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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147300
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】固体撮像装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 25/707 20230101AFI20241008BHJP
   H04N 25/70 20230101ALI20241008BHJP
【FI】
H04N25/707
H04N25/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060225
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100110582
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 昌聰
(72)【発明者】
【氏名】宅見 宗則
(72)【発明者】
【氏名】内田 圭祐
【テーマコード(参考)】
5C024
【Fターム(参考)】
5C024CY26
5C024GX03
5C024GY31
5C024GY39
5C024HX17
5C024HX29
5C024HX32
5C024HX50
5C024JX09
(57)【要約】
【課題】消費電力および信号伝送帯域の双方の低減をすることができるイベントドリブン型の固体撮像装置を提供する。
【解決手段】固体撮像装置1Aは、受光部10A、読出部20、選択部30、カウンタ群40A、処理部50および制御部60Aを備える。受光部10AはN個の画素12Aを含む。カウンタ群40AはM個のカウンタを含む。各画素12Aは、イベントを検出してイベント信号を出力する。選択部30は、各画素および各イベント情報とカウンタとの間の対応関係に基づいて、イベント信号を出力した画素およびイベント種類に対応する複数のカウンタを選択し、その選択した複数のカウンタにイベント信号を入力させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々光の入射に基づいてK種類のイベントを検出してイベント検出を表すイベント信号を出力するN個の画素が配列された受光部と、
各々前記イベント信号の入力に基づいてイベント検出数をカウントするM個のカウンタを含むカウンタ群と(ただし、1<M<NK)、
前記N個の画素のうちの各画素および前記K種類のイベントのうちの各イベント種類と、前記M個のカウンタのうちの複数のカウンタと、の間の対応関係に基づいて、前記イベント信号を出力した画素およびイベント種類に対応する複数のカウンタを選択し、その選択した複数のカウンタに前記イベント信号を入力させる選択部と、
を備える固体撮像装置。
【請求項2】
前記選択部は、各画素の位置情報に基づいて該画素に対応する複数のカウンタを選択する回路を含む、
請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項3】
前記選択部は、各画素と該画素に対応する複数のカウンタとを電気的に接続する固定配線を含む、
請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項4】
前記受光部は複数のエリアに区分され、前記複数のエリアそれぞれについて前記カウンタ群が設けられている、
請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項5】
前記N個の画素それぞれは、該画素に入射した光に関するイベントを検出する、
請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項6】
前記N個の画素それぞれは、該画素内の電気信号に関するイベントを検出する、
請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項7】
前記選択部における画素とカウンタとの間の対応関係および前記M個のカウンタそれぞれのカウント値に基づいて、圧縮センシング技術により、前記受光部に入射した光の像または該像の変化を再構成する処理部を更に備える、
請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項8】
前記選択部における画素とカウンタとの間の対応関係および前記M個のカウンタそれぞれのカウント値に基づいて、機械学習ユニットによって推論する処理部を更に備える、
請求項1に記載の固体撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
固体撮像装置は、一般に、光入射に応じて信号を出力する複数の画素が配列された受光部を備え、これら複数の画素それぞれからの出力信号に基づいて、受光部に入射した光の像を取得することができる。
【0003】
圧縮センシングを用いる撮像技術も知られている(特許文献1、非特許文献1)。この撮像技術は、複数のマスクパターン(圧縮パターン)それぞれについて、該マスクパターンにより受光部の複数の画素のうちから幾つかの画素を選択し、その選択した幾つかの画素それぞれから出力される信号の和を求める。そして、複数のマスクパターンそれぞれについて求めた信号の和に基づいて所要の演算を行うことで、受光部に入射した光の像を再構成することができる。この技術は、複数のマスクパターンを順次に切り替えて出力信号の和を求める必要があることから、像の再構成に必要なデータを取得するのに要する時間が長く、光の像の変化が速い場合にはモーションブラーが発生する。これを回避するにはフレームレートを速くする必要があるが、その場合には消費電力が増大する。
【0004】
イベントドリブン型の固体撮像装置も知られている(特許文献2,3、非特許文献2)。この固体撮像装置では、受光部に配列された複数の画素それぞれは、イベント(例えば入射光強度の変化)を検出すると、該イベントを検出した旨を表すイベント信号を出力する。複数の画素それぞれは、イベントを検出しなければイベント信号を出力しない。この固体撮像装置では、受光部に配列された複数の画素のうちイベントを検出した画素のみが、非同期で該画素の位置を示す位置信号およびイベント信号を後段の処理部へ出力する。そして、画素の位置信号およびイベント信号を受けた処理部により、受光部に入射した光の像の変化を求めることができる。この固体撮像装置は、撮像の対象によっては消費電力を低減することができると期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-112364号公報
【特許文献2】特表2022-548199号公報
【特許文献3】特表2021-524705号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】L. Jacques, et al, "CMOScompressed imaging by Random Convolution," in 2009 IEEE InternationalConference on Acoustics, Speech and Signal Processing, (IEEE, 2009).
