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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147219
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】スラスト円筒ころ軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/34 20060101AFI20241008BHJP
   F16C 19/30 20060101ALI20241008BHJP
   F16C 33/48 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
F16C33/34
F16C19/30
F16C33/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060089
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】沼田 陽一
【テーマコード(参考)】
3J701
【Fターム(参考)】
3J701AA15
3J701AA27
3J701AA32
3J701AA42
3J701AA43
3J701AA53
3J701AA62
3J701BA05
3J701BA09
3J701BA35
3J701BA46
3J701DA11
3J701FA38
3J701FA44
3J701XB03
3J701XB24
(57)【要約】
【課題】スラスト円筒ころ軸受の回転抵抗を低減する。
【解決手段】スラスト円筒ころ軸受10は、複数の円筒状のころ13と、ころ13を保持する円板状の保持器14とを有する。保持器14は、径方向外側に位置する第一環状体21と、径方向内側に位置する第二環状体22と、第一環状体21と第二環状体22とを繋ぐ複数の柱23とを有する。第一環状体21と第二環状体22との間であって周方向で隣り合う二つの柱23の間に形成される空間が、ころ13を収容するポケット19である。ころ13は、第一環状体21と対向する第一外端面32を有する。第一外端面32は、研磨面であって中央に位置する第一平坦面41と、第一平坦面41に続く環状の第一傾斜面42と、第一傾斜面ところ13の第一外周面31との間に位置する環状の第一面取り面43とを有する。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の円筒状のころと、前記ころを保持する円板状の保持器と、を有し、
前記保持器は、径方向外側に位置する第一環状体と、径方向内側に位置する第二環状体と、前記第一環状体と前記第二環状体とを繋ぐ複数の柱と、を有し、
前記第一環状体と前記第二環状体との間であって周方向で隣り合う二つの前記柱の間に形成される空間が、前記ころを収容するポケットであり、
前記ころは、前記第一環状体と対向する外端面を有し、
前記外端面は、研磨面であって中央に位置する平坦面と、前記平坦面に続く環状の傾斜面と、前記傾斜面と前記ころの外周面との間に位置する環状の面取り面と、を有する、
スラスト円筒ころ軸受。
【請求項2】
前記傾斜面は、旋削面である、
請求項1に記載のスラスト円筒ころ軸受。
【請求項3】
前記平坦面は、円形であり、
前記第一環状体は、前記平坦面が接触する内周面を有し、
前記平坦面の直径は、前記内周面の軸方向寸法よりも小さい、
請求項1に記載のスラスト円筒ころ軸受。
【請求項4】
前記平坦面に対する前記傾斜面の傾斜角度は、5度未満である、
請求項1に記載のスラスト円筒ころ軸受。
【請求項5】
前記複数のころは、
一つの前記ポケットに保持される、第一ころと、前記保持器の径方向に沿って前記第一ころと並んで配置され前記第一ころより短い第二ころと、を含み、
前記保持器が有する複数の前記ポケットは、
前記第一ころが、前記第二ころよりも、前記保持器の径方向について外側に位置する第一ポケットと、前記第一ころが、前記第二ころよりも、前記保持器の径方向について内側に位置する第二ポケットと、を含む、
請求項1に記載のスラスト円筒ころ軸受。
【請求項6】
前記保持器は、前記第一ポケットと前記第二ポケットとが前記保持器の周方向に沿って交互に配置されている領域を有する、
請求項5に記載のスラスト円筒ころ軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラスト円筒ころ軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1にスラスト円筒ころ軸受が開示されている。スラスト円筒ころ軸受は、第一軌道輪と第二軌道輪との間に位置する複数のころと、複数のころを保持する円板状の保持器とを有する。
