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特開2024-147231医用情報処理装置、及び、医用情報処理システム
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  • 特開-医用情報処理装置、及び、医用情報処理システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147231
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】医用情報処理装置、及び、医用情報処理システム
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/00 20180101AFI20241008BHJP
【FI】
G16H20/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060111
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 亮介
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 真人
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA15
5L099AA22
(57)【要約】
【課題】ユーザに対して、治療への動機付けを促すこと。
【解決手段】実施形態に係る医用情報処理装置は、予測取得部と、実績取得部と、治療成果算出部と、表示制御部と、を備える。予測取得部は、ユーザに対する治療計画に基づく、所定期間における当該ユーザの検査結果の予測データを取得する。実績取得部は、所定期間におけるユーザの検査結果の実績データを取得する。治療成果算出部は、検査結果の予測データと、検査結果の実績データとの差に基づいて、ユーザの治療実績の成果を示す治療成果情報を算出する。表示制御部は、治療成果情報を表示部に表示させる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザに対する治療計画に基づく、所定期間における当該ユーザの検査結果の予測データを取得する予測取得部と、
前記所定期間における前記ユーザの検査結果の実績データを取得する実績取得部と、
前記検査結果の予測データと、前記検査結果の実績データとの差に基づいて、前記ユーザの治療実績の成果を示す治療成果情報を算出する治療成果算出部と、
前記治療成果情報を表示部に表示させる表示制御部と、
を備える医用情報処理装置。
【請求項2】
前記治療成果情報は、前記所定期間における医療費の予測値と、当該所定期間における医療費の実績値との差であり、
前記表示制御部は、前記所定期間における前記治療成果情報の推移を前記表示部に表示させる、
請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項3】
前記治療成果情報は、前記ユーザの治療完了時期の予測値と、当該ユーザの治療完了時期の実績値との差である、
請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項4】
前記治療成果情報は、前記ユーザの健康寿命の予測値と、当該ユーザの健康寿命の実績値との差である、
請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項5】
前記ユーザの嗜好を示す嗜好情報を取得する嗜好取得部と、
前記治療成果情報と、前記嗜好情報とに基づいて、前記ユーザに嗜好の抑制又は抑制の解除を促す嗜好調整情報を生成する嗜好調整部と、
をさらに備え、
前記表示制御部は、前記嗜好調整情報を前記表示部に表示させる、
請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項6】
前記ユーザの症状又は身体的特徴と同様であるか近似している他ユーザの前記治療成果情報を取得する治療成果取得部をさらに備え、
前記表示制御部は、前記ユーザの前記治療成果情報と、前記他ユーザの前記治療成果情報とを比較可能に前記表示部に表示させる、
請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項7】
医用情報管理装置と、医用情報処理装置とがネットワークを介して通信可能に構成される医用情報処理システムであって、
前記医用情報管理装置は、
ユーザに対する治療計画に基づく、所定期間における当該ユーザの検査結果の予測データと、
前記所定期間における前記ユーザの検査結果の実績データと、
を記憶し、
前記医用情報処理装置は、
