IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 味の素株式会社の特許一覧

特開2024-147216酸性飲料及びインスタント酸性飲料用粉末組成物
<>
  • 特開-酸性飲料及びインスタント酸性飲料用粉末組成物 図1
  • 特開-酸性飲料及びインスタント酸性飲料用粉末組成物 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147216
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】酸性飲料及びインスタント酸性飲料用粉末組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/52 20060101AFI20241008BHJP
   A23L 2/39 20060101ALI20241008BHJP
   A23L 2/38 20210101ALI20241008BHJP
   A23L 33/125 20160101ALI20241008BHJP
   A23L 29/231 20160101ALI20241008BHJP
   A23L 29/269 20160101ALI20241008BHJP
【FI】
A23L2/00 E
A23L2/00 F
A23L2/52
A23L2/00 Q
A23L2/38 P
A23L2/38 D
A23L33/125
A23L29/231
A23L29/269
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060085
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】橋本 高志
(72)【発明者】
【氏名】中村 厳海
(72)【発明者】
【氏名】山本 由紀
(72)【発明者】
【氏名】熊王 俊男
【テーマコード(参考)】
4B018
4B041
4B117
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018MD09
4B018MD36
4B018MD37
4B018MD39
4B018MD71
4B018ME11
4B018ME14
4B018MF02
4B041LC10
4B041LD10
4B041LH04
4B041LH05
4B041LH16
4B041LK01
4B041LK07
4B041LK09
4B041LK11
4B041LK21
4B041LK37
4B041LK50
4B117LC04
4B117LE01
4B117LK08
4B117LK11
4B117LK13
4B117LK18
4B117LL01
(57)【要約】
【課題】優れた整腸作用を有する酸性飲料、及び当該酸性飲料を製造するためのインスタント酸性飲料用粉末組成物の提供。
【解決手段】タンパク質を含有する可食性液体に溶解させることにより酸性飲料を調製するためのインスタント酸性飲料用粉末組成物であって、増粘剤を含有しており、前記インスタント酸性飲料用粉末組成物を前記可食性液体に溶解させることにより調製される酸性飲料の粘度が、8.0mPa/s以上であることを特徴とする、インスタント酸性飲料用粉末組成物、及び、便通状態の改善を目的として摂取される酸性飲料であって、増粘剤を含有し、飲料の粘度が、8.0mPa/s以上である、酸性飲料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質を含有する可食性液体に溶解させることにより酸性飲料を調製するためのインスタント酸性飲料用粉末組成物であって、
増粘剤を含有しており、
前記インスタント酸性飲料用粉末組成物を前記可食性液体に溶解させることにより調製される酸性飲料の粘度が、8.0mPa/s以上であることを特徴とする、インスタント酸性飲料用粉末組成物。
【請求項2】
さらに、デキストリンを含有する、請求項1に記載のインスタント酸性飲料用粉末組成物。
【請求項3】
前記増粘剤が、ペクチン及びキサンタンガムからなる群より選択される1種以上である、請求項1又は2に記載のインスタント酸性飲料用粉末組成物。
【請求項4】
前記可食性液体が、動物性ミルク及び植物性ミルクからなる群より選択される1種以上のミルクである、請求項1又は2に記載のインスタント酸性飲料用粉末組成物。
【請求項5】
さらに、有機酸を含有する、請求項1又は2に記載のインスタント酸性飲料用粉末組成物。
【請求項6】
さらに、マンノースを主体とした単糖類が1~10分子結合したオリゴ糖類を含有する、請求項1又は2に記載のインスタント酸性飲料用粉末組成物。
【請求項7】
請求項1又は2に記載のインスタント酸性飲料用粉末組成物を、タンパク質を含有する可食性液体に溶解させて、粘度が8.0mPa/s以上である酸性飲料を調製する、酸性飲料の製造方法。
【請求項8】
酸性飲料の機能を改善する方法であって、
酸性飲料の粘度を8.0mPa/s以上になるように調整して、当該酸性飲料の整腸作用を向上させる、酸性飲料の機能改善方法。
【請求項9】
前記酸性飲料の粘度を、増粘剤を含有させて調整する、請求項8に記載の酸性飲料の機能改善方法。
【請求項10】
便通状態の改善を目的として摂取される酸性飲料であって、
増粘剤を含有し、
飲料の粘度が、8.0mPa/s以上である、酸性飲料。
【請求項11】
さらに、デキストリンを含有する、請求項10に記載の酸性飲料。
【請求項12】
前記増粘剤が、ペクチン及びキサンタンガムからなる群より選択される1種以上である、請求項10又は11に記載の酸性飲料。
【請求項13】
さらに、動物性ミルク及び植物性ミルクからなる群より選択される1種以上のミルクを含有する、請求項10又は11に記載の酸性飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物性ミルクや植物性ミルクなどのタンパク質を含有する可食性液体に溶解させることによって酸性飲料を調製するためのインスタント酸性飲料用組成物、及び当該組成物から調製される酸性飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料の可溶性固形分を主要原料とするインスタント飲料用組成物は、一般的に粉末であって、水等の液体に溶解させることによりインスタント飲料を調製するものであり、近年、その手軽さから非常に人気が高い。例えば、インスタント飲料用組成物を牛乳に溶解させることにより、牛乳のコクや風味を有する飲料を手軽に調製できる。特に、最近では、ヨーグルト飲料などの酸性飲料を、牛乳に溶解させるだけで製造できるインスタント酸性飲料用粉末組成物の人気が高い。
【0003】