軸受が回転すると、ころは、円筒状であることから直線方向に転がろうとする。しかし、ころの外端面に、保持器が有する外側の環状体が接触することにより、ころは、軸受の周方向(回転方向)に転がるように矯正される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-316930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図5は、従来のスラスト円筒ころ軸受の一部を示す説明図である。前記のとおり、保持器90が有する外側の環状体91は、ころ99の外端面98に接触することで、ころ99は、軸受の周方向(回転方向)に転がる。
ころ99の外端面98と環状体91との接触による、軸受の回転抵抗を低減するために、従来、外端面98は球面形状を有する。その球面形状の半径は、環状体91の内周面91aの半径よりも小さく設定される。
【0005】
軸受の回転抵抗は、その軸受を搭載する回転機器において、エネルギーロスとなることから、スラスト円筒ころ軸受においても、回転抵抗をできるだけ低減することが求められる。
そこで、本発明は、回転抵抗を低減することが可能となるスラスト円筒ころ軸受を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明のスラスト円筒ころ軸受は、複数の円筒状のころと、前記ころを保持する円板状の保持器と、を有し、前記保持器は、径方向外側に位置する第一環状体と、径方向内側に位置する第二環状体と、前記第一環状体と前記第二環状体とを繋ぐ複数の柱と、を有し、前記第一環状体と前記第二環状体との間であって周方向で隣り合う二つの前記柱の間に形成される空間が、前記ころを収容するポケットであり、前記ころは、前記第一環状体と対向する外端面を有し、前記外端面は、研磨面であって中央に位置する平坦面と、前記平坦面に続く環状の傾斜面と、前記傾斜面と前記ころの外周面との間に位置する環状の面取り面と、を有する。
【0007】
前記構成を有するスラスト円筒ころ軸受によれば、軸受が回転すると、ころの外端面のうちの平坦面が、第一環状体に接触する。傾斜面は、第一環状体に接触しない。前記平坦面は研磨面であり、第一環状体との接触抵抗は小さく、ころの外端面は球面形状を有さなくても、軸受の回転抵抗を低減することが可能となる。
【0008】
(2)好ましくは、前記傾斜面は、旋削面である。
傾斜面は、第一環状体に接触しない。このため、傾斜面は、旋削面であり、その表面粗さは、研磨面である平坦面よりも粗くてもよい。傾斜面を旋削面とすることで、ころのコストダウンが可能となる。
【0009】
(3)好ましくは、前記(1)又は(2)のスラスト円筒ころ軸受において、前記平坦面は、円形であり、前記第一環状体は、前記平坦面が接触する内周面を有し、前記平坦面の直径は、前記内周面の軸方向寸法よりも小さい。
前記構成によれば、ころの平坦面は、第一環状体の内周面の範囲内で接触する。ころと第一環状体との接触による異常摩耗を防ぐことができる。
【0010】
(4)好ましくは、前記(1)から(3)のいずれか一つのスラスト円筒ころ軸受において、前記平坦面に対する前記傾斜面の傾斜角度は、5度未満である。
前記構成によれば、ころの外周面の軸方向の長さ、つまり、ころ長さが確保され、軸受の定格荷重が低下することを防ぐことが可能となる。
【0011】
(5)好ましくは、前記(1)から(4)のいずれか一つのスラスト円筒ころ軸受において、前記複数のころは、一つの前記ポケットに保持される、第一ころと、前記保持器の径方向に沿って前記第一ころと並んで配置され前記第一ころより短い第二ころと、を含み、前記保持器が有する複数の前記ポケットは、前記第一ころが、前記第二ころよりも、前記保持器の径方向について外側に位置する第一ポケットと、前記第一ころが、前記第二ころよりも、前記保持器の径方向について内側に位置する第二ポケットと、を含む。
前記構成によれば、ころが転がり接触する軌道輪に、摩耗による段差が生じることを防ぐことが可能となる。軌道輪に段差が生じると、ころは短寿命となり、ころの回転抵抗が大きくなる。
【0012】
(6)前記(5)のスラスト円筒ころ軸受において、好ましくは、前記保持器は、前記第一ポケットと前記第二ポケットとが前記保持器の周方向に沿って交互に配置されている領域を有する。
前記構成によれば、第一ポケットと第二ポケットとで、第一ころと第二ころとの配置が異なるが、全体として回転バランスの良い軸受となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のスラスト円筒ころ軸受によれば、ころと第一環状体との接触抵抗は小さく、軸受の回転抵抗を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明のスラスト円筒ころ軸受の実施の一形態を示す断面図である。