【非特許文献2】Thomas Finateu, et al, "A1280×720 Back-Illuminated Stacked Temporal Contrast Event-Based Vision Sensorwith 4.86μm Pixels, 1.066GEPS Readout, Programmable Event-Rate Controller andCompressive Data-Formatting Pipeline," ISSCC 2020 / SESSION 5 / IMAGERSAND ToF SENSORS / 5.10
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のイベントドリブン型の固体撮像装置では、複数の画素それぞれがイベントを検出すると位置信号およびイベント信号を後段の処理部へ伝送することから、それらの信号の伝送に必要な帯域が大きい。
【0008】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、消費電力および信号伝送帯域の双方の低減をすることができるイベントドリブン型の固体撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の固体撮像装置の第1態様は、(1) 各々光の入射に基づいてK種類のイベントを検出してイベント検出を表すイベント信号を出力するN個の画素が配列された受光部と、(2) 各々イベント信号の入力に基づいてイベント検出数をカウントするM個のカウンタを含むカウンタ群と(ただし、1<M<NK)、(3) N個の画素のうちの各画素およびK種類のイベントのうちの各イベント種類と、M個のカウンタのうちの複数のカウンタと、の間の対応関係に基づいて、イベント信号を出力した画素およびイベント種類に対応する複数のカウンタを選択し、その選択した複数のカウンタにイベント信号を入力させる選択部と、を備える。
【0010】
本発明の固体撮像装置は、次のような態様としてもよい。
【0011】
第2態様では、第1態様に加えて、選択部は、各画素の位置情報に基づいて該画素に対応する複数のカウンタを選択する回路を含む。
【0012】
第3態様では、第1態様に加えて、選択部は、各画素と該画素に対応する複数のカウンタとを電気的に接続する固定配線を含む。
【0013】
第4態様では、第1~第3の態様の何れかに加えて、受光部は複数のエリアに区分され、複数のエリアそれぞれについてカウンタ群が設けられている。
【0014】
第5態様では、第1~第4の態様の何れかに加えて、N個の画素それぞれは、該画素に入射した光に関するイベントを検出する。
【0015】
第6態様では、第1~第5の態様の何れかに加えて、N個の画素それぞれは、該画素内の電気信号に関するイベントを検出する。
【0016】
第7態様では、第1~第6の態様の何れかに加えて、固体撮像装置は、選択部における画素とカウンタとの間の対応関係およびM個のカウンタそれぞれのカウント値に基づいて、圧縮センシング技術により、受光部に入射した光の像または該像の変化を再構成する処理部を更に備える。
【0017】
第8態様では、第1~第6の態様の何れかに加えて、固体撮像装置は、選択部における画素とカウンタとの間の対応関係およびM個のカウンタそれぞれのカウント値に基づいて、機械学習ユニットによって推論する処理部を更に備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、消費電力および信号伝送帯域の双方の低減をすることができるイベントドリブン型の固体撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、第1実施形態の固体撮像装置1Aの構成を示す図である。
図2図2は、第1実施形態の固体撮像装置1Aの各画素12Aの構成を示す図である。
図3図3は、フレームおよびサブフレームについて説明する図である。
図4図4は、第2実施形態の固体撮像装置1Bの構成を示す図である。
