(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147215
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】機能性飲料及びインスタント飲料用粉末組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 2/52 20060101AFI20241008BHJP
A23L 2/38 20210101ALI20241008BHJP
A23L 2/39 20060101ALI20241008BHJP
A23F 5/24 20060101ALI20241008BHJP
A23C 9/156 20060101ALI20241008BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20241008BHJP
【FI】
A23L2/00 F
A23L2/38 P
A23L2/00 Q
A23F5/24
A23C9/156
A23L33/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060084
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】橋本 高志
(72)【発明者】
【氏名】中村 厳海
(72)【発明者】
【氏名】山本 由紀
(72)【発明者】
【氏名】熊王 俊男
【テーマコード(参考)】
4B001
4B018
4B027
4B117
【Fターム(参考)】
4B001AC02
4B001AC03
4B001AC20
4B001AC43
4B001AC99
4B001EC05
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4B117LK01
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4B117LK18
4B117LL01
(57)【要約】
【課題】優れたカルシウム吸収促進作用を有する機能性飲料、及び当該機能性飲料を製造するためのインスタント飲料用粉末組成物の提供。
【解決手段】カルシウム吸収量の増大を目的として摂取される機能性飲料であって、カルシウムと、マンノースを主体とした単糖類が1~10分子結合したオリゴ糖類とを含有していることを特徴とする、機能性飲料、及び、可食性液体に溶解させることにより、カルシウム吸収量の増大を目的として摂取される機能性飲料を調製するためのインスタント飲料用粉末組成物であって、前記可食性液体が、カルシウムを含有する可食性液体であり、マンノースを主体とした単糖類が1~10分子結合したオリゴ糖類を含有していることを特徴とする、インスタント飲料用粉末組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルシウム吸収量の増大を目的として摂取される機能性飲料であって、
カルシウムと、マンノースを主体とした単糖類が1~10分子結合したオリゴ糖類とを含有していることを特徴とする、機能性飲料。
【請求項2】
牛乳を原料とする、請求項1に記載の機能性飲料。
【請求項3】
前記オリゴ糖類が、マンノース、グルコース、ガラクトース及びフルクトースからなる群より選択される1種以上の単糖類が1~10分子結合したものである、請求項1又は2に記載の機能性飲料。
【請求項4】
前記オリゴ糖類中のマンノース残基の割合が、70質量%以上である、請求項1又は2に記載の機能性飲料。
【請求項5】
前記オリゴ糖類中の各構成単糖がβ-1,4結合したオリゴ糖の含有割合が、50質量%以上である、請求項1又は2に記載の機能性飲料。
【請求項6】
前記オリゴ糖類が、マンナンを加水分解物である、請求項1又は2に記載の機能性飲料。
【請求項7】
前記マンナンが、コーヒー豆及び/又はコーヒー抽出残渣から得られるものである、請求項6に記載の機能性飲料。
【請求項8】
嗜好性飲料である、請求項1又は2に記載の機能性飲料。
【請求項9】
可食性液体に溶解させることにより、カルシウム吸収量の増大を目的として摂取される機能性飲料を調製するためのインスタント飲料用粉末組成物であって、
前記可食性液体が、カルシウムを含有する可食性液体であり、
マンノースを主体とした単糖類が1~10分子結合したオリゴ糖類を含有していることを特徴とする、インスタント飲料用粉末組成物。
【請求項10】
前記可食性液体が、牛乳である、請求項9に記載のインスタント飲料用粉末組成物。
【請求項11】
前記オリゴ糖類が、マンノース、グルコース、ガラクトース及びフルクトースからなる群より選択される1種以上の単糖類が1~10分子結合したものである、請求項9又は10に記載のインスタント飲料用粉末組成物。
【請求項12】
前記オリゴ糖類中のマンノース残基の割合が、70質量%以上である、請求項9又は10に記載のインスタント飲料用粉末組成物。
【請求項13】
前記オリゴ糖類中の各構成単糖がβ-1,4結合したオリゴ糖の含有割合が、50質量%以上である、請求項9又は10に記載のインスタント飲料用粉末組成物。
【請求項14】
前記オリゴ糖類が、マンナンを加水分解物である、請求項9又は10に記載のインスタント飲料用粉末組成物。
【請求項15】
前記マンナンが、コーヒー豆及び/又はコーヒー抽出残渣から得られるものである、請求項14に記載のインスタント飲料用粉末組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルシウムの吸収量の増大を目的として摂取される機能性飲料、及び当該機能性飲料を製造するためのインスタント飲料用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料の可溶性固形分を主要原料とするインスタント飲料用組成物は、一般的に粉末であって、水等の液体に溶解させることによりインスタント飲料を調製するものであり、近年、その手軽さから非常に人気が高い。例えば、インスタント飲料用組成物を牛乳に溶解させることにより、牛乳のコクや風味を有する飲料を手軽に調製できる。特に、最近では、ヨーグルト飲料などの酸性飲料を、牛乳に溶解させるだけで製造できるインスタント酸性飲料用粉末組成物の人気が高い。
