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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147298
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20241008BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20241008BHJP
   H01L 29/872 20060101ALI20241008BHJP
   H01L 29/861 20060101ALI20241008BHJP
   H01L 21/329 20060101ALI20241008BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20241008BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20241008BHJP
   H01L 21/3205 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
H01L29/78 652Q
H01L29/78 657D
H01L29/78 655G
H01L29/78 653A
H01L29/78 652J
H01L29/78 657C
H01L29/86 301F
H01L29/91 C
H01L29/78 657F
H01L29/78 657A
H01L29/90 S
H01L29/91 K
H01L29/78 655A
H01L29/78 652M
H01L27/06 102A
H01L27/088 E
H01L27/04 H
H01L21/88 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060220
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小幡 智幸
【テーマコード(参考)】
5F033
5F038
5F048
【Fターム(参考)】
5F033HH04
5F033HH07
5F033HH08
5F033MM08
5F033PP27
5F033PP28
5F033RR04
5F033RR13
5F033RR14
5F033RR15
5F033RR22
5F033SS11
5F033VV06
5F033VV07
5F033XX19
5F038AZ08
5F038BH10
5F038BH16
5F048AA07
5F048AC06
5F048AC07
5F048AC10
5F048BF02
5F048BF03
5F048BF07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】半導体装置の応力集中を防ぐ。
【解決手段】半導体装置100は、半導体基板10に設けられた活性部と、半導体基板10の上方に設けられたPN接合を有する温度センス部178と、半導体基板10の上方に設けられた、第1絶縁層381、第2絶縁層382及び第3絶縁層383からなる層間絶縁膜と、層間絶縁膜の上方に設けられたおもて面側電極52と、を備え、おもて面側電極52と層間絶縁膜との接触領域151は、上面視において、PN接合を覆う。層間絶縁膜の内部において、温度センス部178と電気的に接続された、第1配線180及び第2配線からなる導電配線部を備える。
【選択図】図3B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板に設けられた活性部と、
前記半導体基板の上方に設けられたPN接合を有する温度センス部と、
前記半導体基板の上方に設けられた層間絶縁膜と、
前記層間絶縁膜の上方に設けられたおもて面側電極と、
を備え、
前記おもて面側電極と前記層間絶縁膜との接触領域は、上面視において、前記PN接合を覆う
半導体装置。
【請求項2】
前記層間絶縁膜の内部において、前記温度センス部と電気的に接続された導電配線部を備える
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記層間絶縁膜は、
前記導電配線部の下面に設けられた第1絶縁層と、
前記導電配線部の上面に設けられた第2絶縁層と、
を有する
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記導電配線部は、予め定められた方向に延伸し、前記導電配線部の断面の全周がノンドープの前記層間絶縁膜で覆われる
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記PN接合の断面積は、前記導電配線部の断面積よりも小さい
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記活性部のゲートパッドと電気的に接続されたゲートランナを備え、
前記ゲートランナは、上面視において、前記導電配線部と少なくとも一部が重なるように設けられる
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記活性部のゲートパッドと電気的に接続されたゲートランナを備え、
前記ゲートランナは、上面視において、前記温度センス部と少なくとも一部が重なるように設けられる
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記層間絶縁膜は、前記ゲートランナと前記半導体基板との間に設けられたゲート酸化膜を備える
請求項6に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記ゲートランナは、前記層間絶縁膜を挟んで前記導電配線部の下方に設けられる
請求項6に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記導電配線部は、
前記温度センス部の一端に接続され、前記層間絶縁膜の内部において予め定められた方向に延伸する第1配線と、
前記温度センス部の他端に接続され、前記層間絶縁膜の内部において予め定められた方向に延伸する第2配線と、
を有する
請求項6に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記ゲートランナは、ポリシリコンで構成される
請求項6に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記第2絶縁層は、前記温度センス部の上面を覆う
請求項3に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記導電配線部は、ポリシリコンで構成される
請求項2から12のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記導電配線部は、金属材料で構成される
