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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147264
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】スイッチトキャパシタアンプ
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/70 20060101AFI20241008BHJP
   H03F 3/45 20060101ALI20241008BHJP
   H03M 1/66 20060101ALI20241008BHJP
   H03H 19/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
H03F3/70
H03F3/45
H03M1/66 B
H03H19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060169
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】川原 彰悟
(72)【発明者】
【氏名】根塚 智裕
【テーマコード(参考)】
5J022
5J023
5J500
【Fターム(参考)】
5J022AB01
5J022CB01
5J023CA07
5J023CB01
5J500AA01
5J500AA25
5J500AA47
5J500AC11
5J500AH10
5J500AH29
(57)【要約】
【課題】オペアンプの入出力レンジが異なる場合でも高精度出力が可能なスイッチトキャパシタアンプを提供する。
【解決手段】全差動構成のSCアンプ1は、差動出力形式のオペアンプ2と、第1端子がオペアンプ2の入力端子に接続されるキャパシタCs1、Cs2と、オペアンプ2の入力端子と出力端子との間に接続されるキャパシタCf1、Cf2と、D/A変換器から出力されるDAC電圧に応じた電荷を蓄積することができるとともに第1端子がオペアンプ2の入力端子に接続されるキャパシタCd1、Cd2と、オペアンプ2の出力電圧の同相レベルを制御するCMFB回路3と、を備える。オペアンプ2の入力のコモン電位は、コモン電位VCMINであり、オペアンプ2の出力のコモン電位と、CMFB回路3のバイアスのコモン電位と、キャパシタCd1、Cd2の第2端子側のコモン電位と、は、コモン電位VCMINとは異なる回路により生成されるコモン電位VCMOである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の入力ノード(Nip、Nim)および一対の出力ノード(Nop、Nom)を備えた全差動構成のスイッチトキャパシタアンプであって、
差動出力形式のオペアンプ(2、2A、2B)と、
第1端子および第2端子を備え、前記第1端子が前記オペアンプの入力端子に接続される一対のサンプリング容量(Cs1、Cs2)と、
前記オペアンプの入力端子と出力端子との間に接続される一対のフィードバック容量(Cf1、Cf2)と、
第1端子および第2端子を備え、D/A変換器から出力されるDAC電圧に応じた電荷を蓄積することができるとともに前記第1端子が前記オペアンプの入力端子に接続される一対のDAC容量(Cd1、Cd2)と、
前記オペアンプの出力電圧の同相レベルを制御するコモンモードフィードバック回路(3)と、
を備え、
前記一対の入力ノードを介して与えられる入力電圧を前記一対のサンプリング容量によりサンプリングし、前記一対のフィードバック容量を介して前記サンプリングされた電荷を転送することにより前記オペアンプの出力端子から前記入力電圧を増幅した出力電圧を出力し、
前記オペアンプの入力のコモン電位は、第1コモン電位であり、
前記オペアンプの出力のコモン電位および前記コモンモードフィードバック回路のバイアスのコモン電位は、前記第1コモン電位とは異なる回路により生成される第2コモン電位であるスイッチトキャパシタアンプ。
【請求項2】
前記一対のサンプリング容量の前記第2端子側のコモン電位および前記一対のDAC容量の前記第2端子側のコモン電位のうち少なくとも一方は、前記第2コモン電位である請求項1に記載のスイッチトキャパシタアンプ。
【請求項3】
前記第1コモン電位は、前記第2コモン電位より低い電位に設定される請求項1または2に記載のスイッチトキャパシタアンプ。
【請求項4】
前記オペアンプ(2A)は、入力段にNチャネル型MOSトランジスタ(M7、M8)が設けられたテレスコピックアンプとして構成されている請求項3に記載のスイッチトキャパシタアンプ。
【請求項5】
ΔΣ型A/D変換器における積分器(24)に用いられる請求項4に記載のスイッチトキャパシタアンプ。
【請求項6】
さらに、前記一対の入力ノードと前記一対のサンプリング容量との間に接続されるチョッピング回路(32)を備え、
前記チョッピング回路を構成する複数のスイッチ(S31~S34)は、MOSトランジスタにより構成されている請求項5に記載のスイッチトキャパシタアンプ。
【請求項7】
さらに、前記複数のスイッチを、キャパシタ(C41~C44)を介して駆動する容量駆動部(33、34)を備えている請求項6に記載のスイッチトキャパシタアンプ。
【請求項8】
前記一対の入力ノードは、組電池を構成する各電池セルの端子に接続可能になっており、
前記各電池セルに重畳される相対的に高いコモンモード電圧を相対的に低いコモンモード電圧まで降圧させるレベルシフト回路に用いられる請求項7に記載のスイッチトキャパシタアンプ。
【請求項9】
前記第1コモン電位は、前記第2コモン電位より高い電位に設定される請求項1または2に記載のスイッチトキャパシタアンプ。
【請求項10】
