(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014723
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】SARS-CoV-2に対する抗体
(51)【国際特許分類】
C07K 16/10 20060101AFI20240125BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240125BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20240125BHJP
G01N 33/569 20060101ALI20240125BHJP
C12N 15/50 20060101ALN20240125BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240125BHJP
【FI】
C07K16/10
A61K39/395 S
A61P31/14
G01N33/569 L
C12N15/50 ZNA
C12N15/13
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086002
(22)【出願日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】P 2022115873
(32)【優先日】2022-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591222245
【氏名又は名称】国立感染症研究所長
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】弁理士法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宜聖
(72)【発明者】
【氏名】森山 彩野
(72)【発明者】
【氏名】湯本 航平
(72)【発明者】
【氏名】黒田 大祐
(72)【発明者】
【氏名】安達 悠
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA13
4C085AA14
4C085BA71
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA29
4H045EA53
4H045FA74
(57)【要約】
【課題】 従来型のSARS-CoV-2(武漢株)に加えて、オミクロン株を含む他の変異株に対しても結合親和性及び感染中和活性の高い新規抗体を提供すること。
【解決手段】 SARS-CoV-2に対する抗体であって、SARS-CoV-2のスパイク糖タンパク質受容体結合部位(RBD)に結合する抗体であり、前記スパイク糖タンパク質のアミノ酸配列の第443位のセリン又は第489位のチロシンを認識することを特徴とする、抗SARS-CoV-2抗体。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SARS-CoV-2に対する抗体であって、SARS-CoV-2のスパイク糖タンパク質受容体結合部位(RBD)に結合する抗体であり、前記スパイク糖タンパク質のアミノ酸配列の第443位のセリン又は第489位のチロシンを認識することを特徴とする、抗SARS-CoV-2抗体。
【請求項2】
SARS-CoV-2のスパイク糖タンパク質受容体結合部位(RBD)に対して解離定数(KD)1.0×10-6M以下で結合することを特徴とする、請求項1に記載の抗SARS-CoV-2抗体。
【請求項3】
下記(1)~(15):
(1)配列番号:30に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列、又は、配列番号:30に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域1-1;配列番号:30に記載のアミノ酸配列の第51~58位のアミノ酸配列、又は、配列番号:30に記載のアミノ酸配列の第51~58位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域2-1;配列番号:2に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号:2に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域3-1としてそれぞれ保持し、かつ、
配列番号:31に記載のアミノ酸配列の第27~32位のアミノ酸配列、又は、配列番号:31に記載のアミノ酸配列の第27~32位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域1-1;配列番号:31に記載のアミノ酸配列の第50~52位のアミノ酸配列、又は、配列番号:31に記載のアミノ酸配列の第50~52位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域2-1;配列番号:3に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号:3に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列、を軽鎖相補性決定領域3-1としてそれぞれ保持する、抗体;
(2)配列番号:32に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列、又は、配列番号:32に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域1-2;配列番号:32に記載のアミノ酸配列の第51~58位のアミノ酸配列、又は、配列番号:32に記載のアミノ酸配列の第51~58位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域2-2;配列番号:4に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号:4に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域3-2としてそれぞれ保持し、かつ、
配列番号:33に記載のアミノ酸配列の第26~34位のアミノ酸配列、又は、配列番号:33に記載のアミノ酸配列の第26~34位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域1-2;配列番号:33に記載のアミノ酸配列の第52~54位のアミノ酸配列、又は、配列番号:33に記載のアミノ酸配列の第52~54位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域2-2;配列番号:5に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号:5に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域3-2としてそれぞれ保持する、抗体;
(3)配列番号:34に記載のアミノ酸配列の第19~28位のアミノ酸配列、又は、配列番号:34に記載のアミノ酸配列の第19~28位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域1-3;配列番号:34に記載のアミノ酸配列の第46~52位のアミノ酸配列、又は、配列番号:34に記載のアミノ酸配列の第46~52位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域2-3;配列番号:6に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号:6に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域3-3としてそれぞれ保持し、かつ、
配列番号:35に記載のアミノ酸配列の第26~34位のアミノ酸配列、又は、配列番号:35に記載のアミノ酸配列の第26~34位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域1-3;配列番号:35に記載のアミノ酸配列の第52~54位のアミノ酸配列、又は、配列番号:35に記載のアミノ酸配列の第52~54位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域2-3;配列番号:7に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号:7に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列、を軽鎖相補性決定領域3-3としてそれぞれ保持する、抗体;
(4)配列番号:36に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列、又は、配列番号:36に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域1-4;配列番号:36に記載のアミノ酸配列の第51~60位のアミノ酸配列、又は、配列番号:36に記載のアミノ酸配列の第51~60位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域2-4;配列番号:8に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号:8に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域3-4としてそれぞれ保持し、かつ、
配列番号:37に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列、又は、配列番号:37に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域1-4;配列番号:37に記載のアミノ酸配列の第51~53位のアミノ酸配列、又は、配列番号:37に記載のアミノ酸配列の第51~53位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域2-4;配列番号:9に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号:9に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域3-4としてそれぞれ保持する、抗体;
(5)配列番号:38に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列、又は、配列番号:38に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域1-5;配列番号:38に記載のアミノ酸配列の第51~58位のアミノ酸配列、又は、配列番号:38に記載のアミノ酸配列の第51~58位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域2-5;配列番号:10に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号:10に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域3-5としてそれぞれ保持し、かつ、
配列番号:39に記載のアミノ酸配列の第26~34位のアミノ酸配列、又は、配列番号:39に記載のアミノ酸配列の第26~34位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域1-5;配列番号:39に記載のアミノ酸配列の第52~54位のアミノ酸配列、又は、配列番号:39に記載のアミノ酸配列の第52~54位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域2-5;配列番号:11に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号:11に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域3-5としてそれぞれ保持する、抗体;
(6)配列番号:40に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列、又は、配列番号:40に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域1-6;配列番号:40に記載のアミノ酸配列の第51~58位のアミノ酸配列、又は、配列番号:40に記載のアミノ酸配列の第51~58位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域2-6;配列番号:12に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号:12に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域3-6としてそれぞれ保持し、かつ、
配列番号:41に記載のアミノ酸配列の第27~33位のアミノ酸配列、又は、配列番号:41に記載のアミノ酸配列の第27~33位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域1-6;配列番号:41に記載のアミノ酸配列の第51~53位のアミノ酸配列、又は、配列番号:41に記載のアミノ酸配列の第51~53位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域2-6;配列番号:13に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号:13に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域3-6としてそれぞれ保持する、抗体;
(7)配列番号:42に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列、又は、配列番号:42に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域1-7;配列番号:42に記載のアミノ酸配列の第51~58位のアミノ酸配列、又は、配列番号:42に記載のアミノ酸配列の第51~58位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域2-7;配列番号:14に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号:14に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域3-7としてそれぞれ保持し、かつ、
配列番号:43に記載のアミノ酸配列の第26~31位のアミノ酸配列、又は、配列番号:43に記載のアミノ酸配列の第26~31位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域1-7;配列番号:43に記載のアミノ酸配列の第49~51位のアミノ酸配列、又は、配列番号:43に記載のアミノ酸配列の第49~51位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域2-7;配列番号:15に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号:15に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域3-7としてそれぞれ保持する、抗体;
(8)配列番号:44に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列、又は、配列番号:44に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域1-8;配列番号:44に記載のアミノ酸配列の第51~57位のアミノ酸配列、又は、配列番号:44に記載のアミノ酸配列の第51~57位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域2-8;配列番号:16に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号:16に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域3-8としてそれぞれ保持し、かつ、
配列番号:45に記載のアミノ酸配列の第27~32位のアミノ酸配列、又は、配列番号:45に記載のアミノ酸配列の第27~32位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域1-8;配列番号:45に記載のアミノ酸配列の第50~52位のアミノ酸配列、又は、配列番号:45に記載のアミノ酸配列の第50~52位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域2-8;配列番号:17に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号:17に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域3-8としてそれぞれ保持する、抗体;
(9)配列番号:46に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列、又は、配列番号:46に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域1-9;配列番号:46に記載のアミノ酸配列の第51~57位のアミノ酸配列、又は、配列番号:46に記載のアミノ酸配列の第51~57位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域2-9;配列番号:18に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号:18に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域3-9としてそれぞれ保持し、かつ、
配列番号:47に記載のアミノ酸配列の第27~32位のアミノ酸配列、又は、配列番号:47に記載のアミノ酸配列の第27~32位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域1-9;配列番号:47に記載のアミノ酸配列の第50~52位のアミノ酸配列、又は、配列番号:47に記載のアミノ酸配列の第50~52位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域2-9;配列番号:19に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号:19に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域3-9としてそれぞれ保持する、抗体;
(10)配列番号:48に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列、又は、配列番号:48に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域1-10;配列番号:48に記載のアミノ酸配列の第51~58位のアミノ酸配列、又は、配列番号:48に記載のアミノ酸配列の第51~58位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域2-10;配列番号:20に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号:20に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域3-10としてそれぞれ保持し、かつ、
配列番号:49に記載のアミノ酸配列の第27~37位のアミノ酸配列、又は、配列番号:49に記載のアミノ酸配列の第27~37位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域1-10;配列番号:49に記載のアミノ酸配列の第55~57位のアミノ酸配列、又は、配列番号:49に記載のアミノ酸配列の第55~57位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域2-10;配列番号:21に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号:21に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域3-10としてそれぞれ保持する、抗体;
(11)配列番号:50に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列、又は、配列番号:50に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域1-11;配列番号:50に記載のアミノ酸配列の第51~58位のアミノ酸配列、又は、配列番号:50に記載のアミノ酸配列の第51~58位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域2-11;配列番号:22に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号:22に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域3-11としてそれぞれ保持し、かつ、
配列番号:51に記載のアミノ酸配列の第27~33位のアミノ酸配列、又は、配列番号:51に記載のアミノ酸配列の第27~33位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域1-11;配列番号:51に記載のアミノ酸配列の第51~53位のアミノ酸配列、又は、配列番号:51に記載のアミノ酸配列の第51~53位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域2-11;配列番号:23に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号:23に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域3-11としてそれぞれ保持する、抗体;
