(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147196
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】包装容器、内容物入り包装容器、水分の遮蔽方法、及び包装容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 43/16 20060101AFI20241008BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20241008BHJP
B29C 44/36 20060101ALI20241008BHJP
B29C 45/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B65D43/16
B29C44/00 D
B29C44/36
B29C45/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060055
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(72)【発明者】
【氏名】前川 政貴
(72)【発明者】
【氏名】三宅 翔平
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 拓実
【テーマコード(参考)】
3E084
4F206
4F214
【Fターム(参考)】
3E084AA05
3E084AA14
3E084AA26
3E084AB07
3E084BA01
3E084CA03
3E084CC05
3E084DA03
3E084DB14
3E084DC05
3E084FA01
3E084FD01
3E084GA06
3E084GB06
3E084KB10
3E084LA18
4F206AA11
4F206AB02
4F206AC05
4F206AG20
4F206AH56
4F206AH58
4F206AP11
4F206AP14
4F206AR12
4F206AR15
4F206JA07
4F206JL02
4F214AA11
4F214AB02
4F214AC05
4F214AG20
4F214AH58
4F214AR02
4F214AR17
4F214UA08
4F214UB01
4F214UC02
4F214UC03
4F214UC04
4F214UC12
4F214UF04
4F214UL11
4F214UL21
(57)【要約】
【課題】環境負荷の増大を抑制しつつ水蒸気バリア性を高めることができる包装容器、内容物入り包装容器、水分の遮蔽方法、及び包装容器の製造方法を提供する。
【解決手段】樹脂製の包装容器1は、底部材2と、底部材2に嵌合されて底部材2との間に収容空間Sを形成する蓋部材3と、を備える。そして、底部材2及び蓋部材3の少なくとも一方は、10μm以上の内径を有する独立気泡の集合密度が10個/mm
2以上となる気泡領域Rを有する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一部材と、
前記第一部材に嵌合されて前記第一部材との間に収容空間を形成する第二部材と、を備え、
前記第一部材及び前記第二部材の少なくとも一方は、10μm以上の内径を有する独立気泡の集合密度が10個/mm2以上となる気泡領域を有する、
樹脂製の包装容器。
【請求項2】
前記第一部材及び前記第二部材の少なくとも一方は、0.7mm以下の厚さを有する平板状の薄壁部を備え、
前記薄壁部は、前記気泡領域を有する、
請求項1に記載の包装容器。
【請求項3】
前記独立気泡は、超臨界状態の窒素に由来するものである、
請求項1に記載の包装容器。
【請求項4】
前記第一部材は、底板部と、前記底板部の周縁から立ち上がり前記第二部材に嵌合される側板部と、前記側板部に形成された開口部と、前記開口部を開閉するヒンジキャップと、を有する、
請求項1に記載の包装容器。
【請求項5】
前記側板部は、前記気泡領域を有し、前記開口部により前記底板部の周縁に沿う方向に非連続となっている、
請求項4に記載の包装容器。
【請求項6】
水蒸気透過度が1.60g/mm2/day以下である、
請求項1に記載の包装容器。
【請求項7】
請求項1~6の何れか一項に記載の包装容器と、
前記包装容器に収容された内容物と、を備える、
内容物入り包装容器。
【請求項8】
請求項1~6の何れか一項に記載の包装容器に内容物を収容する工程と、
前記包装容器内に前記内容物を保持する工程と、を備える、
水分の遮蔽方法。
【請求項9】
請求項1~6の何れか一項に記載の包装容器を製造する方法であって、
(A)樹脂材料と超臨界流体とを混合して溶融樹脂組成物を調製する工程と、
(B)前記溶融樹脂組成物を金型のキャビティ内に射出する工程と、
(C)前記(B)工程後、前記超臨界流体の少なくとも一部を、内径が10μm以上で集合密度が10個/mm2以上の独立気泡となるように発泡させる工程と、を備える、
包装容器の製造方法。
【請求項10】
前記超臨界流体は、超臨界状態の窒素である、
請求項9に記載の包装容器の製造方法。
【請求項11】
前記溶融樹脂組成物における前記樹脂材料の質量を100質量部としたとき、前記溶融樹脂組成物における前記超臨界流体である前記窒素の質量が0.5~1.0質量部である、
請求項10に記載の包装容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装容器、内容物入り包装容器、水分の遮蔽方法、及び包装容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、清涼用粒状物等を入れて小出し使用するための樹脂製の包装容器が知られている(例えば特許文献1,2)。これらはトレイ状の底部材と蓋部材とが互いに嵌合してなるカード型のケースであり、底部材と一体成形されたヒンジキャップを開閉できる構造となっている。これらは部品点数が少なく低コストであり、携帯性に優れ、かつ、耐圧強度が高いという特徴がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3657351号公報
【特許文献2】特許第3953581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、清涼用粒状物等のような食品は、吸湿を抑制することで劣化の速度が遅くなる。このため、包装容器の水蒸気バリア性を高めることで、賞味期限の延長を図ることができる。包装容器の水蒸気バリア性を高める手段としては、包装容器の肉厚を厚くする方法、及びバリアフィルムを包装容器にラミネートする方法が考えられる。