牛乳には、水とは異なり、タンパク質をはじめとする様々な成分が含有されている。このため、インスタント飲料用組成物の組成によっては、牛乳に含まれている成分と相互作用し、飲料としての品質が損なわれる場合がある。特に、酸性ミルク飲料等の酸性飲料を調製する場合には、当該酸性飲料を調製するためのインスタント酸性飲料用組成物には有機酸等の酸性成分が多く含まれているため、これを牛乳に溶解させると、pHが急激に低下してしまう。この結果、牛乳中のタンパク質が凝集してカードとホエーに分離してしまい、酸性飲料は調製できなくなる。
【0004】
インスタント酸性飲料用組成物を牛乳に溶解させた際にカードの発生を抑制する方法が幾つか報告されている。例えば、特許文献1には、粉末組成物を、有機酸と緩衝剤とを水に溶解した溶液で被覆して乾燥させる方法が開示されている。有機酸が緩衝剤と共に粉末組成物の表面に存在していることにより、牛乳に溶解させた際に、適度な酸味を有しつつもカードの発生が抑えられた飲料が調製できる。また、特許文献2には、微粉末酸味料を含む粉末組成物を、乳化剤を含むバインダー液で被覆して乾燥させて得られるインスタント酸性飲料用粉末組成物が開示されている。当該粉末組成物では、酸味料を微粉末の状態で含有しているため、牛乳に溶解した際にカードが発生しにくい。
【0005】
一方で、D-マンノースがβ-1,4結合した化合物であるβ-1,4マンノビオースなどのβ-1,4-マンノオリゴ糖の持つ生理機能が注目されている。また、人間の糖タンパク質の糖鎖の重要な部分構造にはD-マンノースがβ-1,4結合したマンノオリゴ糖が含まれており、飲食品原料としてのみならず、医薬品の原料としての応用も期待されている。例えば、特許文献3には、マンノースを構成糖とするオリゴ糖類を経口摂取することにより、血清中の総コレステロールや中性脂肪の量が低下することが開示されている。また、特許文献4には、マンノースを主体とした単糖類が1~10分子結合したオリゴ糖類を経口摂取することにより、肌の水分含量が増大することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭61-1346号公報
【特許文献2】特開2016-21878号公報
【特許文献3】特開2006-169256号公報
【特許文献4】特開2015-189738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、優れた整腸作用を有する酸性飲料、及び当該酸性飲料を製造するためのインスタント酸性飲料用粉末組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、タンパク質を含有する酸性飲料において、粘度を特定の範囲内に調整することによって、整腸作用に優れた酸性飲料が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
[1] タンパク質を含有する可食性液体に溶解させることにより酸性飲料を調製するためのインスタント酸性飲料用粉末組成物であって、
増粘剤を含有しており、
前記インスタント酸性飲料用粉末組成物を前記可食性液体に溶解させることにより調製される酸性飲料の粘度が、8.0mPa/s以上であることを特徴とする、インスタント酸性飲料用粉末組成物。
[2] さらに、デキストリンを含有する、前記[1]のインスタント酸性飲料用粉末組成物。
[3] 前記増粘剤が、ペクチン及びキサンタンガムからなる群より選択される1種以上である、前記[1]又は[2]のインスタント酸性飲料用粉末組成物。
[4] 前記可食性液体が、動物性ミルク及び植物性ミルクからなる群より選択される1種以上のミルクである、前記[1]~[3]のいずれかのインスタント酸性飲料用粉末組成物。
[5] さらに、有機酸を含有する、前記[1]~[4]のいずれかのインスタント酸性飲料用粉末組成物。
[6] さらに、マンノースを主体とした単糖類が1~10分子結合したオリゴ糖類を含有する、前記[1]~[5]のいずれかのインスタント酸性飲料用粉末組成物。
[7] 前記[1]~[6]のいずれかのインスタント酸性飲料用粉末組成物を、タンパク質を含有する可食性液体に溶解させて、粘度が8.0mPa/s以上である酸性飲料を調製する、酸性飲料の製造方法。
[8] 酸性飲料の機能を改善する方法であって、
酸性飲料の粘度を8.0mPa/s以上になるように調整して、当該酸性飲料の整腸作用を向上させる、酸性飲料の機能改善方法。
[9] 前記酸性飲料の粘度を、増粘剤を含有させて調整する、前記[8]の酸性飲料の機能改善方法。
[10] 便通状態の改善を目的として摂取される酸性飲料であって、
増粘剤を含有し、
飲料の粘度が、8.0mPa/s以上である、酸性飲料。
[11] さらに、デキストリンを含有する、前記[10]の酸性飲料。
[12] 前記増粘剤が、ペクチン及びキサンタンガムからなる群より選択される1種以上である、前記[10]又は[11]の酸性飲料。
[13] さらに、動物性ミルク及び植物性ミルクからなる群より選択される1種以上のミルクを含有する、前記[10]~[12]のいずれかの酸性飲料。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、動物性ミルクや植物性ミルクのようなタンパク質を含有する可食性液体に溶解させることによって、整腸作用に優れた酸性飲料を調製することができるインスタント酸性飲料用粉末組成物が得られる。また、当該インスタント酸性飲料用粉末組成物を用いることにより、簡便に、整腸作用に優れた酸性飲料を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例3において、試験区3-1及び試験区3-2のヨーグルト飲料を6週間継続摂取した群のお腹の調子についての官能評価の結果を示した図である。
図2】実施例3において、試験区3-1及び試験区3-2のヨーグルト飲料を6週間継続摂取した群のすっきり感についての官能評価の結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明及び本願明細書において、「動物性ミルク」とは、哺乳動物の乳を意味する。動物性ミルクには、牛乳、山羊乳、羊乳、馬乳等が挙げられる。動物性ミルクには、全粉乳、脱脂粉乳、ホエイパウダー、牛乳、低脂肪乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖練乳、加糖練乳、無糖脱脂練乳、加糖脱脂練乳、乳糖、生クリーム、バター等も含まれる。なお、全粉乳及び脱脂粉乳は、それぞれ、牛乳(全脂乳)又は脱脂乳を、スプレードライ等により水分を除去して乾燥し粉末化したものである。
【0013】
本発明及び本願明細書において、「植物性ミルク」とは、豆やナッツ、穀物等の植物に由来する原料から、タンパク質や脂肪分を含む成分を水で抽出することによって得られる液体を意味する。植物性ミルクには、豆乳、ピーナッツミルク、アーモンドミルク、カシューナッツミルク、マカダミアナッツミルク、クルミミルク、ココナッツミルク、ライスミルク、オーツミルク、コーンミルク等が挙げられる。
