(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147266
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】無停電電源システム
(51)【国際特許分類】
H02J 9/06 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
H02J9/06 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060175
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】五嶋 千賀哉
(72)【発明者】
【氏名】川出 大佑
(72)【発明者】
【氏名】高橋 栄也
(72)【発明者】
【氏名】武田 翔
【テーマコード(参考)】
5G015
【Fターム(参考)】
5G015FA06
5G015FA18
5G015GB01
5G015JA27
(57)【要約】
【課題】無停電電源装置の運転を継続したまま、冷却ファンを交換できる無停電電源システムを提供する。
【解決手段】実施形態の無停電電源システムによれば、インバータと、無停電電源装置を冷却する冷却ファン、及びこの冷却ファンを駆動するモータからなるファンユニットの複数に対して、前記インバータから同時に給電可能な給電部とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インバータと、
無停電電源装置を冷却する冷却ファン、及びこの冷却ファンを駆動するモータからなるファンユニットの複数に対して、前記インバータから同時に給電可能な給電部と
を備える無停電電源システム。
【請求項2】
前記給電部は、前記無停電電源装置の上部に配置され、前記ファンユニットを、前記無停電電源装置の接地面を基準とする高さ方向に、少なくとも2つ並べて配置する構成である請求項1記載の無停電電源システム。
【請求項3】
複数の前記ファンユニットを内部に収容する収容部を備え、
前記収容部は、前記複数のファンユニットの間を仕切る仕切り部材を着脱可能な構成である請求項2記載の無停電電源システム。
【請求項4】
前記収容部は、側面に少なくとも1つの前記ファンユニットを出し入れ可能な開口部を備える請求項3記載の無停電電源システム。
【請求項5】
前記給電部は、前記ファンユニットそれぞれへの給電経路にヒューズを備える請求項1から4の何れか一項に記載の無停電電源システム。
【請求項6】
前記給電部は、前記ファンユニットそれぞれへの給電経路に、各ファンユニットを電気的に接続するためのコネクタを備える請求項1から4の何れか一項に記載の無停電電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、無停電電源装置を冷却するファンを備える無停電電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
無停電電源装置は、整流装置であるコンバータやインバータ等を内蔵しているため、運用時に熱が発生する。この熱による装置の故障を防止するため、一般には、盤の背面又は盤の平面に冷却ファンが取り付けられる。また、一般的な無停電電源装置の耐用年数は15年程度であり、冷却ファンの耐用年数は8年程度であるため、無停電電源装置の運用期間中に冷却ファンの交換作業が必要となる。
【0003】
交換作業時において、無停電電源装置を停止させ、負荷への給電を一時的に停止させることを回避する技術として、例えば特許文献1には、以下のような交換技術が開示されている。冷却ファンの交換時には、保守用バイパス回路として負荷に商用交流電源を直接給電する経路に切り替え、冷却ファンに接続されているスイッチを開放することで、冷却ファンをシステムから解列して交換する。交換した後、冷却ファンに接続されているスイッチを投入してシステムへ復帰させる。負荷に直送で給電する保守用バイパス回路は、その経路にコンバータ及びインバータを含まないのでこれらを冷却する必要が無く、負荷への給電を継続したままで冷却ファンの交換を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の従来技術では、ファン交換時に負荷給電を継続させることが可能だが、コンバータ及びインバータの運転が停止するため、その停止期間中における給電の信頼性を保証することができない。加えて、ファンの交換後にインバータへの給電を復帰させる際に、電源周波数の同期処理等が必要となり、制御が複雑になってしまう。
そこで、無停電電源装置の運転を継続したまま、冷却ファンを交換できる無停電電源システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の無停電電源システムによれば、
インバータと、
無停電電源装置を冷却する冷却ファン、及びこの冷却ファンを駆動するモータからなるファンユニットの複数に対して、前記インバータから同時に給電可能な給電部とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態であり、無停電電源システムの構成を、一部を透過させた状態で示す斜視図
【
図4】ファンユニットの交換手順を概略的に示すフロー図