請求項2から12のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記おもて面側電極の上面に設けられたメッキ膜を備え、
前記メッキ膜と前記おもて面側電極との接触領域は、上面視において、前記温度センス部を覆う
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記メッキ膜の上面に設けられ、前記温度センス部の上方を覆う半田層を備える
請求項15に記載の半導体装置。
【請求項17】
前記おもて面側電極の上方において、前記半田層と離間して設けられた保護膜を備える
請求項16に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「めっき層36が保護膜150と離れていることにより、3重点が存在しなくなる。したがって、3重点に起因した応力集中を防ぐことができる。」と記載されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開2022-178755号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
半導体装置の応力集中を防ぐことが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、半導体基板に設けられた活性部と、前記半導体基板の上方に設けられたPN接合を有する温度センス部と、前記半導体基板の上方に設けられた層間絶縁膜と、前記層間絶縁膜の上方に設けられたおもて面側電極と、を備え、前記おもて面側電極と前記層間絶縁膜との接触領域は、上面視において、前記PN接合を覆う半導体装置を提供する。
【0005】
上記半導体装置において、前記層間絶縁膜の内部において、前記温度センス部と電気的に接続された導電配線部を備えてよい。
【0006】
上記いずれかの半導体装置において、前記層間絶縁膜は、前記導電配線部の下面に設けられた第1絶縁層と、前記導電配線部の上面に設けられた第2絶縁層と、を有してよい。
【0007】
上記いずれかの半導体装置において、前記導電配線部は、予め定められた方向に延伸してよく、前記導電配線部の断面の全周がノンドープの前記層間絶縁膜で覆われてよい。
【0008】
上記いずれかの半導体装置において、前記PN接合の断面積は、前記導電配線部の断面積よりも小さくてよい。
【0009】
上記いずれかの半導体装置において、前記活性部のゲートパッドと電気的に接続されたゲートランナを備えてよく、前記ゲートランナは、上面視において、前記導電配線部と少なくとも一部が重なるように設けられてよい。
【0010】
上記いずれかの半導体装置において、前記活性部のゲートパッドと電気的に接続されたゲートランナを備えてよく、前記ゲートランナは、上面視において、前記温度センス部と少なくとも一部が重なるように設けられてよい。
【0011】
上記いずれかの半導体装置において、前記層間絶縁膜は、前記ゲートランナと前記半導体基板との間に設けられたゲート酸化膜を備えてよい。
【0012】
上記いずれかの半導体装置において、前記ゲートランナは、前記層間絶縁膜を挟んで前記導電配線部の下方に設けられてよい。
【0013】
上記いずれかの半導体装置において、前記導電配線部は、前記温度センス部の一端に接続され、前記層間絶縁膜の内部において予め定められた方向に延伸する第1配線と、前記温度センス部の他端に接続され、前記層間絶縁膜の内部において予め定められた方向に延伸する第2配線と、を有してよい。
【0014】
上記いずれかの半導体装置において、前記ゲートランナは、ポリシリコンで構成されてよい。
【0015】
上記いずれかの半導体装置において、前記第2絶縁層は、前記温度センス部の上面を覆ってよい。
【0016】
上記いずれかの半導体装置において、前記導電配線部は、ポリシリコンで構成されてよい。
【0017】
上記いずれかの半導体装置において、前記導電配線部は、金属材料で構成されてよい。
【0018】
上記いずれかの半導体装置において、前記おもて面側電極の上面に設けられたメッキ膜を備えてよく、前記メッキ膜と前記おもて面側電極との接触領域は、上面視において、前記温度センス部を覆ってよい。
【0019】
上記いずれかの半導体装置において、前記メッキ膜の上面に設けられ、前記温度センス部の上方を覆う半田層を備えてよい。
【0020】
上記いずれかの半導体装置において、前記おもて面側電極の上方において、前記半田層と離間して設けられた保護膜を備えてよい。
【0021】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】半導体装置100のおもて面の各構成要素およびゲート配線部の配置の一例を示す。
図2A】半導体装置100の上面図の一例を示す。
図2B】半導体装置100のB-B'断面図の一例を示す。
図3A】半導体装置100のA-A'断面図における、温度センス部178周辺の拡大図を示す。
図3B】半導体装置100のA-A'断面図の一例を示す。
図4A】半導体装置100のa-a'断面図の一例を示す。
図4B】半導体装置100のa-a'断面図の変形例を示す。
図4C】半導体装置100のb-b'断面図の一例を示す。
図4D】半導体装置100のc-c'断面図の一例を示す。
図5】半導体装置100の上面の一例を示す
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0024】
本明細書では、X軸、Y軸およびZ軸の直交座標軸を用いて技術的事項を説明する場合がある。直交座標軸は、構成要素の相対位置を特定するに過ぎず、特定の方向を限定するものではない。例えば、Z軸は地面に対する高さ方向を限定して示すものではない。なお、+Z軸方向と-Z軸方向とは互いに逆向きの方向である。正負を記載せず、Z軸方向と記載した場合、+Z軸および-Z軸に平行な方向を意味する。また本明細書では、+Z軸方向から見ることを上面視と称する場合がある。
【0025】
本明細書において「同一」または「等しい」のように称した場合、製造ばらつき等に起因する誤差を有する場合も含んでよい。当該誤差は、例えば10%以内である。
【0026】
本明細書においては、不純物がドーピングされたドーピング領域の導電型をP型またはN型として説明している。ただし、各ドーピング領域の導電型は、それぞれ逆の極性であってもよい。また、本明細書においてP+型またはN+型と記載した場合、P型またはN型よりもドーピング濃度が高いことを意味し、P-型またはN-型と記載した場合、P型またはN型よりもドーピング濃度が低いことを意味する。
【0027】