【0005】
しかしながら、包装容器の肉厚を厚くすると、樹脂の使用量が増大するため、環境負荷が大きくなるという問題が生じる。また、バリアフィルムを包装容器にラミネートすると、包装容器に使用される材料の種類が増えてリサイクル性が低下するため、環境負荷が大きくなるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、環境負荷の増大を抑制しつつ水蒸気バリア性を高めることができる包装容器、内容物入り包装容器、水分の遮蔽方法、及び包装容器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、少なくとも下記[1]~[12]を提供する。
【0008】
[1] 第一部材と、前記第一部材に嵌合されて前記第一部材との間に収容空間を形成する第二部材と、を備え、前記第一部材及び前記第二部材の少なくとも一方は、10μm以上の内径を有する独立気泡の集合密度が10個/mm2以上となる気泡領域を有する、樹脂製の包装容器。
【0009】
この包装容器では、第一部材と第二部材との間に形成される収容空間に内容物を収容することができる。そして、第一部材及び第二部材の少なくとも一方が、10μm以上の内径を有する独立気泡の集合密度が10個/mm2以上となる気泡領域を有する。つまり、気泡領域には、10μm以上の内径を有する独立気泡が、10個/mm2以上の集合密度で存在している。このため、気泡領域では、樹脂と独立気泡とが海島構造となって、樹脂を透過する水蒸気の透過経路が複雑になる迷路効果が生じると考えられる。また、気泡領域では、樹脂と独立気泡との間で水蒸気の透過係数が異なるため、樹脂と独立気泡との境界が水蒸気の透過抵抗となることも考えられる。このような迷路効果及び透過抵抗により水蒸気が透過し難くなると推察されるため、包装容器の肉厚を厚くしたり、バリアフィルムを包装容器にラミネートしたりしなくても、水蒸気バリア性を高めることができる。このため、環境負荷の増大を抑制しつつ水蒸気バリア性を高めることができる。
【0010】
[2] 前記第一部材及び前記第二部材の少なくとも一方は、0.7mm以下の厚さを有する平板状の薄壁部を備え、前記薄壁部は、前記気泡領域を有する、[1]に記載の包装容器。この包装容器では、第一部材及び第二部材の少なくとも一方が0.7mm以下の厚さを有する平板状の薄壁部を備えるため、包装容器に使用する樹脂量を低減し、環境負荷の増大を更に抑制することができる。しかも、薄壁部が気泡領域を有するため、薄壁部においても水蒸気バリア性を高めることができる。
【0011】
[3] 前記独立気泡は、超臨界状態の窒素に由来するものである、[1]又は[2]に記載の包装容器。この包装容器では、独立気泡が超臨界状態の窒素に由来するものであるため、包装容器の製造時に発泡しやすくなるとともに、当該発砲により形成される独立気泡の内径が10μm以上70μm以下程度になる。このような微細な独立気泡により樹脂が複雑かつ微細な立体構造となるため、包装容器の肉厚が薄くても包装容器の剛性及び形状安定性が高まる。これにより、包装容器の撓みに伴う水蒸気バリア性の低下を抑制することができる。
【0012】
[4] 前記第一部材は、底板部と、前記底板部の周縁から立ち上がり前記第二部材に嵌合される側板部と、前記側板部に形成された開口部と、前記開口部を開閉するヒンジキャップと、を有する、[1]~[3]の何れか一つに記載の包装容器。この包装容器では、第一部材が、底板部と、底板部の周縁から立ち上がり第二部材に嵌合される側板部と、側板部に形成された開口部と、開口部を開閉するヒンジキャップと、を有するため、ヒンジキャップを閉じることで内容物を気密に収容することができるとともに、ヒンジキャップを開くことで収容された内容物を取り出すことができる。
【0013】
[5] 前記側板部は、前記気泡領域を有し、前記開口部により前記底板部の周縁に沿う方向に非連続となっている、[4]に記載の包装容器。この包装容器では、側板部が開口部により底板部の周縁に沿う方向に非連続となっているため、側板部が開口部の近傍で撓みやすい。側板部が開口部の近傍で撓むと、ヒンジキャップと側板部との間に隙間が生じ、当該隙間から水蒸気が入ってくる可能性がある。しかしながら、側板部が気泡領域を有することで、側板部においては、独立気泡により樹脂が複雑な立体構造となるため、側板部の剛性及び形状安定性が高まる。特に、独立気泡が超臨界状態の窒素に由来するものである場合は、側板部の剛性及び形状安定性が更に高まる。このため、側板部の撓みに伴う水蒸気バリア性の低下を抑制することができる。
【0014】
[6] 水蒸気透過度が1.60g/mm2/day以下である、[1]~[5]の何れか一つに記載の包装容器。この包装容器では、水蒸気透過度が1.60g/mm2/day以下であるため、内容物の吸湿を抑制することができる。
【0015】
[7] [1]~[6]の何れか一つに記載の包装容器と、前記包装容器に収容された内容物と、を備える、内容物入り包装容器。この内容物入り包装容器では、上述した包装容器を備えるため、環境負荷の増大を抑制しつつ水蒸気バリア性を高めることができる。
【0016】
[8] [1]~[6]の何れか一つに記載の包装容器に内容物を収容する工程と、前記包装容器内に前記内容物を保持する工程と、を備える、水分の遮蔽方法。この水分の遮蔽方法では、上述した包装容器に内容物を収容して保持するため、環境負荷の増大を抑制しつつ水蒸気バリア性を高めることができる。
【0017】
[9] [1]~[6]の何れか一つに記載の包装容器を製造する方法であって、(A)樹脂材料と超臨界流体とを混合して溶融樹脂組成物を調製する工程と、(B)前記溶融樹脂組成物を金型のキャビティ内に射出する工程と、(C)前記(B)工程後、前記超臨界流体の少なくとも一部を、内径が10μm以上で集合密度が10個/mm2以上の独立気泡となるように発泡させる工程と、を備える、包装容器の製造方法。
【0018】
この包装容器の製造方法では、樹脂材料と超臨界流体とが混合された溶融樹脂組成物を金型のキャビティ内に射出し、超臨界流体の少なくとも一部を、内径が10μm以上で集合密度が10個/mm2以上の独立気泡となるように発泡させるため、環境負荷の増大を抑制しつつ水蒸気バリア性を高めることができる包装容器を製造することができる。
【0019】
[10] 前記超臨界流体は、超臨界状態の窒素である、[9]に記載の包装容器の製造方法。この包装容器の製造方法では、超臨界流体が超臨界状態の窒素であるため、肉厚が薄くても包装容器の剛性及び形状安定性の高い包装容器を製造することができる。
【0020】
