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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147265
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】オイル流通構造
(51)【国際特許分類】
   F01M 11/00 20060101AFI20241008BHJP
   F01M 5/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
F01M11/00 J
F01M11/00 S
F01M11/00 G
F01M11/00 M
F01M5/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060172
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 昌幸
【テーマコード(参考)】
3G015
3G313
【Fターム(参考)】
3G015BB07
3G015BB13
3G015BC01
3G015BC03
3G015CA07
3G015DA05
3G015DA10
3G015FB05
3G313AB16
3G313BB14
3G313DA08
3G313DA14
(57)【要約】
【課題】オイルの劣化を抑制できるオイル流通構造を提供する。
【解決手段】サブタンク40は、エンジンに設けられたオイルパンと離れて配置されている。第1連通管50および第2連通管60は、オイルパンとサブタンク40とを連通している。サブタンク40は、上下方向に延びる仕切壁42A,42B,42Cを内部に有している。仕切壁42A,42B,42Cは、サブタンク40内を複数の流路に仕切っている。仕切壁42A,42B,42Cによって仕切られた2つの流路のうちの上流側の流路の下流端と下流側の流路の上流端とが連通されている。第1連通管50は、最上流側の流路42Aに連通している。第2連通管60は、最下流側の流路42Dに連通している。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンに設けられたオイルパンと、
前記オイルパンと離れて配置されたサブタンクと、
前記オイルパンと前記サブタンクとを連通し、前記オイルパンから前記サブタンクへ向かうオイルの流路となる、第1連通管と、
前記オイルパンと前記サブタンクとを連通し、前記サブタンクから前記オイルパンへ向かうオイルの流路となる、第2連通管と、を備え、
前記サブタンクは、上下方向に延びる仕切壁を内部に有し、
前記仕切壁は、前記サブタンク内を複数の流路に仕切り、前記仕切壁によって仕切られた2つの前記流路のうちの上流側の前記流路の下流端と下流側の前記流路の上流端とが連通されており、
前記第1連通管は、最上流側の前記流路に連通しており、
前記第2連通管は、最下流側の前記流路に連通している、オイル流通構造。
【請求項2】
前記オイルパン内のオイルを吸い上げるオイルポンプをさらに備え、
前記第2連通管は、前記オイルポンプの吸込口に向いて開口している、請求項1に記載のオイル流通構造。
【請求項3】
前記サブタンクは、前記オイルを冷却するオイル冷却構造を有する、請求項1または請求項2に記載のオイル流通構造。
【請求項4】
前記仕切壁が前記オイル冷却構造を有する、請求項3に記載のオイル流通構造。
【請求項5】
前記オイルと熱交換する冷媒が前記仕切壁の内部を流れる、請求項4に記載のオイル流通構造。
【請求項6】
前記サブタンク内の最上流側の前記流路に配置され、前記第1連通管から流出するオイルが通過する、オイルフィルタをさらに備える、請求項1または請求項2に記載のオイル流通構造。
【請求項7】
前記第2連通管は、前記第1連通管が前記サブタンクに接続される位置よりも低い位置で前記サブタンクに接続されている、請求項1または請求項2に記載のオイル流通構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、オイル流通構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2016-75257号公報(特許文献1)には、エンジンのオイルパン内のエンジンオイルをサブオイルタンクに循環させて冷却するエンジンオイル冷却構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-75257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献に記載の構造では、サブオイルタンクは、タンクハウジング内の下部にオイルを貯留するための貯留空間を備え、貯留空間に連通する部位に出口ポートが設けられている。貯留空間内でエンジンオイルの滞留が発生すると、滞留したオイルがエンジン潤滑に使われなくなる。エンジン潤滑に使われるオイルの量が減少する分、オイルの劣化が早まることがある。
