(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147289
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】センサの冷却構造
(51)【国際特許分類】
G01S 17/931 20200101AFI20241008BHJP
【FI】
G01S17/931
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060211
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】土屋 陽祐
(72)【発明者】
【氏名】深川 鋼司
(72)【発明者】
【氏名】平野 里彩
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084AC02
5J084BA01
5J084BA31
5J084EA33
(57)【要約】
【課題】センサ搭載部に空気の取り込み口を設けなくても、センサを冷却できるようにする。
【解決手段】外界を認識するセンサ24は、車両上部としてルーフ12に設けられたセンサ搭載部22内に搭載される。センサの冷却構造は、ヒートシンク29、循環路30、ポンプP及びラジエータ19を備える。ヒートシンク29は、センサ24に隣接する箇所に配置される。循環路30では、冷却液がポンプPによって循環される。ラジエータ19は、循環路30を循環する冷却液の熱を空気中に放散する。ラジエータ19及びポンプPの少なくとも一方は、車両10のうち、フロントピラー13L,13Rよりも下方に配置される。循環路30の一部は、フロントピラー13L,13R内において上下方向にわたって配置される。循環路30の別の一部は、センサ24に隣接する箇所(ヒートシンク29内)に配置される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外界を認識するセンサが、車両上部に設けられたセンサ搭載部に搭載された車両に適用されるものであり、
前記車両に設けられ、かつ前記センサを冷却するための冷却液が流される循環路と、
前記循環路の途中に設けられ、かつ前記冷却液を前記循環路で循環させるポンプと、
前記循環路の途中に設けられ、かつ前記循環路を循環する前記冷却液の熱を空気中に放散するラジエータと、を備える、センサの冷却構造であって、
前記ラジエータ及び前記ポンプの少なくとも一方は、前記車両のうち、ピラーよりも下方に配置され、
前記循環路の一部は、前記ピラー内において上下方向にわたって配置され、前記循環路の別の一部は、前記センサに隣接する箇所に配置されている、センサの冷却構造。
【請求項2】
前記センサに隣接する箇所にはヒートシンクが配置され、
前記循環路の前記別の一部は、前記ヒートシンク内に配置されている請求項1に記載のセンサの冷却構造。
【請求項3】
前記循環路は、前記ピラーよりも下方に配置された下部流路部と、前記車両上部に配置された上部流路部と、前記ピラー内に配置され、かつ前記下部流路部及び前記上部流路部を連結する一対の連結流路部とを備え、
前記上部流路部の一部は前記センサ搭載部に配置され、
前記ラジエータは前記下部流路部に配置され、
一方の前記連結流路部は、前記冷却液を前記下部流路部から前記上部流路部へ導くものであり、
他方の前記連結流路部は、前記一方の前記連結流路部が配置された前記ピラーとは異なる前記ピラー内に配置され、かつ前記冷却液を前記上部流路部から前記下部流路部へ導くものである請求項1に記載のセンサの冷却構造。
【請求項4】
前記車両は、前記ピラーとして、車室の前部であり、かつ車幅方向における両側部に配置された一対のフロントピラーを少なくとも備えており、
前記ラジエータ及び前記ポンプは、前記車両のうち、両フロントピラーよりも下方かつ前方となる箇所に搭載され、
前記センサ搭載部は前記車両上部の前部に設けられ、
前記センサは、前記車両の前方の外界を認識する態様で前記センサ搭載部内に搭載され、
前記一方の前記連結流路部は、前記車幅方向における一方の前記フロントピラー内に配置され、前記他方の前記連結流路部は、前記車幅方向における他方の前記フロントピラー内に配置されている請求項3に記載のセンサの冷却構造。
【請求項5】