【0014】
本発明及び本願明細書において、「ミルク」とは、動物性ミルクと植物性ミルクの総称である。
【0015】
本発明及び本願明細書において、「タンパク質含有可食性液体」とは、ヒトが安全に摂取することが可能な液体(可食性液体)のうち、タンパク質を含有しているものを意味する。タンパク質含有可食性液体におけるタンパク質含有量は特に限定されるものではない。例えば、タンパク質含有可食性液体としては、タンパク質含有量が比較的多い可食性液体、例えば1質量%以上の可食性液体であってもよく、タンパク質含有量が0.1質量%以下と非常に少ない可食性液体であってもよい。
【0016】
本発明及び本願明細書において、「粉末」とは粉粒体(異なる大きさの分布をもつ多くの固体粒子からなり、個々の粒子間に、何らかの相互作用が働いているもの)を意味する。また、「顆粒」は粉末から造粒された粒子(顆粒状造粒物)の集合体である。粉末には、顆粒も含まれる。
【0017】
本発明及び本願明細書において、「インスタント酸性飲料用粉末組成物」とは、水やミルク等の可食性液体に溶解又は分散させることによって酸性飲料を調製し得る粉末状の組成物を意味する。また、「酸性飲料」とは、pHが5.5以下の飲料を意味する。
【0018】
本発明及び本願明細書において、「酸性ミルク飲料」とは、ミルクを主原料とする酸性飲料を意味する。酸性ミルク飲料としては、例えば、ミルクに酸味料を配合し、必要に応じて甘味料や果汁、香料等の風味や呈味を付与する成分も配合することによって得られる飲料が挙げられる。具体的には、ドリンクヨーグルト、イチゴミルク、レモンミルク、ラッシー等が挙げられる。
【0019】
<インスタント酸性飲料用粉末組成物>
本発明に係るインスタント酸性飲料用粉末組成物は、タンパク質含有可食性液体に溶解させることにより酸性飲料を調製するためのインスタント酸性飲料用粉末組成物であって、増粘剤を含有しており、前記インスタント酸性飲料用粉末組成物を前記可食性液体に溶解させることにより調製される酸性飲料の粘度が、8.0mPa/s以上であることを特徴とする。増粘剤を含有させて、インスタント酸性飲料用粉末組成物から調製される酸性飲料の粘度が8.0mPa/s以上となるように調整することにより、タンパク質を含有する可食性液体に溶解させて得られる酸性飲料の整腸作用を改善させることができる。
【0020】
本発明に係るインスタント酸性飲料用粉末組成物をタンパク質含有可食性液体に溶解させて調製される酸性飲料の粘度としては、8.0mPa/s以上であればよく、例えば、8.0~2500mPa/sとすることができる。より高い整腸効果が得られる点から、本発明に係るインスタント酸性飲料用粉末組成物から調製される酸性飲料の粘度としては、50~2000mPa/sが好ましく、50~1500mPa/sがより好ましく、50~1000mPa/sがさらに好ましく、70~1000mPa/sがよりさらに好ましく、140~1000mPa/sが特に好ましい。
【0021】
本発明において、飲料の粘度は、液温を4℃として、B型粘度計を用いて測定することができる。
【0022】
本発明に係るインスタント酸性飲料用粉末組成物を溶解させて酸性飲料を調製するために用いられるタンパク質含有可食性液体としては、特に限定されるものではない。本発明においては、よりコク等の風味が良好なインスタント酸性飲料が得られる点から、タンパク質含有量が0.5質量%以上である可食性液体であることが好ましく、タンパク質含有量が1.0質量%以上である可食性液体であることがより好ましく、ミルクであることが特に好ましい。本発明に係るインスタント酸性飲料用粉末組成物を溶解させるミルクとしては、動物性ミルクであってもよく、植物性ミルクであってもよい。動物性ミルク、植物性ミルクはいずれも、前記で挙げられたものを用いることができる。
【0023】
本発明に係るインスタント酸性飲料用粉末組成物は、当該粉末組成物をタンパク質含有可食性液体に溶解させて得られる酸性飲料の粘度が所望の範囲内となるように、増粘剤を含有している。当該増粘剤としては、例えば、ペクチン、キサンタンガム、大豆食物繊維(可溶性大豆多糖類)、ポリデキストロース、難消化性デキストリン、ガラクトマンナン、イヌリン、グアーガム、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース(CMC)等の水溶性食物繊維が挙げられる。本発明に係るインスタント酸性飲料用粉末組成物に含有させる増粘剤は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
【0024】
ペクチンには、エステル化度(ペクチン分子全体に占めるガラクチュロン酸メチルエステルの割合)が50%以上であるHM(high methoxyl)ペクチンと、エステル化度が50%未満であるLM(low methoxyl)ペクチンがある。本発明において用いられるペクチンとしては、HMペクチンとLMペクチンのいずれであってもよく、両方を混合して用いてもよい。本発明に係るインスタント酸性飲料用粉末組成物に含有させるペクチンとしては、カルシウムイオン共存下でのゲル化が生じ難く、より食感のなめらかな飲料が得られることから、LMペクチンよりも、HMペクチンが好ましい。
【0025】
より高い整腸効果が得られることから、本発明に係るインスタント酸性飲料用粉末組成物が含有する増粘剤としては、ペクチン及びキサンタンガムからなる群より選択される1種以上であることが好ましく、HMペクチン及びキサンタンガムからなる群より選択される1種以上であることがより好ましい。なかでも、HMペクチンとキサンタンガムを両方含有するインスタント酸性飲料用粉末組成物からは、整腸作用が非常に優れたインスタント酸性飲料が製造できる。
【0026】
本発明に係るインスタント酸性飲料用粉末組成物の増粘剤の含有量としては、当該インスタント酸性飲料用粉末組成物をタンパク質含有可食性液体に溶解させて調製される酸性飲料の粘度が8.0mPa/s以上となる量であればよく、使用する増粘剤の種類やタンパク質含有可食性液体100mL当たりに溶解させる当該インスタント酸性飲料用粉末組成物の量、目的とする酸性飲料の粘度等を考慮して、適宜調整することができる。例えば、本発明に係るインスタント酸性飲料用粉末組成物としては、組成物全体に対する増粘剤の含有比率が、0.5~20質量%が好ましく、1~18質量%がより好ましく、2.5~13質量%がさらに好ましい。
【0027】