前記オペアンプ(2B)は、入力段にPチャネル型MOSトランジスタ(M17、M18)が設けられたテレスコピックアンプとして構成されている請求項9に記載のスイッチトキャパシタアンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全差動構成のスイッチトキャパシタアンプに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、差動出力形式のオペアンプ、一対のサンプリング容量、一対のフィードバック容量、一対のDAC容量などを備えた全差動構成のスイッチトキャパシタアンプを含む構成のA/D変換器が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-088500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるスイッチトキャパシタアンプのように、従来のスイッチトキャパシタアンプでは、その入力および出力のコモン電位が共通化されていることが多い。また、スイッチトキャパシタアンプを低電力化するため、オペアンプに低電力な構成であるテレスコピック型アンプが用いられることがある。ただし、テレスコピック型アンプは、入出力レンジが異なる特徴を有する。そのため、従来のスイッチトキャパシタアンプにおいて低電力化を実現するためにオペアンプとしてテレスコピック型アンプを用いた構成では、オペアンプの入出力の動作レンジが異なる場合、出力レンジが狭くなり、出力範囲がレンジオーバーして出力の精度が悪化するおそれがある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、オペアンプの入出力レンジが異なる場合でも高精度出力が可能なスイッチトキャパシタアンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載のスイッチトキャパシタアンプは、一対の入力ノード(Nip、Nim)および一対の出力ノード(Nop、Nom)を備えた全差動構成のスイッチトキャパシタアンプであって、差動出力形式のオペアンプ(2、2A、2B)と、一対のサンプリング容量(Cs1、Cs2)と、一対のフィードバック容量(Cf1、Cf2)と、一対のDAC容量(Cd1、Cd2)と、コモンモードフィードバック回路(3)と、を備える。前記一対のサンプリング容量は、第1端子および第2端子を備え、前記第1端子が前記オペアンプの入力端子に接続される。前記一対のフィードバック容量は、前記オペアンプの入力端子と出力端子との間に接続される。前記一対のDAC容量は、第1端子および第2端子を備え、D/A変換器から出力されるDAC電圧に応じた電荷を蓄積することができるとともに前記第1端子が前記オペアンプの入力端子に接続される。前記コモンモードフィードバック回路は、前記オペアンプの出力電圧の同相レベルを制御する。
【0007】
上記構成を備えるスイッチトキャパシタアンプは、前記一対の入力ノードを介して与えられる入力電圧を前記一対のサンプリング容量によりサンプリングし、前記一対のフィードバック容量を介して前記サンプリングされた電荷を転送することにより前記オペアンプの出力端子から前記入力電圧を増幅した出力電圧を出力する。上記構成では、前記オペアンプの入力のコモン電位は、第1コモン電位である。また、上記構成では、前記オペアンプの出力のコモン電位および前記コモンモードフィードバック回路のバイアスのコモン電位は、前記第1コモン電位とは異なる回路により生成される第2コモン電位である。
【0008】
つまり、上記構成では、オペアンプの入力のコモン電位と、オペアンプの出力のコモン電位およびコモンモードフィードバック回路のバイアスのコモン電位と、が分離されている。このような構成によれば、レンジにマージンを取ることができるため、ばらつき耐量、つまりロバスト性が向上する。また、このような構成によれば、オペアンプの入出力の動作レンジが異なる場合でも高精度な出力を得ることができる。さらに、このような構成によれば、オペアンプの入出力の各コモン電位間の干渉が低減されることから、出力の高精度化を図ることができる。従って、上記構成によれば、出力の精度を高めることができるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係るスイッチトキャパシタアンプの構成を模式的に示す図
図2】第1実施形態に係るオペアンプの具体的な一構成例を示す図
図3】比較例に係る各コモン電位と出力レンジとの関係を説明するための図
図4】第1実施形態に係る各コモン電位と出力レンジとの関係を説明するための図
図5】変形例に係るオペアンプの具体的な一構成例を示す図
図6】第2実施形態に係るスイッチトキャパシタアンプの構成を模式的に示す図
図7】第2実施形態に係るΔΣ変調器の構成を模式的に示す図
図8】第3実施形態に係るスイッチトキャパシタアンプの構成を模式的に示す図
図9】第3実施形態に係るチョッピング回路および容量駆動部の具体的な一構成例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、複数の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各実施形態において実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について図1図5を参照して説明する。
【0011】
<全体構成>
図1に示すように、本実施形態のスイッチトキャパシタアンプ1は、一対の入力ノードNip、Nimと、一対の出力ノードNop、Nomと、を備えた全差動構成のスイッチトキャパシタアンプである。なお、本明細書では、スイッチトキャパシタアンプのことをSCアンプと省略することがある。SCアンプ1は、図示しない他の回路素子とともに自動車などの車両に搭載されるICとして構成されている。なお、ICは、Integrated Circuitの略称である。
【0012】