【0003】
一方で、D-マンノースがβ-1,4結合した化合物であるβ-1,4マンノビオースなどのβ-1,4-マンノオリゴ糖の持つ生理機能が注目されている。また、人間の糖タンパク質の糖鎖の重要な部分構造にはD-マンノースがβ-1,4結合したマンノオリゴ糖が含まれており、飲食品原料としてのみならず、医薬品の原料としての応用も期待されている。例えば、マンノースを構成糖とするオリゴ糖類を経口摂取することにより、血清中の総コレステロールや中性脂肪の量が低下することが報告されている(例えば、特許文献1参照。)。また、高温加熱加水分解によりコーヒー豆及び/又はコーヒー抽出残渣から得られるオリゴ糖を60w/w%以上含有するマンノオリゴ糖を摂取することにより、骨中へのミネラル吸収が促進されることも報告されている(例えば、特許文献2)。さらに、マンノースを主体とした単糖類が1~10分子結合したオリゴ糖類を経口摂取することにより、肌の水分含量が増大することも報告されている(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-169256号公報
【特許文献2】特許第4851215号公報
【特許文献3】特開2015-189738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、優れたカルシウム吸収促進作用を有する機能性飲料、及び当該機能性飲料を製造するためのインスタント飲料用粉末組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、カルシウムを含有する飲料に、マンノースを主体とした単糖類が1~10分子結合したオリゴ糖類を含有させることによって、腸内でのカルシウム吸収促進作用に優れた機能性飲料が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
[1] カルシウム吸収量の増大を目的として摂取される機能性飲料であって、
カルシウムと、マンノースを主体とした単糖類が1~10分子結合したオリゴ糖類とを含有していることを特徴とする、機能性飲料。
[2] 牛乳を原料とする、前記[1]の機能性飲料。
[3] 前記オリゴ糖類が、マンノース、グルコース、ガラクトース及びフルクトースからなる群より選択される1種以上の単糖類が1~10分子結合したものである、前記[1]又は[2]の機能性飲料。
[4] 前記オリゴ糖類中のマンノース残基の割合が、70質量%以上である、前記[1]~[3]のいずれかの機能性飲料。
[5] 前記オリゴ糖類中の各構成単糖がβ-1,4結合したオリゴ糖の含有割合が、50質量%以上である、前記[1]~[4]のいずれかの機能性飲料。
[6] 前記オリゴ糖類が、マンナンを加水分解物である、前記[1]~[5]のいずれかの機能性飲料。
[7] 前記マンナンが、コーヒー豆及び/又はコーヒー抽出残渣から得られるものである、前記[6]の機能性飲料。
[8] 嗜好性飲料である、前記[1]~[7]のいずれかの機能性飲料。
[9] 可食性液体に溶解させることにより、カルシウム吸収量の増大を目的として摂取される機能性飲料を調製するためのインスタント飲料用粉末組成物であって、
前記可食性液体が、カルシウムを含有する可食性液体であり、
マンノースを主体とした単糖類が1~10分子結合したオリゴ糖類を含有していることを特徴とする、インスタント飲料用粉末組成物。
[10] 前記可食性液体が、牛乳である、前記[9]のインスタント飲料用粉末組成物。
[11] 前記オリゴ糖類が、マンノース、グルコース、ガラクトース及びフルクトースからなる群より選択される1種以上の単糖類が1~10分子結合したものである、前記[9]又は[10]のインスタント飲料用粉末組成物。
[12] 前記オリゴ糖類中のマンノース残基の割合が、70質量%以上である、前記[9]~[11]のいずれかのインスタント飲料用粉末組成物。
[13] 前記オリゴ糖類中の各構成単糖がβ-1,4結合したオリゴ糖の含有割合が、50質量%以上である、前記[9]~[12]のいずれかのインスタント飲料用粉末組成物。
[14] 前記オリゴ糖類が、マンナンを加水分解物である、前記[9]~[13]のいずれかのインスタント飲料用粉末組成物。
[15] 前記マンナンが、コーヒー豆及び/又はコーヒー抽出残渣から得られるものである、前記[14]のインスタント飲料用粉末組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、経口摂取することでカルシウム吸収量を増大させることができる機能性飲料、及び、当該機能性飲料を、牛乳のようなカルシウムを含有する可食性液体に溶解させることによって簡便に調製することができるインスタント飲料用粉末組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1において、試験区1-1および試験区1-2のミルクコーヒー飲料摂取時の尿中カルシウム量(mg/g Cr)の経時的変化(
図1(A))、及び、摂取前の尿中カルシウム量からの増加量(mg/g Cr)の経時的変化を(
図1(B))の測定結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明及び本願明細書において、「粉末」とは粉粒体(異なる大きさの分布をもつ多くの固体粒子からなり、個々の粒子間に、何らかの相互作用が働いているもの)を意味する。また、「顆粒」は粉末から造粒された粒子(顆粒状造粒物)の集合体である。粉末には、顆粒も含まれる。