(12)配列番号:52に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列、又は、配列番号:52に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域1-12;配列番号:52に記載のアミノ酸配列の第51~57位のアミノ酸配列、又は、配列番号:52に記載のアミノ酸配列の第51~57位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域2-12;配列番号:24に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号:24に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域3-12としてそれぞれ保持し、かつ、
配列番号:53に記載のアミノ酸配列の第27~32位のアミノ酸配列、又は、配列番号:53に記載のアミノ酸配列の第27~32位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域1-12;配列番号:53に記載のアミノ酸配列の第50~52位のアミノ酸配列、又は、配列番号:53に記載のアミノ酸配列の第50~52位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域2-12;配列番号:25に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号:25に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域3-12としてそれぞれ保持する、抗体;
(13)配列番号:54に記載のアミノ酸配列の第26~34位のアミノ酸配列、又は、配列番号:54に記載のアミノ酸配列の第26~34位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域1-13;配列番号:54に記載のアミノ酸配列の第52~58位のアミノ酸配列、又は、配列番号:54に記載のアミノ酸配列の第52~58位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域2-13;配列番号:26に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号:26に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域3-13としてそれぞれ保持し、かつ、
配列番号:55に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列、又は、配列番号:55に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域1-13;配列番号:55に記載のアミノ酸配列の第51~53位のアミノ酸配列、又は、配列番号:55に記載のアミノ酸配列の第51~53位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域2-13;配列番号:27に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号:27に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域3-13としてそれぞれ保持する、抗体;
(14)配列番号:56に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列、又は、配列番号:56に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域1-14;配列番号:56に記載のアミノ酸配列の第51~58位のアミノ酸配列、又は、配列番号:56に記載のアミノ酸配列の第51~58位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域2-14;配列番号:28に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号:28に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域3-14としてそれぞれ保持し、かつ、
配列番号:57に記載のアミノ酸配列の第26~34位のアミノ酸配列、又は、配列番号:57に記載のアミノ酸配列の第26~34位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域1-14;配列番号:57に記載のアミノ酸配列の第52~54位のアミノ酸配列、又は、配列番号:57に記載のアミノ酸配列の第52~54位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域2-14;配列番号:29に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号:29に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域3-14としてそれぞれ保持する、抗体;
(15)配列番号:65に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列、又は、配列番号:65に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域1-15;配列番号:65に記載のアミノ酸配列の第51~58位のアミノ酸配列、又は、配列番号:65に記載のアミノ酸配列の第51~58位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域2-15;配列番号:63に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号:63に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域3-15としてそれぞれ保持し、かつ、
配列番号:66に記載のアミノ酸配列の第23~31位のアミノ酸配列、又は、配列番号:66に記載のアミノ酸配列の第23~31位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域1-15;配列番号:66に記載のアミノ酸配列の第49~51位のアミノ酸配列、又は、配列番号:66に記載のアミノ酸配列の第49~51位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域2-15;配列番号:64に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号:64に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域3-15としてそれぞれ保持する、抗体;
からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の抗SARS-CoV-2抗体。
【請求項4】
下記(1)~(15):
(1)配列番号:30に記載のアミノ酸配列、配列番号:30に記載のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号:30に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列、を含む重鎖可変領域1を保持し、かつ、配列番号:31に記載のアミノ酸配列、配列番号:31に記載のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号:31に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列、を含む軽鎖可変領域1を保持する、抗体;
(2)配列番号:32に記載のアミノ酸配列、配列番号:32に記載のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号:32に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列、を含む重鎖可変領域2を保持し、かつ、配列番号:33に記載のアミノ酸配列、配列番号:33に記載のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号:33に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列、を含む軽鎖可変領域2を保持する、抗体;
(3)配列番号:34に記載のアミノ酸配列、配列番号:34に記載のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号:34に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列、を含む重鎖可変領域3を保持し、かつ、配列番号:35に記載のアミノ酸配列、配列番号:35に記載のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号:35に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列、を含む軽鎖可変領域3を保持する、抗体;
(4)配列番号:36に記載のアミノ酸配列、配列番号:36に記載のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号:36に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列、を含む重鎖可変領域4を保持し、かつ、配列番号:37に記載のアミノ酸配列、配列番号:37に記載のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号:37に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列、を含む軽鎖可変領域4を保持する、抗体;
(5)配列番号:38に記載のアミノ酸配列、配列番号:38に記載のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号:38に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列、を含む重鎖可変領域5を保持し、かつ、配列番号:39に記載のアミノ酸配列、配列番号:39に記載のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号:39に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列、を含む軽鎖可変領域5を保持する、抗体;
(6)配列番号:40に記載のアミノ酸配列、配列番号:40に記載のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号:40に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列、を含む重鎖可変領域6を保持し、かつ、配列番号:41に記載のアミノ酸配列、配列番号:41に記載のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号:41に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列、を含む軽鎖可変領域6を保持する、抗体;
(7)配列番号:42に記載のアミノ酸配列、配列番号:42に記載のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号:42に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列、を含む重鎖可変領域7を保持し、かつ、配列番号:43に記載のアミノ酸配列、配列番号:43に記載のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号:43に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列、を含む軽鎖可変領域7を保持する、抗体;
(8)配列番号:44に記載のアミノ酸配列、配列番号:44に記載のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号:44に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列、を含む重鎖可変領域8を保持し、かつ、配列番号:45に記載のアミノ酸配列、配列番号:45に記載のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号:45に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列、を含む軽鎖可変領域8を保持する、抗体;
(9)配列番号:46に記載のアミノ酸配列、配列番号:46に記載のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号:46に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列、を含む重鎖可変領域9を保持し、かつ、配列番号:47に記載のアミノ酸配列、配列番号:47に記載のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号:47に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列、を含む軽鎖可変領域9を保持する、抗体;
(10)配列番号:48に記載のアミノ酸配列、配列番号:48に記載のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号:48に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列、を含む重鎖可変領域10を保持し、かつ、配列番号:49に記載のアミノ酸配列、配列番号:49に記載のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号:49に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列、を含む軽鎖可変領域10を保持する、抗体;
(11)配列番号:50に記載のアミノ酸配列、配列番号:50に記載のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号:50に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列、を含む重鎖可変領域11を保持し、かつ、配列番号:51に記載のアミノ酸配列、配列番号:51に記載のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号:51に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列、を含む軽鎖可変領域11を保持する、抗体;
(12)配列番号:52に記載のアミノ酸配列、配列番号:52に記載のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号:52に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列、を含む重鎖可変領域12を保持し、かつ、配列番号:53に記載のアミノ酸配列、配列番号:53に記載のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号:53に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列、を含む軽鎖可変領域12を保持する、抗体;
(13)配列番号:54に記載のアミノ酸配列、配列番号:54に記載のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号:54に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列、を含む重鎖可変領域13を保持し、かつ、配列番号:55に記載のアミノ酸配列、配列番号:55に記載のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号:55に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列、を含む軽鎖可変領域13を保持する、抗体;
(14)配列番号:56に記載のアミノ酸配列、配列番号:56に記載のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号:56に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列、を含む重鎖可変領域14を保持し、かつ、配列番号:57に記載のアミノ酸配列、配列番号:57に記載のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号:57に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列、を含む軽鎖可変領域14を保持する、抗体;
(15)配列番号:65に記載のアミノ酸配列、配列番号:65に記載のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号:65に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列、を含む重鎖可変領域15を保持し、かつ、配列番号:66に記載のアミノ酸配列、配列番号:66に記載のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号:66に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列、を含む軽鎖可変領域15を保持する、抗体;
からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の抗SARS-CoV-2抗体。
【請求項5】
請求項1~4のうちのいずれか一項に記載の抗体を含有することを特徴とする、COVID-19の予防又は治療用組成物。
【請求項6】
請求項1~4のうちのいずれか一項に記載の抗体を含有することを特徴とする、SARS-CoV-2を免疫学的に検出するための組成物。
【請求項7】
請求項1~4のうちのいずれか一項に記載の抗体を用いることを特徴とする、SARS-CoV-2を免疫学的に検出する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SARS-CoV-2に対する抗体に関し、より詳しくは、SARS-CoV-2のスパイク糖タンパク質受容体結合部位(RBD)に結合する抗体、並びに、それを用いたCOVID-19の予防又は治療用組成物、SARS-CoV-2を免疫学的に検出するための組成物、及びSARS-CoV-2を免疫学的に検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2019年12月に起こったとみられる新型コロナウイルス(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2、SARS-CoV-2)感染症(COVID-19)は、瞬く間に世界中に拡散し、世界中の総感染者数や死亡者数は現在も増加を続けている。COVID-19に対しては、mRNAワクチンやDNAワクチンの接種が世界的に開始されているが、ワクチンは一般的には予防薬であるため、有用な治療薬が渇望されている。現在、COVID-19の治療薬としては、RNA依存性RNAポリメラーゼ阻害剤であるレムデシビル等の機能阻害剤や、デキサメタゾン等の抗炎症剤が知られているが、これらの治療薬では重篤な副作用が表れやすい傾向にある。
【0003】
高い有効性と低い副作用とを併せ持つ治療薬としては、従来から、感染症、癌、関節リウマチ等の様々な疾患に対する治療薬として、治療用抗体が医療分野で活用されており、COVID-19の治療薬としての抗体の研究も盛んに行なわれている。例えば、日本では、COVID-19の軽症~中等症用の治療方法として、2種類の抗SARS-CoV-2抗体を患者に投与する「抗体カクテル療法」が2021年に承認されており、抗SARS-CoV-2抗体の2種以上の組み合わせにより抗体退避変異ウイルス(エスケープウイルス)の発生を抑制できることが報告されている(Baum et al.,Science 369,p.1014-1018,2020(非特許文献1)。
【0004】
SARS-CoV-2は、ウイルス表面にあるスパイク糖タンパク質(Sタンパク質)が宿主細胞上のアンジオテンシン変換酵素2(ACE-2、Sタンパク質受容体)を認識して同宿主に感染することが知られており、現在のCOVID-19治療用抗体の多くは、かかるスパイク糖タンパク質のACE-2に対する結合を阻止することで感染中和効果を発揮する。
【0005】
しかしながら、SARS-CoV-2はこれまでに多数回の変異を繰り返しており、ウイルスゲノムの塩基配列に変異が生じてウイルスタンパク質にアミノ酸置換や欠失が発生した変異株では、しばしば免疫逃避能や増殖優位性を獲得して、かかる変異株がそれまでの流行株から置き替わることが知られている。そのため、ACE-2結合領域であるスパイク糖タンパク質受容体結合部位(RBD)に変異が生じた変異株が置き替わって新たな流行株になると、それまで従前の流行株に対して開発されていたCOVID-19治療用抗体による治療効果が発揮されなくなってしまう。
【0006】