本明細書においてドーピング濃度とは、ドナーまたはアクセプタとして活性化した不純物の濃度を指す。本明細書において、ドナーおよびアクセプタの濃度差を、ドナーまたはアクセプタのうちの多い方の濃度とする場合がある。当該濃度差は、電圧-容量測定法(CV法)により測定できる。また、拡がり抵抗測定法(SR)により計測されるキャリア濃度を、ドナーまたはアクセプタの濃度としてよい。また、ドナーまたはアクセプタの濃度分布がピークを有する場合、当該ピーク値を当該領域におけるドナーまたはアクセプタの濃度としてよい。ドナーまたはアクセプタが存在する領域におけるドナーまたはアクセプタの濃度がほぼ均一な場合等においては、当該領域におけるドナー濃度またはアクセプタ濃度の平均値をドナー濃度またはアクセプタ濃度としてよい。
【0028】
図1は、半導体装置100の上面の一例を示す。半導体装置100は、半導体基板10と、ゲートパッド50と、電流センスパッド172と、温度センス部178と、温度センス部178と電気的に接続されたアノードパッド174およびカソードパッド176と、を備える。半導体装置100は、双方向ダイオード部210および出力比較ダイオード部220を備えてよい。ゲート配線部48は、金属配線47およびゲートランナ46を有する。
【0029】
半導体基板10は、端辺102を有する。本明細書において、図1の上面視における半導体基板10の1つの端辺102-1の方向をX軸とし、X軸に垂直な方向をY軸とする。本例ではX軸は、端辺102-1の方向に取られている。また、X軸方向とY軸方向に対し垂直であり、右手系をなす方向をZ軸方向と称する。
【0030】
半導体基板10は、おもて面において、活性部120を有する。活性部120は、半導体装置100をオン状態にした場合に半導体基板10のおもて面と裏面の間で、深さ方向に主電流が流れる領域である。後述するゲート導電部44は、ゲート配線部48によりゲートパッド50と電気的に接続される。
【0031】
活性部120は、分割して配置された活性部120-1、活性部120-2、活性部120-3、活性部120-4、活性部120-5、および活性部120-6を含んでよい。活性部120には、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)、およびMOS-FET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)等のトランジスタ素子を含むトランジスタ部70が設けられていてよく、FWD(還流ダイオード)等のダイオード素子を含むダイオード部80が設けられていてもよい。トランジスタ部70およびダイオード部80については後述する。活性部120は、トランジスタ部70およびダイオード部80の少なくとも一方が設けられた領域であってよい。トランジスタ部70およびダイオード部80は、活性部120の各領域において、X軸方向に交互に並んで配置されてよい。
【0032】
半導体装置100は、おもて面において、活性部120より外側にはP+型のウェル領域130を有する。半導体装置100は、ウェル領域130より外側にエッジ終端構造部を有する。エッジ終端構造部は、例えば、活性部120を囲んで環状に設けられるガードリング、フィールドプレート、およびこれらを組み合わせた構造を有する。
【0033】
温度センス部178は、半導体基板10の上方に設けられる。本例の温度センス部178は、半導体基板10の中央付近に設けられる。半導体基板10の活性部120を集積化すると、活性部120に形成されたスイッチング素子からの発熱により半導体基板10の中央部が加熱しやすくなる。温度センス部178を中央付近に設けることにより、トランジスタ部70の温度を監視できる。これにより、トランジスタ部70が通常動作温度範囲である接合温度を超えて過熱することを防止できる。
【0034】
温度センス部178は、PN接合を有してよい。温度センス部178は、温度センスダイオードを含んでよい。一例として、温度センス部178は、ショットキーダイオードによって設けられる。また、温度センス部178は、半導体基板10の上方に絶縁膜を介して設けられた、多結晶シリコンによるPN接合ダイオードを含んでよい。温度センス部178は、抵抗値が温度依存性を有する温度抵抗体を含んでよい。例えば、温度抵抗体として多結晶シリコンを用いてよい。
【0035】
導電配線部181は、温度センス部178と、アノードパッド174およびカソードパッド176とを接続する。導電配線部181は、後述する層間絶縁膜380の内部において予め定められた方向(本例では、X軸方向)に延伸して設けられる。導電配線部181は、第1配線180および第2配線182を有する。
【0036】
導電配線部181は、ポリシリコンで構成されてよい。導電配線部181は、タングステン、チタン、窒化チタン、タンタル、および窒化タンタル等の高融点金属で構成されてよい。導電配線部181を、ポリシリコンまたは高融点金属で構成することにより、温度センス配線のマイグレーションによる劣化を抑制できる。
【0037】
第1配線180は、温度センス部178の一端とアノードパッド174とを接続する。本例の第1配線180は、半導体基板10の上方に設けられた層間絶縁膜380の内部において延伸しており、層間絶縁膜380よりも上方には設けられない。このように、第1配線180を層間絶縁膜380の内部に形成することで、導電配線部181および温度センス部178の上方にポリイミド膜等の保護膜を設けることなく、温度センス部178とアノードパッド174とを接続できる。
【0038】
第2配線182は、温度センス部178の他端とカソードパッド176とを接続する。第2配線182は、第1配線180と同時に形成されてよく、別々に形成されてよい。第2配線182の材料は、第1配線180の材料と同一であってよく、異なっていてよい。
【0039】
本例の第2配線182は、第1配線180と同様に、半導体基板10の上方に設けられた層間絶縁膜380の内部において延伸しており、層間絶縁膜380よりも上方には設けられない。このように、第2配線182を層間絶縁膜380の内部に形成することで、導電配線部181および温度センス部178の上方にポリイミド膜等の保護膜を設けることなく、温度センス部178とカソードパッド176とを接続できる。
【0040】
カソードパッド176は、第2配線182を介して温度センス部178に接続されている。アノードパッド174は、第1配線180を介して温度センス部178に接続されている。カソードパッド176およびアノードパッド174は、アルミニウム等の金属を含む電極である。
【0041】
電流センスパッド172は、電流センス部110に電気的に接続されている。電流センスパッド172は、おもて面側電極の一例である。電流センス部110は、活性部120のトランジスタ部70と同様の構造を有しており、トランジスタ部70の動作を模擬する。電流センス部110には、トランジスタ部70に流れる電流に比例する電流が流れる。これにより、トランジスタ部70に流れる電流が監視できる。
【0042】