前記ラジエータは、前記車両において、前記センサとは異なる箇所を冷却するための冷却液の熱を空気中に放散する既設のラジエータにより構成される請求項1に記載のセンサの冷却構造。
【請求項6】
前記センサは、電磁波を送信及び受信することで前記車両の外界を認識するものであり、
前記センサ搭載部のうち、前記電磁波の送信方向における前記センサの前方となる箇所には開口部が形成され、
前記センサ搭載部には、前記電磁波の透過性を有する電磁波透過カバーが、前記開口部を塞いだ状態で配置されている請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のセンサの冷却構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両上部に搭載されたセンサを冷却する、センサの冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載された車両の上部には、センサ搭載部が設けられている。センサ搭載部内には、電磁波を送信及び受信することにより外界を認識するセンサが搭載されている。センサ搭載部において、電磁波の送信方向におけるセンサの前方には、空気の取り込み口が設けられている。
【0003】
上記車両によると、センサが、センサ搭載部の上部によって上方から覆われるため、センサに直射日光が当たりにくい。直射日光等の熱が伝達されることによるセンサの温度上昇が抑制されるため、センサの動作が安定する。また、車両の走行に伴い、車外の空気が取り込み口からセンサ搭載部内に取り込まれるため、センサが冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記のようにセンサ搭載部に取り込み口が設けられると、その取り込み口から雨、雪等がセンサ搭載部内に入り込んでセンサに付着することがある。この付着により、センサの検出性能が低下するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためのセンサの冷却構造の各態様を記載する。
[態様1]外界を認識するセンサが、車両上部に設けられたセンサ搭載部内に搭載された車両に適用されるものであり、前記車両に設けられ、かつ前記センサを冷却するための冷却液が流される循環路と、前記循環路の途中に設けられ、かつ前記冷却液を前記循環路で循環させるポンプと、前記循環路の途中に設けられ、かつ前記循環路を循環する前記冷却液の熱を空気中に放散するラジエータと、を備える、センサの冷却構造であって、前記ラジエータ及び前記ポンプの少なくとも一方は、前記車両のうち、ピラーよりも下方に配置され、前記循環路の一部は、前記ピラー内において上下方向にわたって配置され、前記循環路の別の一部は、前記センサに隣接する箇所に配置されている、センサの冷却構造。
【0007】
上記の構成によれば、冷却液は、ポンプによって循環路を循環させられる。この循環に際し、冷却液は、循環路のうち、ピラー内に配置された箇所を上方から下方へ向けて、又は下方から上方へ向けて流れる。また、冷却液は、循環路のうち、センサに隣接する箇所を流れる。
【0008】
冷却液の熱は、その冷却液がラジエータを通過する際に空気中に放散される。この熱の放散により温度の低下した冷却液が、循環路のうち、センサに隣接する箇所を通過する。この際、センサの熱が冷却液に伝達されることで、センサが冷却される。
【0009】
このように、冷却液によってセンサが冷却されるため、冷却用の空気の取り込み口をセンサ搭載部に設けなくてすむ。従って、取り込み口を設けた場合とは異なり、雨、雪等が取り込み口からセンサ搭載部内に入り込んでセンサに付着するのを抑制することが可能となる。
【0010】
[態様2]前記センサに隣接する箇所にはヒートシンクが配置され、前記循環路の前記別の一部は、前記ヒートシンク内に配置されている[態様1]に記載のセンサの冷却構造。
【0011】
上記の構成によれば、ヒートシンクはセンサの熱の一部を受け取り、この熱を空気中や、循環路のうち、ヒートシンク内に配置された箇所を流れる冷却液に放出する。この放出により、センサが効率よく冷却される。
【0012】