例えば、2021年末から世界的に流行しているオミクロン株では、RBDに15個以上のアミノ酸変異が生じており、それまでに開発されていた多くのモノクローナル抗体がその感染中和活性を大きく失ってしまうことが報告されている(Cameroni et al.,Nature 602,p.664-670,2022(非特許文献2)、Liu et al.,Nature 602,p.676-681,2022(非特許文献3))。そのため、従来型のSARS-CoV-2である武漢株に加えて、オミクロン株を含む他の変異株に対しても結合親和性及び感染中和活性の高い抗SARS-CoV-2抗体の開発が求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Baum et al.,Science 369,p.1014-1018,2020
【非特許文献2】Cameroni et al.,Nature 602,p.664-670,2022
【非特許文献3】Liu et al.,Nature 602,p.676-681,2022
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、従来型のSARS-CoV-2(武漢株)に加えて、オミクロン株を含む他の変異株に対しても結合親和性及び感染中和活性の高い新規抗体、並びに、それを用いたCOVID-19の予防又は治療用組成物、SARS-CoV-2を免疫学的に検出するための組成物、及びSARS-CoV-2を免疫学的に検出する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意研究を重ね、COVID-19を発症して回復した回復者より採取した末梢血から、SARS-CoV-2のスパイク糖タンパク質受容体結合部位(RBD)に結合する抗体であり、前記スパイク糖タンパク質のアミノ酸配列の第443位のセリン又は第489位のチロシンを認識する新たな抗体を複数見出した。これらの抗体は、従来型のSARS-CoV-2(武漢株)に加えて、デルタ株や、オミクロン株(BA.1、BA.2等)を含む他の変異株に対しても結合親和性及び感染中和活性が高いことを見出した。さらに、かかる抗体をさらに改良して、後代のオミクロン株(BA.5、BA.2.75、BQ.1.1、XBB、XBB.1.5)等に対しても結合親和性及び感染中和活性がより高い抗体を開発し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、SARS-CoV-2に対する抗体、それを用いたCOVID-19の予防又は治療用組成物、SARS-CoV-2を免疫学的に検出するための組成物、及びSARS-CoV-2を免疫学的に検出する方法に関し、より具体的には以下を提供する。
【0011】
[1]
SARS-CoV-2に対する抗体であって、SARS-CoV-2のスパイク糖タンパク質受容体結合部位(RBD)に結合する抗体であり、前記スパイク糖タンパク質のアミノ酸配列の第443位のセリン又は第489位のチロシンを認識する、抗SARS-CoV-2抗体。
【0012】
[2]
SARS-CoV-2のスパイク糖タンパク質受容体結合部位(RBD)に対して解離定数(KD)1.0×10-6M以下で結合する、[1]に記載の抗SARS-CoV-2抗体。
【0013】
[3]
下記(1)~(15):
(1)配列番号:30に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列、又は、配列番号:30に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域1-1;配列番号:30に記載のアミノ酸配列の第51~58位のアミノ酸配列、又は、配列番号:30に記載のアミノ酸配列の第51~58位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域2-1;配列番号:2に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号:2に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域3-1としてそれぞれ保持し、かつ、
配列番号:31に記載のアミノ酸配列の第27~32位のアミノ酸配列、又は、配列番号:31に記載のアミノ酸配列の第27~32位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域1-1;配列番号:31に記載のアミノ酸配列の第50~52位のアミノ酸配列、又は、配列番号:31に記載のアミノ酸配列の第50~52位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域2-1;配列番号:3に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号:3に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域3-1としてそれぞれ保持する、抗体;
(2)配列番号:32に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列、又は、配列番号:32に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域1-2;配列番号:32に記載のアミノ酸配列の第51~58位のアミノ酸配列、又は、配列番号:32に記載のアミノ酸配列の第51~58位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域2-2;配列番号:4に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号:4に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域3-2としてそれぞれ保持し、かつ、
配列番号:33に記載のアミノ酸配列の第26~34位のアミノ酸配列、又は、配列番号:33に記載のアミノ酸配列の第26~34位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域1-2;配列番号:33に記載のアミノ酸配列の第52~54位のアミノ酸配列、又は、配列番号:33に記載のアミノ酸配列の第52~54位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域2-2;配列番号:5に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号:5に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域3-2としてそれぞれ保持する、抗体;
(3)配列番号:34に記載のアミノ酸配列の第19~28位のアミノ酸配列、又は、配列番号:34に記載のアミノ酸配列の第19~28位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域1-3;配列番号:34に記載のアミノ酸配列の第46~52位のアミノ酸配列、又は、配列番号:34に記載のアミノ酸配列の第46~52位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域2-3;配列番号:6に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号:6に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域3-3としてそれぞれ保持し、かつ、
配列番号:35に記載のアミノ酸配列の第26~34位のアミノ酸配列、又は、配列番号:35に記載のアミノ酸配列の第26~34位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域1-3;配列番号:35に記載のアミノ酸配列の第52~54位のアミノ酸配列、又は、配列番号:35に記載のアミノ酸配列の第52~54位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域2-3;配列番号:7に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号:7に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域3-3としてそれぞれ保持する、抗体;
(4)配列番号:36に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列、又は、配列番号:36に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域1-4;配列番号:36に記載のアミノ酸配列の第51~60位のアミノ酸配列、又は、配列番号:36に記載のアミノ酸配列の第51~60位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域2-4;配列番号:8に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号:8に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域3-4としてそれぞれ保持し、かつ、
配列番号:37に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列、又は、配列番号:37に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域1-4;配列番号:37に記載のアミノ酸配列の第51~53位のアミノ酸配列、又は、配列番号:37に記載のアミノ酸配列の第51~53位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域2-4;配列番号:9に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号:9に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域3-4としてそれぞれ保持する、抗体;
(5)配列番号:38に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列、又は、配列番号:38に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域1-5;配列番号:38に記載のアミノ酸配列の第51~58位のアミノ酸配列、又は、配列番号:38に記載のアミノ酸配列の第51~58位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域2-5;配列番号:10に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号:10に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域3-5としてそれぞれ保持し、かつ、
配列番号:39に記載のアミノ酸配列の第26~34位のアミノ酸配列、又は、配列番号:39に記載のアミノ酸配列の第26~34位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域1-5;配列番号:39に記載のアミノ酸配列の第52~54位のアミノ酸配列、又は、配列番号:39に記載のアミノ酸配列の第52~54位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域2-5;配列番号:11に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号:11に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域3-5としてそれぞれ保持する、抗体;
(6)配列番号:40に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列、又は、配列番号:40に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域1-6;配列番号:40に記載のアミノ酸配列の第51~58位のアミノ酸配列、又は、配列番号:40に記載のアミノ酸配列の第51~58位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域2-6;配列番号:12に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号:12に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域3-6としてそれぞれ保持し、かつ、
配列番号:41に記載のアミノ酸配列の第27~33位のアミノ酸配列、又は、配列番号:41に記載のアミノ酸配列の第27~33位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域1-6;配列番号:41に記載のアミノ酸配列の第51~53位のアミノ酸配列、又は、配列番号:41に記載のアミノ酸配列の第51~53位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域2-6;配列番号:13に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号:13に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域3-6としてそれぞれ保持する、抗体;
(7)配列番号:42に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列、又は、配列番号:42に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域1-7;配列番号:42に記載のアミノ酸配列の第51~58位のアミノ酸配列、又は、配列番号:42に記載のアミノ酸配列の第51~58位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域2-7;配列番号:14に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号:14に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域3-7としてそれぞれ保持し、かつ、
配列番号:43に記載のアミノ酸配列の第26~31位のアミノ酸配列、又は、配列番号:43に記載のアミノ酸配列の第26~31位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域1-7;配列番号:43に記載のアミノ酸配列の第49~51位のアミノ酸配列、又は、配列番号:43に記載のアミノ酸配列の第49~51位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域2-7;配列番号:15に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号:15に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域3-7としてそれぞれ保持する、抗体;
(8)配列番号:44に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列、又は、配列番号:44に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域1-8;配列番号:44に記載のアミノ酸配列の第51~57位のアミノ酸配列、又は、配列番号:44に記載のアミノ酸配列の第51~57位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域2-8;配列番号:16に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号:16に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域3-8としてそれぞれ保持し、かつ、
配列番号:45に記載のアミノ酸配列の第27~32位のアミノ酸配列、又は、配列番号:45に記載のアミノ酸配列の第27~32位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域1-8;配列番号:45に記載のアミノ酸配列の第50~52位のアミノ酸配列、又は、配列番号:45に記載のアミノ酸配列の第50~52位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域2-8;配列番号:17に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号:17に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域3-8としてそれぞれ保持する、抗体;
(9)配列番号:46に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列、又は、配列番号:46に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域1-9;配列番号:46に記載のアミノ酸配列の第51~57位のアミノ酸配列、又は、配列番号:46に記載のアミノ酸配列の第51~57位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域2-9;配列番号:18に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号:18に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域3-9としてそれぞれ保持し、かつ、
配列番号:47に記載のアミノ酸配列の第27~32位のアミノ酸配列、又は、配列番号:47に記載のアミノ酸配列の第27~32位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域1-9;配列番号:47に記載のアミノ酸配列の第50~52位のアミノ酸配列、又は、配列番号:47に記載のアミノ酸配列の第50~52位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域2-9;配列番号:19に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号:19に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域3-9としてそれぞれ保持する、抗体;
(10)配列番号:48に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列、又は、配列番号:48に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域1-10;配列番号:48に記載のアミノ酸配列の第51~58位のアミノ酸配列、又は、配列番号:48に記載のアミノ酸配列の第51~58位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域2-10;配列番号:20に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号:20に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域3-10としてそれぞれ保持し、かつ、
配列番号:49に記載のアミノ酸配列の第27~37位のアミノ酸配列、又は、配列番号:49に記載のアミノ酸配列の第27~37位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域1-10;配列番号:49に記載のアミノ酸配列の第55~57位のアミノ酸配列、又は、配列番号:49に記載のアミノ酸配列の第55~57位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域2-10;配列番号:21に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号:21に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域3-10としてそれぞれ保持する、抗体;
(11)配列番号:50に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列、又は、配列番号:50に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域1-11;配列番号:50に記載のアミノ酸配列の第51~58位のアミノ酸配列、又は、配列番号:50に記載のアミノ酸配列の第51~58位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域2-11;配列番号:22に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号:22に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域3-11としてそれぞれ保持し、かつ、
配列番号:51に記載のアミノ酸配列の第27~33位のアミノ酸配列、又は、配列番号:51に記載のアミノ酸配列の第27~33位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域1-11;配列番号:51に記載のアミノ酸配列の第51~53位のアミノ酸配列、又は、配列番号:51に記載のアミノ酸配列の第51~53位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域2-11;配列番号:23に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号:23に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域3-11としてそれぞれ保持する、抗体;
(12)配列番号:52に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列、又は、配列番号:52に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域1-12;配列番号:52に記載のアミノ酸配列の第51~57位のアミノ酸配列、又は、配列番号:52に記載のアミノ酸配列の第51~57位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域2-12;配列番号:24に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号:24に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域3-12としてそれぞれ保持し、かつ、