なお、電流センス部110には、トランジスタ部70と異なり、後述のエミッタ領域12が設けられない。これにより、電流センス部110は、トランジスタとして動作しない。電流センス部110にはゲートトレンチ部が設けられる。電流センス部110のゲートトレンチ部は、ゲート配線部と電気的に接続される。
【0043】
双方向ダイオード部210は、半導体装置100のおもて面において、アノードパッド174およびカソードパッド176の間に配置される。双方向ダイオード部210は、アノードパッド174およびカソードパッド176の間に、直列双方向で電気的に接続されたダイオードを含む。双方向ダイオード部210は、温度センス部178が静電気放電(Electro-Static Discharge,ESD)により損傷することを防止する。
【0044】
出力比較ダイオード部220は、アノードパッド174およびカソードパッド176の間に設けられる。出力比較ダイオード部220は、アノードパッド174およびカソードパッド176に電気的に接続される。出力比較ダイオード部220は、温度センス部178のPN接合の方向とは、逆並列に接続されたPN接合の方向を有する出力比較ダイオードを含む。
【0045】
半導体装置100の動作時において、出力比較ダイオード部220には電流が通電されない。予め定められた周期ごとに、出力比較動作が行われる。出力比較動作の際に、出力比較ダイオード部220に電流が通電される。出力比較動作により、温度センス部178の交換時期を把握できる。
【0046】
ゲート配線部48は、ゲートパッド50に電気的に接続されてよい。さらにゲート配線部48は活性部120に配置されたトランジスタ部70の後述のゲート導電部44に接続され、ゲート導電部44をゲート電位に設定する。ゲート導電部44は、トランジスタ部70のゲート電極に対応する。これにより、トランジスタ部70のトランジスタがスイッチONする。
【0047】
金属配線47は、半導体基板10の上方に設けられる。金属配線47は、活性部120の外周を囲むように環状に延伸してよい。金属配線47は、アルミニウムまたはアルミニウム-シリコン合金等の導電材料で形成されてよい。金属配線47は、エミッタ電極52と互いに分離して設けられる。
【0048】
ゲートランナ46は、半導体基板10の上方であって、金属配線47の下方に設けられる。ゲートランナ46は、金属配線47と電気的に接続される。ゲートランナ46は、活性部120の外周を囲むように環状に延伸してよく、温度センス部178を囲んで配置されてよい。ゲートランナ46は、上面視において、導電配線部181と一部が重なるように形成されてよい。ゲートランナ46は、上面視において、温度センス部178と一部が重なるように形成されてよい。
【0049】
ゲートランナ46は、金属配線47と同一の材料で形成されてよく、異なる材料で形成されてよい。本例のゲートランナ46は、ポリシリコンで構成される。
【0050】
図1では、半導体基板10のおもて面において、ゲート配線部48が設けられた位置を破線で示す。ただし、図中における配線の位置は、他の配線と錯綜しないように概略的な位置を示しているに過ぎない。ゲート配線部48の詳細な位置については後述する。
【0051】
ゲートパッド50は、外部の制御端子に電気的に接続される。ゲートパッド50は、アルミニウム等の金属の導体により設けられる。ゲートパッド50は、ワイヤボンディングにより外部接続されてよい。
【0052】
図2Aは、半導体装置100の上面図の一例である。図2Aは、活性部120-2のY軸方向における負側の端部の近傍を示す。半導体装置100は、IGBT等のトランジスタ素子を含むトランジスタ部70と、還流ダイオード(FWD)等のダイオード素子を含むダイオード部80とを有する半導体基板10を備える。
【0053】
本例の半導体装置100は、半導体基板10のおもて面側の内部に設けられたゲートトレンチ部40、ダミートレンチ部30、ウェル領域130、エミッタ領域12、ベース領域14およびコンタクト領域15を備える。ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30は、それぞれがトレンチ部の一例である。
【0054】
また、本例の半導体装置100は、半導体基板10のおもて面の上方に設けられた金属配線47およびエミッタ電極52を備える。エミッタ電極52は、おもて面側電極の一例である。金属配線47とエミッタ電極52とは、電気的に絶縁される。
【0055】
エミッタ電極52および金属配線47と、半導体基板10のおもて面との間には層間絶縁膜が設けられるが、図2Aでは省略している。本例の層間絶縁膜には、コンタクトホール49、54および56が、当該層間絶縁膜を貫通して設けられる。図2Aにおいては、それぞれのコンタクトホールに斜線のハッチングを付している。
【0056】
エミッタ電極52は、ゲートトレンチ部40、ダミートレンチ部30、ウェル領域130、エミッタ領域12、ベース領域14およびコンタクト領域15の上方に設けられる。エミッタ電極52は、コンタクトホール54によって、半導体基板10のおもて面におけるエミッタ領域12、ベース領域14およびコンタクト領域15と電気的に接続する。
【0057】
また、エミッタ電極52は、コンタクトホール56によってダミートレンチ部30内のダミー導電部と接続される。エミッタ電極52とダミー導電部との間には、不純物がドープされたポリシリコン等の、導電性を有する材料で形成された接続部25が設けられてよい。接続部25は、層間絶縁膜およびダミートレンチ部30のダミー絶縁膜等の絶縁膜を介して半導体基板10のおもて面に設けられる。
【0058】
ゲートランナ46は、半導体基板10のおもて面において、ゲートトレンチ部40内のゲート導電部に接続する。ゲートランナ46は、コンタクトホール49を介して金属配線47と電気的に接続される。ゲートランナ46は、ダミートレンチ部30内のダミー導電部およびエミッタ電極52には電気的に接続しない。
【0059】
ゲートランナ46とエミッタ電極52とは層間絶縁膜および酸化膜などの絶縁物により電気的に分離される。本例のゲートランナ46は、コンタクトホール49の下方から、ゲートトレンチ部40の先端部(Y軸方向端部)まで設けられる。ゲート導電部は、ゲートトレンチ部40の先端部において半導体基板10のおもて面に露出しており、ゲートランナ46と接続する。
【0060】
エミッタ電極52は、金属を含む導電性材料で形成される。例えば、アルミニウムまたはアルミニウム-シリコン合金で形成される。エミッタ電極52は、アルミニウム等で形成された領域の下層にチタンやチタン化合物等で形成されたバリアメタルを有してよい。
【0061】
エミッタ電極52は、コンタクトホール内においてタングステン等で形成されたプラグを有してもよい。プラグは、半導体基板10に接する側にバリアメタルを有し、バリアメタルに接するようにタングステンを埋め込み、タングステン上にアルミニウム等で形成されてよい。
【0062】
