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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147237
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】グロメット
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/22 20060101AFI20241008BHJP
   H01B 17/58 20060101ALI20241008BHJP
   F16L 5/02 20060101ALI20241008BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
H02G3/22
H01B17/58 C
F16L5/02 A
B60R16/02 622
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060125
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】杉野 純希
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 記章
【テーマコード(参考)】
5G333
5G363
【Fターム(参考)】
5G333CB19
5G333DA03
5G333EA02
5G363AA07
5G363BA02
5G363CA17
5G363CB08
(57)【要約】
【課題】グロメットインナ装着時にロック爪をグロメット本体との干渉から保護する。
【解決手段】被取付部材1の一方側から他方側に挿入されるグロメット10はグロメット本体11にグロメットインナ30が装着される。グロメット本体は被取付部材に取り付けた状態で被取付部材の一方側で貫通孔周縁部2aに接触する大径筒部12を備える。グロメットインナは大径筒部に装着可能な分割体を組み合わせた環状の本体部32と本体部を周縁部に係止するインナーロック40と本体部外周壁32aのインナーロック隣接位置に設けた保護壁38を備える。インナーロックのロック爪41は周縁部に係止する係止段部41aと径方向外側面がロック爪の挿入方向前側端部から係止段部まで径方向外側に傾斜した傾斜部41bと径方向外側面が係止段部から挿入方向後端41dまで径方向内側に傾斜したロック爪端部41cを備える。保護壁の挿入方向後端38aがロック爪端部後端より挿入方向後側に位置する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被取付部材にある貫通孔を貫通する電線を内周側で保持するグロメット本体と、前記グロメット本体の外周部に装着されるグロメットインナと、を備え、挿入方向が前記被取付部材の一方側から他方側であるグロメットであって、
前記グロメット本体が、
弾性材料で形成された筒状部材であり、
前記貫通孔の開口径よりも大きい外径を有し、前記被取付部材の前記貫通孔に取り付けられた状態で、前記被取付部材の前記一方側から前記貫通孔の周縁部に接触可能に配置される大径筒部と、
前記大径筒部よりも小径であり、前記被取付部材の前記貫通孔に取り付けられた状態で、前記被取付部材の前記他方側に配置される小径筒部と、を備え、
前記グロメットインナが、
前記グロメット本体よりも剛性の高い材料で形成され、
前記グロメットインナの中心軸を含む仮想平面で二分割された一対の部材を組み合わせて構成される環状の構造体であり、前記大径筒部に装着される本体部と、
それぞれが前記本体部の外周壁に沿って設けられ、前記被取付部材の前記貫通孔に取り付けられた状態で、前記本体部を前記貫通孔の前記周縁部に係止する複数のインナーロックと、
前記外周壁に、前記複数のインナーロックの各々に前記本体部の周方向に隣接して設けられた保護壁と、を備え、
前記複数のインナーロックの各々は、前記本体部の径方向に弾性変形可能なロック爪を有し、
各ロック爪が、
当該ロック爪の前記挿入方向の後側に設けられ、前記貫通孔の周縁部に係止可能な係止段部と、
前記径方向の外側面が、前記ロック爪の前記挿入方向の前側の端部から前記係止段部に向かうに従って、前記径方向の外側に位置するように傾斜した傾斜部と、
前記径方向の外側面が、前記係止段部から前記挿入方向の後端に向かうに従って、前記径方向の内側に位置するように傾斜したロック爪端部と、
を備え、
前記保護壁の前記挿入方向の後端が、前記ロック爪端部の前記後端よりも前記挿入方向の後側に位置するグロメット。
【請求項2】
前記本体部の前記保護壁の前記径方向の最外端が、前記ロック爪の前記傾斜部の前記径方向の外側面よりも前記径方向の内側に位置する、請求項1に記載のグロメット。
【請求項3】
請求項1または2に記載のグロメットを備えるワイヤーハーネス。
【請求項4】
挿入方向が被取付部材の一方側から他方側であって、前記被取付部材にある貫通孔を貫通する電線を内周側で保持するグロメット本体の外周部に装着可能に構成されたグロメットインナであって、
前記グロメットインナが、
前記グロメット本体よりも剛性の高い材料で形成され、
前記グロメットインナの中心軸を含む仮想平面で二分割された一対の部材を組み合わせて構成される環状の構造体であり、前記グロメット本体に装着可能な本体部と、
それぞれが前記本体部の外周壁に沿って設けられ、前記グロメット本体の外周部に装着されて前記被取付部材の前記貫通孔に取り付けられた状態で前記本体部を前記貫通孔の周縁部に係止可能な複数のインナーロックと、
前記外周壁に、前記複数のインナーロックの各々に前記本体部の周方向に隣接して設けられた保護壁と、を備え、
前記複数のインナーロックの各々は、前記本体部の径方向に弾性変形可能なロック爪を有し、
各ロック爪が、
当該ロック爪の前記挿入方向の後側に設けられ、前記貫通孔の周縁部に係止可能な係止段部と、
前記径方向の外側面が、前記ロック爪の前記挿入方向の前側の端部から前記係止段部に向かうに従って、前記径方向の外側に位置するように傾斜した傾斜部と、