前記医用情報管理装置から前記ネットワークを介して前記検査結果の予測データを取得する予測取得部と、
前記医用情報管理装置から前記ネットワークを介して前記検査結果の実績データを取得する実績取得部と、
前記検査結果の予測データと、前記検査結果の実績データとの差に基づいて、治療成果を示す治療成果情報を算出する治療成果算出部と、
前記治療成果情報を表示部に表示させる表示制御部と、
を備える、
医用情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、医用情報処理装置、及び、医用情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、傷病(疾患、外傷等)の進行度や患者の基本情報(例えば、検査値、身体データ等)に基づいて、傷病改善のための最適な治療(医療行為、非医療行為(患者自身が行う生活習慣の改善等))を提案するとともに、最適な治療が当該患者に施された場合の治療効果を予測する技術がある。
【0003】
ただし、予測される治療効果は、直接的な効果を示すものであることが多く、例えば、糖尿病の判定に用いられるHbA1c等の検査値の改善率に対応する。患者は、最適な治療が施された場合に予測される検査値の改善率を見せられたとしても、傷病が改善する可能性の有無が分かるものの、どの程度改善され得るのかを把握するのが難しく、また、その治療(特に、生活習慣の改善)への意欲が湧く訳でもない。換言すれば、直接的な治療効果を患者に示したとしても、提案された治療を実際に継続するための動機付けになるとは限らない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-155411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、患者等のユーザに対して、治療への動機付けを促すことである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限らない。後述する各実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置付けることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る医用情報処理装置は、予測取得部と、実績取得部と、治療成果算出部と、表示制御部と、を備える。予測取得部は、ユーザに対する治療計画に基づく、所定期間における当該ユーザの検査結果の予測データを取得する。実績取得部は、所定期間におけるユーザの検査結果の実績データを取得する。治療成果算出部は、検査結果の予測データと、検査結果の実績データとの差に基づいて、ユーザの治療実績の成果を示す治療成果情報を算出する。表示制御部は、治療成果情報を表示部に表示させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1実施形態に係る医用情報処理システムの構成例を示すブロック図。
図2図2は、第1実施形態に係る医用情報処理システムの処理例を示すフローチャート。
図3】第1実施形態に係る検査値及び医療費削減金額の推移例を示すグラフ。
図4】第1実施形態に係る医用情報処理装置のディスプレイの表示例を示す図。
図5】第2実施形態に係る医用情報処理システムの処理例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、医用情報処理装置、及び、医用情報処理システムの実施形態について詳細に説明する。
【0009】
〔第1実施形態〕
図1は、第1実施形態に係る医用情報処理システム1の構成例を示すブロック図である。図1に示すように、医用情報処理システム1は、第1医用情報管理装置2と、第2医用情報管理装置3と、医用情報処理装置4とがネットワーク5を介して互いに通信可能に構成される。第1医用情報管理装置2及び第2医用情報管理装置3は、医用情報管理装置の一例である。
【0010】
第1医用情報管理装置2は、患者の治療計画に基づいて、当該患者に関する今後の治療効果を予測して管理するサーバである。第1医用情報管理装置2は、例えば、パーソナルコンピュータやワークステーション等の一般的な情報処理装置により構成される。図1に示すように、第1医用情報管理装置2は、ディスプレイ21、入力インタフェース22、ネットワークインタフェース23、処理回路24、及び、記憶回路25を備えている。
【0011】