配列番号:53に記載のアミノ酸配列の第27~32位のアミノ酸配列、又は、配列番号:53に記載のアミノ酸配列の第27~32位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域1-12;配列番号:53に記載のアミノ酸配列の第50~52位のアミノ酸配列、又は、配列番号:53に記載のアミノ酸配列の第50~52位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域2-12;配列番号:25に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号:25に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域3-12としてそれぞれ保持する、抗体;
(13)配列番号:54に記載のアミノ酸配列の第26~34位のアミノ酸配列、又は、配列番号:54に記載のアミノ酸配列の第26~34位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域1-13;配列番号:54に記載のアミノ酸配列の第52~58位のアミノ酸配列、又は、配列番号:54に記載のアミノ酸配列の第52~58位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域2-13;配列番号:26に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号:26に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域3-13としてそれぞれ保持し、かつ、
配列番号:55に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列、又は、配列番号:55に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域1-13;配列番号:55に記載のアミノ酸配列の第51~53位のアミノ酸配列、又は、配列番号:55に記載のアミノ酸配列の第51~53位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域2-13;配列番号:27に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号:27に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域3-13としてそれぞれ保持する、抗体;
(14)配列番号:56に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列、又は、配列番号:56に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域1-14;配列番号:56に記載のアミノ酸配列の第51~58位のアミノ酸配列、又は、配列番号:56に記載のアミノ酸配列の第51~58位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域2-14;配列番号:28に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号:28に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域3-14としてそれぞれ保持し、かつ、
配列番号:57に記載のアミノ酸配列の第26~34位のアミノ酸配列、又は、配列番号:57に記載のアミノ酸配列の第26~34位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域1-14;配列番号:57に記載のアミノ酸配列の第52~54位のアミノ酸配列、又は、配列番号:57に記載のアミノ酸配列の第52~54位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域2-14;配列番号:29に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号:29に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域3-14としてそれぞれ保持する、抗体;
(15)配列番号:65に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列、又は、配列番号:65に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域1-15;配列番号:65に記載のアミノ酸配列の第51~58位のアミノ酸配列、又は、配列番号:65に記載のアミノ酸配列の第51~58位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域2-15;配列番号:63に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号:63に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を重鎖相補性決定領域3-15としてそれぞれ保持し、かつ、
配列番号:66に記載のアミノ酸配列の第23~31位のアミノ酸配列、又は、配列番号:66に記載のアミノ酸配列の第23~31位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域1-15;配列番号:66に記載のアミノ酸配列の第49~51位のアミノ酸配列、又は、配列番号:66に記載のアミノ酸配列の第49~51位のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域2-15;配列番号:64に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号:64に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を軽鎖相補性決定領域3-15としてそれぞれ保持する、抗体;
からなる群から選択される、[1]又は[2]に記載の抗SARS-CoV-2抗体。
【0014】
[4]
下記(1)~(15):
(1)配列番号:30に記載のアミノ酸配列、配列番号:30に記載のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号:30に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列、を含む重鎖可変領域1を保持し、かつ、配列番号:31に記載のアミノ酸配列、配列番号:31に記載のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号:31に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列、を含む軽鎖可変領域1を保持する、抗体;
(2)配列番号:32に記載のアミノ酸配列、配列番号:32に記載のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号:32に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列、を含む重鎖可変領域2を保持し、かつ、配列番号:33に記載のアミノ酸配列、配列番号:33に記載のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号:33に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列、を含む軽鎖可変領域2を保持する、抗体;
(3)配列番号:34に記載のアミノ酸配列、配列番号:34に記載のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号:34に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列、を含む重鎖可変領域3を保持し、かつ、配列番号:35に記載のアミノ酸配列、配列番号:35に記載のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号:35に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列、を含む軽鎖可変領域3を保持する、抗体;
(4)配列番号:36に記載のアミノ酸配列、配列番号:36に記載のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号:36に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列、を含む重鎖可変領域4を保持し、かつ、配列番号:37に記載のアミノ酸配列、配列番号:37に記載のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号:37に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列、を含む軽鎖可変領域4を保持する、抗体;
(5)配列番号:38に記載のアミノ酸配列、配列番号:38に記載のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号:38に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列、を含む重鎖可変領域5を保持し、かつ、配列番号:39に記載のアミノ酸配列、配列番号:39に記載のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号:39に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列、を含む軽鎖可変領域5を保持する、抗体;
(6)配列番号:40に記載のアミノ酸配列、配列番号:40に記載のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号:40に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列、を含む重鎖可変領域6を保持し、かつ、配列番号:41に記載のアミノ酸配列、配列番号:41に記載のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号:41に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列、を含む軽鎖可変領域6を保持する、抗体;
(7)配列番号:42に記載のアミノ酸配列、配列番号:42に記載のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号:42に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列、を含む重鎖可変領域7を保持し、かつ、配列番号:43に記載のアミノ酸配列、配列番号:43に記載のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号:43に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列、を含む軽鎖可変領域7を保持する、抗体;
(8)配列番号:44に記載のアミノ酸配列、配列番号:44に記載のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号:44に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列、を含む重鎖可変領域8を保持し、かつ、配列番号:45に記載のアミノ酸配列、配列番号:45に記載のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号:45に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列、を含む軽鎖可変領域8を保持する、抗体;
(9)配列番号:46に記載のアミノ酸配列、配列番号:46に記載のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号:46に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列、を含む重鎖可変領域9を保持し、かつ、配列番号:47に記載のアミノ酸配列、配列番号:47に記載のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号:47に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列、を含む軽鎖可変領域9を保持する、抗体;
(10)配列番号:48に記載のアミノ酸配列、配列番号:48に記載のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号:48に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列、を含む重鎖可変領域10を保持し、かつ、配列番号:49に記載のアミノ酸配列、配列番号:49に記載のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号:49に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列、を含む軽鎖可変領域10を保持する、抗体;
(11)配列番号:50に記載のアミノ酸配列、配列番号:50に記載のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号:50に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列、を含む重鎖可変領域11を保持し、かつ、配列番号:51に記載のアミノ酸配列、配列番号:51に記載のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号:51に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列、を含む軽鎖可変領域11を保持する、抗体;
(12)配列番号:52に記載のアミノ酸配列、配列番号:52に記載のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号:52に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列、を含む重鎖可変領域12を保持し、かつ、配列番号:53に記載のアミノ酸配列、配列番号:53に記載のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号:53に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列、を含む軽鎖可変領域12を保持する、抗体;
(13)配列番号:54に記載のアミノ酸配列、配列番号:54に記載のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号:54に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列、を含む重鎖可変領域13を保持し、かつ、配列番号:55に記載のアミノ酸配列、配列番号:55に記載のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号:55に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列、を含む軽鎖可変領域13を保持する、抗体;
(14)配列番号:56に記載のアミノ酸配列、配列番号:56に記載のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号:56に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列、を含む重鎖可変領域14を保持し、かつ、配列番号:57に記載のアミノ酸配列、配列番号:57に記載のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号:57に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列、を含む軽鎖可変領域14を保持する、抗体;
(15)配列番号:65に記載のアミノ酸配列、配列番号:65に記載のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号:65に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列、を含む重鎖可変領域15を保持し、かつ、配列番号:66に記載のアミノ酸配列、配列番号:66に記載のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号:66に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列、を含む軽鎖可変領域15を保持する、抗体;
からなる群から選択される、[1]~[3]のうちのいずれか一項に記載の抗SARS-CoV-2抗体。
【0015】
[5]
[1]~[4]のうちのいずれか一項に記載の抗体を含有する、COVID-19の予防又は治療用組成物。
【0016】
[6]
[1]~[4]のうちのいずれか一項に記載の抗体を含有する、SARS-CoV-2を免疫学的に検出するための組成物。
【0017】
[7]
[1]~[4]のうちのいずれか一項に記載の抗体を用いる、SARS-CoV-2を免疫学的に検出する方法。
【0018】
[8]
[1]~[4]のうちのいずれか一項に記載の抗体又は[6]に記載の組成物を対象に投与する、COVID-19の予防又は治療方法。
【0019】
[9]
COVID-19の予防又は治療用組成物の製造のための、[1]~[4]のうちのいずれか一項に記載の抗体の使用。
【0020】
[10]
COVID-19の予防又は治療のための、[1]~[4]のうちのいずれか一項に記載の抗体又は[6]に記載の組成物の使用。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、従来型のSARS-CoV-2(武漢株)に加えて、オミクロン株を含む他の変異株に対しても結合親和性及び感染中和活性の高い新規抗体、並びに、それを用いたCOVID-19の予防又は治療用組成物、SARS-CoV-2を免疫学的に検出するための組成物、及びSARS-CoV-2を免疫学的に検出する方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】SARS-CoV-2(武漢株、デルタ株、オミクロン株(BA.1)、オミクロン株(BA.2))に対する、抗体No.1~14の組換えモノクローナル抗体及びソトロビマブ親抗体(S309)の感染中和活性(log
10IC
50(ng/mL))を示すヒートマップである。
【
図2】各変異RBDに対する、抗体No.1~14の組換えモノクローナル抗体及びソトロビマブ親抗体(S309)の結合性(武漢株RBD(Ancestral)に結合した組換えモノクローナル抗体の量を100(%)としたときの相対結合量(Relative to Ancestral(%))を示すヒートマップである。
【
図3】SARS-CoV-2の武漢株に感染させたハムスターに、抗体No.5~7の組換えモノクローナル抗体、PBS、又はソトロビマブ親抗体(S309)を投与したときの、感染日からの体重変化(感染日(0日目)の体重を100としたときの変化)の平均値を示すグラフである。
【
図4】SARS-CoV-2の武漢株に感染させたハムスターに、抗体No.5~7の組換えモノクローナル抗体、PBS、又はソトロビマブ親抗体(S309)を投与したときの、感染日から6日目の右肺後葉重量(g)及びそれらの平均値を示すグラフである。
【
図5】SARS-CoV-2のオミクロン株(BA.1)に感染させたハムスターに、抗体No.5~7の組換えモノクローナル抗体、PBS、又はソトロビマブ親抗体(S309)を投与したときの、感染日から3日目の鼻腔洗浄液中のウイルスコピー数及びそれらの平均値を示すグラフである。
【
図6】SARS-CoV-2のオミクロン株(BA.2)に感染させたハムスターに、抗体No.5~7の組換えモノクローナル抗体、PBS、又はソトロビマブ親抗体(S309)を投与したときの、感染日から3日目の鼻腔洗浄液中のウイルスコピー数及びそれらの平均値を示すグラフである。
【
図7】各RBDに対する、抗体No.15の組換えモノクローナル抗体の結合性(武漢株RBD(Ancestral)に結合した組換えモノクローナル抗体の量を100(%)としたときの相対結合量(Relative to Ancestral(%))を示すヒートマップである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<SARS-CoV-2に対する抗体>
本発明の抗SARS-CoV-2抗体は、SARS-CoV-2に対する抗体であって、SARS-CoV-2のスパイク糖タンパク質受容体結合部位(RBD)に結合する抗体であり、前記スパイク糖タンパク質のアミノ酸配列の第443位のセリン又は第489位のチロシンを認識する抗体(以下、場合により単に「本発明の抗体」という)である。
【0024】
(SARS-CoV-2)
「SARS-CoV-2」とは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(severe acute respiratory syndrome coronavirus 2)のことを示し、「新型コロナウイルス」とも称されている。
【0025】
SARS-CoV-2のウイルス粒子の大きさは直径50~200nm程度であり、スパイク糖タンパク質(Sタンパク質)、ヌクレオカプシドタンパク質(Nタンパク質)、膜タンパク質(Mタンパク質)、及びエンベロープタンパク質(Eタンパク質)の4つのタンパク質、並びに、RNAによって構成されている。
