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特開2024-147217水力機器光通信装置および水力機器システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147217
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】水力機器光通信装置および水力機器システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/80 20130101AFI20241008BHJP
【FI】
H04B10/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060087
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】榎本 保之
(72)【発明者】
【氏名】内田 竜朗
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AL11
5K102KA01
5K102KA42
5K102PB01
5K102PH31
5K102RD28
(57)【要約】
【課題】通信の安定化を容易に実現可能な水力機器光通信装置等を提供する。
【解決手段】実施形態の水力機器光通信装置は、回転側無線通信部と静止側無線通信部と気泡供給装置とを有し、回転部を内部に備える水力機器に設けられる。回転側無線通信部は、回転部に設置される。静止側無線通信部は、水力機器の外部に設置され、水力機器において水が流れる流路を介して、回転側無線通信部との間において光無線通信を実行する。気泡供給装置は、光無線通信を実行する際に、流路を流れる水に気泡を供給するように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転部を内部に備える水力機器に設けられる水力機器光通信装置であって、
前記回転部に設置される回転側無線通信部と、
前記水力機器の外部に設置され、前記水力機器において水が流れる流路を介して、前記回転側無線通信部との間において光無線通信を実行する静止側無線通信部と、
前記光無線通信を実行する際に、前記流路を流れる水に気泡を供給するように構成されている気泡供給装置と
を有する、
水力機器光通信装置。
【請求項2】
前記回転側無線通信部は、
前記水力機器に関する測定データを出力する測定部
を含み、
前記測定部によって出力された前記測定データが、前記光無線通信によって、前記回転側無線通信部から前記静止側無線通信部へ送信される、
請求項1に記載の水力機器光通信装置。
【請求項3】
前記回転部は、
水が流れることによって回転するランナ
を含み、
前記気泡供給装置は、前記流路において前記ランナから流出する水に、前記気泡を供給するように構成されている、
請求項1に記載の水力機器光通信装置。
【請求項4】
前記気泡供給装置は、前記回転部に形成された連通孔を介して、前記気泡を供給するように構成されている、
請求項1に記載の水力機器光通信装置。
【請求項5】
前記光無線通信の通信状態に基づいて、前記気泡供給装置が前記気泡を供給する動作を制御する気泡供給制御部
を有する、
請求項1に記載の水力機器光通信装置。
【請求項6】
請求項1に記載の水力機器光通信装置。
を備える、
水力機器システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、水力機器光通信装置および水力機器システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水車、ポンプ等の水力機器は、水中において光無線通信を行う場合がある。
【0003】
具体的には、水力機器は、内部構造物の変形等を把握するために、歪ゲージや圧力センサなどの計測器を用いて計測を実行する場合がある。例えば、ギヤポンプ、スクリューポンプ等の容積型流体機械、熱交換器等の各種流体機械、及び、単純な配管等の内部に配置された翼などに関して。計測が実行される。また、水力機器においては、内部の流動を可視化して、機器の健全性を定量的に評価するために、撮像装置を用いて内部の画像を撮影する場合がある。そして、計測器によって取得された計測データ、および、撮像装置によって取得された撮像データ等のデータが、光無線通信によって伝送される。
【0004】