【
図5】第2実施形態であり、無停電電源システムの構成を、一部を透過させた状態で示す斜視図
【
図6】第3実施形態であり、無停電電源システムの構成を、一部を透過させた状態で示す斜視図
【
図7】第4実施形態であり、無停電電源システムの構成を、一部を透過させた状態で示す斜視図
【
図8】第5実施形態であり、無停電電源システムの構成を、一部を透過させた状態で示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1実施形態)
図1及び
図2に示すように、本実施形態の無停電電源システムは、内部に無停電電源装置の本体を収容している筐体1の上部に、2つのファンユニット2(1)及び2(2)を図中の上下方向に、すなわち筐体1の接地面を基準とする高さ方向に並べるように配置したものである。ファンユニット2は、冷却ファン及びその冷却ファンを駆動するモータを備えるが、本実施形態では、
図1等に示すように詳細を省略して全体をモデル的に円盤状で示したり、
図3に示すように、冷却ファンを省略してモータのみをファンユニット2として示す場合がある。また、無停電電源装置をUPS(Uninterruptible Power Supply)と称する場合がある。
【0009】
筐体1の上部には、収容部である筐体3が配置され、筐体3の内部には、2つのファンユニット2(1)及び2(2)と、これらにそれぞれ給電を行う給電部である電源ボックス4(1)及び4(2)が収容されている。電源ボックス4(1)及び4(2)は、図示しないインバータを内蔵しており、筐体1側よりスイッチ5を介して供給される交流電源6の周波数を変換する。変換された交流電源は、それぞれヒューズ7(1)及び7(2)、並びにコネクタ8(1)及び8(2)を介してファンユニット2(1)及び2(2)に供給される。すなわち、電源ボックス4(1)及び4(2)とファンユニット2(1)及び2(2)との接続は、コネクタ8(1)及び8(2)を介して行われる。コネクタ8(1)及び8(2)は、例えば樹脂製のハウジングを有しており、接続の一方が雄側、他方が雌側となっている。
【0010】
図1及び
図2において、図中の右方がUPS本体の前面側であり、左方が背面側である。システムが運用される際には、ファンユニット2は1つあれば良く、例えば図示のようにファンユニット2(1)だけがコネクタ8(1)に接続されている。筐体1の前面下部側には、矩形の窓状又は格子状等の吸気口9が形成されている。ファンユニット2のファンが回転すると、外部より吸気口9を介して筐体1の内部に吸気が行われ、その吸気された空気は、筐体1の下方から上方に向かって流通することでUPS本体を冷却すると、筐体3の上方より外部に排出される。
【0011】
筐体3の前面側には、ファンユニット2を出し入れするために、矩形の開口部10が形成されている。ファンユニット2を筐体3の内部に挿入してコネクタ8に接続したり、ファンユニット2をコネクタ8より外して外部に取り出す際には、開口部10を介して行われる。開口部10は、図示しないカバーによって覆われている。
【0012】
また、例えばファンユニット2(1)がコネクタ8(1)に接続されている状態で、ファンユニット2(2)との交換作業を行う際に、交換中の安全性の担保や異物落下の防止、回転中のファンユニット2による冷却風の干渉防止を目的として、仕切部材の一例である仕切板11が、ファンユニット2(1)、2(2)の間を仕切る形で筐体3の内部に挿入配置可能となっている。以上が無停電電源システム12を構成している。
【0013】
次に、本実施形態の作用について説明する。前述したように、冷却ファンの耐用年数は8年程度であるため、当初から使用していたファンユニット2(1)の使用期間が8年前後に達した際には、ファンユニット2(2)との交換を行う必要がある。
図4は、その手順を概略的に示している。尚、ヒューズ7(2)は取り外されている状態とする。
【0014】
<1>「新ファンユニット取付け時」:ファンユニット2(2)を取り付ける際には、筐体3の内部に仕切板11を挿入してから、ファンユニット2(2)を筐体3の内部に挿入してコネクタ8(2)に接続し、固定する。
【0015】
<2>「2台運転時」:ヒューズ7(2)を取り付けると、ファンユニット2(2)に対する通電が開始され、冷却ファンの回転が開始される。これにより、2台の冷却ファンの同時運転となる。
【0016】
<3>「旧ファンユニット取外時」:ヒューズ7(1)を取り外すことでファンユニット2(1)に対する通電が停止され、冷却ファンの回転が停止する。その後、コネクタ8(1)よりファンユニット2(1)を開口部10(1)を介して筐体3より取り出す。
【0017】
以下に、ファンユニット2の交換手順をより詳細に説明する。
[1]ファンユニット2(2)の開口部カバーを取り外す。
[2]前面より、ファンユニット1(1)、2(2)との間に仕切板11を挿入する。
[3]電源ボックス4(2)の内部に、ヒューズ7(2)が取り付けられていないことを確認する。
[4]ファンユニット2(2)側の前面カバーを取り外す。
[5]前面よりファンユニット2(2)を、開口部10(2)より筐体3内に挿入し、固定する。
[6]ファンユニット2(2)側の前面カバーを取り付ける。
[7]電源4(2)のヒューズ7(2)とファンユニット2(2)とを、コネクタ8(2)で接続する。
