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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147243
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】枕木固定構造及び枕木固定方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 19/12 20060101AFI20241008BHJP
   C21D 9/00 20060101ALI20241008BHJP
   E01B 1/00 20060101ALI20241008BHJP
   F16B 35/04 20060101ALI20241008BHJP
   F16B 41/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
E01D19/12
C21D9/00 B
E01B1/00
F16B35/04 K
F16B35/04 N
F16B41/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060137
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】390007238
【氏名又は名称】コンドーテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003823
【氏名又は名称】弁理士法人柳野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仙田 薫
(72)【発明者】
【氏名】涌波 喜幸
【テーマコード(参考)】
2D056
2D059
4K042
【Fターム(参考)】
2D056AA00
2D059GG55
2D059GG63
4K042AA25
4K042BA01
4K042BA03
4K042BA05
4K042CA09
4K042CA15
4K042DA01
4K042DA02
4K042DC02
4K042DC03
(57)【要約】
【課題】締付トルクに対するフックボルトの伸び特性を向上させることによりフックボルトに塑性変形を生じ難くして、ナットの締付が緩むことを抑制できる、枕木固定構造及び枕木固定方法を提供する。
【解決手段】枕木固定構造10は、枕木2を鋼材に対してフックボルト11及びナット21を介して固定するものであって、フックボルト11は、焼入れ及び焼戻しによる熱処理が施されたばね鋼で形成されるとともに、上端部に形成された螺子部12と、下端部に形成されたフック部14と、螺子部12とフック部14とを繋ぐ軸部13と、を備え、枕木2には、上下方向に貫通する貫通孔として角穴3が形成され、軸部13を角穴3に挿通して螺子部12を上方に延出させ、フック部14を鋼材に係合させ、角穴3に対して軸部13を回り止めした状態でナット21を螺子部12に螺合することにより、枕木2を鋼材に固定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
枕木を鋼材に対してフックボルト及びナットを介して固定する枕木固定構造であって、
前記フックボルトは、焼入れ及び焼戻しによる熱処理が施されたばね鋼で形成されるとともに、上端部に形成された螺子部と、下端部に形成されたフック部と、前記螺子部と前記フック部とを繋ぐ軸部と、を備え、
前記枕木には、上下方向に貫通する貫通孔が形成され、
前記軸部を前記貫通孔に挿通して前記螺子部を上方に延出させ、前記フック部を前記鋼材に係合させ、前記貫通孔に対して前記軸部を回り止めした状態で前記ナットを前記螺子部に螺合することにより、前記枕木を前記鋼材に固定する、枕木固定構造。
【請求項2】
前記軸部の断面形状が角型に形成され、
前記貫通孔は、前記軸部が回転不能に角形状に形成され、
前記軸部が前記貫通孔に挿通されることにより、前記軸部が前記貫通孔に対して回り止めされる、請求項1に記載の枕木固定構造。
【請求項3】
前記ナットの下側において、前記螺子部にスプリングワッシャと座金とが上下に外嵌装着される、請求項2に記載の枕木固定構造。
【請求項4】
前記螺子部の側面には、その軸方向の略全長にわたって形成した回り止め用の係合面が形成され、
