(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147199
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】レンズの製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 7/02 20210101AFI20241008BHJP
【FI】
G02B7/02 B
G02B7/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060058
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100166408
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 邦陽
(72)【発明者】
【氏名】石嶺 剛志
(72)【発明者】
【氏名】山中 賢治
【テーマコード(参考)】
2H044
【Fターム(参考)】
2H044AB10
2H044AB17
2H044AJ04
(57)【要約】
【課題】コバ部を確実に黒化処理して優れた遮光効果を得られるレンズの製造方法を提供する。
【解決手段】プレス成形前の環状のコバ部(31)の少なくとも内周面(34)に黒化処理を行う第1黒化処理ステップと、コバ部によって囲まれる光学機能部(10)とコバ部とをプレス成形して、光学機能部に光学面(11、12)を形成すると共に、光学機能部の外周面(13)とコバ部の内周面(23)を互いに固定する成形ステップと、プレス成形後のコバ部(20)に対して、内周面(23)以外の外面(21、22、24)の少なくとも一部に黒化処理を行う第2黒化処理ステップと、を行うレンズの製造方法。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス成形前の環状のコバ部の少なくとも内周面に黒化処理を行う第1黒化処理ステップと、
前記コバ部によって囲まれる光学機能部と前記コバ部とをプレス成形して、前記光学機能部に光学面を形成すると共に、前記光学機能部の外周面と前記コバ部の前記内周面を互いに固定する成形ステップと、
プレス成形後の前記コバ部に対して、前記内周面以外の外面の少なくとも一部に黒化処理を行う第2黒化処理ステップと、
を有することを特徴とするレンズの製造方法。
【請求項2】
前記コバ部は、前記成形ステップによって、光軸方向を向く両側の外面の少なくとも一方が非平坦部分を含む形状に成形され、
前記第2黒化処理ステップは、少なくとも前記非平坦部分を含む範囲に黒化処理を行うことを特徴とする、請求項1に記載のレンズの製造方法。
【請求項3】
前記第2黒化処理ステップは、前記光学機能部の前記光学面を覆うマスキング部を形成した状態で行い、前記第2黒化処理ステップの後に前記マスキング部を除去することを特徴とする、請求項1又は2に記載のレンズの製造方法。
【請求項4】
前記コバ部は金属製であり、前記第1黒化処理ステップと前記第2黒化処理ステップの少なくとも一方は、金属の加熱による酸化で前記コバ部の外面を黒化させることを特徴とする、請求項1又は2に記載のレンズの製造方法。
【請求項5】
前記光学機能部はガラス製であり、前記第2黒化処理ステップは、前記光学機能部を構成するガラスのガラス転移温度よりも低い温度で前記コバ部を加熱することを特徴とする、請求項4に記載のレンズの製造方法。
【請求項6】
前記第1黒化処理ステップと前記第2黒化処理ステップの少なくとも一方は、化成処理によって前記コバ部の外面を黒化させることを特徴とする、請求項1又は2に記載のレンズの製造方法。
【請求項7】
前記第1黒化処理ステップと前記第2黒化処理ステップの少なくとも一方は、メッキ処理によって前記コバ部の外面を黒化させることを特徴とする、請求項1又は2に記載のレンズの製造方法。
【請求項8】
前記第2黒化処理ステップは、合成樹脂の塗布によって前記コバ部の外面を黒化させることを特徴とする、請求項1又は2に記載のレンズの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、プレス成形によってレンズを製造する場合の偏心などの精度誤差を抑制するために、成形用型や鏡枠との間の芯出し機能を有するキャリアと、ガラス素材とを、プレス成形加工時に一体的に結合させることによって、高性能な多機能キャリア付きレンズを得る技術が記載されている。また、特許文献1には、プレス成形前に、多機能キャリアの内周面に予め黒色塗料を塗布して、ゴーストやフレアを防止することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光学面(レンズ面)を有する光学機能部の外側を、光学機能部とは別の材質からなるコバ部で囲んだ構造のレンズでは、コバ部における有害な光の反射を抑制して光学性能を確保する必要がある。例えば、金属製のコバ部の場合、金属光沢を有するままの状態でレンズを構成すると有害な反射光が発生しやすいので、コバ部の表面を黒化処理して遮光性を向上させる対策が求められる。