第1医用情報管理装置2のディスプレイ21は、例えば、液晶ディスプレイ、OLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイ等の一般的な表示出力装置により構成される。入力インタフェース22は、例えば、トラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、テンキー等の一般的な入力装置により構成され、医師の操作に対応した操作入力信号を処理回路24に出力する。ネットワークインタフェース23は、ネットワーク5の形態に応じた種々の情報通信用プロトコルを実装する。ネットワークインタフェース23は、この各種プロトコルに従ってネットワーク5を介して第2医用情報管理装置3及び医用情報処理装置4と接続する。ネットワークインタフェース23は、送受信部の一例である。
【0012】
処理回路24は、第1医用情報管理装置2を統括制御する機能を実現する。また、処理回路24は、記憶回路25に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、治療効果を予測する処理を実行するプロセッサである。
処理回路24のプロセッサは、治療効果予測機能241を実現する。この機能は、例えば、プログラムの形態で記憶回路15に記憶されている。
治療効果予測機能241は、患者の治療計画に基づいて、当該患者に関する今後の治療効果を予測する機能を含む。治療計画には、患者に対する治療、例えば、医療行為(投薬等)及び非医療行為(生活習慣の改善)に関する計画が含まれる。
【0013】
記憶回路25は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等の、プロセッサにより読み取り可能な記録媒体を含んだ構成を有し、処理回路24が利用するプログラム、パラメータデータ等を記憶する。
【0014】
記憶回路25は、少なくとも、治療効果予測データ251と、医療費予測データ252とを記憶する。治療効果予測データ251は、治療計画に従って患者に治療を施された場合の、当該患者の治療効果を予測したデータであり、例えば、患者の各種検査値の予測値を含む。すなわち、治療効果予測データ251は、ユーザに対する治療計画に基づく、所定期間における当該ユーザの検査結果の予測データの一例である。医療費予測データ252は、治療計画に従って患者に治療が施された場合の、当該患者の医療費を予測したデータである。
【0015】
第2医用情報管理装置3は、HIS(Hospital Information System)と呼ばれるシステムに含まれるサーバであり、電子カルテや各システムの院内データの操作、保存、閲覧等を可能とする。各システムには、医事会計システム(レセプトコンピュータ)、薬局管理システム、画像管理システム(PACS、Picture Archiving and Communication Systems)、予約システム、入退院管理システム、給食・栄養管理システム等が含まれる。第2医用情報管理装置3は、例えば、パーソナルコンピュータやワークステーション等の、複数の一般的な情報処理装置により構成される。図1に示すように、病院情報システム3は、ディスプレイ31、入力インタフェース32、ネットワークインタフェース33、処理回路34、及び、記憶回路35を備えている。
【0016】
第2医用情報管理装置3のディスプレイ31は、例えば、液晶ディスプレイ、OLEDディスプレイ等の一般的な表示出力装置により構成される。入力インタフェース32は、例えば、トラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、テンキー等の一般的な入力装置により構成され、医師の操作に対応した操作入力信号を処理回路34に出力する。ネットワークインタフェース33は、ネットワーク5の形態に応じた種々の情報通信用プロトコルを実装する。ネットワークインタフェース33は、この各種プロトコルに従ってネットワーク5を介して第1医用情報管理装置2及び医用情報処理装置4と接続する。ネットワークインタフェース33は、送受信部の一例である。
【0017】
処理回路34は、病院情報システム3を統括制御する機能を実現する。また、処理回路34は、記憶回路35に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、院内データを操作、保存、閲覧可能とするための処理を実行するプロセッサである。
【0018】
記憶回路35は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等の、プロセッサにより読み取り可能な記録媒体を含んだ構成を有し、処理回路34が利用するプログラムやパラメータデータやその他のデータを記憶する。
【0019】