前記径方向の外側面が、前記係止段部から前記挿入方向の後端に向かうに従って、前記径方向の内側に位置するように傾斜したロック爪端部と、
を備え、
前記保護壁の前記挿入方向の後端が、前記ロック爪端部の前記後端よりも前記挿入方向の後側に位置するグロメットインナ。
【請求項5】
前記本体部の前記保護壁の前記径方向の最外端が、前記ロック爪の前記傾斜部の前記径方向の外側面よりも前記径方向の内側に位置する、請求項4に記載のグロメットインナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グロメットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、隔壁に形成された取付け孔に取り付けられる、グロメット本体に係止部材(グロメットインナ)を装着してなるグロメットが知られている(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-186154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のグロメットでは、グロメット本体に係止部材を装着する際、グロメット本体のフランジの縁部にグロメットインナのロック爪の先端が干渉して、グロメットインナのグロメット本体への取付作業性が低下する恐れがある。また、グロメットインナをグロメット本体に装着する際にロック爪がグロメット本体のフランジの縁部に干渉すると、ロック爪に、ロック爪端部をグロメットインナの外周面外側方向へ向ける過度な力が加わる恐れがある。
【0005】
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして本発明の目的は、グロメット本体にグロメットインナを装着する際に、グロメット本体との干渉によってロック爪に過度な力が加わることを防止し得るグロメットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に係るグロメットは、被取付部材にある貫通孔を貫通する電線を内周側で保持するグロメット本体と、前記グロメット本体の外周部に装着されるグロメットインナと、を備える。グロメットの挿入方向は、前記被取付部材の一方側から他方側である。前記グロメット本体は、弾性材料で形成された筒状部材である。前記グロメット本体は、前記貫通孔の開口径よりも大きい外径を有して前記被取付部材の前記貫通孔に取り付けられた状態で前記被取付部材の前記一方側から前記貫通孔の周縁部に接触可能に配置される大径筒部と、前記大径筒部よりも小径であり前記被取付部材の前記貫通孔に取り付けられた状態で前記被取付部材の前記他方側に配置される小径筒部と、を備える。前記グロメットインナは、前記グロメット本体よりも剛性の高い材料で形成されて前記グロメットインナの中心軸を含む仮想平面で二分割された一対の部材を組み合わせて構成される環状の構造体であり前記大径筒部に装着される本体部と、それぞれが前記本体部の外周壁に沿って設けられ前記被取付部材の前記貫通孔に取り付けられた状態で前記本体部を前記貫通孔の前記周縁部に係止する複数のインナーロックと、前記外周壁に前記複数のインナーロックの各々に前記本体部の周方向に隣接して設けられた保護壁と、を備える。前記複数のインナーロックの各々は、前記本体部の径方向に弾性変形可能なロック爪を有する。各ロック爪は、当該ロック爪の前記挿入方向後側に設けられて前記貫通孔の周縁部に係止可能な係止段部と、前記径方向の外側面が前記ロック爪の前記挿入方向前側の端部から前記係止段部に向かうに従って前記径方向外側に位置するように傾斜した傾斜部と、前記径方向の外側面が前記係止段部から前記挿入方向の後端に向かうに従って前記径方向内側に位置するように傾斜したロック爪端部と、を備える。前記保護壁の前記挿入方向の後端は、前記ロック爪端部の前記後端よりも前記挿入方向後側に位置する。
【0007】
本発明の態様に係るワイヤーハーネスは、前記グロメットを備える。
【0008】
本発明の態様に係るグロメットインナは、その挿入方向が被取付部材の一方側から他方側である。前記グロメットインナは、前記被取付部材にある貫通孔を貫通する電線を内周側で保持するグロメット本体の外周部に装着可能に構成されている。前記グロメットインナは、前記グロメット本体よりも剛性の高い材料で形成されている。前記グロメットインナは、前記グロメットインナの中心軸を含む仮想平面で二分割された一対の部材を組み合わせて構成される環状の構造体であり前記グロメット本体に装着可能な本体部と、それぞれが前記本体部の外周壁に沿って設けられて前記グロメット本体の外周部に装着されて前記被取付部材の前記貫通孔に取り付けられた状態で前記本体部を前記貫通孔の周縁部に係止可能な複数のインナーロックと、前記外周壁に前記複数のインナーロックの各々に前記本体部の周方向に隣接して設けられた保護壁と、を備える。前記複数のインナーロックの各々は、前記本体部の径方向に弾性変形可能なロック爪を有する。各ロック爪は、当該ロック爪の前記挿入方向の後側に設けられて前記貫通孔の周縁部に係止可能な係止段部と、前記径方向の外側面が前記ロック爪の前記挿入方向前側の端部から前記係止段部に向かうに従って前記径方向外側に位置するように傾斜した傾斜部と、前記径方向の外側面が前記係止段部から前記挿入方向の後端に向かうに従って前記径方向の内側に位置するように傾斜したロック爪端部と、を備える。前記保護壁の前記挿入方向の後端は、前記ロック爪端部の前記後端よりも前記挿入方向の後側に位置する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、グロメット本体にグロメットインナを装着する際に、グロメット本体と干渉することによってロック爪に過度な力が加わることを防止し得るグロメットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係るグロメットを示す斜視図である。
図2】実施形態に係るグロメットの断面図である。