上記の光無線通信を実行する水力機器光通信装置は、例えば、水力機器の回転部に設置された無線通信部と、水力機器の外部に設置された他の無線通信部とを有し、両者の間の光無線通信が、水力機器の流路を流れる水を介して、実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-220809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の光無線通信は、水を介して実行されるため、通信状態が不安定になる場合がある。このため、通信の安定化が求められている。
【0007】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、通信の安定化を容易に実現可能な、水力機器光通信装置および水力機器システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の水力機器光通信装置は、回転側無線通信部と静止側無線通信部と気泡供給装置とを有し、回転部を内部に備える水力機器に設けられる。回転側無線通信部は、回転部に設置される。静止側無線通信部は、水力機器の外部に設置され、水力機器において水が流れる流路を介して、回転側無線通信部との間において光無線通信を実行する。気泡供給装置は、光無線通信を実行する際に、流路を流れる水に気泡を供給するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1実施形態に係る水力機器システムの要部を模式的に示す図である。
図2図2は、第1実施形態に係る光通信装置において、回転側無線通信部の要部を模式的に示す図である。
図3図3は、第1実施形態に係る光通信装置において、静止側無線通信部の要部を模式的に示す図である。
図4図4は、第1実施形態に係る光通信装置において、通信速度の等値線を示す図である。
図5図5は、第1実施形態の変形例1-1に係る水力機器システムの要部を模式的に示す図である。
図6図6は、第1実施形態の変形例1-2に係る水力機器システムの要部を模式的に示す図である。
図7図7は、第2実施形態に係る水力機器システムの要部を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施形態について図面を参照して説明する。以下の実施形態は、一例である。また、図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には、同一の符号又は類似の符号を付している。また、説明の都合上、図面は、寸法比率が実際の比率とは異なる場合があり、一部の構成を省略している場合がある。
【0011】
<第1実施形態>
[A]水力機器システム1の構成
図1は、第1実施形態に係る水力機器システム1の要部を模式的に示す図である。
【0012】
本実施形態の水力機器システム1は、図1に示すように、フランシス水車100(水力機器)と光通信装置25(水力機器光通信装置)とを備える。図1では、フランシス水車100に関しては、鉛直面に沿った断面を模式的に示している。
【0013】
水力機器システム1を構成する各部について順次説明する。
【0014】
[A-1]フランシス水車100
本実施形態の水力機器システム1において、フランシス水車100は、図1に示すように、ケーシング2とステーベーン3とガイドベーン4とランナ5と発電機7と吸出し管8とを有し、水力によってランナ5(回転部)が回転するように構成されている水力機器である。
【0015】
[A-1-1]ケーシング2
ケーシング2は、渦巻き状であって、内部を水が流れるように構成されている。
【0016】
[A-1-2]ステーベーン3
ステーベーン3は、ケーシング2の内側において、複数が周方向に間隔をあけて配置されている。ステーベーン3は、ケーシング2から流入する水をガイドベーン4およびランナ5に導くために設置されている。
【0017】
[A-1-3]ガイドベーン4
ガイドベーン4は、ステーベーン3の内側において、複数が周方向に間隔をあけて配置されている。ステーベーン3から流入する水をランナ5に導くために設置されている。複数のガイドベーン4のそれぞれは、回動し開度が変わることによって、ランナ5に流入する水の流量を調節可能に構成されている。
【0018】
[A-1-4]ランナ5
ランナ5は、上カバー51と下カバー(図示省略)との間において、鉛直方向に沿った回転軸Xを中心に回転方向Rに回転するように構成されている。ここでは、ランナ5は、クラウン9とバンド10とランナ羽根11とを有する。