【0005】
また、光軸方向の厚さが小さいコバ部や、光軸方向の前後を向く前後面の面積が大きいコバ部では、コバ部の内周面だけではなく、内周面以外の外面部分で反射した光も迷光の原因になりやすいため、内周面以外の外面部分における遮光性能の高さも求められる。
【0006】
光学機能部とコバ部をプレス成形によって一体化させるレンズの製造方法の場合、光学機能部と一体化させた後ではコバ部の内周面の黒化処理が難しいため、プレス成形前にコバ部の黒化処理を行うことが想定される。しかし、黒化処理したコバ部に対してプレス成形を行うと、プレス成形時の変形に伴ってコバ部の地金が露出して、黒化処理の効果が減じてしまうという問題がある。
【0007】
特許文献1に記載された多機能キャリア付きレンズでは、多機能キャリアの内周面に黒色塗料を塗布して黒化処理しているが、内周面以外の箇所については格別な遮光対策がなされておらず、上記の問題を解決するものではなかった。
【0008】
本発明は、以上の問題意識に基づいてなされたものであり、コバ部を確実に黒化処理して優れた遮光効果を得られるレンズの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様のレンズの製造方法は、プレス成形前の環状のコバ部の少なくとも内周面に黒化処理を行う第1黒化処理ステップと、前記コバ部によって囲まれる光学機能部と前記コバ部とをプレス成形して、前記光学機能部に光学面を形成すると共に、前記光学機能部の外周面と前記コバ部の前記内周面を互いに固定する成形ステップと、プレス成形後の前記コバ部に対して、前記内周面以外の外面の少なくとも一部に黒化処理を行う第2黒化処理ステップと、を有することを特徴とする。
【0010】
前記コバ部は、前記成形ステップによって、光軸方向を向く両側の外面の少なくとも一方が非平坦部分を含む形状に成形され、前記第2黒化処理ステップは、少なくとも前記非平坦部分を含む範囲に黒化処理を行うことが好ましい。
【0011】
前記第2黒化処理ステップは、前記光学機能部の前記光学面を覆うマスキング部を形成した状態で行い、前記第2黒化処理ステップの後に前記マスキング部を除去することが好ましい。
【0012】
一例として、前記コバ部は金属製であり、前記第1黒化処理ステップと前記第2黒化処理ステップの少なくとも一方は、金属の加熱による酸化で前記コバ部の外面を黒化させる。
【0013】
前記光学機能部はガラス製であり、前記第2黒化処理ステップは、前記光学機能部を構成するガラスのガラス転移温度よりも低い温度で前記コバ部を加熱して酸化により黒化させることが好ましい。
【0014】
一例として、前記第1黒化処理ステップと前記第2黒化処理ステップの少なくとも一方は、化成処理によって前記コバ部の外面を黒化させる。
【0015】
一例として、前記第1黒化処理ステップと前記第2黒化処理ステップの少なくとも一方は、メッキ処理によって前記コバ部の外面を黒化させる。
【0016】
一例として、前記第2黒化処理ステップは、合成樹脂の塗布によって前記コバ部の外面を黒化させる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のレンズの製造方法を適用することにより、コバ部の内周面と内周面以外の外面のそれぞれを確実に黒化処理して、優れた遮光効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図5】成形ステップの完了後のレンズを示す断面図である。
【
図7】光学機能部のマスキング処理を説明する図である。
【
図8】マスキング処理を行ったレンズに第2黒化処理ステップを行った状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図示の実施形態に基づいて、本発明におけるレンズの製造方法を説明する。まず、本発明を適用した製造方法によって製造されるレンズ1の構成について、
図1を参照して説明する。レンズ1の光軸X1に沿う方向を光軸方向とし、光軸X1に対して垂直な方向を光軸直交方向とする。光軸直交方向は、レンズ1の径方向と呼ぶこともできる。
図1は光軸X1を含む断面位置でレンズ1を示した断面図である。
【0020】
レンズ1は、ガラス製の光学機能部10と、光学機能部10の外側を囲む環状のコバ部20と、によって構成されている。コバ部20は光学機能部10を構成するガラスとは異なる材質からなり、本実施形態のコバ部20は金属製である。コバ部20を構成する金属は、光学機能部10を構成するガラス素材の成形温度付近において、当該ガラス素材と共に変形可能な材料が選択される。
【0021】