図3】実施形態に係るグロメットインナを含むグロメットの分解図である。
図4】実施形態に係るグロメットの傘状の遮音部を折り返した状態を示す斜視図である。
図5】実施形態に係るグロメットの傘状の遮音部を折り返した状態を示す断面図である。
図6】前記グロメットに用い得る実施形態に係るグロメットインナの下面側を示す平面図である。
図7】実施形態に係るグロメットインナの図6に示したVII-VII断面線に沿った断面図である。
図8】実施形態に係るグロメットインナの図7に示したインナーロックが含まれる部位の拡大断面図である。
図9】グロメット本体の大径筒部がグロメットインナ本体部の保護壁で押し下げられている状態を説明する実施形態に係るグロメットインナのインナーロックが含まれる部位の拡大斜視図である。
図10】グロメット本体の大径筒部がグロメットインナ本体部の保護壁で押し下げられている状態を説明するグロメットインナのインナーロックが含まれる部位の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いて本実施形態に係るグロメットについて詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる場合がある。
【0012】
図1は、実施形態に係るグロメット10の斜視図であり、図2は、実施形態に係るグロメット10の断面図である。グロメット10は、一例として、被取付部材としての車体パネル1に予め形成されている貫通孔2の周縁部2aに取り付けられ、貫通孔2を貫通させた電線Wを貫通孔2の周縁部2aから保護するものとする。貫通孔2の開口形状は、本実施形態では、円形である。電線Wは、電線集合体としてのワイヤーハーネスであってもよい。なお、以下の説明では、上方とは、グロメット10が貫通孔2の周縁部2aに取り付けられるときに貫通孔2に向かう方向の側(図2上方向の挿入方向前側)をいい、下方とは、その反対側(図2下方向の挿入方向後側)をいう。
【0013】
また、車体パネル1は、一例として、車体パネル1の一方側(エンジンルーム側)に配置されるパネル1aと、車体パネル1の他方側(車室内側)に配置されるインシュレータ(遮音材)1bとを含むものとする。
【0014】
図3は、グロメットインナ30を含むグロメット10の分解図である。グロメット10は、グロメット本体11と、グロメット本体11の外周部に装着可能なグロメットインナ30とで構成されている。
【0015】
グロメット本体11は、内周側に電線Wを配策させて保持する筒状部材である。グロメット本体11は、ゴム材等の柔軟な弾性材料で形成される。グロメット本体11は、大径筒部12と、第1小径筒部13と、第2小径筒部14と、遮音部15とを含む。なお、グロメット本体11は、少なくとも大径筒部12および第2小径筒部14を含むものであればよい。
【0016】
大径筒部12は、グロメットインナ30を接続可能に構成される。大径筒部12の外径D1は、貫通孔2の開口径D2よりも大きい。大径筒部12は、嵌合溝16と、リップ部17とを含む。
【0017】
嵌合溝16は、大径筒部12の外周側に環状に形成され、グロメットインナ30が大径筒部12に接続されるとき、グロメットインナ30の鍔部33を嵌合させる。また、嵌合溝16の一部には、鍔部33の一部に形成されている凸部33aに係合する凹部18が設けられていてもよい。
【0018】
リップ部17は、環状のシール部であり、車体パネル1に対向する外周縁面12aから車体パネル1側に突出する。リップ部17は、内周リップ部17aと、外周リップ部17bとで構成されてもよい。グロメット10が貫通孔2の周縁部2aに取り付けられたとき、内周リップ部17a及び外周リップ部17bは、外周縁面12aの側に倒れる方向に弾性変形し、車体パネル1の一方の表面にある、貫通孔2の周縁面に密着する。これにより、リップ部17と、リップ部17に対向する車体パネル1の表面との間を通じた、グロメット10の外部から内部への水等の浸入が抑止される。
【0019】
第1小径筒部13は、大径筒部12の車体パネル1に対向する側とは反対側と第1拡径筒部19及び蛇腹筒部20を介して連続し、内周側で電線Wを保持する。この第1小径筒部13は、貫通孔2の開口部分の一方側(エンジンルーム側)に配置されており、所定の長さに亘って電線Wの外周面と接触する内面を有する。第1小径筒部13の内径は、大径筒部12の内径よりも小さく、且つ、電線Wの外径よりも若干小さいか、電線Wの外径とほぼ同一である。これにより、第1小径筒部13の内面と電線Wの外周面との間を通じた、グロメット10の外部から内部への水等の浸入が抑止される。第1小径筒部13は、柔軟な材料で形成されているので、電線Wの姿勢変化に合わせて変形する。また、第1小径筒部13の内周面には、第1小径筒部13の内周面と電線Wとの間の隙間を塞ぐ環状の第1シール部13aが設けられていてもよい。
【0020】
第2小径筒部14は、大径筒部12の車体パネル1に対向する側と第2拡径筒部21を介して連続し、内周側で電線Wを保持する。この第2小径筒部14は、貫通孔2の開口部分の他方側(車室内側)に配置されており、所定の長さに亘って電線Wの外周面と接触する内面を有する。第2小径筒部14の内径は、大径筒部12の内径よりも小さく、且つ、電線Wの外径よりも若干小さいか、電線Wの外径とほぼ同一である。これにより、第2小径筒部14の内面と電線Wの外周面との間を通じた、グロメット10の外部から内部への水等の浸入が抑止される。第2小径筒部14は、柔軟な材料で形成されているので、電線Wの姿勢変化に合わせて変形する。また、第2小径筒部14の内周面には、第2小径筒部14の内周面と電線Wとの間の隙間を塞ぐ環状の第2シール部14aが設けられていてもよい。さらに、第2小径筒部14の先端には、テープ巻き用の舌片部14bが突設されていてもよい。
【0021】