【0005】
本開示では、オイルの劣化を抑制できる、オイル流通構造が提案される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従うと、エンジンと、エンジンに設けられたオイルパンと、オイルパンと離れて配置されたサブタンクと、オイルパンとサブタンクとを連通し、オイルパンからサブタンクへ向かうオイルの流路となる、第1連通管と、オイルパンとサブタンクとを連通し、サブタンクからオイルパンへ向かうオイルの流路となる、第2連通管と、を備える、オイル流通構造が提案される。サブタンクは、上下方向に延びる仕切壁を内部に有している。仕切壁は、サブタンク内を複数の流路に仕切っている。仕切壁によって仕切られた2つの流路のうちの上流側の流路の下流端と下流側の流路の上流端とが連通されている。第1連通管は、最上流側の流路に連通している。第2連通管は、最下流側の流路に連通している。
【0007】
このオイル流通構造においては、サブタンク内に一方通行のオイルの流れが形成され、サブタンク内でのオイルの滞留が抑制されているので、サブタンク内のオイルの全量をエンジンの潤滑に使用することができる。エンジンの潤滑に使われるオイルの量を増加することができるので、オイルの劣化を抑制することができる。
【0008】
上記のオイル流通構造は、オイルパン内のオイルを吸い上げるオイルポンプをさらに備え、第2連通管は、オイルポンプの吸込口に向いて開口していてもよい。このような構成により、オイルパンとサブタンクとを繋ぐオイルの経路にポンプなどの動力源を設けなくても、オイルを循環させることができる。
【0009】
上記のオイル流通構造において、サブタンクは、オイルを冷却するオイル冷却構造を有してもよい。サブタンクにおいてオイルを冷却できるので、オイルの熱劣化が抑制され、オイルの交換頻度を下げることができる。
【0010】
上記のオイル流通構造において、仕切壁がオイル冷却構造を有してもよい。サブタンクの表面に放熱フィンを設けなくてもオイルの冷却性能を確保でき、サブタンクの大型化を抑制することができる。
【0011】
上記のオイル流通構造において、オイルと熱交換する冷媒が仕切壁の内部を流れてもよい。このような構成により、オイルから冷媒への放熱によってオイルを確実に冷却することができる。
【0012】
上記のオイル流通構造は、サブタンク内の最上流側の流路に配置され、第1連通管から流出するオイルが通過する、オイルフィルタをさらに備えてもよい。これによりオイルの劣化が抑制されるので、オイルを長寿命化でき、オイルの交換頻度を下げることができる。
【0013】
上記のオイル流通構造において、第2連通管は、第1連通管がサブタンクに接続される位置よりも低い位置でサブタンクに接続されていてもよい。このような構成により、より温度の低いオイルをオイルパンへ流すことができ、エンジンの冷却性能を向上することができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示に従ったオイル流通構造によると、オイルの劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態に従ったオイル流通構造の全体構成を模式的に示す図である。
図2図1に示されるサブタンクの斜視図である。
図3】サブタンク内の構造を示す上面視した図である。
図4】第2実施形態のサブタンクの斜視図である。
図5】第2実施形態のサブタンク内の構造を示す上面視した図である。
図6図5におけるVI-VI線に沿うサブタンクの断面図である。
図7】第3実施形態のサブタンクの断面図である。
図8】シャッタを開いた状態の、第3実施形態のサブタンクの断面図である。
図9】第4実施形態のサブタンクの断面図である。