【0026】
SARS-CoV-2としては、2019年に中華人民共和国湖北省武漢市付近で初めて発生が確認された従来型の株(本明細書中、場合により「武漢株」という)以降、様々な変異株が確認されており、国や地域により流行株が入れ替わっている。例えば、現在までに発生した懸念すべき主な変異株としては、世界保健機関(WHO)による呼称で、アルファ株、ベータ株、ガンマ株、デルタ株、オミクロン株等が挙げられる。また、これらの変異株はさらに系統に分けられ、例えば、オミクロン株には、BA.1、BA.2等の系統が確認されている。さらに近年では、オミクロン株として、BA.2.75、BA.4、BA.5、BQ.1.1、XBB、XBB.1、XBB.1.5等の系統も確認されている。本発明に係るSARS-CoV-2としては、下記のRBDを有する限り特に限定されないが、例えば、武漢株、デルタ株、及びオミクロン株からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0027】
SARS-CoV-2は、ウイルスゲノムの全長が約29900塩基の一本鎖プラス鎖RNAウイルスである。前記変異株も含めて、SARS-CoV-2のウイルスゲノムの塩基配列及びそれにコードされるアミノ酸配列については世界中で解析が進んでおり、例えば、GenBank(NCBI)等の公知のデータベースより取得可能である。
【0028】
(RBD)
本発明において、「RBD」とは、前記Sタンパク質内のスパイク糖タンパク質受容体結合部位(Receptor Binding Domain)を示し、典型的には223アミノ酸からなる。SARS-CoV-2においては、このRBDが宿主細胞上のアンジオテンシン変換酵素2(ACE-2)を認識して結合し、同宿主に感染することが知られている。そのため、この結合を阻害する(中和する)ことがCOVID-19の予防及び治療において重要である。
【0029】
前記変異株も含めて、前記RBDのアミノ酸配列及びそれをコードする塩基配列も、例えば、GenBank(NCBI)等の公知のデータベースより取得可能である。例えば、本発明に係るSARS-CoV-2のRBDの典型的アミノ酸配列としては、配列番号:1に示すアミノ酸配列の第319~541位のアミノ酸配列が挙げられる。配列番号:1に示すアミノ酸配列は、SARS-CoV-2の武漢株のスパイク糖タンパク質のアミノ酸配列(NCBI Reference Sequence:YP_009724390.1)である。ただし、ウイルスのヌクレオチド配列は変異等によって変化し、それにコードされるタンパク質のアミノ酸配列もそれに伴って改変され得ることから、本発明に係る「RBDのアミノ酸配列」は下記の第443位のセリン及び/又は第489位のチロシン(それぞれ、下記の第443位のセリンに対応するアミノ酸、第489位のチロシンに対応するアミノ酸を包含する)を有していればよく、これに限定されるものではない。本発明に係る「RBDのアミノ酸配列」として好ましくは、例えば、配列番号:1に示すアミノ酸配列の第319~541位のアミノ酸配列に対して70%以上、好ましくは80%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、又は99%以上)の相同性(好ましくは同一性)を有し、下記の第443位のセリン及び/又は第489位のチロシンを有するアミノ酸配列;配列番号:1に示すアミノ酸配列の第319~541位のアミノ酸配列において1若しくは数個(70アミノ酸以内、好ましくは45アミノ酸以内、25アミノ酸以内、20アミノ酸以内、10アミノ酸以内、5アミノ酸以内、3アミノ酸以内、2アミノ酸以内、又は1アミノ酸)のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列であり、下記の第443位のセリン及び/又は第489位のチロシンを有するアミノ酸配列等が挙げられる。
【0030】
本発明の抗SARS-CoV-2抗体は、前記RBDのうち、前記スパイク糖タンパク質のアミノ酸配列の第443位のセリン又は第489位のチロシンを認識する。なお、本明細書中、「第443位」及び「第489位」等で示すアミノ酸の位置は、前記SARS-CoV-2のスパイク糖タンパク質のアミノ酸配列(典型的には、配列番号:1に示すアミノ酸配列)におけるN末端側からのアミノ酸残基数を示す。SARS-CoV-2において、前記アミノ酸配列の第443位のセリン及び第489位のチロシンは高い保存性で保存されている。ただし、自然界においてウイルスのヌクレオチド配列は変異等によって変化し、それにコードされるタンパク質のアミノ酸配列もそれに伴って改変され得ることから、本発明に係る「スパイク糖タンパク質のアミノ酸配列の第443位のセリン」及び「スパイク糖タンパク質のアミノ酸配列の第489位のチロシン」は、それぞれ、これらに対応するアミノ酸(好ましくは、それぞれ、セリン及びチロシン)を包含する。
【0031】
本発明において、アミノ酸配列の特定のアミノ酸に「対応する」アミノ酸とは、アミノ酸配列解析ソフトウェア(例えば、GENETYX-MAC、Sequencher等)やClustalW等を用いて(例えば、パラメータ:デフォルト値(すなわち初期設定値))アミノ酸配列を整列させた際に、対照のアミノ酸(すなわち、例えば、配列番号:1に記載のアミノ酸配列の第443位のセリン及び/又は第489位のチロシン)と同列になるアミノ酸を示す。アミノ酸配列の特定のアミノ酸に「対応する」アミノ酸としては、化学的に同様なアミノ酸側鎖を有するアミノ酸(例えば、ヒドロキシ基を持つアミノ酸(セリン・トレオニン)、芳香族基を持つアミノ酸(フェニルアラニン・チロシン・トリプトファン))であることが好ましく、「スパイク糖タンパク質のアミノ酸配列の第443位のセリン」に対応するアミノ酸としてはセリンがより好ましく、「スパイク糖タンパク質のアミノ酸配列の第489位のチロシン」に対応するアミノ酸としてはチロシンがより好ましい。
【0032】
(抗SARS-CoV-2抗体)
本発明において、「抗体」には、完全な抗体の他、その機能的断片も含まれる。本発明において、「機能的断片」とは、完全な抗体の一部分(部分断片)であって、前記RBDを認識するものを示し、具体的には、Fab、F(ab’)2、Fab’、可変領域断片(Fv)、ジスルフィド結合Fv、一本鎖Fv(scFv)、sc(Fv)2、ダイアボディー、及びこれらの重合体等が挙げられる。
【0033】
ここで「Fab」とは、1つの軽鎖及び重鎖の一部からなる免疫グロブリンの一価の抗原結合断片を意味し、例えば、抗体のパパイン消化や組換え方法によって得ることができる。「F(ab’)2」とは、両方の軽鎖と両方の重鎖の部分からなる免疫グロブリンの二価の抗原結合断片を意味し、例えば、抗体のペプシン消化や組換え方法によって得ることができる。「Fab’」は、例えば、F(ab’)2を還元することによって得ることができ、抗体のヒンジ領域の1つ又はそれより多いシステインを含めて、重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端でのわずかの残基の付加によって、Fabとは異なる。
【0034】
また、「可変領域断片(Fv)」とは、完全な抗原認識及び結合部位を有する最少の抗体断片を意味する。Fvは、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域が非共有結合によって強く連結されたダイマーである。「一本鎖Fv(scFv)」は、抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、これらの領域は、単一のポリペプチド鎖に存在する。「sc(Fv)2」は、2つの重鎖可変領域及び2つの軽鎖可変領域をリンカー等で結合して一本鎖にしたものである。「ダイアボディー」とは、二つの抗原結合部位を有する小さな抗体断片であり、この断片は、同一ポリペプチド鎖の中に軽鎖可変領域に結合した重鎖可変領域を含み、各領域は別の鎖の相補的領域とペアを形成している。
【0035】
また、本発明において、「抗体」には、免疫グロブリンの全てのクラス及びサブクラスを含み、また、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を含む。「ポリクローナル抗体」は、異なるエピトープに対する異なる抗体を含む抗体調製物を示し、「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体(抗体断片を含む)を示す。本発明の抗体としては、好ましくは、モノクローナル抗体である。
【0036】
本発明の抗体としては、前記スパイク糖タンパク質のアミノ酸配列の第443位のセリン又は第489位のチロシンを認識するものであればよく、その由来、種類、形状等は特に限定されない。具体的には、ヒト由来の抗体、非ヒト動物由来の抗体(例えば、ウサギ抗体、マウス抗体、ラット抗体、ラクダ抗体)、キメラ抗体、ヒト化抗体、及びこれら抗体の機能的断片が挙げられるが、治療用抗体の目的で用いる場合には、ヒト由来の抗体又はヒト化抗体であることが好ましく、ヒト由来の抗体であることがより好ましい。
【0037】
本発明の抗体は、前記スパイク糖タンパク質のアミノ酸配列の第443位のセリン又は第489位のチロシンを認識する。本発明において、前記各アミノ酸を「認識する」とは、これらアミノ酸の少なくともいずれかが前記RBD上に存在することにより、抗原であるRBDに対する結合親和性及びSARS-CoV-2に対する感染中和活性を示すことを意味する。
【0038】
前記結合親和性は、当業者であれば公知の免疫学的手法又はそれに準じた方法によって評価することができ、例えば、後述の実施例において示す方法、すなわち、RBDとして、武漢株のRBD又はその一部(例えば、配列番号:1のアミノ酸配列の第331~529位のアミノ酸配列からなるタンパク質(Ancestral))、デルタ株のRBD又はその一部(例えば、Ancestralのアミノ酸配列にL452R及びT478Kの変異(数字は配列番号:1のアミノ酸配列における位置、以下オミクロン株においても同じ)を導入したアミノ酸配列からなるタンパク質)、及びオミクロン株のRBD又はその一部(例えば、Ancestralのアミノ酸配列にG339D、S371L、S373P、S375F、K417N、N440K、G446S、S477N、T478K、E484A、Q493R、Q498R、N501Y、及びY505Hの変異を導入したアミノ酸配列からなるタンパク質(BA.1);Ancestralのアミノ酸配列にG339D、S371F、S373P、S375F、T376A、D405N、R408S、K417N、N440K、S477N、T478K、E484A、Q493R、Q498R、N501Y、及びY505Hの変異を導入したアミノ酸配列(BA.2))からなる群から選択される少なくとも1種のRBDを用いたバイオレイヤー干渉(bio-layer interferometry:BLI)法によって測定される、当該RBDと抗体との間の解離定数(KD)で、1.0×10-6M以下であることが好ましく、1.0×10-7M以下であることがより好ましく、1.0×10-8M以下であることがさらに好ましい。また、前記RBDと抗体との間の解離定数(KD)としては、例えば、オミクロン株(BA.1)のRBDと抗体との間の解離定数(KD)で、例えば、1.0×10-7M以下であることがさらにより好ましく、1.0×10-8M以下であることが特に好ましい。
【0039】
前記感染中和活性も、当業者であれば公知の免疫学的手法又はそれに準じた方法によって評価することができ、例えば、後述の実施例において示す基準、すなわち、段階希釈した抗体と100 TCID50のSARS-CoV-2(例えば、武漢株、デルタ株、オミクロン株)とを混合してVeroE6/TMPRSS2細胞に添加したときの感染細胞数(死細胞若しくは変性細胞数又はこれらに対応する測定値(吸光度、発光強度等))が、SARS-CoV-2のみ(抗体なし)をVeroE6/TMPRSS2細胞に添加したときの感染細胞数の50%になる抗体濃度(IC50)で、1μg/mL以下であることが好ましい。
【0040】
また、抗体が、前記スパイク糖タンパク質のアミノ酸配列の第443位のセリン又は第489位のチロシンを認識するか否かは、例えば、後述の実施例において示すように、変異RBD(例えば、前記Ancestralのアミノ酸配列にS443N又はY489Sの変異を導入したアミノ酸配列からなるタンパク質)に対する結合量を測定することによって評価することができる。より具体的には、変異RBDに対する結合量が、変異導入前のRBD(例えば、武漢株のRBDの第331~529位のアミノ酸配列からなるタンパク質(Ancestral))に対するそれと比較して低ければ、より好ましくは90%未満(例えば89.9%以下)、さらに好ましくは80%未満(例えば79.9%以下)、さらにより好ましくは70%未満(例えば69.9%以下)であれば、前記スパイク糖タンパク質のアミノ酸配列の第443位のセリン又は第489位のチロシンを認識する抗体であると判断することができる。
【0041】
このような本発明の抗体として、より具体的には、以下のような可変領域を保持する抗体が挙げられる。
(1)配列番号:30に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域1を保持し、かつ、配列番号:31に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域1を保持する、抗体;
(2)配列番号:32に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域2を保持し、かつ、配列番号:33に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域2を保持する、抗体;
(3)配列番号:34に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域3を保持し、かつ、配列番号:35に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域3を保持する、抗体;
(4)配列番号:36に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域4を保持し、かつ、配列番号:37に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域4を保持する、抗体;
(5)配列番号:38に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域5を保持し、かつ、配列番号:39に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域5を保持する、抗体;
(6)配列番号:40に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域6を保持し、かつ、配列番号:41に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域6を保持する、抗体;
(7)配列番号:42に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域7を保持し、かつ、配列番号:43に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域7を保持する、抗体;
(8)配列番号:44に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域8を保持し、かつ、配列番号:45に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域8を保持する、抗体;
(9)配列番号:46に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域9を保持し、かつ、配列番号:47に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域9を保持する、抗体;
(10)配列番号:48に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域10を保持し、かつ、配列番号:49に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域10を保持する、抗体;
(11)配列番号:50に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域11を保持し、かつ、配列番号:51に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域11を保持する、抗体;
(12)配列番号:52に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域12を保持し、かつ、配列番号:53に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域12を保持する、抗体;
(13)配列番号:54に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域13を保持し、かつ、配列番号:55に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域13を保持する、抗体;
(14)配列番号:56に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域14を保持し、かつ、配列番号:57に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域14を保持する、抗体;
(15)配列番号:65に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域15を保持し、かつ、配列番号:66に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域15を保持する、抗体。
【0042】
さらに、当業者であれば、抗体の塩基配列及びアミノ酸配列が決定されれば、その配列に基づき、相補性決定領域(Complementarity Determining Region 1、2、3:CDR1、CDR2、CDR3)も決定することができる。したがって、本発明は、以下のようなCDR1~3をそれぞれ保持する抗体をも提供する。
(1)配列番号:30に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域1から決定される重鎖CDR1~3を保持し、かつ、配列番号:31に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域1から決定される軽鎖CDR1~3を保持する、抗体;
(2)配列番号:32に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域2から決定される重鎖CDR1~3を保持し、かつ、配列番号:33に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域2から決定される軽鎖CDR1~3を保持する、抗体;
(3)配列番号:34に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域3から決定される重鎖CDR1~3を保持し、かつ、配列番号:35に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域3から決定される軽鎖CDR1~3を保持する、抗体;
(4)配列番号:36に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域4から決定される重鎖CDR1~3を保持し、かつ、配列番号:37に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域4から決定される軽鎖CDR1~3を保持する、抗体;
(5)配列番号:38に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域5から決定される重鎖CDR1~3を保持し、かつ、配列番号:39に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域5から決定される軽鎖CDR1~3を保持する、抗体;
(6)配列番号:40に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域6から決定される重鎖CDR1~3を保持し、かつ、配列番号:41に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域6から決定される軽鎖CDR1~3を保持する、抗体;
(7)配列番号:42に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域7から決定される重鎖CDR1~3を保持し、かつ、配列番号:43に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域7から決定される軽鎖CDR1~3を保持する、抗体;
(8)配列番号:44に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域8から決定される重鎖CDR1~3を保持し、かつ、配列番号:45に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域8から決定される軽鎖CDR1~3を保持する、抗体;
(9)配列番号:46に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域9から決定される重鎖CDR1~3を保持し、かつ、配列番号:47に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域9から決定される軽鎖CDR1~3を保持する、抗体;
(10)配列番号:48に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域10から決定される重鎖CDR1~3を保持し、かつ、配列番号:49に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域10から決定される軽鎖CDR1~3を保持する、抗体;