より高い整腸効果が期待できる点から、本発明に係るインスタント酸性飲料用粉末組成物は、増粘剤に加えてさらに、デキストリンも含有していることが好ましい。デキストリンは、澱粉を酵素反応又は酸処理により分解して低分子化したものである。低分子化の度合いは、DE(Dextrose Equivalent)値で表される。本発明において用いられるデキストリンとしては、DE値が低く、比較的甘味の少ないものであってもよく、DE値が高く、比較的甘味の強いものであってもよい。本発明において用いられるデキストリンのDE値としては、4~40が好ましく、8~35がより好ましく、9~30がさらに好ましい。本発明において用いられるデキストリンとしては、澱粉を酵素反応又は酸処理により分解した後、各種精製法を施すことにより得られたものを用いることができ、市販されているデキストリンを用いることもできる。
【0028】
本発明に係るインスタント酸性飲料用粉末組成物のデキストリン含有量としては、調製される酸性飲料の粘度を8.0mPa/s以上に調整することにより得られる整腸効果(以下、「粘度による整腸効果」ということがある。)を損なわない量であれば特に限定されるものではない。本発明に係るインスタント酸性飲料用粉末組成物としては、組成物全体に対するデキストリンの含有比率が、10~70質量%が好ましく、30~70質量%がより好ましく、40~65質量%がさらに好ましい。
【0029】
本発明に係るインスタント酸性飲料用粉末組成物は、増粘剤に加えて、さらに、整腸効果に有効とされている各種の成分を含有させることもできる。これらの成分としては、例えば、マンノースを主体としたオリゴ糖類や有用菌(人体に有益な影響をもたらす細菌)の菌体が挙げられる。マンノースを主体としたオリゴ糖類や有用菌としては、一般的に飲食品や機能性食品に添加可能な可食性のものであれば、特に限定されるものではない。
【0030】
本発明及び本願明細書において、「マンノースを主体としたオリゴ糖類」とは、単糖であるマンノースを主たる構成要素とするオリゴ糖類を意味する。ここで「オリゴ糖類」なる語は、一般に単糖類と多糖類との間に位し、一定の小数量の単糖類分子のグリコシル結合からなる物質を指す。すなわち、結合している単糖の数が比較的少ないポリマーのことである。「オリゴ糖『類』」という場合、構成単糖の種類や数が様々である複数のオリゴ糖が含まれる組成物であることを意味する。「マンノースを主体としたオリゴ糖『類』」という場合は、オリゴ糖類のうち、特に、組成物全体の構成単糖に占めるマンノースの割合が50%以上である組成物を指す。本発明及び本願明細書において「マンノオリゴ糖類」の語は、「マンノースを主体としたオリゴ糖類」の語と同様の意味において用いられる。
【0031】
本発明及び本願明細書において、オリゴ糖類の重合度を表すために「DP」と記載することがある。DPとは、オリゴ糖類を構成している単糖の数を意味する。すなわち単糖であるマンノースは「DP1」と表され、4つのマンノースから構成されたマンノオリゴ糖は重合度4、すなわち「DP4」と表される。学術的観点からは、重合度1(DP1)の糖は単糖であって、オリゴ糖ではない。しかし、本発明に用いるオリゴ糖類(組成物)中には、単糖が含まれる場合があるので、本願明細書においてはこのような場合であっても総称して「オリゴ糖類」と呼ぶものとする。すなわち、「1以上10分子以下の、マンノースを主体とした単糖類が結合した、マンノースを主体としたオリゴ糖類」という場合には、この糖組成物中に重合度1の単糖も含まれている場合があると理解されたい。本発明に係るインスタント酸性飲料用粉末組成物が含有するマンノオリゴ糖類としては、マンノースを主体とした単糖類が1~10分子結合したオリゴ糖類が好ましい。
【0032】
本発明に係るインスタント酸性飲料用粉末組成物が含有するマンノオリゴ糖類としては、構成単糖がマンノース、グルコース、ガラクトース及びフルクトースからなる群より選択される1種以上の単糖が1~10分子結合したオリゴ糖が複数種類含まれており、かつ構成単糖全体に占めるマンノースの割合が50%以上であるオリゴ糖類(組成物)が好ましく、構成単糖がマンノース及びフルクトースからなる群より選択される1種以上の単糖が1~10分子結合したオリゴ糖が複数種類含まれており、かつ構成単糖全体に占めるマンノースの割合が50%以上であるオリゴ糖類(組成物)がより好ましい。
【0033】
本発明に係るインスタント酸性飲料用粉末組成物が含有するマンノオリゴ糖類としては、オリゴ糖類中のマンノース残基の割合(構成単糖全体に占めるマンノースの割合)が、70質量%以上であるオリゴ糖類(組成物)が好ましく、80質量%以上であるオリゴ糖類がより好ましく、90質量%以上であるオリゴ糖類がさらに好ましい。マンノース残基の割合が充分に高いことにより、マンノオリゴ糖による整腸作用をより効果的に得ることができ、また、グルコース等の他の単糖類の含有割合が比較的低いことにより、呈味への影響を抑えることができる。
【0034】
本発明に係るインスタント酸性飲料用粉末組成物が含有するマンノオリゴ糖類としては、単糖のマンノース由来の苦味を抑えることができるため、遊離のマンノース含量が50質量%以下に抑えられたものが好ましい。また、当該マンノオリゴ糖類としては、2~9分子の単糖類が結合したオリゴ糖の含量が多いものが好ましく、2~6分子の単糖類が結合したオリゴ糖の含量が多いものがより好ましい。また、当該マンノオリゴ糖類としては、各構成単糖がβ-1,4結合したオリゴ糖の含有割合が50質量%以上であるものが好ましい。
【0035】
本発明において用いられるマンノオリゴ糖類としては、構成単糖がマンノースのみからなる(マンノースのみを構成単位とする)マンノオリゴ糖類、すなわち、マンノースが1~10分子結合したオリゴ糖類であることも好ましい。この場合には、マンノースが1~10分子結合したβ-1,4-マンノオリゴ糖類であることがより好ましい。
【0036】
本発明において用いられるマンノオリゴ糖類としては、マンナンを加水分解処理することによって得られるものが好ましい。なお、本発明及び本願明細書において、単に「マンナン」という場合は、D-マンノースのみを構成単位とする多糖であるマンナンの他、マンノースとガラクトース又はグルコースと構成単位とした多糖であるガラクトマンナン、グルコマンナンも広義に含めるものとする。D-マンノースはアルドヘキソースであり、D-グルコース中のカルボキシル基に隣接する炭素に結合している水酸基の立体配置が逆になっているものである。
【0037】
