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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147314
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
B41J2/01 207
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060245
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雄哉
(72)【発明者】
【氏名】高山 治久
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 敦
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA14
2C056EB07
2C056EB40
2C056FA10
2C056KD06
(57)【要約】
【課題】ノズルから吐出されたインク滴の飛翔方向のズレを検出することができる印刷装置を提供する。
【解決手段】印刷装置10は、インク滴Iを第1方向へ吐出するノズル12が開口する吐出面11aを有するヘッド11と、光を発光する発光素子51と、前記発光素子51から発光された光を受光する受光素子52と、前記第1方向に対して交差し且つ互いに交差する第2方向及び第3方向のそれぞれの方向に沿って、前記発光素子51から発光された光の経路である光路51aの光強度に勾配を付加する勾配付加部材55と、制御装置20と、を備え、前記光路51aは、前記勾配付加部材55と前記受光素子52との間において、前記ノズル12から吐出されたインク滴Iが飛翔する飛翔領域11bと交差し、前記制御装置20は、前記受光素子52による受光量に基づいて前記ノズル12から吐出されたインク滴Iの飛翔方向のズレを検出する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク滴を第1方向へ吐出するノズルが開口する吐出面を有するヘッドと、
光を発光する発光素子と、
前記発光素子から発光された光を受光する受光素子と、
前記第1方向に対して交差し且つ互いに交差する第2方向及び第3方向のそれぞれの方向に沿って、前記発光素子から発光された光の経路である光路の光強度に勾配を付加する勾配付加部材と、
制御装置と、を備え、
前記光路は、前記勾配付加部材と前記受光素子との間において、前記ノズルから吐出されたインク滴が飛翔する飛翔領域と交差し、
前記制御装置は、前記受光素子による受光量に基づいて前記ノズルから吐出されたインク滴の飛翔方向のズレを検出する、
印刷装置。
【請求項2】
前記勾配付加部材は、
前記第2方向に沿って前記光路の光強度に勾配を付加するレンズと、
前記第3方向に沿って前記光路の光強度に勾配を付加する吸収型又は反射型の1つ又は複数の光学フィルタと、を有している、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記勾配付加部材は、前記第2方向及び前記第3方向の両方向に沿って前記光路の光強度に勾配を付加する非対称形状のレンズを有している、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記勾配付加部材は、
前記第2方向に沿って前記光路の光強度に勾配を付加するレンズと、
前記第3方向に沿って前記光路の光強度が勾配を有するように、前記発光素子から発光された光のうち一部の光が通過する開口を含む枠体と、
を有している、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記勾配付加部材は、前記第2方向に沿って前記光路の光強度に勾配を付加するレンズを有し、
前記発光素子は、複数の領域に配置された複数の光源を有し、且つ、前記複数の領域のうち前記第3方向の一方の領域と他方の領域とで配置されている前記光源の数が異なっている、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記勾配付加部材は、前記第2方向に沿って前記光路の光強度に勾配を付加するレンズを有し、
前記発光素子は、複数の領域に配置された複数の光源を有し、且つ、前記複数の領域のうち前記第3方向の一方の領域に配置された前記光源からの光と他方の領域に配置された前記光源からの光とで光強度が異なっている、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記勾配付加部材は、
前記第2方向に沿って前記光路の光強度に勾配を付加するレンズと、
前記発光素子から発光された光を反射する曲面を有し、前記第3方向に沿って前記光路の光強度に勾配を付加する凹面鏡又は凸面鏡と、を有している、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項8】
複数の前記光学フィルタは、前記第2方向に沿って並ぶ、
請求項2に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記光学フィルタは、前記第2方向及び前記第3方向に対して傾斜するように配置されている、
請求項2に記載の印刷装置。
【請求項10】
前記発光素子及び前記受光素子は、前記光路が前記第1方向及び前記第2方向に対して傾斜するように配置されている、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項11】
前記発光素子及び前記受光素子は、被印刷媒体に着弾したインク滴の位置ズレの閾値以内に、前記被印刷媒体におけるインク滴の着弾位置の確率分布を示す正規分布において標準偏差の所定倍の値があり、且つ、前記第1方向において前記吐出面から前記光路までの距離が最も長くなるように、配置されている、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項12】
前記受光素子の受光量に応じた信号を互いに異なる増幅率で増幅する複数の増幅器を備え、
前記ノズルは、第1ノズル、及び、前記第1ノズルよりも前記第3方向の一方向に位置している第2ノズルを有し、
前記制御装置は、前記第1ノズルからのインク滴の飛翔位置を通る光の光強度よりも、前記第2ノズルからのインク滴の飛翔位置を通る光の光強度の方が小さい場合は、前記第1ノズルからインク滴を吐出するときよりも、前記第2ノズルからインク滴を吐出するときに、増幅率が大きい前記増幅器により前記受光素子の受光量の信号を増幅させる、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項13】
前記勾配付加部材は、前記第2方向に沿って前記光路の光強度に勾配を付加するレンズを有し、
前記ノズルは、第1ノズル、及び、前記第1ノズルよりも前記第3方向の一方向に位置している第2ノズルを有し、
前記制御装置は、前記第1ノズルからのインク滴の飛翔位置を通る光の光強度よりも、前記第2ノズルからのインク滴の飛翔位置を通る光の光強度の方が小さい第1パターンとなるよう前記発光素子を駆動する第1発光モードと、前記第1パターンよりも前記第2ノズルからのインク滴の飛翔位置を通る光の光強度を大きい第2パターンとなるよう前記発光素子を駆動する第2発光モードとの間で、前記発光素子の駆動を切り替える、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項14】
前記制御装置は、
前記受光素子による受光量の時間変化を、受光量を信号の高さで表し、経過時間を信号の幅で表す信号の波形において、インク滴が第1の態様で飛翔したときの前記波形が幅方向において対称な形状を有する場合であって、
インク滴が第2の態様で飛翔したときに、前記信号の幅が前記第1の態様における前記信号の幅と同一であり、且つ、前記信号の高さが前記第1の態様における前記信号の高さと比べて所定値以上の差がある場合は、前記第2の態様で吐出されたインク滴のサイズが前記第1の態様で吐出されたインク滴のサイズと異なると判定する、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項15】
前記受光素子による受光量の時間変化を、受光量を信号の高さで表し、経過時間を信号の幅で表す信号の波形において、インク滴が第3の態様で飛翔したときの前記波形が幅方向において対称な形状を有する場合であって、
インク滴が第4の態様で飛翔したときに、前記信号の高さが前記第3の態様における前記信号の高さが同一であり、且つ、前記信号の幅が前記第3の態様における前記信号の幅と比べて所定値以上の差がある場合は、前記第4の態様で吐出されたインク滴の速度が前記第3の態様で吐出されたインク滴の速度と異なると判定する、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項16】
前記吐出面において複数の前記ノズルの開口が並んで列を成しており、
前記発光素子の配置は、複数の前記ノズルの開口が並ぶ配列方向と前記光路との間の角度のうちの小さい角度が第1角度である第1配置、及び、前記角度が第1角度とは異なる第2角度である第2配置を有し、
前記制御装置は、前記第1配置及び第2配置のそれぞれの配置における前記発光素子からの光を受光する前記受光素子の受光量に基づいて前記ノズルから吐出されたインク滴の飛翔方向のズレ量を検出する、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項17】
前記光学フィルタの配置は、前記第3方向の一方向に沿って前記光路の光強度が小さくなるように勾配を付加する第3配置、及び、前記第3方向の他方向に沿って前記光路の光強度が小さくなるように勾配を付加する第4配置を有し、
前記制御装置は、前記第3配置及び第4配置のそれぞれの配置における前記光学フィルタを通過した光を受光する前記受光素子の受光量に基づいて前記ノズルから吐出されたインク滴の飛翔方向のズレ量を検出する、
請求項2に記載の印刷装置。
【請求項18】
前記光学フィルタは、前記第3方向の一方向に沿って前記光路の光強度が小さくなるように勾配を付加する第1部分、及び、前記第3方向の他方向に沿って前記光路の光強度が小さくなるように勾配を付加する第2部分を有し、
前記制御装置は、前記第1部分及び第2部分のそれぞれの部分を通過した光を受光する前記受光素子の受光量に基づいて前記ノズルから吐出されたインク滴の飛翔方向のズレ量を検出する、
請求項2に記載の印刷装置。
【請求項19】
前記勾配付加部材は、前記第2方向に沿って前記光路の光強度に勾配を付加するレンズを有し、
前記発光素子は、複数の領域に配置された複数の光源を有し、
前記制御装置は、
前記複数の領域のうち前記第3方向の一方の領域に配置された前記光源からの光と他方の領域に配置された前記光源からの光とで光強度が異なる第3パターンとなるよう前記発光素子を駆動する第3発光モードと、前記第3パターンとは異なる第4パターンとなるよう前記発光素子を駆動する第4発光モードとの間で、前記発光素子の駆動を切り替え、