図10】第5実施形態のサブタンク内の構造を示す上面視した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施形態について図に基づいて説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、これらについての詳細な説明は繰り返さない。実施形態から任意の構成が抽出され、それらが任意に組み合わされることも、当初から予定されている。
【0017】
[第1実施形態]
図1は、実施形態に従ったオイル流通構造1の全体構成を模式的に示す図である。オイル流通構造1は、エンジン10と、オイルパン20と、サブタンク40と、第1連通管50と、第2連通管60とを主に備えている。
【0018】
エンジン10は、都市ガス、LPG(Liquefied Petroleum Gas)などの気体燃料を用いて作動する。エンジン10は、たとえば、空調設備などに用いられるガスヒートポンプの動力源として用いられる。エンジン10のハウジングの下部に、オイルパン20が設けられている。オイルパン20内に、エンジン10を潤滑するためのエンジンオイルOLが溜められる。
【0019】
エンジン10のハウジングの内部に、オイルポンプ30が配置されている。オイルポンプ30は、オイルパン20内のエンジンオイルOLを吸い上げる。オイルポンプ30は、吸い上げたエンジンオイルOLをエンジン10に供給して、エンジン10を潤滑する。図1および後続の図に示される破線矢印は、オイル流通構造1におけるエンジンオイルOLの流れを示す。
【0020】
オイルポンプ30に、吸込管31が接続されている。吸込管31はオイルポンプ30の下方に配置されており、上下方向に延びている。吸込管31の上端が、オイルポンプ30に接続されている。吸込管31の下端は開口しており、その開口が吸込口32を形成している。オイルパン20内のエンジンオイルOLは、吸込口32を経由して吸込管31内に吸い込まれて、オイルポンプ30に供給される。オイルパン20の底面22には、底面22の一部が窪んだ凹部23が形成されている。吸込口32は、凹部23に向いて開口している。
【0021】
サブタンク40は、オイルパン20と離れて配置されている。オイルパン20とサブタンク40とは、第1連通管50および第2連通管60によって連通されている。圧力調節管26は、エンジン10とサブタンク40の上部の気相部とを繋ぎ、エンジン10の内部とサブタンク40内の気相部とを連通している。エンジン10の内部の気体の圧力とサブタンク40内の気相部の気体の圧力とが調節されるので、オイルパン20内のエンジンオイルOLの液面とサブタンク40内のエンジンオイルOLの液面との高さが合わせられている。
【0022】
第1連通管50は、流入口51と流出口52とを有している。流入口51は、オイルパン20内に開口している。流出口52は、サブタンク40内に開口している。流入口51を通って、オイルパン20内のエンジンオイルOLが第1連通管50へ流入する。流出口52を通って、第1連通管50からサブタンク40へエンジンオイルOLが流出する。第1連通管50は、オイルパン20からサブタンク40へ向かうエンジンオイルOLの流路を形成している。
【0023】
オイルパン20内に、バッフルプレート21が配置されている。バッフルプレート21は、オイルパン20の内部空間を上下に区画している。エンジン10からオイルパン20へ落下する高温のエンジンオイルOLは、バッフルプレート21の上面に沿って、オイルパン20内を一方方向(図1においては右方向)へ流れる。第1連通管50の流入口51は、バッフルプレート21に沿うエンジンオイルOLの流れの下流端付近において開口している。バッフルプレート21は、エンジン10において熱を受けて温度上昇したエンジンオイルOLを第1連通管50へ導いている。バッフルプレート21は、高温のエンジンオイルOLが、第1連通管50に流入して第1連通管50を経由してサブタンク40へ流れることを、促進している。
【0024】
第2連通管60は、流入口61と流出口62とを有している。流入口61は、サブタンク40内に開口している。流出口62は、オイルパン20内に開口している。流入口61を通って、サブタンク40内のエンジンオイルOLが第2連通管60へ流入する。流出口62を通って、第2連通管60からオイルパン20へエンジンオイルOLが流出する。第2連通管60は、サブタンク40からオイルパン20へ向かうエンジンオイルOLの流路を形成している。
【0025】