【0011】
本発明及び本願明細書において、「インスタント飲料用粉末組成物」とは、水やミルク等の可食性液体に溶解又は分散させることによって飲料を調製し得る粉末状の組成物を意味する。
【0012】
本発明及び本願明細書において、「マンノースを主体としたオリゴ糖類」とは、単糖であるマンノースを主たる構成要素とするオリゴ糖類を意味する。ここで「オリゴ糖類」なる語は、一般に単糖類と多糖類との間に位し、一定の小数量の単糖類分子のグリコシル結合からなる物質を指す。すなわち、結合している単糖の数が比較的少ないポリマーのことである。「オリゴ糖『類』」という場合、構成単糖の種類や数が様々である複数のオリゴ糖が含まれる組成物であることを意味する。「マンノースを主体としたオリゴ糖『類』」という場合は、オリゴ糖類のうち、特に、組成物全体の構成単糖に占めるマンノースの割合が50%以上である組成物を指す。本発明及び本願明細書において「マンノオリゴ糖類」の語は、「マンノースを主体としたオリゴ糖類」の語と同様の意味において用いられる。
【0013】
本発明及び本願明細書において、オリゴ糖類の重合度を表すために「DP」と記載することがある。DPとは、オリゴ糖類を構成している単糖の数を意味する。すなわち単糖であるマンノースは「DP1」と表され、4つのマンノースから構成されたマンノオリゴ糖は重合度4、すなわち「DP4」と表される。学術的観点からは、重合度1(DP1)の糖は単糖であって、オリゴ糖ではない。しかし、本発明に用いるオリゴ糖類(組成物)中には、単糖が含まれる場合があるので、本願明細書においてはこのような場合であっても総称して「オリゴ糖類」と呼ぶものとする。すなわち、「1以上10分子以下の、マンノースを主体とした単糖類が結合した、マンノースを主体としたオリゴ糖類」という場合には、この糖組成物中に重合度1の単糖も含まれている場合があると理解されたい。
【0014】
本発明及び本願明細書において、「動物性ミルク」とは、哺乳動物の乳を意味する。動物性ミルクには、牛乳、山羊乳、羊乳、馬乳等が挙げられる。動物性ミルクには、全粉乳、脱脂粉乳、ホエイパウダー、牛乳、低脂肪乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖練乳、加糖練乳、無糖脱脂練乳、加糖脱脂練乳、乳糖、生クリーム、バター等も含まれる。なお、全粉乳及び脱脂粉乳は、それぞれ、牛乳(全脂乳)又は脱脂乳を、スプレードライ等により水分を除去して乾燥し粉末化したものである。
【0015】
本発明及び本願明細書において、「植物性ミルク」とは、豆やナッツ、穀物等の植物に由来する原料から、タンパク質や脂肪分を含む成分を水で抽出することによって得られる液体を意味する。植物性ミルクには、豆乳、ピーナッツミルク、アーモンドミルク、カシューナッツミルク、マカダミアナッツミルク、クルミミルク、ココナッツミルク、ライスミルク、オーツミルク、コーンミルク等が挙げられる。
【0016】
本発明及び本願明細書において、「ミルク」とは、動物性ミルクと植物性ミルクの総称である。
【0017】
<機能性飲料>
本発明に係る機能性飲料は、腸内におけるカルシウム吸収量を増大させる機能を有する飲料である。本発明に係る機能性飲料は、有効成分として、マンノースを主体とした単糖類が1~10分子結合したオリゴ糖類(マンノオリゴ糖類)を含有する。マンノオリゴ糖類の摂取によりカルシウム吸収量の増大効果が得られる理由は明らかではないが、以下のように推定される。経口摂取されたマンノオリゴ糖類は、小腸下部まで到達し、ビフィズス菌や乳酸菌などの腸内細菌に資化され、短鎖脂肪酸産生を誘導する。産生された短鎖脂肪酸により、腸内のpHが低下する結果、腸内の内容物中のカルシウムの溶解が促進され、体内への吸収が促進されると推察される。
【0018】
本発明に係る機能性飲料が含有するマンノオリゴ糖類は、マンノースを主体とした単糖類が1~10分子結合したオリゴ糖類である。本発明に係る機能性飲料が含有するマンノオリゴ糖類としては、構成単糖がマンノース、グルコース、ガラクトース及びフルクトースからなる群より選択される1種以上の単糖が1~10分子結合したオリゴ糖が複数種類含まれており、かつ構成単糖全体に占めるマンノースの割合が50%以上であるオリゴ糖類(組成物)が好ましく、構成単糖がマンノース及びフルクトースからなる群より選択される1種以上の単糖が1~10分子結合したオリゴ糖が複数種類含まれており、かつ構成単糖全体に占めるマンノースの割合が50%以上であるオリゴ糖類(組成物)がより好ましい。
【0019】
本発明に係る機能性飲料が含有するマンノオリゴ糖類としては、オリゴ糖類中のマンノース残基の割合(構成単糖全体に占めるマンノースの割合)が、70質量%以上であるオリゴ糖類(組成物)が好ましく、80質量%以上であるオリゴ糖類がより好ましく、90質量%以上であるオリゴ糖類がさらに好ましい。マンノース残基の割合が充分に高いことにより、マンノオリゴ糖による整腸作用をより効果的に得ることができ、また、グルコース等の他の単糖類の含有割合が比較的低いことにより、呈味への影響を抑えることができる。
【0020】
本発明に係る機能性飲料が含有するマンノオリゴ糖類としては、単糖のマンノース由来の苦味を抑えることができるため、遊離のマンノース含量が50質量%以下に抑えられたものが好ましい。また、当該マンノオリゴ糖類としては、2~9分子の単糖類が結合したオリゴ糖の含量が多いものが好ましく、2~6分子の単糖類が結合したオリゴ糖の含量が多いものがより好ましい。また、当該マンノオリゴ糖類としては、各構成単糖がβ-1,4結合したオリゴ糖の含有割合が50質量%以上であるものが好ましい。
【0021】