前記第3発光モード及び第4発光モードのそれぞれのモードにおける前記発光素子からの光を受光する前記受光素子の受光量に基づいて前記ノズルから吐出されたインク滴の飛翔方向のズレ量を検出する、
請求項1に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の印刷装置として、例えば、下記特許文献1の印刷装置が知られている。この印刷装置は、インク滴を吐出するノズルを有する印刷ヘッド、発光部及び受光部を備えている。このノズルから吐出されたインク滴が、発光部から発光された光を遮ると、受光部により受光される光量が減少するため、印刷装置はインク滴のノズルからの吐出を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-293849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術の印刷装置では、受光部による受光量の低下の有無に基づいてノズルの吐出及び不吐出を検出している。しかしながら、例えインク滴がノズルから被印刷媒体に吐出されても、インク滴が被印刷媒体の所望の方向に飛翔しない場合がある。このようなインク滴の飛翔方向のズレを従来技術の印刷装置では検出することができない。
【0005】
そこで、本開示は、ノズルから吐出されたインク滴の飛翔方向のズレを検出することができる印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある態様に係る印刷装置は、インク滴を第1方向へ吐出するノズルが開口する吐出面を有するヘッドと、光を発光する発光素子と、前記発光素子から発光された光を受光する受光素子と、前記第1方向に対して交差し且つ互いに交差する第2方向及び第3方向のそれぞれの方向に沿って、前記発光素子から発光された光の経路である光路の光強度に勾配を付加する勾配付加部材と、制御装置と、を備え、前記光路は、前記勾配付加部材と前記受光素子との間において、前記ノズルから吐出されたインク滴が飛翔する飛翔領域と交差し、前記制御装置は、前記受光素子による受光量に基づいて前記ノズルから吐出されたインク滴の飛翔方向のズレを検出する。
【発明の効果】
【0007】
本発開示は、ノズルから吐出されたインク滴の飛翔方向のズレを検出することができる印刷装置を提供することができるという効果を奏する。
【0008】
本開示の上記目的、他の目的、特徴、及び利点は、添付図面参照の下、以下の好適な実施態様の詳細な説明から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の一実施の形態及び変形例に係る印刷装置を概略的に示す図である。
図2図1の印刷装置の機能ブロック図である。
図3図3Aは検出部を上から見た概略図である。図3B図3Aの検出部を左から見た概略図である。
図4図4Aは光学フィルタの長さに対して光の透過率が連続的に変化するグラフである。図4Bは光学フィルタの長さに対して光の透過率が段階的に変化するグラフである。
図5図5Aは光路とインク滴の飛翔方向との関係を示す図である。図5Bはインク滴がノズルから方向B0、B1に飛翔した場合の受光信号を示す図である。図5Cはインク滴がノズルから方向B0、B2に飛翔した場合の受光信号を示す図である。
図6図6Aは変形例1に係る印刷装置における検出部を上から見た概略図である。図6B図6Aの検出部を左から見た概略図である。図6Cはレンズの一例である。
図7図7Aは変形例2に係る印刷装置における検出部を上から見た概略図である。図7B図7Aの検出部の枠体を後から見た概略図である。
図8図8Aは変形例3に係る印刷装置における検出部を上から見た概略図である。図8B図8Aの検出部の発光素子を前から見た概略図である。
図9図9Aは変形例4及び11に係る印刷装置における検出部を上から見た概略図である。図9B図9Aの検出部の発光素子を前から見た概略図である。
図10図10Aは変形例5に係る印刷装置における検出部を上から見た概略図である。図10B図10Aの検出部を左から見た概略図である。
図11図11は、変形例5に係る印刷装置において勾配付加部材に凸面鏡を用いた場合の検出部を上から見た概略図である。
図12図12Aは変形例6に係る印刷装置における検出部を上から見た概略図である。図12Bは光学フィルタの長さに対する光の透過率の関係を示すグラフである。
図13図13は変形例7に係る印刷装置における検出部を上から見た概略図である。
図14図14は変形例8に係る印刷装置における検出部を左から見た概略図である。
図15図15Aは変形例9に係る印刷装置における上下方向に沿って吐出面からの距離とインク滴の飛翔方向との関係を示す図である。図15Bはインク滴の着弾位置の確率分布を示す正規分布を示すグラフである。
図16図16Aは第1ノズルからインク滴を吐出した場合の第1受光信号を示すグラフである。図16Bは第2ノズルからインク滴を吐出した場合の第2受光信号を示すグラフである。
図17図17Aは変形例12に係る印刷装置の検出部によるインク滴のサイズに応じた受光信号を示すグラフである。図17Bは変形例13に係る印刷装置の検出部によるインク滴の速度に応じた受光信号を示すグラフである。
図18図18Aは変形例14に係る印刷装置における第1配置の検出部を上から見た概略図である。図18B図18Aの第2配置の検出部を上から見た概略図である。
図19図19Aは変形例15に係る印刷装置における第3配置の検出部を上から見た概略図である。図19B図19Aの第4配置の検出部を上から見た概略図である。
図20図20Aは変形例16に係る印刷装置における第5配置の検出部を上から見た概略図である。図20B図20Aの第6配置の検出部を上から見た概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の一実施の形態に係る印刷装置10は、図1に示すように、インク滴をヘッド11のノズル12から被印刷媒体Aに吐出して、被印刷媒体Aに画像を印刷する装置である。以下では、印刷装置10を、インクジェットプリンタに適用した例について説明するが、印刷装置10はインクジェットプリンタに限定されない。また、被印刷媒体Aは、例えば、紙及び布等のシートである。
【0011】
印刷装置10は、シリアルヘッド方式であって、ヘッド11、筐体13、プラテン14、タンク15、制御装置20、搬送装置30、移動装置40及び検出部50を備えている。なお、搬送装置30により被印刷媒体Aを搬送する方向を前後方向と称する。前後方向に対して交差(例えば、直交)する方向であって、移動装置40によりヘッド11を移動させる方向を左右方向と称する。また、前後方向及び左右方向に対して交差(例えば、直交)する方向を上下方向と称する。但し、この印刷装置10に関する方向はこれに限定されない。また、印刷装置10は、ラインヘッド方式であってもよい。この場合、印刷装置10は移動装置40を備えず、また、ヘッド11は移動せずに左右方向において被印刷媒体Aの長さよりも長い寸法を有している。
【0012】
筐体13は、その内部に印刷領域13a及びその右に配置されたメンテナンス領域13bが設けられている。印刷領域13aにプラテン14が配置されており、メンテナンス領域13bに検出部50が配置されている。プラテン14は、その上面上に配置された被印刷媒体Aと、これに対向して設けられるヘッド11の下面との間の距離、例えば2mmを規定する。
【0013】
ヘッド11は複数のノズル12を有している。ノズル12は、ヘッド11の下面である吐出面11aに開口している。複数のノズル12は前後方向に並んで列を成してノズル列を形成し、第1ノズル列12a、第2ノズル列12b、第3ノズル列12c及び第4ノズル列12dがこの順で右から左右方向に並んでいる。ノズル列のノズル12は互いに同じタンク15に連通し、互いに異なるノズル列は互いに異なるタンク15に連通している。タンク15に貯留されたインクはノズル12に供給される。
【0014】
また、ヘッド11には、ノズル12毎に駆動素子16(図2)が設けられている。駆動素子16は、圧電素子、発熱素子、あるいは、静電式アクチュエータ等であって、駆動することにより対応するノズル12からインク滴を吐出する圧力をヘッド11内のインクに付与する。これにより、ノズル12からインク滴が吐出される。
【0015】
搬送装置30は、例えば、2本の搬送ローラ31、及び、搬送モータ32(図2)を有している。2本の搬送ローラ31は、前後方向において互いの間にプラテン14を挟んで配置されている。搬送ローラ31は、左右方向に延びる軸を有し、搬送モータ32に連結されている。搬送ローラ31は、搬送モータ32の駆動によって軸を中心に回転し、ヘッド11に対して被印刷媒体Aをプラテン14上において前後方向に搬送する。
【0016】
移動装置40は、キャリッジ41、2本のガイドレール42、移動モータ43、及び、無端ベルト44を有している。キャリッジ41は、ヘッド11を搭載し、左右方向に移動可能に2本のガイドレール42に支持されている。2本のガイドレール42は、前後方向においてヘッド11を互いの間に挟むように、左右方向において印刷領域13a及びメンテナンス領域13bに亘って延びている。無端ベルト44は、左右方向に延びて、キャリッジ41に取り付けられ、また、移動モータ43にプーリー45を介して取り付けられている。移動モータ43が駆動すると、無端ベルト44が走行し、キャリッジ41はガイドレール42に沿って左右方向に往復移動する。これにより、キャリッジ41は、印刷領域13aとメンテナンス領域13bとの間においてヘッド11を左右方向に移動させる。
【0017】
<検出部>
検出部50には、メンテナンス領域13bに配置されたヘッド11のノズル12から吐出されたインク滴を受ける受け部50aが配置されている。また、検出部50は、図3A及び図3Bに示すように、光を発光する発光素子51、及び、発光素子51から発光された光を受光する受光素子52を備えている。なお、ノズル12からインク滴Iを吐出する第1方向を上下方向と称し、第1方向に対して交差(例えば、直交)する第2方向を前後方向と称し、第1方向及び第2方向の両方に対して交差(例えば、直交)する第3方向を左右方向と称する。但し、検出部50に関する方向はこれらに限定されない。
【0018】
発光素子51は、例えば、レーザダイオード及び発光ダイオードなどの1つ以上の光源53を有し、前方に向かって発光する。発光素子51から発光された光の経路である光路51aが、前後方向に平行になるように、発光素子51は配置されている。上下方向においてヘッド11の吐出面11aと受け部50aとの間に光路51aが配置されている。例えば、上下方向において吐出面11aからの距離、例えば3~4mmの位置に光路51aが設けられるように、発光素子51が配置される。吐出面11aは、光路51aに対して平行であって、上下方向に対して直交している。吐出面11aに開口するノズル12から吐出されたインク滴Iが飛翔する飛翔領域11bは、発光素子51と受光素子52との間の光路51aと交差する。これにより、インク滴Iは、ノズル12から下方に向かって吐出され、飛翔領域11bを飛翔している間に光路51aを通過して、受け部50aに入る。
【0019】