図5図5は、第2実施形態の固体撮像装置1Bの各エリア11Bの構成を示す図である。
図6図6は、第2実施形態の固体撮像装置1Bの各画素12Bの構成を示す図である。
図7図7は、第3実施形態の固体撮像装置の各画素12Cの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0021】
図1は、第1実施形態の固体撮像装置1Aの構成を示す図である。固体撮像装置1Aは、受光部10A、読出部20、選択部30、カウンタ群40A、処理部50および制御部60Aを備える。受光部10Aは、二次元状(図では8行10列)に配列されたN個の画素12Aを含む。N個の画素12Aは一次元状に配列されていてもよい。カウンタ群40Aは、M個のカウンタを含む。受光部10A、読出部20、選択部30、カウンタ群40Aおよび処理部50は、制御部60Aによる制御の下に動作する。
【0022】
図2は、第1実施形態の固体撮像装置1Aの各画素12Aの構成を示す図である。この図は、各画素12Aの構成の説明に加えて、各画素12Aと読出部20および制御部60Aとの間の関係について説明する図である。
【0023】
N個の画素12Aは共通の構成を有する。各画素12Aは、フォトダイオード81、IV変換部82、アンプ83、比較部84および出力部85Aを含む。フォトダイオード81は、光の入射に応じて電荷を発生させて、電流信号をIV変換部82へ出力する。フォトダイオード81から出力される電流信号の大きさ(単位時間当たりの電荷発生量)は、フォトダイオード81に入射する光の強度に応じたものとなる。
【0024】
IV変換部82は、フォトダイオード81から出力された電流信号を入力して、その入力電流値に応じた値を有する電圧信号をアンプ83へ出力する。アンプ83は、IV変換部82から出力された電圧信号を入力し、その入力した電圧信号を増幅して、その増幅後の電圧信号を比較部84へ出力する。
【0025】
比較部84は、アンプ83から出力された電圧信号を入力して、その入力電圧値Vinと基準電圧値Vrefとを大小比較する。比較部84は、基準電圧値Vrefに第1閾値Vth1を加えた値より入力電圧値Vinが大きいとき(Vref+Vth1<Vin)に、プラスイベントが発生したと判断する。比較部84は、基準電圧値Vrefから第2閾値Vth2を減じた値より入力電圧値Vinが小さいとき(Vin<Vref-Vth2)に、マイナスイベントが発生したと判断する。比較部84は、2種類のイベント(プラスイベント、マイナスイベント)の何れかが発生したと判断したとき、その旨を示すイベント信号を出力部85Aへ出力する。
【0026】
比較部84における基準電圧値Vrefは、制御部60Aからの指示により、固体撮像装置1Aへの電源投入時にリセットされ、予め設定されたフレーム期間毎に更新される。また、比較部84における基準電圧値Vrefは、イベント信号を出力部85Aへ出力したときに更新される。この更新により、その時点での入力電圧値Vinが新たな基準電圧値Vrefとされる。
【0027】
出力部85Aは、比較部84からイベント信号を受け取ると、その画素に接続されているY-Req線をHighにして制御部60Aへイベント信号出力要求を通知する。出力部85Aは、制御部60AからY-Ack線を介してイベント信号出力許可の通知を受け取ると、プラスイベント線またはマイナスイベント線を介してイベント信号を読出部20へ出力し、Y-Req線をHigh-Zにする。このようにすることで、複数の画素から同時にイベント信号出力要求が出力されても、イベント信号出力許可の調停を行うことができるので、イベント信号出力の衝突を回避しつつイベント信号を読み出すことができる。
【0028】
Y-Req線およびY-Ack線は、受光部10Aにおいて二次元状に配列されたN個の画素12Aのうち共通の行にある複数の画素12Aに対して1本ずつ設けられている。プラスイベント線およびマイナスイベント線は、受光部10Aにおいて二次元状に配列されたN個の画素12Aのうち共通の列にある複数の画素12Aに対して1本ずつ設けられている。