本発明において用いられるマンノオリゴ糖類としては、構成単糖がマンノースのみからなる(マンノースのみを構成単位とする)マンノオリゴ糖類、すなわち、マンノースが1~10分子結合したオリゴ糖類であることも好ましい。この場合には、マンノースが1~10分子結合したβ-1,4-マンノオリゴ糖類であることがより好ましい。
【0022】
本発明において用いられるマンノオリゴ糖類としては、マンナンを加水分解処理することによって得られるものが好ましい。なお、本発明及び本願明細書において、単に「マンナン」という場合は、D-マンノースのみを構成単位とする多糖であるマンナンの他、マンノースとガラクトース又はグルコースと構成単位とした多糖であるガラクトマンナン、グルコマンナンも広義に含めるものとする。D-マンノースはアルドヘキソースであり、D-グルコース中のカルボキシル基に隣接する炭素に結合している水酸基の立体配置が逆になっているものである。
【0023】
ここで、原料のマンナンは、例えばココナッツ椰子から得られるコプラミール、フーク、南アフリカ産椰子科植物HuacraPalm、ツクネイモマンナン、ヤマイモマンナンより抽出することにより得ることができる。このように得たマンナンを、酸加水分解、高温加熱加水分解、酵素加水分解、微生物発酵の中から選択される1種又は2種以上の方法で処理し、好ましくは活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理、イオン交換膜処理等の方法で精製して、糖混合物を得ることができる。かかる当混合物中には、上述したマンノオリゴ糖類が含まれている。したがって、このようにして得た組成物は、本発明に係る機能性飲料の構成成分として用いられる。さらに、マンノオリゴ糖類は、コンニャクイモ、ユリ、スイセン、ヒガンバナ等に含まれるグルコマンナン、ローカストビーンガム、グアーガム等に含まれるガラクトマンナンを酸加水分解、高温加熱加水分解、酵素加水分解、微生物発酵の中から選択される1種又は2種以上の方法で処理し、活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理、イオン交換膜処理等の方法で分離精製し構成糖としてマンノースの比率を高めることにより製造したものであってもよい。
【0024】
本発明において用いられるマンノオリゴ糖類としては、コーヒー生豆又は焙煎したコーヒー豆を酸加水分解、高温加熱加水分解、酵素加水分解、微生物発酵の中から選択される1種又は2種以上の方法で処理し、活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理、イオン交換膜処理等の方法で精製することによって得ることができる。あるいは、使用済みコーヒー残渣を酸加水分解、高温加熱加水分解、酵素加水分解、微生物発酵の中から選択される1種又は2種以上の方法で処理し、活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理、イオン交換膜処理等の方法で精製することによって得ることも可能である。一般に、焙煎粉砕コーヒーを商業用の抽出器にて抽出すると、その際に焙煎コーヒーに含まれるガラクトマンナンの側鎖であるガラクトースが可溶化したり、アラビノガラクタンが加水分解によって可溶化する。従って、コーヒー残渣中にはマンナンが豊富であり、しかも直鎖構造をとっているものと推定される。一方、セルロースは分解されにくく残渣として残っているが、セルロースを分解せずにマンナンを特異的に加水分解する条件を適宜選択することにより、マンノースを主体とするオリゴ糖を得ることができる。
【0025】
特にコーヒー抽出残渣を分解する方法としては、酸及び/又は高温により加水分解する方法、酵素により分解する方法、微生物発酵により分解する方法が挙げられるが、これらに限定されない。酸及び/又は高温により加水分解する方法としては特開昭61-96947号公報、特開平2-200147号公報等に開示されている。商業用のコーヒー多段式抽出系において出てくる使用済みコーヒー残渣を反応容器中において酸触媒を添加して加水分解することもでき、酸触媒を添加せずに高温で短時間処理して加水分解することによっても得ることができる。管形栓流反応器を使用する方法が便利であるが、比較的高温で短時間の反応を行わせる方法に向いているものであれば、いかなる反応器を使用しても良好な結果が得られる。反応時間と反応温度を調節し、可溶化して加水分解させることによってDP10~40のマンナンをDP1~10のマンノオリゴ糖に分解し、その後コーヒー残渣と分離してマンノオリゴ糖類を得ることができる。なお、ここでコーヒー抽出残査とは、大気中あるいは加圧条件下で焙煎粉砕コーヒーを水などの溶媒で抽出した後の、いわゆるコーヒー抽出粕を意味する。
【0026】
マンノオリゴ糖類として、コーヒー豆(焙煎コーヒー豆、及び焙煎粉砕コーヒー豆を含む。)及び/又はコーヒー抽出残渣の加水分解処理により得られたものを用いる場合、使用するコーヒー豆の種類や産地に特に制限はなく、アラビカ種、ロバスタ種、リベリカ種等いずれのコーヒー豆でもよく、さらにブラジル、コロンビア産等いずれの産地のコーヒー豆も使用することができ、1種類の豆のみを単独で使用してもよく、ブレンドした2種以上の豆を使用してもよい。通常、商品価値がないとして廃棄処分されるような品質の悪いコーヒー豆又は小粒のコーヒー豆であっても使用することができる。上記コーヒー豆を一般的に用いられている焙煎機(直火、熱風、遠赤、炭火式など)による極浅炒り、浅炒り、中炒り、深炒りに焙煎したコーヒー豆、及びこの焙煎コーヒー豆を、一般的な粉砕機、ロールミルなどを用いて粉砕することにより得た、焙煎粉砕コーヒー(粗挽き、中粗挽き、中挽き、中細挽き、細挽きなどの種々の形状のものを含む)を用いることもできる。
【0027】