受光素子52は、例えばフォトダイオード及びフォトトランジスタなどであって、発光素子51に対向して配置されており、発光素子51から発光された光を受光する。受光素子52は増幅器54(図2)に接続され、増幅器54は制御装置20(図2)に接続されている。受光素子52は、受光した光を光電変換して、その受光量に応じた電気信号である受光信号を増幅器54に出力する。増幅器54は、受光信号を1以上の任意の増幅率により増幅した受光信号を制御装置20に出力する。そして、制御装置20は、受光素子52による受光量に基づいてノズル12から吐出されたインク滴Iの飛翔方向のズレを検出する。この検出動作は後述する。
【0020】
さらに、印刷装置10は、左右方向及び前後方向のそれぞれの方向に沿って、発光素子51からの光路51aの光強度に勾配を付加する勾配付加部材55を備えている。勾配付加部材55は、発光素子51からの光が通過するように光路51aに設けられており、前後方向において発光素子51と飛翔領域11bとの間に配置されている。例えば、勾配付加部材55は、前後方向に沿って光路51aの光強度に勾配を付加するレンズ56と、左右方向に沿って光路51aの光強度に勾配を付加する吸収型又は反射型の1つ又は複数の光学フィルタ57と、を有している。
【0021】
具体的には、レンズ56は、例えば、シリンドリカルレンズであって、左右方向において光を収束せずに、上下方向における光のサイズが前方ほど小さくなるように収束する。これにより、レンズ56を前後方向に沿って通過した光路51aの光強度は、左右方向に一定であって、レンズ56から前方へ離れるほど大きくなる。このように、前後方向に沿って光路51aの光強度に勾配が付加される。光強度は、例えば、放射照度であって、単位時間当たり且つ単位面積当たりに通過する放射エネルギ(Wm-2)である。なお、レンズ56は、その形状によって光路51aの光強度に勾配を付加させてもよいし、そのコーティングによって光路51aの光強度に勾配を付加させてもよい。
【0022】
光学フィルタ57は、例えば矩形の平板形状であって、前後方向に対して交差(例えば、直交)している。光学フィルタ57は、レンズ56と発光素子51との間に配置されていてもよいし、レンズ56と飛翔領域11bとの間に配置されていてもよい。光学フィルタ57は、例えば、左右方向において左ほどその光透過率が小さいため、通過した光路51aに光強度が左右方向において左ほど小さくなる勾配を付加する。例えば、光吸収型の光学フィルタ57は、入射する光の吸収率が左ほど大きいため、光路51aの光強度を左ほど小さくなる勾配を付加する。また、光反射型の光学フィルタ57は、入射する光の反射率が左ほど大きいため、光路51aの光強度を左ほど小さくなる勾配を付加する。
【0023】
光学フィルタ57の光透過率は、図4Aに示すように左右方向において光学フィルタ57の左端から長さが大きいほど一定の割合で連続的に大きくなるように変化してもよい。また、光学フィルタ57の光透過率は、図4Bに示すように左右方向において光学フィルタ57の左端から長さが大きいほど段階的に大きくなるように変化してもよい。なお、図4Aに示すように、光学フィルタ57はその長さに対して光透過率が一定の部分C1、C3を有している場合、長さに対して光透過率が変化する部分C2に光路51aが交差するように光学フィルタ57が配置される。
【0024】
図3A及び図3Bに示すように、このような検出部50において、光路51aの光強度は、レンズ56により前後方向における前方ほど大きく、光学フィルタ57により左右方向において左ほど小さい。このように光強度に勾配が付加された光路51aでは、前後方向における位置及び左右方向における位置に応じて光強度が異なる。よって、ノズル12から吐出されたインク滴Iの飛翔方向に応じて、そのインク滴Iにより遮られる光の光強度が異なるため、この光強度に対応する受光素子52の受光量が変化する。このため、制御装置20は、受光量に基づいてインク滴Iの飛翔方向のズレを検出することができる。この検出動作については後述する。
【0025】
<制御装置>
制御装置20は、図2の例に示すように、コンピュータであって、演算部21、記憶部22及び通信インターフェース23を備えている。なお、制御装置20は、単独の装置により構成されていてもよく、又は、複数の装置が分散配置されていて、それらが協働して印刷装置10の動作を行うよう構成されていてもよい。例えば、印刷装置10はパーソナルコンピュータなどの情報処理装置及び印刷可能な出力装置を備えており、これらの装置により制御装置20の機能を分担してもよい。
【0026】
通信インターフェース23は、有線通信又は無線通信によって外部機器に接続する接続装置である。印刷装置10は、この通信インターフェース23を介して、印刷装置10とは別個に存在する外部機器から、印刷する画像の画像データなどのデータを送受信する。記憶部22は、演算部21からアクセス可能なメモリであって、例えばRAM及びROMなどを有している。この記憶部22は、例えば、画像データ、並びに、印刷動作などの各種動作を実行するためのプログラム及びデータなどを記憶する。
【0027】
演算部21は、CPUのようなプロセッサ、及び、ASICのような集積回路などの回路を含む。演算部21は、記憶部22に記憶されたデータを参照しつつ、記憶部22に記憶されたプログラムを実行する。これにより、印刷装置10の各部の動作が制御装置20により制御されて、印刷動作及び検出動作などの各種動作が実行される。
【0028】
また、制御装置20はヘッド駆動回路24、搬送駆動回路25及び移動駆動回路26に接続されている。ヘッド駆動回路24は、ヘッド11の駆動素子16に接続されており、制御装置20による制御信号に基づいて駆動素子16を駆動する。これにより、制御装置20は、ノズル12から所定のタイミング及び量(インク滴Iのサイズ)でインク滴を吐出させる。また、搬送駆動回路25は、搬送モータ32に接続されており、制御装置20による制御信号に基づいて搬送モータ32を駆動する。これにより、制御装置20はプラテン14上の被印刷媒体Aを前後方向へ間欠的又は連続的に搬送すると共に、プラテン14上の所定位置に被印刷媒体Aを停止させる。また、移動駆動回路26は、移動モータ43に接続されており、制御装置20による制御信号に基づいて移動モータ43を駆動する。これにより、制御装置20はヘッド11を搭載するキャリッジ41を左右方向へ可変速度で移動させると共に、その可動範囲内の任意の位置にキャリッジ41を停止させる。
【0029】
さらに、制御装置20は、発光駆動回路27に接続されている。発光駆動回路27は、発光素子51の光源53に接続されており、制御装置20による制御信号に基づいて光源53を駆動する。これにより、制御装置20は、発光素子51から所定の光強度の光を発光させる。
【0030】
<印刷動作>
このような印刷装置10において、制御装置20は、外部機器から画像データを取得し、画像データに基づいて印刷動作を実行する。例えば、制御装置20が、パス処理では、印刷領域13aにおいて右又は左にヘッド11を移動させながら、ヘッド11のノズル12からインク滴Iをプラテン14上の被印刷媒体Aに吐出させる。そして、制御装置20は、搬送処理にて、被印刷媒体Aを前方へ搬送させる。このように、印刷装置10は、パス処理と搬送処理とを交互に繰り返し、印刷領域13aにてノズル12から吐出されたインク滴Iにより画像を被印刷媒体Aに印刷する印刷動作を進めていく。
【0031】
<検出動作>
このように、印刷動作ではインク滴Iがノズル12から吐出される。例えば、図5Aに示すように、ヘッド11においてノズル12が吐出面11aから上方に延びている場合、インク滴Iは、そのノズル12の延伸方向に沿って下方に向かって吐出される。この吐出方向に沿って、インク滴Iは、図5Aの実線に示すように、所定の飛翔方向B0である下方に飛翔する。しかしながら、インク滴Iがノズル12から下方に吐出されても、ノズル12の付着物やインクの含有物などによって、インク滴Iの飛翔方向が所定の飛翔方向B0からずれる場合がある。このような飛翔方向にズレが生じると、被印刷媒体Aにおけるインク滴Iの着弾位置が所望の位置からずれて、印刷画像の画質が低下してしまう。そこで、制御装置20は、メンテナンス領域13bにおいてヘッド11から吐出されたインク滴Iの飛翔方向のズレを検出部50により検出する検出動作を実行する。
【0032】
具体的には、図3A及び図3Bに示すように、検出部50の発光素子51は前方へ光を発光し、この光は勾配付加部材55のレンズ56及び光学フィルタ57を通過する。これにより、光路51aの光強度には、レンズ56により前後方向における前方ほど大きく、光学フィルタ57により左右方向において左ほど小さくなるように、勾配が付加される。この光路51aの光は、ヘッド11の下方の飛翔領域11bを通過して受光素子52に受光される。受光素子52は受光量に応じた受光信号を制御装置20(図2)に出力する。
【0033】
ここで、制御装置20は、メンテナンス領域13bの受け部50aの上方に配置されたヘッド11において、所定量のインク滴Iが吐出するように駆動素子16(図2)を駆動させる。この駆動素子16の駆動に応じてノズル12からインク滴Iが吐出されない場合には、受光素子52による受光量は変化せず、受光信号が制御装置20に出力されないため、制御装置20は不吐出と判定する。
【0034】
一方、駆動素子16の駆動に応じてノズル12からインク滴Iが吐出された場合には、インク滴Iはヘッド11から飛翔領域11bを飛翔して、飛翔領域11bにおいて光路51aを通過する。このインク滴Iによる光路51aの遮断によって、受光素子52による受光量が減少するため、受光量の減少に応じた受光信号が制御装置20に出力され、制御装置20は吐出と判定する。
【0035】
さらに、受光素子52による受光量の減少量は、インク滴Iのより遮断される光路51aの光強度に対応する。この光路51aの光強度は前後方向及び左右方向のそれぞれの方向に沿って勾配が付加されているため、受光量の減少量は、インク滴Iの飛翔方向に対応している。よって、制御装置20は受光量の減少量に応じて、所定の飛翔方向B0に対するインク滴Iの飛翔方向のズレを検出することができる。
【0036】
すなわち、図5Aは、ノズル12から吐出されたインク滴Iの飛翔方向を概略的に示している。このインク滴Iによる光路51aの遮断に応じた受光素子52による受光量の減少は、受光量に応じた信号である受光信号として受光素子52から出力される。図5B及び図5Cは、受光素子52による受光信号のグラフであり、縦軸は受光信号の電圧を示し、横軸は時間を示している。この受光信号の波形は、受光量を受光信号の高さ(電圧)で表し、経過時間を受光信号の幅で表している。インク滴Iにより遮断された光路51aの光強度が大きいほど、受光素子52による受光量の減少量が大きくなるため、受光信号の高さが大きくなる。
【0037】
