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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147221
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】溶接装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/16 20060101AFI20241008BHJP
   B23K 9/29 20060101ALI20241008BHJP
   B23K 9/167 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B23K9/16 L
B23K9/29 B
B23K9/167 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060093
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高田 主税
【テーマコード(参考)】
4E001
【Fターム(参考)】
4E001DD02
4E001DD03
4E001LB02
4E001LH04
4E001LH06
4E001NA01
(57)【要約】
【課題】不活性ガスの消費量を抑制しつつ溶接品質を維持するとともに、作業者の使い勝手を向上させた溶接装置を提供する。
【解決手段】制御装置は、通常制御とパージ制御とを行なうように流量調整装置を制御する。通常制御では、時刻t8以降に示すように、電源回路がオン状態に設定されている場合には、トーチスイッチの操作に応じて、不活性ガスのガスノズルへの供給を開始する。パージ制御では、時刻t1~t8に示すように、電源回路がオン状態に設定されている場合には、トーチスイッチが操作されていない場合でも、不活性ガスのガスノズルへの供給を所定時間行なうことによって、ガスノズル内のガスをパージする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非消耗電極と、ガスノズルとを有する溶接トーチと、
前記非消耗電極に溶接電流を供給する電源回路と、
前記ガスノズルに供給する不活性ガスの流量を調整する流量調整装置と、
前記電源回路のオンオフを切換える電源スイッチと、
前記溶接トーチに設けられ、ユーザが溶接開始を指示するトーチスイッチと、
前記電源回路と前記流量調整装置とを制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記電源回路がオン状態に設定されている場合に、前記トーチスイッチの操作に応じて、前記不活性ガスの前記ガスノズルへの供給を開始する通常制御と、
前記電源回路がオン状態に設定されており、かつ前記トーチスイッチが操作されていない場合に、前記不活性ガスの前記ガスノズルへの供給を所定時間行なうことによって、前記ガスノズル内のガスをパージするパージ制御とを行なうように、前記流量調整装置を制御する、溶接装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記パージ制御として、前記電源スイッチによって前記電源回路がオフ状態からオン状態に設定された場合に、所定の第1時間の前記不活性ガスの供給を行なうように前記流量調整装置を制御する、請求項1に記載の溶接装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記パージ制御として、前記電源回路がオン状態に設定されている場合に、前記トーチスイッチの操作がされないことによって非溶接状態が継続したときは、自動的に一定間隔で所定の第2時間の前記不活性ガスの供給を行なうように前記流量調整装置を制御する、請求項1または2に記載の溶接装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記通常制御時の前記不活性ガスの供給流量よりも前記パージ制御時の前記不活性ガスの供給流量が少なくなるように前記流量調整装置を制御する、請求項3に記載の溶接装置。
【請求項5】
前記溶接トーチに設けられ、第1溶接モードと第2溶接モードに溶接モードを設定するための切替スイッチをさらに備え、