また、コーヒー抽出残渣としては、通常の液体コーヒーあるいはインスタントコーヒー製造工程において、焙煎粉砕コーヒーを抽出処理した後のものであれば、常圧下、加圧下抽出であろうと、またいかなる起源、製法のコーヒー抽出残渣であっても使用することができる。
【0028】
ここで、上記加水分解処理について、いくつか詳細に説明する。酵素により分解する方法としては、例えばコーヒー抽出残渣を水性媒体に懸濁させ、ここへ、例えば市販のセルラーゼ及びヘミセルラーゼ等を加えて撹拌しながら懸濁させればよい。酵素の量、作用させる温度及びその他の条件としては、通常の酵素反応に用いられる量、温度、条件であれば特に問題はなく、使用する酵素の最適作用量、温度、条件及びその他の要因によって適宜選択すればよい。
微生物発酵により分解する方法としては、例えば水性媒体に懸濁させたコーヒー抽出残渣にセルラーゼ、ヘミセルラーゼなどを産出する微生物を植菌して培養させればよい。使用する微生物は、細菌類や担子菌類などコーヒー抽出残渣中のマンナンを分解する酵素を産出するものであれば良く、使用する微生物によって培養条件などは適宜選択すればよい。
【0029】
上記の方法によって得られたマンノオリゴ糖類を含む反応液は、必要に応じて精製することができる。精製法としては、骨炭、活性炭、炭酸飽充法、吸着樹脂、マグネシア法、溶剤抽出法等で脱色・脱臭を行い、イオン交換樹脂、イオン交換膜、電気透析等で脱塩、脱酸を行うことが挙げられる。精製法の組み合わせ及び精製条件としては、マンノースを主体とするオリゴ糖類を含む反応液中の色素、塩、及び酸等の量や、その他の要因に応じて適宜選択すればよい。
【0030】
本発明において用いられるマンノオリゴ糖類は、本発明に係る機能性飲料の原料として使用される前に、予め必要に応じて活性炭、イオン交換樹脂、溶剤等で脱色、脱臭、脱酸等の精製処理や前処理をしておいてもよい。
【0031】
本発明に係る機能性飲料のマンノオリゴ糖類の含有量としては、特に限定されるものではない。本発明に係る機能性飲料としては、飲料の固形分全量に対するマンノオリゴ糖類の含有比率が、0.1~20質量%が好ましく、1.0~15質量%がより好ましく、5.0~15質量%がさらに好ましい。
【0032】
飲料中のマンノオリゴ糖類の含有量は、例えば、高速液体クロマトグラフ(HPLC)法により測定することができる。
【0033】
本発明に係る機能性飲料は、マンノオリゴ糖に加えて、カルシウムを含有する。マンノオリゴ糖とカルシウムを同時に接種することにより、マンノオリゴ糖によるカルシウム吸収量増大効果がより効率よく発揮される。本発明に係る機能性飲料の飲料全量に対するカルシウム量含有としては、特に限定されるものではなく、例えば、10mg/100mL以上とすることができ、25mg/100mL以上が好ましく、50mg/100mL以上がより好ましい。飲料中のカルシウム含有量は、例えば、原子吸光分析法や誘導結合プラズマ発光分光分析法等の常法により測定することができる。
【0034】
本発明に係る機能性飲料は、原料として動物性ミルクを含有することが好ましい。動物性ミルクには、カルシウムが比較的多量に含まれているためである。本発明に係る機能性飲料としては、中でも、牛乳を含有することが特に好ましい。牛乳に含まれているカルシウムは、吸収性が良好である。
【0035】
本発明に係る機能性飲料は、原料としてカルシウム塩を用いて調製されてもよい。例えば、豆乳等の比較的カルシウム含有量が少ない植物性ミルクにカルシウム塩を添加したカルシウム強化植物性ミルクを原料とすることによっても、十分量のカルシウムとマンノオリゴ糖類を含有する機能性飲料を調製することができる。
【0036】
本発明に係る機能性飲料は、マンノオリゴ糖類によるカルシウム吸収量増大効果を損なわない限度において、カルシウムとマンノオリゴ糖類に加えて、その他の成分を含有させることもできる。これらの他の成分としては、例えば、嗜好性飲料の固形分、ミルク、クリーミングパウダー(クリームの代用として、コーヒー等の嗜好性飲料に添加される粉末)、甘味料、酸味料、乳化剤、増粘剤、pH調整剤、賦形剤、酸化防止剤、流動性改良剤、塩類(ミネラル)、果汁、香料、乳酸菌等が挙げられる。
【0037】
本発明及び本願明細書において、「嗜好性飲料」とは、コーヒー;紅茶、緑茶、抹茶、ウーロン茶等の茶飲料;ハーブティー、ココア、又はこれらの混合飲料を意味する。ハーブティーの原料としては、ハイビスカス、ローズヒップ、ペパーミント、カモミール、レモングラス、レモンバーム、ラベンダー等が挙げられる。
【0038】
本発明に係る機能性飲料に嗜好性飲料の固形分を含有させることにより、当該嗜好性飲料の固形分と同種の嗜好性飲料からなる機能性飲料を調製できる。本発明に係る機能性飲料が含有する嗜好性飲料の固形分には、嗜好性飲料の非可溶性固形分と嗜好性飲料の可溶性固形分の両方が含まれる。嗜好性飲料の非可溶性固形分としては、ココアや抹茶粉末のような、水に非可溶性の固形分であって、水等の可食性液体に分散させることで嗜好性飲料が調製できるものが挙げられる。
【0039】
嗜好性飲料の可溶性固形分は、焙煎されたコーヒー豆や茶葉等の嗜好性原料から抽出された可溶性の固形分であり、粉末の可溶性固形分としては、具体的には、可溶性コーヒー固形分粉末(インスタントコーヒー粉末)、可溶性紅茶固形分粉末(インスタント紅茶粉末、以下同様)、インスタント緑茶粉末、インスタントウーロン茶粉末、インスタントハーブティー粉末、及びこれらのうちの2種類以上の混合粉末等が挙げられる。
【0040】