【0019】
具体的には、ランナ5において、クラウン9は、主軸6に連結されており、鉛直方向に沿った貫通孔を含む。バンド10は、クラウン9との間にギャップが介在するように配置されている。ランナ羽根11は、複数であって、複数のランナ羽根11がクラウン9とバンド10との間のギャップにおいて、周方向に間隔をあけて配置されている。複数のランナ羽根11は、クラウン9とバンド10とのそれぞれに接合されている。
【0020】
ランナ5には、ランナコーン20がクラウン9の下面に連結されている。ランナコーン20は、例えば、上方から下方に向かって外径が小さくなっている円錐台部を有し、例えば、ボルト等を用いてクラウン9に固定されている。ランナコーン20は、例えば、中空構造であって、内部空間を含む。ここでは、ランナコーン20の内部空間は、例えば、上方側の内径が、下方側の内径よりも小さくなるように構成されており、クラウン9の貫通孔に連通している。
【0021】
そして、ランナ5とランナコーン20とを貫通するように、バランスホール12(連通孔)が形成されている。ここでは、バランスホール12によって、クラウン9の上方と吸出し管8の内部との間が、ランナコーン20の内部空間を介して連通している。
【0022】
[A-1-5]発電機7
発電機7は、ランナ5の上方に位置しており、主軸6を介してランナ5に連結されており、ランナ5の回転によって発電を行うように構成されている。
【0023】
[A-1-6]吸出し管8
吸出し管8は、ランナ5の下方に位置しており、下池(図示省略)または放水路(図示省略)に連結されている。
【0024】
吸出し管8には、ドラフトマンホール21が設けられている。ドラフトマンホール21は、吸出し管8の外部から内部を観察するために設置されている。ここでは、ドラフトマンホール21は、吸出し管8の外周面において回転軸Xから半径方向に離間した部分に設けられている。
【0025】
この他に、吸出し管8には、透過窓部22が設けられている。透過窓部22は、吸出し管8において回転軸Xに交差する部分を含むように形成されている。透過窓部22は、光通信装置25において光無線通信が実行される際に用いられる光信号が透過する光透過材料で構成されている。例えば、光透過材料は、ガラス、及び、透明樹脂などであって、透過率が90%以上の材料が好ましい。光透過材料は、屈折率が1.33に近い値であって、高い圧力に耐える高耐圧性材料であることが好ましい。より具体的には、光信号が可視光である場合には、光透過材料は、ガラス、アクリル樹脂、または、ポリカーボネートなどのように、透過率が高い材料であることが好ましい。この他に、光透過材料は、水と屈折率が等しいフッ素モノマー重合材であってもよい。なお、ドラフトマンホール21においても、透過窓部22と同様な透過窓が設けられている。
【0026】
[A-1-7]フランシス水車100の動作
上記のフランシス水車100の動作について説明する。
【0027】
[A-1-7-1]水車運転(発電運転)
本実施形態のフランシス水車100において、水車運転(発電運転)を実行する際には、上池(図示省略)から水圧鉄管(図示省略)を経由して水がケーシング2に流入する。そして、ケーシング2からステーベーン3とガイドベーン4とを順次介して、水がランナ5に導入され、ランナ5の外周側から内周側へ流れる。これにより、ランナ5が回転軸Xを中心にして主軸6と共に回転方向Rに回転する。すなわち、ランナ5において、水の圧力エネルギーが回転エネルギーへ変換される。そして、ランナ5の回転エネルギーが主軸6を介して発電機7に伝達され、発電機7が発電を行う。水車運転の実行の際に、ランナ5から流出した水は、吸出し管8を介して、下池または放水路に放出される。
【0028】
[A-1-7-2]ポンプ運転(揚水運転)
本実施形態のフランシス水車100は、水車運転(発電運転)の他に、ポンプ運転(揚水運転)を実行可能に構成されていてもよい。つまり、回転電機を発電機7として用いる以外に電動機として用いてもよい。ポンプ運転(揚水運転)を実行する際には、回転電機(電動機)に電力を供給して駆動させることによって、ランナ5を回転させる。これにより、吸出し管8を介して、下池の水が吸い上げられ、その吸い上げられた水が上池に放出される。この際、ガイドベーン4の開度は、ポンプ揚程に応じて適切な揚水量になるように変えられる。
【0029】
なお、本実施形態では、水力機器がフランシス水車100である場合について説明するが、これに限らない、水力機器は、フランシス水車100以外であってもよい。