SCアンプ1は、差動出力形式のオペアンプ2と、キャパシタCs1、Cs2、Cf1、Cf2、Cd1、Cd2と、スイッチS1~S16と、コモンモードフィードバック回路3と、を備えている。スイッチS1、S3、S4、S6、S8、S10、S12、S13、S15、S16は、Nチャネル型のMOSトランジスタにより構成されている。スイッチS11、S14は、Pチャネル型のMOSトランジスタにより構成されている。スイッチS2、S5、S7、S9は、Nチャネル型のMOSトランジスタとPチャネル型のMOSトランジスタとを並列接続した構成のアナログスイッチにより構成されている。スイッチS1~S16のオンオフは、図示しない制御回路により制御される。
【0013】
キャパシタCs1、Cs2、Cf1、Cf2、Cd1、Cd2を含む各キャパシタは、いずれも2つの端子を備えている。本明細書では、キャパシタが備える2つの端子を区別するため、2つの端子のうち一方を第1端子と称するとともに、2つの端子のうち他方を第2端子と称することがある。キャパシタCs1の第1端子は、オペアンプ2の反転入力端子に接続されている。キャパシタCs1の第1端子には、スイッチS1を介してコモン電位VCMINが印加可能とされている。キャパシタCs1の第2端子は、スイッチS2を介して入力電圧VINPが与えられる入力ノードNipに接続されている。キャパシタCs1の第2端子には、スイッチS3を介してコモン電位VCMOが印加可能とされている。
【0014】
キャパシタCs2の第1端子は、オペアンプ2の非反転入力端子に接続されている。キャパシタCs2の第1端子には、スイッチS4を介してコモン電位VCMINが印加可能とされている。キャパシタCs2の第2端子は、スイッチS5を介して入力電圧VINMが与えられる入力ノードNimに接続されている。キャパシタCs2の第2端子には、スイッチS6を介してコモン電位VCMOが印加可能とされている。
【0015】
このように、差動構成において対をなすキャパシタCs1、Cs2は、第1端子がオペアンプ2の入力端子に接続されるものであり、一対のサンプリング容量として機能する。キャパシタCs1、Cs2は、同じ容量値になっている。なお、本明細書における「同じ容量値」とは、容量値が完全に一致するものだけでなく、目的とする効果を奏するものであれば、互いの容量値に若干の差があり、厳密には一致していないようなものも含む。
【0016】
キャパシタCf1の第1端子は、オペアンプ2の反転入力端子に接続されている。キャパシタCf1の第2端子は、スイッチS7を介してオペアンプ2の非反転出力端子に接続されている。つまり、キャパシタCf1は、スイッチS7を介してオペアンプ2の反転入力端子と非反転出力端子との間に接続されている。キャパシタCf1の第2端子には、スイッチS8を介してコモン電位VCMOが印加可能とされている。
【0017】
キャパシタCf2の第1端子は、オペアンプ2の非反転入力端子に接続されている。キャパシタCf2の第2端子は、スイッチS9を介してオペアンプ2の反転出力端子に接続されている。つまり、キャパシタCf2は、スイッチS9を介してオペアンプ2の非反転入力端子と反転出力端子との間に接続されている。キャパシタCf2の第2端子には、スイッチS10を介してコモン電位VCMOが印加可能とされている。このように、差動構成において対をなすキャパシタCf1、Cf2は、オペアンプ2の入力端子と出力端子との間に接続されるものであり、一対のフィードバック容量として機能する。キャパシタCf1、Cf2は、同じ容量値になっている。
【0018】
キャパシタCd1の第1端子は、オペアンプ2の反転入力端子に接続されている。キャパシタCd1の第2端子には、スイッチS11を介して基準電圧VREFPが印加可能とされている。また、キャパシタCd1の第2端子には、スイッチS12を介してコモン電位VCMOが印加可能とされている。さらに、キャパシタCd1の第2端子には、スイッチS13を介して基準電圧VREFMが印加可能とされている。基準電圧VREFP、VREFMは、図示しないD/A変換器から出力されるDAC電圧の一例である。なお、本明細書では、D/A変換器のことをDACと省略することがある。
【0019】
キャパシタCd2の第1端子は、オペアンプ2の非反転入力端子に接続されている。キャパシタCd2の第2端子には、スイッチS14を介して基準電圧VREFPが印加可能とされている。また、キャパシタCd2の第2端子には、スイッチS15を介してコモン電位VCMOが印加可能とされている。さらに、キャパシタCd2の第2端子には、スイッチS16を介して基準電圧VREFMが印加可能とされている。このように、差動構成において対をなすキャパシタCd1、Cd2は、DAC電圧に応じて電荷を蓄積することができるとともに第1端子がオペアンプ2の入力端子に接続されるものであり、一対のDAC容量として機能する。キャパシタCd1、Cd2は、同じ容量値になっている。
【0020】
コモンモードフィードバック回路3は、オペアンプ2の出力電圧の同相レベルを制御するコモンモードフィードバックの機能を実現する回路である。なお、本明細書では、コモンモードフィードバックのことをCMFBと省略することがある。CMFB回路3は、キャパシタCc1~Cc4と、スイッチSc1~Sc6と、を備えている。スイッチSc1、Sc2は、Nチャネル型のMOSトランジスタにより構成されている。スイッチSc3~Sc6は、Nチャネル型のMOSトランジスタとPチャネル型のMOSトランジスタとを並列接続した構成のアナログスイッチにより構成されている。スイッチSc1~Sc6のオンオフは、図示しない制御回路により制御される。
【0021】
キャパシタCc1の第1端子は、オペアンプ2の非反転出力端子に接続されている。キャパシタCc1の第2端子は、オペアンプ2のVCMFB端子に接続されている。オペアンプ2は、VCMFB端子に与えられる信号に応じて出力電圧の同相レベルを調整することができる構成となっている。キャパシタCc2の第1端子は、オペアンプ2の反転出力端子に接続されている。キャパシタCc2の第2端子は、オペアンプ2のVCMFB端子に接続されている。
【0022】