(11)配列番号:50に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域11から決定される重鎖CDR1~3を保持し、かつ、配列番号:51に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域11から決定される軽鎖CDR1~3を保持する、抗体;
(12)配列番号:52に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域12から決定される重鎖CDR1~3を保持し、かつ、配列番号:53に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域12から決定される軽鎖CDR1~3を保持する、抗体;
(13)配列番号:54に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域13から決定される重鎖CDR1~3を保持し、かつ、配列番号:55に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域13から決定される軽鎖CDR1~3を保持する、抗体;
(14)配列番号:56に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域14から決定される重鎖CDR1~3を保持し、かつ、配列番号:57に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域14から決定される軽鎖CDR1~3を保持する、抗体;
(15)配列番号:65に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域15から決定される重鎖CDR1~3を保持し、かつ、配列番号:66に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域15から決定される軽鎖CDR1~3を保持する、抗体。
【0043】
CDRの決定方法としては特に制限はないが、例えば、Kabat、Chothia、Aho、IMGT等の公知のナンバリング法が挙げられる。より具体的には、IMGTナンバリング法によって決定された例として、以下のようなCDR3を保持する抗体を挙げることができる。
(1)配列番号:2に記載のアミノ酸配列を重鎖CDR3(HV CDR3-1)として保持し、かつ、配列番号:3に記載のアミノ酸配列を軽鎖CDR3(LV CDR3-1)として保持する、抗体;
(2)配列番号:4に記載のアミノ酸配列を重鎖CDR3(HV CDR3-2)として保持し、かつ、配列番号:5に記載のアミノ酸配列を軽鎖CDR3(LV CDR3-2)として保持する、抗体;
(3)配列番号:6に記載のアミノ酸配列を重鎖CDR3(HV CDR3-3)として保持し、かつ、配列番号:7に記載のアミノ酸配列を軽鎖CDR3(LV CDR3-3)として保持する、抗体;
(4)配列番号:8に記載のアミノ酸配列を重鎖CDR3(HV CDR3-4)として保持し、かつ、配列番号:9に記載のアミノ酸配列を軽鎖CDR3(LV CDR3-4)として保持する、抗体;
(5)配列番号:10に記載のアミノ酸配列を重鎖CDR3(HV CDR3-5)として保持し、かつ、配列番号:11に記載のアミノ酸配列を軽鎖CDR3(LV CDR3-5)として保持する、抗体;
(6)配列番号:12に記載のアミノ酸配列を重鎖CDR3(HV CDR3-6)として保持し、かつ、配列番号:13に記載のアミノ酸配列を軽鎖CDR3(LV CDR3-6)として保持する、抗体;
(7)配列番号:14に記載のアミノ酸配列を重鎖CDR3(HV CDR3-7)として保持し、かつ、配列番号:15に記載のアミノ酸配列を軽鎖CDR3(LV CDR3-7)として保持する、抗体;
(8)配列番号:16に記載のアミノ酸配列を重鎖CDR3(HV CDR3-8)として保持し、かつ、配列番号:17に記載のアミノ酸配列を軽鎖CDR3(LV CDR3-8)として保持する、抗体;
(9)配列番号:18に記載のアミノ酸配列を重鎖CDR3(HV CDR3-9)として保持し、かつ、配列番号:19に記載のアミノ酸配列を軽鎖CDR3(LV CDR3-9)として保持する、抗体;
(10)配列番号:20に記載のアミノ酸配列を重鎖CDR3(HV CDR3-10)として保持し、かつ、配列番号:21に記載のアミノ酸配列を軽鎖CDR3(LV CDR3-10)として保持する、抗体;
(11)配列番号:22に記載のアミノ酸配列を重鎖CDR3(HV CDR3-11)として保持し、かつ、配列番号:23に記載のアミノ酸配列を軽鎖CDR3(LV CDR3-11)として保持する、抗体;
(12)配列番号:24に記載のアミノ酸配列を重鎖CDR3(HV CDR3-12)として保持し、かつ、配列番号:25に記載のアミノ酸配列を軽鎖CDR3(LV CDR3-12)として保持する、抗体;
(13)配列番号:26に記載のアミノ酸配列を重鎖CDR3(HV CDR3-13)として保持し、かつ、配列番号:27に記載のアミノ酸配列を軽鎖CDR3(LV CDR3-13)として保持する、抗体;
(14)配列番号:28に記載のアミノ酸配列を重鎖CDR3(HV CDR3-14)として保持し、かつ、配列番号:29に記載のアミノ酸配列を軽鎖CDR3(LV CDR3-14)として保持する、抗体;
(15)配列番号:63に記載のアミノ酸配列を重鎖CDR3(HV CDR3-15)として保持し、かつ、配列番号:64に記載のアミノ酸配列を軽鎖CDR3(LV CDR3-15)として保持する、抗体。
【0044】
また、上記(1)~(15)の抗体において、各CDR3と組み合わせられるCDR1及びCDR2としては、より具体的には、以下のとおりである。
(1)HV CDR3-1、LV CDR3-1
重鎖CDR1(HV CDR1-1):配列番号:30に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列
重鎖CDR2(HV CDR2-1):配列番号:30に記載のアミノ酸配列の第51~58位のアミノ酸配列
軽鎖CDR1(LV CDR1-1):配列番号:31に記載のアミノ酸配列の第27~32位のアミノ酸配列
軽鎖CDR2(LV CDR2-1):配列番号:31に記載のアミノ酸配列の第50~52位のアミノ酸配列;
(2)HV CDR3-2、LV CDR3-2
重鎖CDR1(HV CDR1-2):配列番号:32に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列
重鎖CDR2(HV CDR2-2):配列番号:32に記載のアミノ酸配列の第51~58位のアミノ酸配列
軽鎖CDR1(LV CDR1-2):配列番号:33に記載のアミノ酸配列の第26~34位のアミノ酸配列
軽鎖CDR2(LV CDR2-2):配列番号:33に記載のアミノ酸配列の第52~54位のアミノ酸配列;
(3)HV CDR3-3、LV CDR3-3
重鎖CDR1(HV CDR1-3):配列番号:34に記載のアミノ酸配列の第19~28位のアミノ酸配列
重鎖CDR2(HV CDR2-3):配列番号:34に記載のアミノ酸配列の第46~52位のアミノ酸配列
軽鎖CDR1(LV CDR1-3):配列番号:35に記載のアミノ酸配列の第26~34位のアミノ酸配列
軽鎖CDR2(LV CDR2-3):配列番号:35に記載のアミノ酸配列の第52~54位のアミノ酸配列;
(4)HV CDR3-4、LV CDR3-4
重鎖CDR1(HV CDR1-4):配列番号:36に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列
重鎖CDR2(HV CDR2-4):配列番号:36に記載のアミノ酸配列の第51~60位のアミノ酸配列
軽鎖CDR1(LV CDR1-4):配列番号:37に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列
軽鎖CDR2(LV CDR2-4):配列番号:37に記載のアミノ酸配列の第51~53位のアミノ酸配列;
(5)HV CDR3-5、LV CDR3-5
重鎖CDR1(HV CDR1-5):配列番号:38に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列
重鎖CDR2(HV CDR2-5):配列番号:38に記載のアミノ酸配列の第51~58位のアミノ酸配列
軽鎖CDR1(LV CDR1-5):配列番号:39に記載のアミノ酸配列の第26~34位のアミノ酸配列
軽鎖CDR2(LV CDR2-5):配列番号:39に記載のアミノ酸配列の第52~54位のアミノ酸配列;
(6)HV CDR3-6、LV CDR3-6
重鎖CDR1(HV CDR1-6):配列番号:40に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列
重鎖CDR2(HV CDR2-6):配列番号:40に記載のアミノ酸配列の第51~58位のアミノ酸配列
軽鎖CDR1(LV CDR1-6):配列番号:41に記載のアミノ酸配列の第27~33位のアミノ酸配列
軽鎖CDR2(LV CDR2-6):配列番号:41に記載のアミノ酸配列の第51~53位のアミノ酸配列;
(7)HV CDR3-7、LV CDR3-7
重鎖CDR1(HV CDR1-7):配列番号:42に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列
重鎖CDR2(HV CDR2-7):配列番号:42に記載のアミノ酸配列の第51~58位のアミノ酸配列
軽鎖CDR1(LV CDR1-7):配列番号:43に記載のアミノ酸配列の第26~31位のアミノ酸配列
軽鎖CDR2(LV CDR2-7):配列番号:43に記載のアミノ酸配列の第49~51位のアミノ酸配列;
(8)HV CDR3-8、LV CDR3-8
重鎖CDR1(HV CDR1-8):配列番号:44に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列
重鎖CDR2(HV CDR2-8):配列番号:44に記載のアミノ酸配列の第51~57位のアミノ酸配列
軽鎖CDR1(LV CDR1-8):配列番号:45に記載のアミノ酸配列の第27~32位のアミノ酸配列
軽鎖CDR2(LV CDR2-8):配列番号:45に記載のアミノ酸配列の第50~52位のアミノ酸配列;
(9)HV CDR3-9、LV CDR3-9
重鎖CDR1(HV CDR1-9):配列番号:46に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列
重鎖CDR2(HV CDR2-9):配列番号:46に記載のアミノ酸配列の第51~57位のアミノ酸配列
軽鎖CDR1(LV CDR1-9):配列番号:47に記載のアミノ酸配列の第27~32位のアミノ酸配列
軽鎖CDR2(LV CDR2-9):配列番号:47に記載のアミノ酸配列の第50~52位のアミノ酸配列;
(10)HV CDR3-10、LV CDR3-10
重鎖CDR1(HV CDR1-10):配列番号:48に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列
重鎖CDR2(HV CDR2-10):配列番号:48に記載のアミノ酸配列の第51~58位のアミノ酸配列
軽鎖CDR1(LV CDR1-10):配列番号:49に記載のアミノ酸配列の第27~37位のアミノ酸配列
軽鎖CDR2(LV CDR2-10):配列番号:49に記載のアミノ酸配列の第55~57位のアミノ酸配列;
(11)HV CDR3-11、LV CDR3-11
重鎖CDR1(HV CDR1-11):配列番号:50に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列
重鎖CDR2(HV CDR2-11):配列番号:50に記載のアミノ酸配列の第51~58位のアミノ酸配列
軽鎖CDR1(LV CDR1-11):配列番号:51に記載のアミノ酸配列の第27~33位のアミノ酸配列
軽鎖CDR2(LV CDR2-11):配列番号:51に記載のアミノ酸配列の第51~53位のアミノ酸配列;
(12)HV CDR3-12、LV CDR3-12
重鎖CDR1(HV CDR1-12):配列番号:52に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列
重鎖CDR2(HV CDR2-12):配列番号:52に記載のアミノ酸配列の第51~57位のアミノ酸配列
軽鎖CDR1(LV CDR1-12):配列番号:53に記載のアミノ酸配列の第27~32位のアミノ酸配列
軽鎖CDR2(LV CDR2-12):配列番号:53に記載のアミノ酸配列の第50~52位のアミノ酸配列;
(13)HV CDR3-13、LV CDR3-13
重鎖CDR1(HV CDR1-13):配列番号:54に記載のアミノ酸配列の第26~34位のアミノ酸配列
重鎖CDR2(HV CDR2-13):配列番号:54に記載のアミノ酸配列の第52~58位のアミノ酸配列
軽鎖CDR1(LV CDR1-13):配列番号:55に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列
軽鎖CDR2(LV CDR2-13):配列番号:55に記載のアミノ酸配列の第51~53位のアミノ酸配列;
(14)HV CDR3-14、LV CDR3-14
重鎖CDR1(HV CDR1-14):配列番号:56に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列
重鎖CDR2(HV CDR2-14):配列番号:56に記載のアミノ酸配列の第51~58位のアミノ酸配列
軽鎖CDR1(LV CDR1-14):配列番号:57に記載のアミノ酸配列の第26~34位のアミノ酸配列
軽鎖CDR2(LV CDR2-14):配列番号:57に記載のアミノ酸配列の第52~54位のアミノ酸配列;
(15)HV CDR3-15、LV CDR3-15
重鎖CDR1(HV CDR1-15):配列番号:65に記載のアミノ酸配列の第26~33位のアミノ酸配列
重鎖CDR2(HV CDR2-15):配列番号:65に記載のアミノ酸配列の第51~58位のアミノ酸配列
軽鎖CDR1(LV CDR1-15):配列番号:66に記載のアミノ酸配列の第23~31位のアミノ酸配列
軽鎖CDR2(LV CDR2-15):配列番号:66に記載のアミノ酸配列の第49~51位のアミノ酸配列。
【0045】
上記(1)~(15)の抗体のうち、上記(1)~(3)の抗体は、前記スパイク糖タンパク質のアミノ酸配列の第443位のセリンを認識する抗体であり、上記(4)~(15)の抗体は、前記スパイク糖タンパク質のアミノ酸配列の第489位のチロシンを認識する抗体である。本発明の抗体としては、これらのアミノ酸以外をさらに認識する抗体であってもよい。例えば、上記(6)~(7)、(10)、(11)、(13)の抗体は、前記スパイク糖タンパク質のアミノ酸配列の第486位のフェニルアラニンも認識し、上記(7)、(10)の抗体は、前記スパイク糖タンパク質のアミノ酸配列の第487位のアスパラギンも認識する。
【0046】
これらの中でも、本発明の抗体としては、前記RBDに対する結合親和性及び/又はSARS-CoV-2に対する感染中和活性がより高い傾向にある観点から、上記(2)、(5)、(6)、(7)の抗体が好ましく、上記(5)、(6)、(7)の抗体がより好ましい。さらに、変異株に対する結合親和性及び/又は感染中和活性がより高い傾向にある観点から、上記(5)、(6)、(7)の抗体が好ましく、上記(6)、(7)の抗体がより好ましい。また、抗体退避変異ウイルス(エスケープウイルス)が特に生じにくいという観点からは、上記(5)、(6)の抗体が好ましい。さらに、近年の変異株であるオミクロン株(BA.5)、オミクロン株(BA.2.75)、オミクロン株(BQ.1.1)、オミクロン株(XBB)、オミクロン株(XBB.1.5)等のRBDに対しても結合親和性及び/又は感染中和活性がより高い傾向にある観点からは、(5)の抗体をさらに改良した抗体である(15)の抗体が好ましい。
【0047】
また、本発明の抗体としては、上記の特定のアミノ酸配列からなる可変領域及び/又はCDRを保持する抗体のみならず、望ましい反応性(前記RBDに対する結合親和性、SARS-CoV-2に対する感染中和活性等)を減少させることなく、そのアミノ酸配列が改変された抗体であってもよい。前記アミノ酸配列の改変としては、例えば、当該アミノ酸配列内の1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入及び/又は付加が挙げられる。
【0048】
本発明の抗体に関し、前記アミノ酸配列が改変される部位は、改変される前の抗体と同等の活性を有する限り、抗体の重鎖又は軽鎖の定常領域であってもよく、また、可変領域(フレーム領域(FR)及びCDR)であってもよい。CDR以外のアミノ酸の改変は、抗原との反応性への影響が相対的に少ないと考えられるが、現在では、CDRのアミノ酸を改変して、抗原へのアフィニティーが高められた抗体をスクリーニングする手法も公知である(PNAS,102:8466-8471(2005)、Protein Engineering,Design&Selection等)。また、統合計算化学システム等(例えば、Molecular Operating Enviroment、カナダCCG社製)を利用することにより、抗原へのアフィニティーが高められた抗体をモデリングすることも可能である。さらに、抗体の抗原へのアフィニティーにおいては、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域各々のCDRの全てを要せずとも、同等の活性を発揮し得ることが報告されている(Biochem Biophys Res Commun.2003 Jul 18;307(1):198-205等)。
【0049】
本発明の抗体に関し、可変領域において改変されるアミノ酸数、すなわち、可変領域について、「1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入された」というときの「数個」とは、好ましくは、25アミノ酸以内、より好ましくは20アミノ酸以内、さらに好ましくは10アミノ酸以内、5アミノ酸以内、3アミノ酸以内(例えば、2アミノ酸以内、1アミノ酸)である。さらに、かかる改変は全て、抗原との反応性への影響が少ないという観点から、CDR以外、すなわちFRに施されていることが好ましい。また、CDRにおいて改変されるアミノ酸数、すなわち、CDR(相補性決定領域)について、「1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入された」というときの「数個」とは、好ましくは5アミノ酸以内、より好ましくは3アミノ酸以内(例えば、2アミノ酸以内、1アミノ酸)である。
【0050】
アミノ酸配列の改変は、好ましくは、保存的な置換である。本発明において「保存的な置換」とは、化学的に同様な側鎖を有する他のアミノ酸残基で置換することを意味する。化学的に同様なアミノ酸側鎖を有するアミノ酸残基のグループは、本発明の属する技術分野でよく知られている。例えば、酸性アミノ酸(アスパラギン酸及びグルタミン酸);塩基性アミノ酸(リシン・アルギニン・ヒスチジン);中性アミノ酸においては、炭化水素鎖を持つアミノ酸(グリシン・アラニン・バリン・ロイシン・イソロイシン・プロリン)、ヒドロキシ基を持つアミノ酸(セリン・トレオニン)、硫黄を含むアミノ酸(システイン・メチオニン)、アミド基を持つアミノ酸(アスパラギン・グルタミン)、イミノ基を持つアミノ酸(プロリン)、芳香族基を持つアミノ酸(フェニルアラニン・チロシン・トリプトファン)で分類することができる。
【0051】
また、改変後のアミノ酸配列が、上述の特定のアミノ酸配列からなる可変領域とアミノ酸配列レベルで80%以上の相同性を有するアミノ酸配列を含む可変領域を保持する抗体も、改変される前の抗体と同等の活性を有する限り、本発明の抗体に含まれる。かかる相同性としては、少なくとも80%であればよいが、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上(例えば、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上)である。より好ましくは、同一性で、少なくとも80%、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上(例えば、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上)である。また、配列の相同性及び同一性は、BLASTP(アミノ酸レベル)のプログラム(Altschul et al.J.Mol.Biol.,215:403-410,1990、パラメーター:デフォルト)を利用して決定することができる。該プログラムは、Karlin及びAltschulによるアルゴリズムBLAST(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87:2264-2268,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:5873-5877,1993)に基づいている。
【0052】
また、「同等の活性を有する」とは、例えば、前記RBDに対する結合親和性及び/又はSARS-CoV-2に対する感染中和活性が、対象抗体(代表的には、上記(1)~(15)のうちの少なくともいずれかの抗体、好ましくは上記(5)~(7)のうちの少なくともいずれかの抗体、より好ましくは上記(6)及び/又は(7)の抗体)と同等(例えば、70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上)であることを意味する。
【0053】
本発明の抗体として、前記可変領域以外の定常領域としては特に制限されない。例えば、後述の実施例に示すように、重鎖の定常領域としては、γ1を前記重鎖可変領域の各々に組み合わることができるが、これに制限されず、γ2~γ4であってもよい。また、例えば、後述の実施例に示すように、軽鎖の定常領域としては、λやκを前記軽鎖可変領域の各々に適宜組み合わることができる。これらの定常領域のアミノ酸配列及びそれをコードする塩基配列は、例えば、GenBank(NCBI)等の公知のデータベースより取得可能である。例えば、γ1のアミノ酸配列としては配列番号:58のアミノ酸配列が、λのアミノ酸配列としては配列番号:60のアミノ酸配列が、κのアミノ酸配列としては配列番号:59のアミノ酸配列が、それぞれ挙げられるが、これらに制限されず、また、適宜アミノ酸配列が改変されたものであってもよい。さらに、本発明の抗体としては、上記のように機能性断片であってもよく、このときの定常領域はその一部であっても、定常領域が無くともよい。