[態様3]前記循環路は、前記ピラーよりも下方に配置された下部流路部と、前記車両上部に配置された上部流路部と、前記ピラー内に配置され、かつ前記下部流路部及び前記上部流路部を連結する一対の連結流路部とを備え、前記上部流路部の一部は前記センサ搭載部に配置され、前記ラジエータは前記下部流路部に配置され、一方の前記連結流路部は、前記冷却液を前記下部流路部から前記上部流路部へ導くものであり、他方の前記連結流路部は、前記一方の前記連結流路部が配置された前記ピラーとは異なる前記ピラー内に配置され、かつ前記冷却液を前記上部流路部から前記下部流路部へ導くものである[態様1]又は[態様2]に記載のセンサの冷却構造。
【0013】
上記の構成によれば、冷却液は、ポンプによって循環路を循環させられる。この循環に際し、冷却液は、下部流路部、一方の連結流路部、上部流路部、及び他方の連結流路部を順に流れて、下部流路部に戻される。
【0014】
下部流路部を流れる冷却液の熱は、その冷却液がラジエータを通過する際に空気中に放散される。この放散により、冷却液の温度は、冷却液がラジエータを通過した後に、通過する前よりも低くなる。この冷却液は、下部流路部を流れた後に、一方の連結流路部を、下方から上方へ向けて流れて、上部流路部に導かれる。センサ搭載部では、センサの熱が、上部流路部のうち、センサ搭載部内に配置された箇所を流れる冷却液に伝達される。上記熱の伝達により、センサが冷却される。また、冷却液の温度は、冷却液がセンサの近くを流れた後に、流れる前よりも高くなる。この冷却液は、上部流路部を流れた後に、他方の連結流路部を、上方から下方へ向けて流れて、下部流路部に導かれる。
【0015】
ここで、温度の高くなった冷却液が流れる連結流路部と、温度の低くなった冷却液が流れる連結流路部とは、異なるピラー内に配置されている。そのため、両連結流路部が1つのピラー内に互いに接近した状態で配置された場合とは異なり、両連結流路部間で熱の伝達が行なわれない。従って、一方の連結流路部を流れる冷却液が、他方の連結流路部を流れる冷却液から熱の影響を受けにくい。また、他方の連結流路部を流れる冷却液が、一方の連結流路部を流れる冷却液から熱の影響を受けにくい。
【0016】
[態様4]前記車両は、前記ピラーとして、車室の前部であり、かつ車幅方向における両側部に配置された一対のフロントピラーを少なくとも備えており、前記ラジエータ及び前記ポンプは、前記車両のうち、両フロントピラーよりも下方かつ前方となる箇所に搭載され、前記センサ搭載部は前記車両上部の前部に設けられ、前記センサは、前記車両の前方の外界を認識する態様で前記センサ搭載部内に搭載され、前記一方の前記連結流路部は、前記車幅方向における一方の前記フロントピラー内に配置され、前記他方の前記連結流路部は、前記車幅方向における他方の前記フロントピラー内に配置されている[態様3]に記載のセンサの冷却構造。
【0017】
ラジエータ、ポンプ、センサ搭載部及びセンサが、上記の位置、態様等で配置されている車両では、連結流路部がフロントピラー内に配置されることで、循環路が、車両のうち、センサ搭載部よりも前方部分に集約して配置されることとなる。そのため、短い循環路で冷却液を循環させて、センサを効率よく冷却することが可能となる。
【0018】
[態様5]前記ラジエータは、前記車両において、前記センサとは異なる箇所を冷却するための冷却液の熱を空気中に放散する既設のラジエータにより構成される[態様1]~[態様4]のいずれか1つに記載のセンサの冷却構造。
【0019】
車両には、センサとは異なる箇所、例えば、内燃機関、モータ等の駆動源を冷却する冷却液の熱を空気中に放散するために、一般に、ラジエータが搭載される。上記の構成によれば、車両に既設の上記ラジエータが、センサを冷却する冷却液の放熱に利用される。そのため、既設のラジエータとは別に、専用のラジエータを設けなくてもすむ。
【0020】
[態様6]前記センサは、電磁波を送信及び受信することで前記車両の外界を認識するものであり、前記センサ搭載部のうち、前記電磁波の送信方向における前記センサの前方となる箇所には開口部が形成され、前記センサ搭載部には、前記電磁波の透過性を有する電磁波透過カバーが、前記開口部を塞いだ状態で配置されている[態様1]~[態様5]のいずれか1つに記載のセンサの冷却構造。
【0021】