嗜好性飲料の粉末の可溶性固形分は、常法により製造することができ、また、市販されているものを用いてもよい。例えば、インスタントコーヒー粉末は、焙煎したコーヒー豆から熱水を用いて可溶性の固形分を抽出し、得られた抽出物を乾燥することにより得られる。また、茶飲料の粉末状の可溶性固形分は、紅茶葉、緑茶葉(生茶葉)、ウーロン茶葉等の茶葉から熱水を用いて可溶性の固形分を抽出し、得られた抽出物を乾燥することにより得られる。インスタントハーブティー粉末は、ハーブの原料から熱水を用いて可溶性の固形分を抽出し、得られた抽出物を乾燥することにより得られる。コーヒー豆や茶葉等の嗜好性飲料の原料としては、一般的に嗜好性飲料に使用されているものを用いることができる。得られた抽出物の乾燥方法としては、凍結乾燥、噴霧乾燥、真空乾燥等が挙げられる。また、茶葉やコーヒー豆からの抽出物は、乾燥前に、必要に応じて濃縮してもよい。当該濃縮方法としては、熱濃縮方法、冷凍濃縮方法、逆浸透膜や限外濾過膜等を用いた膜濃縮方法等の汎用されている濃縮方法により行うことができる。
【0041】
本発明に係る機能性飲料に含有させるクリーミングパウダーとしては、常法により製造されたものを用いることができる。クリーミングパウダーは、例えば、ヤシ油、硬化ヤシ油、パーム油、水添パーム油、パーム核油、水添パーム核油、大豆油、コーン油、綿実油、ナタネ油、こめ油、サフラワー油(ベニバナ油)、ひまわり油、中鎖脂肪酸トリグリセライド、乳脂、牛脂、豚脂等の食用油脂;シヨ糖、グルコース、澱粉加水分解物等の糖質;カゼインナトリウム、第二リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、脱脂粉乳、乳化剤等のその他の原料等を、望まれる品質特性に応じて選択し、これらの原料を水中で混合し、次いで乳化機等で水中油型乳化液(O/Wエマルション)とした後、水分を除去することによって製造することができる。水分を除去する方法としては、噴霧乾燥、噴霧凍結、凍結乾燥、凍結粉砕、押し出し造粒法等、任意の方法を選択して行うことができる。得られたクリーミングパウダーは、必要に応じて、分級、造粒及び粉砕等を行ってもよい。
【0042】
本発明に係る機能性飲料に含有される甘味料としては、飲食品に添加可能なものであれば特に限定されるものではなく、当該機能性飲料の目的とする製品品質を考慮して適宜選択して用いることができる。本発明に係る機能性飲料に含有される甘味料としては、具体的には、砂糖、ショ糖型液糖、オリゴ糖、ブドウ糖果糖液糖等の糖類;エリスリトール、トレハロース、ソルビトール、還元水あめ等の糖アルコール;アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、ステビア等の高甘味度甘味料等が挙げられる。砂糖としては、グラニュー糖、上白糖であってもよく粉糖であってもよい。本発明に係る機能性飲料に含有させる甘味料は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
【0043】
本発明に係る機能性飲料に含有される酸味料としては、飲食品に汎用されている有機酸やリン酸が挙げられる。当該有機酸としては、飲食品に使用される有機酸であれば、特に限定されるものではない。また、本発明に係る機能性飲料に含有させる有機酸は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。飲食品に使用される有機酸としては、例えば、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、酢酸、酒石酸、グルコン酸、グルコノデルタラクトン、フィチン酸、アジピン酸、アスコルビン酸等が挙げられ、クエン酸、リンゴ酸、及び乳酸からなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
【0044】
本発明に係る機能性飲料に含有される乳化剤としては、飲食品に添加可能なものであれば特に限定されるものではないが、水に溶解しやすいものが好ましく、例えば、食品用乳化剤のうち親水性乳化剤の中から適宜選択して用いることができる。親水性乳化剤としては、例えば、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、酵素分解レシチン、有機酸モノグリセリド等の中から適宜選択して用いることができる。本発明に係る機能性飲料に含有させる乳化剤は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
【0045】
本発明に係る機能性飲料に含有される増粘剤としては、飲食品に添加可能なものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ペクチン、キサンタンガム、大豆食物繊維(可溶性大豆多糖類)、ポリデキストロース、難消化性デキストリン、ガラクトマンナン、イヌリン、グアーガム、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース(CMC)等の水溶性食物繊維が挙げられる。本発明に係る機能性飲料に含有させる増粘剤は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
【0046】
本発明に係る機能性飲料に含有されるpH調整剤としては、飲食品に添加可能なものであれば特に限定されるものではないが、有機酸のナトリウム塩、有機酸のカリウム塩、無機酸のナトリウム塩、無機酸のカリウム塩等を用いることができる。中でも、クエン酸、グルコン酸、コハク酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、リン酸、炭酸のナトリウム塩及びカリウム塩が好ましい。本発明に係る機能性飲料に含有させるpH調整剤は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
【0047】