【0054】
本発明の抗体は、従来公知の方法又はそれに準じた方法によって作成することができ、例えば、ハイブリドーマ法や組換えDNA法によって作製することができる。ハイブリドーマ法としては、代表的には、コーラー及びミルスタインの方法(Kohler&Milstein,Nature,256:495(1975))やこれに準じた方法が挙げられる。
【0055】
組換えDNA法は、上記本発明の抗体をコードするDNAをハイブリドーマやB細胞等からクローニングし、又は合成し、適当なベクターに組み込んで、これを宿主細胞(例えば、HEK細胞等の哺乳類細胞株、大腸菌、酵母細胞、昆虫細胞、植物細胞等)に導入し、本発明の抗体を組換え抗体として産生させる手法である(例えば、P.J.Delves,Antibody Production:Essential Techniques,1997 WILEY、P.Shepherd and C.Dean Monoclonal Antibodies,2000 OXFORD UNIVERSITY PRESS、Vandamme A.M.et al.,Eur.J.Biochem.192:767-775(1990))。本発明の抗体をコードするDNAの発現においては、重鎖又は軽鎖をコードするDNAを別々に発現ベクターに組み込んで宿主細胞を形質転換してもよく、重鎖及び軽鎖をコードするDNAを単一の発現ベクターに組み込んで宿主細胞を形質転換してもよい。本発明の抗体の重鎖可変領域(HV)をコードするヌクレオチド配列の例及び軽鎖可変領域(LV)をコードするヌクレオチド配列の例としては、配列番号:30~57、65、66に記載のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、各配列はそれぞれ独立して、例えば、上記アミノ酸配列が改変された抗体に対応するものであってよく、また、コドン最適化等されたものであってもよい。本発明の抗体は、上記宿主細胞を培養し、宿主細胞内又は培養液から分離・精製し、実質的に純粋で均一な形態で取得することができる。抗体の分離・精製は、通常のポリペプチドの精製で使用されている方法を使用することができる。また、トランスジェニック動物作製技術を用いて、抗体遺伝子が組み込まれたトランスジェニック動物(ウシ、ヤギ、ヒツジ、ブタ等)を作製すれば、そのトランスジェニック動物のミルクから、抗体遺伝子に由来するモノクローナル抗体を大量に取得することも可能である。
【0056】
本発明は、上記本発明の抗体をコードするDNA、該DNAを含むベクター、及び該DNAを保持する宿主細胞、並びに、該宿主細胞を培養し、抗体を回収する工程を含む抗体の生産方法をも提供することができる。
【0057】
<COVID-19の予防又は治療用組成物>
本発明は、また、本発明の抗SARS-CoV-2抗体を含有する、COVID-19の予防又は治療用組成物(以下、場合により単に「本発明の治療用組成物」という)を提供する。
【0058】
本発明の抗体(抗SARS-CoV-2抗体)は、上記のようにRBDとの結合親和性が高く、SARS-CoV-2に対する中和活性も高いため、本発明の抗体及びこれを含有する本発明の治療用組成物は、SARS-CoV-2感染症であるCOVID-19の予防又は治療のために用いることができる。そのため、本発明は、COVID-19の予防又は治療のための、本発明の抗SARS-CoV-2抗体又は本発明の治療用組成物の使用、並びに、COVID-19の予防又は治療用組成物の製造のための、本発明の抗SARS-CoV-2抗体の使用も提供する。
【0059】
本発明の治療用組成物としては、本発明の抗体を1種のみで含有していても、2種以上の組み合わせで含有していてもよい。本発明の治療用組成物において、本発明の抗体の含有量(2種以上である場合にはそれらの合計含有量)としては、組成物の形態、投与量、投与又は摂取の目的や方法等に応じて適宜調整されるものであるため、特に限定されないが、組成物の全質量に対して、例えば、5~99質量%の範囲が挙げられ、5~95質量%、20~80質量%、30~70質量%、40~60質量%、又は40~50質量%とすることができる。また、本発明の治療用組成物の態様に応じて、前記抗体の含有量としては、5~10質量%、10~20質量%、20~30質量%、30~40質量%、40~50質量%、50~60質量%、60~70質量%、70~80質量%、80~90質量%、90~99質量%、又は99質量%以上としてもよい。
【0060】
本発明の治療用組成物の形態は特に限定されないが、例えば、一般液剤(内服剤の他、注射剤を含む)、懸濁剤、乳剤、シロップ剤等の液剤;坐剤、点眼剤、点鼻剤等の外用剤等が挙げられる。また、本発明の治療用組成物としては、本発明の抗体の他、その形態に応じて、治療薬として許容される他の成分をさらに含有していてもよい。このような他の成分としては、例えば、薬理学上許容される担体又は希釈剤(滅菌水、生理食塩水、植物油等)、賦形剤、崩壊剤、緩衝剤、乳化剤、懸濁剤、安定剤、保存剤、防腐剤が挙げられ、これらのうちの1種であっても2種以上の組み合わせであってもよい。また、本発明の抗体以外の抗SARS-CoV-2抗体を含有していてもよい。これら他の成分を含有する場合、当該他の成分の含有量は特に限定されず、組成物の形態、用量、投与の目的や方法等に応じて適宜調整することができる。
【0061】
前記賦形剤としては、例えば、乳糖、デンプン、ソルビトール、D-マンニトール、白糖が挙げられる。前記崩壊剤としては、例えば、デンプン、カルボキシメチルセルロース、炭酸カルシウムが挙げられる。前記緩衝剤としては、例えば、リン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩が挙げられる。前記乳化剤としては、例えば、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、トラガントが挙げられる。前記懸濁剤としては、例えば、モノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸アルミニウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。前記安定剤としては、例えば、プロピレングリコール、ジエチリン亜硫酸塩、アスコルビン酸が挙げられる。前記保存剤としては、例えば、フェノール、塩化ベンザルコニウム、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルパラベンが挙げられる。前記防腐剤としては、例えば、アジ化ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、パラオキシ安息香酸、クロロブタノールが挙げられる。
【0062】
本発明の治療用組成物は、例えば、本発明の抗体に前記他の成分のうちの1種又は2種以上を加えて、その形態に応じた公知の方法又はそれに準じた方法によって適宜製造することができる。
【0063】
<COVID-19の予防又は治療方法>
本発明は、また、本発明の抗SARS-CoV-2抗体又は本発明の治療用組成物を対象に投与する、COVID-19の予防又は治療方法(以下、場合により「本発明の治療方法」という)も提供する。
【0064】
本発明の治療方法は、本発明の抗体の有効量を対象に投与する工程を含む。本発明の治療方法に係る対象としては、ヒト又は非ヒト哺乳動物(マウス、ヒツジ、ウシ、ブタ、ウマ、サル、イヌ、ネコ、ウサギ等)が挙げられ、ヒトが好ましい。前記対象としては、予防目的の場合には、SARS-CoV-2に感染していないものであっても、既にSARS-CoV-2に感染しているがCOVID-19を発症していないものであってもよく、また、治療目的の場合には、COVID-19の軽症~重症のいずれのものであってもよい。
【0065】
本発明の治療方法において、本発明の抗体は、そのまま、又は本発明の治療用組成物として前記対象投与することができ、注射により投与することが好ましい。
【0066】
本発明の治療方法において、本発明の抗体の有効量としては、投与の目的や方法;対象の種、年齢、体重、性別、症状の程度等を考慮して、個々の場合に応じて適宜決定されるものであるため、特に限定されないが、例えば、ヒト(好ましくは、成人)に対しては、本発明の抗体の量(2種以上である場合にはそれらの合計量)で、対象の体重1kgあたり、かつ、1回あたり、0.0001~1000mgとすることができるが、本発明はこれらの数値に必ずしも制限されるものではない。また、本発明の治療方法において、投与回数は、1日1回~適当な回数とすることができる。
【0067】
<SARS-CoV-2を免疫学的に検出する方法>
本発明は、また、試料中のSARS-CoV-2を免疫学的に検出する方法であって、上述の本発明の抗SARS-CoV-2抗体を用いる方法(以下、場合により単に「本発明の検出方法」という)を提供する。
【0068】
本発明の検出方法に供される「試料」としては、SARS-CoV-2(完全なウイルス粒子の他、少なくとも前記RBDを含む構成タンパク質を包含する。以下、本発明の検出方法及び検出用組成物において同じ)が存在し得る試料である限り特に制限はなく、例えば、生体から単離された体液(血液、リンパ液、組織液、体腔液、髄液、関節液、鼻腔粘液等)、組織が挙げられ、培養細胞又はその培養物(培養上清等)であってもよい。また、必要に応じて希釈液で希釈又は懸濁したものであってもよい。前記希釈液としては、例えば、リン酸緩衝液、Tris緩衝液、グッド緩衝液、ホウ酸緩衝液、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、グリシン緩衝液、コハク酸緩衝液、フタル酸緩衝液等の緩衝液が挙げられる。
【0069】
本発明の検出方法は、試料中のSARS-CoV-2と本発明の抗体とを接触させ、抗原抗体反応によって形成した免疫複合体に基づいて、当該試料中のSARS-CoV-2を検出するものである。免疫学的に検出する方法としては、例えば、標識物質として酵素を用いるEIA法(酵素免疫測定法)、EIA法の一態様であるELISA法やCLEIA法(化学発光酵素免疫測定法)、標識物質で標識された抗原又は抗体を用いる標識イムノアッセイ、標識物質として放射性同位元素を用いるRIA法(放射免疫測定法)、標識物質として化学発光性化合物を用いるCLIA法(化学発光免疫測定法)、イムノクロマトグラフィー法、凝集の検出により測定する免疫凝集法(ラテックス凝集法、金コロイド凝集法等)等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0070】
前記標識物質としては、一般的に免疫学的測定法及びそれに準じた測定法に用いられているものを適宜用いることができ、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(ALP)、βガラクトシダーゼ(β-gal)、ホタルルシフェラーゼ等の酵素;フルオレセインイソチオシアネート(FITC)やローダミンイソチオシアネート(RITC)等の蛍光色素;アロフィコシアニン(APC)やフィコエリスリン(R-PE)等の蛍光蛋白質;125I等の放射性同位元素;ラテックス粒子、金コロイド粒子等の粒子;アビジン、ビオチン等が挙げられる。
【0071】
本発明の検出方法としては、前記標識物質に応じたシグナルの有無を検出することにより、試料中のSARS-CoV-2の有無を検出することが好ましい。前記「シグナル」には、呈色(発色)、消光、反射光、発光、蛍光、放射性同位体による放射線等が含まれ、肉眼で確認できるものの他、シグナルの種類に応じた検出方法・装置によって確認できるものも含まれる。例えば、前記標識物質として酵素を用いた場合には、基質として、発色基質(例えば、過酸化水素の存在下、HRPによる酸化触媒反応により発色する3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB))、化学発光基質(例えば、ALPによる加水分解により発光するAMPPD(3-(2’-スピロアダマンタン)-4-メトキシ-4-(3’’-ホスホリルオキシ)フェニル-1,2-ジオキセタン・2ナトリウム塩))、蛍光基質等を添加することにより、酵素-基質反応によって発生した種々のシグナル(発光、蛍光等)を検出することができる。
【0072】
前記標識物質は、本発明の抗体に結合させてSARS-CoV-2を直接的に検出してもよく、本発明の抗体には標識物質を結合させず、標識物質を結合させた二次抗体等を利用してSARS-CoV-2を間接的に検出してもよい。ここで「二次抗体」とは、抗原に直接結合する抗体(一次抗体、すなわち本発明の抗体)に対して反応性を示す抗体である。また。二次抗体に代えて、標識物質を結合させたプロテインGやプロテインA等を用いてもよい。
【0073】
抗体と標識物質との結合には、適宜従来公知の方法又はそれに準じた方法を適宜採用することができ、抗体と標識物質とを、活性基等によって直接結合させてもよく、オリゴペプチドやリンカー等を介して間接的に結合させてもよく、ビオチン-アビジン系(例えば、抗体をビオチン化し、これに、アビジン化した標識物質を作用させ、ビオチンとアビジンとの相互作用を利用して抗体に標識物質を結合させる)を利用してもよい。
【0074】
本発明の検出方法としては、より感度が高い傾向にあるという観点から、CLEIA法等のサンドイッチ法が好適である。サンドイッチ法においては、固相に固定した捕捉用抗体(捕捉体)で検出対象物質(SARS-CoV-2)を捕捉し、それを標識物質が結合した検出用抗体(標識体)に認識させ、B/F分離(洗浄)後、前記標識物質の種類に応じた検出を行う。また、イムノクロマトグラフィー法のように、標識体で検出対象物質を認識させ、B/F分離を行ないつつ、捕捉体で検出対象物質を捕捉し、標識物質の種類に応じた検出を行うようにしてもよい。
【0075】
前記固相としては、一般的に免疫学的測定法及びそれに準じた測定法に用いられているものを適宜用いることができ、例えば、磁性粒子やラテックス粒子等の粒子、プラスチックプレート等のプレート、ニトロセルロース繊維等の繊維状物質を用いることができる。
【0076】
抗体の固相への固定には、適宜従来公知の方法又はそれに準じた方法を適宜採用することができ、抗体を固相に、物理的吸着法、化学的結合法、又はこれらの併用等の公知の方法によって直接固定してもよく、上記の二次抗体、プロテインG、プロテインAやビオチン-アビジン系によって間接的に固定してもよい。
【0077】
前記サンドイッチ法においては、捕捉用抗体及び検出用抗体のうちの少なくとも一方として、本発明の抗体を用いることが好ましい。他の一方の抗体は、前記RBDに対する抗体であればよいが、好ましくは、本発明の抗体と前記RBDとの結合において競合しない抗体(より好ましくは、前記スパイク糖タンパク質の第443位のセリン又は第489位のチロシンを認識しない抗体)である。また、他の一方の抗体は、モノクローナル抗体であっても、ポリクローナル抗体であってもよいが、供給安定性の観点から、モノクローナル抗体であることが好ましい。
【0078】
検出されたシグナルの測定値からSARS-CoV-2量を定量する場合には、一般的に、標準検体による測定値との比較により行うことができる。この場合、例えば、標準検体による測定値に基づいて作成された標準曲線上のどの位置に、実際の測定値が位置づけられるかを調べることにより、試料中のSARS-CoV-2量を求めることができる。
【0079】
本発明の検出方法は、SARS-CoV-2の感染症であるCOVID-19の検査方法とすることができる。また、本発明の検出方法によってSARS-CoV-2量に関するデータを得る方法は、医師による診断のために上述のSARS-CoV-2量に関するデータを収集する方法、当該データを医師に提示する方法、医師による診断を補助するための方法とも表現することができる。
【0080】
<SARS-CoV-2検出用組成物>
本発明は、また、本発明の抗SARS-CoV-2抗体を含有する、SARS-CoV-2を免疫学的に検出するための組成物(以下、場合により「本発明の検出用組成物」という)を提供する。本発明の検出用組成物は上記本発明の検出方法に好適に用いることができる。
【0081】
本発明の検出用組成物に含有される抗体としては、上述のとおりであるが、各種免疫学的手法に応じて、上述の標識物質が結合した形態であっても、前記固相に固定された形態であってもよい。かかる標識物質との結合方法及び固相への固定方法としては、上述のとおりである。
【0082】
本発明の検出用組成物としては、本発明の抗体の他に、試薬として許容される他の成分をさらに含有することができる。このような他の成分としては、例えば、本発明の治療用組成物において挙げたものと同様のものが挙げられる。
【0083】
また、本発明の抗体及び検出用組成物としては、シグナルの検出に必要な基質、試料のタンパク質を溶解するための溶液(タンパク質溶解用試薬)、試料の希釈や洗浄に用いる緩衝液(希釈液、洗浄液)、シグナルの検出反応を停止するための試薬(反応停止薬)、陽性対照(例えば、RBD)、陰性対照、本発明の抗体に対するアイソタイプコントロール抗体等と適宜組み合わせることにより、キットとして提供されてもよい。
【0084】
かかるキットとしては、例えば、標識物質が結合した本発明の抗体又はそれを含有する本発明の検出用組成物と、前記標識物質に応じたシグナルの検出に必要な試薬(例えば基質)、陽性対照、及び陰性対照から選択される少なくとも1種と、を含むキットが挙げられる。また、標識物質が結合していない抗体を含む場合には、当該抗体に結合する物質(例えば、二次抗体、プロテインG、プロテインA等)に標識物質を結合させたものを組み合わせることができる。さらに、かかるキットには、当該キットの使用説明書等を含めることができる。
【実施例0085】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0086】
(調製例1)
<回復者末梢血単核球の単離及び保管>
SARS-CoV-2の武漢株の流行期間内、かつ、変異株(ベータ株、デルタ株、オミクロン株)の流行前にSARS-CoV-2に感染し、COVID-19を発症して回復した回復者3名より採取した末梢血から、BDバキュテイナCPT単核球分離用採血管(BD社製)を用いて、遠心操作により単核球を分離した。分離した単核球はセルバンカーに懸濁して、使用まで超低温槽に保管した。
【0087】
(調製例2)
<RBDの作製1>
SARS-CoV-2の武漢株のスパイク糖タンパク質(武漢株RBD、配列番号:1のアミノ酸配列の第331~529位のアミノ酸配列(Ancestral)をコードする塩基配列、並びに、Ancestralのアミノ酸配列において、各変異株のアミノ酸変異を導入した各RBD:
ベータ株RBD:Ancestralのアミノ酸配列にK417N、E484K、N501Yの変異(数字は配列番号:1のアミノ酸配列における位置、以下デルタ株、オミクロン株、及び変異RBDにおいて同じ)を導入したRBD;
デルタ株RBD:Ancestralのアミノ酸配列にL452R、T478Kの変異を導入したRBD;
オミクロン株(BA.1)RBD:Ancestralのアミノ酸配列にG339D、S371L、S373P、S375F、K417N、N440K、G446S、S477N、T478K、E484A、Q493R、Q498R、N501Y、及びY505Hの変異を導入したRBD;及び
オミクロン株(BA.2)RBD:Ancestralのアミノ酸配列にG339D、S371F、S373P、S375F、T376A、D405N、R408S、K417N、N440K、S477N、T478K、E484A、Q493R、Q498R、N501Y、及びY505Hの変異を導入したRBD
をコードする塩基配列をそれぞれ合成した。
【0088】
また、Ancestralのアミノ酸配列において、1アミノ酸をそれぞれ置換した変異RBD(R346S、K417N、N440K、S443N、Y449G、L452R、A475V、T478K、E484K、F486S、N487G、Y489S、F490S、S494P、N501Y、又はG504T)をコードする塩基配列をそれぞれ合成した。
【0089】
各塩基配列を、N末端シグナルペプチド配列、C末端ヒスタグ、及びC末端アビタグと共にpCAGGSベクターに挿入して、各RBD発現ベクターを作製した。作製した各RBD発現ベクターとExpi293 Expression System(Thermo Fisher Scientific社製)とを用いて各塩基配列にコードされるタンパク質をそれぞれ発現させ、TALONカラム(Takara社製)を用いて、培養上清から各RBD(抗原タンパク質)を精製した。また、発現の際にBirA-Flagプラスミド(Addgene社製)及びビオチンを培養系に添加してRBDにビオチンを付加させたこと以外は同様にして、各ビオチン化RBDを調製した。
【0090】
<RBDの作製2>
Ancestral(SARS-CoV-2の武漢株のスパイク糖タンパク質(武漢株RBD、配列番号:1のアミノ酸配列の第331~529位)のアミノ酸配列において、各変異株のアミノ酸変異を導入した各RBD:
アルファ株RBD:Ancestralのアミノ酸配列にN501Yの変異を導入したRBD;
オミクロン株(BA.5)RBD:BA.2のアミノ酸配列にL452R、F486V、R493Qの変異を導入したRBD;
オミクロン株(BA.2.75)RBD:BA.2のアミノ酸配列にG339H、G446S、N460K、R493Qの変異を導入したRBD;
オミクロン株(BA.2.75.2)RBD:BA.2のアミノ酸配列にR346T、F486Sの変異を導入したRBD;
オミクロン株(BQ.1.1)RBD:BA.5のアミノ酸配列にR346T、K444T、N460Kの変異を導入したRBD;
オミクロン株(XBB)RBD:BA.2.75.2のアミノ酸配列にL368I、V445P、F490Sの変異を導入したRBD;及び
オミクロン株(XBB.1.5)RBD:XBBのアミノ酸配列にF486Pの変異を導入したRBD
をコードする塩基配列をそれぞれ合成した。各塩基配列より、上記<RBDの作製1>と同様にして各ビオチン化RBDをそれぞれ調製した。
【0091】
(調製例3)