第2連通管60は、オイルパン20の底面22を貫通している。第2連通管60は、底面22に形成されている凹部23を貫通している。第2連通管60の流出口62は、オイルポンプ30に接続されている吸込管31の下端の吸込口32に向いて開口している。図1に示されるように、第2連通管60は、流出口62において拡径していてもよい。吸込管31の吸込口32は、第2連通管60の流出口62よりも開口面積が大きくてもよい。
【0026】
オイルポンプ30の吸込口32の手前に第2連通管60を接続することで、オイルポンプ30の吸引力によって、サブタンク40からオイルパン20へエンジンオイルOLが流れる。これにより、オイルパン20とサブタンク40とを繋ぐエンジンオイルOLの経路にポンプなどの動力源を設けなくても、オイルパン20とサブタンク40との間をエンジンオイルOLが循環できる構造とされている。
【0027】
オイルパン20に、温度センサ91が設けられている。温度センサ91は、オイルパン20内のエンジンオイルOLの温度を検出する。温度トランスミッタ93は、温度センサ91の検出した油温を示す電気信号である検出信号T1を、コントローラー80に送信する。サブタンク40内に、温度センサ92が設けられている。温度センサ92は、サブタンク40内のエンジンオイルOLの温度を検出する。温度トランスミッタ94は、温度センサ92の検出した油温を示す電気信号である検出信号T2を、コントローラー80に送信する。
【0028】
第2連通管60には、制御バルブ68が設けられている。コントローラー80は、制御バルブ68へ制御信号V1を送信して、制御バルブ68の開度を制御する。コントローラー80は、オイルパン20内のエンジンオイルOLの温度とサブタンク40内のエンジンオイルOLの温度とに基づいて、オイルパン20とサブタンク40とを循環するエンジンオイルOLの流量を制御する。
【0029】
図2は、図1に示されるサブタンク40の斜視図である。図2に示されるように、サブタンク40は、側面41を有している。側面41は、上縁41Aと下縁41Bとを有している。第1連通管50は、上縁41Aの近傍において、サブタンク40の側面41に接続されている。第2連通管60は、下縁41Bの近傍において、サブタンク40の側面41に接続されている。
【0030】
第2連通管60は、第1連通管50がサブタンク40に接続される位置よりも低い位置で、サブタンク40に接続されている。第1連通管50は、第2連通管60よりもサブタンク40内のエンジンオイルOLの液面に近く配置されている。第1連通管50は、第2連通管60よりもサブタンク40の天井面に近く配置されている。第2連通管60は、第1連通管50よりもサブタンク40の底面に近く配置されている。
【0031】
サブタンク40は、上下方向に延びる仕切壁42A,42B,42Cを内部に有している。仕切壁42A,42B,42Cは、サブタンク40内を複数のエンジンオイルOLの流路に仕切っている。
【0032】
図3は、サブタンク40内の構造を示す上面視した図である。仕切壁42Aは、流路43Aと流路43Bとを仕切っている。仕切壁42Aによって仕切られた流路43A,43Bのうちの上流側の流路43Aの下流端と、下流側の流路43Bの上流端とが、連通部44Aにおいて連通されている。仕切壁42Bは、流路43Bと流路43Cとを仕切っている。仕切壁42Bによって仕切られた流路43B,43Cのうちの上流側の流路43Bの下流端と、下流側の流路43Cの上流端とが、連通部44Bにおいて連通されている。仕切壁42Cは、流路43Cと流路43Dとを仕切っている。仕切壁42Cによって仕切られた流路43C,43Dのうちの上流側の流路43Cの下流端と、下流側の流路43Dの上流端とが、連通部44Cにおいて連通されている。
【0033】
第1連通管50からサブタンク40に流出するエンジンオイルOLは、流路43A、流路43B、流路43C、流路43Dを順に経由して流れて、第2連通管60に流入する。サブタンク40内のエンジンオイルOLの流れ方向における上流側から下流側へ向かって順に、流路43A、流路43B、流路43C、流路43Dが設けられている。流路43Aが最上流側の流路であり、流路43Dが最下流側の流路である。第1連通管50は、最上流側の流路である流路43Aの上流端部に連通している。第2連通管60は、最下流側の流路である流路43Dの下流端部に連通している。
【0034】