遮音部15は、第2拡径筒部21の外周側に傘状又は鍔状に形成され、グロメット本体11の内周側から外周側へと延在している。つまり、遮音部15は、第2拡径筒部21の外面から延出する傘状又は鍔状に形成されている。グロメット10が貫通孔2の周縁部2aに取り付けられ、且つ、遮音部15が図1及び図2に示すように拡開されたとき、遮音部15の先端部にある外周縁部15aが、車体パネル1の他方の表面にある、貫通孔2の周縁面に密着する。つまり、遮音部15が図1及び図2に示すように拡開された状態における遮音部15の外径は貫通孔2の開口径よりも大きい。これにより、遮音部15と貫通孔2の周縁部2aとの間に、閉じられた遮音空間を形成して、車体パネル1、遮音部15と貫通孔2の周縁部2aとの間の空間を通じて、エンジンルームから車室内に入ってくる音の伝達(音漏れ)を抑制することができる。また、遮音部15は、第2小径筒部14の外面から延出する傘状又は鍔状に形成されていてもよい。
【0022】
図4は、実施形態における傘状の遮音部15を拡開した状態から収縮した状態を示す斜視図であり、図5は、実施形態における傘状の遮音部15を拡開した状態から収縮した状態を示す断面図である。
【0023】
傘状の遮音部15は、本実施形態では、折返部分22を基点として遮音部15の当接側面15bがグロメット本体11の径方向外側を向くように折り返すことができるよう構成されている。当接側面15bは、遮音部15の表裏面のうち、貫通孔2の周縁部2aに当接する内側面である。遮音部15の当接側面15bがグロメット本体11の径方向外側を向くように折り返された状態の遮音部15は、周方向にヒダ23が複数設けられたヒダ形状を呈し、その状態における遮音部15の外径D3が貫通孔2の内径D2よりも小さい(D3<D2)。遮音部15の当接側面15bを折り曲げる位置を外周縁部15aに対して高い位置にするために、折返部分22は、遮音部15の外周縁部15aよりも車体パネル1からグロメット本体11の長さ方向において離れた位置に設けられている。また、折返部分22は、遮音部15の当接側面15bに周方向に沿って形成された折返溝24を含む。つまり、遮音部15の当接側面15bには、遮音部15の当接側面15bの一部を薄肉にして貫通孔2の周縁面のある方向に折り曲げ易くするために折返溝24が設けられている。その一方、遮音部15における第2拡径筒部21との接続部である内周縁部15cは、外周縁部15aに対して低い位置に設けられている。グロメット10が貫通孔2の周縁部2aに取り付けられたとき、遮音部15の基端部にある内周縁部15cの一部が貫通孔2の内方に位置していてもよい。
【0024】
本実施形態では、第2拡径筒部21の外面と遮音部15の非当接側面15dとの間には、グロメット本体11の周方向に沿って環状溝25が形成されている。非当接側面15dは、遮音部15の表裏面のうち、内側面(当接側面15b)とは反対側の面である外側面である。遮音部15が第2小径筒部14の外面から延出するように形成される場合、環状溝25は、第2小径筒部14の外面と遮音部15の非当接側面15dとの間に形成されてもよい。
【0025】
本実施形態に係るグロメット10では、さらに、遮音部15の外周縁部15aに、遮音部15が図1及び図2に示すように拡開されたときに車体パネル1と遮音部15の外周縁部15aとの間の隙間を塞ぐ閉塞部26が設けられている。遮音部15にはヒダ形状が若干残っており、閉塞部26は、車体パネル1と遮音部15の外周縁部15aとの間に生じ得る隙間を塞ぐために、遮音部15の外周縁部15aに対してグロメット本体11の周方向に複数設けられている。また、閉塞部26は、遮音部15におけるヒダ23の山部に設けられていてもよい。本実施形態に係るグロメット10によれば、傘状の遮音部15が拡開されたときに、閉塞部26が車体パネル1と遮音部15の外周縁部15aとの間の隙間を塞ぐことにより、遮音部15の遮音性を向上させることができる。
【0026】
また、本実施形態に係るグロメット10では、遮音部15における外周縁部15a近傍の非当接側面15dに、グロメット本体11の径方向に沿って延びる溝部27が設けられている。溝部27は、閉塞部26が設けられた遮音部15の外周縁部15aに対してグロメット本体11の周方向に間隔をおいて複数設けられている。また、溝部27は、遮音部15におけるヒダ23の山部に設けられていてもよい。本実施形態に係るグロメット10によれば、溝部27が遮音部15の非当接側面15dに設けられていることにより、傘状の遮音部15の柔軟性を高めることができ、車体パネル1とグロメット10との間に生じ得る隙間を最小限にすることが可能になる。
【0027】
また、本実施形態に係るグロメット10では、遮音部15の非当接側面15dに、グロメット本体11の径方向に沿って延びるリブ28が設けられている。リブ28は、遮音部15の非当接側面15dにグロメット本体11の周方向に間隔をおいて複数設けられている。また、リブ28は、遮音部15におけるヒダ23の山部に設けられていてもよい。本実施形態に係るグロメット10によれば、リブ28が遮音部15の非当接側面15dに設けられていることにより、傘状の遮音部15の剛性を高めて、遮音部15を拡開させる作業の際に遮音部15が貫通孔2側に凹むのを抑制することが可能になる。
【0028】
また、本実施形態に係るグロメット10では、折返部分22が、遮音部15の当接側面15bに周方向に沿って形成された第1の折返溝24と、遮音部15の非当接側面15dに周方向に沿って形成された第2の折返溝29とを含む。つまり、遮音部15の当接側面15bには、当接側面15b側から遮音部15の一部を薄肉にして貫通孔2の周縁面のある方向に折り曲げ易くする第1の折返溝24が設けられている。その一方、遮音部15の非当接側面15dには、非当接側面15d側から遮音部15の一部を薄肉にして貫通孔2の周縁面のある方向に折り曲げ易くするために第2の折返溝29が設けられている。本実施形態に係るグロメット10によれば、折返部分22が、遮音部15の当接側面15b側の第1の折返溝24と、遮音部15の非当接側面15d側の第2の折返溝29とを含むことにより、遮音部15を折り返す際の基点を一定にすることが可能になる。
【0029】