ここで、原料のマンナンは、例えばココナッツ椰子から得られるコプラミール、フーク、南アフリカ産椰子科植物HuacraPalm、ツクネイモマンナン、ヤマイモマンナンより抽出することにより得ることができる。このように得たマンナンを、酸加水分解、高温加熱加水分解、酵素加水分解、微生物発酵の中から選択される1種又は2種以上の方法で処理し、好ましくは活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理、イオン交換膜処理等の方法で精製して、糖混合物を得ることができる。かかる当混合物中には、上述したマンノオリゴ糖類が含まれている。したがって、このようにして得た組成物は、本発明に係るインスタント酸性飲料用粉末組成物の構成成分として用いられる。さらに、マンノオリゴ糖類は、コンニャクイモ、ユリ、スイセン、ヒガンバナ等に含まれるグルコマンナン、ローカストビーンガム、グアーガム等に含まれるガラクトマンナンを酸加水分解、高温加熱加水分解、酵素加水分解、微生物発酵の中から選択される1種又は2種以上の方法で処理し、活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理、イオン交換膜処理等の方法で分離精製し構成糖としてマンノースの比率を高めることにより製造したものであってもよい。
【0038】
本発明において用いられるマンノオリゴ糖類としては、コーヒー生豆又は焙煎したコーヒー豆を酸加水分解、高温加熱加水分解、酵素加水分解、微生物発酵の中から選択される1種又は2種以上の方法で処理し、活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理、イオン交換膜処理等の方法で精製することによって得ることができる。あるいは、使用済みコーヒー残渣を酸加水分解、高温加熱加水分解、酵素加水分解、微生物発酵の中から選択される1種又は2種以上の方法で処理し、活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理、イオン交換膜処理等の方法で精製することによって得ることも可能である。一般に、焙煎粉砕コーヒーを商業用の抽出器にて抽出すると、その際に焙煎コーヒーに含まれるガラクトマンナンの側鎖であるガラクトースが可溶化したり、アラビノガラクタンが加水分解によって可溶化する。従って、コーヒー残渣中にはマンナンが豊富であり、しかも直鎖構造をとっているものと推定される。一方、セルロースは分解されにくく残渣として残っているが、セルロースを分解せずにマンナンを特異的に加水分解する条件を適宜選択することにより、マンノースを主体とするオリゴ糖を得ることができる。
【0039】
特にコーヒー抽出残渣を分解する方法としては、酸及び/又は高温により加水分解する方法、酵素により分解する方法、微生物発酵により分解する方法が挙げられるが、これらに限定されない。酸及び/又は高温により加水分解する方法としては特開昭61-96947号公報、特開平2-200147号公報等に開示されている。商業用のコーヒー多段式抽出系において出てくる使用済みコーヒー残渣を反応容器中において酸触媒を添加して加水分解することもでき、酸触媒を添加せずに高温で短時間処理して加水分解することによっても得ることができる。管形栓流反応器を使用する方法が便利であるが、比較的高温で短時間の反応を行わせる方法に向いているものであれば、いかなる反応器を使用しても良好な結果が得られる。反応時間と反応温度を調節し、可溶化して加水分解させることによってDP10~40のマンナンをDP1~10のマンノオリゴ糖に分解し、その後コーヒー残渣と分離してマンノオリゴ糖類を得ることができる。なお、ここでコーヒー抽出残査とは、大気中あるいは加圧条件下で焙煎粉砕コーヒーを水などの溶媒で抽出した後の、いわゆるコーヒー抽出粕を意味する。
【0040】
マンノオリゴ糖類として、コーヒー豆(焙煎コーヒー豆、及び焙煎粉砕コーヒー豆を含む。)及び/又はコーヒー抽出残渣の加水分解処理により得られたものを用いる場合、使用するコーヒー豆の種類や産地に特に制限はなく、アラビカ種、ロバスタ種、リベリカ種等いずれのコーヒー豆でもよく、さらにブラジル、コロンビア産等いずれの産地のコーヒー豆も使用することができ、1種類の豆のみを単独で使用してもよく、ブレンドした2種以上の豆を使用してもよい。通常、商品価値がないとして廃棄処分されるような品質の悪いコーヒー豆又は小粒のコーヒー豆であっても使用することができる。上記コーヒー豆を一般的に用いられている焙煎機(直火、熱風、遠赤、炭火式など)による極浅炒り、浅炒り、中炒り、深炒りに焙煎したコーヒー豆、及びこの焙煎コーヒー豆を、一般的な粉砕機、ロールミルなどを用いて粉砕することにより得た、焙煎粉砕コーヒー(粗挽き、中粗挽き、中挽き、中細挽き、細挽きなどの種々の形状のものを含む)を用いることもできる。
【0041】
また、コーヒー抽出残渣としては、通常の液体コーヒーあるいはインスタントコーヒー製造工程において、焙煎粉砕コーヒーを抽出処理した後のものであれば、常圧下、加圧下抽出であろうと、またいかなる起源、製法のコーヒー抽出残渣であっても使用することができる。
【0042】
ここで、上記加水分解処理について、いくつか詳細に説明する。酵素により分解する方法としては、例えばコーヒー抽出残渣を水性媒体に懸濁させ、ここへ、例えば市販のセルラーゼ及びヘミセルラーゼ等を加えて撹拌しながら懸濁させればよい。酵素の量、作用させる温度及びその他の条件としては、通常の酵素反応に用いられる量、温度、条件であれば特に問題はなく、使用する酵素の最適作用量、温度、条件及びその他の要因によって適宜選択すればよい。
微生物発酵により分解する方法としては、例えば水性媒体に懸濁させたコーヒー抽出残渣にセルラーゼ、ヘミセルラーゼなどを産出する微生物を植菌して培養させればよい。使用する微生物は、細菌類や担子菌類などコーヒー抽出残渣中のマンナンを分解する酵素を産出するものであれば良く、使用する微生物によって培養条件などは適宜選択すればよい。
【0043】
上記の方法によって得られたマンノオリゴ糖類を含む反応液は、必要に応じて精製することができる。精製法としては、骨炭、活性炭、炭酸飽充法、吸着樹脂、マグネシア法、溶剤抽出法等で脱色・脱臭を行い、イオン交換樹脂、イオン交換膜、電気透析等で脱塩、脱酸を行うことが挙げられる。精製法の組み合わせ及び精製条件としては、マンノースを主体とするオリゴ糖類を含む反応液中の色素、塩、及び酸等の量や、その他の要因に応じて適宜選択すればよい。
【0044】
本発明において用いられるマンノオリゴ糖類は、本発明に係るインスタント酸性飲料用粉末組成物の原料として使用される前に、予め必要に応じて活性炭、イオン交換樹脂、溶剤等で脱色、脱臭、脱酸等の精製処理や前処理をしておいてもよい。
【0045】
本発明に係るインスタント酸性飲料用粉末組成物がマンノオリゴ糖類を含有する場合、当該マンノオリゴ糖類の含有量としては、粘度による整腸効果を損なわない量であれば特に限定されるものではない。本発明に係るインスタント酸性飲料用粉末組成物としては、組成物全体に対するマンノオリゴ糖類の含有比率は、例えば1~20質量%とすることができ、3~15質量%が好ましく、5~10質量%がより好ましい。
【0046】