キャパシタCc3の第1端子は、スイッチSc3を介してオペアンプ2の非反転出力端子に接続されている。キャパシタCc3の第1端子には、スイッチSc4を介してコモン電位VCMOが印加可能とされている。キャパシタCc3の第2端子は、スイッチSc1を介してオペアンプ2のCMFB端子に接続されている。キャパシタCc3の第2端子には、スイッチSc2を介してバイアス電圧Vbiasが印加可能とされている。
【0023】
キャパシタCc4の第1端子は、スイッチSc5を介してオペアンプ2の反転出力端子に接続されている。キャパシタCc4の第1端子には、スイッチSc6を介してコモン電位VCMOが印加可能とされている。キャパシタCc4の第2端子は、スイッチSc1を介してオペアンプ2のCMFB端子に接続されている。キャパシタCc4の第2端子には、スイッチSc2を介してバイアス電圧Vbiasが印加可能とされている。上記構成によれば、オペアンプ2の出力電圧の同相レベルがコモン電位VCMOとなるようにフィードバック制御される。
【0024】
SCアンプ1は、一対の入力ノードNip、Nimを介して与えられる入力電圧VINP、VINMをキャパシタCs1、Cs2によりサンプリングする。SCアンプ1は、このようにしてサンプリングされた電荷を、キャパシタCf1、Cf2を介して転送することにより、オペアンプ2の出力端子から入力電圧VINP、VINMを増幅した出力電圧VOUTP、VOUTMを出力する。オペアンプ2の非反転出力端子は、出力ノードNomに接続されている。オペアンプ2の反転出力端子は、出力ノードNopに接続されている。そのため、出力電圧VOUTP、VOUTMは、一対の出力ノードNop、Nomを介して後段の回路へと出力される。
【0025】
上記構成では、オペアンプ2の入力のコモン電位は、コモン電位VCMINになっている。また、上記構成では、オペアンプ2の出力のコモン電位と、CMFB回路3のバイアスのコモン電位と、キャパシタCs1、Cs2の第2端子側のコモン電位と、キャパシタCd1、Cd2の第2端子側のコモン電位と、は、コモン電位VCMOになっている。コモン電位VCMINは、第1コモン電位に相当するものであり、図示しない第1電位生成回路により生成される。コモン電位VCMOは、第2コモン電位に相当するものであり、図示しない第2電位生成回路により生成される。つまり、上記構成では、第1コモン電位と第2コモン電位とは、互いに異なる回路により生成されるようになっている。
【0026】
本実施形態では、コモン電位VCMINとコモン電位VCMOとが互いに異なる電位となるように設計されている。この場合、下記(1)式に示すように、コモン電位VCMINは、コモン電位VCMOより低い電位に設定されている。
VCMIN<VCMO …(1)
【0027】
<オペアンプの具体的な構成>
オペアンプ2の具体的な構成としては、例えば図2に示すような構成例を採用することができる。図2に示すように、本構成例のオペアンプ2Aは、トランジスタM1~M9を備えている。トランジスタM1~M4は、Pチャネル型MOSトランジスタであり、トランジスタM5~M9は、Nチャネル型MOSトランジスタである。トランジスタM1、M2の各ソースは、回路の電源電圧VDDが与えられる電源線4に接続されており、それらの各ゲートは共通接続されている。トランジスタM1、M2の各ドレインは、トランジスタM3、M4の各ソースにそれぞれ接続されている。
【0028】
トランジスタM3、M4の各ゲートは共通接続されており、それら共通接続されたゲートにはPchバイアス電圧Vbias,pが与えられている。トランジスタM3、M4の各ドレインは、トランジスタM5、M6の各ドレインにそれぞれ接続されている。また、トランジスタM3のドレインは、オペアンプ2Aの反転出力端子AOUTMに接続されており、トランジスタM4のドレインは、オペアンプ2Aの非反転出力端子AOUTPに接続されている。
【0029】
トランジスタM5、M6の各ゲートは共通接続されており、それら共通接続されたゲートにはNchバイアス電圧Vbias,nが与えられている。トランジスタM5、M6の各ソースは、トランジスタM7、M8の各ドレインにそれぞれ接続されている。トランジスタM7、M8の各ソースは、トランジスタM9のドレインに接続されている。トランジスタM7のゲートは、オペアンプ2Aの非反転入力端子AINPに接続されている。トランジスタM8のゲートは、オペアンプ2Aの反転入力端子AINMに接続されている。トランジスタM9のソースは、回路の基準電位が与えられるグランドに接続されている。
【0030】
このように、本構成例のオペアンプ2Aは、入力段にNチャネル型MOSトランジスタであるトランジスタM7、M8が設けられたテレスコピックアンプとして構成されている。この場合、オペアンプ2の出力レンジは、下記(2)式により表される。ただし、Vo,diffはオペアンプ2の差動出力レンジを表し、Vodはオペアンプ2の内部のトランジスタのオーバードライブ電圧を表し、VTHはオペアンプ2の閾値を表している。
VCMIN-VTH+Vod×2<VCMO±(Vo,diff/2)<Vbias,p+VTH-Vod
…(2)
【0031】
詳細は後述するが、オペアンプ2として本構成例を採用した場合、コモン電位VCMIN、VCMOは、下記(3)式により表される関係を満たすように設定することが望ましい。
VCMIN<VCMO-(Vo,diff/2)-Vod×2+VTH …(4)
【0032】
以上説明した本実施形態によれば、次のような効果が得られる。
本実施形態のSCアンプ1では、オペアンプ2の入力のコモン電位となるコモン電位VCMINと、オペアンプ2の出力などのコモン電位となるコモン電位VCMOとは、互いに異なる回路により生成されている。つまり、本実施形態のSCアンプ1では、オペアンプ2の入力のコモン電位となるコモン電位VCMINと、オペアンプ2の出力などのコモン電位となるコモン電位VCMOと、が分離されており、さらには、コモン電位VCMINは、コモン電位VCMOより低い電位に設定されている。このような構成によれば、オペアンプ2のレンジにマージンを取ることができるため、ばらつき耐量、つまりロバスト性が向上する。