光学機能部10は、光軸方向の両側に光学面(レンズ面)を有する。本実施形態のレンズ1は、光学機能部10の両側の光学面11と光学面12がいずれも凸面である両凸レンズである。光軸方向のうち光学面11が向く側を第1の方向Xaとし、光学面12が向く側を第2の方向Xbとする。なお、本発明の製造方法を適用して形成されるレンズの光学面は、この実施形態に限定されるものではなく、光学面は、凸面、凹面、平面のいずれであってもよい。また、光学面は、球面でも非球面でもよい。
【0022】
光学機能部10は、光学面11と光学面12の互いの外縁部分を接続する外周面13を有している。外周面13は光軸X1を中心とする円筒状の面である。
【0023】
コバ部20は、光軸方向の一方の側である第1の方向Xaを向く外面として、前面部21を有する。前面部21は、光学面11に近い内径側から順に、内側平坦面21aと、テーパ面21bと、外側平坦面21cと、を有する。
【0024】
また、コバ部20は、光軸方向の他方の側である第2の方向Xbを向く外面として、後面部22を有する。後面部22は、光学面12に近い内径側から順に、内側平坦面22aと、テーパ面22bと、外側平坦面22cと、を有する。
【0025】
なお、前面部21と後面部22における前後は、便宜上の呼び分けである。レンズ1を光学機器に組み込んだ際に、前面部21(第1の方向Xa)が光学系の光軸方向前方を向き、後面部22(第2の方向Xb)が光学系の光軸方向後方を向くことを限定するものではない。
【0026】
前面部21における内側平坦面21a及び外側平坦面21cと、後面部22における内側平坦面22a及び外側平坦面22cは、それぞれが光軸X1に対して略垂直な平面であり、光軸X1を中心とした環状の範囲に設けられている。テーパ面21bとテーパ面22bはそれぞれ、光軸方向で第2の方向Xbに進むにつれて径が大きくなる(第1の方向Xaに進むにつれて径が小さくなる)円錐台形状の面である。前面部21はテーパ面21bの箇所が段差形状になっており、後面部22はテーパ面22bの箇所が段差形状になっており、テーパ面21bとテーパ面22bはそれぞれ、前面部21と後面部22における非平坦部分を形成している。
【0027】
コバ部20のうち、内側平坦面21aと内側平坦面22aを含む領域を内側平坦部20aとし、テーパ面21bとテーパ面22bを含む領域を中間テーパ部20bとし、外側平坦面21cと外側平坦面22cを含む領域を外側平坦部20cとする。コバ部20は、中間テーパ部20bを挟んで、内側平坦部20aと外側平坦部20cが光軸方向に部分的にずれた構成になっている。
【0028】
コバ部20は、内側平坦面21aと内側平坦面22aの互いの内縁部分を接続する内周面23と、外側平坦面21cと外側平坦面22cの互いの外縁部分を接続する外周面24と、を有している。内周面23と外周面24はそれぞれ、光軸X1を中心とする円筒状の面である。コバ部20の内周面23が光学機能部10の外周面13に対して固定されている。コバ部20の外周面24は、レンズ1における最外縁を構成する面である。
【0029】
詳細は後述するが、コバ部20の外面には、光の反射を抑制する黒化処理が施されている。コバ部20の黒化処理によって、レンズ1を光学機器に組み込んだ際に、内周面23での内面反射や、光学機能部10を適正な経路で通過しない迷光の発生を抑制して、光学性能を向上させる効果(遮光効果)が得られる。なお、コバ部20の外面とは、コバ部20やその母材となる環状部材31が単体の状態(光学機能部10と組み合わされる前の状態)で外観に現れる部分であり、レンズ1が完成した状態で光学機能部10の外周面13と固定される内周面23や、環状部材31の内周面34についても、コバ部20の外面に含まれる。外面の黒化処理は、コバ部20の素材である金属(地金)の色や光沢がそのまま外面に露出することを防いで光の反射を低減させるための加工である。なお、黒化処理は、コバ部20の外面を完全に黒色にすることには限定されず、コバ部20の地金が露出する場合に比して所定以上の反射低減効果を発揮するものであればよい。
【0030】
続いて、
図3及び
図4を参照して、レンズ1の製造の際に使用する成形型40の構成を説明する。成形型40は、胴型41と下型42と上型43とによって構成されている。胴型41は円筒形状であり、円筒面である内周面41aによって囲まれる内部空間を有する。成形型40の中心軸X2は、内周面41aの中心を通って上下方向に延びる軸線である。胴型41は、胴型下端面41bを下端に有し、胴型上端面41cを上端に有する。胴型下端面41bと胴型上端面41cはそれぞれ、中心軸X2に対して略垂直な面である。胴型41の内部空間は、上下方向に貫通して胴型下端面41bと胴型上端面41cの内側領域で開口している。
【0031】
下型42は、胴型41の内部空間に対して下方から挿入される挿入部42aと、挿入部42aの下部に設けられて挿入部42aよりも大径の大径部42bとを有する。上型43は、胴型41の内部空間に対して上方から挿入される挿入部43aと、挿入部43aの上部に設けられて挿入部43aよりも大径の大径部43bとを有する。挿入部42aと挿入部43aのそれぞれの外周面は、胴型41の内周面41aに対して、上下方向に摺動が可能であり、中心軸X2と垂直な方向には移動が規制される。つまり、下型42と上型43の中心軸が中心軸X2に一致するように調芯された状態で、胴型41に対して下型42と上型43が上下方向に移動可能である。