前記制御装置は、
前記切替スイッチによって前記第1溶接モードが選択された場合には、前記パージ制御を行なうように構成され、
前記切替スイッチによって前記第2溶接モードが選択された場合には、前記パージ制御を行なわないように構成される、請求項1に記載の溶接装置。
【請求項6】
前記溶接トーチは、
前記ガスノズルに前記不活性ガスを供給する流路と、
前記流路に配置され前記不活性ガスの供給を遮断する遮断弁とをさらに有し、
前記制御装置は、前記通常制御時および前記パージ制御時における前記不活性ガスの供給時に前記遮断弁を開き、非供給時に前記遮断弁を閉止する、請求項1に記載の溶接装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非消耗電極の周囲にシールドガスを供給するガスノズルを有する溶接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非消耗電極を備えた溶接トーチを用いて行なう溶接では、通常、タングステンで形成された電極と被溶接物との間にアークを発生させ、そのアークの熱で被溶接物を溶融させる。たとえば、TIG(Tungsten Inert Gas)溶接法では、ガスノズルと電極との間にシールドガスを流す。シールドガスには高価なアルゴンガスなどが用いられるので、シールドガスの使用量を減らしたいという要求がある。
【0003】
このようなシールドガスを用いるアーク溶接において、ガス流量制御手段を導入してシールドガスを節約する溶接装置が特開2011-194463号公報に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-194463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シールドガスを用いるアーク溶接では、溶接開始前に手動でガスパージをしっかり行なう、またはプリフロー時間を長めに取る等の対策をする。この対策をしないと、溶接開始時に溶接トーチ先端から出てくるガス流およびガス密度が不安定となり、溶接開始時の溶接品質が悪くなる。手動の溶接では、作業者がガスパージを意識しないで済む方法、およびプリフロー時間を短くしても溶接を安定させる方法が求められている。
【0006】
一方で、ガス自体の使用量を減らしたいという要求も高いが、ガスの使用量を減らしても溶接失敗によるワーク損失による破棄が起きてしまうと、ガスの使用量削減を行なうよりも費用および環境負荷は大きくなる。
【0007】
本開示は、このような課題を解決するものであって、溶接の失敗を抑制しつつガスの使用量を減らすことができる溶接装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、溶接装置に関する。溶接装置は、非消耗電極と、ガスノズルとを有する溶接トーチと、非消耗電極に溶接電流を供給する電源回路と、ガスノズルに供給する不活性ガスの流量を調整する流量調整装置と、電源回路のオンオフを切換える電源スイッチと、溶接トーチに設けられ、ユーザが溶接開始を指示するトーチスイッチと、電源回路と流量調整装置とを制御する制御装置とを備える。制御装置は、通常制御とパージ制御とを行なうように流量調整装置を制御する。通常制御では、電源回路がオン状態に設定されている場合に、トーチスイッチの操作に応じて、不活性ガスのガスノズルへの供給を開始する。パージ制御では、電源回路がオン状態に設定されており、かつトーチスイッチが操作されていない場合に、不活性ガスのガスノズルへの供給を所定時間行なうことによって、ガスノズ内のガスをパージする。
【発明の効果】
【0009】
本開示の溶接装置によれば、高品質溶接が特徴となる非消耗電極溶接法(TIG、PJ-TIG、プラズマ溶接)において、溶接安定性を高め、初期溶接プリフローを減らしても安定した溶接品質を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1の溶接装置の構成図である。
図2】制御装置22が実行する流量調整装置3の制御を説明するためのフローチャートである。
図3】制御装置22が実行する流量調整装置3の制御を説明するための波形図である。