本発明に係るインスタント酸性飲料用粉末組成物は、酸性飲料を製造するためのものであり、得られる飲料が酸性となるように、充分量の有機酸やリン酸を含有させることができる。当該有機酸としては、飲食品に使用される有機酸であれば、特に限定されるものではない。また、本発明に係るインスタント酸性飲料用粉末組成物に含有させる有機酸は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。飲食品に使用される有機酸としては、例えば、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、酢酸、酒石酸、グルコン酸、グルコノデルタラクトン、フィチン酸、アジピン酸、アスコルビン酸等が挙げられ、クエン酸、リンゴ酸、及び乳酸からなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
【0047】
本発明に係るインスタント酸性飲料用粉末組成物の有機酸含有量としては、当該粉末組成物をタンパク質含有可食性液体に溶解させた場合に、得られるインスタント飲料のpHが、5.5以下、好ましくは5.0以下、より好ましくは4.5~5.5となる量であることが好ましい。本発明に係るインスタント酸性飲料用粉末組成物としては、組成物全体に対する有機酸の含有比率が、1~6質量%であることが好ましく、1~5.5質量%であることがより好ましく、1~3質量%であることがさらに好ましい。
【0048】
本発明に係るインスタント酸性飲料用粉末組成物は、増粘剤や有機酸に加えて、さらに、pH調整剤を含有することが好ましい。本発明に係るインスタント酸性飲料用粉末組成物に含有されるpH調整剤としては、飲食品に添加可能なものであれば特に限定されるものではないが、有機酸のナトリウム塩、有機酸のカリウム塩、無機酸のナトリウム塩、無機酸のカリウム塩等を用いることができる。中でも、クエン酸、グルコン酸、コハク酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、リン酸、炭酸のナトリウム塩及びカリウム塩が好ましい。本発明に係るインスタント酸性飲料用粉末組成物に含有させるpH調整剤は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
【0049】
本発明に係るインスタント酸性飲料用粉末組成物は、発明の効果を損なわない限度において、さらに、他の成分を含有していてもよい。当該他の成分としては、甘味料、乳化剤、流動性改良剤、賦形剤(但し、デキストリンを除く)、酸化防止剤、塩類(ミネラル)、果汁、香料等が挙げられる。
【0050】
本発明に係るインスタント酸性飲料用粉末組成物に含有される甘味料としては、飲食品に添加可能なものであれば特に限定されるものではなく、当該粉末組成物をタンパク質含有可食性液体に溶解して製造される酸性飲料の目的とする製品品質を考慮して適宜選択して用いることができる。本発明に係るインスタント酸性飲料用粉末組成物に含有される甘味料としては、具体的には、砂糖、ショ糖型液糖、オリゴ糖、ブドウ糖果糖液糖等の糖類;エリスリトール、トレハロース、ソルビトール、還元水あめ等の糖アルコール;アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、ステビア等の高甘味度甘味料等が挙げられる。砂糖としては、グラニュー糖、上白糖であってもよく粉糖であってもよい。本発明に係るインスタント酸性飲料用粉末組成物に含有させる甘味料は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
【0051】
本発明に係るインスタント酸性飲料用粉末組成物に含有される乳化剤としては、飲食品に添加可能なものであれば特に限定されるものではないが、水に溶解しやすいものが好ましく、例えば、食品用乳化剤のうち親水性乳化剤の中から適宜選択して用いることができる。親水性乳化剤としては、例えば、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、酵素分解レシチン、有機酸モノグリセリド等の中から適宜選択して用いることができる。本発明に係るインスタント酸性飲料用粉末組成物に含有させる乳化剤は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
【0052】
本発明に係るインスタント酸性飲料用粉末組成物に含有される流動性改良剤としては、微粒酸化ケイ素、第三リン酸カルシウム等の加工用製剤が挙げられる。流動性改良剤をさらに含有することにより、本発明に係るインスタント酸性飲料用粉末組成物の固化耐性がより向上する。本発明に係るインスタント酸性飲料用粉末組成物に含有させる流動性改良剤は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
【0053】
本発明に係るインスタント酸性飲料用粉末組成物に含有される賦形剤としては、例えば、澱粉、澱粉分解物(但し、デキストリンを除く)、糖類、食物繊維等が挙げられる。澱粉としては、タピオカ澱粉、モチゴメ澱粉、コメ澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、コーン澱粉、ワキシーコーン澱粉、サトイモ澱粉、サゴ澱粉等の可食性の澱粉が挙げられ、これらの澱粉をヒドロキシプロピル化、アセチル化、リン酸モノエステル化等の加工処理や架橋処理を施したものであってもよい。澱粉分解物としては、粉あめ、水あめ等が挙げられる。糖類としては、乳糖、麦芽糖、ショ糖(砂糖)、トレハロース、オリゴ糖等が挙げられる。食物繊維としては、難消化性デキストリン、セルロース等が挙げられる。本発明に係るインスタント酸性飲料用粉末組成物に含有させる賦形剤は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
【0054】
本発明に係るインスタント酸性飲料用粉末組成物に含有される酸化防止剤としては、例えば、ビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンE(トコフェロール)、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)、BHA(ブチルヒドロキシアニソール)、エリソルビン酸ナトリウム、没食子酸プロピル、亜硫酸ナトリウム、二酸化硫黄、クロロゲン酸、カテキン等が挙げられる。本発明に係るインスタント酸性飲料用粉末組成物に含有させる酸化防止剤は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
【0055】
本発明に係るインスタント酸性飲料用粉末組成物に含有される果汁は、粉末状であってもよく、液状であってもよい。粉末果汁としては、100%果汁の凍結乾燥品、真空乾燥品、又は噴霧乾燥品でもよく、デキストリン等の固体担体と共に乾燥することによって、当該固体担体に固定化されたものでもよい。固体担体としてデキストリンを用いる場合、低DE値であるデキストリンを用いることが好ましい。液状の果汁としては、果物から圧搾した果汁そのものであってもよく、濃縮果汁であってもよい。