ウェル領域130は、ゲートランナ46の外側に外周領域と重なって延伸し、上面視で環状に設けられている。ウェル領域130は、ゲートランナ46の内側の活性部120にも、所定の幅で延伸し、上面視で環状に設けられている。本例のウェル領域130は、コンタクトホール54のY軸方向の端部よりもゲートランナ46側に離れた範囲に設けられている。ウェル領域130は、ベース領域14よりもドーピング濃度の高い第2導電型の領域である。ウェル領域130のドーピング濃度は、コンタクト領域15のドーピング濃度と同じであってよく、またはこれより低くてもよい。ゲートランナ46は、ウェル領域130と電気的に絶縁される。
【0063】
本例のベース領域14はP-型であり、ウェル領域130はP+型である。また、ウェル領域130は、半導体基板のおもて面から、ベース領域14の下端よりも深い位置まで形成されている。ベース領域14は、トランジスタ部70およびダイオード部80において、ウェル領域130に接して設けられている。ウェル領域130は、エミッタ電極52と電気的に接続されている。
【0064】
トランジスタ部70およびダイオード部80のそれぞれは、配列方向に複数配列されたトレンチ部を有する。本例のトランジスタ部70には、配列方向に沿って1以上のゲートトレンチ部40と1以上のダミートレンチ部30とが交互に設けられている。本例のダイオード部80には、複数のダミートレンチ部30が、配列方向に沿って設けられている。
【0065】
本例において、トレンチ部の配列方向はX軸方向であり、配列方向と垂直な延伸方向はY軸方向である。本例のゲートトレンチ部40は、延伸方向に沿って延伸する2つの延伸部分41(延伸方向に沿って直線状であるトレンチの部分)と、2つの延伸部分41を接続する接続部分43を有してよい。
【0066】
接続部分43の少なくとも一部は、上面視において曲線状に設けられてよい。2つの延伸部分41のY軸方向における端部同士を接続部分43がゲートランナ46と接続することで、ゲートトレンチ部40へのゲート電極として機能する。一方、接続部分43を曲線状にすることにより延伸部分41で完結するよりも、端部における電界集中を緩和できる。
【0067】
トランジスタ部70において、ダミートレンチ部30はゲートトレンチ部40のそれぞれの延伸部分41の間に設けられる。図2Aの例では、それぞれの延伸部分41の間に1本のダミートレンチ部30が設けられているが、2本以上のダミートレンチ部30が設けられてもよい。
【0068】
またそれぞれの延伸部分41の間には、ダミートレンチ部30が設けられなくてもよく、ゲートトレンチ部40が設けられてもよい。このような構造により、エミッタ領域12からの電子電流を増大することができるため、オン電圧が低減する。
【0069】
ダミートレンチ部30は、延伸方向に延伸する直線形状を有してよく、ゲートトレンチ部40と同様に、延伸部分31と接続部分33とを有していてもよい。図2Aに示した半導体装置100は、接続部分33を有するダミートレンチ部30のみが配列されているが、他の例においては、半導体装置100は、接続部分33を有さない直線形状のダミートレンチ部30を含んでもよい。
【0070】
ウェル領域130の拡散深さは、ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の深さよりも深くてよい。ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30のY軸方向の端部は、上面視においてウェル領域130に設けられる。つまり、各トレンチ部のY軸方向の端部において、各トレンチ部の深さ方向(Z軸方向正側)の底部は、ウェル領域130に覆われている。これにより、各トレンチ部の当該底部における電界集中を緩和できる。
【0071】
配列方向において各トレンチ部の間には、メサ部が設けられている。メサ部は、半導体基板10の内部において、トレンチ部に挟まれた領域を指す。一例としてメサ部の深さ位置は、半導体基板のおもて面からトレンチ部の下端までである。
【0072】
本例のメサ部は、X軸方向において隣接するトレンチ部に挟まれ、半導体基板10のおもて面においてトレンチに沿って延伸方向(Y軸方向)に延伸して設けられている。
【0073】
それぞれのメサ部には、ベース領域14が設けられる。それぞれのメサ部には、上面視においてベース領域14に挟まれた領域に、第1導電型のエミッタ領域12および第2導電型のコンタクト領域15の少なくとも一方が設けられてよい。本例のエミッタ領域12はN+型であり、コンタクト領域15はP+型である。エミッタ領域12およびコンタクト領域15は、深さ方向において、ベース領域14と半導体基板10のおもて面との間に設けられてよい。エミッタ領域12のドーパントは、一例としてヒ素(As)、リン(P)、アンチモン(Sb)等である。
【0074】
トランジスタ部70のメサ部は、半導体基板10のおもて面に露出したエミッタ領域12を有する。エミッタ領域12は、ゲートトレンチ部40に接して設けられている。ゲートトレンチ部40に接するメサ部には、半導体基板10のおもて面に露出したコンタクト領域15が設けられている。
【0075】
メサ部におけるコンタクト領域15およびエミッタ領域12のそれぞれは、X軸方向における一方のトレンチ部から、他方のトレンチ部まで設けられる。一例として、メサ部のコンタクト領域15およびエミッタ領域12は、トレンチ部の延伸方向(Y軸方向)に沿って交互に配置されている。
【0076】
他の例においては、メサ部のコンタクト領域15およびエミッタ領域12は、トレンチ部の延伸方向(Y軸方向)に沿ってストライプ状に設けられていてもよい。例えばトレンチ部に接する領域にエミッタ領域12が設けられ、エミッタ領域12に挟まれた領域にコンタクト領域15が設けられる。
【0077】
ダイオード部80のメサ部には、エミッタ領域12が設けられていない。ダイオード部80のメサ部の上面には、ベース領域14が設けられてよい。ベース領域14は、ダイオード部80のメサ部全体に配置されてよい。ダイオード部80のベース領域14は、アノードとして動作する。
【0078】
それぞれのメサ部の上方には、コンタクトホール54が設けられている。コンタクトホール54は、その延伸方向(Y軸方向)においてベース領域14に挟まれた領域に配置されている。本例のコンタクトホール54は、コンタクト領域15、ベース領域14およびエミッタ領域12の各領域の上方に設けられる。コンタクトホール54は、メサ部の配列方向(X軸方向)における中央に配置されてよい。
【0079】
ダイオード部80において、半導体基板の裏面と隣接する領域には、N+型のカソード領域82が設けられる。半導体基板の裏面において、カソード領域82が設けられていない領域には、P+型のコレクタ領域22が設けられてよい。図2Aにおいては、カソード領域82およびコレクタ領域22の境界を点線で示している。
【0080】