[11] 前記溶融樹脂組成物における前記樹脂材料の質量を100質量部としたとき、前記溶融樹脂組成物における前記超臨界流体である前記窒素の質量が0.5~1.0質量部である、[10]に記載の包装容器の製造方法この量は、超臨界流体の少なくとも一部を、内径が10μm以上で集合密度が10個/mm2以上の独立気泡となるように発泡させるのに好適である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、環境負荷の増大を抑制しつつ水蒸気バリア性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係る包装容器の斜視図である。
【
図3】(A)は、
図2のIIIA-IIIA線で切った端面図である。(B)は、
図2のIIIB-IIIB線で切った断面図である。
【
図5】(A)は、
図4のVA-VA線で切った端面図である。(B)は、
図4のVB-VB線で切った断面図である。
【
図8】底部材の水蒸気透過度評価の測定位置を示す、
図2に対応する底部材の平面図である。
【
図9】包装容器全体の防湿性評価の結果を示すグラフである。
【
図10】底部材の水蒸気透過度の測定値を示すグラフである。
【
図11】6時間経過時の、水蒸気透過度の測定値を示すグラフである。
【
図12】12時間経過時の、水蒸気透過度の測定値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、本明細書中、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本実施形態の包装容器は、清涼用粒状物等の内容物を入れて小出し使用するためのカード型のヒンジキャップ付きケースである。
【0024】
<包装容器>
図1~
図6に示されているとおり、本実施形態の包装容器1は、樹脂製の容器であって、第一部材であるトレイ状の底部材2と、第二部材であるトレイ状の蓋部材3とが、互いに嵌合してなるものである。包装容器1では、底部材2と蓋部材3との間に、内容物を収容するための収容空間Sが形成されている。包装容器1は平面視で略矩形(ここでは角丸長方形)をなしており、その片側の長辺部分に開口部5を有している。なお、包装容器1の外形は、略多角形状、略四角形状、略円形状、略楕円状、その他の不定形状であってもよい。不定形状としては、例えば、中央部が湾曲状又は屈曲状にくびれた形状(ダルマ形、雪ダルマ形、ひょうたん形等ともいう)等がある。底部材2には、薄肉で折り曲げ可能なヒンジ21を介してヒンジキャップ22が一体成形されており、これにより開口部5を閉じることができる。なお、開口部5を閉じるキャップは、ヒンジの付いていないキャップであってもよい。本明細書において、底部材2と蓋部材3とが互いに嵌合している方向を「厚さ方向」と呼び、これに垂直な任意の方向を「幅方向」と呼ぶ。
【0025】
包装容器1の寸法は任意である。寸法の例として、以下の二通りが挙げられる。
【0026】
寸法Aタイプ:角丸長方形の長辺方向の長さは、55mm以上100mm以下であってもよく、60mm以上90mm以下であってもよく、70mm以上85mm以下であってもよい。角丸長方形の短辺方向の長さは、30mm以上70mm以下であってもよく、40mm以上60mm以下であってもよく、45mm以上55mm以下であってもよい。包装容器1の厚さ方向の厚さは、5mm以上9mm以下であってもよく、6mm以上8mm以下であってもよい。
【0027】
寸法Bタイプ:角丸長方形の長辺方向の長さは、60mm以上120mm以下であってもよく、70mm以上110mm以下であってもよく、80mm以上100mm以下であってもよい。角丸長方形の短辺方向の長さは、30mm以上70mm以下であってもよく、40mm以上60mm以下であってもよく、50mm以上55mm以下であってもよい。包装容器1の厚さ方向の厚さは、9mm以上13mm以下であってもよく、10mm以上12mm以下であってもよい。
【0028】
また、上記の寸法Aタイプ及び寸法Bタイプとは別に、包装容器1の幅方向の長さは、30mm以上150mm以下であってもよく、50mm以上120mm以下であってもよい。包装容器1の厚さ方向の厚さは、5mm以上90mm以下であってもよく、5mm以上40mm以下であってもよく、5mm以上20mm以下であってもよい。
【0029】
底部材2及び蓋部材3もそれぞれ略矩形(角丸長方形)をなしているが、開口部5を形成する部分は、当該矩形の内側へ凹んだ凹部となっている。底部材2及び蓋部材3は共に、幅方向に広がる底板部23,33と、底板部23,33の周縁から厚さ方向に立ち上がって延びる側板部24,34とを有している。底板部23,33及び側板部24,34は、0.7mm以下の厚さを有する平板状の薄壁部である。側板部24,34は、包装容器1の開口部5となる部分を除いて、底板部23,33の周縁に沿って連続している。つまり、側板部24,34は、開口部5により切り欠かれており、開口部5により底板部23,33の周縁に沿う方向に非連続となっている。
【0030】
底部材2の底板部23はその内面において、四つの角丸部それぞれに近い四箇所と、開口部5がある側の長辺に沿った部分であって当該長辺の中央よりも開口部5側に寄った箇所との合計五箇所に円筒形状のボス25(25a,25b,25c,25d,25e)が形成されている。ボス25は底板部23から垂直に突出しており、いずれも側板部24から幅方向に離れた位置に形成されている。
【0031】
例えばボス25dは、
図3(B)に示されているとおり、厚さ方向に突設された中空の円筒であり、隔壁(円筒を形成している壁)で仕切られることでその中空部分がボス穴となっている。ボス穴の深さはボス25dの高さに一致している。この構造はいずれのボス25にも共通している。
【0032】
底部材2の底板部23はその内面において、中央部に支柱27が形成されている。支柱27は底板部23から垂直に突出している。支柱27は、底部材2と蓋部材3との嵌合には寄与しない。その頂部は蓋部材3の底板部33に接触していていてもよく、接触していなくてもよい。包装容器1の厚さ方向に荷重が掛ったときに、支柱27の頂部が蓋部材3の底板部33に当接して荷重に抵抗することができる。
【0033】
底板部23の角丸部のうち、開口部5に最も近い角丸部の近くには、内容物を開口部5へ案内する案内リブ28が設けられている。案内リブ28は、底板部23から垂直に突出する板状の壁であり、ボス25aと一体となっている。案内リブ28は、ボス25aの円筒形状をその軸線方向から視たときに円の接線の一部を構成するようにしてボス25aから直線的に延び、包装容器1の短辺をなす側板部24に接しない程度の位置にまで延在している。案内リブ28と側板部24との離間距離は、ボス25と側板部24との離間距離と同様であってよい。この一体化されたボス25aと案内リブ28との複合体において、ボス25aは底部材2と蓋部材3との嵌合に寄与し、案内リブ28は底部材2と蓋部材3との嵌合に寄与しない。