図2図2は、図1に示すスラスト円筒ころ軸受の一部を軸方向に沿って見た場合の説明図である。
図3図3は、第一ころ及び第二ころの説明図である。
図4図4は、第一ポケットの第一ころを、径方向の外側から径方向の内側に向かって見た説明図である。
図5図5は、従来のスラスト円筒ころ軸受の一部を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明のスラスト円筒ころ軸受の実施の一形態を示す断面図である。図1に示すスラスト円筒ころ軸受10(以下、軸受10とも呼ぶ。)は、第一軌道輪11と、第二軌道輪12と、複数の円筒状のころ13と、保持器14とを有する。複数のころ13は、第一軌道輪11と第二軌道輪12との間に位置する。保持器14は、円板状であり、複数のころ13を保持する。
【0016】
本実施形態の場合、第一軌道輪11は、円環形状を有する板状の部材である。第一軌道輪11は、第二軌道輪12側に第一軌道面16を有する。第二軌道輪12は、円環形状を有する板状の部材である。第二軌道輪12は、第一軌道輪11側に第二軌道面17を有する。第一軌道輪11は回転輪となり、第二軌道輪12は固定輪となる。
【0017】
軸受10の各方向について定義する。第一軌道輪11及び第二軌道輪12それぞれの中心軸Cは、一致する。その中心軸Cに沿った方向及びその中心軸Cに平行な方向を「軸方向」と定義する。中心軸Cを中心とする放射方向が「径方向」である。中心軸Cを中心とする円に沿った方向が「周方向」である。保持器14の軸方向、径方向及び周方向は、軸受10の軸方向、径方向及び周方向と一致する。軸受10が荷重(スラスト荷重)を支持する方向は軸方向となる。
【0018】
図2は、図1に示すスラスト円筒ころ軸受10の一部を軸方向に沿って見た場合の説明図である。保持器14は、第一環状体21と、第二環状体22と、複数の柱23とを有する。第一環状体21は、円環状の部材であり、保持器14の径方向外側に位置する部分である。第二環状体22は、円環状であり、保持器14の径方向内側に位置する部分である。柱23は、第一環状体21と第二環状体22とを繋ぐ部分である。
【0019】
本実施形態の場合、複数の柱23と第二環状体22とは一体(一つの部材)である。第一環状体21は、柱23と第二環状体22とからなる保持器本体15と別体(別の部材)である。ピン又はボルト等の止め部材18によって、第一環状体21と保持器本体15とは一体となる。
【0020】
第一環状体21と第二環状体22との間であって周方向で隣り合う二つの柱23の間に形成される空間が、ころ13を収容するポケット19である。保持器14は、複数のポケット19を周方向に等間隔で有する。ポケット19は、径方向に長い形状を有する。
【0021】
本実施形態の軸受10の場合、一つのポケット19に、第一ころ13Lと、第一ころ13Lより径方向の長さが短い第二ころ13Sとが、径方向に沿って並んで配置されている。第一ころ13L及び第二ころ13Sそれぞれは、径方向の長さが異なるが、円柱形状を有する。
【0022】
複数のポケット19は、複数の第一ポケット26と、複数の第二ポケット27とを含む。第一ポケット26と第二ポケット27とは同じ形状である。第一ポケット26では、第一ころ13Lが、第二ころ13Sよりも、径方向について外側に位置する。第二ポケット27では、第一ころ13Lが、第二ころ13Sよりも、径方向について内側に位置する。第一ポケット26と第二ポケット27とは、周方向に沿って交互に配置されている。
【0023】
〔第一ポケット26のころ13〕
図1及び図2に基づいて、第一ポケット26に収容される第一ころ13L及び第二ころ13Sについて説明する。
第一ころ13Lは、円筒形状となる第一外周面31と、第一環状体21の内周面21aと対向する第一外端面32と、第一外端面32と反対側の第一内端面33とを有する。第一外周面31が(図1参照)、第一軌道面16及び第二軌道面17に転がり接触する。
第二ころ13Sは、円筒形状となる第二外周面36と、第一ころ13Lと対向する第二外端面37と、第二環状体22の外周面22aと対向する第二内端面38とを有する。第二外周面36が(図1参照)、第一軌道面16及び第二軌道面17に転がり接触する。
【0024】
図3は、第一ころ13L及び第二ころ13Sの説明図である。第一ころ13Lの第一外端面32は、第一平坦面41と、第一傾斜面42と、第一面取り面43とを有する。第一平坦面41は、円形の平坦な面であり、第一外端面32の中央に位置する。第一平坦面41は、研磨面であり、その表面粗さは、Ra0.4以下である。
【0025】
第一傾斜面42は、第一平坦面41に続く環状のテーパ面である。第一傾斜面42は、旋削面であり、その表面粗さは、第一平坦面41よりも粗い。