コレクタ領域22とカソード領域82との境界は、トランジスタ部70とダイオード部80との境界である。即ち、本例において、トランジスタ部70は、半導体基板10の裏面側に設けられたコレクタ領域22を半導体基板10の上面に投影した領域である。また、ダイオード部80は、半導体基板10の裏面に設けられたカソード領域82を半導体基板10の上面に投影した領域である。
【0081】
図2Bは、図2AにおけるB-B'断面の一例を示す。B-B'断面は、トランジスタ部70において、エミッタ領域12を通過するXZ面である。本例の半導体装置100は、B-B'断面において、エミッタ領域12、ベース領域14、蓄積領域16、ドリフト領域18、バッファ領域20、コレクタ領域22およびカソード領域82を含む半導体基板10、層間絶縁膜38、エミッタ電極52およびコレクタ電極24を有する。コレクタ電極24は、半導体基板10の裏面23と接して設けられた裏面側金属層の一例である。
【0082】
ドリフト領域18は、半導体基板10に設けられた第1導電型の領域である。本例のドリフト領域18は、一例としてN-型である。ドリフト領域18は、半導体基板10において他のドーピング領域が形成されずに残存した領域であってよい。即ち、ドリフト領域18のドーピング濃度は半導体基板10のドーピング濃度であってよい。
【0083】
蓄積領域16は、半導体基板10において、ベース領域14の下方に設けられた第1導電型の領域である。蓄積領域16のドーピング濃度は、ドリフト領域18のドーピング濃度よりも高い。本例の蓄積領域16は、一例としてN+型である。
【0084】
蓄積領域16は、トランジスタ部70に設けられ、ダイオード部80には設けられなくてよい。蓄積領域16は、トランジスタ部70とダイオード部80の両方に設けられてよい。蓄積領域16を設けることで、キャリア注入促進効果(IE効果)を高めて、トランジスタ部70のオン電圧を低減できる。
【0085】
ドリフト領域18の下方には、第1導電型のバッファ領域20が設けられてよい。本例のバッファ領域20は、N型である。バッファ領域20のドーピング濃度は、ドリフト領域18のドーピング濃度よりも高い。バッファ領域20は、ベース領域14の下面側から広がる空乏層が、コレクタ領域22およびカソード領域82に到達することを防ぐフィールドストップ層として機能してよい。
【0086】
トランジスタ部70において、バッファ領域20の下方にはコレクタ領域22が設けられる。コレクタ領域22は、裏面23においてカソード領域82と接して設けられていてよい。
【0087】
ダイオード部80において、バッファ領域20の下方にはカソード領域82が設けられる。カソード領域82は、トランジスタ部70のコレクタ領域22と同じ深さに設けられてよい。ダイオード部80は、トランジスタ部70がターンオフする時に、逆方向に導通する還流電流を流す還流ダイオード(FWD)として機能してよい。
【0088】
コレクタ電極24は、半導体基板10の裏面23に形成される。コレクタ電極24は、金属等の導電材料で形成される。コレクタ電極24は、エミッタ電極52と同一の導電材料で形成されてよく、異なる導電材料で形成されてよい。
【0089】
ゲートトレンチ部40は、おもて面21に形成されたゲートトレンチ、ゲート絶縁膜42およびゲート導電部44を有する。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチの内壁を覆って形成される。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチの内壁の半導体を酸化または窒化して形成してよい。ゲート導電部44は、ゲートトレンチの内部においてゲート絶縁膜42よりも内側に形成される。ゲート絶縁膜42は、ゲート導電部44と半導体基板10とを絶縁する。ゲート導電部44は、ポリシリコン等の導電材料で形成される。ゲートトレンチ部40は、おもて面21において層間絶縁膜38により覆われる。
【0090】
ゲート導電部44は、半導体基板10の深さ方向において、ゲート絶縁膜42を挟んで隣接するベース領域14と対向する領域を含む。ゲート導電部44に所定の電圧が印加されると、ベース領域14のうちゲートトレンチに接する界面の表層に、電子の反転層によるチャネルが形成される。
【0091】
ダミートレンチ部30は、ゲートトレンチ部40と同一の構造を有してよい。ダミートレンチ部30は、おもて面21側に形成されたダミートレンチ、ダミー絶縁膜32およびダミー導電部34を有する。ダミー絶縁膜32は、ダミートレンチの内壁を覆って形成される。ダミー導電部34は、ダミートレンチの内部に形成され、且つ、ダミー絶縁膜32よりも内側に形成される。ダミー絶縁膜32は、ダミー導電部34と半導体基板10とを絶縁する。ダミートレンチ部30は、おもて面21において層間絶縁膜38により覆われる。
【0092】
層間絶縁膜38は、おもて面21に設けられている。層間絶縁膜38の上方には、エミッタ電極52が設けられている。層間絶縁膜38には、エミッタ電極52と半導体基板10とを電気的に接続するための1又は複数のトレンチコンタクト部が設けられてよい。コンタクトホール49およびコンタクトホール56も同様に、層間絶縁膜38を貫通して設けられたトレンチコンタクト部を有してよい。
【0093】
図3Aは、図1のA-A'断面における、温度センス部178の周辺の拡大図の一例を示す図である。A-A'断面は、アノードパッド174、ゲートランナ46、第1配線180、温度センス部178およびゲートパッド50を通過するXZ断面である。
【0094】
層間絶縁膜380は、半導体基板10のおもて面およびおもて面側電極の間に設けられる。層間絶縁膜380は、第1絶縁層381、第2絶縁層382、第3絶縁層383およびゲート酸化膜384を含む。層間絶縁膜380は、追加の絶縁層を含んでよい。
【0095】
ゲート酸化膜384は、ゲートランナ46と半導体基板10との間に設けられる。ゲート酸化膜384は、ダミー絶縁膜32およびゲート絶縁膜42と同様、半導体基板10のおもて面を酸化または窒化して形成されてよい。
【0096】
第1絶縁層381は、半導体基板10のおもて面の上方に設けられる。第1絶縁層381は、温度センス部178および導電配線部181の下面に設けられてよい。第1絶縁層381は、高温シリコン酸化(HTO:High Temperature Oxide)膜であってよい。第1絶縁層381は、ノンドープのシリコン酸化膜であってよい。一例では、第1絶縁層381は、酸化ケイ素(SiO)である。第1絶縁層381を温度センス部178の下面に設けることにより、耐圧を向上することができる。
【0097】
第2絶縁層382は、第1絶縁層381よりも上方に設けられる。第2絶縁層382は、導電配線部181の上面に設けられてよい。第2絶縁層382の材料は、第1絶縁層381と同一であってよく、異なっていてよい。
【0098】