【0034】
他方、蓋部材3の底板部33はその内面において、底部材2の底板部23に形成されているボス25(25a,25b,25c,25d,25e)のそれぞれに対応する位置にピン35(35a,35b,35c,35d,35e)が形成されている。
【0035】
例えばピン35dは、
図5(B)に示されているとおり、厚さ方向に突設された中空の円筒であり、隔壁(円筒を形成している壁)で仕切られることでその全体として棒状となっている。円筒の外径はボス25dの内径と略同一で、ボス穴に嵌合するようになっている。この構造はいずれのピン35にも共通している。
【0036】
蓋部材3の底板部33はその内面において、側板部34に沿った位置にガイド39が形成されている。ガイド39は、開口部5を有する側の長辺に沿って二箇所、他の長辺に沿って三箇所、短辺のうち開口部5に近い側の短辺に一箇所、他の短辺に二箇所の合計八箇所に形成されている。各ガイド39は底板部23から垂直方向へ盛り上がって形成されており、いずれも側板部34から僅かに離れた位置に存在する。包装容器1において、底部材2の段上げ部24aに対して内側近傍に位置して、嵌合状態が過度にずれることを防止する(
図6参照)。
【0037】
底部材2は、その底板部23において、肉厚が薄くされた薄肉凹部26を有している。薄肉凹部26は、長辺方向に延びる平面視長方形の形状で三本並んで形成されている。蓋部材3も、その底板部33において、同様にして形成されている薄肉凹部36を有している。これらの薄肉凹部26,36は、後述する射出成形において反りの発生を抑制するための肉盗み部にあたるものである。
【0038】
底板部23が有する薄肉凹部26の合計面積、及び、底板部33が有する薄肉凹部36の合計面積は、底部材2及び蓋部材3のそれぞれの内面のうち幅方向に広がっている底板部23,33の内面の面積(薄肉凹部の部分と薄肉凹部ではない部分との合計面積)を100%として、10%~80%であってもよく、15%~70%であってもよく、20%~60%であってもよい。
【0039】
図3に示されているとおり、底部材2の側板部24はその端部において段がついており、内周面に沿って段上げ部24aと段下げ部24bとに分かれている。なお、段は、包装容器1の密閉性を向上させる観点から、開口部5を除いて外周全体に設けられていることが好ましい。段上げ部24aと段下げ部24bは、少なくとも一方が、底部材2と蓋部材3とが互いに嵌合する際に蓋部材3の側板部34に当接して、底部材2と蓋部材3とを密閉する役割を果たす。ここで段上げ部24aの先端は、
図6に示されているとおり、蓋部材3の側板部34とガイド39の間に位置することになる。
【0040】
包装容器1は、ボス25とピン35とが嵌合することによって底部材2と蓋部材3とが合わせられて形状が固定されている。
図6に示されているとおり、底部材2の側板部24と蓋部材3の側板部34とが包装容器1の側面を構成している。ここで、底部材2の底板部23の内面と蓋部材3の底板部33の内面との距離Lは、充填する内容物の厚さよりも大きい必要がある。例えば、上記「寸法Aタイプ」では、距離Lは、5.0mm~6.0mmであってもよく、5.2mm~5.8mmであってもよい。上記「寸法Bタイプ」では、7.0mm~9.0mmであってもよく、7.5mm~8.5mmであってもよい。
【0041】
各部の高さについて説明する。ボス25及びピン35の高さは、距離Lの30%~100%であってもよく、40%~90%であってもよく、50%~80%であってもよい。ただし、ボス25及びピン35は互いに嵌合する必要があるので、これらの高さの合計は距離Lよりも大きい必要がある。
【0042】
ガイド39の高さは、距離Lの5%~40%であってもよく、10%~35%であってもよく、20%~30%であってもよい。ガイド39の高さは、1.0mm~2.0mmであってもよく、1.3mm~1.7mmであってもよい。
【0043】
各部の厚さについて説明する。底板部23,33のうち、薄肉凹部26,36ではない部分(平面部)の厚さT1は0.70mm以下である。この厚さT1は0.65mm以下であってもよく、0.60mm以下であってもよく、0.55mm以下であってもよく、0.50mm以下であってもよく、0.45mm以下であってもよく、0.40mm以下であってもよく、0.35mm以下であってもよい。厚さT1の具体的な範囲としては、0.50mm~0.70mmであってもよく、0.55mm~0.65mmであってもよく、0.58mm~0.63mmであってもよい。薄肉凹部26,36における厚さT2は、0.50mm以下であってもよく、0.45mm以下であってもよく、0.40mm以下であってもよく、0.35mm以下であってもよい。厚さT2の具体的な範囲としては、0.35mm~0.55mmであってもよく、0.40mm~0.53mmであってもよく、0.44mm~0.52mmであってもよい。また、厚さの割合としては、薄肉凹部26,36における厚さT2は、薄肉凹部26,36ではない部分の厚さT1の80%以下であり、75%以下であってもよく、70%以下であってもよい。T1及びT2がこれらの数値範囲を満たす値であることで、キャビティの流動末端にまで樹脂材料が至らない現象(以下、「ショートショット」という。)の発生が抑制されやすい。
【0044】
薄肉凹部26,36における厚さT2は、薄肉凹部26,36ではない部分の厚さT1の40%以上であってもよく、50%以上であってもよく、60%以上であってもよい。あるいは、薄肉凹部26,36における厚さT2は、薄肉凹部26,36ではない部分の厚さT1の70%~80%であってもよく、71%~79%であってもよく、72%~78%であってもよい。
【0045】
側板部24,34の厚さT
4(
図3(A))は、段上げ部24aが形成されている部分を除き、底板部23,33の薄肉凹部26,36ではない部分の厚さT
1と同一であってよい。あるいは、側板部24,34の厚さT
4は、段上げ部24aが形成されることを考慮して、底板部23,33の厚さT
1の110%~180%であってもよく、130%~150%であってもよい。あるいは、側板部24,34の厚さT
4は、段上げ部24aが形成されることを考慮して、底板部23,33の厚さT
1の250%~350%であってもよく、270%~300%であってもよい。厚さT
4の具体的な範囲としては、1.50mm~2.00mmであってもよく、1.60mm~1.90mmであってもよく、1.65mm~1.80mmであってもよい。
【0046】