【0032】
下型42は、挿入部42aの上端に光学形成面44を有する。光学形成面44は、中心軸X2上の中心が最も深く、外径側に向けて浅くなる凹型の面である。挿入部42aの上端にはさらに、光学形成面44の周囲にコバ部形成面45が形成されている。コバ部形成面45は、光学形成面44に近い径方向の内側から外側へ向けて順に、内側平坦面45aと、テーパ面45bと、外側平坦面45cと、を有している。内側平坦面45aと外側平坦面45cは中心軸X2に対して略垂直な面であり、中心軸X2を中心とする環状の範囲に設けられている。外側平坦面45cは内側平坦面45aよりも上方に位置する。テーパ面45bは、中心軸X2を中心とする円錐台形状の面であり、テーパ面45bの一方の端部(小径側の端部)が内側平坦面45aに接続し、テーパ面45bの他方の端部(大径側の端部)が外側平坦面45cに接続している。
【0033】
上型43は、挿入部43aの下端に光学形成面46を有する。光学形成面46は、中心軸X2上の中心が最も深く、外径側に向けて浅くなる凹型の面である。挿入部43aの下端にはさらに、光学形成面46の周囲にコバ部形成面47が形成されている。コバ部形成面47は、光学形成面46に近い径方向の内側から外側へ向けて順に、内側平坦面47aと、テーパ面47bと、外側平坦面47cと、を有している。内側平坦面47aと外側平坦面47cは中心軸X2に対して略垂直な面であり、中心軸X2を中心とする環状の範囲に設けられている。外側平坦面45cは内側平坦面45aよりも上方に位置する。テーパ面47bは、中心軸X2を中心とする円錐台形状の面であり、テーパ面47bの一方の端部(小径側の端部)が内側平坦面47aに接続し、テーパ面47bの他方の端部(大径側の端部)が外側平坦面47cに接続している。
【0034】
成形型40によるプレス成形でレンズ1を形成する際に、胴型41に対して下型42の挿入部42aと上型43の挿入部43aがそれぞれ最も挿入される位置を、下型42や上型43におけるプレス移動端と呼ぶ。
図4に示すように、下型42と上型43がそれぞれのプレス移動端に達した状態で、光学形成面44と光学形成面46、コバ部形成面45とコバ部形成面47がそれぞれ上下方向に所定の間隔を空けて対向する。
【0035】
一例として、大径部42bが胴型下端面41bに当て付く位置を、下型42におけるプレス移動端とすることができる。また、大径部43bが胴型上端面41cに当て付く位置を、上型43におけるプレス移動端とすることができる。あるいは、上型43において、大径部43bが胴型上端面41cに当て付くこと以外の構成によって、プレス移動端を定めてもよい。
【0036】
レンズ1の製造においては、成形型40の内部に、光学機能部10の母材となるガラスプリフォーム30と、コバ部20の母材となる環状部材31とを配置して(
図3参照)、下型42と上型43を接近させるプレス成形を行う(
図4参照)。ガラスプリフォーム30は球体形状のガラスで構成されており、環状部材31は円環形状の金属で構成されている。環状部材31をプレス成形前のコバ部、コバ部20をプレス成形後のコバ部と定義する。
【0037】
コバ部20の外面を黒化処理する場合、
図1のようにレンズ1が完成した状態では、コバ部20の内周面23(特に、光学機能部10の外周面13に固定される部分)を後から黒化処理することが難しい。その一方で、成形型40によるプレス成形を行う前のコバ部である環状部材31の状態で外面の黒化処理を行うと、プレス成形による環状部材31からコバ部20への変形の際に、コバ部20の外面で部分的に金属の地金が露出して、黒化処理の効果が損なわれるおそれがある。特に、径方向に延展されると共にテーパ面21bやテーパ面22bのような非平坦部分(段差形状)が形成される前面部21や後面部22の箇所において、プレス成形の影響で金属の地金が露出しやすくなる。
【0038】
本実施形態のレンズの製造方法は、プレス成形を用いつつ、コバ部20の外面が確実に黒化処理されるレンズ1を得るものであり、その詳細を以下に説明する。
【0039】
本実施形態のレンズの製造方法は、第1黒化処理ステップ、成形ステップ、第2黒化処理ステップを含んでいる。
図2から
図8では、コバ部20や環状部材31において、各黒化処理ステップによって黒化処理が施された部位を太線で強調して示している。
【0040】
[第1黒化処理ステップ]
図2は、成形型40によるプレス成形加工を行う前のコバ部である環状部材31を示している。環状部材31は、成形型40に設置した際に中心軸X2に対して略垂直となる環状の平坦面32及び平坦面33と、平坦面32及び平坦面33の互いの内縁部分を接続する円筒状の内周面34と、平坦面32及び平坦面33の互いの外縁部分を接続する円筒状の外周面35と、を有している。