本例では、第1絶縁層381および第2絶縁層382は、共にノンドープのシリコン酸化膜である。第1絶縁層381および第2絶縁層382をノンドープのシリコン酸化膜で構成することにより、ゲートランナ46、温度センス部178および導電配線部181がポリシリコンで構成される場合にも、層間絶縁膜38に含まれるホウ素(B)等の元素により汚染されることを防ぐことができる。
【0099】
第3絶縁層383は、第2絶縁層382よりも上方に設けられる。第3絶縁層383は、BPSG(Boro‐phospho Silicate Glass)膜であってよく、BSG(borosilicate glass)膜であってよく、PSG(Phosphosilicate glass)膜であってよい。本例の第3絶縁層383は、BPSG膜である。
【0100】
温度センス部178は、ポリシリコンで構成されてよい。本例の温度センス部178は、Y軸方向においてPN接合を有する。PN接合の抵抗が温度依存性を示すので、温度センス部178が半導体装置100の活性部120における温度を測定することができる。
【0101】
温度センス部178のPN接合は、上面視において層間絶縁膜380およびおもて面側電極の接触領域151に覆われている。比較例の半導体装置においては、温度センス部178の上方に温度センス部178と接続されたアノード配線またはカソード配線が設けられており、おもて面側電極が設けられていない。本例の半導体装置100は、アノード配線およびカソード配線を温度センス部178の上方に設けず、層間絶縁膜380の内部を延伸する導電配線部181により温度センス部178を電気的に接続しているので、PN接合を接触領域151で覆うことができる。
【0102】
温度センス部178の上面は、第2絶縁層382により覆われている。比較例の半導体装置においては、温度センス部178の上方に温度センス部178とアノード配線またはカソード配線とを接続するためのコンタクトホールが設けられており、第2絶縁層382により覆われていない。本例の半導体装置100は、導電配線部181を層間絶縁膜380の内部に設けることにより、温度センス部178の上面を第2絶縁層382により覆い、温度センス部178の特性を安定化することができる。
【0103】
図3Bは、図1のA-A'断面の一例を示す。図3Bにおいては、導電性を有する部分にハッチングを示してある。
【0104】
図3Bに示すように、ゲートランナ46は、上面視において、導電配線部181と少なくとも一部が重なるように設けられてよい。ゲートランナ46は、層間絶縁膜380を挟んで導電配線部181の下方に設けられてよい。ゲートランナ46と半導体基板10のおもて面との間には、ゲート酸化膜384が設けられてよい。ゲートランナ46は、コンタクトホール57を介してゲートパッド50と接続されてよい。
【0105】
図3Bに示すように、第1配線180は、層間絶縁膜380の内部をX軸方向に延伸するように設けられている。第1配線180は、アノードパッド174とコンタクトホール57を介して接続されている。これにより、アノードパッド174と温度センス部178とを電気的に接続することができる。同様に、第2配線182は、カソードパッド176と温度センス部178とを電気的に接続することができる。
【0106】
メッキ膜155は、おもて面側電極の上方に設けられる。メッキ膜155は、おもて面電極の上方であって、保護膜150が設けられていない部分に設けられる。メッキ膜155の材料は、半田よりも表面張力の大きい金属であってよい。一例において、メッキ膜155は、ニッケルめっきである。
【0107】
メッキ膜155の厚さは、おもて面側電極の厚さよりも薄くてよい。メッキ膜155の厚さは、1.0μm以上であってよく、6.0μm以下であってよい。
【0108】
上面視において、メッキ膜155とおもて面側電極との接触領域152は、温度センス部178を覆ってよい。比較例の半導体装置においては、温度センス部の上方にアノード配線およびカソード配線が設けられており、おもて面側電極およびメッキ膜155が設けられていない。
【0109】
半田層160は、メッキ膜155の上面に設けられる。半田層160は、外部の制御端子に電気的に接続される。半田層160は、リードフレームにより外部接続されるリードフレーム領域を形成してよい。
【0110】
保護膜150は、おもて面側電極の上方に設けられる。保護膜150は、エミッタ電極52の上面に接していてよい。保護膜150を設けることにより、半導体装置100の上面を保護することができる。保護膜150は、一例としてポリイミド膜である。
【0111】
本例の保護膜150は、半田層160と離間して設けられている。一般に、有機材料で構成される保護膜150と、金属材料で構成されるメッキ膜155および半田層160とは熱による膨張率が異なるので、保護膜150、メッキ膜155および半田層160の3つが接する三重点が存在する場合、当該三重点において応力集中が発生するおそれがある。本例の保護膜150は、半田層160と離間して設けられているので、三重点の発生を回避し、応力集中の発生を防ぐことができる。
【0112】
図4Aは、図1および図3Bのa-a'線における断面の一例を示す。a-a'線における断面は、温度センス部178を通過するYZ断面である。本例の温度センス部178は、XZ面内においてPN接合を有しているが、これに限定されない。即ち、温度センス部178は、異なる方向においてPN接合を有していてよい。
【0113】
温度センス部178は一例として、第1導電型の半導体領域と第2導電型の半導体領域とを1つずつ含む。温度センス部178は、複数の第1導電型の半導体領域および複数の第2導電型の半導体領域を含んでよい。一例として、温度センス部178は、PNP型の接合を含む。
【0114】
温度センス部178は、ポリシリコンで構成されていればPN接合を有していなくてもよい。ポリシリコンは抵抗値が温度依存性を示すので、温度センス部178は、半導体装置100の温度を測定することができる。温度センス部178がPN接合を有している場合、温度センス部178における抵抗値が、有していない場合よりも高くなるので、より温度測定の精度を向上できる。
【0115】
本例において、アノードパッド174と温度センス部178のP型領域が、カソードパッド176と温度センス部178のN型領域が、それぞれ接続されている。アノードパッド174と温度センス部178のN型領域が、カソードパッド176と温度センス部178のP型領域が、それぞれ接続されてよい。これにより、温度センス部178が温度を検出する際、PN接合に流れる電流の向きが逆方向となり、温度センス部178のPN接合における抵抗値が高くなるので、温度センス部178の精度を向上させることができる。
【0116】
図4Bは、図1および図3Bのa-a'線における断面の変形例を示す。図4Bにおいては、図4Aと異なる点について説明する。
【0117】