記憶回路35は、少なくとも、患者データ351と、診療データ352とを記憶する。患者データ351は、患者固有のデータであり、例えば、患者の氏名、生年月日、身長、体重、血液型、既往歴等を含む。診療データ352は、患者の診療結果のデータ、例えば、実際の検査結果、医師が診断した状態等を含む。診療データ352は、所定期間におけるユーザの検査結果の実績データの一例である。
【0020】
医用情報処理装置4は、第1医用情報管理装置2が保持する予測データと、第2医用情報管理装置3が保持する実績データとに基づいて、治療成果情報を算出し、表示する。医用情報処理装置4は、例えば、パーソナルコンピュータやスマートフォン等の、患者個人が利用する情報処理装置により構成される。図1に示すように、医用情報処理装置4は、ディスプレイ41、入力インタフェース42、ネットワークインタフェース43、処理回路44、及び、記憶回路45を備えている。
【0021】
医用情報処理装置4のディスプレイ41は、例えば、液晶ディスプレイ、OLEDディスプレイ等の一般的な表示出力装置により構成される。入力インタフェース42は、例えば、トラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、テンキー、タッチパネル等の一般的な入力装置により構成され、患者の操作に対応した操作入力信号を処理回路44に出力する。
【0022】
ネットワークインタフェース43は、ネットワーク5の形態に応じた種々の情報通信用プロトコルを実装する。ネットワークインタフェース43は、この各種プロトコルに従ってネットワーク5を介して第1医用情報管理装置2及び第2医用情報管理装置3と接続する。ネットワークインタフェース43は、送受信部の一例である。
【0023】
処理回路44は、医用情報処理装置4を統括制御する機能を実現する。また、処理回路44は、記憶回路45に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、治療成果情報を算出し、表示する処理を実行するプロセッサである。
処理回路44のプロセッサは、記憶回路45、又は、処理回路44内のメモリに記憶されたコンピュータプログラムを読み出して実行することで、予測データ取得機能441、実績データ取得機能442、治療成果算出機能443、表示制御機能444、嗜好情報取得機能445、嗜好調整機能446、及び、治療成果取得機能447を実現する。なお、機能441~447の全部又は一部は、データを管理する第1医用情報管理装置2又は第2医用情報管理装置3によって実現されるようにしてもよい。
【0024】
予測データ取得機能441は、第1医用情報管理装置2から、患者に対する治療計画に基づく、所定期間(例えば、過去2年間、今後1年間等)における当該患者の検査結果の予測データを取得する機能を含む。例えば、過去2年間の検査結果の予測データであれば、2年以上前の治療計画に基づいて作成されたものである。患者は、ユーザの一例である。実績データ取得機能442は、第2医用情報管理装置3から、所定期間(例えば、過去2年間等)における患者の検査結果の実績データを取得する機能を含む。
【0025】
治療成果算出機能443は、検査結果の予測データと、検査結果の実績データとの差に基づいて、患者の治療実績の成果を示す治療成果情報を算出する機能を含む。治療成果算出機能443は、算出した治療成果情報を治療成果情報452として記憶回路45に記憶させる機能を含む。治療成果情報には、例えば、医療費の削減金額、治療完了予定の前倒し月数、健康寿命の延長年数、治療や通院に要する時間削減等が含まれる。表示制御機能444は、治療成果情報をディスプレイ41に表示させる機能を含む。ディスプレイ41は、表示部の一例である。
【0026】
嗜好情報取得機能445は、記憶回路45から患者の嗜好を示す嗜好情報を取得する機能を含む。嗜好情報は、表示用パラメータ451に含まれる。嗜好調整機能446は、治療成果情報と、嗜好情報とに基づいて、患者に嗜好抑制の解除を促す「今月のご褒美」を生成する機能を含む。「今月のご褒美」は、嗜好調整情報の一例である。なお、嗜好抑制を促すメッセージも、嗜好調整情報の一例である。
【0027】
治療成果取得機能447は、患者の症状又は身体的特徴と同様であるか近似している他の患者の治療成果情報を取得する機能を含む。他の患者は、他ユーザの一例である。この機能が実行されると、表示制御機能444は、患者の治療成果情報と、他の患者の治療成果情報とを比較可能にディスプレイ41に表示させる。
【0028】
記憶回路45は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等の、プロセッサにより読み取り可能な記録媒体を含んだ構成を有し、処理回路44が利用するプログラム、パラメータデータ等を記憶する。
【0029】