図2,3に示されるように、上下方向に延びる仕切壁42A,42B,42Cがサブタンク40の内部を複数の流路43A~43Dに仕切り、サブタンク40内に、流路43A、流路43B、流路43C、流路43Dを順に流れるエンジンオイルOLの流れが形成されている。サブタンク40へ流入するエンジンオイルOLの流路となる第1連通管50は、最上流側の流路43Aに連通している。サブタンク40から流出するエンジンオイルOLの流路となる第2連通管60は、最下流側の流路43Dに連通している。
【0035】
図3中の破線矢印で示されるように、エンジンオイルOLは、第1連通管50からサブタンク40内の流路43Aへ流入する。エンジンオイルOLは、流路43Aを図中の右方向に流れ、連通部44Aを通って流路43Bに入り、流路43Bを図中の左方向に流れ、連通部44Bを通って流路43Cに入り、流路43Cを図中の右方向に流れ、連通部44Cを通って流路43Dに入り、流路43Dを図中の左方向に流れる。エンジンオイルOLは、サブタンク40内の流路43Dから第2連通管60へ流出する。
【0036】
サブタンク40内に、第1連通管50から第2連通管60へ至る、エンジンオイルOLの長い経路が形成されている。サブタンク40内のエンジンオイルOLの経路は、ラビリンス構造により形成されている。
【0037】
サブタンク40内に一方通行のエンジンオイルOLの流れが形成されることで、サブタンク40内でのエンジンオイルOLの滞留が抑制されている。サブタンク40内のエンジンオイルOLの全量をエンジン10の潤滑に使用することができ、エンジン10の潤滑に使われるエンジンオイルOLの量を増加することができるので、エンジンオイルOLの劣化を抑制することができる。したがって、エンジンオイルOLの交換頻度を下げることができ、メンテナンス性に優れたオイル流通構造1を実現することができる。
【0038】
図1に示されるように、第2連通管60は、オイルパン20内のエンジンオイルOLを吸い上げるオイルポンプ30の吸込口32に向いて開口している。オイルパン20とサブタンク40とを繋ぐエンジンオイルOLの経路にポンプなどの動力源を設けなくても、エンジンオイルOLを循環させることができる。これにより、オイル流通構造1の構成を簡略化でき、コストを低減できる。
【0039】
図2に示されるように、第2連通管60は、第1連通管50がサブタンク40に接続される位置よりも低い位置で、サブタンク40に接続されている。サブタンク40内で冷却されて温度が低下したエンジンオイルOLは、比重が大きくなる。サブタンク40の上下方向においては、上側のエンジンオイルOLよりも下側のエンジンオイルOLの方が、温度が低い。第2連通管60を低い位置に接続することにより、より温度の低いエンジンオイルOLをオイルパン20へ流すことができる。したがって、エンジン10の冷却性能を向上することができる。
【0040】
[第2実施形態]
図4は、第2実施形態のサブタンク40の斜視図である。図5は、第2実施形態のサブタンク40内の構造を示す上面視した図である。図6は、図5におけるVI-VI線に沿うサブタンク40の断面図である。以降の実施形態の説明では、既に説明した実施形態と同じ構成については説明を省略し、各実施形態特有の構成に着目して説明する。
【0041】
第2実施形態のサブタンク40は、エンジンオイルOLを冷却するオイル冷却構造70を有している。具体的に、サブタンク40の内部の仕切壁42A,42B,42Cがオイル冷却構造70を有している。各仕切壁42A,42B,42Cは、中空部71を有している。中空部71は、上端および下端が開口している。中空部71は、上下方向に貫通している中空の空間である。冷媒が仕切壁42A,42B,42Cの内部の中空部71を流れることで、エンジンオイルOLと冷媒とが熱交換する。エンジンオイルOLから冷媒へ熱が伝達されることにより、エンジンオイルOLが冷却される。冷媒は、たとえば空気である。空気は、外気であってもよい。
【0042】
中空部71内に、冷却フィン72が設けられている。冷却フィン72は、エンジンオイルOLと冷媒との熱交換を促進する。冷却フィン72によって、エンジンオイルOLの冷却がより効率よく行なわれる。
【0043】
図6では簡略化のため、冷却フィン72は図示を省略されている。中空部71内で冷媒がエンジンオイルOLから熱を受けて、冷媒が温められる。温められた冷媒は上昇するため、図6中の二点鎖線矢印に示されるように、下から上へ向かう冷媒の流れが発生する。温度が高くなった冷媒は中空部71の上端の開口部から流出し、中空部71の下端の開口部から新たな冷媒が中空部71へ流入する。このようにして、エンジンオイルOLと冷媒との熱交換が継続する構造とされている。