図5Aの実線に示すように、所定の飛翔方向B0である下方にノズル12からインク滴Iが飛翔した場合には、図5B及び図5Cの受光信号F0に示すように、受光量は所定量、減少し、受光信号は、その電圧の最低値であるピークの高さE0である。これに対し、例えば、図5Aの点線に示すように、所定の飛翔方向B0よりも左方向B1へノズル12からインク滴Iが飛翔した場合には、光路51aの光強度は左ほど小さくなるため、図5Bの受光信号F1に示すように、受光量の減少量は所定量よりも小さくなり、受光信号F1のピークの高さE1が受光信号F0のピークの高さE0よりも小さくなる。一方、図5Aの破線に示すように、所定の飛翔方向B0よりも右方向B2へノズル12からインク滴Iが飛翔した場合には、光路51aの光強度は右ほど大きくなるため、図5Cの受光信号F2に示すように、受光量の減少量は所定量よりも大きくなり、受光信号F2のピークの高さE2が受光信号F0のピークの高さE0よりも大きくなる。
【0038】
また、図3Bに示すように前後方向において前方ほど光強度が大きくなるように、光路51aの光強度に勾配が付加されている。このため、上記と同様に、所定の飛翔方向B0よりも後方へノズル12からインク滴Iが飛翔した場合には、光路51aの光強度は後方ほど小さくなるため、図5Bの受光信号F1と同様に、受光信号のピークの高さが受光信号F0のピークの高さE0よりも小さくなる。一方、所定の飛翔方向B0よりも前方へノズル12からインク滴Iが飛翔した場合には、光路51aの光強度は前方ほど大きくなるため、図5Cの受光信号F2と同様に、受光信号のピークの高さが受光信号F0のピークの高さE0よりも大きくなる。
【0039】
このように、制御装置20は、受光素子52による受光信号の有無に基づいてインク滴Iの吐出の有無を検出することができる。さらに、制御装置20は、受光信号の高さに応じて、前後方向及び左右方向のそれぞれの方向において所定の飛翔方向B0に対するインク滴Iの飛翔方向のズレを検出することができる。また、この検出動作には勾配付加部材55としてレンズ56及び光学フィルタ57の組み合わせを用いることにより、特殊な光学部品を用いずに安価に検出動作を行うことができる。
【0040】
<変形例1>
変形例1に係る印刷装置10では、上記実施の形態において、図6A及び図6Bに示すように、勾配付加部材55は、前後方向及び左右方向の両方向に沿って光路51aの光強度に勾配を付加する非対称形状のレンズ56aを有している。
【0041】
具体的には、レンズ56aは、発光素子51と飛翔領域11bとの間において、発光素子51から前方へ発光された光が通過するように光路51aに対して交差している。レンズ56aは、前後方向及び左右方向のそれぞれの方向に沿って光強度の勾配を付加させることができれば、1つのレンズであってもよいし、複数のレンズを組み合わせてもよい。
【0042】
非対称形状のレンズ56aは、例えば、自由曲面レンズであって、前後方向、左右方向及び上下方向の少なくとも1つの方向に対して直交する面に対して、曲率半径が一定ではなく、複数の曲率半径を持った形状を有している。このレンズ56aは、例えば、図6Cに示すような左右方向に対して直交する断面形状を有し、左右方向に延びている。例えば、レンズ56aの前面は、複数の曲率半径を有するように上下方向に沿って前後方向に湾曲した曲面であってもよい。
【0043】
このレンズ56aによって、図6A及び図6Bの例では、光路51aの光強度には、前後方向における前方ほど大きく、左右方向において左ほど小さくなる勾配が付加される。制御装置20は、この光路51aの上方に配置されたヘッド11において、所定量のインク滴Iが吐出するように駆動素子16を駆動させる。制御装置20は、この駆動に応じたインク滴Iの吐出の有無を受光素子52による受光信号の有無に基づいて検出することができる。さらに、制御装置20は、受光素子52による受光信号の高さに応じて、前後方向及び左右方向のそれぞれの方向において所定の飛翔方向B0に対するインク滴Iの飛翔方向のズレを検出することができる。また、この検出動作には勾配付加部材55としてレンズ56aを用いることにより、部品点数を少なく抑えることができる。
【0044】
<変形例2>
変形例2に係る印刷装置10では、上記実施の形態において、図7A及び図7Bに示すように、勾配付加部材55は、前後方向に沿って光路51aの光強度に勾配を付加するレンズ56と、左右方向に沿って光路51aの光強度が勾配を有するように、発光素子51から発光された光のうち一部の光が通過する開口58aを含む枠体58と、を有している。
【0045】
具体的には、レンズ56は、例えば、図3Bのレンズ56と同様であって、左右方向において光を収束させずに、上下方向における寸法が前方ほど小さくなるように光を収束させる。これにより、レンズ56は、前方ほど光強度が大きくなるように前後方向に沿って光路51aの光強度に勾配を付加する。
【0046】
枠体58は、図7A及び図7Bに示すように、例えば平板形状であって、前後方向において発光素子51とレンズ56との間において、前後方向に対して直交するように配置されている。枠体58は、矩形状の開口58aを有している。枠体58は、一部の光を開口58aに通過させ、光がレンズ56及び受光素子52に入射しないように他の光の一部又は全部を遮断する。上下方向及び左右方向における開口58aの寸法のうち小さい方の寸法D、及び、発光素子51により発光された光の波長λについて、開口58aを通過した光の回折がほとんど生じないように、λ/Dが十分に小さくなる寸法を開口58aは有している。これにより、開口58aを通過した光は直進する。なお、開口58aの形状は矩形状に限定されず、円形、楕円形及び三角形などの形状であってもよい。
【0047】
発光素子51から前方へ発光された光は、前後方向に対して直交する円形状の断面においてその中心ほど光強度が大きい。これに対し、開口58aの右端は光の中心又は中心よりも左に位置し、開口58aは左右方向に沿って延びている。このため、開口58aを通過した光の光強度は、左ほど小さくなる。このように、枠体58は、発光素子51からの光の一部を開口58aにより切り出すことによって、開口58aを通過した光の光路51aは左右方向に沿って光強度に勾配が付される。
【0048】
このように、光路51aの光強度には、レンズ56により前後方向における前方ほど大きく、開口58aを有する枠体58により左右方向において左ほど小さくなるように、勾配が付加される。制御装置20は、この光路51aの上方に配置されたヘッド11において、所定量のインク滴Iが吐出するように駆動素子16を駆動させる。制御装置20は、この駆動に応じたインク滴Iの吐出の有無を受光素子52による受光信号の有無に基づいて検出することができる。さらに、制御装置20は、受光信号の高さに応じて、前後方向及び左右方向のそれぞれの方向において所定の飛翔方向B0に対するインク滴Iの飛翔方向のズレを検出することができる。また、この検出動作には勾配付加部材55として開口58aを有する枠体58を用いることにより、印刷装置10のコスト及びサイズを抑えることができる。
【0049】
<変形例3>
変形例3に係る印刷装置10では、上記実施の形態において、図8A及び図8Bに示すように、勾配付加部材55は、前後方向に沿って光路51aの光強度に勾配を付加するレンズ56を有している。発光素子51bは、複数の領域に配置された複数の光源53を有し、且つ、複数の領域のうち左右方向の一方の領域と他方の領域とで配置されている光源53の数が異なっている。
【0050】
具体的には、レンズ56は、例えば、図3Bのレンズ56と同様であって、左右方向において光を収束させずに、上下方向における寸法が前方ほど小さくなるように光を収束させる。これにより、レンズ56は、前方ほど光強度が大きくなるように前後方向に沿って光路51aの光強度に勾配を付加する。
【0051】
発光素子51bは複数の領域(例えば、第1領域59a~第4領域59d)を有している。第1領域59a、第2領域59b、第3領域59c及び第4領域59dは、この順で左右方向に沿って右から並んでいる。第1領域59aには3つの光源53が設けられ、第2領域59bには2つの光源53が設けられ、第3領域59c及び第4領域59dのそれぞれの領域には1つの光源53が設けられている。第1領域59a及び第2領域59bのそれぞれの領域では複数の光源53は上下方向に並んでいる。
【0052】
このように、発光素子51bにおいて第2領域59bは第3領域59c及び第4領域59dよりも多くの光源53を有し、第1領域59aは第2領域59bよりも多くの光源53を有している。このため、発光素子51bにおいて左右方向において左ほど光源53の数が少なくなる。これらの光源53が互いに同じ光強度の光を発光する。これにより、発光素子51bが発光する光強度は左ほど小さくなるため、発光素子51bからの光路51aの光強度も左ほど小さい勾配を有する。このため、発光素子51bは、左右方向に沿って光路51aの光強度に勾配を付加する勾配付加部材55として用いられる。なお、光源53が発光する光の光強度は、放射照度である。
【0053】
このように、光路51aの光強度には、レンズ56により前後方向における前方ほど大きく、発光素子51bにより左右方向において左ほど小さくなるように、勾配が付加される。制御装置20は、この光路51aの上方に配置されたヘッド11において、所定量のインク滴Iが吐出するように駆動素子16を駆動させる。制御装置20は、この駆動に応じたインク滴Iの吐出の有無を受光素子52による受光信号の有無に基づいて検出することができる。さらに、制御装置20は、受光素子52による受光信号の高さに応じて、前後方向及び左右方向のそれぞれの方向において所定の飛翔方向B0に対するインク滴Iの飛翔方向のズレを検出することができる。また、この検出動作には勾配付加部材55として発光素子51bを用いることにより、部品点数が少ないため、印刷装置10のコスト及びサイズを抑えられると共に検出動作のための部品の配置精度を軽減することができる。
【0054】
<変形例4>
変形例4に係る印刷装置10では、上記実施の形態において、図10A及び図10Bに示すように、勾配付加部材55は、前後方向に沿って光路51aの光強度に勾配を付加するレンズ56を有している。発光素子51cは、複数の領域に配置された複数の光源53を有し、且つ、複数の領域のうち左右方向の一方の領域に配置された光源53からの光と他方の領域に配置された光源53からの光とで光強度が異なっている。
【0055】
具体的には、レンズ56は、例えば、図3Bのレンズ56と同様であって、左右方向において光を収束させずに、上下方向における寸法が前方ほど小さくなるように光を収束させる。これにより、レンズ56は、前方ほど光強度が大きくなるように前後方向に沿って光路51aの光強度に勾配を付加する。
【0056】
発光素子51cは複数の領域(例えば、第5領域59e~第8領域59h)を有している。第5領域59e、第6領域59f、第7領域59g及び第8領域59hは、この順で左右方向に沿って左から並んでいる。第5領域59e~第8領域59hのそれぞれの領域には複数(例えば、3つ)の光源53が設けられており、各領域における複数の光源53は上下方向に並んでいる。
【0057】
各光源53が発光する光強度は、可変であって、制御装置20により制御されている。ここで、第5領域59eの光源53、第6領域59fの光源53、第7領域59gの光源53、及び、第8領域59hの光源53の順で、光源53が発光する光の光強度が小さくなるように制御装置20により制御される。これにより、発光素子51cが発光する光強度は左ほど小さくなるため、発光素子51cからの光路51aの光強度も左ほど小さい勾配を有する。このため、発光素子51cは、左右方向に沿って光路51aの光強度に勾配を付加する勾配付加部材55として用いられる。