図4】実施の形態2の溶接装置の構成図である。
図5】溶接トーチの構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下では、複数の実施の形態について説明するが、各実施の形態で説明された構成を適宜組み合わせることは出願当初から予定されている。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0012】
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1の溶接装置の構成図である。非消耗電極溶接法(TIG、プラズマジェット-TIG、プラズマ溶接等)であれば特に限定されないが、図1には、一例として2重シールドTIG溶接装置を示す。図1に示す溶接装置1000は、溶接トーチ1と、電源回路21と、制御装置(CPU)22とを備える。
【0013】
溶接トーチ1は、非消耗電極11とガスノズル12とを有する。電源回路21は、非消耗電極11に溶接電流を供給する。流量調整装置3は、ガスノズル12に供給するガスの流量を調整する。制御装置22は、電源回路21と流量調整装置3とを制御する。
【0014】
溶接装置1000は、溶接開始指示および溶接停止指示を制御装置22に与えるためのトーチスイッチ24をさらに備える。トーチスイッチ24は、溶接トーチ1に設けられ手で操作するものであっても、溶接トーチ1と別に設けられる足踏み式のものであっても良い。トーチスイッチ24は、溶接開始を指示するスイッチ24Aと、パージ制御の有無を切替える切替スイッチ24Bとを含む。
【0015】
電源回路21と、制御装置22と、操作パネル23は、直流溶接電源2に搭載されている。制御装置22は、作業者が操作するトーチスイッチ24からのON/OFF信号と操作パネル23の設定とに基づいて、電源回路21と流量調整装置3とを制御する。
【0016】
電源回路21は、インバータ回路101と、整流回路102と、平滑コンデンサ104と、カップリング105と、高周波回路103とを含む。直流溶接電源2のマイナス端子106は、ケーブルによって非消耗電極11に接続される。直流溶接電源2のプラス端子107は、ケーブルによって母材6に接続される。
【0017】
図1に示す溶接装置1000は、2重ガスシールドのTIG溶接装置である。非消耗電極11は、タングステン電極である。
【0018】
ガスノズル12は、筒状の第1ノズル13と、筒状の第2ノズル14とを含む。第1ノズル13は、非消耗電極11の径方向外側に配置される。第2ノズル14は、第1ノズル13の径方向外側に配置される。
【0019】
ガスノズル12は、タングステン電極を中心として同心円上に2つノズルが配置された2重ガスシールドノズルである。溶接期間中は、内側に流れる不活性ガス(以下、インナーガスと呼称)は、通常のTIG溶接と比較して、配管内断面積が小さいので少ないガス流量でありながら、速いガスの流速が得られる。ガス流速を速くする効果は、ガスの冷却作用によりアークが緊縮することであり、集中したアークが得られる。また、外側の不活性ガス(以下、シールドガスと呼称)は、通常のTIG溶接で用いられるようにアークがシールドガス雰囲気下に入る程度の流量に設定される。
【0020】
ガスノズル12には、それぞれ独立したガスボンベ4,5およびガス配管からアルゴン(Ar)、ヘリウム(He)などの不活性なシールドガスおよびインナーガスが供給される。流量調整装置3は、第1不活性ガス(インナーガス)を第1ノズル13と非消耗電極11との間の第1ガス流路G1に供給し、第2不活性ガス(シールドガス)を第1ノズル13と第2ノズル14との間の第2ガス流路G2に供給するように構成される。
【0021】
第1不活性ガスと第2不活性ガスは同じガスであっても良いし、異なるガスであっても良い。たとえば、図1に示されるように第1不活性ガスと第2不活性ガスをいずれもArガスとしても良い。またたとえば、第1不活性ガス(インナーガス)としてHeガスを用い、第2不活性ガス(シールドガス)としてArガスを用いるように、二種類のガスを組み合わせて用いても良い。
【0022】
流量調整装置3は、ガス流量調整器31と、電磁弁32と、ガス圧力調整器33と、マスフローコントローラ34とを含む。
【0023】