【0044】
以上説明した第2実施形態のオイル流通構造1によると、サブタンク40においてエンジンオイルOLを冷却することができる。エンジンオイルOLの熱劣化が抑制されるので、エンジンオイルOLの交換頻度を下げることができる。エンジンオイルOLを冷却するための水冷式熱交換器をエンジン10に設けなくてもよくなり、熱交換器の本体および水配管などが不要になるので、エンジン10の大型化を抑制でき、エンジン10のコストを低減できる。
【0045】
サブタンク40の内部の仕切壁42A,42B,42Cがオイル冷却構造70を有するので、サブタンク40の表面に放熱フィンを設けなくてもエンジンオイルOLを効率的に冷却できる。エンジンオイルOLの冷却性能を確保でき、サブタンク40の大型化を抑制することができる。サブタンク40の構成を簡略化でき、コストを低減できる。
【0046】
仕切壁42A,42B,42Cに中空部71を形成し、冷媒が仕切壁42A,42B,42Cの内部を流れる構成とすることで、エンジンオイルOLから冷媒への放熱によってエンジンオイルOLを確実に冷却することができる。
【0047】
中空部71に流す冷媒を気体にすることで、上述した通り冷媒の温度上昇によって自然に冷媒の流れが発生するので好ましいが、冷媒は冷却水などの液体であってもよい。ポンプなどの動力源を設けることにより、中空部71内に液冷媒の流れを発生させ、エンジンオイルOLと冷媒との熱交換を継続させて、エンジンオイルOLを効率的に冷却することができる。
【0048】
[第3実施形態]
図7は、第3実施形態のサブタンク40の断面図である。第3実施形態のサブタンク40は、仕切壁42A,42B,42Cに形成されている中空部71の下側に、シャッタ73を有している。シャッタ73は、図1に示されるコントローラー80が送信する制御信号に従って、開閉可能に構成されている。図7に示されるシャッタ73は閉じた状態であり、中空部71を下方から覆っている。閉状態のシャッタ73が、中空部71の下端の開口部から冷媒が中空部71に流入することを、妨げている。
【0049】
図8は、シャッタ73を開いた状態の、第3実施形態のサブタンク40の断面図である。シャッタ73が移動することにより、中空部71の下端の開口部が露出する。この状態で、図6と同様に、図8中に二点鎖線矢印で示される下から上へ向かう冷媒の流れを形成できる。
【0050】
エンジンオイルOLの冷却が不要なときはシャッタ73を閉じ、エンジンオイルOLの冷却が必要なときにシャッタ73を開けることができる。このようにして、サブタンク40におけるエンジンオイルOLの冷却を、適切に制御することができる。
【0051】
[第4実施形態]
図9は、第4実施形態のサブタンク40の断面図である。第4実施形態のサブタンク40は、シャッタ73の下方に、さらに冷却ファン74を有している。図9に示されるように、シャッタ73を開いた状態で冷却ファン74を駆動することにより、中空部71に強制的に冷媒(空気)を流して、エンジンオイルOLを冷却することができる。冷却ファン74によって、サブタンク40におけるエンジンオイルOLの冷却性能をさらに向上することができる。より冷却されたエンジンオイルOLをオイルパン20に戻して、エンジン10をより効率的に冷却することができる。
【0052】
図9では、中空部71の下方に押込通風方式の冷却ファン74が配置される例が示されている。この例に限られず、中空部71の上方に誘引通風方式の冷却ファンが配置されてもよい。
【0053】
[第5実施形態]
図10は、第5実施形態のサブタンク40内の構造を示す上面視した図である。第5実施形態のサブタンク40は、オイルフィルタ45をさらに有している。オイルフィルタ45は、サブタンク40内の複数の流路43A~43Dのうちの最上流側の流路である流路43Aに配置されている。オイルフィルタ45は、第1連通管50の流出口52の直ぐ下流側に配置されている。
【0054】
第1連通管50から流出して流路43Aを流れるエンジンオイルOLの全量がオイルフィルタ45を通過するように、オイルフィルタ45は設けられている。オイルフィルタ45は、サブタンク40の壁面から仕切壁42Aに亘って設置され、サブタンク40の底面からエンジンオイルOLの液面よりも高い位置に亘って設置されている。
【0055】