第一面取り面43は、第一傾斜面42と、第一ころ13Lの第一外周面31との間に位置する環状の面である。
第一外端面32は、更に、第一平坦面41と第一傾斜面42との間に位置する面取り面45を有してもよい。
【0026】
軸受10が回転すると(図1及び図2参照)、第一環状体21が有する内周面21aに、第一平坦面41が接触する。図4は、第一ポケット26の第一ころ13Lを、径方向の外側から径方向の内側に向かって見た説明図である。前記のとおり、第一平坦面41は、円形である。第一平坦面41の直径Dは、第一環状体21の内周面21aの軸方向寸法Hよりも小さい(D<H)。
この構成により、第一ころ13Lの第一平坦面41は、第一環状体21の内周面21aの範囲内で接触する。第一ころ13Lと第一環状体21との接触による異常摩耗を防ぐことができる。
【0027】
図3において、第一外端面32に相当する従来のころの端面132を想像線(二点鎖線)で示す。従来の端面132は、第一面取り面43と同様の面取り面143を有する。従来の端面132は、面取り面143を通過する球面に沿った凸球面144を有する。
本実施形態の第一平坦面41は、従来の凸球面144と接する面である。従来の凸球面144と、第一ころ13Lの軸方向について、同じ範囲K内に、第一平坦面41と第一傾斜面42とは存在する。この構成により、第一ころ13Lは、従来の凸球面144を有するころと比較して、ころ長さ(第一外周面31の軸方向の長さ)が同じであり、ころ長さを確保することが可能となる。その結果、軸受10の定格荷重が低下することを防ぐことが可能となる。
【0028】
第一平坦面41に対する第一傾斜面42の傾斜角度θは、5度未満であるのが好ましい。なお、図3では、第一傾斜面42の傾斜形状を解りやすくするために、傾斜角度θを実際よりも大きく記載している。この構成により、ころ長さが確保され、軸受10の定格荷重が低下することを防ぐことが可能となる。
【0029】
第一ころ13Lの第一内端面33は、平坦な円形の面であり、研磨面である。第一内端面33は、第一平坦面41よりも大きい円形の平坦面である。第一ころ13Lは、第一内端面33と第一外周面31との間に、面取り面44を有する。
【0030】
第一ころ13Lよりも短い第二ころ13Sについて説明する。
第二ころ13Sの第二外端面37は、第二平坦面46と、第二傾斜面47と、第二面取り面48とを有する。第二平坦面46、第二傾斜面47、及び、第二面取り面48それぞれは、第一ころ13Lの第一平坦面41、第一傾斜面42、及び、第一面取り面43それぞれと同じ形状である。つまり、第二外端面37は、第一外端面32と同じ形状である。
【0031】
第二ころ13Sの第二内端面38は、平坦な円形の面であり、研磨面である。第二内端面38は、第一内端面33と同じ形状である。第二ころ13Sは、第二内端面38と第二外周面36との間に、面取り面49を有する。
【0032】
〔第二ポケット27のころ13〕
図1及び図2により、第二ポケット27に収容される第一ころ13L及び第二ころ13Sについて説明する。
第二ポケット27では、第一ころ13Lと第二ころ13Sとの径方向に並ぶ順が、第一ポケット26と反対であるが、第二ポケット27に収容される第一ころ13Lは、第一ポケット26に収容される第一ころ13Lと同じであり、第二ポケット27に収容される第二ころ13Sは、第一ポケット26に収容される第二ころ13Sと同じである。よって、ここでは、第一ころ13L及び第二ころ13Sについての詳細な説明を省略する。
【0033】
〔本実施形態のスラスト円筒ころ軸受10について〕
以上のように、本実施形態のスラスト円筒ころ軸受10は(図1及び図2参照)、複数の円筒状のころ13L、13Sと、ころ13L、13Sを保持する円板状の保持器14とを有する。保持器14において、第一環状体21と第二環状体22との間であって周方向で隣り合う二つの柱23の間に形成される空間が、ころ13L、13Sを収容するポケット26、27である。
【0034】
第一ポケット26の第一ころ13Lは、第一環状体21の内周面21aと対向する第一外端面32を有する。図3に示すように、第一外端面32は、研磨面であって中央に位置する第一平坦面41と、第一平坦面41に続く環状の第一傾斜面42と、第一傾斜面42と第一外周面31との間に位置する環状の第一面取り面43とを有する。
第二ポケット27の第二ころ13Sは、第一環状体21の内周面21aと対向する第二外端面37を有する。第二外端面37は、研磨面であって中央に位置する第二平坦面46と、第二平坦面46に続く環状の第二傾斜面47と、第二傾斜面47と第二外周面36との間に位置する環状の第二面取り面48とを有する。
【0035】