【0029】
図1に戻って説明を続ける。読出部20は、受光部10Aにおいて二次元状に配列されたN個の画素12Aのうち、制御部60Aからイベント信号出力許可の通知を受け取った行にある画素12Aからの出力信号を、プラスイベント線またはマイナスイベント線を介して受け取る。そして、読出部20は、そのうちイベント信号を出力した画素12Aを識別して、その画素のX方向の位置情報およびイベント信号を制御部60Aへ出力する。
【0030】
制御部60Aは、読出部20から受け取った画素のX方向の位置情報およびイベント信号、ならびに、受光部10AからY-Req線を介して受け取った画素のY方向の位置情報から、イベントを検出した画素のXY位置情報(画素アドレス)を把握することができ、また、その画素で検出されたイベントの種類(プラスイベントおよびマイナスイベントの何れであるか)を把握することができる。
【0031】
選択部30は、受光部10AのN個の画素12Aのうちの各画素および各イベント情報とカウンタ群40AのM個のカウンタのうちの複数のカウンタとの間の対応関係に基づいて、イベント信号を出力した画素およびイベント種類に対応する複数のカウンタを選択し、その選択した複数のカウンタにイベント信号を入力させる。選択部30は、各画素のXY位置情報(画素アドレス)およびイベント種類に基づいて、対応する複数のカウンタを選択するデコード回路を含む構成とすることができる。
【0032】
本実施形態では、イベント種類としてプラスイベントおよびマイナスイベントの2つがあるので、選択部30は、各画素のXY位置情報(画素アドレス)およびイベント種類(プラスイベントおよびマイナスイベントの何れであるか)に基づいて、対応する複数のカウンタを選択する。換言すれば、カウンタ群40Aに含まれる各カウンタは、対応する画素から、対応するイベント種類のイベント信号が入力される。図1には、例として、カウンタ群40Aに含まれる或る一つのカウンタに対応する画素がハッチングで示されている。
【0033】
画素およびイベント種類とカウンタとの間の対応関係は、事前に最適な組み合わせが決定されいればよく、また、アダマール行列などによって決定されていてもよい。各カウンタは、受光部10Aにおける特定エリア内の画素と対応していてもよい。ただし、各画素の各イベント種類は複数のカウンタに対応している必要がある。
【0034】
カウンタ群40Aの各カウンタは、対応付けられた画素からのイベント信号に基づいてイベント検出数をカウントする。カウンタ群40Aの各カウンタは、各フレーム期間の最後にカウント値を処理部50へ出力し、その後にカウント値をリセットする。
【0035】
処理部50は、選択部30における画素およびイベント種類とカウンタとの間の対応関係およびカウンタ群40Aの各カウンタのカウント値に基づいて、圧縮センシング技術により、受光部10Aに入射した光の像の変化を再構成する。この場合、処理部50は、例えば圧縮センシングによる画像再構成アルゴリズムが実装されたデジタル回路等によって構成されていてもよい。或いは、処理部50は、選択部30における画素およびイベント種類とカウンタとの間の対応関係およびカウンタ群40Aの各カウンタのカウント値に基づいて、機械学習ユニットによって推論してもよい。この推論により、受光部10Aに入射した光の像の変化を再構成したり評価したりしてもよく、また、この評価結果から撮像対象の状態(例えば画像中の転倒者の発生など)を判断してもよい。機械学習ユニットは、ニューラルネットワークや、リザバーコンピューティング等の推論モデルが実装されたAIチップを含んでいてもよい。
【0036】