[8][2]で挿入した仕切板11を取り外す。
【0018】
[9]ファンユニット2(2)側の開口部カバーを取り付ける。
[10]電源ボックス4(2)内のヒューズ8(2)を取り付ける。
[11]ファンユニット2(2)の冷却ファンの回転を開始する。
[12]電源ボックス4(1)のヒューズ7(1)とファンユニット2(1)とを接続していたコネクタ8(1)を離線する。
[13]電源ボックス4(1)のヒューズ7(1)を取り外す。
[14]ファンユニット2(1)の冷却ファンの回転が停止する。
[15]ファンユニット2(1)側の開口部カバーを取り外す。
[16]ファンユニット2(1)を、筐体3より開口部10(1)を介して外部に引き出す。
[17]ファンユニット2(1)側の開口部カバーを取り付ける。
【0019】
以上のように本実施形態によれば、無停電電源システム12において、UPS本体を収容する筐体1の上方に、ファンユニット2(1)及び2(2)を収容する筐体3を配置する。筐体3は、ファンユニット2(1)及び2(2)にそれぞれ給電するための、インバータを内蔵した電源ボックス4(1)及び4(2)備え、ファンユニット2(1)及び2(2)に対し並行して給電が可能となる構成とした。
【0020】
これにより、例えばファンユニット2(1)の寿命が近付いた際には、ファンユニット2(2)をコネクタ8(2)に接続して、2台の冷却ファンを並行して運転させた状態から、ファンユニット2(1)の冷却ファンの運転を停止させて筐体3より取り出すことができる。したがって、UPS本体の動作を停止させることなく、且つUPS本体の冷却を継続させた状態で、ファンユニット2(1)、2(2)を交換することができる。
【0021】
また、ファンユニット2(1)及び2(2)を、筐体1の接地面に対して直交する方向、すなわち筐体1の高さ方向に並ぶように配置し、ファンユニット2(1)、2(2)を交換する際に、筐体3の内部において、ファンユニット2(1)と同ユニット2(2)との間を仕切るための仕切板11を配置可能とした。この仕切板11により、上方に位置するファンユニット2(2)を取り付ける作業を行う際に、工具や部品等が落下してファンユニット2(1)側に干渉することを防止したり、作業者の安全性を確保することができる。
【0022】
また、電源ボックス4(1)、4(2)からファンユニット2(1)、2(2)への給電制御を、ヒューズ7(1)、7(2)の着脱によって行うようにした。ヒューズ7は、一般に過電流より機器を保護するために必要であるから、ヒューズ7(1)、7(2)に給電用のスイッチとしての機能も持たせることで、部品点数を削減できる。
【0023】
更に、ファンユニット2(1)、2(2)を、それぞれ電源ボックス4(1)、4(2)に対し、コネクタ8(1)、8(2)を介して接続するようにした。すなわち、金属的な部品を用いることなく、ファンユニット2(1)、2(2)を接続したり離線させることができるので、交換作業における電気的な干渉も防止できる。
【0024】
(第2実施形態)
以下、第1実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、異なる部分について説明する。
図5に示すように、第2実施形態の無停電電源システム13は、筐体3に替わる筐体14を備えている。筐体14では、ファンユニット2(2)を出し入れするための開口部15が、開口部10(2)に替えて筐体14の上面側に形成されている。
【0025】
(第3実施形態)
図6に示すように、第3実施形態の無停電電源システム16は、筐体3に替わる筐体17を備えている。筐体17では、ファンユニット2(1)を出し入れするための開口部18が、開口部10(1)に替えて筐体17の手前側面に形成されている。
【0026】
(第4実施形態)
図7に示すように、第4実施形態の無停電電源システム19は、第1実施形態の筐体3が、筐体1の上方に替えて背面側に配置されている。開口部10は、上方に向けて開口されることになるので、ファンユニット2の出し入れも上方側より行うことになる。
【0027】
(第5実施形態)
図8に示すように、第5実施形態の無停電電源システム20は、第1実施形態の筐体3に替えて、筐体1の上面に2つの筐体21(1)、21(2)が手前側から奥側に並べて配置された構成である。筐体21(1)、21(2)の前面側には、矩形の開口部22(1)、22(2)が設けられており、ファンユニット2(1)、2(2)は、第1実施形態と同様に前面側より出し入れされる。
【0028】
(その他の実施形態)
3つ以上のファンユニット2を接続可能に構成しても良い。
ファンユニット2に対する通電、断電を、ヒューズ7とは別にスイッチを設けて行っても良い。
仕切部材は仕切板11に限ることなく、1つ以上のスリットが形成されている部材や、格子状の部材などでも良い。すなわち、交換中の安全性担保や異物落下を防止できる限りで、隙間等を有している部材でも良い。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0030】
図面中、1は筐体、2はファンユニット、3は筐体、4は電源ボックス、6は交流電源、7はヒューズ、8はコネクタ、9は吸気口、10は開口部、11は仕切板、12は無停電電源システムを示す。