上記の構成によれば、センサから送信された電磁波は、その送信方向におけるセンサの前方の電磁波透過カバーを透過する。電磁波透過カバーを透過した後に車外の他の車両、歩行者等の対象物に当たって反射された電磁波は、再び電磁波透過カバーを透過してセンサによって受信される。センサでは、送信及び受信された電磁波によって、車両の外界が認識される。
【0022】
ここで、電磁波透過カバーは、上記のように電磁波を透過する機能に加え、開口部を塞ぐ機能も発揮する。そのため、開口部から雨、雪等がセンサ搭載部内に入り込むことが電磁波透過カバーによって規制される。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、センサ搭載部に空気の取り込み口を設けなくても、センサを冷却できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】一実施形態におけるセンサの冷却構造が適用された車両の概略側面図である。
【
図2】上記実施形態におけるセンサの冷却構造の概略正面図である。
【
図3】上記実施形態におけるセンサの冷却構造の概略平面図である。
【
図4】上記実施形態におけるセンサ搭載部、センサ、ヒートシンク等の位置関係を示す部分側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、センサの冷却構造の一実施形態について、図面を参照して説明する。
なお、以下の記載に関し、車両10の前進方向を前方とし、後進方向を後方として説明する。また、上下方向は車両10の上下方向を意味し、左右方向は車幅方向であって車両10の前進時の左右方向と一致するものとする。
【0026】
まず、車両10の構成について、
図1~
図3を参照しながら説明する。
<車両10>
車両10は、ルーフ12と、それぞれ長尺状をなす複数の支柱部(ピラー)とを備えている。複数のピラーは、ルーフ12を下方から支えつつ、車体11の強度を確保する役割を担っている。複数のピラーは、本実施形態では、前方から後方へ向けて順に、Aピラー(フロントピラー13)、Bピラー14、Cピラー15及びDピラー16を、左右方向に一対ずつ備えている。
【0027】
なお、上記ピラーをはじめ、左右で一対をなす部品、部分等に関し、両者を区別する必要がある場合には、左側に位置するものについては、「部材名称」+「数字」の後に「L」を付す。右側に位置するものについては、「部材名称」+「数字」の後に「R」を付すことにする。例えば、フロントピラー13の場合、左側に位置するものをフロントピラー13Lといい、右側に位置するものをフロントピラー13Rというものとする。
【0028】
一対のフロントピラー13は、車室21の前端部における左右両側部に配置されている。各フロントピラー13は、後側ほど高くなるように傾斜した状態で配置されている(
図1参照)。両フロントピラー13L,13R間であって、ルーフ12の前端部よりも下方には、フロントウインドウ17が配置されている。
【0029】
一対のBピラー14は、前後方向における車室21の中央部付近に配置されている。一対のCピラー15は、車室21の後部に配置されている。一対のDピラー16は、車室21の後端部に配置されている。
【0030】
車両10は、駆動源(図示略)と、駆動源の動力によって駆動される駆動輪及び転舵可能な転舵輪を含む車輪18とを備えている。車両10の駆動源は、例えば、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等の内燃機関である。
【0031】
車両10は、冷却液を用いて上記内燃機関を適温にするための水冷式の冷却装置を備えている。冷却装置は、冷却流路、ラジエータ及びポンプを備えている。上記ラジエータ及びポンプは、いずれも上記フロントピラー13よりも下方かつ前方において、冷却流路の途中に配置されている。
【0032】
冷却装置におけるポンプとしては、一般にウォータポンプと呼ばれているものが用いられている。ポンプは、内燃機関の出力軸(クランク軸)に駆動連結された機械式のウォータポンプであってもよい。この場合、ポンプは、内燃機関の作動に伴うクランク軸の回転により作動して、冷却液を冷却流路で循環させる。また、ポンプは、電動モータによって作動させられる電動式のウォータポンプであってもよい。
【0033】
図1及び
図3に示すように、車両上部にはセンサ搭載部22が設けられている。本実施形態では、ルーフ12を車両上部としている。センサ搭載部22は、ルーフ12の前部であって、左右方向における一部、ここでは中央部分に設けられている。