前記螺子部が挿通されるとともに前記枕木と前記ナットとの間に介挿される回り止め金具を備え、
前記回り止め金具は、前記枕木の上面に幅方向に配置される中間部と、前記枕木の側面に沿って下方へ延びる一対のアーム部と、前記中間部の略中央部に形成した挿通穴と、前記挿通穴の口縁に形成した係止部とを有し、前記挿通穴に前記フックボルトの前記螺子部が挿通された状態で前記枕木に組付けられ、
前記係止部が前記フックボルトの前記係合面に係合するとともに、前記アーム部が前記枕木に係合することにより、前記軸部が前記貫通孔に対して回り止めされる、請求項1に記載の枕木固定構造。
【請求項5】
前記ナットの下側において、前記螺子部にスプリングワッシャと座板とが上下に外嵌装着される、請求項4に記載の枕木固定構造。
【請求項6】
枕木を鋼材に対してフックボルト及びナットを介して固定する枕木固定方法であって、
前記フックボルトは、焼入れ及び焼戻しによる熱処理が施されたばね鋼で形成されるとともに、上端部に形成された螺子部と、下端部に形成されたフック部と、前記螺子部と前記フック部とを繋ぐ軸部と、を備え、
前記フックボルトの焼入れ温度が860度より大きく890度以下に設定され、
前記フックボルトの焼戻し温度が450度以上で460度より小さく設定され、
前記フックボルトの焼戻し時間が前記フックボルトの焼入れ時間の二倍の長さに設定され、
前記枕木には、上下方向に貫通する貫通孔が形成され、
前記軸部を前記貫通孔に挿通して前記螺子部を上方に延出させ、前記フック部を前記鋼材に係合させ、前記貫通孔に対して前記軸部を回り止めした状態で前記ナットを前記螺子部に螺合することにより、前記枕木を前記鋼材に固定する、枕木固定方法。
【請求項7】
枕木を鋼材に対してフックボルト及びナットを介して固定する枕木固定方法であって、
前記フックボルトは、焼入れ及び焼戻しによる熱処理が施されたばね鋼で形成されるとともに、上端部に形成された螺子部と、下端部に形成されたフック部と、前記螺子部と前記フック部とを繋ぐ軸部と、を備え、
前記フックボルトの焼入れ温度が865度に設定され、
前記フックボルトの焼戻し温度が455度に設定され、
前記フックボルトの焼戻し時間が前記フックボルトの焼入れ時間の二倍の長さに設定され、
前記枕木には、上下方向に貫通する貫通孔が形成され、
前記軸部を前記貫通孔に挿通して前記螺子部を上方に延出させ、前記フック部を前記鋼材に係合させ、前記貫通孔に対して前記軸部を回り止めした状態で前記ナットを前記螺子部に螺合することにより、前記枕木を前記鋼材に固定する、枕木固定方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、フックボルトを用いて枕木を鋼材に固定するための枕木固定構造、及び、枕木固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フックボルトを用いて枕木を鋼材に固定する技術が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-49620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のような枕木固定構造においては、ナットの締付トルクによってフックボルトに塑性変形が生じ、ナットの締付が緩む可能性があった。そこで、本開示は、上記に関する課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る枕木固定構造は、枕木を鋼材に対してフックボルト及びナットを介して固定する枕木固定構造であって、前記フックボルトは、焼入れ及び焼戻しによる熱処理が施されたばね鋼で形成されるとともに、上端部に形成された螺子部と、下端部に形成されたフック部と、前記螺子部と前記フック部とを繋ぐ軸部と、を備え、前記枕木には、上下方向に貫通する貫通孔が形成され、前記軸部を前記貫通孔に挿通して前記螺子部を上方に延出させ、前記フック部を前記鋼材に係合させ、前記貫通孔に対して前記軸部を回り止めした状態で前記ナットを前記螺子部に螺合することにより、前記枕木を前記鋼材に固定する。
【0006】
また、前記軸部の断面形状が角型に形成され、前記貫通孔は、前記軸部が回転不能に角形状に形成され、前記軸部が前記貫通孔に挿通されることにより、前記軸部が前記貫通孔に対して回り止めされることが好ましい。