ボス25dにおいて、ボス穴の内外を仕切っている隔壁の厚さT3は、0.60mm~1.00mmであってもよく、0.60mm~0.90mmであってもよく、0.80mm~0.90mmであってもよく、0.60mm~0.80mmであってもよい。また、当該隔壁の厚さT3は、底板部23のうち薄肉凹部26ではない部分の厚さT1の90%~150%であってもよく、100%~140%であってもよく、110%~130%であってもよい。なお、この値はボス25d以外のボス25においても同様である。
【0047】
案内リブ28の厚さは、ボス25dの隔壁の厚さT3と同様である。あるいは、案内リブ28の厚さは、ボス25dの隔壁の厚さT3と異なっていてもよい。いずれにしても、案内リブ28の厚さは蓋部材3と底部材2の嵌合時の障害にならないことが好ましい。
【0048】
底部材2及び蓋部材3を構成する樹脂としては、熱可塑性樹脂が好ましく、特に、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂が好ましい。なお、底部材2及び蓋部材3を構成する樹脂としては、ポリプロピレン樹脂又はポリエチレン樹脂と、ポリプロピレン樹脂及びポリエチレン樹脂以外の樹脂とが含まれていてもよい。
【0049】
包装容器1を射出成形により形成する場合、熱可塑性樹脂のメルトフローレートは、好ましくは15g/10分以上であり、より好ましくは20~40g/10分であり、更に好ましくは25~36g/10分である。この値が15g/10分以上であることで、射出成形においてショートショットの発生を抑制しやすい傾向にあり、他方、40g/10分以下であることで、落下耐性に優れる成形物を製造できる傾向にある。このメルトフローレートは50g/10分以下であってもよい。なお、ここでいうメルトフローレート(MFR)は、JIS K7210-1:2014に記載の方法に準拠し、温度230℃及び荷重2.16kgの条件で測定された値を意味する。
【0050】
蓋部材3と底部材2とが互いに嵌合することで、包装容器1が構成される。嵌合する際は、
図3(B)及び
図5(B)で説明すれば、ピン35c,35dの外周面とボス25c,25dの内周面とが接触して摩擦を生じて嵌合する。これと併せて、側板部24の段上げ部24aが側板部34の内側へ入り込んで底部材2と蓋部材3とが閉じられる。
【0051】
図7に示されているとおり、底部材2及び蓋部材3の少なくとも一方は、気泡領域Rを有している。本実施形態では、一例として、底部材2及び蓋部材3の両方が気泡領域Rを有しており、底部材2の底板部23、側板部24、及びボス25の全て、及び蓋部材3の底板部33、側板部34、及びピン35の全てが気泡領域Rを有している。気泡領域Rは、10μm以上の内径を有する独立気泡Bの集合密度が10個/mm
2以上となる領域である。つまり、気泡領域Rは、10μm以上の内径を有する独立気泡Bが、10個/mm
2以上の集合密度で存在している領域である。なお、10μm以上の内径を有する独立気泡Bの集合密度が10個/mm
2以上とならない領域は、本実施形態の気泡領域Rではない。また、気泡領域Rには、10μm未満の内径を有する微小気泡が存在していてもよい。
【0052】
「独立気泡」とは、成形品中に存在し、気体が閉じ込められた空間を意味する。独立気泡Bの一つ一つは、互いに独立した空間として存在している。独立気泡Bは、例えば、後述する製造方法に由来する気泡であり、具体的には、超臨界流体が発泡してなる気泡である。超臨界流体としては、例えば、超臨界状態の窒素(N2)、超臨界状態の二酸化炭素(CO2)等が挙げられる。
【0053】
「内径」とは、独立気泡Bを光学的に観察したときの外接円の直径を意味し、光学顕微鏡によって測定することができる。
【0054】
「独立気泡の集合密度」とは、単位面積当たりの独立気泡Bの個数を意味する。独立気泡Bの個数の計数では、0.2mm四方を光学顕微鏡(KH7000,HiROX社製)による観察対象とし、成形品の断面上に独立気泡Bの断面が位置している独立気泡Bの個数を計数してもよいし、樹脂が透明である場合であれば断面観察によって観察できる深さまでの独立気泡Bの個数を計数してもよい。
【0055】
独立気泡Bを構成している気体は、後述する製造方法で用いられた窒素又は二酸化炭素であることが好ましい。底部材2及び蓋部材3が独立気泡Bを含んでいると、製造後の樹脂の硬化収縮が抑えられ、かつ、反りの発生も抑えられる。
【0056】
底部材2及び蓋部材3は、気泡領域Rと、気泡領域Rを挟むように包装容器1の内側の表面1a及び包装容器1の外側の表面1bに位置する表層L1及び表層L2と、を備えてもよい。表面1aは、包装容器1の収容空間S側の表面であり、表面1bは、包装容器1の収容空間Sとは反対側の表面である。気泡領域Rは、包装容器1の表面1a及び表面1bに露出しない層である。表層L1及び表層L2は、気泡領域Rを有しない層であり、包装容器1の表面1a及び表面1bに露出する層である。表層L1は、包装容器1の表面1aを形成する層であり、表層L2は、包装容器1の表面1bを形成する層である。気泡領域Rと表層L1及び表層L2とは、一体的に形成されており、その間に界面等の物理的な境界は形成されていない。後述するように、気泡領域Rでは、独立気泡Bによる迷路効果及び透過抵抗により水蒸気が透過し難くなると推察されるため、当該推察に鑑みれば、気泡領域Rにはできるだけ多くの独立気泡Bが存在することが好ましい。しかしながら、気泡領域Rが包装容器1の表面1a及び表面1bに位置していると包装容器1の外観が悪くなりやすい。このため、気泡領域Rを挟むように表層L1及び表層L2があることで、包装容器1の外観が悪化することを抑制することができる。
【0057】
気泡領域Rにおける独立気泡Bの内径は、包装容器1の肉厚未満であり、例えば、0.7mm未満である。表層L1及び表層L2が設けられている場合には、独立気泡Bの内径は、表層L1と表層L2とに挟まれた気泡領域Rの厚み未満である。気泡領域Rにおける独立気泡Bの内径は、例えば、10μm以上1000μm以下であってもよく、15μm以上800μm以下であってもよく、15μm以上500μm以下であってもよく、15μm以上200μm以下であってもよい。独立気泡Bが、超臨界状態の窒素に由来するものである場合、気泡領域Rにおける独立気泡Bの内径は、例えば、10μm以上150μm以下、又は10μm以上100μm以下、又は10μm以上50μm以下である。独立気泡Bが、超臨界状態の二酸化炭素に由来するものである場合、気泡領域Rにおける独立気泡Bの内径は、例えば、40μm以上1000μm以下、又は50μm以上500μm以下、又は50μm以上180μm以下である。
【0058】