図4に示すように、センサ搭載部22の内部には、車両10の前方の外界を認識する態様でセンサ24が搭載されている。本実施形態では、このセンサ24として、LiDAR(Light Detection and Ranging)装置が用いられている。LiDAR装置には、電磁波として光を用いたリモートセンシング技術が適用されている。LiDAR装置は、例えば、運転支援システムに利用されている。
【0034】
上記センサ24は、電磁波23を車外のうち、車両10の前方における所定の角度範囲に向けて送信し、車外の物体に当たって反射された電磁波23を受信するセンサ機能を有している。
【0035】
なお、上述したように、センサ24が車両10の前方に向けて電磁波23を送信することから、センサ24による電磁波23の送信方向は、車両10の後方から前方へ向かう方向である。電磁波23の送信方向における前方は、車両10の前方と概ね合致し、同送信方向における後方は、車両10の後方と概ね合致する。そのため、以後の記載では、電磁波23の送信方向における前方を単に「前方」、「前」等といい、同送信方向における後方を単に「後方」、「後」等というものとする。
【0036】
センサ搭載部22の前端部であって、センサ24の前方となる箇所には開口部26が形成されている。センサ搭載部22の前端部には、上記電磁波23の透過性を有する電磁波透過カバー27が、開口部26を塞いだ状態で配置されている。
【0037】
図2及び
図3に示すように、車両10は、さらに、センサ24の冷却構造を有している。この冷却構造は、ヒートシンク(放熱器)29、循環路30、ポンプP及びラジエータ19を備えている。次に、センサの冷却構造を構成する各部について説明する。
【0038】
<ヒートシンク29>
図4に示すように、ヒートシンク29は、センサ24に対し隣接する箇所、本実施形態では、下側に隣接する箇所に配置されている。ヒートシンク29は、センサ24の熱の一部を受け取り、空気中や、循環路30を循環する冷却液に放出する役割を担っている。ヒートシンク29は、熱伝導性の高い金属(アルミニウム等)、セラミックス等の素材によって形成されている。ヒートシンク29は、表面積が大きくなる構造、例えば、フィンと呼ばれる板状部分、細い棒状部分等が配列された構造を有している。
【0039】
<循環路30>
図2及び
図3に示すように、循環路30は、センサ24を冷却するための冷却液の流路であり、無端状をなしている。循環路30は、車両10に配置された配管部材(図示略)の内部空間によって構成されている。
【0040】
循環路30は、下部流路部31、上部流路部32及び一対の連結流路部33を備えている。一対の連結流路部33は、左側の連結流路部33Lと右側の連結流路部33Rとからなる。
【0041】
下部流路部31は、車両10のうち、フロントピラー13よりも下方かつ前方に配置されている。
上部流路部32は、車両上部に配置、本実施形態ではフロントピラー13よりも上方に配置されている。上部流路部32の一部は、センサ搭載部22内であって、センサ24に隣接する箇所に配置されている。より詳しくは、上部流路部32の一部は、上記ヒートシンク29内に配置されている。
【0042】
左側の連結流路部33Lは、左側のフロントピラー13L内において、上下方向における全長にわたって配置されている。右側の連結流路部33Rは、上記連結流路部33Lが配置された上記フロントピラー13Lとは異なるピラー内、本実施形態では、右側のフロントピラー13R内において、上下方向における全長にわたって配置されている。
【0043】
一方の連結流路部、本実施形態では右側の連結流路部33Rは、冷却液を下部流路部31から上部流路部32へ導く役割を担っている。他方の連結流路部、ここでは左側の連結流路部33Lは、冷却液を上部流路部32から下部流路部31へ導く役割を担っている。
【0044】
左右の各連結流路部33L,33Rの上端部は、上部流路部32の端部に繋がっている。左右の各連結流路部33L,33Rの下端部は、下部流路部31の端部に繋がっている。表現を変えると、下部流路部31及び上部流路部32は、両連結流路部33L,33Rによって連結されている。
【0045】
<ポンプP>