なお、図1及び図2に示すように遮音部15が拡開した状態における外周縁部15aの周長は、図4及び図5に示すように遮音部15が収縮した状態における外周縁部15aの周長とほぼ同一であるものとする。
【0030】
図3、6~8に示されるグロメットインナ30は、グロメット本体11の外周部に装着された状態でグロメット本体11を支持し、且つ、貫通孔2の周縁部2aに保持される環状部材である。ここでは、グロメットインナ30は円環状の部材である。グロメットインナ30は、樹脂等、グロメット本体11よりも剛性の高い材料で形成される。また、グロメットインナ30は、グロメットインナ30自身の中心軸を含む仮想平面で二分割された一対の部材、すなわち、第1インナー部材31aと第2インナー部材31bとの組み合わせで構成される。
【0031】
グロメットインナ30は、全体として、複数の壁部で構成される環状の構造体である本体部32と、環状の板体である鍔部33とを有する。
【0032】
図3,6,7に示されるように、本体部32は、例えば、外周壁32aと、上壁32bと、内周壁32cとを含む。外周壁32aは、グロメット10が貫通孔2の周縁部2aに取り付けられるときに、車体パネル1の平面方向に沿って貫通孔2の周縁部2aと対向する壁部である。上壁32bは、外周壁32aの上方の周端と外周端で連続し、内周側に向けて延設される壁部である。内周壁32cは、上壁32bの内周端と連続し、外周壁32aとおおよそ平行である壁部である。
【0033】
また、図3,4,6に示すように、グロメット10では、グロメットインナ30の本体部32における外周壁32aに、複数のリブ36が設けられている。この複数のリブ36は、グロメットインナ30がグロメット本体11に対して傾いた状態で取り付けられることを抑制するために本体部32における外周壁32aに設けられるものである。本実施形態に係るグロメット10では、これら複数のリブ36が、外周壁32a上の周方向に隣り合うロック爪41間の中間位置に設けられている。本実施形態に係るグロメット10によれば、グロメットインナ30が傾き抑制用のリブ36を有することにより、貫通孔2の内周面とリブ36とが当接してロック爪41へ掛かる負荷を低減することが可能になる。
【0034】
図6,7に示されるように、鍔部33は、内周壁32cの下方の周端から内側に向かって放射状に突出する。鍔部33は、前述のとおり、グロメットインナ30がグロメット本体11に接続されるとき、嵌合溝16に嵌合される。また、鍔部33は、嵌合溝16に予め形成されている凹部18の位置に合わせて、嵌合溝16に嵌合したときに凹部18を係合させる凸部33aを有する。凸部33aと凹部18との係合により、大径筒部12の中心軸を基準としたグロメット本体11に対するグロメットインナ30の回転が抑止される。なお、凸部33aは、第1インナー部材31aと第2インナー部材31bとの各々の鍔部33にそれぞれ形成されていてもよい。一方、グロメット本体11の嵌合溝16には、図3に示されるように、それぞれの凸部33aに対応した複数の凹部18が形成されていてもよい。
【0035】
ここで、グロメットインナ30が第1インナー部材31aと第2インナー部材31bとの一対の部材の組み合わせである場合、図3に示されるように、第1インナー部材31aと第2インナー部材31bとは、互いに同一の半環形状であってもよい。また、第1インナー部材31aと第2インナー部材31bとは、互いに組み合わされたときに、互いに周方向で突き合わされる2つの側壁32dを含む。2つの側壁32dのうち、一方の側壁32dには、爪部34が設けられ、他方の側壁32dには、溝部35が設けられている。第1インナー部材31aと第2インナー部材31bとが組み合わせられるとき、第1インナー部材31aの爪部34が第2インナー部材31bの溝部35に嵌合し、第2インナー部材31bの爪部34が第1インナー部材31aの溝部35に嵌合される。
【0036】
なお、第1インナー部材31aと第2インナー部材31bとは、爪部34及び溝部35による接続機構に代えて、例えば半環形状の一端側がヒンジ部を介して予め連結された状態とされ、半環形状の他端側が爪部34及び溝部35でされてもよい。また、ここではグロメットインナ30が2つのインナー部材に分割される場合を例示したが、3つ以上のインナー部材に分割されてもよい。
【0037】
また、グロメットインナ30は、本体部32の一部が貫通孔2に挿入されたときに、本体部32を貫通孔2の周縁部2aに係止する複数のインナーロック40を有する。本実施形態では、図3,6に示されるように、インナーロック40は、グロメットインナ30の全体として、周方向に等間隔で4箇所に設けられている。つまり、第1インナー部材31a及び第2インナー部材31bとしては、インナーロック40は、それぞれのインナー部材に2箇所ずつ設けられている。なお、インナーロック40の設置数は、特に限定されるものではなく、4つ以外であってもよい。
【0038】
複数のインナーロック40の各々は、本体部32の外周壁32aの内側と外側とを結ぶ方向に弾性変形可能なロック爪41を含む。
【0039】
ロック爪41は、本体部32の外周壁32aに沿って設けられ、外周壁32aの内側と外側とを結ぶ方向で弾性変形する。なお、ロック爪41が弾性変形する外周壁32aの内側と外側とを結ぶ方向は、本体部32が本実施形態のように円環状である場合、本体部32の径方向である。
【0040】
ロック爪41は、貫通孔2の周縁部2aと係合する係止段部41aと、本体部32の径方向における外側面がロック爪41の挿入方向前側の端部から挿入方向後側の係止段部41aに向かうに従って径方向外側に位置するように傾斜した傾斜部41bを備える。なお、傾斜部41bの挿入方向前側の端部は、傾斜部41bにおける本体部32の上壁32b側の端部である。ロック爪41は、さらに、本体部32の径方向における外側面が係止段部41aから挿入方向の後端41dに向かうに従って径方向内側に位置するように傾斜したロック爪端部41cを備える。
【0041】