【0030】
[A-2]光通信装置25(水力機器光通信装置)
本実施形態の水力機器システム1において、光通信装置25は、図1に示すように、回転側無線通信部30(第1無線通信部)と静止側無線通信部40(第2無線通信部)と気泡供給装置23とを有し、フランシス水車100に設けられる。本実施形態の光通信装置25は、回転側無線通信部30と静止側無線通信部40との間の光無線通信が、フランシス水車100において水が流れる流路を介して実行されるように構成されている。回転側無線通信部30と静止側無線通信部40との間において光無線通信が行われる距離は、例えば、10mm以上であって、本実施形態の光無線通信は、いわゆる近距離無線とは相違する。
【0031】
[A-2-1]回転側無線通信部30
光通信装置25において、回転側無線通信部30は、図1に示すように、フランシス水車100において回転部であるランナコーン20に設置されており、ランナコーン20と共に回転する。ここでは、回転側無線通信部30は、例えば、ランナコーン20に形成された内部空間に小型発電機器(図示省略)と共に配置されており、小型発電機器(図示省略)から供給される電力で動作する。
【0032】
図2は、第1実施形態に係る光通信装置25において、回転側無線通信部30の要部を模式的に示す図である。
【0033】
回転側無線通信部30は、図2に示すように、測定センサ300と電気回路302と直流電源304と増幅器306とAD変換器308と回転側データ収録器310(第1データ収録器)と回転側ネットワークプロトコル変換器312(第1ネットワークプロトコル変換器)と回転側撮像装置314(第1撮像装置)と回転側撮像制御器316(第1撮像制御器)と回転側無線通信器318(第1無線通信器)とを有する。測定センサ300、電気回路302、直流電源304、増幅器306、および、AD変換器308は、測定部を構成している。
【0034】
[A-2-1-1]測定センサ300
測定センサ300は、フランシス水車100を構成するランナ5(図1参照)に関する測定データを出力するように構成されている。測定センサ300は、少なくとも1つであって、例えば、ランナ5の表面に貼り付けられている。ここでは、測定センサ300は、例えば、ランナ5の表面歪または応力を測定し、測定データを出力する。この他に、測定センサ300は、ランナ5内の圧力、温度、振動などの値を測定データとして出力するように構成されていてもよい。
【0035】
[A-2-1-2]電気回路302
電気回路302は、例えば、ブリッジ回路であって、第1抵抗R1と第2抵抗R2と第3抵抗R3とを含む。電気回路302においては、測定センサ300の一端に第1抵抗R1の一端が接続され、測定センサ300の他端に第2抵抗R2の一端が接続されている。第1抵抗R1の他端に第3抵抗R3の一端が接続され、第2抵抗R2の他端が第3抵抗R3の他端に接続されている。
【0036】
測定センサ300の他端と第1抵抗R1の他端とのそれぞれには、直流電源304が接続されている。そして、測定センサ300の一端と第2抵抗R2の他端とのそれぞれには、増幅器306が接続されている。このため、測定センサ300が出力する測定データは、アナログ電圧の計測信号として、増幅器306によって増幅される。
【0037】
[A-2-1-3]AD変換器308
AD変換器308は、増幅器306に接続されており、増幅器306によって増幅された測定データをアナログ信号からデジタル信号に変換する。
【0038】
[A-2-1-4]回転側データ収録器310
回転側データ収録器310は、AD変換器308に接続されている記録装置であって、AD変換器308によってデジタル信号に変換された測定データを時系列に記録する。
【0039】
[A-2-1-5]回転側ネットワークプロトコル変換器312
回転側ネットワークプロトコル変換器312は、回転側データ収録器310に記録された測定データをネットワークプロトコル形式に変換し、回転側無線通信器318に出力する。
【0040】
[A-2-1-6]回転側撮像装置314
回転側撮像装置314は、静止画の撮影及び動画の撮影が可能なカメラであって、画像データを生成するように構成されている。
【0041】
[A-2-1-7]回転側撮像制御器316
