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特開2024-147292樹脂成形品の製造方法及び樹脂成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147292
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】樹脂成形品の製造方法及び樹脂成形品
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/00 20060101AFI20241008BHJP
   B29C 45/46 20060101ALI20241008BHJP
   B29C 45/73 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B29C45/00
B29C45/46
B29C45/73
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060214
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】山本 将平
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼尾 和希
(72)【発明者】
【氏名】前田 英登
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AA11
4F202AA50
4F202AB12
4F202AC01
4F202AH24
4F202AH25
4F202AR11
4F202CA11
4F202CB01
4F202CN01
4F202CN12
4F202CN15
4F206AA11
4F206AA50
4F206AB12
4F206AC01
4F206AH24
4F206AH25
4F206AR11
4F206JA07
4F206JF01
4F206JL02
4F206JM05
4F206JN25
4F206JQ81
(57)【要約】
【課題】廃材を用いた樹脂成形品の意匠性の低下を抑制しつつ、当該樹脂成形品を製造するための工数を低減できる樹脂成形品の製造方法及び樹脂成形品を提供する。
【解決手段】樹脂成形品の製造方法は、熱可塑性樹脂製の基材と、基材の表面に設けられた加飾層とを有する廃材を微粉砕して粒状にする微粉砕工程と、微粉砕工程において微粉砕された粒状の廃材を溶融させる溶融工程と、溶融工程において溶融された廃材を成形型のキャビティに注入するとともに、キャビティでの廃材の溶融状態を保持する溶融状態保持工程と、溶融状態保持工程において溶融状態に保持した廃材を冷却することによって樹脂成形品を成形する成形工程と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂製の基材と、前記基材の表面に設けられた加飾層と、を有する廃材を微粉砕して粒状にする微粉砕工程と、
前記微粉砕工程において微粉砕された粒状の前記廃材を溶融させる溶融工程と、
前記溶融工程において溶融された前記廃材を成形型のキャビティに注入するとともに、前記キャビティでの前記廃材の溶融状態を保持する溶融状態保持工程と、
前記溶融状態保持工程において溶融状態に保持した前記廃材を冷却することによって樹脂成形品を成形する成形工程と、
を備えることを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
【請求項2】
前記溶融工程に先立ち、前記基材と同一の熱可塑性樹脂製の粒状のバージン材と、前記微粉砕工程において微粉砕された粒状の前記廃材と、を混合する混合工程を備え、
前記溶融工程では、前記廃材と前記バージン材とが混合された混合材を溶融させることを特徴とする請求項1に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項3】
顔料により着色された熱可塑性樹脂製の成形体を有する廃材を微粉砕して粒状にする微粉砕工程と、
前記微粉砕工程において微粉砕された粒状の前記廃材を溶融させる溶融工程と、
前記溶融工程において溶融された前記廃材を成形型のキャビティに注入するとともに、前記キャビティでの前記廃材の溶融状態を保持する溶融状態保持工程と、
前記溶融状態保持工程において溶融状態に保持した前記廃材を冷却することによって樹脂成形品を成形する成形工程と、
を備えることを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