ここで、係止段部41aが貫通孔2の周縁部2aに係合する状態とは、インナーロック40が本体部32を貫通孔2の周縁部2aに係止させたときの、貫通孔2に対するインナーロック40の状態をいう。なお、インナーロック40が本体部32を貫通孔2の周縁部2aに係止させたときとは、グロメット10が貫通孔2の周縁部2aに取り付けられたときである。ロック爪41は、傾斜部41bの挿入方向後側端部と係止段部41aとで形成された外周壁32aの周方向に沿った稜線を頂点部として外方に突出し、常時、外周壁32aの外周よりも外側にある。つまり、ロック爪41の弾性変形は、傾斜部41bが貫通孔2の周縁部2aと接触していることに伴う、ロック爪41の変位により生じる。そして、係止段部41aが貫通孔2の周縁部2aに係合している状態では、係止段部41aから挿入方向後側に延びるロック爪端部41cが貫通孔2の周縁部2aに入り込むことで、本体部32は、貫通孔2の周縁部2aに対して一定の姿勢に維持される。
【0042】
なお、グロメットインナ30では、インナーロック40が周方向に4箇所に設けられている。そのため、計4つのロック爪41に含まれる各々の係止段部41a、傾斜部41b、及びロック爪端部41cは、本体部32の中心軸を基準とした放射方向に沿って突出することになる。
【0043】
本体部32の外周壁32aには、これら複数のインナーロック40の各々に対して本体部32の周方向に隣接する保護壁38が設けられる。図8に示すように、保護壁38の挿入方向の後端38aは、ロック爪端部41cの後端41dよりも挿入方向後側に位置する。
【0044】
この保護壁38は、本体部32の外周壁32aから本体部32の径方向に突出していてもよい。このように保護壁38を構成、する場合、保護壁38の径方向の最外端を、ロック爪41の傾斜部41bの径方向の外側面よりも径方向内側に位置するように構成してもよい。
【0045】
また、図6に示すように、ロック爪端部41cの後端41dの径方向の位置は、本体部32の外周壁32aの最外径ODに対して径方向の内側に位置してもよい。
【0046】
ここで、ロック爪端部後端41dの径方向の位置とは、グロメット10を車体パネル1に取付ける前の外力が付与されていない自然状態の本体部32における、ロック爪端部後端41dの径方向の位置である。
【0047】
なお、ここでの本体部32の外周壁32aの最外径ODとは、インナーロック40が形成された部位を除く位置での、環状の本体部32の外周壁32aの最外径である。なお、外周壁32aの最外径は、車体パネル1の貫通孔2に取り付けられたグロメット10における本体部32の外周で、貫通孔2の周縁部2aに径方向で接触或いは最近接する本体部32の部位での最外径であってよい。
【0048】
本実施形態では、グロメットインナ30の本体部32の外周壁32aに複数のリブ36が設けられている。このため、本体部32の最外径ODは、図6に示すように、自然状態の本体部32における外周壁32a上でリブ36が径方向に最も突出した位置での外径で規定される。図6に示すように、グロメットインナ30では、ロック爪端部41cの後端41dの位置が、本体部32のリブ36を含む外周壁32aの最外径ODの内側に位置してもよい。なお、本体部32の外周壁32a上に本実施形態のようなリブ36等の径方向の突出部が形成されない場合、単純に外周壁32aの外径が本体部32の最外径を前記本体部の前記外周壁の最外径と規定してもよい。
【0049】
グロメット本体11の大径筒部12及びグロメットインナ30の本体部32Aにはそれぞれ、グロメットインナ30がグロメット本体11に誤った向きで取り付けられることを抑制するために位置合わせ突起18a,37が設けられている。本実施形態に係るグロメット10では、グロメットインナ30側の位置合わせ突起37は、半円形状に形成されて、凸部33aの先端上面に設けられている。その一方、グロメット本体11側の位置合わせ突起18aは、半円形状に形成されて、グロメット本体11の大径筒部12において凹部18近傍に設けられている。
【0050】
本実施形態に係るグロメット10では、グロメット本体11及びグロメットインナ30がそれぞれ誤組み付け抑制のための位置合わせ突起18a,37を有する。このようにすることにより、グロメット本体11の長さ方向(上下方向)に対する向きを誤った状態のグロメットインナ30をグロメット本体11に取り付けることを抑制することが可能になる。また、目視等によりグロメットインナ30側の位置合わせ突起37がグロメット本体11側の位置合わせ突起18aに突き当てられたことを確認することにより、グロメットインナ30の誤組み付けを抑制することができる。
【0051】
次に、グロメット10の作用について説明する。
【0052】
まず、グロメット10の組み立てについて、作業者は、内周側に電線Wを配策させているグロメット本体11を準備し、グロメットインナ30をグロメット本体11の大径筒部12に装着する。ここで、グロメットインナ30は、第1インナー部材31aと第2インナー部材31bとに予め分割されている。そのため、車体パネル1にある貫通孔2に電線Wがすでに貫通されている場合、グロメット本体11の大径筒部12を両側から挟むようにインナー部材同士を組み合わせることで、グロメットインナ30をグロメット本体11の大径筒部12に容易に装着できる。このような作業により、電線Wにグロメット10が装着される。
【0053】
次に、グロメット10の貫通孔2の周縁部2aへの取り付けについて、作業者は、未だ電線Wが貫通孔2に貫通されていない場合には、グロメット本体11の第2小径筒部14側から露出している電線Wを貫通孔2に貫通させる。次に、作業者は、グロメットインナ30の本体部32を貫通孔2に挿入させながら、グロメット10全体を貫通孔2の側に押し付ける。このとき、インナーロック40の各々のロック爪41は、傾斜部41bが貫通孔2の周縁部2aに接触しながら変位することで弾性変形するため、本体部32の貫通孔2への挿入が許容される。本体部32は、挿入完了位置まで挿入されると、各々のロック爪41が弾性復帰することで係止段部41aが貫通孔2の周縁部2aに係合し、グロメットインナ30の本体部32が貫通孔2の周縁部2aに係止される。このとき、大径筒部12は、車体パネル1の一方側から貫通孔2の周縁部2aに接触可能に配置される。このようにグロメットインナ30が係止状態にあるとき、グロメット本体11のリップ部17は、車体パネル1の表面上にある、貫通孔2の周縁面に密着する。つまり、車体パネル1は、グロメットインナ30側の係止段部41aとグロメット本体11側のリップ部17とによって挟持される。結果として、グロメット10は、貫通孔2を閉塞するように、貫通孔2の周縁部2aに取り付けられる。