【0007】
また、前記ナットの下側において、前記螺子部にスプリングワッシャと座金とが上下に外嵌装着されることが好ましい。
【0008】
また、前記螺子部の側面には、その軸方向の略全長にわたって形成した回り止め用の係合面が形成され、前記螺子部が挿通されるとともに前記枕木と前記ナットとの間に介挿される回り止め金具を備え、前記回り止め金具は、前記枕木の上面に幅方向に配置される中間部と、前記枕木の側面に沿って下方へ延びる一対のアーム部と、前記中間部の略中央部に形成した挿通穴と、前記挿通穴の口縁に形成した係止部とを有し、前記挿通穴に前記フックボルトの前記螺子部が挿通された状態で前記枕木に組付けられ、前記係止部が前記フックボルトの前記係合面に係合するとともに、前記アーム部が前記枕木に係合することにより、前記軸部が前記貫通孔に対して回り止めされることが好ましい。
【0009】
また、前記ナットの下側において、前記螺子部にスプリングワッシャと座板とが上下に外嵌装着されることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る枕木固定方法は、枕木を鋼材に対してフックボルト及びナットを介して固定する枕木固定方法であって、前記フックボルトは、焼入れ及び焼戻しによる熱処理が施されたばね鋼で形成されるとともに、上端部に形成された螺子部と、下端部に形成されたフック部と、前記螺子部と前記フック部とを繋ぐ軸部と、を備え、前記フックボルトの焼入れ温度が860度より大きく890度以下に設定され、前記フックボルトの焼戻し温度が450度以上で460度より小さく設定され、前記フックボルトの焼戻し時間が前記フックボルトの焼入れ時間の二倍の長さに設定され、前記枕木には、上下方向に貫通する貫通孔が形成され、前記軸部を前記貫通孔に挿通して前記螺子部を上方に延出させ、前記フック部を前記鋼材に係合させ、前記貫通孔に対して前記軸部を回り止めした状態で前記ナットを前記螺子部に螺合することにより、前記枕木を前記鋼材に固定する。
【0011】
また、本発明に係る枕木固定方法は、枕木を鋼材に対してフックボルト及びナットを介して固定する枕木固定方法であって、前記フックボルトは、焼入れ及び焼戻しによる熱処理が施されたばね鋼で形成されるとともに、上端部に形成された螺子部と、下端部に形成されたフック部と、前記螺子部と前記フック部とを繋ぐ軸部と、を備え、前記フックボルトの焼入れ温度が865度に設定され、前記フックボルトの焼戻し温度が455度に設定され、前記フックボルトの焼戻し時間が前記フックボルトの焼入れ時間の二倍の長さに設定され、前記枕木には、上下方向に貫通する貫通孔が形成され、前記軸部を前記貫通孔に挿通して前記螺子部を上方に延出させ、前記フック部を前記鋼材に係合させ、前記貫通孔に対して前記軸部を回り止めした状態で前記ナットを前記螺子部に螺合することにより、前記枕木を前記鋼材に固定する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、締付トルクに対するフックボルトの伸び特性を向上させることによりフックボルトに塑性変形を生じ難くして、ナットの締付が緩むことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第一実施形態に係る枕木固定構造の分解斜視図である。
図2】(a)は図1中のA-A線断面図、(b)は図2(a)中のB-B線断面図である。
図3】第二実施形態に係る枕木固定構造の分解斜視図である。
図4】(a)は図3中のC-C線断面図、(b)は図4(a)中のD-D線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の第一実施形態に係る枕木固定構造10について、図1及び図2を参照しながら説明する。なお、本明細書においては、枕木固定構造が鋼材であるH形鋼1に固定する枕木2の長さ方向を左右方向と定義し、H形鋼1の長さ方向を前後方向と定義して説明する。
【0015】
一般的に、橋梁には左右1対のH形鋼1が間隔をあけて略並行に設けられる。また、枕木2は左右のH形鋼1にわたってその上側に架け渡して設けられる。そして、枕木2は左右1対の枕木固定構造によりH形鋼1に固定されている。レール5は、図示外の固定手段により左右に間隔をあけて枕木2上に固定されている。本明細書において、左右それぞれの枕木固定構造は対称形状に構成・配置されているため、以下では右側の枕木固定構造についてのみ説明する。