【0056】
本発明に係るインスタント酸性飲料用粉末組成物に含有される香料としては、当該粉末組成物をタンパク質含有可食性液体に溶解して製造される酸性飲料の目的とする製品品質を考慮して、飲食品に配合可能な香料の中から適宜選択して用いることができる。例えば、ヨーグルトフレーバーを用いることにより、ヨーグルト風味の酸性飲料を製造することができる。また、シトラスフレーバー、アップルフレーバー、ピーチフレーバー等の果物の香りの香料を用いることにより、果物の香りのする酸性飲料を製造することができる。
【0057】
本発明に係るインスタント酸性飲料用粉末組成物は、原料として配合する増粘剤の種類や量を、製造される酸性飲料の粘度が所望の範囲内となるように調整する以外は、他のインスタント飲料を製造するための粉末状組成物と同様にして製造できる。具体的には、原料を混合して粉末組成物を調製する。混合の順番は特に限定されるものではなく、全ての原料を同時に混合してもよく、順次混合させてもよい。例えば、全ての原料が粉末の場合には、全ての原料をそのまま混合することによって、インスタント酸性飲料用粉末組成物が製造される。また、粉末原料と液状の原料を用いる場合、粉末の原料を全て予め混合し、得られた混合粉末を造粒核とし、これに、液状の原料の混合液をバインダー液として噴霧して造粒させた後に乾燥させることによって、インスタント酸性飲料用粉末組成物が製造される。当該造粒は、流動層造粒、転動造粒、押出造粒する等公知の湿式造粒法を使用することができる。例えば流動層造粒は、市販されている流動層造粒装置を使用して常法により行うことができる。
【0058】
本発明に係るインスタント酸性飲料用粉末組成物は、飲用1杯分を小パウチなどに個包装したり、使用時に容器から振り出したりスプーンで取り出したりして使用するように瓶などの容器に数杯分をまとめて包装して商品として供給することもできる。個包装タイプとは、スティック状アルミパウチ、ワンポーションカップなどに酸性飲料1杯分の中身を充填包装するものであり、容器を開けて指で押し出すなどの方法で中身を取り出すことができる。個包装タイプは、1杯分が密閉包装されているので取り扱いも簡単で、衛生的であるという利点を有する。
【0059】
<酸性飲料>
本発明に係る酸性飲料は、便通状態の改善(整腸)を目的として摂取される酸性飲料であって、増粘剤を含有し、飲料の粘度が8.0mPa/s以上であることを特徴とする。粘度が8.0mPa/s以上であるために整腸作用を発揮することができ、経口摂取することによって便通状態を改善することができる。なお、便通状態の改善とは、便秘や下痢の症状を改善することを意味する。例えば、1週間当たりの排便回数が4回以下の便秘気味のヒトが本発明に係る酸性飲料を継続摂取することにより、排便回数や排便量が増大することが期待できる。
【0060】
本発明に係る酸性飲料の粘度は、8.0mPa/s以上であれば特に限定されるものではなく、例えば、8.0~2500mPa/sとすることができる。より高い整腸効果が得られる点から、本発明に係る酸性飲料の粘度としては、50~2000mPa/sが好ましく、50~1500mPa/sがより好ましく、50~1000mPa/sがさらに好ましく、70~1000mPa/sがよりさらに好ましく、140~1000mPa/sが特に好ましい。
【0061】
本発明に係る酸性飲料は、所望の粘度とするために、増粘剤を含有する。当該増粘剤としては、前記の本発明に係るインスタント酸性飲料用粉末組成物に含有させる増粘剤と同様のものを用いることができる。より高い便通状態改善効果(整腸効果)が期待できる点から、本発明に係る酸性飲料が含有する増粘剤は、ペクチン及びキサンタンガムからなる群より選択される1種以上であることが好ましく、HMペクチン及びキサンタンガムからなる群より選択される1種以上であることがより好ましく、HMペクチンであることがさらに好ましい。
【0062】
本発明に係る酸性飲料は、増粘剤に加えてさらに、デキストリンを含有することも好ましい。当該酸性飲料に含有させるデキストリンやその含有量としては、前記の本発明に係るインスタント酸性飲料用粉末組成物に含有させるデキストリンと同様のものを用いることができる。
【0063】
本発明に係る酸性飲料は、増粘剤に加えて、さらに、整腸効果に有効とされている各種の成分を含有させることもできる。これらの成分としては、例えば、マンノオリゴ糖類や有用菌の菌体が挙げられる。マンノオリゴ糖類や有用菌としては、前記の本発明に係るインスタント酸性飲料用粉末組成物に含有させる場合と同様のものを用いることができる。
【0064】
本発明に係る酸性飲料は、飲料のpHが5.5以下となるように、各種有機酸やリン酸を含有していてもよく、pH調整剤を含有していてもよい。当該有機酸やpH調整剤としては、前記の本発明に係るインスタント酸性飲料用粉末組成物に含有させる有機酸やpH調整剤と同様のものを用いることができる。
【0065】
本発明に係る酸性飲料は、さらに、動物性ミルク及び植物性ミルクからなる群より選択される1種以上のミルクを含有していてもよい。また、本発明に係る酸性飲料は、粘度による整腸効果を損なわない限度において、さらに、他の成分を含有していてもよい。当該他の成分としては、甘味料、乳化剤、流動性改良剤、賦形剤(但し、デキストリンを除く)、酸化防止剤、塩類(ミネラル)、果汁、香料等が挙げられる。これらの成分としては、前記の本発明に係るインスタント酸性飲料用粉末組成物に含有させる成分と同様のものを用いることができる。
【実施例0066】
次に、実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例等に限定されるものではない。なお、以降の実施例において、特に記載のない限り、「%」は「質量%」を意味する。
【0067】
[実施例1]
増粘剤としてペクチン又はキサンタンガムを配合したインスタント酸性飲料用粉末組成物を調製し、これを牛乳に溶解させて調製した酸性飲料の整腸効果について調べた。
【0068】
まず、表1に記載の組成からなる粉末組成物を調製した。デキストリンとしては「マックス1000」(DE=9、松谷化学工業社製)、HMペクチンとしては「YM-150-LJ」(三晶社製)、キサンタンガムとしては「エコーガムT/ケルトロールT」(三栄源エフエフアイ社製)を、それぞれ用いた。
【0069】
【表1】
【0070】
各粉末組成物9.0gを、120mLの牛乳に溶かして、ヨーグルト飲料を調製した。調製されたヨーグルト飲料を、健常成人男女5名に、1日1回の摂取を5日間継続して行わせた。5日間の継続摂取後に、お腹の調子とすっきり感について、下記の6段階評価による官能評価を実施した。各ヨーグルト飲料について、全ての評価者の評価点の平均を、当該ヨーグルト飲料の評価点とした。