【請求項4】
前記溶融工程に先立ち、前記成形体と同一の熱可塑性樹脂製であって前記廃材とは発色の異なる粒状のバージン材と、前記微粉砕工程において微粉砕された粒状の前記廃材と、を混合する混合工程を備え、
前記溶融工程では、前記廃材と前記バージン材とが混合された混合材を溶融させることを特徴とする請求項3に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項5】
熱可塑性樹脂製の母材と、
前記母材中に分散され、前記母材とは発色の異なる粒子と、
を有する樹脂成形品であって、
前記母材における意匠面側の部分に存在する前記粒子の割合は、前記母材における前記意匠面側の部分以外の部分に存在する前記粒子の割合よりも低いことを特徴とする樹脂成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形品の製造方法及び樹脂成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のバンパなどの表面が塗装された樹脂製品からなる廃材を回収するとともに原料として再利用することにより樹脂成形品を製造する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。こうした方法では、まず、廃材を適当な大きさの粒子に粉砕する。この粉砕した廃材をさらに細かく微粉砕する。微粉砕された廃材は、ほとんどが樹脂基材と塗膜である。そして、微粉砕された廃材における樹脂基材と塗膜とは比重差があるので、これらを公知の比重法を利用して分離する。その後、分離した樹脂基材のみを原料として樹脂成形品を製造する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-309750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の方法では、廃材を用いた樹脂成形品の意匠性の低下を抑制できるが、廃材を2段階で粉砕するとともに粉砕した廃材から樹脂基材のみを公知の比重法を利用することによって分離しているため、工数が多くなる。このため、廃材を用いた樹脂成形品の意匠性の低下を抑制しつつ、当該樹脂成形品を製造するための工数を低減する上では、改善の余地を残すものとなっている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、上記課題を解決するための樹脂成形品の製造方法及び樹脂成形品の各態様を記載する。
[態様1]熱可塑性樹脂製の基材と、前記基材の表面に設けられた加飾層と、を有する廃材を微粉砕して粒状にする微粉砕工程と、前記微粉砕工程において微粉砕された粒状の前記廃材を溶融させる溶融工程と、前記溶融工程において溶融された前記廃材を成形型のキャビティに注入するとともに、前記キャビティでの前記廃材の溶融状態を保持する溶融状態保持工程と、前記溶融状態保持工程において溶融状態に保持した前記廃材を冷却することによって樹脂成形品を成形する成形工程と、を備えることを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
【0006】
上記方法によれば、溶融状態保持工程においてキャビティでの廃材の溶融状態が保持されるので、溶融状態の廃材が成形型との熱交換によって瞬時に冷却されて固化することを回避できる。溶融状態の廃材には、加飾層の粒子(異物)が含まれている。溶融状態の廃材において、加飾層の粒子は基材よりも比重が大きい。このため、溶融状態保持工程において溶融状態の廃材に含まれる加飾層の粒子が重力によりキャビティにて沈殿する。これにより、樹脂成形品における意匠面側の部分に存在する加飾層の粒子の割合が低減される。したがって、廃材を用いた樹脂成形品の意匠性の低下を抑制することができる。
【0007】
加えて、特許文献1とは異なり、廃材を用いた樹脂成形品の意匠性の低下を抑制するために、微粉砕工程において、廃材を粉砕した後にさらに細かく微粉砕し、且つ微粉砕された廃材を樹脂基材の粒子と加飾層の粒子とに分離する必要がない。このため、樹脂成形品を製造するための工数を低減できる。
【0008】
よって、廃材を用いた樹脂成形品の意匠性の低下を抑制しつつ、当該樹脂成形品を製造するための工数を低減できる。
[態様2]前記溶融工程に先立ち、前記基材と同一の熱可塑性樹脂製の粒状のバージン材と、前記微粉砕工程において微粉砕された粒状の前記廃材と、を混合する混合工程を備え、前記溶融工程では、前記廃材と前記バージン材とが混合された混合材を溶融させることを特徴とする[態様1]に記載の樹脂成形品の製造方法。