【0016】
枕木固定構造10は、図1及び図2に示すように、枕木2を上下方向に貫通する貫通孔である角穴3にフックボルト11を組付けて、橋梁のH形鋼1に対して枕木2を固定するものである。フックボルト11は、フックボルト11の上端部を構成する螺子部12と、螺子部12の下側に形成される角形断面の軸部13と、軸部13の下端部に形成したフック部14と、を備える。換言すれば、軸部13は螺子部12とフック部14とを繋ぐ部分である。なお、本実施例において角形断面とは、略平行な2面を少なくとも1組有するものを指すものとする。
【0017】
フック部14は、H形鋼1の上側のフランジ部4に下側から当接可能なものであれば任意の形状やサイズに設定可能である。フック部14は、図2(a)に示すように正面視で略半円弧状に形成してもよいし、軸部13の下端部から斜め上方へ略ストレート状に延びた形状に形成することも可能である。本実施形態におけるフックボルト11において、螺子部12は締め付けトルクを十分に確保するため転造により形成したが、切削により形成することも可能である。
【0018】
フックボルト11は図2(a)に示す如く、螺子部12と軸部13とを枕木2の角穴3に下方より挿入し、フック部14を橋梁のH形鋼1のフランジ部4に係合させた状態で枕木2に組付けられる。フックボルト11の軸部13の長さは、フック部14をフランジ部4の下面に圧接係止させた状態で、螺子部12の途中部が枕木2の上面高さに位置する長さに設定されている。
【0019】
本実施形態に係る枕木固定構造10においては図2(b)に示す如く、軸部13の断面形状が角型に形成され、角穴3は軸部13が回転不能に角形状に形成されている。そして、軸部13が角穴3に挿通されることにより、軸部13が角穴3に対して回り止めされる。このように、本実施形態においては角穴3に断面形状が角型の軸部13を挿通することにより、フックボルト11が枕木2に対して水平方向(上下方向の軸心回りに)に回転変位することを防止している。
【0020】
本実施形態に係る枕木固定構造10においては、フックボルト11の素材として、JIS規格であるJIS G 4801:2005で規定されるばね鋼鋼材(SUP6、SUP7、SUP9等)が採用される。また、フックボルト11は、焼入れ及び焼戻しによる熱処理が施されたばね鋼で形成される。フックボルト11の中心硬さは、50%マルテンサイト以上を確保するために、JIS法の焼入れ性試験(ジョミニー式一端焼入方法による測定試験)において焼入れ端からの距離12mmで硬さHRC50以上としている。
【0021】
本実施形態に係る枕木固定構造10を製造する際には、フックボルト11の焼入れ温度が860度より大きく890度以下に設定され、フックボルト11の焼戻し温度が450度以上で460度より小さく設定される。また、フックボルト11の焼戻し時間がフックボルト11の焼入れ時間の二倍の長さに設定される。本実施形態において、フックボルト11の焼入れ時間は60分、焼戻し時間は120分に設定している。
【0022】
なお、フックボルト11の焼入れ温度は、865度に設定されることがより好ましく、また、フックボルト11の焼戻し温度は、455度に設定されることがより好ましい。また、フックボルト11の焼入れ時の加熱に伴うオーステナイト結晶粒の粗大化を防止するためにニオブを添加することも可能である。
【0023】
本実施形態に係る枕木固定構造10は、ナット21、スプリングワッシャ22、丸座金23、及び、ピン部材24を備える。ナット21は枕木2を橋梁に固定するためにフックボルト11の螺子部12に螺合される。スプリングワッシャ22及び丸座金23は、ナット21の下側において螺子部12に上下に外嵌装着される。ピン部材24はナット21の脱落を防止するためにフックボルト11の上端部に取り付けられる。
【0024】
ナット21としては、緩み防止機能を有するロックナットなどの周知の構成のものを採用できる。スプリングワッシャ22は周知の構成のもので、列車通過時等の振動によりナット21が緩むことを防止するためのものである。上記の如く、枕木2とナット21との間において螺子部12にスプリングワッシャ22と丸座金23とを上下に外嵌装着することにより、振動でナット21が緩むことを効果的に防止できる。