オイルフィルタ45は、オイルフィルタ45を通過するエンジンオイルOLを濾過して、スラッジ、金属粉などの異物をエンジンオイルOLから除去する。これによりエンジンオイルOLの劣化が抑制されるので、エンジンオイルOLを長寿命化でき、エンジンオイルOLの交換頻度を下げることができる。
【0056】
サブタンク40内に一方通行のエンジンオイルOLの流れが形成されることにより、サブタンク40内の流路43Aに、大型のオイルフィルタ45を設置することが可能である。大型のオイルフィルタ45は、異物の捕集能力に優れるとともに、通過するエンジンオイルOLの圧力損失を低減できる。エンジン10側の油圧経路にオイルフィルタを設ける場合と比較して、エンジンオイルOL圧送の仕事量の増加を抑制することができる。
【0057】
これまでの実施形態の説明においては、サブタンク40が3つの仕切壁42A,42B,42Cを内部に有し、サブタンク40内が4つの流路43A,43B,43C,43Dに仕切られる例を説明した。サブタンク40が有する仕切壁の数は、3つに限定されず、2つ以下であってもよく、4つ以上であってもよい。サブタンク40内の流路の数は、4つに限定されず、3つ以下であってもよく、5つ以上であってもよい。仕切壁の数が奇数であれば、図2に示されるように、サブタンク40の同一の側面41に第1連通管50と第2連通管60との両方を接続できるので望ましいが、仕切壁の数は偶数であっても構わない。
【0058】
[付記]
以上の説明は、以下に付記する特徴を含む。
【0059】
(付記1)
エンジンと、
前記エンジンに設けられたオイルパンと、
前記オイルパンと離れて配置されたサブタンクと、
前記オイルパンと前記サブタンクとを連通し、前記オイルパンから前記サブタンクへ向かうオイルの流路となる、第1連通管と、
前記オイルパンと前記サブタンクとを連通し、前記サブタンクから前記オイルパンへ向かうオイルの流路となる、第2連通管と、を備え、
前記サブタンクは、上下方向に延びる仕切壁を内部に有し、
前記仕切壁は、前記サブタンク内を複数の流路に仕切り、前記仕切壁によって仕切られた2つの前記流路のうちの上流側の前記流路の下流端と下流側の前記流路の上流端とが連通されており、
前記第1連通管は、最上流側の前記流路に連通しており、
前記第2連通管は、最下流側の前記流路に連通している、オイル流通構造。
【0060】
(付記2)
前記オイルパン内のオイルを吸い上げるオイルポンプをさらに備え、
前記第2連通管は、前記オイルポンプの吸込口に向いて開口している、付記1に記載のオイル流通構造。
【0061】
(付記3)
前記サブタンクは、前記オイルを冷却するオイル冷却構造を有する、付記1または付記2に記載のオイル流通構造。
【0062】
(付記4)
前記仕切壁が前記オイル冷却構造を有する、付記3に記載のオイル流通構造。
【0063】
(付記5)
前記オイルと熱交換する冷媒が前記仕切壁の内部を流れる、付記4に記載のオイル流通構造。
【0064】
(付記6)
前記サブタンク内の最上流側の前記流路に配置され、前記第1連通管から流出するオイルが通過する、オイルフィルタをさらに備える、付記1から付記5のいずれか1つに記載のオイル流通構造。
【0065】
(付記7)
前記第2連通管は、前記第1連通管が前記サブタンクに接続される位置よりも低い位置で前記サブタンクに接続されている、付記1から付記6のいずれか1つに記載のオイル流通構造。
【0066】
以上のように実施形態について説明を行なったが、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0067】
1 オイル流通構造、10 エンジン、20 オイルパン、21 バッフルプレート、22 底面、23 凹部、26 圧力調節管、30 オイルポンプ、31 吸込管、32 吸込口、40 サブタンク、41 側面、41A 上縁、41B 下縁、42A~42C 仕切壁、43A~43D 流路、44A~44C 連通部、45 オイルフィルタ、50 第1連通管、51,61 流入口、52,62 流出口、60 第2連通管、68 制御バルブ、70 オイル冷却構造、71 中空部、72 冷却フィン、73 シャッタ、74 冷却ファン、80 コントローラー、91,92 温度センサ、93,94 温度トランスミッタ、OL エンジンオイル、T1,T2 検出信号、V1 制御信号。
図1
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図10