【0041】
第1黒化処理ステップでは、環状部材31に対して、少なくとも内周面34を黒化する処理を行う。第1黒化処理ステップでの黒化処理の方法として、例えば、金属の加熱による酸化、化成処理、メッキ処理、などを適用することができる。金属の加熱による酸化は、酸素を含む雰囲気下で加熱することによって、被処理物である環状部材31の外面を酸化させ、金属光沢を無くして黒化させる。加熱によって酸化しやすい金属素材として、例えば銅や鉄が挙げられる。化成処理の一例として、鉄製の被処理物である環状部材31をアルカリ水溶液に浸漬して、環状部材31の外面に黒色の酸化被膜(四三酸化鉄被膜)を形成する。メッキ処理の例として、被処理物である環状部材31の外面に黒色ニッケルメッキや黒色クロムメッキなどのメッキ加工を行う。
【0042】
第1黒化処理ステップの次に行う成形ステップは、ガラスプリフォーム30が軟化するガラス転移温度以上に加熱した状態で実施される。そのため、第1黒化処理ステップで黒化処理した箇所については、ガラス転移温度域まで加熱されても劣化や損傷を生じない耐熱性を備えることが求められる。上記の各方法は、この耐熱性の条件を満たすものである。
【0043】
第1黒化処理ステップにおいて内周面34を黒化処理の対象にすることによって、成形型40によるプレス成形加工を行った後では黒化処理が難しいコバ部20の内周面23を、確実に黒化させることができる。
【0044】
なお、第1黒化処理ステップは、黒化処理の対象に少なくとも内周面34を含んでいればよく、内周面34以外の外面部分である平坦面32、平坦面33、外周面35などを含めて黒化処理してもよい。特に、被処理物の全体を処理液に沈めるディッピングのように、内周面34の範囲だけを区切って処理しにくい方法を採用する場合には、環状部材31の外面全体を第1黒化処理ステップでの黒化処理の対象としてもよい。
【0045】
[成形ステップ]
第1黒化処理ステップの完了後に成形ステップを行う。成形ステップでは、まず、
図3に示すように、ガラスプリフォーム30及び環状部材31(内周面34を黒化済み)を、成形型40の下型42と上型43の間に保持する。環状部材31は、平坦面32をコバ部形成面45の外側平坦面45cに載せて、一部が外側平坦面45cよりも内径側(中心軸X2に近い位置)に張り出した状態で保持される。
【0046】
プレス加工前の平坦面32から平坦面33までの環状部材31の厚みは、下型42と上型43がそれぞれプレス移動端にあるときのコバ部形成面45とコバ部形成面47の間隔よりも大きく設定されている。従って、下型42と上型43を互いのプレス移動端まで接近移動させる際に、コバ部形成面45とコバ部形成面47による押圧力を受けて環状部材31が変形して径方向に延展する。
【0047】
ガラスプリフォーム30は、下型42の光学形成面44に載せられる。光学形成面44の凹み形状によって、ガラスプリフォーム30が中心軸X2上の位置に保持される。下型42は、大径部42bを胴型下端面41bに当接させたプレス移動端に保持され、挿入部42aが胴型41から離脱しないように下型42が下方から支持される。なお、光学形成面44上へのガラスプリフォーム30の供給は、胴型41から挿入部42aを下方に抜いた状態で行ってもよいし、胴型41に挿入部42aを挿入した状態で胴型41の上端側から行ってもよい。
【0048】
図3のようにガラスプリフォーム30と環状部材31を成形型40の内部に配置したら、ガラスプリフォーム30のガラス転移温度を超えるまで加熱してガラスプリフォーム30を軟化させる。そして、図示を省略するプレス装置を用いて、挿入部43aを胴型41に挿入した状態の上型43を下方に向けて押圧する。下降する上型43の光学形成面46と、下降が規制された下型42の光学形成面44との間でガラスプリフォーム30がプレスされて変形する。ガラスプリフォーム30は、中心軸X2に沿う方向で厚みを小さくしながら外径側に延展する。
【0049】
なお、成形ステップは窒素ガス雰囲気で行われ、環状部材31を酸化させる酸素が十分に含まれていないので、ガラスプリフォーム30と共に環状部材31が加熱される際に、環状部材31の酸化による黒化が生じない。そのため、成形ステップの前に、第1黒化処理ステップにて環状部材31の内周面34を黒化処理する必要がある。
【0050】
上型43の下降が進んでガラスプリフォーム30がある程度変形すると、下降するコバ部形成面47が上方から環状部材31の平坦面33に接触し、コバ部形成面45とコバ部形成面47の間で環状部材31が押圧されて変形する。このとき、環状部材31は、中心軸X2に沿う方向で厚みを小さくしながら内径側に延展する。その際に、平坦面32側の形状が、コバ部形成面45に沿う形状に変化して前面部21になる。つまり、内側平坦面45aを転写した形状の内側平坦面21aと、テーパ面45bを転写した形状のテーパ面21bと、外側平坦面45cを転写した形状の外側平坦面21cが形成される。また、平坦面33側の形状が、コバ部形成面47に沿う形状に変化して後面部22になる。つまり、内側平坦面47aを転写した形状の内側平坦面22aと、テーパ面47bを転写した形状のテーパ面22bと、外側平坦面47cを転写した形状の外側平坦面22cが形成される。