【0058】
このように、光路51aの光強度には、レンズ56により前後方向における前方ほど大きく、発光素子51cにより左右方向において左ほど小さくなるように、勾配が付加される。制御装置20は、この光路51aの上方に配置されたヘッド11において、所定量のインク滴Iが吐出するように駆動素子16を駆動させる。制御装置20は、この駆動に応じたインク滴Iの吐出の有無を受光素子52による受光信号の有無に基づいて検出することができる。さらに、制御装置20は、受光素子52による受光信号の高さに応じて、前後方向及び左右方向のそれぞれの方向において所定の飛翔方向B0に対するインク滴Iの飛翔方向のズレを検出することができる。また、この検出動作には勾配付加部材55として発光素子51cを用いることにより、部品点数が少ないため、印刷装置10のコスト及びサイズを抑えられると共に検出動作のための部品の配置精度を軽減することができる。
【0059】
<変形例5>
変形例5に係る印刷装置10では、上記実施の形態において、図10A及び図10Bに示すように、勾配付加部材55は、前後方向に沿って光路51aの光強度に勾配を付加するレンズ56と、発光素子51から発光された光を反射する曲面60aを有し、左右方向に沿って光路51aの光強度に勾配を付加する凹面鏡60と、を有している。
【0060】
具体的には、レンズ56は、例えば、図3Bのレンズ56と同様であって、左右方向において光を収束させずに、上下方向における寸法が前方ほど小さくなるように光を収束させる。これにより、レンズ56は、前方ほど光強度が大きくなるように前後方向に沿って光路51aの光強度に勾配を付加する。
【0061】
凹面鏡60は、発光素子51の右であって、レンズ56の後方に配置されている。発光素子51は右に向かって発光し、その光は凹面鏡60の曲面60aにより反射されて、レンズ56及び飛翔領域11bを順に通過し、受光素子52に受光される。凹面鏡60の曲面60aは、発光素子51からの光を反射する反射面であって、上下方向に対して直交する断面では曲線状に湾曲し、上下方向に平行な断面では直線状に延びている。この湾曲した曲面60aの曲率は左右方向における右ほど大きくなるように変化し、この曲率の変化率は左右方向における右ほど大きい。このため、曲面60aで反射された光の光路51aでは、光強度が左ほど大きい勾配を有する。
【0062】
このように、光路51aの光強度には、レンズ56により前後方向における前方ほど大きく、凹面鏡60により左右方向において左ほど大きくなるように、勾配が付加される。制御装置20は、この光路51aの上方に配置されたヘッド11において、所定量のインク滴Iが吐出するように駆動素子16を駆動させる。制御装置20は、この駆動に応じたインク滴Iの吐出の有無を受光素子52による受光信号の有無に基づいて検出することができる。さらに、制御装置20は、受光素子52による受光信号の高さに応じて、前後方向及び左右方向のそれぞれの方向において所定の飛翔方向B0に対するインク滴Iの飛翔方向のズレを検出することができる。
【0063】
なお、図10A及び図10Bでは、勾配付加部材55に凹面鏡60を用いたが、図11に示すように、勾配付加部材55に凸面鏡63が用いられてもよい。この凸面鏡63の曲面63aは、上下方向に対して直交する断面では曲線状に湾曲し、上下方向に平行な断面では直線状に延びている。この湾曲した曲面63aの曲率は左右方向における右ほど大きくなるように変化し、この曲率の変化率は左右方向における右ほど大きい。このため、曲面63aで反射された光の光路51aでは、光強度が左ほど大きい勾配を有する。
【0064】
<変形例6>
変形例6に係る印刷装置10では、上記実施の形態において、図12Aに示すように複数の光学フィルタ57(例えば、第1光学フィルタ57a、第2光学フィルタ57b及び第3光学フィルタ57c)は前後方向に沿って並ぶ。第1光学フィルタ57a、第2光学フィルタ57b及び第3光学フィルタ57cは、この順で後方から並んでいる。これらの光学フィルタ57a~57cは、前後方向に対して交差(例えば、直交)する姿勢で、発光素子51と飛翔領域11bとの間において発光素子51から前方へ発光された光が通過するように光路51aに対して交差している。図12Aの例では、複数の光学フィルタ57a~57cはレンズ56と飛翔領域11bとの間に配置されているが、少なくとも一部の光学フィルタ57a~57cは発光素子51とレンズ56との間に配置されていてもよい。また、光学フィルタ57a~57cは、吸収型であっても反射型であってもよい。
【0065】
図12Bのグラフは、位置F1からの左右方向における長さと、光学フィルタ57a~57cの光透過率との関係を示している。ここで、複数の光学フィルタ57a~57cは、左右方向において右ほどその光透過率が大きい勾配を有し、互いに同じ光透過率の勾配を有している。図12Bの点線は、第1光学フィルタ57aの光透過率のグラフである。この第1光学フィルタ57aは、その光透過率が100%の位置が位置F1に一致するように配置されている。
【0066】
図12Bの破線は、第1光学フィルタ57a及び第2光学フィルタ57bを前後方向に重ねて配置した場合の第1光学フィルタ57a及び第2光学フィルタ57bを通過する光透過率のグラフである。この場合、左右方向において位置F1よりも左の位置F2に、第1光学フィルタ57aにおける光透過率が80%の位置、及び、第2光学フィルタ57bにおける光透過率が100%の位置が配されるように、第2光学フィルタ57bは第1光学フィルタ57aよりも左にずれて並べられる。
【0067】
図12Bの実線は、第1光学フィルタ57a、第2光学フィルタ57b及び第3光学フィルタ57cを前後方向に重ねて配置した場合のこれらの光学フィルタ57a~57cを通過した光透過率のグラフである。この場合、左右方向において位置F2よりも左の位置F3に、第1光学フィルタ57aにおける光透過率が60%の位置、第2光学フィルタ57bにおける光透過率が80%の位置、及び、第3光学フィルタ57cにおける光透過率が100%の位置が配されるように、第3光学フィルタ57cは第2光学フィルタ57bよりも左にずれて並べられる。
【0068】
このように発光素子51からの光が通過する光学フィルタ57a~57cの数が多くなるほど、左右方向における長さに対する光透過率の勾配が大きくなる。このため、複数の光学フィルタ57a~57cを通過した光の光路51aにおいて左右方向における光強度の勾配が大きくなる。これにより、左右方向におけるインク滴Iの飛翔方向のズレに対する受光信号の高さの変化が大きくなる。よって、左右方向におけるインク滴Iの飛翔方向のズレを精度良く検出することができる。なお、複数の光学フィルタ57a~57cは、左右方向に沿ってずれずに前後方向に沿って並べられてもよい。
【0069】
<変形例7>
変形例7に係る印刷装置10では、上記実施の形態において、図13に示すように、光学フィルタ57は、前後方向及び左右方向に対して傾斜するように配置されている。光学フィルタ57は、例えば矩形の平板形状であって、発光素子51と飛翔領域11bとの間において発光素子51から前方へ発光された光が通過するように光路51aに対して交差している。光学フィルタ57は、上下方向に対して平行であって、前後方向及び左右方向の両方向に対して傾斜している。
【0070】
光学フィルタ57が左右方向に対して傾斜角度θ1で傾斜し、光学フィルタ57の左右方向の長さに対する光透過率が線形である場合、光学フィルタ57を通過した光路51aの光強度の勾配は(1/cosθ1)倍に大きくなる。このように、左右方向に対する光学フィルタ57の傾斜角度θ1が大きくなるほど、左右方向における光路51aの光強度の勾配が大きくなる。これにより、左右方向におけるインク滴Iの飛翔方向のズレに対する受光信号の高さの変化が大きくなるため、左右方向におけるインク滴Iの飛翔方向のズレを精度良く検出することができる。
【0071】
<変形例8>
変形例8に係る印刷装置10では、上記実施の形態及び変形例1~7において、図14に示すように、発光素子51及び受光素子52は、光路51aが上下方向及び前後方向に対して傾斜するように配置されている。発光素子51から発光された光の経路である光路51aが左右方向に対して平行であって、上下方向及び前後方向の両方向に対して傾斜するように、発光素子51が配置されている。また、受光素子52は、発光素子51から発光された光を受光するように、発光素子51に対向して配置されている。
【0072】
光路51aは、ヘッド11の吐出面11aに対して傾斜し、光学フィルタ57に対して直交している。また、光路51aが前後方向に対して傾斜角度θ2で傾斜し、光学フィルタ57の左右方向の長さに対する光透過率が線形である場合、光学フィルタ57を通過した光路51aの光強度の勾配は(1/cosθ2)倍に大きくなる。このように、前後方向に対する光学フィルタ57の傾斜角度θ2が大きくなるほど、前後方向における光路51aの光強度の勾配が大きくなる。これにより、前後方向におけるインク滴Iの飛翔方向のズレに対する受光信号の高さの変化が大きくなるため、前後方向におけるインク滴Iの飛翔方向のズレを精度良く検出することができる。
【0073】
<変形例9>
変形例9に係る印刷装置10では、上記実施の形態及び変形例1~8において、発光素子51及び受光素子52は、被印刷媒体Aに着弾したインク滴Iの位置ズレの閾値以内に、被印刷媒体Aにおけるインク滴Iの着弾位置の確率分布を示す正規分布において標準偏差の所定倍の値があり、且つ、上下方向において吐出面11aから光路51aまでの距離が最も長くなるように、配置されている。
【0074】
具体的には、図15Aの実線に示すように、ノズル12から下方に吐出されたインク滴Iは、所定の飛翔方向B0である下方に飛翔する。これに対し、図15Aの点線及び破線に示すように、インク滴Iの飛翔方向B3、B4は、所定の飛翔方向B0からずれる場合がある。この場合、上下方向においてノズル12からの長さGが大きくなるほど、上下方向に対して直交する方向において所定の飛翔方向B0からのインク滴Iの飛翔位置のズレ量は大きくなるため、インク滴Iの飛翔方向のズレを検出し易い。しかしながら、長さGが大き過ぎると、許容可能な小さな飛翔方向のズレであっても、飛翔方向のズレとして検出されてしまう。
【0075】
そこで、図15Bに示すように、被印刷媒体Aにおけるインク滴Iの着弾位置の確率分布を示す正規分布に基づいて、発光素子51及び受光素子52が配置される。図15Bに示すグラフの縦軸は、被印刷媒体Aにおけるインク滴Iの着弾位置の確率を示し、横軸は、所定の飛翔方向B0に飛翔したインク滴Iの着弾位置からのインク滴Iの着弾位置のズレ量である。
【0076】
すなわち、図15Aに示すように長さG1の位置に被印刷媒体Aが位置している場合、図15Bに示すようにインク滴Iの着弾位置の確率分布は正規分布H1で表される。図15Aに示すように長さG1よりも長い長さG2の位置に被印刷媒体Aが位置している場合、図15Bに示すようにインク滴Iの着弾位置の正規分布H2は正規分布H1よりも位置ズレ量が大きくなる。図15Aに示すように長さG2よりも長い長さG3の位置に被印刷媒体Aが位置している場合、図15Bに示すようにインク滴Iの着弾位置の正規分布H3は正規分布H2よりも位置ズレ量が大きくなる。