【0033】
また、このような構成によれば、オペアンプ2の入出力の動作レンジが異なる場合でも高精度な出力を得ることができる。さらに、このような構成によれば、オペアンプ2の入出力の各コモン電位間の干渉が低減されることから、出力の高精度化を図ることができる。従って、上記構成によれば、SCアンプ1の出力の精度を高めることができるという優れた効果が得られる。このような本実施形態により得られる効果は、従来技術と比較することで一層明確になる。そこで、従来技術に相当する比較例について説明した後、その比較例と本実施形態との比較を行う。
【0034】
比較例は、本実施形態と概ね同様の構成であるが、コモン電位VCMINとコモン電位VCMOとの設定が本実施形態とは異なっている。すなわち、比較例では、下記(4)式に示すように、コモン電位VCMINと、コモン電位VCMOと、は同じ電位に設定されている。
VCMIN=VCMO …(4)
【0035】
図3に示すように、比較例では、コモン電位VCMINとコモン電位VCMOとが同じ電位であるため、後述する本実施形態に比べ、「Vo,diff/2」を広く取ることができない。また、比較例では、下側のレンジに律速して上側も広くすることができない。なぜなら、オペアンプ2が差動出力回路であることから、コモン電位VCMOに対して差動で対称に出力電圧VOUTP、VOUTMが開くような形となるからである。
【0036】
また、比較例では、閾値VTHなど、プロセスがばらついた際に出力レンジがさらに狭くなり、出力範囲がレンジオーバーする場合は非線形性誤差が大きくなってしまう。これに対し、本実施形態では、図4に示すように、コモン電位VCMINがコモン電位VCMOより低い電位に設定されていることから、比較例に比べ、「Vo,diff/2」を広く取ることができる。
【0037】
本実施形態では、キャパシタCs1、Cs2の第2端子側のコモン電位と、キャパシタCd1、Cd2の第2端子側のコモン電位と、についてもコモン電位VCMOとなっている。このようにすれば、SCアンプ1における各コモン電位は、互いに分離された2種類のコモン電位VCMIN、VCMOのうちいずれかが用いられることになる。言い換えると、SCアンプ1におけるコモン電位の分離数は最小限の2に抑えられる。このような構成によれば、コモン電位の分離数を3以上にする構成に比べ、コモン電位を生成するための電位生成回路の数が少なく抑えられることから、回路の小型化を実現することができるとともに、回路における消費電力を低く抑えることができる。
【0038】
本実施形態では、コモン電位VCMINは、コモン電位VCMOより低い電位に設定されている。上記構成によれば、コモン電位VCMINがコモン電位VCMOと同電位とされている比較例に対して、次のようなメリットがある。すなわち、上記構成によれば、コモン電位VCMINに接続されるスイッチS1、S4を構成するMOSトランジスタのオン抵抗が下がるため、回路の小型化および出力の高精度化を実現することができる。
【0039】
より具体的には、上記構成によれば、スイッチS1、S4を構成するMOSトランジスタの単位チャンネル幅Wあたりのオン抵抗が下がるため、それらスイッチS1、S4の小型化を図ることが可能となり、その分だけ回路の小型化を実現することができる。また、上記構成によれば、オペアンプ2の入力端子に接続されるスイッチS1、S4を構成するMOSトランジスタのサイズが小さくなることによりチャージインジェクションによる誤差が低減され、その分だけ出力の高精度化を図ることができる。
【0040】
本実施形態では、オペアンプ2は、入力段にNチャネル型MOSトランジスタであるトランジスタM5、M6が設けられたテレスコピックアンプとして構成されている。このような構成によれば、電流パスが1つであることから、オペアンプ2を例えばフォールデッドカスコード、2ステージアンプなど、他のトポロジで構成した場合に比べ、消費電力を低く抑えることができる。また、テレスコピックアンプは入出力レンジが異なる特徴を有するが、本実施形態のSCアンプ1の構成に採用することにより、そのような特徴にかかわらず、出力の高精度化を図ることができる。
【0041】
<コモン電位の設定などに関する変形例>
コモン電位VCMINをコモン電位VCMOより高い電位に設定する、という変形例を採用することもできる。このような変形例の場合、スイッチS1、S4をPチャネル型MOSトランジスタにより構成することができるとともに、オペアンプ2の具体的な構成として、図5に示すような構成例を採用することができる。図5に示すように、本構成例のオペアンプ2Bは、トランジスタM11~M19を備えている。トランジスタM11~M14は、Nチャネル型MOSトランジスタであり、トランジスタM15~M19は、Pチャネル型MOSトランジスタである。
【0042】
トランジスタM11、M12の各ソースは、グランドに接続されており、それらの各ゲートは共通接続されている。トランジスタM11、M12の各ドレインは、トランジスタM13、M14の各ソースにそれぞれ接続されている。トランジスタM13、M14の各ゲートは共通接続されており、それら共通接続されたゲートにはNchバイアス電圧Vbias,nが与えられている。トランジスタM13、M14の各ドレインは、トランジスタM15、M16の各ドレインにそれぞれ接続されている。
【0043】
また、トランジスタM13のドレインは、オペアンプ2Bの反転出力端子AOUTMに接続されており、トランジスタM14のドレインは、オペアンプ2Bの非反転出力端子AOUTPに接続されている。トランジスタM15、M16の各ゲートは共通接続されており、それら共通接続されたゲートにはPchバイアス電圧Vbias,pが与えられている。トランジスタM15、M16の各ソースは、トランジスタM17、M18の各ドレインにそれぞれ接続されている。
【0044】