記憶回路45は、少なくとも、表示用パラメータ451と、治療成果情報452とを記憶する。表示用パラメータ451は、治療成果情報に応じて嗜好調整情報を生成、表示する際に基になるデータである。換言すれば、表示用パラメータ451は、患者の嗜好に合わせた表示を行うための、当該患者個人に関するデータである。表示用パラメータ451には、まず、治療計画の対象期間(例えば、過去2年間)における、各期日の検査値に関する閾値が含まれる。閾値は、1つであってもよいし、複数であってもよい。表示用パラメータ451には、さらに、患者の元の嗜好を示す嗜好情報、例えば、飲酒、喫煙、食事の習慣に関するデータが含まれる。治療成果情報452は、治療成果算出機能443の説明にて記載した通りである。
【0030】
図2は、第1実施形態に係る医用情報処理システム1の処理例を示すフローチャートである。
【0031】
ステップS1で、第1医用情報管理装置2の治療効果予測機能241は、患者の治療計画に基づいて当該患者の検査結果を予測する。例えば、治療効果予測機能241は、まず、第2医用情報管理装置3から患者データ351及び診療データ352を取得する。次に、治療効果予測機能241は、患者データ351から対象患者と同じか近似した特徴を有する他患者を特定する。そして、治療効果予測機能241は、診療データ352から当該他患者の検査値を取得し、当該検査値を予測値とする。
【0032】
なお、上記に該当する他患者が複数存在する場合には、治療効果予測機能241は、複数の他患者の検査値の平均を予測値としてもよい。さらに、治療効果予測機能241は、検査値の予測値を治療効果予測データ251として記憶回路25に記憶させる。
【0033】
ステップS2で、医用情報処理装置4の予測データ取得機能441は、第1医用情報管理装置2から、当該患者の検査結果の予測データを取得する。当該検査結果の予測データは、例えば、第1医用情報管理装置2の記憶回路25に治療効果予測データ251として記憶されている。
【0034】
ステップS3で、医用情報処理装置4の実績データ取得機能442は、第2医用情報管理装置3から、当該患者の検査結果の実績データを取得する。当該検査結果の実績データは、第2医用情報管理装置3の記憶回路35に診療データ352として記憶されている。
【0035】
ステップS4で、医用情報処理装置4の治療成果算出機能443は、検査結果の予測値と、検査結果の実績値との差に基づいて、医療費削減金額を治療成果情報として算出する。換言すれば、当該治療成果情報は、所定期間における医療費の予測値と、当該所定期間における医療費の実績値との差(すなわち、医療費削減金額)であってもよい。以下、検査結果の数値は小さいほど、患者の状態は良好であるとする。
【0036】
例えば、治療成果算出機能443は、2ヶ月ごとに、検査結果の予測値と、検査結果の実績値との差に基づいて、医療費削減金額を算出する。所定の期日における検査結果によりその後2ヶ月間の医療費が決まるので、検査結果の予測値と、検査結果の実績値との差により、当初の医療計画に基づく医療費からの削減金額を求めることが可能である。そして、治療成果算出機能443は、2ヶ月ごとの医療費削減金額を所定期間分積算することにより、当該所定期間における医療費削減金額の合計値を算出する。なお、治療成果算出機能443は、検査結果の予測値及び実績値、並びに、医療費削減金額の推移を示すグラフを治療成果情報に追加してもよい。
【0037】
図3は、第1実施形態に係る検査値及び医療費削減金額の推移例を示すグラフである。2ヶ月ごとの棒グラフのうち、左側の棒グラフは、検査値の予測値を示す。2ヶ月ごとの棒グラフのうち、右側の棒グラフは、検査値の実績値を示す。ここで、検査値は、糖尿病の判定に用いられるHbA1c等の値[%]である。折れ線グラフは、医療費削減金額の累積値[万円]の推移を示す。すなわち、折れ線グラフは、所定期間における治療成果情報の推移の一例を示す。
【0038】
図3に示すように、患者が治療計画に含まれる治療に従えば、検査値は下がることが想定されるので、検査値の予測値は右肩下がりになっている。ここで、治療は、例えば、治療行為を伴う治療(服薬等)と、医療行為を伴う治療(患者の運動等)を含む。検査値の実績値が予測値よりも低ければ、当初の治療計画よりも、医療費は削減され、治療完了予定は早まり、健康寿命は延長される。一方、図3とは異なるが、検査値の実績値が予測値よりも高ければ、当初の治療計画よりも、医療費は増加し、治療完了予定は遅くなり、健康寿命は短縮される。何れにせよ、検査値及び医療費削減金額の推移を示すグラフの作成及び参照は、患者にとって治療へのモチベーションに繋がる。
【0039】