【0077】
このような正規分布における標準偏差σの所定倍の値(例えば、3σ)が、被印刷媒体Aに着弾したインク滴Iの位置ズレの閾値J(例えば、20μm)以内になるような、正規分布に対応する長さGが選ばれる。さらに、このように選ばれた長さGのうち、最大の長さGが選ばれる。このようにして選ばれた最大の長さGに光路51aの中心軸が位置するように、発光素子51及び受光素子52が配置される。これにより、光学的ノイズ及び電気的ノイズに起因した誤検出を抑制し、インク滴Iの飛翔方向のズレを精度良く検出することができる。
【0078】
<変形例10>
変形例10に係る印刷装置10は、上記実施の形態及び変形例1~9において、図2に示すように、受光素子52の受光量に応じた信号を互いに異なる増幅率で増幅する複数の増幅器54を備えている。ノズル12は、第1ノズル12、及び、第1ノズル12よりも左右方向の一方向に位置している第2ノズル12を有している。制御装置20は、第1ノズル12からのインク滴Iの飛翔位置を通る光の光強度よりも、第2ノズル12からのインク滴Iの飛翔位置を通る光の光強度の方が小さい場合は、第1ノズル12からインク滴Iを吐出するときよりも、第2ノズル12からインク滴Iを吐出するときに、増幅率が大きい増幅器54により受光素子52の受光量の信号を増幅させる。
【0079】
具体的には、増幅器54は、例えば、1以上の増幅率で受光信号を増幅する回路を有しており、互いに増幅率が異なる複数の増幅器54(例えば、第1増幅器54a、第2増幅器54b及び第3増幅器54c)を含んでいる。第1増幅器54aの第1増幅率よりも第2増幅器54bの第2増幅率は大きく、第2増幅器54bの第2増幅率よりも第3増幅器54cの第3増幅率は大きい。増幅器54は切替器61に接続され、切替器61は制御装置20に接続されている。切替器61は、インク滴Iを吐出するノズル12に応じて受光素子52を接続する増幅器54を切り替えるように、制御装置20により制御されている。
【0080】
図3Aの例では、光路51aの光強度は、左右方向において左ほど小さくなっている。制御装置20は、この光路51aの上方に配置されているヘッド11のノズル12からインク滴Iを吐出させる。このインク滴Iが光路51aを飛翔する場合、第1ノズル12からのインク滴Iの飛翔位置を通る光の光強度よりも、第1ノズル12よりも左の第2ノズル12からのインク滴Iの飛翔位置を通る光の光強度の方が小さい。図16Aに示すように、この第1ノズル12からのインク滴Iにより遮断された光の光強度に対応する第1受光信号のピークの高さK1よりも、図16Bに示すように、第2ノズル12からのインク滴Iにより遮断された光の光強度に対応する第2受光信号のピークの高さK2は小さい。
【0081】
また、所定の飛翔方向B0に対してインク滴Iの飛翔方向がずれた場合、そのズレによる受光信号の高さの変化量は受光信号のピークの高さに対応している。このため、第1受光信号の高さK1よりも第2受光信号の高さK2が小さい場合、第1受光信号の高さの変化量dK1よりも第2受光信号の高さの変化量dK2は小さくなる。これに対して、増幅器54による受光信号の増幅率を一律に大きくすると、高さが大きい受光信号は大きくなり過ぎて、データ処理の限界を超える恐れがある。そこで、光路51aにおいてノズル12からのインク滴Iの飛翔位置を通る光の光強度に対応する、インク滴Iを吐出するノズル12の位置に応じて、制御装置20は受光信号の増幅率を制御する。
【0082】
例えば、図3に示すように、制御装置20は、第1ノズル列12a又は第2ノズル列12bのノズル12からインク滴Iを吐出する場合、受光素子52を第1増幅器54aに接続するように切替器61を制御する。この場合、光路51aにおいてインク滴Iの飛翔位置を通る光の光強度が大きいため、インク滴Iにより遮断された光路51aの光強度に対応する受光量の受光信号は大きい。よって、受光信号を小さい第1増幅率で第1増幅器54aにより増幅されるため、増幅された受光信号が大きくなり過ぎずに、制御装置20はその増幅された受光信号に基づいてインク滴Iの飛翔方向のズレを検出することができる。
【0083】
また、制御装置20は、第2ノズル列12bよりも左の第3ノズル列12cのノズル12からインク滴Iを吐出する場合、受光素子52を第2増幅器54bに接続するように切替器61を制御する。この場合、光路51aにおいてインク滴Iの飛翔位置を通る光の光強度は、第2ノズル列12bのノズル12からのインク滴Iの飛翔位置を通る光の光強度よりも小さい。このため、この光強度に対応する受光量の受光信号は、第2ノズル列12bのノズル12からインク滴Iを吐出する場合よりも、第3ノズル列12cのノズル12からインク滴Iを吐出する場合の方が小さくなる。よって、受光信号を第1増幅率よりも大きい第2増幅率で第2増幅器54bにより増幅されるため、制御装置20はその増幅された受光信号に基づいてインク滴Iの飛翔方向のズレを検出することができる。
【0084】
さらに、制御装置20は、第3ノズル列12cよりも左の第4ノズル列12dのノズル12からインク滴Iを吐出する場合、受光素子52を第3増幅器54cに接続するように切替器61を制御する。この場合、光路51aにおいて、インク滴Iの飛翔位置を通る光の光強度は、第3ノズル列12cのノズル12からのインク滴Iの飛翔位置を通る光の光強度よりも小さい。このため、この光強度に対応する受光量の受光信号は、第3ノズル列12cのノズル12からインク滴Iを吐出する場合よりも、第4ノズル列12dのノズル12からインク滴Iを吐出する場合の方が小さくなる。よって、受光信号を第2増幅率よりも大きい第3増幅率で第3増幅器54cにより増幅されるため、制御装置20はその増幅された受光信号に基づいてインク滴Iの飛翔方向のズレを検出することができる。
【0085】
このように、左右方向においてノズル12からのインク滴Iに遮断される光路51aの光強度が異なる場合には、その光強度が小さいほど、光強度に対応する高さの受光信号の増幅率が大きくなるように、制御装置20は、インク滴Iを吐出するノズル12の位置に応じて受光信号の増幅率を変更する。これによって、受光信号を適切に増幅して、ノズル12の位置に応じた受光信号の高さの差を低減し、受光信号に高さの変化に応じたインク滴Iの飛翔方向のズレを精度良く検出することができる。なお、上記と同様に、前後方向においてノズル12からのインク滴Iに遮断される光路51aの光強度が異なる場合には、その光強度が小さいほど、光強度に対応する高さの受光信号の増幅率が大きくなるように、制御装置20は、インク滴Iを吐出するノズル12の位置に応じて受光信号の増幅率を変更してもよい。
【0086】
<変形例11>
変形例11に係る印刷装置10では、上記実施の形態及び変形例4、8~10において、図9A及び図9Bに示すように、勾配付加部材55は、前後方向に沿って光路51aの光強度に勾配を付加するレンズ56を有している。ノズル12は、第1ノズル12、及び、第1ノズル12よりも左右方向の一方向に位置している第2ノズル12を有している。制御装置20は、第1ノズル12からのインク滴Iの飛翔位置を通る光の光強度よりも、第2ノズル12からのインク滴Iの飛翔位置を通る光の光強度の方が小さい第1パターンとなるよう発光素子51cを駆動する第1発光モードと、第1パターンよりも第2ノズル12からのインク滴Iの飛翔位置を通る光の光強度を大きい第2パターンとなるよう発光素子51cを駆動する第2発光モードとの間で、発光素子51cの駆動を切り替える。
【0087】
具体的には、レンズ56は、例えば、図3Bのレンズ56と同様であって、左右方向において光を収束させずに、上下方向における寸法が前方ほど小さくなるように光を収束させる。これにより、レンズ56は、前方ほど光強度が大きくなるように前後方向に沿って光路51aの光強度に勾配を付加する。また、発光素子51cは、図9Bに示すように、複数の領域(例えば、第5領域59e~第8領域59h)を有し、第5領域59e~第8領域59hのそれぞれの領域には複数(例えば、3つ)の光源53が設けられている。各光源53が発光する光強度は、可変であって、制御装置20により制御されている。
【0088】
例えば、制御装置20は、第5領域59eの光源53、第6領域59fの光源53、第7領域59gの光源53、及び、第8領域59hの光源53の順で、光源53が発光する光の光強度を小さくなるように発光素子51cを制御すると、光路51aの光強度は第1パターンとなって左ほど小さい勾配を有する。制御装置20は、この光路51aの上方に配置されているヘッド11のノズル12からインク滴Iを吐出させる。この場合、光路51aにおいて、第1ノズル12からのインク滴Iの飛翔位置を通る光の光強度よりも、第1ノズル12よりも左の第2ノズル12からのインク滴Iの飛翔位置を通る光の光強度の方が小さい。この光強度が小さいほど、受光信号のピークの高さが小さくなり、インク滴Iの飛翔方向のズレに対応する受光信号の高さの変化も小さくなる。そこで、ノズル12からのインク滴Iの飛翔位置を通る光の光強度に対応する、インク滴Iを吐出するノズル12の位置に応じて、制御装置20は発光素子51cの光強度を制御する。
【0089】
例えば、図9Aに示すように、制御装置20は、第1ノズル列12aのノズル12からインク滴Iを吐出する場合、第1発光モードで発光素子51cを駆動する。この第1発光モードでは、例えば、制御装置20は、第5領域59eの光源53の光強度を100%とし、第5領域59eの光源53、第6領域59fの光源53、第7領域59gの光源53、及び、第8領域59hの光源53の順で、光源53が発光する光の光強度を所定の光強度ずつ、例えば、20%ずつ小さくなるように発光素子51cを制御する。これにより、光路51aの光強度は第1パターンとなって左ほど小さい勾配を有する。
【0090】
しかしながら、この第1パターンの光路51aの光強度では、第4ノズル列12dのノズル12からのインク滴Iの飛翔位置を通る光の光強度の方が小さくなる。そこで、制御装置20は、第4ノズル列12dのノズル12からインク滴Iを吐出する場合、第2発光モードで発光素子51cを駆動する。この第2発光モードでは、制御装置20は、第5領域59eの光源53を点灯させずに、第6領域59fの光源53の光強度を100%とし、第7領域59gの光源53、及び、第8領域59hの光源53の順で、光源53が発光する光の光強度を所定の光強度ずつ、例えば、20%ずつ小さくなるように発光素子51cを制御する。これにより、光路51aにおいて第4ノズル列12dのノズル12からのインク滴Iの飛翔位置を通る光の光強度が第1パターンよりも大きい第2パターンとなる。これにより、光強度に対応する受光信号の高さが大きくなり、インク滴Iの飛翔方向のズレに対応する受光信号の高さの変化も大きくなる。よって、制御装置20は、受光信号に高さの変化に応じたインク滴Iの飛翔方向のズレを精度良く検出することができる。
【0091】
<変形例12>