本発明に係る機能性飲料に含有される賦形剤としては、例えば、澱粉、澱粉分解物、糖類、食物繊維等が挙げられる。澱粉としては、タピオカ澱粉、モチゴメ澱粉、コメ澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、コーン澱粉、ワキシーコーン澱粉、サトイモ澱粉、サゴ澱粉等の可食性の澱粉が挙げられ、これらの澱粉をヒドロキシプロピル化、アセチル化、リン酸モノエステル化等の加工処理や架橋処理を施したものであってもよい。澱粉分解物としては、粉あめ、水あめ、デキストリン等が挙げられる。糖類としては、乳糖、麦芽糖、ショ糖(砂糖)、トレハロース、オリゴ糖等が挙げられる。食物繊維としては、難消化性デキストリン、セルロース等が挙げられる。本発明に係る機能性飲料に含有させる賦形剤は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
【0048】
デキストリンは、澱粉を酵素反応又は酸処理により分解して低分子化したものである。低分子化の度合いは、DE(Dextrose Equivalent)値で表される。本発明において用いられるデキストリンとしては、DE値が低く、比較的甘味の少ないものであってもよく、DE値が高く、比較的甘味の強いものであってもよい。
【0049】
本発明に係る機能性飲料に含有される酸化防止剤としては、例えば、ビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンE(トコフェロール)、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)、BHA(ブチルヒドロキシアニソール)、エリソルビン酸ナトリウム、没食子酸プロピル、亜硫酸ナトリウム、二酸化硫黄、クロロゲン酸、カテキン等が挙げられる。本発明に係る機能性飲料に含有させる酸化防止剤は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
【0050】
本発明に係る機能性飲料に含有される流動性改良剤としては、微粒酸化ケイ素、第三リン酸カルシウム等の加工用製剤が挙げられる。流動性改良剤をさらに含有することにより、本発明に係るインスタント酸性飲料用粉末組成物の固化耐性がより向上する。本発明に係る機能性飲料に含有させる流動性改良剤は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
【0051】
本発明に係る機能性飲料に含有される果汁は、粉末状であってもよく、液状であってもよい。粉末果汁としては、100%果汁の凍結乾燥品、真空乾燥品、又は噴霧乾燥品でもよく、デキストリン等の固体担体と共に乾燥することによって、当該固体担体に固定化されたものでもよい。固体担体としてデキストリンを用いる場合、低DE値であるデキストリンを用いることが好ましい。液状の果汁としては、果物から圧搾した果汁そのものであってもよく、濃縮果汁であってもよい。
【0052】
本発明に係る機能性飲料に含有される香料としては、当該機能性飲料の目的とする製品品質を考慮して、飲食品に配合可能な香料の中から適宜選択して用いることができる。例えば、本発明に係る機能性飲料が嗜好性飲料の場合、当該嗜好性飲料のフレーバーを用いることにより、より嗜好性を高めることができる。また、ヨーグルトフレーバーを用いることにより、ヨーグルト風味の機能性飲料を製造することができる。シトラスフレーバー、アップルフレーバー、ピーチフレーバー等の果物の香りの香料を用いることにより、果物の香りのする機能性飲料を製造することができる。
【0053】
本発明に係る機能性飲料は、各種の飲料に、マンノオリゴ糖を添加することによって調製することもできる。その際、必要に応じて、カルシウム塩を添加することも好ましい。例えば、牛乳を原料として調製されたミルク入りコーヒー飲料に、マンノオリゴ糖を添加したり、豆乳にインスタントコーヒー粉末を溶解させたコーヒー風味豆乳飲料に、マンノオリゴ糖とカルシウム塩を添加することにより、本発明に係る機能性飲料が得られる。
【0054】
本発明に係る機能性飲料は、原料としてマンノオリゴ糖類を使用する以外は、一般的な飲料と同様にして製造することができる。本発明に係る機能性飲料は、例えば、可食性液体に、マンノオリゴ糖類を含むその他の原料を添加して全て溶解又は懸濁させることにより、調製できる。当該可食性液体は、水、ミルク、炭酸水等を用いることができる。全ての原料を含有させて調製された機能性飲料は、容器に充填したり、各種の滅菌処理を施すことができる。
【0055】
<インスタント飲料用粉末組成物>
本発明に係るインスタント飲料用粉末組成物は、可食性液体に溶解させることにより、カルシウム吸収量の増大を目的として摂取される機能性飲料を調製するためのインスタント飲料用粉末組成物であって、前記可食性液体が、カルシウムを含有する可食性液体であり、マンノオリゴ糖類を含有していることを特徴とする。
【0056】
本発明に係るインスタント飲料用粉末組成物を溶解させる可食性液体としては、カルシウムを含有する可食性液体であれば、特に限定されるものではないが、動物性ミルクが好ましく、牛乳が特に好ましい。また、豆乳等の植物性ミルクにカルシウム塩を添加したカルシウム強化植物性ミルクも、当該可食性液体として好ましく用いられる。
【0057】
本発明に係るインスタント飲料用粉末組成物は、マンノオリゴ糖類を含有している。当該マンノオリゴ糖類としては、前記の本発明に係る機能性飲料に含有させるマンノオリゴ糖類と同様のものを用いることができる。本発明に係るインスタント飲料用粉末組成物のマンノオリゴ糖類の含有量としては、当該インスタント飲料用粉末組成物から調製される飲料のマンノオリゴ糖類の含有量がマンノオリゴ糖類によるカルシウム吸収量増大効果が発揮される程度に十分な濃度にできる含有量であれば、特に限定されるものではない。本発明に係るインスタント飲料用粉末組成物としては、組成物全体に対するマンノオリゴ糖類の含有比率は、0.1~20質量%が好ましく、1.0~15質量%がより好ましく、5.0~15質量%がさらに好ましい。
【0058】