図4Bに示すように、ゲートランナ46は、上面視において温度センス部178と一部が重なるように設けられてよい。即ち、温度センス部178は、第1絶縁層381を挟んで、ゲートランナ46と対向して設けられてよい。温度センス部178は、ゲートランナ46の上方に設けられてよい。一例では、温度センス部178に含まれるP型領域とN型領域の両方が、ゲートランナ46の上方に設けられる。このように、ゲートランナ46と温度センス部178との間に層間絶縁膜380を設けることにより、層間絶縁膜380の内部における各配線の自由度を向上できる。
【0118】
図4Cは、図1および図3Bのb-b'線における断面の一例を示す。b-b'線における断面は、温度センス部178およびアノードパッド174の間を通過するYZ断面である。本例の半導体装置100は、半導体基板10のおもて面の上方において、ゲート酸化膜384、ゲートランナ46、第1絶縁層381、導電配線部181、第2絶縁層382、第3絶縁層383の順に積層された構造を有してよい。
【0119】
第1配線180および第2配線182は、断面の全周がノンドープの層間絶縁膜380で覆われる。即ち、導電配線部181は、延伸方向に対し垂直な断面における全周が、第1絶縁層381および第2絶縁層382に覆われる。このように、ノンドープの層間絶縁膜380で導電配線部181を覆うことにより、導電配線部181を汚染から保護し、温度センス部178の特性を安定化できる。
【0120】
導電配線部181は、ポリシリコンで構成されてよく、高融点の金属材料で構成されてよい。導電配線部181をポリシリコンで構成する場合、導電配線部181および温度センス部178に含まれるドーパントの量は、同一であってよく、異なっていてよい。導電配線部181を金属材料で構成する場合、ポリシリコンで構成する場合よりも導電配線部181の抵抗値が低くなるので、温度センス部178の温度検出の精度を向上できる。
【0121】
導電配線部181の断面は、温度センス部178のPN接合の断面積よりも大きい。即ち、本例において、XZ平面内における温度センス部178のPN接合の断面積(面積)は、YZ平面内における導電配線部181の断面積よりも小さい。これにより、温度センス部178のPN接合における抵抗値が導電配線部181の抵抗値よりも高くなり、導電配線部181をポリシリコンで構成した場合でも、温度センス部178の精度を向上させることができる。
【0122】
本例のゲートランナ46および導電配線部181は、上面視において一部が重なるように配置されてよい。ゲートランナ46および導電配線部181は、共にX軸方向に延伸しているが、ゲートランナ46は、Y軸方向に延伸していてもよい。ゲートランナ46と導電配線部181との間に層間絶縁膜380を設けることにより、層間絶縁膜380の内部における各配線の自由度を向上できる。
【0123】
図4Dは、図1および図3Bのc-c'線における断面の一例を示す。c-c'線における断面は、温度センス部178およびゲートパッド50の間を通過するYZ断面である。
【0124】
図4Dにおいては、ゲートパッド50と電気的に接続されたゲートランナ46が示されている。ゲートランナ46は、コンタクトホールを介してゲートトレンチ部40と電気的に接続され、半導体装置100の動作を制御できる。
【0125】
ゲートランナ46の上方に導電配線部181が設けられていない場合、ゲートランナ46の上方には、第1絶縁層381および第2絶縁層382が設けられなくてよい。ゲートランナ46の上面は、第3絶縁層383に覆われていてよい。本例のゲートランナ46の上方には、第2絶縁層382が設けられている。ゲートランナ46と半導体基板10のおもて面との間には、ゲート酸化膜384が設けられる。
【0126】
図5は、本例の半導体装置100の上面の一例を示す。図5において、保護膜150が設けられる領域にハッチングを示してある。
【0127】
図5に示すように、本例の半導体装置100においては、温度センス部178とアノードパッド174およびカソードパッド176との接続が、層間絶縁膜380の内部において行われているので、温度センス部178の上方に保護膜150が設けられていない。これにより、エミッタ電極52等のおもて面側電極が保護膜150により分離されず、単一のエミッタ電極52を用いて半導体装置100の動作を制御できる。
【0128】
本例において、単一のエミッタ電極52が、離間して設けられた活性部120-1、活性部120-2、活性部120-3、活性部120-4、活性部120-5、および活性部120-6のそれぞれと電気的に接続されている。単一のエミッタ電極52を用いることで、エミッタ電極同士を連結するためのワイヤ等の構成を用いることなく、半導体装置100の動作を制御することができる。
【0129】
図5に示すように、本例の半導体装置100においては、半田層160と保護膜150とが分離されている。これにより、半導体装置100において三重点の発生を回避し、応力集中を防ぐことができる。
【0130】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0131】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0132】
10・・・半導体基板、12・・・エミッタ領域、14・・・ベース領域、15・・・コンタクト領域、16・・・蓄積領域、18・・・ドリフト領域、20・・・バッファ領域、21・・・おもて面、22・・・コレクタ領域、23・・・裏面、24・・・コレクタ電極、25・・・接続部、30・・・ダミートレンチ部、31・・・延伸部分、32・・・ダミー絶縁膜、33・・・接続部分、34・・・ダミー導電部、38・・・層間絶縁膜、40・・・ゲートトレンチ部、41・・・延伸部分、42・・・ゲート絶縁膜、43・・・接続部分、44・・・ゲート導電部、46・・・ゲートランナ、47・・・金属配線、48・・・ゲート配線部、49・・・コンタクトホール、50・・・ゲートパッド、52・・・エミッタ電極、54・・・コンタクトホール、56・・・コンタクトホール、57・・・コンタクトホール、70・・・トランジスタ部、80・・・ダイオード部、82・・・カソード領域、100・・・半導体装置、102・・・端辺、110・・・電流センス部、120・・・活性部、130・・・ウェル領域、150・・・保護膜、151・・・接触領域、152・・・接触領域、155・・・メッキ膜、160・・・半田層、172・・・電流センスパッド、174・・・アノードパッド、176・・・カソードパッド、178・・・温度センス部、180・・・第1配線、181・・・導電配線部、182・・・第2配線、210・・・双方向ダイオード部、220・・・出力比較ダイオード部、380・・・層間絶縁膜、381・・・第1絶縁層、382・・・第2絶縁層、383・・・第3絶縁層、384・・・ゲート酸化膜
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図5