変形例12に係る印刷装置10では、上記実施の形態及び変形例1~11において、制御装置20は、受光素子52による受光量の時間変化を、受光量を信号の高さで表し、経過時間を信号の幅で表す信号の波形において、インク滴Iが第1の態様で飛翔したときの波形が幅方向において対称な形状を有する場合であって、インク滴Iが第2の態様で飛翔したときに、信号の幅が第1の態様における信号の幅と同一であり、且つ、信号の高さが第1の態様における信号の高さと比べて所定値以上の差がある場合は、第2の態様で吐出されたインク滴Iのサイズが第1の態様で吐出されたインク滴Iのサイズと異なると判定する。
【0092】
具体的には、図5Aに示すように、例えばインク滴Iの飛翔方向が所定の飛翔方向B0からずれた場合には、図5B及び図5Cに示すように、その受光信号F1、F2の高さE1、E2は、インク滴Iの飛翔方向が所定の飛翔方向B0であるときの受光信号F0の高さE0と異なる。また、図5Aに示すように、例えばインク滴Iの飛翔方向が所定の飛翔方向B0からずれた場合には、インク滴Iが遮断する光路51aの光強度は時間と共に変化する。このため、図5B及び図5Cに示すように、その受光信号の波形は、幅方向において非対称な形状を有している。さらに、図5Aに示すように、インク滴Iの飛翔方向が所定の飛翔方向B0からずれた場合には、インク滴Iが光路51aを遮断する時間が、インク滴Iの飛翔方向が所定の飛翔方向B0である場合よりも短くなる。このため、図5B及び図5Cに示すように、その受光信号F1、F2の幅は受光信号F0の幅よりも小さくなる。
【0093】
これに対して、インク滴Iのサイズが所定のサイズとは異なる場合にも、インク滴Iにより遮断される光の面積が異なるため、受光信号の高さが変化する。例えば、図17Aに示すように、所定サイズのインク滴Iが光路51aを飛翔した場合の受光信号L0のピークの高さよりも、所定サイズよりも小さいインク滴Iが光路51aを飛翔した場合の受光信号L1のピークの高さは小さくなる。また、所定サイズのインク滴Iが光路51aを飛翔した場合の受光信号L0のピークの高さよりも、所定サイズよりも大きいインク滴Iが光路51aを飛翔した場合の受光信号L2のピークの高さは大きくなる。
【0094】
しかしながら、インク滴Iのサイズが所定のサイズとは異なる場合には、ノズル12から下方に飛翔するインク滴Iが遮断する光路51aの光強度は時間に対して変化しないため、その受光信号L1、L2の波形は、受光信号L0の波形と同様に、幅方向において対称な形状を有している。また、インク滴Iのサイズが所定のサイズとは異なる場合であっても、ノズル12から下方に飛翔するインク滴Iが光路51aを遮断する時間は変化しないため、その受光信号L1、L2の幅は、受光信号L0の幅と同じである。
【0095】
このため、受光信号の波形及び幅に基づいて、インク滴Iのサイズ変化を検出することができる。この場合、制御装置20は、受光信号の形状が対称であり、且つ、受光信号の幅が受光信号L0の幅と同じであり、且つ、受光信号の高さが受光信号L0の高さと比べて所定値以上の差があれば、インク滴Iのサイズは所定サイズとは異なると判定することができる。よって、例えばインク滴Iのサイズは所定サイズと異なる場合には、駆動素子16の劣化などを検出することができる。また、そのサイズの差に応じてインク滴Iの吐出タイミングなどを補正することにより、サイズの差に起因した印刷画像の画質低下を低減することができる。
【0096】
<変形例13>
変形例13に係る印刷装置10では、上記実施の形態及び変形例1~12において、受光素子52による受光量の時間変化を、受光量を信号の高さで表し、経過時間を信号の幅で表す信号の波形において、インク滴Iが第3の態様で飛翔したときの波形が幅方向において対称な形状を有する場合であって、インク滴Iが第4の態様で飛翔したときに、信号の高さが第3の態様における信号の高さと同一であり、且つ、信号の幅が第3の態様における信号の幅と比べて所定値以上の差がある場合は、第4の態様で吐出されたインク滴Iの速度が第3の態様で吐出されたインク滴Iの速度と異なると判定する。
【0097】
具体的には、飛翔するインク滴Iの速度が所定の速度とは異なる場合、光路51aにおいてノズル12から下方に飛翔するインク滴Iにより遮断される光の面積は、インク滴Iの速度が所定の速度である場合から変化しない。このため、図17Bに示すように、所定の速度よりも速い速度でインク滴Iが光路51aを飛翔した場合の受光信号M1のピークの高さ、及び、所定の速度よりも遅い速度でインク滴Iが光路51aを飛翔した場合の受光信号M2のピークの高さは、所定速度でインク滴Iが光路51aを飛翔した場合の受光信号M0のピークの高さと同じである。
【0098】
また、インク滴Iの速度が所定の速度とは異なる場合には、ノズル12から下方に飛翔するインク滴Iが遮断する光路51aの光強度は時間に対して変化しないため、その受光信号M1、M2の波形は、受光信号M0の波形と同様に、幅方向において対称な形状を有している。さらに、インク滴Iの速度が所定の速度とは異なる場合には、その速度が速いほど、ノズル12から下方に飛翔するインク滴Iが光路51aを遮断する時間は短いため、その受光信号M1の幅は受光信号M0の幅よりも小さい。その速度が遅いほど、ノズル12から下方に飛翔するインク滴Iが光路51aを遮断する時間は長いため、受光信号M2の幅は受光信号M0の幅よりも大きくなる。
【0099】
このため、受光信号の波形、幅及び高さに基づいて、インク滴Iの速度変化を検出することができる。この場合、制御装置20は、受光信号の形状が対称であり、且つ、受光信号の高さが受光信号M0の高さと同じであり、且つ、受光信号の幅が受光信号M0の高さと比べて所定値以上の差があれば、飛翔するインク滴Iの速度は所定の速度とは異なると判定することができる。よって、例えば飛翔するインク滴Iの速度は所定の速度とは異なる場合には、駆動素子16の劣化などを検出することができる。また、その速度の差に応じてインク滴Iの吐出タイミングなどを補正することにより、速度の差に起因した印刷画像の画質低下を低減することができる。
【0100】
<変形例14>
変形例14に係る印刷装置10では、上記実施の形態及び変形例1~13において、図18A及び図18Bに示すように、吐出面11aにおいて複数のノズル12の開口が並んで列を成している。発光素子51の配置は、複数のノズル12の開口が並ぶ配列方向と光路51aとの間の角度のうちの小さい角度が第1角度である第1配置、及び、角度が第1角度とは異なる第2角度である第2配置を有している。制御装置20は、第1配置及び第2配置のそれぞれの配置における発光素子51からの光を受光する受光素子52の受光量に基づいてノズル12から吐出されたインク滴Iの飛翔方向のズレ量を検出する。
【0101】
具体的には、図18Aに示すように、発光素子51から光を前方に発光した場合、勾配付加部材55によって光路51aに、光強度が前方ほど大きく、且つ、右ほど大きくなるように光強度の勾配が付加されている。この場合、光路51aにおいて光強度が等しい等高線Nは、前後方向及び左右方向に対して傾斜している。このため、受光信号の高さに基づいてインク滴Iの飛翔方向のズレの有無は判定できるが、そのズレ量を検出することができない。そこで、第1配置及び第2配置における発光素子51から発光された光路51aを用いて、互いに同じノズル12からインク滴Iを吐出させることにより、そのノズル12からのインク滴Iの飛翔方向のズレ量を検出することができる。
【0102】
ここで、ヘッド11の吐出面11aは上下方向に対して交差(例えば、直交)し、吐出面11aに複数のノズル12が開口し、この開口は前後方向に並んで列を成している。このノズル12の開口が並ぶ配列方向は、図18A及び図18Bの例では、前後方向である。この配列方向は前後方向に限定されず、配列方向は前後方向に対して傾斜していてもよい。
【0103】
印刷装置10の検出部50は、図2に示すように配置変更装置62を備えている。配置変更装置62は、ヘッド11と検出部50とを相対的に移動させることにより、検出部50の配置を図18Aの第1配置と図18Bの第2配置との間で変更するように構成されている。配置変更装置62は制御装置20に接続されており、配置変更装置62の駆動は制御装置20により制御されている。
【0104】
図18Aに示す第1配置では、発光素子51は前方に光を発光し、この光路51aの前後方向に対する成す角のうち小さい方の第1角度は、例えば0度であって、光路51aは前後方向に延びている。レンズ56は、光路51aの光強度が前方ほど大きくなるように光路51aに対して交差して配置されている。光学フィルタ57は、光路51aの光強度が右ほど大きくなるように光路51aに対して交差して配置されている。
【0105】
図18Bに示す第2配置では、発光素子51からの光路51aの前後方向に対する成す角のうち小さい方の第2角度θ3は、第1角度とは異なり、例えば10度であって、光路51aは前後方向及び左右方向に対して傾斜している。レンズ56は、光路51aの光強度が、光路51aの延伸方向に沿って発光素子51から離れるほど大きくなるように光路51aに対して交差して配置されている。光学フィルタ57は、光路51aの光強度が、光路51aの延伸方向に対して直交する方向において一方に向かって大きくなるように光路51aに対して交差して配置されている。これにより、図18Bの第2配置での光強度の等高線Nは、図18Aの第1配置での光強度の等高線Nに対して、第1角度と第2角度との差だけ、傾斜する。
【0106】
このような第1配置及び第2配置のそれぞれの配置において、制御装置20は互いに同じノズル12からインク滴Iを吐出させて検出動作を実行する。これにより、制御装置20は、第1配置及び第2配置のそれぞれの配置においてインク滴Iによる光路51aの遮断での受光量の減少量に応じた高さの受光信号を取得する。そして、制御装置20は、第1配置における受光信号の高さに対応する光路51aの光強度の等高線N、及び、第2配置における受光信号の高さに対応する光路51aの光強度の等高線Nを取得し、これらの等高線Nの交点を取得する。そして、制御装置20は、上下方向に対して直交する方向において、ノズル12からの所定の飛翔方向B0と交点との間隔をインク滴Iの飛翔方向のズレ量として取得する。このように、制御装置20は、第1配置及び第2配置のそれぞれの配置における発光素子51からの光を受光する受光素子52の受光量に対応する受光信号に基づいてノズル12から吐出されたインク滴Iの飛翔方向のズレ量を検出することができる。このズレ量に応じてインク滴Iの吐出タイミングなどを補正することにより、インク滴Iの飛翔方向のズレに起因した印刷画像の画質低下を低減することができる。
【0107】
<変形例15>
変形例15に係る印刷装置10では、上記実施の形態及び変形例6~13において、図19A及び図19Bに示すように、光学フィルタ57の配置は、左右方向の一方向に沿って光路51aの光強度が小さくなるように勾配を付加する第3配置、及び、左右方向の他方向に沿って光路51aの光強度が小さくなるように勾配を付加する第4配置を有している。制御装置20は、第3配置及び第4配置のそれぞれの配置における光学フィルタ57を通過した光を受光する受光素子52の受光量に基づいてノズル12から吐出されたインク滴Iの飛翔方向のズレ量を検出する。