トランジスタM17、M18の各ソースは、トランジスタM19のドレインに接続されている。トランジスタM17のゲートは、オペアンプ2Bの非反転入力端子AINPに接続されている。トランジスタM18のゲートは、オペアンプ2Bの反転入力端子AINMに接続されている。トランジスタM19のソースは、電源線4に接続されている。このように、本構成例のオペアンプ2Bは、入力段にPチャネル型MOSトランジスタであるトランジスタM17、M18が設けられたテレスコピックアンプとして構成されている。
【0045】
本変形例によれば、第1実施形態と同様の効果が得られるとともに、次のような効果も得られる。オペアンプ2の入力段にNチャネル型MOSトランジスタよりもフリッカノイズの少ないPチャネル型MOSトランジスタを用いることにより、SCアンプ1の更なる高精度化を実現することができる。具体的には、オペアンプ2の入力段のトランジスタをPチャネル型MOSトランジスタにすれば、フリッカノイズが小さいことから、同トランジスタをNチャネル型MOSトランジスタにする場合に対し、入力段のトランジスタを小さく実装することができる。このようにすれば、SCアンプ1のフィードバックファクタを上げることができ、高精度化することができるという効果が得られる。
【0046】
このような変形例により得られる効果は、SCアンプ1が電池監視ICに用いられる場合に一層顕著なものとなる。その理由は次の通りである。すなわち、電池監視ICでは、サンプリング容量には、例えば数十~数百ボルトといった比較的高い電圧が印加される可能性があることから高耐圧櫛歯容量が用いられることが多い。高耐圧櫛歯容量は、対地寄生容量が大きい。そのため、SCアンプ1は、電池監視ICに用いられる場合、フィードバックファクタが低くなり、誤差が大きくなる可能性がある。そこで、このような場合、オペアンプ2の入力段にPチャネル型MOSトランジスタを用いる本変形例を採用すれば、SCアンプ1のフィードバックファクタを低下させることなく、むしろ上げることが可能となり、その結果、SCアンプ1の高精度化を図ることができる。
【0047】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について図6および図7を参照して説明する。
図6に示すように、本実施形態のSCアンプ21は、第1実施形態のSCアンプ1に対し、スイッチS21~S24が追加されている点などが異なっている。スイッチS21~S24は、Nチャネル型のMOSトランジスタにより構成されている。
【0048】
キャパシタCs1、Cd1の各第1端子は、スイッチS21を介してオペアンプ2の反転入力端子に接続されている。キャパシタCs2、Cd2の各第1端子は、スイッチS22を介してオペアンプ2の非反転入力端子に接続されている。キャパシタCf1の第1端子には、スイッチS23を介してコモン電位VCMINが印加可能とされている。キャパシタCf2の第1端子には、スイッチS24を介してコモン電位VCMINが印加可能とされている。SCアンプ21は、ΔΣ型A/D変換器における積分器に用いられる。なお、本明細書では、A/D変換器のことをADCと省略することがある。
【0049】
ΔΣ型ADCは、図7に示すようなΔΣ変調器22を備え、そのΔΣ変調器22の出力を図示しないデジタルフィルタを通過させることにより、高分解能なデジタル出力を得るADCである。ΔΣ変調器22は、パルス変調の方式の一種を採用したものであり、加算器23と、積分器24と、コンパレータ25と、DAC26と、を備えている。加算器23は、入力信号Inputに対してDAC26の出力信号を減算した信号を出力する。積分器24は、加算器23の出力信号を積分するものであり、SCアンプ21により構成することができる。コンパレータ25は、積分器24の出力信号を2値化する。DAC26は、コンパレータ25の出力信号を入力し、その入力に応じた信号を出力する。
【0050】
このような構成のΔΣ変調器22は、入力信号Inputを積分器24で積分し、その出力をコンパレータ25でデジタル変換し、その出力に応じてDAC26を用いて入力信号Inputに対して加減算することで、コンパレータ25の出力をΔΣ変調出力Outputとして取り出すことができる。上記構成によれば、上述した動作により、コンパレータ25が出力する量子化誤差のパワースペクトル密度分布の形状を整形、つまりノイズシェーピングし、通過帯域のダイナミックレンジを向上させることができる。
【0051】
以上説明した本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果が得られるうえ、さらに次のような効果が得られる。すなわち、本実施形態の構成によれば、コモン電位VCMINがコモン電位VCMOよりも低い電位に設定されていることから、キャパシタCs1、Cs2とオペアンプ2の各入力端子との間を切り離すために設けられたスイッチS21、S22を構成するMOSトランジスタのオン抵抗が下がるため、回路の小型化および出力の高精度化を実現することができる。
【0052】
より具体的には、上記構成によれば、スイッチS21、S22を構成するMOSトランジスタの単位チャンネル幅Wあたりのオン抵抗が下がるため、それらスイッチS21、S22の小型化を図ることが可能となり、その分だけ回路の小型化を実現することができる。また、上記構成によれば、オペアンプ2の入力端子に接続されるスイッチS21、S22を構成するMOSトランジスタのサイズが小さくなることによりチャージインジェクションによる誤差が低減され、その分だけ出力の高精度化を図ることができる。
【0053】
(第3実施形態)
以下、第3実施形態について図8および図9を参照して説明する。
図8に示すように、本実施形態のSCアンプ31は、第1実施形態のSCアンプ1に対し、スイッチS2、S5に代えてチョッピング回路32を備えている点などが異なっている。チョッピング回路32は、一対の入力ノードNip、Nimと、一対のサンプリング容量に相当するキャパシタCs1、Cs2と、の間に接続されるものであり、スイッチS31~S34を備えている。
【0054】