【0009】
上記方法によれば、バージン材は廃材よりも比重が小さいので、樹脂成形品における意匠面側の部分に占める廃材の割合を少なくすることができる。このため、樹脂成形品の意匠面近傍に存在する加飾層の粒子(異物)を少なくすることができる。したがって、廃材を用いた樹脂成形品の意匠性の低下をより一層効果的に抑制できる。
【0010】
[態様3]顔料により着色された熱可塑性樹脂製の成形体を有する廃材を微粉砕して粒状にする微粉砕工程と、前記微粉砕工程において微粉砕された粒状の前記廃材を溶融させる溶融工程と、前記溶融工程において溶融された前記廃材を成形型のキャビティに注入するとともに、前記キャビティでの前記廃材の溶融状態を保持する溶融状態保持工程と、前記溶融状態保持工程において溶融状態に保持した前記廃材を冷却することによって樹脂成形品を成形する成形工程と、を備えることを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
【0011】
上記方法によれば、溶融状態保持工程においてキャビティでの廃材の溶融状態が保持されるので、溶融状態の廃材が成形型との熱交換によって瞬時に冷却されて固化することを回避できる。溶融状態の廃材には、顔料の粒子(異物)が含まれている。溶融状態の廃材において、顔料の粒子は成形体を構成する熱可塑性樹脂よりも比重が大きい。このため、溶融状態保持工程において溶融状態の廃材に含まれる顔料の粒子が重力によりキャビティにて沈殿する。これにより、樹脂成形品における意匠面側の部分に存在する顔料の粒子の割合が低減される。したがって、廃材を用いた樹脂成形品の意匠性の低下を抑制することができる。
【0012】
加えて、特許文献1とは異なり、廃材を用いた樹脂成形品の意匠性の低下を抑制するために、微粉砕工程において、廃材を粉砕した後にさらに細かく微粉砕し、且つ微粉砕された廃材を樹脂基材の粒子と顔料の粒子とに分離する必要がない。このため、樹脂成形品を製造するための工数を低減できる。
【0013】
よって、廃材を用いた樹脂成形品の意匠性の低下を抑制しつつ、当該樹脂成形品を製造するための工数を低減できる。
[態様4]前記溶融工程に先立ち、前記成形体と同一の熱可塑性樹脂製であって前記廃材とは発色の異なる粒状のバージン材と、前記微粉砕工程において微粉砕された粒状の前記廃材と、を混合する混合工程を備え、前記溶融工程では、前記廃材と前記バージン材とが混合された混合材を溶融させることを特徴とする[態様3]に記載の樹脂成形品の製造方法。
【0014】
上記方法によれば、バージン材は廃材よりも比重が小さいので、樹脂成形品における意匠面側の部分に占める廃材の割合を少なくすることができる。このため、樹脂成形品の意匠面近傍に存在する顔料の粒子(異物)を少なくすることができる。したがって、廃材を用いた樹脂成形品の意匠性の低下をより一層効果的に抑制できる。
【0015】
[態様5]熱可塑性樹脂製の母材と、前記母材中に分散され、前記母材とは発色の異なる粒子と、を有する樹脂成形品であって、前記母材における意匠面側の部分に存在する前記粒子の割合は、前記母材における前記意匠面側の部分以外の部分に存在する前記粒子の割合よりも低いことを特徴とする樹脂成形品。
【0016】
上記構成によれば、母材における意匠面に上記粒子が出現し難くなるので、樹脂成形品の意匠性の低下を抑制できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、廃材を用いた樹脂成形品の意匠性の低下を抑制しつつ、当該樹脂成形品を製造するための工数を低減できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】樹脂成形品の一実施形態を示す断面模式図である。
図2図1の樹脂成形品の製造方法を示すフローチャートである。
図3図1の樹脂成形品を成形する成形型に溶融状態の混合材を注入したときの状態を示す断面模式図である。
図4図3において溶融状態の混合材に含まれる加飾粒子が沈殿したときの状態を示す断面模式図である。
図5図1の樹脂成形品の成形後に成形型を開いたときの状態を示す断面模式図である。
図6】変更例の成形型を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、一実施形態を図面に従って説明する。
<樹脂成形品11>
図1に示すように、樹脂成形品11は、例えば車両のバンパカバーなどの外装部品である。樹脂成形品11は、熱可塑性樹脂製の母材12と、母材12中に分散されている粒子の一例としての加飾粒子13とを有する。母材12は、例えばポリプロピレン(PP)によって構成される。