本発明に係るインスタント飲料用粉末組成物は、発明の効果を損なわない限度において、さらに、その他の成分を含有していてもよい。当該その他の成分としては、例えば、嗜好性飲料の固形分、ミルク、クリーミングパウダー(クリームの代用として、コーヒー等の嗜好性飲料に添加される粉末)、甘味料、酸味料、乳化剤、増粘剤、pH調整剤、賦形剤、酸化防止剤、流動性改良剤、塩類(ミネラル)、果汁、香料、乳酸菌等が挙げられる。これらの成分としては、前記の本発明に係る機能性飲料に含有させる成分と同様のものを用いることができる。
【0059】
本発明に係るインスタント酸性飲料用粉末組成物は、原料としてマンノオリゴ糖類を用いる以外は、他のインスタント飲料を製造するための粉末状組成物と同様にして製造できる。具体的には、原料を混合して粉末組成物を調製する。混合の順番は特に限定されるものではなく、全ての原料を同時に混合してもよく、順次混合させてもよい。例えば、全ての原料が粉末の場合には、全ての原料をそのまま混合することによって、インスタント飲料用粉末組成物が製造される。また、粉末原料と液状の原料を用いる場合、粉末の原料を全て予め混合し、得られた混合粉末を造粒核とし、これに、液状の原料の混合液をバインダー液として噴霧して造粒させた後に乾燥させることによって、インスタント飲料用粉末組成物が製造される。当該造粒は、流動層造粒、転動造粒、押出造粒する等公知の湿式造粒法を使用することができる。例えば流動層造粒は、市販されている流動層造粒装置を使用して常法により行うことができる。
【0060】
本発明に係るインスタント飲料用粉末組成物は、飲用1杯分を小パウチなどに個包装したり、使用時に容器から振り出したりスプーンで取り出したりして使用するように瓶などの容器に数杯分をまとめて包装して商品として供給することもできる。個包装タイプとは、スティック状アルミパウチ、ワンポーションカップなどに飲料1杯分の中身を充填包装するものであり、容器を開けて指で押し出すなどの方法で中身を取り出すことができる。個包装タイプは、1杯分が密閉包装されているので取り扱いも簡単で、衛生的であるという利点を有する。
【実施例0061】
次に、実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例等に限定されるものではない。なお、以降の実施例において、特に記載のない限り、「%」は「質量%」を意味する。
【0062】
[実施例1]
マンノオリゴ糖類を含有させたコーヒー飲料のカルシウム吸収量に対する影響を調べた。
【0063】
まず、表1に記載の組成からなる粉末組成物を調製した。マンノオリゴ糖としては「コーヒー豆マンノオリゴ糖」(味の素AGF社製)(以下、「MOS」と称することがある)、クリーミングパウダーを用いた。
【0064】
【0065】
各粉末組成物7.2gを、150mLの市販の牛乳に溶かして、ミルクコーヒー飲料を調製した。健康な成人(20歳以上70歳未満:年齢均等)の女性20名を10名ずつ2つの群(第1群および第2群)に分け、各群の被験者に、表2に記載のスケジュールで、調製された試験区1-1および試験区1-2のミルクコーヒー飲料のいずれかを1日1回摂取させた。表中、「休止期」は、いずれのミルクコーヒー飲料も摂取しなかった期間である。
【0066】
【0067】
各被験者は、試験区1-1および試験区1-2のミルクコーヒー飲料の摂取直前(摂取前)と、摂取した時点から2、4、6、及び8時間後に、尿と血液を採取し、尿中のカルシウム量、DPD(デオキシピリジノリン)量、NTx(I型コラーゲン架橋N-テロペプチド)量、及びクレアチニン量を測定した。各測定は、臨床検査と同様の手法で行った。尿中カルシウム量、尿中DPD量、及び尿中NTx量は、いずれも尿中クレアチニン(Cr)量で補正した。
【0068】
第1群の第1週目と、第2群の第3週目を「試験区1-1摂取群」とし、第1群の第3週目と、第2群の第1週目を、「試験区1-2摂取群」とした。各群の尿中カルシウム量(mg/g Cr)(平均値±標準誤差)を求めた。
【0069】
試験区1-1および試験区1-2のミルクコーヒー飲料摂取時の尿中カルシウム量(mg/g Cr)の経時的変化を、
図1(A)に示す。また、摂取前の尿中カルシウム量からの増加量(mg/g Cr)の経時的変化を、
図1(B)に示す。試験区1-2のミルクコーヒーを摂取させた場合には、試験区1-1のミルクコーヒーを摂取させた場合に比べて、ミルクコーヒー飲料摂取から2時間後の尿中カルシウム量が有意に増大していた(
図1(A))。また、試験区1-2のミルクコーヒーを摂取させた場合は、試験区1-1のミルクコーヒーを摂取させた場合に比べて、ミルクコーヒー飲料摂取から2時間後の尿中カルシウム量の増加量が有意に増大していた(
図1(B))。
【0070】
試験区1-1摂取群および試験区1-2摂取群について、AUC(Area under the curve)から尿中カルシウム総量を算出し、群間比較を行った。算出結果を表3に示す。この結果、尿中カルシウム総量は、試験区1-2摂取群では、試験区1-1摂取群に比べて有意に増加していた。
【0071】
【0072】
また、骨吸収マーカー(骨からのカルシウムの溶出)である尿中DPD総量と尿中NTx総量、及び尿量について、試験区1-1摂取群および試験区1-2摂取群で群間比較を行った。測定結果を表4に示す。表4に示すように、各摂取群で有意差は観察されなかった。骨吸収マーカーの経時的変化に有意差がなかったことから、骨からのカルシウムの溶出は、各群で差がないことが確認された。
【0073】
【0074】
表4に示すように、試験区1-2摂取群で観察された摂取から2時間後の尿中カルシウム量の増加は、骨からのカルシウムの溶出によるものではなかったことから、試験区1-2摂取群で観察された尿中カルシウム量の増大は、小腸からのカルシウム吸収が促進されて血中カルシウム濃度が上昇したことによるものであると推察された。