回転側撮像制御器316は、回転側撮像装置314に接続されており、回転側撮像装置314の撮像動作を制御する。回転側撮像制御器316は、演算器(図示省略)とメモリ装置(図示省略)とを含み、メモリ装置が記憶しているプログラムを用いて演算器が演算処理を行うことによって、上記の制御を行うように構成されている。ここでは、回転側撮像制御器316は、回転側撮像装置314の撮像によって得た画像データが、回転側データ収録器310において時系列に収録されるように制御を行う。
【0042】
[A-2-1-8]回転側無線通信器318
回転側無線通信器318は、図2に示すように、回転側送信部3180a(第1送信部)と回転側受信部3180b(第1受信部)と回転側制御部3180c(第1制御部)とを含み、静止側無線通信部40との間の光無線通信を実行可能に構成されている。
【0043】
[A-2-1-8-1]回転側送信部3180a
回転側送信部3180aは、回転側ネットワークプロトコル変換器312によって変換された測定データについて、電気信号から光信号に変換し、その光信号(第1の光信号)を送信する。ここでは、回転側送信部3180aは、その変換した光信号を、例えば、可視光のレーザ光L30として出射する。回転側送信部3180aは、高速通信の性能を向上させるために、例えば、広がり角が20°未満であるレーザ光L30を出射するレーザを光源として有する。
【0044】
本実施形態では、回転側送信部3180aは、レーザ光L30の光軸がランナコーン20の回転軸X(図1参照)と一致するように、レーザ光L30を出射する。このため、回転側送信部3180aは、ランナコーン20が回転した状態であっても、レーザ光L30の光軸が一定であるため、測定データを安定的に送信可能である。また、これに伴い、透過窓部22(図1参照)を小さくすることが可能であるため、透過窓部22(図1参照)によって吸出し管8の強度が低下することを抑制可能である。
【0045】
[A-2-1-8-2]回転側受信部3180b
回転側受信部3180bは、静止側無線通信部40から送信された光信号(第2の光信号)を受信する。ここでは、回転側受信部3180bは、例えば、光電子増倍管を含み、静止側無線通信部40からレーザ光L40として出射された光信号を光電子増倍管が受光するように構成されている。
【0046】
[A-2-1-8-3]回転側制御部3180c
回転側制御部3180cは、演算器(図示省略)とメモリ装置(図示省略)とを含み、メモリ装置が記憶しているプログラムを用いて演算器が演算処理を行うことによって、回転側無線通信部30を構成する各部の動作を制御するように構成されている。ここでは、回転側制御部3180cは、例えば、静止側無線通信部40から送信された光信号に基づいて、各部の動作を制御する。
【0047】
[A-2-2]静止側無線通信部40
光通信装置25において、静止側無線通信部40は、図1に示すように、フランシス水車100の外部に設置されている。静止側無線通信部40は、静止体である。
【0048】
図3は、第1実施形態に係る光通信装置25において、静止側無線通信部40の要部を模式的に示す図である。
【0049】
静止側無線通信部40は、図3に示すように、静止側無線通信器400(第2無線通信器)と静止側ネットワークプロトコル変換器402a(第2ネットワークプロトコル変換器)と静止側データ収録器402b(第2データ収録器)と静止側撮像制御器402c(第2撮像制御器)と静止側撮像装置404(第2撮像装置)と表示部406と操作部408とを有する。静止側無線通信部40において、静止側ネットワークプロトコル変換器402a、静止側データ収録器402b、および、静止側撮像制御器402cは、制御処理装置402を構成している。
【0050】
[A-2-2-1]静止側無線通信器400
静止側無線通信器400は、図3に示すように、静止側送信部4000a(第2送信部)と静止側受信部4000b(第2受信部)と静止側制御部4000c(第2制御部)とを含み、回転側無線通信部30との間の光無線通信を実行可能に構成されている。
【0051】
[A-2-2-1-1]静止側送信部4000a
静止側送信部4000aは、静止側ネットワークプロトコル変換器402aによって変換されたデータについて、電気信号から光信号に変換し、その光信号(第2の光信号)を送信する。ここでは、静止側送信部4000aは、その変換した光信号を、例えば、可視光のレーザ光L40として出射する。静止側送信部4000aは、高速通信の性能を向上させるために、例えば、広がり角が20°未満であるレーザ光L40を出射するレーザを光源として有する。
【0052】