【0020】
加飾粒子13は、例えば車両のバンパカバーの廃材に含まれている加飾層が微粉砕されたものである。この加飾層としては、例えば、塗膜、めっき層、ホットスタンプ層、フィルム層、蒸着層、印刷層などが挙げられる。加飾粒子13の最大粒径は、例えば300μmである。加飾粒子13は、母材12とは発色が異なる。
【0021】
樹脂成形品11は、平面状の意匠面14を有する。樹脂成形品11は、意匠面14側の部分を構成する第1領域15と、第1領域15以外の部分を構成する第2領域16とを有した構造になっている。第2領域16には、加飾粒子13のほとんどが含まれている。第1領域15には、加飾粒子13がほとんど含まれていない。第1領域15に存在する加飾粒子13の割合は、第2領域16に存在する加飾粒子13の割合よりも格段に低くなっている。
【0022】
次に、樹脂成形品11の製造方法について説明する。
図2に示すように、樹脂成形品11の製造方法は、微粉砕工程と、混合工程と、溶融工程と、溶融状態保持工程と、成形工程と、取出工程とを備える。
【0023】
<微粉砕工程>
微粉砕工程では、熱可塑性樹脂製の基材と、基材の表面に設けられた加飾層とを有する廃材(図示略)を周知の粉砕機を用いて微粉砕することによって粒状にする。廃材は、例えば車両のバンパカバーである。
【0024】
<混合工程>
混合工程では、上記基材と同一の熱可塑性樹脂製の粒状のバージン材と、微粉砕工程において微粉砕された粒状の廃材(いずれも図示略)とを混合する。
【0025】
<溶融工程>
溶融工程では、混合工程においてバージン材と廃材とが混合された混合材を、周知の射出成形装置のシリンダに投入する。そして、ヒータへの通電によってシリンダ内の混合材を加熱することにより、混合材を上記熱可塑性樹脂の融点以上の温度にして溶融させる。
【0026】
<溶融状態保持工程>
図3に示すように、溶融状態保持工程では、溶融工程において溶融された混合材を上記シリンダから型締めされた状態の成形型17のキャビティ18に注入するとともに、キャビティ18での混合材の溶融状態を保持する。成形型17は、樹脂成形品11の意匠面14を成形する成形面19を有する第1型20と、第2型21とを備える。第1型20及び第2型21は、上下方向に開閉される型である。第1型20は、第2型21の上側に配置される。
【0027】
キャビティ18での混合材の溶融状態は、キャビティ18の温度管理を行うべく成形型17に設けられた熱媒体流路22に加圧した熱水を流すことによって保持される。すなわち、成形型17に設けられた熱媒体流路22に加圧した熱水を流すことによってキャビティ18での溶融状態の混合材が成形型17との熱交換によって瞬時に冷却されて固化することが回避される。キャビティ18での溶融状態の混合材には基材及び加飾粒子13を含む廃材が含まれているが、加飾粒子13は基材及びバージン材よりも比重が大きい。
【0028】
このため、図4に示すように、キャビティ18で混合材の溶融状態が保持されると、当該混合材に含まれる加飾粒子13が重力によって成形面19側とは反対側となる下側に沈殿する。これにより、混合材における成形面19側の部分となる上部に存在する加飾粒子13がほとんどなくなる。
【0029】
溶融状態保持工程におけるキャビティ18での混合材の溶融状態の保持時間は、混合材に含まれる加飾粒子13が重力によって十分に沈殿する時間(例えば、30秒~60秒程度)に設定される。この時間は、予め実験やシミュレーションを行うことによって決められる。
【0030】
<成形工程>
成形工程では、溶融状態保持工程において溶融状態に保持した混合材を冷却することによって樹脂成形品11(図5参照)を成形する。すなわち、成形工程では、熱媒体流路22に対して加圧した熱水の代わりに冷水を流すことによってキャビティ18の混合材を冷却して固化させる。
【0031】
<取出工程>
図5に示すように、取出工程では、成形型17を型開きすることで、成形工程において成形された樹脂成形品11を第2型21から取り出す。
【0032】
<実施形態の作用>
図1に示すように、廃材を用いて成形された樹脂成形品11における意匠面14側の部分を構成する第1領域15には、加飾粒子13がほとんど含まれない。このため、意匠面14に加飾粒子13が出現し難くなる。したがって、加飾粒子13による樹脂成形品11の意匠性の低下が抑制される。
【0033】
<実施形態の効果>
以上詳述した実施形態によれば、次のような効果が発揮される。