図2に戻って、ステップS5で、医用情報処理装置4の治療成果算出機能443は、検査結果の予測値と、検査結果の実績値との差に基づいて、治療完了予定の前倒し月数を治療成果情報として算出する。換言すれば、当該治療成果情報は、患者の治療完了時期の予測値と、患者の治療完了時期の実績値との差(すなわち、治療完了予定の前倒し月数)であってもよい。
【0040】
例えば、治療成果算出機能443は、2ヶ月ごとの、検査結果の予測値と、検査結果の実績値との差を積算する。次に、治療成果算出機能443は、当該積算値に所定の係数(正の値)を乗算して治療完了予定の前倒し月数を求める。「検査結果の予測値-実績値」の積算値が大きいほど、前倒し月数は大きくなる。
【0041】
なお、当初の治療計画に基づく治療完了予定月から前倒し月数を差し引くことにより、良好な検査結果により前倒しされた治療完了予定月が算出可能である。また、治療完了予定の前倒し月数の求め方は、所定の係数を乗算する方法に限定されることなく、別の算出方法であってもよい。治療完了予定の前倒し、すなわち、治療期間の短縮により、通院費、診療費(再診費用を含む)、薬の費用(処方料)、検査費用等が削減されることになる。投薬に関して、例えば、最初は5種類の薬が処方されていたところ、患者の経過が良好であれば、投薬が5種類よりも減ることになる。
【0042】
ステップS6で、医用情報処理装置4の治療成果算出機能443は、検査結果の予測値と、検査結果の実績値との差に基づいて、健康寿命の延長年数を治療成果情報として算出する。換言すれば、当該治療成果情報は、患者の健康寿命の予測値と、患者の健康寿命の実績値との差(すなわち、健康寿命の延長年数)であってもよい。
【0043】
例えば、治療成果算出機能443は、2ヶ月ごとの、検査結果の予測値と、検査結果の実績値との差を積算する。次に、治療成果算出機能443は、当該積算値に所定の係数(正の値)を乗算して健康寿命の延長年数を求める。「検査結果の予測値-実績値」の積算値が大きいほど、延長年数は大きくなる。なお、当初の治療計画に基づく健康寿命から延長年数を加算することにより、良好な検査結果により延長された健康寿命が算出可能である。また、健康寿命の延長年数の求め方は、所定の係数を乗算する方法に限定されることなく、別の算出方法であってもよい。
【0044】
ステップS7で、医用情報処理装置4の嗜好調整機能446は、検査結果の予測値と、検査結果の実績値との差、及び、患者の嗜好情報に基づいて、当月のご褒美を嗜好調整情報として生成する。
【0045】
例えば、所定の期日に計測された、患者の検査値が閾値よりも小さかった場合、嗜好調整機能446は、「今月のご褒美」を生成する。そのとき、嗜好調整機能446は、患者の嗜好情報が「週1回2合のお酒」である場合、例えば、検査値が下回った閾値のレベルに応じて「週1回1合のお酒を飲んでもよい」又は「週1回2合のお酒を飲んでもよい」というメッセージを「今月のご褒美」として生成する。また、嗜好調整機能446は、患者の嗜好情報が「週3回のスイーツ」である場合、例えば、検査値が閾値を下回ったときに「週1回のスイーツを食べてもよい」というメッセージを「今月のご褒美」として生成する。
【0046】
ステップS8で、医用情報処理装置4の表示制御機能444は、医療費削減金額、治療完了予定の前倒し月数、健康寿命の延長年数、及び、当月のご褒美をディスプレイ41に表示させる。表示制御機能444は、さらに、検査値の予測値及び実績値、並びに、医療費削減金額の推移を示すグラフをディスプレイ41に表示させてもよい。
【0047】
図4は、第1実施形態に係る医用情報処理装置4のディスプレイ41の表示例を示す図である。図4に示すように、医療費削減金額は、所定期間の累積値である「医療費削減実績」として「+50000円」が表示されている。なお、前月の医療費と、今月の医療費との差として、「+5000円」が表示されている。治療完了予定の前倒し月数は、「-1年4ヶ月」が表示されている。なお、当初の治療完了予定月及び前倒しされた治療完了予定月として、「2025年8月」及び「2024年4月」が表示されている。健康寿命の延長年数は、「+5年」が表示されている。当月のご褒美は、「今月のご褒美」として、「お酒:週1回2合程度、肉:週1回ステーキ肉300g、スイーツ:週1回モンブランケーキ1個」が表示されている。
【0048】
なお、検査結果の数値が大きいほど患者の状態が良好な場合にも、上記の処理は適用可能である。また、実績値が予測値よりも悪い場合には、患者に悪い状態の改善を促すような治療成果情報を表示することにより、患者は逆の意味で治療に対する動機付けを得ることができる。
【0049】