<抗原特異的B細胞の単離及びシングルB細胞の培養>
調製例1で分離した単核球を、BUV395標識CD19抗体(HIB19)、BV510標識CD2抗体(RPA-2.10)、BV510標識CD4抗体(RPA-T4)、BV510標識CD10抗体(HI10a)、BV510標識CD14抗体(M5E2)、BV510標識IgD抗体(IA6-2)、BV421標識IgG抗体(G18-145)、BB790標識CD27抗体(O323)、Live/Dead Aqua、APC標識武漢株RBD(調製例2で調製したビオチン化武漢株RBDとAPC標識ストレプトアビジンとを結合させたもの)、及びPE標識ベータ型RBD(調製例2で調製したビオチン化ベータ株RBDとPE標識ストレプトアビジンとを結合させたもの)で染色した後、セルソーター(BD FACSymphony S6、BD社製)を用いて、CD19陽性CD2陰性CD4陰性CD10陰性CD14陰性IgD陰性CD27陽性IgG陽性であり、かつ、武漢株RBD及びベータ型RBDに結合する生細胞(抗原特異的B細胞、シングルB細胞)を単離した。
【0092】
単離した生細胞は、MS40L-lowフィーダー細胞上で24日間培養した。当該培養の培地には、10% FBS、55μM 2-メルカプトエタノール、100U/mL ペニシリン、100μg/mL ストレプトマイシン、10mM HEPES、1mM ピルビン酸ナトリウム、1% MEM非必須アミノ酸、50ng/mL ヒトIL-2、10ng/mL ヒトIL-4、10ng/mL ヒトIL-21、及び10ng/mL ヒトBAFFを添加したRPMI1640培地を用いた。
【0093】
(調製例4)
〔抗体解析〕
調製例3で24日間培養後の培養上清を用いたこと以外は下記の中和活性測定(実施例1)と同様にして、SARS-CoV-2(武漢株、デルタ株、オミクロン株(BA.1)、オミクロン株(BA.2))に対する感染中和活性を評価した。また、前記培養上清及び武漢株RBD固相化プレートを用いたこと以外は下記の結合性解析(実施例2)と同様にして、RBDとの結合性を評価した。評価の結果、特に感染中和活性及びRBDとの結合性の高い14のB細胞を選択した。
【0094】
選択したB細胞について、先ず、調製例3で24日間培養後の細胞からRNeasy micro kit(Qiagen社製)を用いてRNAを抽出し、抽出したRNAから逆転写反応によってcDNAを合成した。得られたcDNAを鋳型として、Tiller et al.,Journal of Immunological Methods,329:p.112-124に記載のプライマーを用いて、PCR法により抗体遺伝子の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域をそれぞれ増幅して、サンガー法によって塩基配列を解析した。得られた塩基配列は、IgBLAST(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/igblast/)により解析して、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のアミノ酸配、並びに、相補性決定領域1~3(CDR1~3)のアミノ酸配列を決定した。下記の表1に、解析した14個の抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列、並びに、そのうちの各相補性決定領域3(CDR3)のアミノ酸配列の配列番号をそれぞれ示す。また、解析した14個の抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域における各相補性決定領域1~2(CDR1及びCDR2)のアミノ酸配列を下記の表2にそれぞれ示す。
【0095】
〔組換えモノクローナル抗体の作製〕
上記で増幅、解析した14個の抗体遺伝子の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域をコードする塩基配列は、それぞれ、下記の表1の組み合わせとなるように、ヒトIgG1の定常領域(γ1、配列番号:58のアミノ酸配列)をコードする塩基配列、ヒトIgKappa(κ)の定常領域(配列番号:59のアミノ酸配列)をコードする塩基配列、又はヒトIgLambda(λ)の定常領域(配列番号:60のアミノ酸配列)をコードする塩基配列をそれぞれ含む哺乳類発現用ベクターに導入し、重鎖発現ベクター及び軽鎖発現ベクターをそれぞれ作製した。作製した各発現ベクターとExpi293 Expression System(Thermo Fisher Scientific社製)とを用いて各塩基配列にコードされるタンパク質を発現させ、Protein Gカラムを用いて、培養上清から組換えモノクローナル抗体を精製し、14個(No.1~14)の組換えモノクローナル抗体を得た。作製した組換えモノクローナル抗体の重鎖及び軽鎖における各可変領域及びCDR3と、各定常領域との組み合わせを下記の表1に合わせて示す。
【0096】
【0097】
【0098】
(調製例5)
〔抗体のコンピュテーショナルデザイン〕
上記で作製したNo.5の組み換えモノクローナル抗体(以下、場合により「No.5抗体」)のアミノ酸配列を基に、これがオミクロン株(XBB.1.5)RBDに対してより高い親和性で結合できるように抗体の配列設計を行なった。すなわち、Rosettaソフトウェア スイート(Rosetta Commons;Lemanら,Nat.Methods 17,p.665-680,2020)を用い、初期座標としてはNo.5抗体のFabとAncestralとの結晶構造から導出した座標を用いた。Ancestralのアミノ酸配列をオミクロン株(XBB.1.5)RBDのアミノ酸配列に置き換えて暫定的なNo.5抗体のFv領域とオミクロン株(XBB.1.5)RBDとの複合体モデル(抗体-RBD)を作成し、これをFastRelaxプロトコル(Nivonら,PloS One 8,e59004,2013)により改良し(RBDから5Å以内となるCDR残基を選択)、InterfaceDesign2019スクリプトを使用したFastDesignプロトコル(Maguireら,Proteins 89,p.436-449,2021)により、2,000個の複合体モデルを設計した。これらのモデルに対してドッキング計算(Grayら,J.Mol.Biol.331,p.281-299,2003)を実施し、抗体-RBD界面における相補性を界面エネルギー(<-35kcal/mol)、形状相補性(Sc>0.65)、水素結合の数(>4)、及び視覚検査により評価した。さらに、Ancestral及びオミクロン株(XBB)RBD)についても上記評価を実施し、上記全ての基準を満たす抗体を改良抗体として選択した。
【0099】
〔組換えモノクローナル抗体の作製〕
上記で選択した改良抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列及び軽鎖可変領域をコードする塩基配列を、それぞれ、ヒトIgG1の定常領域(γ1、配列番号:58のアミノ酸配列)をコードする塩基配列及びヒトIgLambda(λ)の定常領域(配列番号:60のアミノ酸配列)をコードする塩基配列をそれぞれ含む哺乳類発現用ベクターに導入し、重鎖発現ベクター及び軽鎖発現ベクターをそれぞれ作製した。作製した各発現ベクターとExpi293 Expression System(Thermo Fisher Scientific社製)とを用いて各塩基配列にコードされるタンパク質を発現させ、Protein Gカラムを用いて、培養上清から組換えモノクローナル抗体を精製し、No.15の組換えモノクローナル抗体を得た。作製した組換えモノクローナル抗体の重鎖可変領域、軽鎖可変領域、及びそのうちの各相補性決定領域3(CDR3)のアミノ酸配列の配列番号、並びに、定常領域との組み合わせを上記の表1に合わせて示す。また、作製した組換えモノクローナル抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域における各相補性決定領域1~2(CDR1及びCDR2)のアミノ酸配列を上記の表2に合わせて示す。
【0100】
(実施例1)
<ウイルス分離株を用いた中和活性測定>
本実験は、国立感染症研究所BSL3実験施設にて実施した。先ず、調製例4で作製した各組換えモノクローナル抗体(No.1~14)を、2% FBS、100U/mL ペニシリン、及び100μg/mL ストレプトマイシンを添加したDMEM培養液で段階希釈し、100 TCID
50のSARS-CoV-2(武漢株、デルタ株、オミクロン株(BA.1)、オミクロン株(BA.2))の各々と混合して、37℃のCO
2インキュベーターにて1時間反応させた。次いで、これを96ウェルプレート上で一晩培養したVeroE6/TMPRSS2細胞に加え、37℃のCO
2インキュベーターにて培養した。2日間(オミクロン株は3日間)培養した後、Cell Counting Kit-8(富士フイルム和光純薬株式会社製)を加えて1時間培養し、死細胞又は変性細胞数(すなわち感染した細胞数)に対応する450nmにおける吸光度を測定した。抗体なしウイルスなしの組み合わせのときの吸光度、及び抗体なしウイルスありの組み合わせのときの吸光度を基に、感染中和活性(感染細胞数を、抗体なしウイルスありの組み合わせのときの50%にするために必要な抗体濃度)のIC
50をそれぞれ算出した。log
10IC
50を示すヒートマップを
図1に示す。また、比較例として、上記組換えモノクローナル抗体に代えて従来の抗SARS-CoV-2抗体であるソトロビマブ親抗体(S309)を用いたときのIC
50も算出したが、実験に用いた全ての抗体濃度の条件では感染中和を示さなかったため、算出することができなかった(
図1中、「X」)。
【0101】
図1に示したように、調製例4で作製したいずれの組換えモノクローナル抗体においても、武漢株、デルタ株、及びオミクロン株の全てに対して高い感染中和活性を示すことが確認され、従来の抗SARS-CoV-2抗体(S309)に比べても感染中和活性が顕著に高いことが確認された。
【0102】
(実施例2)
<変異導入済み抗原タンパク質とモノクローナル抗体との結合性解析>
先ず、調製例2の<RBDの作製1>で調製した各ビオチン化変異RBDを固相化したU-plexプレート(MSD社製)の各ウェル(RBD量:60ng/ウェル)に、調製例4で作製した組換えモノクローナル抗体(No.1~14)をそれぞれDiluent 100(MSD社製)で希釈して添加し(抗体量:250pg/ウェル)、700rpmで振盪しながら室温にて1時間反応させた。次いで、ウェルを洗浄した後、SULFO-TAG標識抗IgG抗体を添加して、電気化学発光法により、組換えモノクローナル抗体に結合したIgG抗体量、すなわち各RBDに結合した組換えモノクローナル抗体の量を測定した。RBDとして武漢株RBD(Ancestral)を用いたときに結合した組換えモノクローナル抗体の量を100(%)として、各変異RBDを用いたときに結合した組換えモノクローナル抗体の相対結合量(Relative to Ancestral(%))を算出した。また、比較例として、各組換えモノクローナル抗体に代えて従来の抗SARS-CoV-2抗体であるソトロビマブ親抗体(S309)を用いたときの相対結合量も算出した。結果を示すヒートマップを
図2に示す。
【0103】
図2に示したように、武漢株RBD(Ancestral)のアミノ酸配列の第443位のS(S443)、又は第489位のY(Y489)を別のアミノ酸(N又はS)に置換すると、抗体No.1~3ではS443Nの変異RBD、抗体No.4~14ではY489Sの変異RBDに対する結合性がそれぞれ顕著に低下した。そのため、調製例4で作製した組換えモノクローナル抗体は、S443又はY489を特異的に認識することが確認された。なお、従来の抗SARS-CoV-2抗体(S309)にはこのような特異性は確認されなかった。
【0104】
(実施例3)
〔組換えFabタンパク質の作製〕
調製例4で増幅した抗体遺伝子のうち、抗体No.2、5~7の各重鎖可変領域をコードする塩基配列を、ヒトIgG1の定常領域のCH1領域(配列番号:58のアミノ酸配列(γ1)の第1~105位のアミノ酸配列)をコードする塩基配列とヒスタグとを含む哺乳類発現用ベクターに導入し、重鎖発現ベクターとした。作製した重鎖発現ベクターと、調製例4で作製した抗体No.2、5~7の各軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含む軽鎖発現ベクターと、Expi293 Expression System(Thermo Fisher Scientific社製)とを用いて各塩基配列にコードされるタンパク質をそれぞれ発現させ、TALONカラム(Takara社製)を用いて、培養上清から組換えFabタンパク質を精製した。
【0105】
〔抗体抗原結合親和性測定〕
SARS-CoV-2(武漢株、デルタ株、オミクロン株(BA.1)、オミクロン株(BA.2))のRBDとして、それぞれ、調製例2の<RBDの作製1>で調製した各ビオチン化RBDを用い、上記で調製した組換えFabタンパク質と各RBDとの結合親和性を、Octetシステム(ザルトリウス社)を用いて、バイオレイヤー干渉法にて測定した。より具体的には、各ビオチン化RBDを固相化したOctetシステムのストレプトアビジンバイオセンサーを、各組換えFabタンパク質を添加したKinetics buffer(ザルトリウス社)中に浸漬して、Fabタンパク質とRBDとの間の解離定数(KD(M))、結合速度定数(kon(1/Ms(ミリ秒)))、及び解離速度定数(koff(1/s))をそれぞれ測定した。結果を下記の表3に示す。
【0106】
【0107】
表3に示したように、抗体No.2、5~7の組換えFabタンパク質においてはいずれも、武漢株、デルタ株、及びオミクロン株のRBDに対する解離定数が1.0×10-7M以下であり、これらのRBDに対して高い結合親和性を有することが確認された。
【0108】
(実施例4)
<抗体退避変異ウイルス(エスケープウイルス)解析>
先ず、調製例4で作製した組換えモノクローナル抗体(No.2、5~7)を、2% FBS、100U/mL ペニシリン、及び100μg/mL ストレプトマイシンを添加したDMEM培養液で段階希釈し、100 TCID50のSARS-CoV-2(武漢株)と混合して、37℃のCO2インキュベーターにて1時間反応させた。次いで、これを12ウェルプレート上で一晩培養したVeroE6/TMPRSS2細胞に加え、37℃のCO2インキュベーターにて培養した(培養1)。培養1の培養開始から3日目に、細胞変性効果が観察されたウェルのうち最も抗体濃度が高かったものの培養上清を、再度、段階希釈した組換えモノクローナル抗体と混合し、37℃のCO2インキュベーターにて1時間反応させた。次いで、これを12ウェルプレート上で一晩培養したVeroE6/TMPRSS2細胞に加え、37℃のCO2インキュベーターにて培養した(培養2)。培養2の培養開始から3日目に、細胞変性効果が観察されたウェルのうち最も抗体濃度が高かったものの培養上清として、抗体退避変異ウイルス候補を得た。得られた抗体退避変異ウイルス候補は、限界希釈法にてクローニングした後、Direct-zol RNA kit(ZYMO RESEARCH社製)を用いてRNAを抽出し、サンガー法を使ってそのRBDをコードする塩基配列の解析を行った。
【0109】
解析の結果、SARS-CoV-2の武漢株のRBD(武漢株RBD、配列番号:1のアミノ酸配列の第319~541位のアミノ酸配列)に比べて、抗体No.2の組換えモノクローナル抗体に対しては、7個のうちの6個のクローンでK444Mのエスケープ変異、及び、7個のうちの残り1個のクローンでG447Dのエスケープ変異が確認され、抗体No.7の組換えモノクローナル抗体に対しては、8個の全てのクローンでF486Sのエスケープ変異が確認された。他方、抗体No.5、6の組換えモノクローナル抗体に対してはいずれもエスケープ変異が確認されず、抗体退避変異ウイルスが特に生じ難いことが確認された。結果を下記の表4に示す。
【0110】
【0111】
(実施例5)
<動物における治療効果の評価>
本実験は、国立感染症研究所BSL3実験施設にて実施した。10000 TCID
50のSARS-CoV-2(武漢株、オミクロン株(BA.1)、オミクロン株(BA.2))をそれぞれ7~9匹のシリアンハムスターに経鼻接種して感染させ、その翌日に、調製例4で作製した組換えモノクローナル抗体(No.5~7、抗体量:5mg/kg)を腹腔内投与した。また、比較例として、PBS又は従来の抗SARS-CoV-2抗体であるソトロビマブ親抗体(S309)を同様に投与した。武漢株に感染させたハムスターは、感染日(経鼻摂取日)から6日間に亘って体重変化を観察した。感染日(0日目)の体重を100としたときの感染日からの体重変化の平均値を
図3に示す。また、感染日から6日目の右肺後葉(Lung lobe)を採取して重量を測定した。感染日から6日目の右肺後葉重量(g)及びそれらの平均値(バーで示す)を
図4に示す。
【0112】
また、オミクロン株に感染させたハムスターは、感染日(経鼻摂取日)から3日目に1mLの洗浄液で洗浄した鼻腔洗浄液をそれぞれ採取し、Direct-zol RNA kit (ZYMO RESEARCH社)を用いてRNAを抽出して、プライマー(forward primer:配列番号:61に記載のヌクレオチド配列、reverse primer:配列番号:62に記載のヌクレオチド配列)を用いて、QuantiTect Probe RT-PCR Kit(QIAGEN社)を用いたqRT-PCR法により、鼻腔洗浄液1mLあたりのウイルスコピー数を測定した。結果を
図5及び
図6に示す。
図5は、オミクロン株(BA.1)を感染させたときの感染日から3日目の鼻腔洗浄液中のウイルスコピー数及びそれらの平均値(バーで示す)を示し、
図6は、オミクロン株(BA.2)を感染させたときの感染日から3日目の鼻腔洗浄液中のウイルスコピー数及びそれらの平均値(バーで示す)を示す。
【0113】
図3~6において、「*」、「**」、「***」、及び「****」は、PBSを投与したときに対するANOVA検定において、それぞれ、p<0.05、p<0.01、p<0.001、及びp<0.0001であったことを示す。
【0114】
図3に示したように、SARS-CoV-2の武漢株を感染させたハムスターにおいては、抗体No.6、7の組換えモノクローナル抗体の投与によって有意な体重減少の抑制が確認され、特に、抗体No.7の組換えモノクローナル抗体を投与した場合には、S309よりも早くから体重減少の抑制が確認された。さらに、
図4に示したように、SARS-CoV-2の武漢株を感染させたハムスターにおいては、いずれの組換えモノクローナル抗体を投与した場合にも、S309と同様に、PBS投与に比べて有意に右肺後葉重量が小さくなり、優れた治療効果が確認された。
【0115】
また、
図5~6に示したように、オミクロン株(BA.1、BA.2)に感染させたハムスターにおいては、いずれの組換えモノクローナル抗体を投与した場合にも、PBSを投与したときに比べて有意に鼻腔洗浄液中のウイルスコピー数が減少し、抗体No.6、7の組換えモノクローナル抗体を投与した場合には、特に優れた治療効果が確認された。
【0116】
(実施例6)
<シュードタイプウイルスを用いた中和活性測定>
調製例5で作製したモノクローナル抗体によるSARS-CoV-2ウイルス感染阻害効果を評価するために、シュードタイプウイルスを用いた中和活性試験を行なった。先ず、調製例5で作製したNo.15の組換えモノクローナル抗体を、2% FBS、100U/mL ペニシリン、及び100μg/mLストレプトマイシンを添加したDMEM培養液で段階希釈し、100 TCID50のSARS-CoV-2シュードタイプウイルス(オミクロン株(XBB.1.5))と混合して、37℃のCO2インキュベーターにて1時間反応させた。次いで、これを96ウェルプレート上で一晩培養したVeroE6/TMPRSS2細胞に加え、37℃のCO2インキュベーターにて培養した。1日間培養した後、Bright-Glo Luciferase Assay system(Promega社製)を加え、感染した細胞数に対応するルシフェラーゼの発光強度を測定した。抗体なしウイルスなしの組み合わせのときの発光強度、及び抗体なしウイルスありの組み合わせのときの発光強度を基に、感染中和活性(感染細胞数を、抗体なしウイルスありの組み合わせのときの50%にするために必要な抗体濃度)のIC50を算出した。その結果、No.15の組換えモノクローナル抗体のオミクロン株(XBB.1.5)に対する感染中和活性は、IC50で、56.78ng/mLであり、高い感染中和活性を示すことが確認された。
【0117】
(実施例7)
ビオチン化変異RBD(抗原タンパク質)として、調製例2の<RBDの作製1>で調製したAncestral、ベータ株RBD、デルタ株RBD、オミクロン株(BA.1)RBD、オミクロン株(BA.2)RBD、Y489Sのビオチン化RBDに加えて、<RBDの作製2>で調製した各ビオチン化RBDを用い、かつ、組換えモノクローナル抗体として、調製例5で作製したNo.15の組換えモノクローナル抗体を用いたこと以外は実施例2と同様にして、抗原タンパク質とモノクローナル抗体との結合性解析を行なった。RBDとして武漢株RBD(Ancestral)を用いたときに結合した組換えモノクローナル抗体の量を100(%)として、各RBDを用いたときに結合した組換えモノクローナル抗体の相対結合量(Relative to Ancestral(%))を算出した。結果を示すヒートマップを
図7に示す。
【0118】
図7に示したように、武漢株RBD(Ancestral)のアミノ酸配列の第489位のY(Y489)を別のアミノ酸(S)に置換すると、かかる変異RBDに対する結合性が顕著に低下した。そのため、調製例5で作製した組換えモノクローナル抗体はY489を特異的に認識することが確認された。また、調製例5で作製した組換えモノクローナル抗体は、武漢株RBD(Ancestral)も含めて、上記の全ての変異株のRBDに対して高い結合親和性を有することが確認された。
以上説明したように、本発明によれば、従来型のSARS-CoV-2に加えて、オミクロン株を含む他の変異株に対しても結合親和性及び感染中和活性の高い新規抗体、並びに、それを用いたCOVID-19の予防又は治療用組成物、SARS-CoV-2を免疫学的に検出するための組成物、及びSARS-CoV-2を免疫学的に検出する方法を提供することが可能となる。