ガス流量調整器31は、ガスボンベ4から供給される第2不活性ガス(シールドガス)の流量Foを設定する。たとえば、作業者が操作する流量バルブによって、ガス流量調整器31はガス流量Foを増減することができる。電磁弁32は、制御装置22からの制御信号に応じてガス流量調整器31から第2ガス流路G2への第2不活性ガス(シールドガス)の供給と遮断とを切替える。
【0024】
ガス圧力調整器33は、第1不活性ガス(インナーガス)の圧力を設定する。
【0025】
マスフローコントローラ34は、制御装置22からの制御信号に応じてガス圧力調整器33から第1ガス流路G1への第1不活性ガス(インナーガス)の流量Fiを増減させる。マスフローコントローラ34は、流体の質量流量を計測し流量制御を行なう機器であり、高精度な流量計測および制御を要求されるプロセスに用いられる。
【0026】
図1に示すようにシールドガスの流量Foは、ガス流量調整器31(残量メータ、フローメータを内蔵)で一定となるよう設定されている。電磁弁32を介してシールドガスの供給のON/OFFのみをCPU22が制御する。一方、インナーガスについては、ガス圧力調整器33の後にマスフローコントローラ34が設けられており、CPU22からの信号により、ガス供給のON/OFF制御とガス流量Fiの調整が可能である。
【0027】
本実施の形態では、制御装置22が流量調整装置3を制御して、不活性ガスの使用量を抑制し、かつ溶接品質の劣化を避けつつ、溶接開始時の操作性を向上させる。
【0028】
具体的には、たとえば、制御装置22は、操作パネル23の電源スイッチから電源ON指令を受けると、電源回路21を起動する前に、溶接トーチが接続されている状態であればガスパージを自動的に3~5秒行なうように流量調整装置3を制御する。その後、制御装置22は、自動で非溶接時間中に30秒~1分程度の間隔のガスパージを1~3秒行なうように流量調整装置3を制御する。これにより、ガス消費量を抑制しつつ溶接トーチ内部のアルゴン密度を保ち、溶接開始前に酸素を常に遮断できる環境を自動で構築する。
【0029】
図2は、制御装置22が実行する流量調整装置3の制御を説明するためのフローチャートである。まずステップS1において、制御装置22は、操作パネル23の電源スイッチから電源ON指令を受けたか否かを判断する。電源ON指令が来ていない場合には、ステップS1において電源ON指令が入力されるまで待機する。
【0030】
電源ON指令を受けた場合には(S1でYES)、制御装置22は、ステップS2においてパージ制御を実行する。パージ制御では、初回については、制御装置22は、溶接トーチが接続されている状態であればガスパージを自動的に3~5秒行なうように流量調整装置3を制御する。その後の2回目以降は、制御装置22は、非溶接時間中に自動でガスパージを1~3秒行なうように流量調整装置3を制御する。
【0031】
1回のパージ処理が終わった後は、ステップS3において、制御装置22は、トーチスイッチ24のスイッチ24Aから溶接開始指令を受けたか否かを判断する。溶接開始指令を受けていない非溶接時間では(S3でNO)、再びステップS2の処理が繰り返される。その結果、30秒~1分程度の間隔で、パージ処理が実行される。
【0032】
溶接開始指令を受けた場合には(S3でYES)、ステップS4において制御装置22は、通常制御を行なう。通常制御では、一定のガス流量になるように流量調整装置3が制御される。
【0033】
特にガス制御が重要となる溶接法のPJ-TIGでは、ガス密度が所定値以上に保てていないと溶接開始時に溶接が乱れる。そのため、プリフロー時間を長くしたり、シールドガスの開始からインナーガスの開始までにディレイをおいてガスを流したりすることによって、ガス流を定常状態にする方法がある。たとえば一例ではこのプリフロー時間が2秒間シールドガスを流してから1秒間シールドガスおよびインナーガスを流すこととなり、溶接開始時までに時間を3秒間要する。高品質が要求される溶接法なので、このプリフロー時間は重要なポイントとなっているが、一方でプリフロー時間が長いと溶接作業者の使い勝手が非常に悪化する。このプリフロー時間を短縮し、それでも溶接安定性を保つことが溶接装置の商品価値の向上につながる。
【0034】