【0025】
図1及び図2(a)に示すように、ピン部材24は金属線材を曲げ加工して形成されたものであり、フックボルト11の螺子部12の上端近傍部に形成した取付穴25に取付けられる。ピン部材24の一端部には、金属線材の途中部を環状に曲げ加工された操作部26が形成される。操作部26は取付穴25へのピン部材24の取付時に把持される部分である。
【0026】
ピン部材24の他端側部分には操作部26から略同方向へ延びる2本のピン本体27・27が形成されている。一方のピン本体27には、取付穴25に挿通されるストレート状の挿入部28が形成される。他方のピン本体27には、螺子部12の外周に沿って配置される湾曲状の保持部29と、保持部29の端部から保持部29の略突出側へ延びる略U字状の案内部30と、案内部30の端部から挿入部28を挟んで反対側へ延びる脱落規制部31とが形成されている。
【0027】
このピン部材24においては、挿入部28を取付穴25に挿入し、保持部29を素材の弾性で螺子部12の外周面に圧接させることにより、螺子部12からの脱落が防止される。また、脱落規制部31が螺子部12の外周面に係合してピン部材24の抜け方向への移動が規制されるので、列車通過時等における振動でピン部材24が螺子部12から脱落することが確実に防止される。なお、ピン部材24を抜き取る際には、挿入部28を中心としてピン部材24を捩りながら抜き取ることになる。
【0028】
このような枕木固定構造10により枕木2を固定する際には、まず、フックボルト11の螺子部12及び軸部13を下側から枕木2の角穴3に挿通し、螺子部12を枕木2の上方に延出させる。そして、フックボルト11のフック部14をH形鋼1のフランジ部4の下側に係合させた状態で、丸座金23とスプリングワッシャ22とを螺子部12に順番に装着する。さらに、ナット21を螺子部12に螺合してからピン部材24を螺子部12に取付けて組み立てるのである。
【0029】
次に、本発明の第二実施形態に係る枕木固定構造110について、図3及び図4を参照しながら説明する。枕木固定構造110は、図3及び図4に示すように、枕木102を上下方向に貫通する貫通孔である丸穴103にフックボルト111を組付けて、橋梁のH形鋼1に対して枕木102を固定するものである。フックボルト111は、フックボルト111の上部を構成する螺子部112と、螺子部112の下側に形成される軸部113と、軸部113の下端部に形成したフック部114と、を備える。図3及び図4(b)に示す如く、螺子部112の側面には、その軸方向の略全長にわたって回り止め用の係合面115が形成されている。
【0030】
フックボルト111は図4(a)に示す如く、螺子部112と軸部113とを枕木102の丸穴103に下方より挿入し、フック部114を橋梁のH形鋼1のフランジ部4に係合させた状態で枕木102に組付けられる。フックボルト111の軸部113の長さは、フック部114をフランジ部4の下面に圧接係止させた状態で、螺子部112の途中部が枕木102の上面高さに位置する長さに設定されている。
【0031】
本実施形態に係る枕木固定構造110においてフックボルト111は、前記第一実施形態に係る枕木固定構造10のフックボルト11と同じ素材が使用される。即ち、フックボルト111は、フックボルト11と同じ条件で焼入れ及び焼戻しによる熱処理が施されたばね鋼で形成される。
【0032】
本実施形態に係る枕木固定構造110は、回り止め金具120、ナット121、スプリングワッシャ122、座板123、及び、ピン部材124を備える。図3及び図4(a)に示す如く、座板123は端部が下方に屈曲して回り止め金具120と係合することにより、回り止め金具123に対して相対回転しないように構成されている。ナット121、スプリングワッシャ122、及び、ピン部材124は、前記第一実施形態に係るナット21、スプリングワッシャ22、及び、ピン部材24と同じ構成である。
【0033】
図3及び図4(a)に示すように、ピン部材124は金属線材を曲げ加工して形成されたものであり、フックボルト111の螺子部112の上端近傍部に形成した取付穴125に取付けられる。ピン部材124は、前記第一実施形態に係るピン部材24と同様に、操作部126、ピン本体127・127、挿入部128、保持部129、案内部130、及び、脱落規制部31が形成されている。