【0054】
更に、グロメット10の取り付けに際して、傘状の遮音部15は、折返部分22を基点として遮音部15の当接側面15bがグロメット本体11の径方向外側を向くように折り返した状態(図4及び図5参照)とされる。遮音部15の当接側面15bがグロメット本体11の径方向外側を向くように折り返された状態の遮音部15は、周方向にヒダ23が複数設けられたヒダ形状を呈し、その状態における遮音部15の外径D1が貫通孔2の内径D2よりも小さい。このため、図4及び図5に示すように遮音部15が収縮した状態でグロメット10を貫通孔2に挿入することにより、遮音部15が貫通孔2の周縁部2aと干渉することが抑制されるため、グロメット10を貫通孔2に容易に挿入することができる。そして、前述のようにグロメット10を貫通孔2の周縁部2aに取り付けた後に、遮音部15を車体パネル1の方向に折り曲げることにより拡開させ、遮音部15の外周縁部15aを車体パネル1の表面にある貫通孔2の周縁面に密着させる。
【0055】
次に、グロメットインナ30を備えたグロメット10の効果について説明する。
【0056】
本実施形態の第一の態様に係るグロメット10は、被取付部材(車体パネル1)にある貫通孔2を貫通する電線Wを内周側で保持するグロメット本体11と、グロメット本体11の外周部に装着されるグロメットインナ30と、を備える。グロメット10は、挿入方向は、車体パネル1の一方側から他方側である。
【0057】
グロメット本体11は、弾性材料で形成された筒状部材である。グロメット本体11は、被取付部材1の貫通孔2に取り付けられた状態で被取付部材1の一方側から貫通孔2の周縁部2aに当接する大径筒部12と、被取付部材1の貫通孔に取り付けられた状態で被取付部材1の他方側に配置される小径筒部14と、を備える。なお、大径筒部12は、貫通孔2の開口径D2よりも大きい外径D1を有する。また、小径筒部14は、大径筒部12よりも小径である。
【0058】
グロメットインナ30は、グロメット本体11よりも剛性の高い材料で形成されている。グロメットインナ30は、大径筒部12に装着される本体部32と、それぞれが本体部32の外周壁32aに沿って設けられて被取付部材1の貫通孔2に取り付けられた状態で本体部32を貫通孔2の周縁部2aに係止する複数のインナーロック40と、を備える。
【0059】
なお、本体部32は、グロメットインナ30の中心軸を含む仮想平面で二分割された一対の部材を組み合わせて構成される環状の構造体である。グロメットインナ30は、さらに、外周壁32aに、複数のインナーロック40の各々に本体部32の周方向に隣接して設けられた保護壁38を備える。複数のインナーロック40の各々は、本体部32の径方向に弾性変形可能なロック爪41を有する。
【0060】
各ロック爪41は、係止段部41a、傾斜部41b、及びロック爪端部41cを備える。係止段部41aは、当該ロック爪41の挿入方向後側に設けられ、貫通孔2の周縁部2aに係止可能に構成されている。傾斜部41bは、本体部32の径方向における外側面がロック爪41の挿入方向前側の端部から係止段部41aに向かうに従って径方向外側に位置するように傾斜している。ロック爪端部41cは、本体部32の径方向における外側面が、係止段部41aから挿入方向の後端41dに向かうに従って径方向内側に位置するように傾斜している。保護壁38の挿入方向の後端38aは、ロック爪端部41cの後端41dよりも挿入方向後側に位置する。
【0061】
従来のグロメットでは、一対の部材を組み合わせてなるグロメットインナをグロメット本体に装着する際、グロメット本体のフランジ縁部にグロメットインナのロック爪先端が干渉してグロメットインナのグロメット本体への取付作業性が低下する恐れがあった。また、グロメットインナをグロメット本体に装着する際にロック爪がグロメット本体のフランジ縁部(例えばリップ部)に干渉すると、ロック爪にロック爪端部をグロメットインナの外周面外側方向へ向ける過度な力が加わる恐れがあった。
【0062】
これに対して、実施形態に係るグロメットインナ30又はグロメット10によれば、グロメットインナ本体部32の外周壁32aに、複数のインナーロック40の各々に本体部32の周方向に隣接するように保護壁38が設けられている。このため、図9、10に示されるように、グロメットインナ30をグロメット本体11に装着する際、グロメット本体11の大径筒部12のリップ部17がグロメットインナ本体部32の保護壁38で押し下げられた状態になる。さらに、実施形態では、各保護壁38の挿入方向の後端38aがロック爪端部41cの後端41dよりも挿入方向後側に位置している。この構成によれば、グロメットインナ30のグロメット本体11への取付作業において、ロック爪端部41cの後端41dが組み付け作業中にグロメット本体11のリップ部17上の通過を開始する際、リップ部17が押し下げられた状態に維持されている。このため、グロメット本体11にグロメットインナ30を装着する際に、ロック爪41とグロメット本体11とが干渉してロック爪41に過度な力が加わることを防止し得る。
【0063】
本実施形態の第二の態様に係るグロメット10において、グロメットインナ30の本体部32の保護壁38の径方向の最外端は、ロック爪41の傾斜部41bの径方向の外側面よりも径方向内側に位置してもよい。
【0064】
この構成を備える場合、グロメット10を車体パネル1の貫通孔2に挿入する過程で、保護壁38が、貫通孔2の周縁部2aとロック爪41の傾斜部41bとの接触を妨げることがない。そのため、グロメット10の車体パネル1の貫通孔2への取付作業性が低下することがない。