気泡領域Rにおける10μm以上の内径を有する独立気泡Bの集合密度は、例えば、10個/mm2以上800個/mm2以下であってもよく、10個/mm2以上500個/mm2以下であってもよく、20個/mm2以上500個/mm2以下であってもよい。
【0059】
包装容器1の水蒸気透過度は、例えば、1.60g/mm2/day以下、1.55g/mm2/day以下、又は1.40g/mm2/dayである。
【0060】
「水蒸気透過度」とは、水蒸気透過率測定装置を用いて測定される、測定結果の変化が一定程度以下になった際の水蒸気透過度のことである。水蒸気透過度の測定は、測定開始時点から1.5時間間隔で行い、前の測定点での測定値からの「変化率」が±10%以内に収まった測定点が3点以上続いたとき、その最初の3点の平均値を水蒸気透過度とする。
【0061】
「変化率」は、「[(直前の測定時の測定結果)-(今回の測定時の測定結果)]/(直前の測定時の測定結果)」で表される。
【0062】
元々樹脂内部に気体(水蒸気)が取り込まれているため、測定時にこの気体(水蒸気)がキャリアガスに置換されきるまでに、ある程度の時間を要する。つまり、元々樹脂内部に取り込まれていた気体(水蒸気)の影響により、測定開始からの時間経過に応じて水蒸気透過度の値が変化する。そこで、元々樹脂内部に取り込まれていた気体(水蒸気)の影響を除外するために、水蒸気透過度の測定では、特定時点での測定結果ではなく、変化が一定程度以下になった際の測定結果(複数時点の測定結果の平均値)を水蒸気透過度する。
【0063】
包装容器1の水蒸気透過度は、ヒンジキャップ22を閉めた状態で測定される。包装容器1の水蒸気透過度は、例えば、底板部23,33を測定対象として、MOCON水蒸気透過率測定装置(PERMATRAN-W 3/34,AMETEK MOCON社製)を用いて計測する。
【0064】
<水分の遮蔽方法>
水分の遮蔽方法を説明する。本実施形態の水分の遮蔽方法は、上述した包装容器1に内容物を収容する工程と、包装容器1内に内容物を保持する工程と、を備える。包装容器1に内容物を収容する工程では、ヒンジキャップ22を開いて、開口部5から収容空間Sに内容物を入れる。包装容器1内に内容物を保持する工程では、収容空間Sに内容物が収容された状態でヒンジキャップ22を閉じて、包装容器1を気密に保持する。これにより、包装容器1により水が遮蔽されるため、内容物が吸湿するのを抑制することができる。
【0065】
<包装容器の製造方法>
包装容器の製造方法を説明する。本実施形態の包装容器の製造方法は以下の工程を含む。
【0066】
(A)樹脂材料と超臨界流体とを混合して溶融樹脂組成物を調製する工程。
(B)溶融樹脂組成物を金型のキャビティ内に射出する工程。
(C)上記(B)工程後、超臨界流体を発泡させる工程。
(D)成形物を金型から回収する工程。
(E)底部材と蓋部材とを嵌合させる工程。
【0067】
(A)工程から(D)工程の一連の工程は、例えば、MuCell射出成形機(「MuCell」はTrexel.Co.Ltdの登録商標)を使用して実施できる(例えば特許6085729号公報、特許6430684号公報を参照する)。
【0068】
[(A)工程]
はじめに、樹脂材料と超臨界流体とを混合して溶融樹脂組成物を調製する。樹脂材料としては、上で挙げた熱可塑性樹脂を用いることができる。樹脂材料100質量部に対して0.5~2.5質量部の超臨界流体を添加する。超臨界流体としては、超臨界状態の窒素又は二酸化炭素を用いる。
【0069】
超臨界流体として超臨界状態の窒素を用いる場合、樹脂材料100質量部に対して0.5~1.0質量部の超臨界流体を添加する。超臨界流体の量が0.5質量部以上であることで、超臨界状態の窒素に起因する発泡を促進することができる。他方、超臨界流体の量が1.0質量部以下であることで、(C)工程における保圧圧力を比較的低く設定することができ、後膨れを抑制できる傾向にある。
【0070】
超臨界流体として超臨界状態の二酸化炭素を用いる場合、樹脂材料100質量部に対して0.8~2.5質量部の超臨界流体を添加する。超臨界流体の量が0.8質量部以上であることで、二酸化炭素の添加による溶融樹脂組成物の粘度低下により、ショートショットの発生を抑制することができる。これに加え、超臨界状態の二酸化炭素に起因する発泡を促進することができる。他方、超臨界流体の量が2.5質量部以下であることで、(C)工程における保圧圧力を比較的低く設定することができ、後膨れを抑制できる傾向にある。
【0071】
溶融樹脂組成物の温度(スクリューシリンダ温度)は、樹脂材料の融点又はMFRに応じて設定すればよい。ポリプロピレン樹脂を使用する場合、この温度は210~230℃程度であることが好ましい。ポリエチレン樹脂を使用する場合、この温度は220~240℃程度であることが好ましい。この温度が下限値以上であることで、キャビティ内において樹脂が流動しやすく、他方、上限値以下であることで、樹脂の焦げ付きを抑制できる傾向にある。
【0072】
溶融樹脂組成物は、樹脂材料及び超臨界流体以外の成分を含んでもよい。すなわち、溶融樹脂組成物は、必要に応じて、例えば、フィラー、着色剤、スリップ剤、帯電防止剤などを更に含んでもよい。
【0073】
[(B)工程]
製造する包装容器1の底部材2及び蓋部材3の形状に対応する金型を用意する。そして、(A)工程で調製した溶融樹脂組成物を金型のゲートを通じてキャビティ内に射出する。射出速度は、好ましくは60mm/秒以上であり、より好ましくは200mm/秒以上であり、更に好ましくは250mm/秒以上である。射出速度が60mm/秒以上であることで、流動末端まで樹脂を到達させやすく、ショートショットの発生を抑制できる傾向にある。射出速度の上限値は、例えば、350mm/秒である。
【0074】
キャビティのゲートから、最も遠い流動末端までの距離(以下、「最大流動長」という。)が60mm以上であっても、流動末端にまで溶融樹脂組成物が至ることが好ましい。最大流動長は、例えば、70mm以上又は80mm以上であってもよい。最大流動長の上限値は、例えば、120mmである。ショートショットの発生を抑制する観点から、最大流動長MLと、成形する薄肉凹部の厚さT2との関係は以下の関係にあることが好ましい。
100≦ML/T2≦300
【0075】
[(C)工程]
上記(B)工程後、超臨界流体の少なくとも一部を、内径が10μm以上で集合密度が10個/mm2以上の独立気泡Bとなるように発泡させる。
【0076】