ポンプPは、循環路30の途中、より詳しくは、下部流路部31の途中に設けられている。従って、ポンプPは車両10のうち、フロントピラー13よりも下方かつ前方となる箇所に配置されていることになる。ポンプPは、循環路30で冷却液を循環させる役割を担っている。本実施形態では、上述した冷却装置において、冷却液を冷却流路で循環させるための既設のポンプが、冷却液を循環路30で循環させるためのポンプPを兼ねている。表現を変えると、本実施形態では、冷却装置における既設のポンプが、冷却液を循環路30で循環させるためのポンプPとして利用されている。
【0046】
<ラジエータ19>
ラジエータ19は、上記循環路30の途中、より詳しくは、下部流路部31の途中に設けられている。従って、ラジエータ19は、車両10のうち、上記フロントピラー13よりも下方かつ前方となる箇所に配置されていることになる。ラジエータ19は、循環路30を循環する冷却液が運んできた熱を、空気を媒体として空気中に放散する役割を担っている。本実施形態では、上述した冷却装置において、冷却流路を流れる冷却液の熱を空気中に放散させる既設のラジエータが、循環路30を循環する冷却液の熱を空気中に放散させるラジエータ19を兼ねている。表現を変えると、本実施形態では、冷却装置における既設のラジエータが、循環路30を循環する冷却液の熱を空気中に放散させるラジエータ19として利用されている。
【0047】
次に、上記のように構成された本実施形態の作用について説明する。
図2及び
図3において白抜きの矢印で示すように、冷却液は、ポンプPによって循環路30を循環させられる。この循環に際し、冷却液は、下部流路部31、一方(右側)の連結流路部33R、上部流路部32、他方(左側)の連結流路部33Lを順に流れて、下部流路部31に戻される。
【0048】
下部流路部31を流れる冷却液の熱は、その冷却液がラジエータ19を通過する際に空気中に放散される。この放散により、冷却液の温度は、冷却液がラジエータ19を通過した後に、通過する前よりも低くなる。この冷却液は、下部流路部31を流れた後に、右側の連結流路部33Rを、ポンプPによって上昇させられる。冷却液は、連結流路部33Rを下方から上方へ向けて流れて、上部流路部32に導かれる。この冷却液は、上部流路部32を流れる途中でヒートシンク29、すなわち、センサ24の近くを通過する。ヒートシンク29は、センサ24で発生した熱の一部を受け取り、空気中や、上部流路部32のうち、ヒートシンク29内に配置された部分を流れる冷却液に放出する。この放出により、センサ24が冷却される。また、冷却液の温度は、冷却液がヒートシンク29を通過した後に、すなわち、センサ24の近くを通過した後に、通過する前よりも高くなる。この冷却液は、上部流路部32を流れた後に、左側の連結流路部33Lを、上方から下方へ向けて流れて、下部流路部31に戻される。この際、冷却液は、自重が作用するため、傾斜したフロントピラー13Lに沿って連結流路部33Lを流れやすい。
【0049】
なお、連結流路部33Rを流れる冷却液は、連結流路部33Lを流れる冷却液から熱の影響を受けにくい。また、連結流路部33Lを流れる冷却液は、連結流路部33Rを流れる冷却液から熱の影響を受けにくい。これは、連結流路部33として、連結流路部33L及び連結流路部33Rの2つがあるが、互いに異なるフロントピラー13L,13R内に配置されているからである。
【0050】
ところで、
図4に示すように、センサ24から前方へ電磁波23が送信されると、その電磁波23は、電磁波透過カバー27を透過する。電磁波透過カバー27を透過した後に車外の対象物、例えば、先行車両、歩行者等に当たって反射された電磁波23は、再び電磁波透過カバー27を透過してセンサ24によって受信される。センサ24では、送信及び受信された電磁波23によって、車両10の外界の情報が取得される。例えば、対象物が認識されたり、車両10の対象物との距離、相対速度等が検出されたりする。
【0051】
ここで、電磁波透過カバー27は、上記のように電磁波23を透過する機能に加え、開口部26を塞ぐ機能も発揮する。そのため、雨、雪等が開口部26からセンサ搭載部22内に入り込むことが電磁波透過カバー27によって規制される。
【0052】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)