本実施形態では、静止側送信部4000aは、回転側送信部3180aの場合と同様に、レーザ光L40の光軸がランナコーン20の回転軸X(図1参照)と一致するように、レーザ光L40を出射する。このため、静止側送信部4000aは、ランナコーン20が回転した状態であっても、レーザ光L40の光軸が一定であるため、データを安定的に送信可能である。
【0053】
[A-2-2-1-2]静止側受信部4000b
静止側受信部4000bは、回転側無線通信部30から送信された光信号(第1の光信号)を受信する。ここでは、静止側受信部4000bは、例えば、光電子増倍管を含み、回転側無線通信部30からレーザ光L30として出射された光信号を光電子増倍管が受光するように構成されている。静止側受信部4000bが受信した光信号は、電気信号に変換されて、静止側ネットワークプロトコル変換器402aに出力される。
【0054】
[A-2-2-1-3]静止側制御部4000c
静止側制御部4000cは、演算器(図示省略)とメモリ装置(図示省略)とを含み、メモリ装置が記憶しているプログラムを用いて演算器が演算処理を行うことによって、静止側無線通信部40を構成する各部の動作を制御するように構成されている。ここでは、静止側制御部4000cは、例えば、回転側無線通信部30から送信された光信号に基づいて、各部の動作を制御する。
【0055】
[A-2-2-2]静止側ネットワークプロトコル変換器402a
静止側ネットワークプロトコル変換器402aは、静止側無線通信器400から供給された電気信号をネットワークプロトコル形式に変換し、静止側データ収録器402bに出力する。
【0056】
[A-2-2-3]静止側データ収録器402b
静止側データ収録器402bは、静止側ネットワークプロトコル変換器402aに接続されている記録装置であって、静止側ネットワークプロトコル変換器402aによって変換された電気信号を時系列に記録する。
【0057】
[A-2-2-4]静止側撮像制御器402c
静止側撮像制御器402cは、静止側撮像装置404に接続されており、静止側撮像装置404の撮像動作を制御する。静止側撮像制御器402cは、演算器(図示省略)とメモリ装置(図示省略)とを含み、メモリ装置が記憶しているプログラムを用いて演算器が演算処理を行うことによって、上記の制御を行うように構成されている。ここでは、静止側撮像制御器402cは、静止側撮像装置404の撮像によって得た画像データが、静止側データ収録器402bにおいて時系列に収録されるように制御を行う。また、静止側撮像制御器402cは、光通信装置25を構成する各部の動作を制御するように構成されていてもよい。
【0058】
[A-2-2-5]静止側撮像装置404
静止側撮像装置404は、静止画の撮影及び動画の撮影が可能なカメラであって、画像データを生成するように構成されている。静止側撮像装置404は、例えば、透過窓部22を介して、吸出し管8の内部について撮像する。
【0059】
[A-2-2-6]表示部406
表示部406は、例えば、モニタ(ディスプレイ)を含み、静止側撮像制御器402cを介して、静止側データ収録器402bが記憶している画像データを、表示画面に表示するように構成されている。
【0060】
[A-2-2-7]操作部408
操作部408は、例えば、キーボード、マウス等のユーザインターフェイス装置を含み、ユーザの操作に応じて操作信号を静止側撮像制御器402cに出力する。静止側撮像制御器402cは、操作信号に基づいて、各部の動作を制御する。
【0061】
[A-2-3]気泡供給装置23
気泡供給装置23は、図1に示すように、光無線通信を実行する際に、フランシス水車100において流路を流れる水に気泡24を供給するように構成されている。ここでは、気泡供給装置23は、気泡供給弁V231が設置された気泡供給管231を介して、ランナ5から吸出し管8へ流出した水に、気泡供給源(図示省略)から気泡24を供給する。
【0062】
本実施形態の気泡供給装置23では、気泡供給管231は、水平方向に管軸が沿うように、吸出し管8を貫通している。そして、気泡供給管231において気泡24を供給する供給口は、例えば、回転軸Xの近傍に位置している。気泡供給弁V231は、気泡24の供給量を調整するために設けられている。
【0063】
[B]気泡供給装置23の作用
図4は、第1実施形態に係る光通信装置25において、通信速度の等値線を示す図である。
【0064】