チョッピング回路32を構成する複数のスイッチS31~S34は、図8では単なるスイッチのシンボルとして描かれているが、実際には、図9に示すように、スイッチS31、S34はPチャネル型のMOSトランジスタとして構成されているとともに、スイッチS32、S33はNチャネル型のMOSトランジスタにより構成されている。スイッチS31は、キャパシタCs1の第2端子と入力ノードNipとの間に接続されている。スイッチS31は、キャパシタCs1の第2端子と入力ノードNipとの間を開閉する第1スイッチとして機能する。
【0055】
スイッチS32は、キャパシタCs1の第2端子と入力ノードNimとの間に接続されている。スイッチS32は、キャパシタCs1の第2端子と入力ノードNimとの間を開閉する第2スイッチとして機能する。スイッチS33は、キャパシタCs2の第2端子と入力ノードNimとの間に接続されている。スイッチS33は、キャパシタCs2の第2端子と入力ノードNimとの間を開閉する第3スイッチとして機能する。スイッチS34は、キャパシタCs2の第2端子と入力ノードNipとの間に接続されている。スイッチS34は、キャパシタCs2の第2端子と入力ノードNipとの間を開閉する第4スイッチとして機能する。
【0056】
本実施形態では、一対の入力ノードNip、Nimは、図示しない組電池を構成する各電池セルの端子に接続可能になっており、一対の入力電圧VINP、VINMは、このような各電池セルの電圧に対応した電圧となっている。各電池セルには、多段に直列接続されることで組電池を構成しているから、コモンモード電圧が重畳されている。このコモンモード電圧は、組電池の上段側、つまり高電位側に接続される電池セルほど高くなり、その最大値は例えば数百ボルト程度の比較的高い電圧となる。
【0057】
本実施形態のSCアンプ31は、各電池セルに重畳される相対的に高いコモンモード電圧を相対的に低いコモンモード電圧まで降圧させるレベルシフト回路に用いられる。この場合、SCアンプ31は、例えば自動車などの車両に搭載された組電池の電圧などの各種状態を検出して組電池の状態を監視する電池監視のための各種の動作を行う回路が集積化された電池監視ICの一部を構成している。
【0058】
チョッピング回路32およびチョッピング回路32のスイッチS31~S34を駆動する駆動部の具体的な構成としては、例えば図9に示すような構成例を採用することができる。図9に示すように、SCアンプ31は、チョッピング回路32を構成する複数のスイッチS31~S34を、キャパシタC41~C44を介して駆動する容量駆動部33、34を備えている。容量駆動部33は、スイッチS31、S34を駆動するものであり、キャパシタC41、C42と、Pチャネル型のMOSトランジスタにより構成されるスイッチS41、S42と、を備えている。
【0059】
キャパシタC41の第1端子には、駆動信号φ1が与えられる。キャパシタC42の第1端子には、駆動信号φ2が与えられる。駆動信号φ1、φ2は、図示しない制御回路により生成されるものであり、互いに逆相の信号となっている。駆動信号φ1、φ2の振幅は、スイッチS31~S34のゲート閾値電圧よりも十分に高い駆動電圧に対応するものとなっている。
【0060】
キャパシタC41の第2端子は、スイッチS31のゲートに接続されている。また、キャパシタC41の第2端子は、スイッチS41のドレインおよびスイッチS42のゲートにも接続されている。キャパシタC42の第2端子は、スイッチS34のゲートに接続されている。また、キャパシタC42の第2端子は、スイッチS42のドレインおよびスイッチS41のゲートにも接続されている。スイッチS41、S42の各ソースは、共通接続されているとともに、入力ノードNipに接続されている。
【0061】
容量駆動部34は、スイッチS32、S33を駆動するものであり、キャパシタC43、C44と、Nチャネル型のMOSトランジスタにより構成されるスイッチS43、S44と、を備えている。キャパシタC43の第1端子には、駆動信号φ1が与えられる。キャパシタC44の第1端子には、駆動信号φ2が与えられる。
【0062】
キャパシタC43の第2端子は、スイッチS33のゲートに接続されている。また、キャパシタC43の第2端子は、スイッチS43のドレインおよびスイッチS44のゲートにも接続されている。キャパシタC44の第2端子は、スイッチS32のゲートに接続されている。また、キャパシタC44の第2端子は、スイッチS44のドレインおよびスイッチS43のゲートにも接続されている。スイッチS43、S44の各ソースは、共通接続されているとともに、入力ノードNimに接続されている。
【0063】
上記構成に容量駆動部33、34によれば、入力ノードNip、NimとキャパシタCs1、Cs2との間に設けられたチョッピング回路32のスイッチS31~S34のゲートを、次のように容量カップルで駆動することができる。すなわち、入力電圧VINP、VINMのコモンモード電圧が上昇した場合、スイッチS41~S44を介してキャパシタC41~C44がチャージされる。
【0064】
容量駆動部33、34は、駆動信号φ1、φ2がゲートオンに対応するレベルになるタイミングで容量のスイッチとは異なる側を駆動し、チョッピング回路32のスイッチS31~S34のゲートを下記の電圧としてスイッチS31~S34をオンすることができる。
スイッチS31、S34:入力電圧VINPのコモンモード電圧-駆動電圧
スイッチS32、S34:入力電圧VINMのコモンモード電圧+駆動電圧
【0065】
容量駆動部33、34は、l駆動信号φ1、φ2がゲートオフに対応するレベルになると、スイッチS31~S34のゲートを入力電圧VINP、VINMのコモンモード電圧と同じ電位としてスイッチS31~S34をオフすることができる。上記構成によれば、入力電圧VINP、VINMのコモンモード電圧が回路の電源電圧より高い場合でも、チョッピング回路32を構成するスイッチS31~S34をオンオフすることができる。
【0066】