処理部50は、圧縮センシング技術により、受光部10Aに入射した光の像の変化を再構成する場合、次のような処理を行う。測定データ(M個のカウンタ値)をベクトルyで表し、再構成したい画像をベクトルxで表し、観測行列をΦとすると、これらの間の関係は下記(1)式で表される。測定データベクトルy(下記(2)式)の要素yは、M個のカウンタのうちの第mカウンタのカウント値yである。画像ベクトルx(下記(3)式)の要素xn,kは、二次元配列されたN個の画素の位置を一次元の変数nで表して、第n画素におけるK種類のイベントのうちの第k種のイベントの発生数を表す。本実施形態では、K=2である。
【0037】
【数1】
【0038】
【数2】
【0039】
【数3】
【0040】
観測行列Φ(下記(4)式)の要素φm,n,kは、選択部30において第mカウンタ、第n画素および第k種イベントが対応付けられているか否かによって、異なる値をとる。例えば、第mカウンタ、第n画素および第k種イベントが対応付けられている場合、φm,n,k≠0である。逆に、第mカウンタ、第n画素および第k種イベントが対応付けられていない場合、φm,n,k=0である。
【0041】
【数4】
【0042】
再構成したい画像ベクトルxの要素数NKに対して、測定データベクトルyの要素数Mが小さく、1<M<NKなる関係がある。画像ベクトルxの再構成は劣決定問題である。したがって、実際に解くべき式は、下記(5)式または(6)式で表される最適化問題となる。
【0043】
【数5】
【0044】
【数6】
【0045】
この最適化問題を解くことにより、画像ベクトルxを再構成することができる。一部の少数の画素でイベントが発生するような撮像対象の場合は、スパース性があると考えられることから、最適化問題を解くことができる。なお、例えば、求める行列に対してtotal variation等の変換を行ってスパースとしてもよい。
【0046】
例えば、画素数Nを1024x1024=1,048,576とし、イベント種類数Kを2とし、各画素・各イベント種類に対して対応付けられるカウンタの個数を16とすると、カウンタの総数Mを262,144とすることができる。従来のイベントドリブン型の固体撮像装置では、N個の画素それぞれについてK個のイベント種類の情報を処理部に伝送する必要がある。これに対して、本実施形態の固体撮像装置では、M(=262,144)個のカウンタのカウント値の情報を処理部に伝送すればよいので、従来と比べて信号伝送帯域を低減することができる。また、本実施形態の固体撮像装置は、イベントドリブン型であるので、消費電力を低減することができる。また、撮像対象がよりスパースなものであれば、カウンタ個数Mは更に少なくてもよい。
【0047】
更に他のイベント情報を付加することも可能である。例えば、制御部60Aは、予め決められた一定期間を1フレームとするだけでなく、タイマで更に細かいサブフレームに区切ってもよい。図3は、フレームおよびサブフレームについて説明する図である。この図では、プラスイベントを上向き矢印で示し、マイナスイベントを下向き矢印で示している。この図に示されるように各フレームを三つのサブフレームに区切る場合、三つのサブフレームそれぞれについて2種類のイベント(プラスイベント、マイナスイベント)があるので、各フレームのイベント種類数Kは6となる。再構成する画像ベクトルxは、各画素のサブフレーム情報を含むベクトルとなり、時間分解能が向上する。
【0048】
次に、第2実施形態の固体撮像装置1Bについて図4図6を用いて説明する。第1実施形態の固体撮像装置1Aの構成と相違する点について主に説明する。
【0049】
図4は、第2実施形態の固体撮像装置1Bの構成を示す図である。固体撮像装置1Bは、受光部10B、処理部50および制御部60Bを備える。受光部10Bは、二次元状(図では8行10列)に配列された複数のエリア11Bに区分されている。複数のエリア11Bは一次元状に配列されていてもよい。受光部10Bおよび処理部50は、制御部60Bによる制御の下に動作する。
【0050】