図4では、フランシス水車100にて流路を流れる水に気泡供給装置23が気泡24を供給しない場合に関して左側に示していると共に、フランシス水車100にて流路を流れる水に気泡供給装置23が気泡24を供給した場合に関して右側に示している。図4では、線が太くなるほど、通信速度が大きいことを示している。図4において、破線は、通信速度が最も小さい値であることを示しており、破線の内側の領域は、通信可能であるのに対して、破線よりも外側の領域では、通信不能であることを示している。
【0065】
図4から判るように、通信可能領域は、気泡24の供給が有る場合(右側)の方が、気泡24の供給が無い場合(左側)よりも、広い。また、通信速度が高い領域は、気泡24の供給が有る場合(右側)の方が、気泡24の供給が無い場合(左側)よりも、広い。この結果から、通信の安定性は、気泡24の供給が有る場合(右側)の方が、気泡24の供給が無い場合(左側)よりも高いことが判る。
【0066】
吸出し管8の流路を流れる水に気泡供給装置23が気泡24を供給したとき、吸出し管8の流路では、水に複数の気泡24が分散した状態になる。水の屈折率と気泡24(空気)の屈折率は、互いに異なる。
【0067】
このため、回転側無線通信部30から光信号として出射されるレーザ光L30(図2参照)は、吸出し管8の内部において、水と気泡24(空気)との界面での屈折を繰り返しながら、静止側無線通信部40へ進行する。つまり、回転側無線通信部30から出射されたレーザ光L30は、吸出し管8の内部において発散した状態になって、静止側無線通信部40で受光される。
【0068】
同様に、静止側無線通信部40から光信号として出射されるレーザ光L40(図3参照)も、吸出し管8の内部において、水と気泡24(空気)との界面での屈折を繰り返しながら、回転側無線通信部30へ進行する。つまり、静止側無線通信部40から出射されたレーザ光L30は、吸出し管8の内部において発散した状態になって、回転側無線通信部30で受光される。
【0069】
その結果、図4に示したように、気泡24の供給が有る場合(右側)の方が、気泡24の供給が無い場合(左側)よりも、通信の安定性が高くなる。
【0070】
[C]まとめ
以上のように、本実施形態では、光無線通信を実行する際に、フランシス水車100において流路を流れる水に気泡供給装置23が気泡24を供給する。このため、本実施形態では、通信の安定化を容易に実現することができるため、大容量のデータを高速に伝送可能である。また、本実施形態では、光無線通信を実行するために、主軸6を中実構造から中空構造に変更等することが不要である。
【0071】
[D]変形例
[D-1]変形例1-1
図5は、第1実施形態の変形例1-1に係る水力機器システム1の要部を模式的に示す図である。
【0072】
図5に示すように、気泡供給装置23は、気泡供給管231において気泡24を供給する供給口が複数であってもよい。これにより、流路を流れる水に気泡24を広い範囲に均一に供給することが可能であるため、通信の安定性をより高めることができる。
【0073】
[D-2]変形例1-2
図6は、第1実施形態の変形例1-2に係る水力機器システム1の要部を模式的に示す図である。
【0074】
図6に示すように、水力機器光通信装置25は、気泡供給制御部80を備えていてもよい。気泡供給制御部80は、回転側無線通信部30と静止側無線通信部40との間における光無線通信の通信状態に基づいて、気泡供給装置23が気泡24を供給する動作を制御する。気泡供給制御部80は、演算器(図示省略)とメモリ装置(図示省略)とを含み、メモリ装置が記憶しているプログラムを用いて演算器が演算処理を行うことによって、上記の制御を行うように構成されている。
【0075】
具体的には、気泡供給制御部80は、光無線通信の通信状態に関するデータD1が、回転側無線通信部30と静止側無線通信部40との少なくとも一方から入力される。そして、気泡供給制御部80は、光無線通信の通信状態に関するデータD1に応じて、光無線通信の通信状態が予め定めた状態になるように、気泡24の供給動作を調整する制御信号CT1を気泡供給弁V231に送信し、気泡供給弁V231の開度を調整する。
【0076】
例えば、気泡24の供給量が多いために、光無線通信の通信状態が予め定めた状態でない場合には、気泡供給制御部80は、気泡24の供給量を減少させるように気泡供給弁V231の開度を調整する。この一方で、気泡24の供給量が少ないために、光無線通信の通信状態が予め定めた状態でない場合には、気泡供給制御部80は、気泡24の供給量を増加させるように気泡供給弁V231の開度を調整する。これにより、例えば、通信可能領域の大きさが、適正範囲に調整される。