【0071】
(お腹の調子)
評価点1:摂取開始前と比較して、お腹の調子が非常に悪くなった気がする。
評価点2:摂取開始前と比較して、お腹の調子がかなり悪くなった気がする。
評価点3:摂取開始前と比較して、お腹の調子がやや悪くなった気がする。
評価点4:摂取開始前と比較して、お腹の調子がやや良くなった気がする。
評価点5:摂取開始前と比較して、お腹の調子がかなり良くなった気がする。
評価点6:摂取開始前と比較して、お腹の調子が非常に良くなった気がする。
【0072】
(すっきり感)
評価点1:摂取開始前と比較して、気分がすっきりする日が非常に少なくなった気がする。
評価点2:摂取開始前と比較して、気分がすっきりする日がかなり少なくなった気がする。
評価点3:摂取開始前と比較して、気分がすっきりする日がやや少なくなった気がする。
評価点4:摂取開始前と比較して、気分がすっきりする日がやや多くなった気がする。
評価点5:摂取開始前と比較して、気分がすっきりする日がかなり多くなった気がする。
評価点6:摂取開始前と比較して、気分がすっきりする日が非常に多くなった気がする。
【0073】
また、各粉末組成物から調製されたヨーグルト飲料の粘度を測定した。具体的には、ガラスコップに、各粉末組成物4.5gをいれ、さらに冷蔵(4℃)保管されていた牛乳15mLを注入し、スプーンで50回かき混ぜた。その後、冷蔵(4℃)保管されていた牛乳45mLをさらに注入して、スプーンで30回かき混ぜて、ヨーグルト飲料を調製した。調製されたヨーグルト飲料30mLを、ポリプロピレン製50mL容遠沈管に移し、1分間静置させた後、B型粘度計にて測定した。
【0074】
各ヨーグルト飲料の粘度及び官能評価結果を表2に示す。試験区1-1~1-3の全てにおいて、お腹の調子とすっきり感のいずれも改善されていた。特に、改善効果は、試験区1-3のヨーグルト飲料よりも試験区1-2のヨーグルト飲料のほうが高く、試験区1-2のヨーグルト飲料よりも試験区1-1のヨーグルト飲料のほうが高かったことから、増粘剤としてペクチンを用いた酸性飲料のほうが、キサンタンガムを用いた場合よりも整腸効果が高く、また、更にデキストリンを含有させることで、より高い整腸効果が得られることが確認された。
【0075】
【表2】
【0076】
[実施例2]
実施例1の試験区1-1の粉末組成物について、増粘剤の含有量を調節して、得られるヨーグルト飲料の粘度の整腸効果に対する影響を調べた。
【0077】
まず、表3に記載の組成からなる粉末組成物を、実施例1と同様にして調製した。デキストリン等の原料は、実施例1で用いたものをそれぞれ用いた。
【0078】
【表3】
【0079】
実施例1と同様にして、各粉末組成物からヨーグルト飲料を調製し、その粘度を調べた。また、調製されたヨーグルト飲料を、健常成人男女5名に、1日1回の摂取を5日間継続して行わせ、5日間の継続摂取後に、お腹の調子とすっきり感について、実施例1と同様にして官能評価を行った。
【0080】
各ヨーグルト飲料の粘度及び官能評価結果を表4に示す。試験区2-2~2-9のヨーグルト飲料は、いずれも、試験区2-1のヨーグルト飲料よりもお腹の調子とすっきり感のいずれも改善されて、整腸効果が確認された。これらの結果から、ヨーグルト飲料の粘度が整腸効果に影響を及ぼすこと、ヨーグルト飲料の粘度が8.0mPa/s以上であると、十分な整腸効果が得られること、が明らかとなった。
【0081】
【表4】
【0082】
[実施例3]
牛乳に溶解させて得られるヨーグルト飲料の粘度が8.0mPa/s以上となるように増粘剤を配合した粉末組成物を準備し、これから調製されたヨーグルト飲料を長期間摂取させて、その整腸効果を調べた。
【0083】
まず、表5に記載の組成からなる粉末の酸性造粒パウダーを、実施例1と同様にして調製した。デキストリン等の原料は、実施例1で用いたものをそれぞれ用いた。
【0084】
【表5】
【0085】
得られた造粒パウダーを用いて、表6に記載の組成からなる粉末組成物を調製した。マンノオリゴ糖としては「コーヒー豆マンノオリゴ糖」(味の素AGF社製)(以下、「MOS」と称することがある)を用いた。
【0086】
【表6】
【0087】
各粉末組成物について、実施例1と同様にしてヨーグルト飲料を調製した。また、各ヨーグルト飲料の粘度を、実施例1と同様にして測定した。この結果、いずれのヨーグルト飲料の粘度も同等であった。
【0088】
便秘気味(週の排便回数が4回以下)の健常な成人(20~65歳:年齢均等)の男女30名を15名ずつの2群に分け、第1群には試験区3-1のヨーグルト飲料を、第2群には試験区3-2のヨーグルト飲料を、それぞれ1日1回摂取させ、これを6週間継続して行った。
【0089】
6週間摂取後に、お腹の調子とすっきり感について、下記に示す4段階で官能評価を行った。各群のお腹の調子の評価結果を図1に、すっきり感の評価結果を図2に、それぞれ示す。
【0090】
(お腹の調子)
評価点1:摂取開始前と比較して、お腹の調子に変化はなかった。
評価点2:摂取開始前と比較して、お腹の調子が改善した気がする。
評価点3:摂取開始前と比較して、お腹の調子が明らかに改善した気がする。
評価点4:摂取開始前と比較して、お腹の調子が劇的に改善した気がする。
【0091】
(すっきり感)
評価点1:摂取開始前と比較して、気分がすっきりする日の数に変化はなかった。
評価点2:摂取開始前と比較して、気分がすっきりする日が多くなった気がする。
評価点3:摂取開始前と比較して、気分がすっきりする日が明らかに多くなった気がする。
評価点4:摂取開始前と比較して、気分がすっきりする日が劇的に多くなった気がする。
【0092】
また、全ての評価者において、摂取前1週間と6週間摂取後1週間の排便状態を評価した。排便状態は、具体的には、一週間当たりの排便日数(日/週)、一週間当たりの排便回数(回/週)、及び一週間当たりの排便量(ピンポン玉個数換算:個/週)により評価した。各群の全ての評価者の評価点の平均を、当該群が摂取したヨーグルト飲料の評価点とした。評価結果(評価点の平均値±標準偏差)を表7に示す。表中、「摂取前」の欄は、ヨーグルト飲料摂取前1週間の結果を示し、「摂取後」の欄は、ヨーグルト飲料6週間継続摂取後1週間の結果を示す。
【0093】
【表7】
【0094】
図1に示すように、試験区3-1摂取群及び試験区3-2摂取群のいずれにおいても、大部分の被験者において、6週間の継続摂取により、お腹の調子が改善されたとの実感が得られていた。また、表7に示すように、実際に6週間摂取により排便回数や排便量が増大しており、試験区3-1及び試験区3-2のいずれのヨーグルト飲料も、整腸効果が得られることが確認された。
図1
図2