超臨界流体が超臨界状態の窒素である場合、超臨界流体の少なくとも一部をこのように発泡させるために、例えば、キャビティを15~85MPaの圧力条件で保圧するとともに、冷却する。この圧力が15MPa以上であることで、超臨界状態の窒素の発泡を促進させつつショートショットの発生を抑制することができ、他方、85MPa以下であることで、超臨界状態の窒素の発泡を促進しつつ後膨れの発生を抑制することができる傾向にある。この値は、好ましくは25~80MPaであり、より好ましくは30~75MPaである。保圧時間は、ゲートシール時間を見ながら決めればよいが、例えば0.1~1.5秒とすればよい。
【0077】
超臨界流体が超臨界状態の二酸化炭素である場合、超臨界流体の少なくとも一部をこのように発泡させるために、例えば、キャビティを15~100MPaの圧力条件で保圧するとともに、冷却する。この圧力が15MPa以上であることで、超臨界状態の二酸化炭素の発泡を促進させつつショートショットの発生を抑制することができ、他方、100MPa以下であることで、超臨界状態の二酸化炭素の発泡を促進しつつ後膨れの発生を抑制することができる傾向にある。この値は、好ましくは30~95MPaであり、より好ましくは40~90MPaである。保圧時間は、ゲートシール時間を見ながら決めればよいが、例えば0.1~1.5秒とすればよい。
【0078】
薄肉の部分を作製する観点から、キャビティ内の圧力を低下させるための「コアバック」と称される工程を実施しないことが好ましい。コアバックは、キャビティに充填された溶融樹脂組成物が固化し終わる前に、金型の可動部を移動させてキャビティの容積を拡大させる工程である(特許6085729号公報参照)。
【0079】
[(D)工程]
金型内の成形物(底部材2又は蓋部材3)の温度が30~60℃程度に下がった時点で、成形物を金型から回収する。本実施形態においては、(C)工程で保圧を実施するとともに、上述のように「コアバック」を実施しないため、本実施形態の成形物には目視で確認できるような大きな空隙があまり形成されない。
【0080】
[(E)工程]
金型から回収された成型物である底部材2と蓋部材3とを嵌合させる。これにより、包装容器1が得られる。
【0081】
以上説明したように、本実施形態に係る包装容器1では、底部材2と蓋部材3との間に形成される収容空間Sに内容物を収容することができる。そして、底部材2及び蓋部材3の少なくとも一方が、10μm以上の内径を有する独立気泡Bの集合密度が10個/mm2以上となる気泡領域Rを有する。つまり、気泡領域Rには、10μm以上の内径を有する独立気泡Bが、10個/mm2以上の集合密度で存在している。このため、気泡領域Rでは、樹脂と独立気泡Bとが海島構造となって、樹脂を透過する水蒸気の透過経路が複雑になる迷路効果が生じると考えられる。また、気泡領域Rでは、樹脂と独立気泡Bとの間で水蒸気の透過係数が異なるため、樹脂と独立気泡Bとの境界が水蒸気の透過抵抗となることも考えられる。このような迷路効果及び透過抵抗により水蒸気が透過し難くなると推察されるため、包装容器1の肉厚を厚くしたり、バリアフィルムを包装容器1にラミネートしたりしなくても、水蒸気バリア性を高めることができる。このため、環境負荷の増大を抑制しつつ水蒸気バリア性を高めることができる。
【0082】
また、この包装容器1では、底部材2及び蓋部材3の少なくとも一方が0.7mm以下の厚さを有する平板状の底板部23,33及び側板部24,34を備えるため、包装容器1に使用する樹脂量を低減し、環境負荷の増大を更に抑制することができる。しかも、底板部23,33及び側板部24,34が気泡領域Rを有するため、底板部23,33及び側板部24,34においても水蒸気バリア性を高めることができる。
【0083】
また、この包装容器1では、気泡領域Rを挟むように包装容器1の内側の表面1a及び包装容器1の外側の表面1bに位置して気泡領域Rを有しない表層L1,L2を有するため、水蒸気バリア性を高めつつ、包装容器1の外観不良の発生を抑制することができる。
【0084】
また、この包装容器1では、独立気泡Bが超臨界状態の窒素に由来するものである場合、包装容器1の製造時に発泡しやすくなるとともに、当該発砲により形成される独立気泡Bの内径が10μm以上70μm以下程度になる。このような微細な独立気泡Bにより樹脂が複雑かつ微細な立体構造となるため、包装容器1の肉厚が薄くても包装容器1の剛性及び形状安定性が高まる。これにより、包装容器1の撓みに伴う水蒸気バリア性の低下を抑制することができる。
【0085】
また、この包装容器1では、底部材2が、底板部23と、底板部23の周縁から立ち上がり蓋部材3に嵌合される側板部24と、側板部24に形成された開口部5と、開口部5を開閉するヒンジキャップ22と、を有するため、ヒンジキャップ22を閉じることで内容物を気密に収容することができるとともに、ヒンジキャップ22を開くことで収容された内容物を取り出すことができる。
【0086】
また、この包装容器1では、側板部24,34が開口部5により底板部23,33の周縁に沿う方向に非連続となっているため、側板部24,34が開口部5の近傍で撓みやすい。側板部24,34が開口部5の近傍で撓むと、ヒンジキャップ22と側板部24,34との間に隙間が生じ、当該隙間から水蒸気が入ってくる可能性がある。しかしながら、側板部24,34が気泡領域Rを有することで、側板部24,34においては、独立気泡Bにより樹脂が複雑な立体構造となるため、側板部24,34の剛性及び形状安定性が高まる。特に、独立気泡Bが超臨界状態の窒素に由来するものである場合は、側板部24,34の剛性及び形状安定性が更に高まる。このため、側板部24,34の撓みに伴う水蒸気バリア性の低下を抑制することができる。
【0087】
また、この包装容器1では、水蒸気透過度が1.60g/mm2/day以下であるため、内容物の吸湿を抑制することができる。
【0088】
本実施形態に係る内容物入り包装容器では、上述した包装容器1を備えるため、環境負荷の増大を抑制しつつ水蒸気バリア性を高めることができる。
【0089】
本実施桁委に係る水分の遮蔽方法では、上述した包装容器1に内容物を収容して保持するため、環境負荷の増大を抑制しつつ水蒸気バリア性を高めることができる。
【0090】
本実施形態に係る包装容器の製造方法では、樹脂材料と超臨界流体とが混合された溶融樹脂組成物を金型のキャビティ内に射出し、超臨界流体の少なくとも一部を、内径が10μm以上で集合密度が10個/mm2以上の独立気泡となるように発泡させるため、環境負荷の増大を抑制しつつ水蒸気バリア性を高めることができる包装容器1を製造することができる。
【0091】
また、この包装容器の製造方法では、超臨界流体を超臨界状態の窒素とすることで、肉厚が薄くても剛性及び形状安定性の高い包装容器1を製造することができる。
【0092】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。
