加し、3本ロールミルで分散することにより、実施例及び比較例のグリース組成物を得た。なお、ちょう度はJIS K2220 7.に従って測定し、325に統一した。
<基油>
・鉱油(100℃における動粘度=11.00mm2/s)
<増ちょう剤>
・脂肪族ジウレアは、アミンとして、オクチルアミン:オクタデシルアミン=5:5を用いて調製した。
<添加剤>
・(c)MoDTC(固体):固体モリブデンジチオカルバメート
(アデカ サクラルーブ 600、ADEKA製
・(d)MoDTC(液体):液体モリブデンジチオカルバメート
(MOLYVAN 822、Vanderbilt製)
・(d)MoDTP(液体):モリブデンジチオホスフェート
(アデカ サクラルーブ300、ADEKA製)
・(e)Caフェネート:カルシウムフェネート
(OLOA218A、シェブロンジャパン製、塩基価:150mgKOH/g)
・(f)Caスルホネート:カルシウムスルホネート
(ALOX2292B、ルーブリゾール製、塩基価:3.0mgKOH/g)
・(g)SP:有機硫黄リン化合物
(LUBRIZOL810、ルーブリゾール製、S量:31.5%、P量:1.7%、硫黄主成分:硫化オレフィン、リン主成分:リン酸エステルアミン塩)
・PS:ホスホロチオエート
(IRGALUBE211、BASF製、S量:4.4%、P量:4.3%)
【0015】
実施例及び比較例の各グリース組成物を下記の方法で試験した。実施例の試験結果を表1、比較例の試験結果を表2に示す。なお、比較例7及び比較例8は、特開2004-323672号公報の実施例1及び4に相当する。
<SRV試験 高温摩擦特性の評価>
試験時間890~900秒の10秒間の摩擦係数の算術平均を求め、比較評価した。
・試験条件
面圧:2.2GPa
ストローク:3.3mm
周波数:4.3Hz
試験時間:900秒
試験温度:100℃
ボール:17.5mm
プレート:表面粗さRz=1.5μm
[評価]
○(合格):摩擦係数の算術平均<0.040
×(不合格):摩擦係数の算術平均≧0.040
なお、試験時間中、摩擦係数>0.20になった時点で焼付きと判断し、不合格とした。
<滴点測定 耐熱性の評価>
・試験方法:JIS K 2220 8.に準拠
【0016】