以上説明した本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果が得られるうえ、さらに次のような効果が得られる。すなわち、本実施形態のSCアンプ31は、コモンモードノイズが多くなると考えられる電池監視ICの一部を構成するが、そのコモン電位VCMINがコモン電位VCMOよりも低い電位に設定されている。このような構成によれば、オペアンプ2の入力端子に接続されるスイッチS1、S4を構成するMOSトランジスタのオン抵抗を下げることができる。
【0067】
オペアンプ2の入力端子に接続されるスイッチのサイズを大きくすることは、SCアンプ31の帰還係数の低下、ひいはてSCアンプ31の出力の精度の悪化に繋がる。これに対し、本実施形態の構成によれば、スイッチS1、S4のオン抵抗が下がるため、それらスイッチS1、S4の小型化を図ることが可能となり、その結果、オペアンプ2のCMRRが向上して出力の精度を一層高めることができる。なお、CMRRは、Common Mode Rejection Ratioの略称である。
【0068】
(その他の実施形態)
なお、本発明は上記し且つ図面に記載した各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で任意に変形、組み合わせ、あるいは拡張することができる。
上記各実施形態で示した数値などは例示であり、それに限定されるものではない。
【0069】
キャパシタCs1、Cs2の第2端子側のコモン電位は、コモン電位VCMINに限らずともよく、例えばコモン電位VCMOなど、他の電位とすることができる。キャパシタCd1、Cd2の第2端子側のコモン電位は、コモン電位VCMINに限らずともよく、例えばコモン電位VCMOなど、他の電位とすることができる。
オペアンプ2の具体的な構成は、上記各実施形態において説明した構成例に限らずともよく、同様の機能を実現できるものであれば適宜変更することができる。
【0070】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0071】
本開示は、特許請求の範囲に記載の発明に加え、以下のような発明を含む。
[1]
一対の入力ノード(Nip、Nim)および一対の出力ノード(Nop、Nom)を備えた全差動構成のスイッチトキャパシタアンプであって、
差動出力形式のオペアンプ(2、2A、2B)と、
第1端子および第2端子を備え、前記第1端子が前記オペアンプの入力端子に接続される一対のサンプリング容量(Cs1、Cs2)と、
前記オペアンプの入力端子と出力端子との間に接続される一対のフィードバック容量(Cf1、Cf2)と、
第1端子および第2端子を備え、D/A変換器から出力されるDAC電圧に応じた電荷を蓄積することができるとともに前記第1端子が前記オペアンプの入力端子に接続される一対のDAC容量(Cd1、Cd2)と、
前記オペアンプの出力電圧の同相レベルを制御するコモンモードフィードバック回路(3)と、
を備え、
前記一対の入力ノードを介して与えられる入力電圧を前記一対のサンプリング容量によりサンプリングし、前記一対のフィードバック容量を介して前記サンプリングされた電荷を転送することにより前記オペアンプの出力端子から前記入力電圧を増幅した出力電圧を出力し、
前記オペアンプの入力のコモン電位は、第1コモン電位であり、
前記オペアンプの出力のコモン電位および前記コモンモードフィードバック回路のバイアスのコモン電位は、前記第1コモン電位とは異なる回路により生成される第2コモン電位であるスイッチトキャパシタアンプ。
[2]
前記一対のサンプリング容量の前記第2端子側のコモン電位および前記一対のDAC容量の前記第2端子側のコモン電位のうち少なくとも一方は、前記第2コモン電位である[1]に記載のスイッチトキャパシタアンプ。
[3]
前記第1コモン電位は、前記第2コモン電位より低い電位に設定される請求項[1]または[2]に記載のスイッチトキャパシタアンプ。
[4]
前記オペアンプ(2A)は、入力段にNチャネル型MOSトランジスタ(M7、M8)が設けられたテレスコピックアンプとして構成されている[3]に記載のスイッチトキャパシタアンプ。
[5]
ΔΣ型A/D変換器における積分器(24)に用いられる[1]から[4]のいずれか一項に記載のスイッチトキャパシタアンプ。
[6]
さらに、前記一対の入力ノードと前記一対のサンプリング容量との間に接続されるチョッピング回路(32)を備え、
前記チョッピング回路を構成する複数のスイッチ(S31~S34)は、MOSトランジスタにより構成されている[1]から[5]のいずれか一項に記載のスイッチトキャパシタアンプ。
[7]
さらに、前記複数のスイッチを、キャパシタ(C41~C44)を介して駆動する容量駆動部(33、34)を備えている[6]に記載のスイッチトキャパシタアンプ。
[8]
前記一対の入力ノードは、組電池を構成する各電池セルの端子に接続可能になっており、
前記各電池セルに重畳される相対的に高いコモンモード電圧を相対的に低いコモンモード電圧まで降圧させるレベルシフト回路に用いられる[1]から[7]のいずれか一項に記載のスイッチトキャパシタアンプ。
[9]
前記第1コモン電位は、前記第2コモン電位より高い電位に設定される[1]または[2]に記載のスイッチトキャパシタアンプ。
[10]
前記オペアンプ(2B)は、入力段にPチャネル型MOSトランジスタ(M17、M18)が設けられたテレスコピックアンプとして構成されている[9]に記載のスイッチトキャパシタアンプ。
【符号の説明】
【0072】
1、21、31…スイッチトキャパシタアンプ、2、2A、2B…オペアンプ、3…コモンモードフィードバック回路、24…積分器、32…チョッピング回路、33、34…容量駆動部、Cd1、Cd2…キャパシタ、Cf1、Cf2…キャパシタ、Cs1、Cs2…キャパシタ、C41~C44…キャパシタ、M7、M8…トランジスタ、M17、M18…トランジスタ、Nip、Nim…入力ノード、Nop、Nom…出力ノード、S31~S34…スイッチ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9