【実施例0093】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0094】
(樹脂材料)
樹脂:ポリプロピレン(サンアロマー株式会社製、ランダムコポリマー「PM931V」、MFR:25g/10分、白色着色剤を主剤:着色剤=100:5でブレンド)
【0095】
(成形体の構造)
図2に示されたヒンジキャップ付きの底部材2と、
図3に示された蓋部材3とを成形した。ゲート位置を、底部材の長辺方向においてヒンジキャップ側へ寄った位置、かつ、底部材の短辺方向においてヒンジキャップ側へ寄った位置とした。設計上の最大流動長(L)、すなわち、ゲートを始点とした成形体の最も遠い位置までの直線距離は設計上83mmであった。蓋部材3についても同様の位置とした。
【0096】
(包装容器全体の防湿性評価)
成形した底部材と蓋部材とを、12gのシリカゲルを内部に収容して嵌合させた。これを温度30℃、湿度80%の環境下で24時間静置した。その後、シリカゲルの重量を測定し、重量の増加率を求めた。
【0097】
(発泡状態の観測)
成形した蓋部材の側板部とピンとをそれぞれ顕微鏡(HiROX社製、製品名「KH7000」)で倍率140倍にて観察し、独立気泡の個数と大きさを調べた。
【0098】
(底部材の水蒸気透過度評価)
成型した蓋部材を、MOCON水蒸気透過率測定装置(PERMATRAN-W 3/34,AMETEK MOCON社製)にセットし、温度40℃、湿度90%の環境下で、6時間及び12時間経過時の、底板部における外側(収容空間とは反対側)から内側(収容空間側)への水蒸気透過度を測定した。水蒸気透過度の測定領域Mは、
図8に示す、直径2.5cmの円領域とした。水蒸気透過度の測定では、測定開始時点から1.5時間間隔で水蒸気透過度を測定し、前の測定点での測定値からの変化率が±10%以内に収まった測定点が3点以上続いたとき、その最初の3点の測定値の平均値を水蒸気透過度とした。
【0099】
<実施例1>
100質量部の樹脂に対して0.80質量部の超臨界状態の窒素を添加して溶融樹脂組成物を調製した。この溶融樹脂組成物を使用して、表1に示した条件及び、表2に示した設計値にて、底部材及び蓋部材の射出成形を行った。なお、平面部は、底板部のうち、薄肉凹部ではない部分である。
【0100】
成形した蓋部材の側板部及びピンについて、独立気泡の個数と大きさを測定した。また、成形した底部材及び蓋部材それぞれの平面部及び薄肉凹部の厚さを測定した。また、包装容器全体の防湿性評価及び底部材の水蒸気透過度評価を行った。底部材の水蒸気透過度評価では、4.5時間、6時間、7.5時間経過後の3点の測定値の平均値を水蒸気透過度とし、その水蒸気透過度の値は1.53g/mm
2/dayであった。独立気泡の発生状況を表3に、底部材の水蒸気透過度評価の結果を表4に、包装容器全体の防湿性評価の結果を
図9に示す。独立気泡の集合密度は、所定の観測面積で観測された独立気泡の数から換算した推定値とした。なお、底部材の水蒸気透過度評価では、前の測定点での測定値からの変化率が±10%以内に収まる前のデータは不要であるが、参考として、底部材の水蒸気透過度の測定値を
図10~
図12に示す。
【0101】
<実施例2>
100質量部の樹脂に対して1.50質量部の超臨界状態の二酸化炭素を添加して溶融樹脂組成物を調製した。この溶融樹脂組成物を使用して、表1に示した条件、及び表2に示した設計値にて、底部材及び蓋部材の射出成形を行った。
【0102】
成形した蓋部材の側板部及びピンについて、独立気泡の個数と大きさを測定した。また、成形した底部材及び蓋部材それぞれの平面部及び薄肉凹部の厚さを測定した。また、包装容器全体の防湿性評価及び底部材の水蒸気透過度評価を行った。底部材の水蒸気透過度評価では、9時間、10.5時間、12時間経過後の3点の測定値の平均値を水蒸気透過度とし、その水蒸気透過度の値は1.22g/mm
2/dayであった。独立気泡の発生状況を表3に、底部材の水蒸気透過度評価の結果を表4に、包装容器全体の防湿性評価の結果を
図9に示す。独立気泡の集合密度は、所定の観測面積で観測された独立気泡の数から換算した推定値とした。なお、底部材の水蒸気透過度評価では、前の測定点での測定値からの変化率が±10%以内に収まる前のデータは不要であるが、参考として、底部材の水蒸気透過度の測定値を
図10~
図12に示す。
【0103】
<比較例1>
超臨界状態の気体を添加しないで、単に溶融させた樹脂を使用して表1に示した条件、及び表2に示した設計値にて、底部材及び蓋部材の射出成形を行った。
【0104】
成形した蓋部材の側板部及びピンについて、独立気泡の個数と大きさを測定した。また、また、包装容器全体の防湿性評価及び底部材の水蒸気透過度評価を行った。底部材の水蒸気透過度評価では、4.5時間、6時間、7.5時間経過後の3点の測定値の平均値を水蒸気透過度とし、その水蒸気透過度の値は1.72g/mm
2/dayであった。底部材の水蒸気透過度評価の結果を表4に示す。包装容器全体の防湿性評価の結果を
図9に示す。なお、底部材の水蒸気透過度評価では、前の測定点での測定値からの変化率が±10%以内に収まる前のデータは不要であるが、参考として、底部材の水蒸気透過度の測定値を
図10~
図12に示す。
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
図9に示した結果から、実施例1及び実施例2の包装容器は、比較例1の包装容器に比べて、包装容器全体の防湿性評価が高いため、高い水蒸気バリア性を有することが分かる。また、実施例1の独立気泡は、実施例2の独立気泡よりも内径が小さく、実施例1の包装容器は、実施例2の包装容器よりも包装容器全体の防湿性評価が高かった。これは、これは、超臨界状態の窒素に由来する独立気泡は、超臨界状態の二酸化炭素に由来する独立気泡よりも内径が小さくなるため、実施例1の包装容器は、実施例2の包装容器よりも剛性及び形状安定性が高まり、包装容器の撓みに伴う水蒸気バリア性の低下が抑制されたものと考えられる。
【0110】
表4に示した結果から、実施例1及び実施例2の底部材は、比較例1の底部材に比べて、水蒸気透過度が低いため、高い水蒸気バリア性を有することが分かる。
1…包装容器、1a…表面、1b…表面、2…底部材、3…蓋部材、5…開口部、21…ヒンジ、22…ヒンジキャップ、23…底板部、24…側板部、24a…段上げ部、24b…段下げ部、25(25a,25b,25c,25d,25e)…ボス、26…薄肉凹部、27…支柱、28…案内リブ、33…底板部、34…側板部、35(35a,35b,35c,35d,35e)…ピン、36…薄肉凹部、39…ガイド、B…独立気泡、L1…表層、L2…表層、M…測定領域、R…気泡領域、S…収容空間。