【0051】
上型43を
図4に示すプレス移動端まで下降させると、ガラスプリフォーム30が環状部材31の内側領域で下型42と上型43によってプレスされた結果、光軸方向の両側に光学形成面44と光学形成面46の形状が転写された光学面11と光学面12を有する光学機能部10になる。また、環状部材31が下型42と上型43によってプレスされた結果、光軸方向の両側にコバ部形成面45とコバ部形成面47の形状が転写された前面部21と後面部22を有するコバ部20になる。さらに、外径側に向けて延展されたガラスプリフォーム30と内径側に向けて延展された環状部材31が互いに密着した結果、光学機能部10の外周面13とコバ部20の内周面23が密着固定される。コバ部20の内周面23は、内径側に延展した環状部材31の内周面34を元にして構成されており、光軸X1を中心とする略円筒形状である。光学機能部10の外周面13は、コバ部20の内周面23に対応した略円筒形状になる。コバ部20の外周面24は、環状部材31の外周面35を元にして構成されており、光軸X1を中心とする略円筒形状である。
【0052】
環状部材31の内周面34は、成形型40でのプレス成形時に圧縮方向の荷重を受ける部分である。そのため、環状部材31の内周面34を元にして形成されるコバ部20の内周面23については、金属の地金を露出させる原因となる面の延びが生じず、第1黒化処理ステップで行った黒化処理の効果をプレス成形後も維持することができる。
【0053】
プレス成形が完了した後で、所定の温度まで冷却してから成形型40を分解することによって、成形後のレンズ1を取り出す。このようにして、ガラスのプレス成形品である光学機能部10と金属製のコバ部20とからなるハイブリッド構造のレンズ1が形成される。
図5は、成形ステップを完了した段階のレンズ1を示しており、少なくともコバ部20の内周面23が黒化されている。
【0054】
[第2黒化処理ステップ]
成形ステップの完了後に第2黒化処理ステップを行う。第2黒化処理ステップでは、コバ部20の外面のうち、内周面23以外の外面部分を対象として黒化処理を行う。第2黒化処理ステップにおける黒化処理は、成形が完了している光学機能部10の光学性能に影響を与えない方法を用いて行われる。例えば、第1黒化処理ステップにおいて説明した、金属の加熱による酸化、化成処理、メッキ処理などを、第2黒化処理ステップにおいても適用することができる。
【0055】
第2黒化処理ステップでコバ部20の加熱により酸化させる場合、光学機能部10を構成するガラス素材のガラス転移温度よりも所定以上低い温度での加熱を行うことによって、光学機能部10の変形などの影響を生じさせずにコバ部20の外面の黒化処理を行うことができる。例えば、コバ部20の加熱温度を、300℃以上、且つ、上記のガラス転移温度未満に設定する。一般的に用いられるガラスレンズ用の硝材のガラス転移温度は400℃以上である場合が多く、当該設定によれば、光学機能部10の光学性能に影響を及ぼさない十分なマージンを確保しながら、銅製や鉄製などのコバ部20の外面を効果的に黒化させることができる。
【0056】
第2黒化処理ステップの後には光学機能部10を構成するガラス素材を軟化させる高温域での加熱処理を行わないので、第1黒化処理ステップとの違いとして、第2黒化処理ステップでの黒化箇所については耐熱性の要件が緩和される。従って、第2黒化処理ステップにおける黒化処理の方法として、上記の各方法の他に、耐熱性が比較的低い黒化用素材、例えば合成樹脂製の黒色塗料の塗布などを適用することも可能である。
【0057】
図6は、第2黒化処理ステップを完了した段階のレンズ1を示しており、コバ部20の内周面23に加えて、前面部21、後面部22、外周面24が黒化されている。成形型40によるプレス成形後に黒化処理を行っているため、プレス成形前の環状部材31からコバ部20への変形の影響を受けずに、プレス成形後のコバ部20の外面形状に対応した黒化処理を実現できる。特に、テーパ面21bやテーパ面22bのような非平坦部分を有している前面部21や後面部22についても、確実に黒化処理を施すことができる。
【0058】
先の第1黒化処理ステップで環状部材31の平坦面32や平坦面33の黒化処理を行っていない場合には、第2黒化処理ステップを行うことによって、平坦面32や平坦面33を新規に黒化させる。
【0059】
先の第1黒化処理ステップで環状部材31の平坦面32や平坦面33の黒化処理を行い、成形型40でのプレス成形の影響でコバ部20の前面部21や後面部22で地金が露出した場合についても、第2黒化処理ステップを行うことによって、当該露出部分を無くして確実に黒化させることができる。
【0060】