【0108】
具体的には、図2に示すように、印刷装置10に備えられた配置変更装置62は、例えば、前後方向に延びる軸を中心に光学フィルタ57を回転し、発光素子51に対して光学フィルタ57を左右方向において反転させることにより、検出部50の配置を図19Aの第3配置と図19Bの第4配置との間で変更するように構成されている。
【0109】
図19Aの第3配置及び図19Bの第4配置では、発光素子51から光は前方に発光され、その光路51aは前後方向に延びている。レンズ56は、光路51aの光強度が前方ほど大きくなるように光路51aに対して交差して配置されている。また、図19Aの第3配置では、光学フィルタ57は、光路51aの光強度が左ほど小さくなるように光路51aに対して交差して配置されている。これに対して、図19Bの第4配置では、光学フィルタ57は、光路51aの光強度が右ほど小さくなるように光路51aに対して交差して配置されている。これにより、図19Aの第3配置での光強度の等高線Nと図19Bの第4配置での光強度の等高線Nとは、互いに前後方向に延びる線について左右対称になる。
【0110】
このような第3配置及び第4配置のそれぞれの配置において、制御装置20は互いに同じノズル12からインク滴Iを吐出させて検出動作を実行する。これにより、制御装置20は、第3配置及び第4配置のそれぞれの配置においてインク滴Iによる光路51aの遮断での受光量の減少量に応じた高さの受光信号を取得する。そして、制御装置20は、第3配置における受光信号の高さに対応する光強度の等高線N、及び、第4配置における受光信号の高さに対応する光強度の等高線Nを取得し、これらの等高線Nの交点を取得する。そして、制御装置20は、上下方向に対して直交する方向において、ノズル12からの所定の飛翔方向B0と交点との間隔をインク滴Iの飛翔方向のズレ量として取得する。このように、制御装置20は、第3配置及び第4配置のそれぞれの配置における光学フィルタ57を通過した光を受光する受光素子52の受光量に対応する受光信号に基づいてノズル12から吐出されたインク滴Iの飛翔方向のズレ量を検出することができる。このズレ量に応じてインク滴Iの吐出タイミングなどを補正することにより、インク滴Iの飛翔方向のズレに起因した印刷画像の画質低下を低減することができる。
【0111】
<変形例16>
変形例16に係る印刷装置10では、上記実施の形態及び変形例6~13において、図20A及び図20Bに示すように、光学フィルタ57dは、左右方向の一方向に沿って光路51aの光強度が小さくなるように勾配を付加する第1部分57d1、及び、左右方向の他方向に沿って光路51aの光強度が小さくなるように勾配を付加する第2部分57d2を有している。制御装置20は、第1部分57d1及び第2部分57d2のそれぞれの部分を通過した光を受光する受光素子52の受光量に基づいてノズル12から吐出されたインク滴Iの飛翔方向のズレ量を検出する。
【0112】
具体的には、図2に示すように、印刷装置10に備えられた配置変更装置62は、例えば、光学フィルタ57dを左右方向に移動させることにより、検出部50の配置を、発光素子51からの光が光学フィルタ57dの第1部分57d1を通過する図20Aの第5配置と発光素子51からの光が光学フィルタ57dの第2部分57d2を通過する図20Bの第6配置との間で変更するように構成されている。
【0113】
図20Aの第5配置及び図20Bの第6配置では、発光素子51から光は前方に発光され、その光路51aは前後方向に延びている。レンズ56は、光路51aの光強度が前方ほど大きくなるように光路51aに対して交差して配置されている。また、図20Aの第5配置では、光学フィルタ57dの第1部分57d1は、発光素子51と受光素子52との間に配置され、発光素子51からの光が通過され、通過した光路51aの光強度が左ほど小さくなる。これに対して、図20Bの第6配置では、光学フィルタ57dの第2部分57d2は、発光素子51と受光素子52との間に配置され、発光素子51からの光が通過され、通過した光路51aの光強度が右ほど小さくなる。これにより、図20Aの第5配置での光路51aの光強度の等高線Nと図20Bの第6配置での光路51aの光強度の等高線Nとは、互いに前後方向に延びる線について左右対称になる。
【0114】
このような第5配置及び第6配置のそれぞれの配置において、制御装置20は互いに同じノズル12からインク滴Iを吐出させて検出動作を実行する。これにより、制御装置20は、第5配置及び第6配置のそれぞれの配置においてインク滴Iによる光路51aの遮断での受光量の減少量に応じた高さの受光信号を取得する。そして、制御装置20は、第5配置における受光信号の高さに対応する光強度の等高線N、及び、第6配置における受光信号の高さに対応する光強度の等高線Nを取得し、これらの等高線Nの交点を取得する。そして、制御装置20は、上下方向に対して直交する方向において、ノズル12からの所定の飛翔方向B0と交点との間隔をインク滴Iの飛翔方向のズレ量として取得する。このように、制御装置20は、第1部分57d1及び第2部分57d2のそれぞれの部分を通過した光を受光する受光素子52の受光量に対応する受光信号に基づいてノズル12から吐出されたインク滴Iの飛翔方向のズレ量を検出することができる。このズレ量に応じてインク滴Iの吐出タイミングなどを補正することにより、インク滴Iの飛翔方向のズレに起因した印刷画像の画質低下を低減することができる。
【0115】
<変形例17>
変形例17に係る印刷装置10では、上記実施の形態及び変形例4において、図9Aに示すように、勾配付加部材55は、前後方向に沿って光路51aの光強度に勾配を付加するレンズ56を有している。発光素子51cは、複数の領域に配置された複数の光源53を有している。制御装置20は、複数の領域のうち左右方向の一方の領域に配置された光源53からの光と他方の領域に配置された光源53からの光とで光強度が異なる第3パターンとなるよう発光素子51cを駆動する第3発光モードと、第3パターンとは異なる第4パターンとなるよう発光素子51cを駆動する第4発光モードとの間で、発光素子51cの駆動を切り替える。また、制御装置20は、第3発光モード及び第4発光モードのそれぞれのモードにおける発光素子51cからの光を受光する受光素子52の受光量に基づいてノズル12から吐出されたインク滴Iの飛翔方向のズレ量を検出する。
【0116】
具体的には、レンズ56は、例えば、図3Bのレンズ56と同様であって、左右方向において光を収束させずに、上下方向における寸法が前方ほど小さくなるように光を収束させる。これにより、レンズ56は、前方ほど光強度が大きくなるように前後方向に沿って光路51aの光強度に勾配を付加する。また、発光素子51cは、図9Bに示すように、複数の領域(例えば、第5領域59e~第8領域59h)を有し、第5領域59e~第8領域59hのそれぞれの領域には複数(例えば、3つ)の光源53が設けられている。各光源53が発光する光強度は、可変であって、制御装置20により制御されている。
【0117】
制御装置20は、第3発光モードでは、第5領域59eの光源53、第6領域59fの光源53、第7領域59gの光源53、及び、第8領域59hの光源53の順で、光源53が発光する光の光強度を大きくなるように発光素子51cを制御する。この第5領域59eの光源53の光強度が第8領域59hの光源53の光強度よりも大きい第3パターンとなり、発光素子51cからの光路51aの光強度は右ほど大きい勾配を有する。また、制御装置20は、第4発光モードでは、第5領域59eの光源53、第6領域59fの光源53、第7領域59gの光源53、及び、第8領域59hの光源53の順で、光源53が発光する光の光強度を小さくなるように発光素子51cを制御する。この第5領域59eの光源53の光強度が第8領域59hの光源53の光強度よりも小さい第4パターンとなり、発光素子51cからの光路51aの光強度は左ほど大きい勾配を有する。これにより、第3発光モードでの光強度の等高線Nと第4発光モードでの光強度の等高線Nとは、互いに前後方向に延びる線について左右対称になる。
【0118】
このような第3発光モード及び第4発光モードのそれぞれの発光モードで、制御装置20は互いに同じノズル12からインク滴Iを吐出させて検出動作を実行する。これにより、制御装置20は、第3発光モード及び第4発光モードのそれぞれの発光モードにおいてインク滴Iによる光路51aの遮断での受光量の減少量に応じた高さの受光信号を取得する。そして、制御装置20は、第3発光モードでの受光信号の高さに対応する光強度の等高線N、及び、第4発光モードでの受光信号の高さに対応する光強度の等高線Nを取得し、これらの等高線Nの交点を取得する。そして、制御装置20は、上下方向に対して直交する方向において、ノズル12からの所定の飛翔方向B0と交点との間隔をインク滴Iの飛翔方向のズレ量として取得する。このように、制御装置20は、第3発光モード及び第4発光モードのそれぞれの発光モードでの発光素子51cからの光を受光する受光素子52の受光量に対応する受光信号に基づいてノズル12から吐出されたインク滴Iの飛翔方向のズレ量を検出することができる。このズレ量に応じてインク滴Iの吐出タイミングなどを補正することにより、インク滴Iの飛翔方向のズレに起因した印刷画像の画質低下を低減することができる。
【0119】
<その他の変形例>
上記実施の形態及び変形例では、レンズ56は、前方に向かって発光された光を収束させて、光強度が前方ほど大きくなるように、光路51aの光強度に勾配を付加させた。しかしながら、レンズ56は、前方に向かって発光された光を発散させて、光強度が前方ほど小さくなるように、光路51aの光強度に勾配を付加させてもよい。
【0120】
なお、実施の形態及びその変形例は、互いに相手を排除しない限り、互いに組み合わせてもよい。また、上記説明から、当業者にとっては、本開示の多くの改良や他の実施の形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本開示を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本開示の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【符号の説明】
【0121】
10 :印刷装置
11 :ヘッド
11a :吐出面
11b :飛翔領域
12 :ノズル(第1ノズル、第2ノズル)
20 :制御装置
51 :発光素子
51a :光路
51b :発光素子
51c :発光素子
52 :受光素子
53 :光源
54 :増幅器
54a :第1増幅器(増幅器)
54b :第2増幅器(増幅器)
54c :第3増幅器(増幅器)
55 :勾配付加部材
56 :レンズ
56a :レンズ
57 :光学フィルタ
57a :第1光学フィルタ(光学フィルタ)
57b :第2光学フィルタ(光学フィルタ)
57c :第3光学フィルタ(光学フィルタ)
57d :光学フィルタ
57d1 :第1部分
57d2 :第2部分
58 :枠体
58a :開口
60 :凹面鏡
60a :曲面
図1
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