図5は、第2実施形態の固体撮像装置1Bの各エリア11Bの構成を示す図である。各エリア11Bは、二次元状(図では8行8列)に配列された複数の画素12Bを含む。複数の画素12Bは一次元状に配列されていてもよい。各エリア11Bに対して、複数のカウンタ41を含むカウンタ群40Bが設けられている。この実施形態では、選択部は、各画素と該画素に対応する複数のカウンタとを電気的に接続する固定配線30Bを含む。この図では、カウンタ群40Bに含まれる各カウンタ41に対して固定配線で接続される画素がハッチングで示されている。固定配線30Bによる画素およびイベント種類とカウンタとの間の対応関係は、事前に最適な組み合わせが決定されいればよく、また、アダマール行列などによって決定されていてもよい。固定配線30Bは、カウンタ41の個数と同数だけある。また、画素12B間のイベント信号出力の衝突を避けるため、各エリア11Bにおいて、例えば、隣接する上・左・左上画素を優先する、などの機能を追加してもよい。
【0051】
図6は、第2実施形態の固体撮像装置1Bの各画素12Bの構成を示す図である。各画素12Bは、フォトダイオード81、IV変換部82、アンプ83、比較部84および出力部85Bを含む。図2に示された第1実施形態の各画素12Aの構成と比較すると、この図6に示される第2実施形態の各画素12Bは、出力部85Aに替えて出力部85Bを含む点で相違する。出力部85Bは、制御部60Bとの間で、Y-Req線を介してイベント信号出力要求を通知する必要はなく、Y-Ack線を介してイベント信号出力許可の通知を受ける必要もない。各エリア11Bのカウンタ値は電源投入時にリセットされ、フレーム毎に全エリアのカウンタ値がローリングシャッタ方式またはグローバルシャッタ方式で順次読み出され、再度リセットが行われる。
【0052】
処理部50は、圧縮センシング技術により、受光部10Bに入射した光の像の変化を再構成する場合、受光部10B全体、または複数のエリア11Bそれぞれ、または複数のエリア11Bの任意の組み合わせごとについて、上記(1)式~(6)式による最適化問題を解けばよい。例えば、各エリア11Bに含まれる画素12Bの個数Nを8x8=64とし、イベント種類数Kを2とし、各エリア11Bにおいて各画素・各イベント種類に対して対応付けられるカウンタの個数を16とすることができる。また、エリア11Bの個数を128x128とすることができる。本実施形態の固体撮像装置でも、262,144個のカウント値の情報を処理部に伝送すればよいので、従来と比べて信号伝送帯域を低減することができる。また、本実施形態の固体撮像装置は、イベントドリブン型であるので、消費電力を低減することができる。また、撮像対象がよりスパースなものであれば、カウンタ個数Mは更に少なくてもよい。
【0053】
次に、第3実施形態の固体撮像装置について説明する。第2実施形態の固体撮像装置1Bの構成と相違する点について主に説明する。
【0054】
これまでに説明した第1実施形態の固体撮像装置1Aおよび第2実施形態の固体撮像装置1Bでは、各画素は、入射光強度の増減をイベントとして検出した。これに対して、第3実施形態の固体撮像装置では、各画素は、該画素に含まれるキャパシタに蓄積される光電荷の量の増加をイベントとして検出する。第2実施形態の固体撮像装置1Bの構成と比べると、第3実施形態の固体撮像装置は、各画素の構成の点で相違する。
【0055】
図7は、第3実施形態の固体撮像装置の各画素12Cの構成を示す図である。各画素12Cは、フォトダイオード91、トランジスタ92、キャパシタ93、比較部94および出力部95を含む。フォトダイオード91のアノードは、接地電位供給端と接続されている。フォトダイオード91のカソードは、トランジスタ92を介して電源電位供給端と接続され、キャパシタ93を介して接地電位供給端と接続され、また、比較部94の二つの入力端のうち一方の入力端に接続されている。
【0056】
比較部94は、キャパシタ93の電位(フォトダイオード91のカソードの電位)Vcを一方の入力端に入力し、閾値電位Vthを他方の入力端に入力して、これら二つの電位Vc,Vthを大小比較する。比較部94は、電位Vcが閾値電位Vthより高いときに出力端の電位をLレベルとし、電位Vcが閾値電位Vth以下であるときに出力端の電位をHレベルとする。比較部94の出力端は、出力部95に接続され、また、トランジスタ92のゲートに接続されている。