図2及び
図3に示すように、本実施形態では、循環路30を循環する冷却液によってセンサ24を冷却している。そのため、センサ24の温度が動作保証温度を越えて同センサ24の動作が不安定となるのを抑制できる。
【0053】
(2)
図2及び
図4に示すように、本実施形態では、センサ24に隣接する箇所にヒートシンク29を配置している。そのため、センサ24の熱の一部をヒートシンク29から空気中に放出できる。
【0054】
また、
図2及び
図3に示すように、本実施形態では、上部流路部32の一部をヒートシンク29内に配置している。そのため、センサ24の熱の一部をヒートシンク29から、上部流路部32のうち、ヒートシンク29内に配置された部分を流れる冷却液に放出できる。センサ24を効率よく冷却できる。
【0055】
(3)上記(1)に関連する効果として、冷却用の空気を取り込むための取り込み口をセンサ搭載部22に設けなくてもすむ。特許文献1とは異なり、取り込み口が原因で雨、雪等がセンサ搭載部22内に入り込んでセンサ24に付着するのを抑制可能である。
【0056】
(4)
図4に示すように、本実施形態では、センサ搭載部22のうち、センサ24の前方部分に開口部26を設けているが、この開口部26を電磁波透過カバー27によって塞いでいる。そのため、外界を認識するセンサ24の機能を損なうことなく、雨、雪等がセンサ搭載部22内に入り込んでセンサ24に付着するのを抑制できる。雨、雪等がセンサ24に付着して、センサ24の検知性能が低下するのを抑制できる。
【0057】
(5)
図2及び
図3に示すように、本実施形態では、温度の高くなった冷却液が流れる左側の連結流路部33Lと、温度の低くなった冷却液が流れる右側の連結流路部33Rとを、異なるフロントピラー13L,13R内に配置している。そのため、両連結流路部33L,33Rが同一のフロントピラー13(13L又は13R)内に互いに接近した状態で配置された場合とは異なり、両連結流路部33L,33R間で熱の伝達が行なわれにくい。その結果、一方の連結流路部33L(33R)を流れる冷却液が、他方の連結流路部33R(33L)を流れる冷却液から熱の影響を受けるのを抑制できる。
【0058】
(6)
図3に示すように、本実施形態では、センサ24の冷却構造の適用対象を、次の条件を満たす車両10としている。
条件1:ラジエータ19及びポンプPが、車両10のうち、両フロントピラー13よりも下方かつ前方となる箇所に搭載されている。
【0059】
条件2:センサ搭載部22が車両上部(ルーフ12)の前部に設けられている。
そして、本実施形態では、循環路30における左側の連結流路部33Lを、左側のフロントピラー13L内に配置している。また、循環路30における右側の連結流路部33Rを、右側のフロントピラー13R内に配置している。これらの配置により、循環路30を、車両10のうち、センサ搭載部22よりも前方部分に集約して配置することができる。そのため、短い循環路30で冷却液を循環させて、センサ24を効率よく冷却できる。
【0060】
(7)
図2及び
図3に示すように、本実施形態では、冷却装置における既設のラジエータを、センサ24を冷却する冷却液の放熱に利用している。そのため、冷却装置における既設のラジエータとは別に、専用のラジエータ19を設けなくてもすむ。
【0061】
なお、上記実施形態は、これを以下のように変更した変更例として実施することもできる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0062】
<車両10について>
・本発明のセンサの冷却構造は、センサ搭載部22が、前後方向における車両上部の前部とは異なる箇所、例えば、後部、中央部等に設けられた場合にも適用可能である。
【0063】
・本発明のセンサの冷却構造は、上記実施形態よりもピラーの種類が少ない車両や、種類の多い車両にも適用可能である。前者の変更例は、例えば、ピラーとして、Dピラー16を有しない車両である。後者の変更例は、例えば、マイクロバス、バス等である。
【0064】
・本発明のセンサの冷却構造は、電動モータを駆動源とする電動車両、内燃機関及び電動モータを駆動源とするハイブリッド車両等にも適用可能である。電動車両、ハイブリッド車両でも、電動モータ、バッテリ等を冷却するために、ラジエータ及びポンプを用いた冷却装置が設けられる。これらの冷却装置における既設のラジエータ及びポンプを利用して、冷却液を循環路で循環させることで、センサを冷却するようにしてもよい。