第2黒化処理ステップでは、コバ部20の内周面23以外の全体を黒化処理の対象としてもよいし、内周面23以外の外面の特定の一部分を黒化処理の対象としてもよい。特に、第1黒化処理ステップで黒化処理を行った場合に、続く成形ステップでの変形や延展によって黒化の効果が低減する(金属の地金が露出する)可能性が高い箇所を黒化処理の対象領域に含むように、第2黒化処理ステップを行うことが好ましい。
【0061】
例えば、上記のように、コバ部20のテーパ面21bやテーパ面22bのような非平坦部分を含む箇所では、プレス成形による形状変化に伴って地金が露出しやすい。従って、少なくともコバ部20のうち、テーパ面21b及びその周辺、テーパ面22b及びその周辺を、第2黒化処理ステップでの黒化処理の対象領域に含むことが好ましい。
【0062】
また、前面部21における内側平坦面21aや外側平坦面21c、後面部22における内側平坦面22aや外側平坦面22cは、成形型40によるプレス成形時にコバ部20の径方向へ延展させる力を受ける部分である。このような延展部分は、段差、屈曲、凹凸などの顕著な形状変化が無くても、元々の黒化された面積に対して広げられることによって地金が露出する可能性がある。従って、内側平坦面21a、外側平坦面21c、内側平坦面22a、外側平坦面22cについても、第2黒化処理ステップでの黒化処理の対象に含めることで、より確実な遮光効果を得ることができる。
【0063】
また、第2黒化処理ステップでは、コバ部20の所定部分を意図的に黒化処理の対象から除外することも可能である。例えば、レンズ1を光学機器の鏡筒に組み込んだ際に、コバ部20の外周面24が鏡筒の内面に囲まれて保持され、外周面24には光路内の光が到達しない構造になる場合がある。このような場合には、外周面24の黒化処理を省略しても光学性能に影響を及ぼさないため、第2黒化処理ステップで外周面24を黒化処理しないという選択が可能である。
【0064】
光学機能部10の光学面11や光学面12を保護してコバ部20の効率的な黒化処理を行うために、光学機能部10に対してマスキング処理を行った状態で第2黒化処理ステップを実施してもよい。光学機能部10に対してマスキング処理を行わない場合は、第2黒化処理ステップによって、
図5の状態から
図6の状態に直接移行する。
【0065】
光学機能部10に対してマスキング処理を行う場合、
図7に示すように、成形ステップ後に、光学機能部10を覆うマスキング部36を形成する。マスキング部36は、光学機能部10の光学面11と光学面12の全体を覆い、さらに光学機能部10の外周面13とコバ部20の内周面23の境界部分までカバーするように形成される。なお、
図7及び
図8では、コバ部20の黒化処理箇所との違いを識別しやすくするために、マスキング部36を破線で表しているが、これはマスキング部36に孔が開いていることを意味するものではなく、マスキング部36は光学面11や光学面12を隙間なく全面的に覆っている。
【0066】
マスキング部36は、マスキング用塗料の塗布、粘着面を有するマスキング用テープの貼着、その他のマスキング材の押し付け、などによって形成することが可能である。
【0067】
マスキング部36の形成後に第2黒化処理ステップを行う。これにより、
図8に示すように、マスキングされた光学機能部10の外側でコバ部20が黒化処理される。マスキング部36によって光学機能部10を保護した状態で第2黒化処理ステップを実施することにより、光学面11や光学面12の汚れや曇りの発生を抑えることができる。
【0068】
第2黒化処理ステップの完了後に、マスキング部36を除去する。マスキング部36をマスキング用塗料で形成した場合は、塗料の除去に対応する組成の洗浄剤を使用して塗料を洗い流して除去する。マスキング部36をマスキング用テープで形成した場合は、テープを剥がして除去する。マスキング部36を除去することにより、
図6に示すようにコバ部20の外面全体が黒化処理されたレンズ1が完成する。
【0069】
なお、光学機能部10の保護以外の目的でマスキング処理を用いることも可能である。例えば、第2黒化処理ステップにおいて、コバ部20の所定部分を黒化処理の対象から除外する場合に、当該所定部分を黒化処理させない目的でマスキング処理を用いてもよい。
【0070】
以上のように、成形ステップの後に第2黒化処理ステップを行うことにより、コバ部20において内周面23以外の外面領域を確実に黒化させて、コバ部20の全体的な遮光効果を確保することができる。
【0071】
以上に説明したレンズの製造方法によれば、光学機能部10に固定された後の黒化処理が難しいコバ部20の内周面23については、成形型40によるプレス加工(成形ステップ)の前の第1黒化処理ステップで黒化処理を行い、コバ部20の内周面23以外の部分については、成形型40によるプレス加工(成形ステップ)後の第2黒化処理ステップで黒化処理を行うことにより、コバ部20の各部を確実に黒化処理でき、コバ部20の遮光性能に優れるレンズ1を得ることができる。