【0034】
本実施形態に係る枕木固定構造110において回り止め金具120は、図3に示す如く板金部材を折り曲げて構成される。回り止め金具120は、枕木102とナット121との間(より詳細には、枕木102と座板123との間)に介挿される。回り止め金具120は、枕木102の上面において枕木102の幅方向に沿って配置される中間部116と、枕木102の側面に沿って下方へ延びる1対のアーム部117・117と、を備える。
【0035】
回り止め金具120において、中間部116の略中央部には中間部116を貫通する挿通穴118が開口される。図4(b)に示す如く挿通穴118は長孔形状に形成され、挿通穴118の口縁には直線状の係止部119が形成される。
【0036】
回り止め金具120は図4(a)及び(b)に示す如く、挿通穴118にフックボルト111の螺子部112を挿通させて枕木102に組付けられる。係止部119がフックボルト111の係合面115に係合するとともに、アーム部117が枕木102に係合することにより、フックボルト111のとも回りが規制され、軸部113が丸穴103に対して回り止めされる。このように、本実施形態においては回り止め金具120の挿通穴118に螺子部112の係合面115を係合させることにより、フックボルト111が枕木102に対して水平方向(上下方向の軸心回りに)に回転変位することを防止している。
【0037】
このような枕木固定構造110により枕木102を固定する際には、まず、フックボルト111の螺子部112及び軸部113を下側から枕木102の丸穴103に挿通させる。そして、フックボルト111のフック部114をH形鋼1のフランジ部4の下側に位置させた状態で、回り止め金具120、座板123、及びスプリングワッシャ122を螺子部112に順番に装着する。この際、回り止め金具120の中間部116を枕木102の上面にセットするとともに、回り止め金具120のアーム部117を枕木102の左右両側に配置させる。さらに、ナット121を螺子部112に締結してからピン部材124を螺子部112に取付けて組み立てるのである。
【0038】
上記の枕木固定構造10(枕木固定構造110)において、フックボルト11(フックボルト111についても同様、以下同じ)は、焼入れ及び焼戻しによる熱処理が施されたばね鋼で形成されている。これにより、従来の枕木固定構造に用いられているフックボルトと比較して高い強度(締付トルクに対する伸び特性)を得ることできた。
【0039】
具体的には、本実施形態に係るフックボルト11の締付トルクと伸び特性との関係を試験したところ、300Nmの締付トルクでもフックボルト11が塑性変形をせずに弾性変形内であることが確認できた。より詳細には、フックボルト11に300Nmの締付トルクを加えた前後でのフックボルト11の変形がみられなかった。一方、従来の枕木固定構造に用いられているフックボルト(建築構造用圧延棒鋼)では40~50Nmの締付トルクで塑性変形した。
【0040】
このように、本実施形態に係るフックボルト11は、従来のフックボルトと比較して約6倍の締付トルクに耐えることができた。このように本実施形態に係る枕木固定構造10・110においては、フックボルト11・111の伸び特性を高くして塑性変形しにくくしているため、ナット21・121の締付が緩む可能性を低減させることができるのである。
【符号の説明】
【0041】
1 H形鋼 2 枕木
3 角穴 4 フランジ部
5 レール
10 枕木固定構造 11 フックボルト
12 螺子部 13 軸部
14 フック部
21 ナット 22 スプリングワッシャ
23 丸座金 24 ピン部材
25 取付穴 26 操作部
27 ピン本体 28 挿入部
29 保持部 30 案内部
31 脱落規制部
102 枕木 103 丸穴
110 枕木固定構造 111 フックボルト
112 螺子部 113 軸部
114 フック部 115 係合面
116 中間部 117 アーム部
118 挿通穴 119 係止部
120 回り止め金具 121 ナット
122 スプリングワッシャ 123 座板
124 ピン部材 125 取付穴
126 操作部 127 ピン本体
128 挿入部 129 保持部
130 案内部 131 脱落規制部



図1
図2
図3
図4