前記構成を有するスラスト円筒ころ軸受10によれば、軸受10が回転すると、第一ポケット26における第一ころ13Lの第一外端面32のうちの第一平坦面41が、第一環状体21に接触し、第二ポケット27における第二ころ13Sの第二外端面37のうちの第二平坦面46が、第一環状体21に接触する。
第一平坦面41及び第二平坦面46は、研磨面であり、第一環状体21との接触抵抗は小さい。
【0036】
第一ポケット26における第二ころ13Sの第二外端面37のうちの第二平坦面46が、第一ころ13Lの第一内端面33に接触し、第二ポケット27における第一ころ13Lの第一外端面32のうちの第一平坦面41が、第二ころ13Sの第二内端面38に接触する。
第二平坦面46及び第一平坦面41は、研磨面であり、第一内端面33及び第二内端面38との接触抵抗は小さい。
【0037】
以上より、第一ころ13Lの第一外端面32、及び、第二ころ13Sの第二外端面37は、従来のように球面形状を有さなくても、軸受10の回転抵抗を低減することが可能となる。第一外端面32及び第二外端面37は、球面形状を有さないので、球面加工が不要であり、コスト低減にも貢献する。
【0038】
本実施形態の場合(図3参照)、第一ころ13Lの第一傾斜面42は、旋削面であり、第二ころ13Sの第二傾斜面47は、旋削面である。第一傾斜面42及び第二傾斜面47それぞれは、第一環状体21に接触しない。このため、第一傾斜面42及び第二傾斜面47は、旋削面であり、その表面粗さは、研磨面である第一平坦面41及び第二平坦面46よりも粗くてもよい。第一傾斜面42及び第二傾斜面47を旋削面とすることで、第一ころ13L及び第二ころ13Sのコストダウンが可能となる。なお、第一面取り面43及び第二面取り面48は、研磨面であってもよく、旋削面であってもよい。
【0039】
図5に示すように、従来、一つのポケット95に、2つのころ99を収容する場合、その2つのころ99は同じ長さである。この場合、径方向外側に配置される複数のころ99の移動軌跡と、径方向内側に配置される複数のころ99の移動軌跡とは、複数のポケット95それぞれで同一となる。軌道面において、径方向外側のころ99及び径方向内側のころ99が通過しない箇所が生じる。すると、軸受10が長期にわたって回転すると、ころ99による摩耗で、軌道面に段差が生じる。すると、2つの軌道輪(固定輪、回転輪)の中心軸がずれた場合に、ころ99が、前記段差に乗り上げ、ころ99が短寿命となる可能性がある。
【0040】
しかし、本実施形態の場合(図1及び図2参照)、前記のように、軌道面16,17に段差が生じることが防止される。
つまり、保持器14に保持される複数のころ13は、第一ころ13Lと、第一ころ13Lより短い第二ころ13Sとを含む。一つの第一ころ13Lと一つの第二ころ13Sとが、一つのポケット19に保持される。一つのポケット19において、第一ころ13Lと第二ころ13Sとは、保持器14の径方向に沿って、並んで配置される。複数のポケット19は、第一ポケット26と、第二ポケット27とを含む。第一ポケット26では、第一ころ13Lが、第二ころ13Sよりも、保持器14の径方向について外側に位置する。第二ポケット27では、第一ころ13Lが、第二ころ13Sよりも、保持器14の径方向について内側に位置する。
【0041】
前記構成を有することで、第一ポケット26における径方向外側の第一ころ13Lの移動軌跡と、第二ポケット27における径方向外側の第二ころ13Sの移動軌跡とは、異なる。その結果、第一軌道輪11(第一軌道面16)及び第二軌道輪12(第二軌道面17)に、摩耗による段差が生じることを防ぐことが可能となる。その結果、第一ころ13L及び第二ころ13Sの短寿命が防がれる。
【0042】
本実施形態では、図2に示すように、保持器14は、第一ポケット26と第二ポケット27とが保持器14の周方向に沿って交互に配置されている領域を有する。保持器14の全体で、第一ポケット26と第二ポケット27とが交互に配置されている。この構成により、第一ころ13Lと第二ころ13Sとは長さが異なり、第一ポケット26と第二ポケット27とで、これら第一ころ13Lと第二ころ13Sとの配置が異なるが、全体として回転バランスの良い軸受10となる。
【0043】
〔その他〕
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は、上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0044】
10 スラスト円筒ころ軸受
13 ころ
13L 第一ころ
13S 第二ころ
14 保持器
19 ポケット
21 第一環状体
21a 内周面
22 第二環状体
23 柱
26 第一ポケット
27 第二ポケット
32 第一外端面
37 第二外端面
41 第一平坦面
42 第一傾斜面
43 第一面取り面
D 直径
H 軸方向の寸法
θ 傾斜角度
図1
図2
図3
図4
図5