図3は、制御装置22が実行する流量調整装置3の制御を説明するための波形図である。図3の時刻t1において、ユーザが溶接電源スイッチをONにしたことに応じて、制御装置22は、時刻t2~t3においてガスパージを自動的に3~5秒行なうように流量調整装置3を制御する。
【0035】
続いて時刻t8に至るまでの非溶接時間TWでは、制御装置22は、t5~t6に30秒~1分程度の間隔をあけて、自動でガスパージt4~t5、t6~t7を各1~3秒行なうように流量調整装置3を制御する。非溶接時間TWが長ければ、t5~t7のパージ制御が時刻t8まで繰返し行なわれる。
【0036】
その後、時刻t8においてトーチスイッチまたは起動信号によって溶接開始指示が入力されると、制御装置22は、時刻t8においてシールドガスを流すように流量調整装置3を制御する。そして、遅延時間TDが経過した時刻t9において、制御装置22は、インナーガスを流すように流量調整装置3を制御する。
【0037】
時刻t8からプリフロー時間TPが経過したタイミングの時刻t10において、制御装置22は電源回路21を制御して、溶接電流を溶接トーチ1に供給する。これにより溶接開始となる。
【0038】
本実施の形態のようにガスパージを定期的に行なうことによって溶接トーチ内部をアルゴンで満たし続けていると、プリフロー時間TPを0.4~5秒まで減らしても同様の溶接安定性が確保できる。これにより作業者の使い勝手が向上する。
【0039】
なお、流量調整装置3がマスフロー付き装置の場合、時刻t2~t3、t4~t5、t6~t7におけるガスパージの量を破線に示したように調整し、時刻t9以降の溶接時間におけるガス量よりも少ないガス量で溶接トーチ内部のアルゴン密度を保つようにしても良い。このようにすれば、不活性ガスの消費量をさらに削減することができる。
【0040】
実施の形態1の溶接装置によれば、溶接トーチまでのガス流路の不活性ガスの濃度が保たれるので、図3のプリフロー時間TPを短縮することができ、溶接開始指示からの作業者の待ち時間を減らすことができる。
【0041】
なお、以上説明したガスパージ制御のON/OFFを、溶接トーチの手元部分に切替スイッチ24Bを設け、切替えられるようにしても良い。たとえば通常品質が要求される製品の溶接の場合には、ガスパージ制御をOFFとし、高品質が要求される製品の場合または連続して多数の製品の溶接を行なう場合などはガスパージ制御をONとすることができる。
【0042】
[実施の形態2]
図4は、実施の形態2の溶接装置の構成図である。
【0043】
図4に示す溶接装置1000Aは、図1に示す溶接装置1000の構成において溶接トーチ1に代えて溶接トーチ1Aを備える。溶接トーチ1Aは、溶接トーチ1に構成に加えて、遮断弁3Aをさらに備える。遮断弁3Aとしては、たとえば、電磁弁を用いることができる。溶接装置1000Aの他の部分の構成については、図1に示す溶接装置1000と同じであるので、説明は繰り返さない。
【0044】
図5は、溶接トーチの構造を示す断面図である。図5では、インナーガスノズルに不活性ガスを送る流路G1に遮断弁3Aを組込んでいる。なお、溶接トーチの本体に遮断弁3Aを組込む代わりに、溶接トーチ本体に取り付けているキャップに遮断弁を組込んでもよい。
【0045】
これにより、物理的に不活性ガスが抜ける範囲を狭くして、パージ制御によって溶接トーチ内部に不活性ガスを満たす効果を増加させることができる。
【0046】
[まとめ]
(1) 本開示は、溶接装置1000に関する。図1に示す溶接装置1000は、非消耗電極11と、ガスノズル12とを有する溶接トーチ1と、非消耗電極11に溶接電流を供給する電源回路21と、ガスノズル12に供給する不活性ガスの流量を調整する流量調整装置3と、電源回路21のオンオフを切換える電源スイッチ(操作パネル23に配置)と、溶接トーチ1に設けられ、ユーザが溶接開始を指示するトーチスイッチ24と、電源回路21と流量調整装置3とを制御する制御装置22とを備える。図2図3に示すように、制御装置22は、通常制御とパージ制御とを行なうように流量調整装置3を制御する。通常制御では、時刻t8以降に示すように、電源回路21がオン状態に設定されている場合に、トーチスイッチ24の操作に応じて、不活性ガスのガスノズルへの供給を開始する。パージ制御では、時刻t1~t8に示すように、電源回路21がオン状態に設定されており、かつトーチスイッチ24が操作されていない場合に、不活性ガスのガスノズルへの供給を所定時間行なうことによって、ガスノズル内のガスをパージする。