【0072】
また、第1黒化処理ステップと第2黒化処理ステップとで、黒化処理の手法や黒化の程度を異ならせて、それぞれに適した黒化の形態を得ることができ、コバ部20の各部位ごとにきめ細やかな遮光効果を設定することができる。
【0073】
例えば、コバ部20の内周面23については、光学機能部10を囲む光路の内面を構成しており、内面反射の抑制が特に重視される部位である。従って、第1黒化処理ステップにおいて、黒化用の層の厚みを大きくする、黒色度の高い黒化用材料を用いる、などの選択を行って、内周面23での迷光防止効果を向上させることが好ましい。
【0074】
コバ部20の前面部21や後面部22や外周面24については、鏡筒や他のレンズなどに対するレンズ1の位置決めに用いられる部位である。従って、第2黒化処理ステップにおいて、黒化用の層の厚みを小さくする、面精度に優れるタイプの黒化処理を選択する、などの選択を行ってコバ部20の外面の形状精度への影響を極力排除し、優れた位置決め精度を得ることが好ましい。
【0075】
本発明の製造方法は、上記実施形態のコバ部20の中間テーパ部20bのように、コバ部の内周面以外の箇所に非平坦部分を有するタイプのレンズに好適であるが、このタイプのレンズに限定されるものではなく、光軸方向の両側の外面全体が平坦な形状のコバ部を備えるレンズにも有用である。成形型40のような装置を用いてレンズをプレス成形する場合、プレス成形の際にコバ部に対して光軸方向への荷重が加わると、コバ部は径方向に延展される。コバ部の光軸方向の両側の外面が平坦形状である場合にも、径方向への延展に伴って当該外面に地金が露出しやすい状況になる。従って、プレス成形後にコバ部における平坦形状の前面部や平坦形状の後面部を黒化処理する第2黒化処理ステップを行うことにより、延展した後の前面部や後面部を確実に黒化させることができる。
【0076】
また、上記実施形態のレンズ1は、コバ部20が光軸方向の両側にテーパ面21bとテーパ面22bを有しているが、コバ部の光軸方向に向く両側の外面の一方にだけ非平坦部分を有し、光軸方向の他方の外面が平坦面のみで構成されるタイプのレンズについても、本発明の製造方法は有用である。
【0077】
上記実施形態のレンズ1は、非平坦部分としてテーパ面21bやテーパ面22bを備えているが、レンズのコバ部における非平坦部分の形状はこれに限定されない。例えば、コバ部の外面に凹部(溝)や突起や切り欠きを有する場合にも、こうした凹部や突起や切り欠きの箇所については、プレス成形後の第2黒化処理ステップでの黒化処理が適している。
【0078】
上記実施形態のコバ部20は、光軸X1を中心とする周方向に向けて一様な形状が連続する構成であるが、周方向の一部でコバ部の形状が異なっていてもよい。例えば、コバ部の周方向の一部にのみ、テーパ面、凹部、突起、切り欠きなどが存在してもよい。
【0079】
上記実施形態では、成形型40の内部に球体形状のガラスプリフォーム30を配置してプレス成形を行っているが、光学機能部の母材であるガラスプリフォームは球体形状に限定されるものではない。
【0080】
上記実施形態のレンズ1ではコバ部20の材質を金属としたが、本発明を適用して製造するレンズのコバ部の材質は金属以外を選択することも可能である。例えば、光学機能部を構成するガラスとは異なるガラスでコバ部を構成してもよい。あるいは、コバ部をセラミックスで構成してもよい。
【0081】
本発明の実施の形態は上記実施形態やその変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、本発明の技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、本発明の技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施形態をカバーしている。
【符号の説明】
【0082】
1 :レンズ
10 :光学機能部
11 :光学面
12 :光学面
13 :外周面
20 :コバ部(プレス成形後のコバ部)
20a :内側平坦部
20b :中間テーパ部
20c :外側平坦部
21 :前面部(光軸方向を向く外面)
21a :内側平坦面
21b :テーパ面(非平坦部分)
21c :外側平坦面
22 :後面部(光軸方向を向く外面)
22a :内側平坦面
22b :テーパ面(非平坦部分)
22c :外側平坦面
23 :内周面
24 :外周面
30 :ガラスプリフォーム
31 :環状部材(プレス成形前のコバ部)
32 :平坦面
33 :平坦面
34 :内周面
35 :外周面
36 :マスキング部
40 :成形型
41 :胴型
42 :下型
43 :上型
44 :光学形成面
45 :コバ部形成面
45a :内側平坦面
45b :テーパ面
45c :外側平坦面
46 :光学形成面
47 :コバ部形成面
47a :内側平坦面
47b :テーパ面
47c :外側平坦面
X1 :光軸
X2 :成形型の中心軸