【0065】
<ラジエータ19及びポンプPについて>
・ラジエータ19として、冷却装置における既設のラジエータとは別に専用のラジエータが用いられてもよい。
【0066】
・ポンプPとして、冷却装置における既設のポンプとは別に専用のポンプが用いられてもよい。
・ラジエータ19及びポンプPは、次の条件を満たしたうえで、上記実施形態とは異なる箇所に配置されてもよい。
【0067】
条件1:循環路30の途中であること。
条件2:ラジエータ19及びポンプPの少なくとも一方は、ピラーよりも下方であること。
【0068】
従って、例えば、ラジエータ19が下部流路部31に配置され、かつポンプPが上部流路部32に配置されてもよい。ピラー内に設置スペースを確保でき、かつ小型のポンプPであれば、連結流路部33L,33RにポンプPが配置されてもよい。
【0069】
<センサ搭載部22について>
・ルーフ12の内部を車両上部とした上記実施形態とは異なり、ルーフ12上を車両上部とし、ここにセンサ搭載部22が設けられてもよい。この場合、センサ搭載部22は、車外に位置することになる。
【0070】
また、ルーフ12の下部、表現を変えると、フロントウインドウ17の上端を車両上部とし、ここにセンサ搭載部22が設けられてもよい。
<センサ24について>
・外界を認識するセンサ24は、LiDAR装置に限らず、各種のカメラ装置、レーダ装置等であってもよい。
【0071】
・センサ24は、車両10の後方へ電磁波を送信し、対象物に当たって反射された電磁波を受信することで、後方の外界を認識するセンサであってもよい。
<ヒートシンク29について>
・ヒートシンク29は、センサ24に対し、隣接する箇所であることを条件に、下方とは異なる箇所、例えば、側方、後方等に隣接する箇所に配置されてもよい。
【0072】
<循環路30について>
・連結流路部33L,33Rは、互いに異なるピラー内に配置される場合、Bピラー14L,14R内、Cピラー15L,15R内又はDピラー16L,16R内に配置されてもよい。
【0073】
この変更例の場合、一対の連結流路部33L,33Rは、上記実施形態と同様に、同一種類のピラー内に配置されてもよいし、互いに異なる種類のピラー内に配置されてもよい。
【0074】
前者の変更例は、一対の連結流路部33L,33Rが、例えば、Dピラー16L,16R内に配置されることである。
後者の変更例の一例は、一対の連結流路部33L,33Rが、左右方向に互いに異なる側に位置し、かつ互いに異なる種類のピラー内、例えば、フロントピラー13L内及びDピラー16R内に配置されることである。
【0075】
後者の変更例の他の例は、一対の連結流路部33L,33Rが、左右方向における同じ側に位置し、かつ互いに異なる種類のピラー内、例えば、フロントピラー13L内及びDピラー16L内に配置されることである。
【0076】
・連結流路部33L,33Rは、1つのピラー内に配置されてもよい。その場合、連結流路部33L,33Rの配置の対象となるピラーは、フロントピラー13L,13Rに限らない。Bピラー14L,14R、Cピラー15L,15R、Dピラー16L,16Rも配置対象となり得る。
【0077】
・循環路30のうち、ピラー内に配置される部分は、必ずしもピラー内の上下方向における全長にわたって配置されなくてもよい。例えば、センサ24がルーフ12の上部に配置され、かつヒートシンク29がセンサ24の下側に配置される場合、循環路30は、ピラーの上端よりも下方となる箇所からセンサ24(ヒートシンク29)に向けて延びてもよい。
【符号の説明】
【0078】
10…車両
11…車体
12…ルーフ(車両上部)
13,13L,13R…フロントピラー(ピラー)
14,14L,14R…Bピラー(ピラー)
15,15L,15R…Cピラー(ピラー)
16,16L,16R…Dピラー(ピラー)
17…フロントウインドウ
18…車輪
19…ラジエータ
21…車室
22…センサ搭載部
23…電磁波
24…センサ
26…開口部
27…電磁波透過カバー
29…ヒートシンク
30…循環路
31…下部流路部
32…上部流路部
33,33L,33R…連結流路部
P…ポンプ