【0047】
このような構成とすることによって、溶接開始時の溶接待機時間が長い場合、または溶接待機と溶接を繰り返すような場合には、不活性ガスの消費量を抑制しつつ溶接品質を維持するとともに、トーチスイッチ操作から溶接開始までの遅延時間を短縮し作業者の使い勝手を向上させることができる。
【0048】
(2) 第1項に記載の溶接装置において、制御装置22は、パージ制御として、電源スイッチ(操作パネル23に配置)によって電源回路21がオフ状態からオン状態に設定された場合に、所定の第1時間(t2~t3)の不活性ガスの供給を行なうように流量調整装置3を制御する。
【0049】
このような構成とすることによって、溶接開始時の溶接待機時間が長い場合に、不活性ガスの消費量を抑制しつつ溶接品質を維持するとともに、トーチスイッチ操作から溶接開始までの遅延時間を短縮し作業者の使い勝手を向上させることができる。
【0050】
(3) 第1項または第2項に記載の溶接装置において、制御装置は、パージ制御として、電源回路21がオン状態に設定されている場合に、トーチスイッチ24の操作がされないことによって非溶接状態が継続したときは、時刻t3~t8に示すように自動的に一定間隔(t2~t3)で所定の第2時間(t4~t5、t6~t7)の不活性ガスの供給を行なうように流量調整装置3を制御する。
【0051】
このような構成とすることによって、溶接待機と溶接を繰り返すような場合に、不活性ガスの消費量を抑制しつつ溶接品質を維持することができる。併せて、トーチスイッチ操作から溶接開始までの遅延時間を短縮し作業者の使い勝手を向上させることができる。
【0052】
(4) 第3項に記載の溶接装置1000において、制御装置22は、通常制御時の不活性ガスの供給流量よりもパージ制御時の不活性ガスの供給流量が図3の破線で示すように少なくなるように流量調整装置3を制御する。
【0053】
このような構成とすることによって、不活性ガスの消費量をさらに削減することができる。
【0054】
(5) 第1項から第4項のいずれか1項に記載の溶接装置は、溶接トーチ1に設けられ、第1溶接モード(通常制御+パージ制御)と第2溶接モード(通常制御)に溶接モードを設定するための切替スイッチ24Bをさらに備える。制御装置は、切替スイッチ24Bによって第1溶接モードが選択された場合には、パージ制御を行なうように構成され、切替スイッチ24Bによって第2溶接モードが選択された場合には、パージ制御を行なわないように構成される。
【0055】
このような構成とすることによって、溶接の作業内容によって、作業者が適切なモードを手元で選択できる。
【0056】
(6) 第1項から第5項のいずれか1項に記載の溶接装置1000Aにおいて、溶接トーチ1Aは、ガスノズル12に不活性ガスを供給する流路G1,G2と、流路に配置され不活性ガスの供給を遮断する遮断弁3Aとをさらに有する。制御装置22は、通常制御時およびパージ制御時における不活性ガスの供給時に遮断弁3Aを開き、非供給時に遮断弁3Aを閉止する。
【0057】
このような構成とすることによって、溶接待機時のガス流路からのガス漏洩を防止できるので、一層プリフロー時間を短縮することが可能となる。
【0058】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0059】
1,1A 溶接トーチ、2 直流溶接電源、3 流量調整装置、3A 遮断弁、4,5 ガスボンベ、6 母材、11 非消耗電極、12 ガスノズル、13 第1ノズル、14 第2ノズル、21 電源回路、22 制御装置、23 操作パネル、24 トーチスイッチ、24A スイッチ、24B 切替スイッチ、31 ガス流量調整器、32 電磁弁、33 ガス圧力調整器、34 マスフローコントローラ、101 インバータ回路、102 整流回路、103 高周波回路、104 平滑コンデンサ、105 カップリング、106 マイナス端子、107 プラス端子、1000,1000A 溶接装置。
図1
図2
図3
図4
図5