第1実施形態によれば、患者の治療計画による治療成果及び経過推移が当該患者の視点で分かりやすく表示されるため、治療への意欲が湧きやすく、治療(生活習慣の改善等)を継続するためのモチベーションに繋げることができる。治療が医療行為の場合は、治療への意欲は、医療行為を施す医療機関への通院の意欲と言い換えることもできる。他方、治療が非医療行為(生活習慣の改善等)の場合は、治療への意欲は、食事を制限する意欲や、運動する意欲を意味する。また、家族を含めて患者側が検査結果をよくするのに積極的になり、QOL(Quality of Life)を維持するためのモチベーションにも繋がる。その結果、医療費の削減を図ることができる。
【0050】
〔第2実施形態〕
第2実施形態に係る医用情報処理システム1は、患者同士のランキングデータを表示する処理が、第1実施形態と異なる。なお、医用情報処理システム1は、ランキングデータだけを表示してもよいし、第1実施形態に係る治療成果情報及び嗜好調整情報と共にランキングデータを表示してもよい。
【0051】
図5は、第2実施形態に係る医用情報処理システム1の処理例を示すフローチャートである。
【0052】
ステップS11で、医用情報処理装置4の処理回路44は、対象患者の症状又は身体的特徴と同様か近似している他患者を特定する。例えば、処理回路44は、第2医用情報管理装置3の診療データ352を取得し、当該診療データ352から対象患者の症状と同様か近似している他患者のIDを抽出する。また、処理回路44は、第2医用情報管理装置3の患者データ351を取得し、当該患者データ351から対象患者の身体的特徴と同様か近似している他患者のIDを抽出する。
【0053】
ステップS12で、医用情報処理装置4の治療成果取得機能447は、ステップS1で抽出した他患者のIDを用いて、記憶回路45から医療費削減金額等を含む治療成果情報452を取得する。
【0054】
ステップS13で、医用情報処理装置4の処理回路44は、医療費削減金額等により対象患者と、他患者とを含むランキングデータを生成する。例えば、処理回路44は、医療費削減金額、治療完了予定の前倒し月数、及び、健康寿命の延長年数のそれぞれに関して、大きい順に患者のランキングデータを生成する。この場合、処理回路44は、例えば、他患者のデータが少ないときに、統計データを用いてもよい。統計データを用いることにより、ランキングの精度の向上が図れる。
【0055】
ステップS14で、医用情報処理装置4の表示制御機能444は、当該ランキングデータをディスプレイ41に表示させる。
【0056】
第2実施形態によれば、例えば、同じ検査値の患者、同じ体型(例えば、肥満体質)の患者、同じ年齢で同じ身長、体重の患者は、同じような経過を辿ることが予測される。その中で、他の患者より頑張っているな、又は、他の患者を追い抜いてやろう等の意識が患者に生まれる。従って、ランキングデータの表示は、治療への動機付けに繋がる表示の一例になる。
【0057】
〔第3実施形態〕
第3実施形態は、患者の治療期間ではなく、治療が終了してから生涯に亘って、生活習慣改善への動機付けを促すためのものである。すなわち、通院治療や経過観察が必要なくなった後であっても、医用情報処理装置4は、従来の生活習慣を続けた場合の検査結果の予測値と、特定検診情報等の検査結果の実績値との差に基づいて、医療費削減金額等の推移を算出し、ディスプレイ41に表示させる。
【0058】
第3実施形態によれば、治療が終了した後であっても、従来の生活習慣の改善を継続することによって、患者は節約できた金額を確認することができる。これにより、患者は生活習慣改善への動機付けをさらに高めることができる。
【0059】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、ユーザに対して、治療への動機付けを促すことができる。
【0060】
なお、予測データ取得機能441は、予測取得部の一例である。実績データ取得機能442は、実績取得部の一例である。治療成果算出機能443は、治療成果算出部の一例である。表示制御機能444は、表示制御部の一例である。嗜好情報取得機能445は、嗜好取得部の一例である。嗜好調整機能446は、嗜好調整部の一例である。治療成果取得機能447は、治療成果取得部の一例である。
【0061】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0062】
1…医用情報処理システム
2…第1医用情報管理装置
3…第2医用情報管理装置
4…医用情報処理装置
41…ディスプレイ
441…予測データ取得機能
442…実績データ取得機能
443…治療成果算出機能
444…表示制御機能
445…嗜好情報取得機能
446…嗜好調整機能
447…治療成果取得機能
図1
図2
図3
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図5