【0057】
このように構成される画素12Cにおいて、キャパシタ93の蓄積電荷量は、制御部からの指示により、電源投入時にリセットされ、また、予め設定されたフレーム期間毎に更新される。光の入射に応じてフォトダイオード91で発生した負電荷はキャパシタ93に蓄積されていく。この負電荷の蓄積に伴って、電位Vcは次第に低くなっていき、やがて、電位Vcは閾値電位Vthより低くなる。電位Vcが閾値電位Vthより低くなると、比較部94の出力端はLレベルからHレベルに転じ、これによって、トランジスタ92はオン状態となる。トランジスタ92がオン状態となることで、キャパシタ93の蓄積電荷量がリセットされ、比較部94の出力端はHレベルからLレベルに戻る。
【0058】
すなわち、フォトダイオード91において一定量の電荷が発生する度に、比較部94の出力端からパルスが出力される。パルス発生頻度は入射光強度に応じたものとなる。このパルスは、キャパシタ93に蓄積される光電荷の量の増加を表すイベント信号として、出力部95を介してカウンタへ出力される。本実施形態では、イベント種類数Kは1である。
【0059】
処理部は、圧縮センシング技術により、受光部に入射した光の像を再構成する場合、受光部全体、または複数のエリアそれぞれ、または複数のエリアの任意の組み合わせごとについて、上記(1)式~(6)式による最適化問題を解けばよい。例えば、各エリアに含まれる画素12Cの個数Nを8x8=64とし、イベント種類数Kを1とし、各エリアにおいて各画素に対して対応付けられるカウンタの個数を8とすることができる。また、エリアの個数を128x128とすることができる。本実施形態の固体撮像装置では、131,072個のカウント値の情報を処理部に伝送すればよいので、従来と比べて信号伝送帯域を低減することができる。また、本実施形態の固体撮像装置は、イベントドリブン型であるので、消費電力を低減することができる。また、撮像対象がよりスパースなものであれば、カウンタ個数Mは更に少なくてもよい。
【0060】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。各画素が検出するイベントは任意でよい。各画素は、該画素に入射した光の強度だけでなく、光の偏光状態や波長に関するイベントを検出してもよい。各画素は、該画素内の蓄積電荷量だけでなく、該画素内の電流信号または電圧信号に関するイベントを検出してもよい。処理部は、必ずしも固体撮像装置内に含まれている必要はなく、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(field-programmable gate array)、ASIC(application specific integrated circuit)、或いはSoC(system on a chip)等を含み、固体撮像装置と接続されたハードウェアデバイスであってもよい。また、処理部は、固体撮像装置とネットワーク経由で接続されたクラウドデバイスであってもよい。
【符号の説明】
【0061】
1A,1B…固体撮像装置、10A,10B…受光部、11B…エリア、12A~12C…画素、20…読出部、30…選択部、40A,40B…カウンタ群、41…カウンタ、50…処理部、60A,60B…制御部、81…フォトダイオード、82…IV変換部、83…アンプ、84…比較部、85A,85B…出力部、91…フォトダイオード、92…トランジスタ、93…キャパシタ、94…比較部、95…出力部。
図1
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図3
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図5
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図7