【0065】
また、本実施形態の第三の態様に係るグロメット10は、第一の態様又は第二の態様に係るグロメット10のグロメットインナ30を備え、車体パネル1にある貫通孔2を貫通する電線Wを内周側で保持するグロメット本体11を備える。グロメット本体11は、貫通孔2の周縁部2aに係止される大径筒部12と、貫通孔2の開口部分の一方側に配置される第1小径筒部13と、貫通孔2の開口部分の他方側に配置される第2小径筒部14と、を有する。グロメット本体11は、グロメット本体11の内周側から外周側へと延在し、貫通孔2の開口部分を他方側から覆う傘状の遮音部15を有する。遮音部15は、折返部分22を基点として遮音部15の内側面(当接側面15b)がグロメット本体11の径方向外側を向くように折り返すことができるよう構成される。遮音部15の内側面(当接側面15b)がグロメット本体11の径方向外側を向くように折り返された状態の遮音部15は、周方向にヒダ23が複数設けられたヒダ形状を呈し、その状態における遮音部15の外径D3が貫通孔2の内径D2よりも小さい。
【0066】
遮音部15は、第2拡径筒部21の外面から延出する傘状又は鍔状に形成され、遮音部15が図1及び図2に示すように拡開された状態における遮音部15の外径は貫通孔2の内径D2よりも大きい。その一方、遮音部15の当接側面15bがグロメット本体11の径方向外側を向くように折り返された状態の遮音部15は、周方向にヒダ23が複数設けられたヒダ形状を呈し、その状態における遮音部15の外径D3が貫通孔2の内径D2よりも小さい。そのため、図4及び図5に示すように遮音部15が収縮した状態でグロメット10を貫通孔2に挿入することにより、遮音部15が貫通孔2の周縁部2aと干渉することが抑制されるため、グロメット10を貫通孔2に容易に挿入することができる。
【0067】
以上のように、本実施形態によれば、貫通孔2の周縁部2aに取り付けられる際の作業時に車体パネル1と干渉することを抑制でき、貫通孔2の周縁部2aに取り付けられる際の作業性を向上させるのに有利なグロメット10を提供することができる。
【0068】
また、本実施形態の第四の態様に係るグロメット10において、ロック爪端部41cの後端41dの前記径方向の位置を、本体部32の外周壁32aの最外径ODに対して前記径方向の内側に位置させてもよい。この構成を備えるグロメット10であれば、グロメット本体11が弾性変形してグロメット10が挿入方向に過度に押し込まれた場合でも、ロック爪端部41cが貫通孔2の周縁部2aに乗り上げることを効果的に抑制し得る。従って、グロメットに引抜方向の力が加わった場合でも、ロック爪41を、ロック爪端部41cをグロメットインナ30の外周面外側方向へ向ける過度な力から効果的に保護し得る。
【0069】
本実施形態の第五の態様に係るグロメット10において、折返部分22は、遮音部15の外周縁部15aよりも被取付部材(車体パネル1)からグロメット本体11の長さ方向において離れた位置に設けられる。
【0070】
遮音部15の当接側面15bを折り曲げる位置を外周縁部15aに対して高い位置にすることにより、遮音部15が図1及び図2に示すように拡開した状態から、遮音部15が図4及び図5に示すように収縮した状態に戻り難くすることができる。また、遮音部15が拡開した状態において、遮音部15の外周縁部15aが車体パネル1を押える力を発生させることができ、遮音部15の外周縁部15aを貫通孔2の周縁面に密着させることができる。
【0071】
本実施形態の第六の態様に係るグロメット10において、第2小径筒部14と大径筒部12との間には拡径筒部(第2拡径筒部21)が設けられ、遮音部15は、第2小径筒部14又は拡径筒部(第2拡径筒部21)の外面から延出するように形成される。第2小径筒部14又は拡径筒部(第2拡径筒部21)の外面と遮音部15の外周面(非当接側面15d)との間には、グロメット本体11の周方向に沿って延びる環状溝25が形成される。
【0072】
第2小径筒部14又は第2拡径筒部21の外面と遮音部15の非当接側面15dとの間に環状溝25を設ける。これにより、遮音部15を収縮した状態から拡開した状態へと裏返しにする際に遮音部15の基端部の楕円形状に変化しようとする部分を環状溝25で逃がすことができ、遮音部15を裏返しにする際の力を低減することができる。また、電線Wにグロメット10が装着された状態で内方の電線Wを捌いても、電線Wの動きが遮音部15の全体に伝わり難く、遮音部15が拡開した状態から収縮した状態に戻り難くすることができる。
【0073】
本実施形態の変更例として、グロメット10は、電線Wの代わりにワイヤーハーネスをグロメット本体11の内周側で保持する構成にしてもよい。
【0074】
この変更例に係るグロメット10を備えたワイヤーハーネスを用いれば、グロメットに引抜方向の力が加わった場合でも、ロック爪41を、ロック爪端部41cをグロメットインナ30の外周面外側方向へ向ける過度な力から保護し得る。
【0075】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0076】
1 車体パネル
2 貫通孔
2a 貫通孔の周縁部
10 グロメット
11 グロメット本体
12 大径筒部
13 第1小径筒部
14 第2小径筒部
15 遮音部
15a 外周縁部
15b 当接側面
15d 非当接側面
21 第2拡径筒部
22 折返部分
23 ヒダ
25 環状溝
26 閉塞部
27 溝部
28 リブ
30 グロメットインナ
31a 第1インナー部材
31b 第2インナー部材
32 本体部
32a 外周壁
36 リブ
38 保護壁
40 インナーロック
41 ロック爪
41a 係止段部
41b 傾斜部
41c ロック爪端部
41d 後端
D1 外径
D2 内径
OD グロメットインナ本体部の外周面の最外径
W 電線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10