(1)樹脂成形品11の製造方法は、微粉砕工程と、溶融工程と、溶融状態保持工程と、成形工程と、を備える。
【0034】
上記方法によれば、溶融状態保持工程においてキャビティ18での廃材の溶融状態が保持されるので、溶融状態の廃材が成形型17との熱交換によって瞬時に冷却されて固化することを回避できる。このため、溶融状態保持工程において溶融状態の廃材に含まれる加飾粒子13が重力によりキャビティ18にて沈殿する。これにより、樹脂成形品11における意匠面14側の部分に存在する加飾粒子13の割合が低減される。したがって、廃材を用いた樹脂成形品11の意匠性の低下を抑制することができる。
【0035】
加えて、特許文献1とは異なり、廃材を用いた樹脂成形品11の意匠性の低下を抑制するために、微粉砕工程において、廃材を粉砕した後にさらに細かく微粉砕し、且つ微粉砕された廃材を樹脂基材の粒子と加飾粒子13とに分離する必要がない。このため、樹脂成形品11を製造するための工数を低減できる。
【0036】
よって、廃材を用いた樹脂成形品11の意匠性の低下を抑制しつつ、当該樹脂成形品11を製造するための工数を低減できる。
(2)樹脂成形品11の製造方法は、溶融工程に先立ち、混合工程を備える。溶融工程では、廃材とバージン材とが混合された混合材を溶融させる。
【0037】
上記方法によれば、バージン材は廃材よりも比重が小さいので、樹脂成形品11における意匠面14側の部分に占める廃材の割合を少なくすることができる。このため、樹脂成形品11の意匠面14近傍(第1領域15)に存在する加飾粒子13を少なくすることができる。したがって、廃材を用いた樹脂成形品11の意匠性の低下をより一層効果的に抑制できる。
【0038】
加えて、樹脂成形品11にバージン材が含まれているので、廃材のみによって樹脂成形品11が形成される場合に比べて、樹脂成形品11の機械的強度を高めることができる。
<変更例>
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。また、上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0039】
図6に示すように、成形型17におけるキャビティ面に断熱層23を設けるようにしてもよい。断熱層23は、熱伝導性の低い材料によって構成される。熱伝導性の低い材料としては、例えば、オーステナイト系のステンレス鋼(SUS304等)などの比較的熱伝導性の低い金属材料、ポリイミド、セラミックなどが挙げられる。このようにすれば、溶融状態保持工程において成形型17の熱媒体流路22に加熱流体を流さなくてもキャビティ18での混合材の溶融状態を保持できるので、成形型17から熱媒体流路22を省略できる。
【0040】
・溶融状態保持工程におけるキャビティ18の加熱方式としては、上述した加圧熱水を用いた方式の他に、蒸気加熱方式、加熱オイル方式、高周波誘導加熱方式、輻射加熱方式、通電加熱方式、カートリッジヒータ方式、細管ヒータ方式などを採用してもよい。
【0041】
・成形型17には、加圧熱水を流す熱媒体流路22と、冷水を流す熱媒体流路22とを別々に設けるようにしてもよい。
・混合工程は、省略してもよい。この場合、樹脂成形品11は、廃材のみによって製造される。
【0042】
・母材12は、ポリプロピレンに限らず、ポリエチレンテレフタレートなどの他の熱可塑性樹脂によって構成してもよい。
・樹脂成形品11は、車両のバンパカバーなどの外装部材に限らず、他に例えばインストルメントパネルなどの車両の内装部材として具体化してもよい。
【0043】
・上記実施形態の微粉砕工程では、熱可塑性樹脂製の基材と、基材の表面に設けられた加飾層とを有する廃材を微粉砕して粒状にしたが、顔料により着色された熱可塑性樹脂製の成形体を有する廃材を微粉砕して粒状にしてもよい。この場合、混合工程では、上記成形体と同一の熱可塑性樹脂製であって上記廃材とは発色の異なる粒状のバージン材と、微粉砕工程において微粉砕された粒状の廃材とを混合させる。そして、上記実施形態と同様にして、溶融工程、溶融状態保持工程、及び成形工程を行うようにすればよい。このようにしても、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。なお、混合工程は、省略してもよい。
【符号の説明】
【0044】
11…樹脂成形品
12…母材
13…加飾粒子
14…意匠面
15…第1領域
16…第2領域
17…成形型
18…キャビティ
19…成形面
20…第1型
21…第2型
22…熱媒体流路
23…断熱層
図1
図2
図3
図4
図5
図6