【0077】
[D-3]その他の変形例
上記の実施形態では、回転側無線通信部30と静止側無線通信部40が回転軸Xにおいて並ぶように配置され、光無線通信が回転軸Xに沿って実行される場合について説明したが、これに限らない。例えば、ドラフトマンホール21を介して、回転側無線通信部30と静止側無線通信部40との間の光無線通信が実行できるように、回転側無線通信部30と静止側無線通信部40とを配置してもよい(図1参照)。
【0078】
また、上記の実施形態では、光無線通信は、可視光のレーザ光を光信号として用いて実行される場合について説明したが、これに限らない。光無線通信では、例えば、紫外線、X線などのように、可視波長帯以外の波長帯の光を、光信号として用いてもよい。
【0079】
<第2実施形態>
[A]水力機器システム1の構成
図7は、第2実施形態に係る水力機器システム1の要部を模式的に示す図である。
【0080】
本実施形態の水力機器システム1は、図7に示すように、光通信装置25(水力機器光通信装置)の気泡供給装置23が設置された位置が、第1実施形態の場合(図1参照)と異なる。この点、および、関連する点を除き、本実施形態は、第1実施形態の場合と同様である。このため、重複する事項については、適宜、説明を省略する。
【0081】
本実施形態では、気泡供給装置23は、図7に示すように、ランナ5とランナコーン20とを貫通するように形成されたバランスホール12(連通孔)を介して、気泡24の供給を実行するように構成されている。
【0082】
具体的には、気泡供給装置23は、上カバー51に形成された供給口に気泡供給管231の一端が連結されている。気泡24は、光無線通信を実行する際に、気泡供給管231の一端からバランスホール12を介してランナコーン20の内部に流入した後に、吸出し管8の内部へ流出する。
【0083】
[B]まとめ
以上のように、本実施形態では、第1実施形態の場合と同様に、光無線通信を実行する際には、フランシス水車100において流路を流れる水に気泡供給装置23が気泡24を供給する。このため、本実施形態では、第1実施形態の場合と同様に、通信の安定化を容易に実現することができる。
【0084】
本実施形態では、第1実施形態の場合と異なり、気泡供給装置23は、ランナ5とランナコーン20とを貫通するバランスホール12を介して、気泡24を供給する。気泡24の供給を容易に行うことができる。
【0085】
[C]変形例
上記の実施形態では、ランナ5とランナコーン20とを貫通するバランスホール12を介して、気泡供給装置23が気泡24を供給する場合について説明したが、これに限らない。例えば、ランナ5においてクラウン9の上面と下面との間を貫通する連通孔(図示省略)を形成し、その連通孔(図示省略)を介して、気泡供給装置23が気泡24を供給するように構成してもよい。
【0086】
<その他>
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0087】
1:水力機器システム、2:ケーシング、3:ステーベーン、4:ガイドベーン、5:ランナ、6:主軸、7:発電機、8:吸出し管、9:クラウン、10:バンド、11:ランナ羽根、12:バランスホール、20:ランナコーン、21:ドラフトマンホール、22:透過窓部、23:気泡供給装置、24:気泡、25:光通信装置(水力機器光通信装置)、30:回転側無線通信部、40:静止側無線通信部、51:上カバー、80:気泡供給制御部、100:フランシス水車、231:気泡供給管、300:測定センサ、302:電気回路、304:直流電源、306:増幅器、308:変換器、310:回転側データ収録器、312:回転側ネットワークプロトコル変換器、314:回転側撮像装置、316:回転側撮像制御器、318:回転側無線通信器、400:静止側無線通信器、402:制御処理装置、402a:静止側ネットワークプロトコル変換器、402b:静止側データ収録器、402c:静止側撮像制御器、404:静止側撮像装置、406:表示部、408:操作部、3180a:回転側送信部、3180b:回転側受信部、3180c:回転側制御部、4000a:静止側送信部、4000b:静止側受信部、4000c:静止側制御部、L30:レーザ光、L40:レーザ光、R:回転方向、R1:抵抗、R2:抵抗、R3:抵抗、V231:気泡供給弁、X:回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7