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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147316
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】調温服
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/005 20060101AFI20241008BHJP
   A41D 1/04 20060101ALI20241008BHJP
   A41D 27/20 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
A41D13/005 108
A41D1/04 D
A41D27/20 B
A41D27/20 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060247
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】梅沢 浩之
【テーマコード(参考)】
3B031
3B035
3B211
【Fターム(参考)】
3B031AA01
3B031AA02
3B031AB01
3B031AB11
3B031AB13
3B031AC03
3B031AC14
3B035AA03
3B035AA17
3B035AA19
3B035AB01
3B035AB07
3B035AB09
3B035AD01
3B035AD02
3B211AA01
3B211AB01
3B211AB11
3B211AC01
3B211AC21
3B211AC22
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で、効果的に着用者の体温を調整できる調温服を提供する。
【解決手段】調温服1は、冷却材Cを収納し、着用者の体温を調整可能である。調温服1は、服本体部2と、冷却材Cを収納可能な収納部3と、を備える。服本体部2は、着用者に冷熱を伝える第一部分10と、着用者Pへの冷熱の伝達を抑制する第二部分20と、を有する。第一部分10は、第1熱伝導層11と、第1遮熱層12と、を有する。第二部分20は、第2熱伝導層21と、第2断熱層22と、を有する。収納部3は、第3熱伝導層32と、第3遮熱層33と、を有する。調温服1は、冷却材Cからの冷熱を、第3熱伝導層32から、第2熱伝導層21を介して、第1熱伝導層11へ伝達して着用者に伝える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却材又は発熱材を収納し、着用者の体温を調整可能な調温服であって、
前記調温服の服本体部と、
前記服本体部の外側に取り付けられ、前記冷却材又は前記発熱材を収納可能な収納部と、を備え、
前記服本体部は、前記着用者に冷熱又は温熱を伝える第一部分と、前記第一部分と異なる位置に設けられ、前記着用者への冷熱又は温熱の伝達を抑制する第二部分と、を有し、
前記収納部は、前記第二部分の外側に取り付けられ、
前記第一部分は、熱伝導性を有する第1熱伝導層と、前記第1熱伝導層の外側に設けられ、外部からの熱を遮る第1遮熱層と、を有し、
前記第二部分は、前記第1熱伝導層と接続し、熱伝導性を有する第2熱伝導層と、前記第2熱伝導層の内側に設けられ、断熱性を有する第2断熱層と、を有し、
前記収納部は、前記第2熱伝導層と接続し、熱伝導性を有する第3熱伝導層と、前記第3熱伝導層の外側に設けられ、外部からの熱を遮る第3遮熱層と、を有し、
前記調温服は、前記冷却材からの冷熱又は前記発熱材からの温熱を、前記第3熱伝導層から、前記第2熱伝導層を介して、前記第1熱伝導層へ伝達して前記着用者に伝えることを特徴とする調温服。
【請求項2】
前記第一部分は、前記着用者へ冷熱又は温熱を伝達する第一領域と、前記着用者への冷熱又は温熱の伝達を抑制する第二領域と、を有し、
前記第一領域は、前記第1熱伝導層と、前記第1遮熱層と、を有し、
前記第二領域は、前記第1熱伝導層と、前記第1遮熱層と、前記第1熱伝導層の内側に設けられ、断熱性を有する第1断熱層を有することを特徴とする請求項1に記載の調温服。
【請求項3】
前記収納部は、前記第3熱伝導層と前記第3遮熱層との間に設けられ、断熱性を有する第3断熱層を有することを特徴とする請求項1に記載の調温服。
【請求項4】
前記収納部は、上部に開口が形成される収納ベース部と、前記開口を閉じて前記冷却材又は前記発熱材を保持する保持具と、を有し、
前記調温服は、前記収納ベース部を外側から覆う位置において前記服本体部に取り付けられ、前記保持具で保持された前記冷却材又は前記発熱材を支持する支持部を有することを特徴とする請求項1に記載の調温服。
【請求項5】
前記支持部は、前記着用者に巻き付けられるベルト部を有し、
前記ベルト部は、前記着用者に巻き付けられたとき、前記第二部分を覆う位置に配置されて、前記冷却材又は前記発熱材を支持することを特徴とする請求項4に記載の調温服。
【請求項6】
前記第1熱伝導層、前記第2熱伝導層、及び前記第3熱伝導層は、単一の生地からなることを特徴とする請求項1に記載の調温服。
【請求項7】
前記調温服は、ハーネス型安全帯の内側に着用するものであって、
前記収納部は、前記着用者の背中側において前記ハーネス型安全帯と対向しない位置に設けられることを特徴とする請求項1に記載の調温服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調温服に係り、冷却材又は発熱材を収納し、着用者の体温を調整可能な調温服に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、夏季の屋外での作業は、大変暑く過酷な作業となるため、熱中症対策として冷却材や冷却ファンを取り付けた作業服の普及が進んでいる。
特に、高所作業ではハーネス型安全帯を装着する必要があるため、冷却機能の向上に加えて、安全性及び着脱のし易さが求められている。
【0003】
特許文献1には、冷却ファンと水の気化によって冷却されるシートを備えた作業服が記載されている。具体的には、ファンによって流れる空気とシートとが接触することによって、シートが水の気化により冷却される。着用者の体から発散される熱がシートで吸収されることで、着用者の体が冷やされる。
【0004】
また、特許文献2には、液体が循環する冷却管を備えた作業服が記載されている。具体的には、作業服に柔軟性を備える冷却管を取り付け、ポンプ等の循環装置によって冷却管内に冷却液を循環させることで、着用者の体が冷やされる。
【0005】
さらに、特許文献3には、ドライアイスを収納するポケット部を備えた作業服が記載されている。具体的には、ポケット部が服本体部の内側に設けられることで、着用者の体が冷やされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001-040512号公報
【特許文献2】特開2015-145541号公報
【特許文献3】特開2018-053387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1や特許文献2に記載の作業服は、冷感を得るためにファンやポンプ等、電気的な装置が必要となる。そのため、これらの装置を作業服に取り付けると、重量が増して、作業効率が低下するおそれがあった。
また、これらの装置を作業服と離れた位置に設ける場合には、装置と作業服とを繋ぐケーブルが必要になるため、高所作業をするときに、ケーブルが作業者の手足に引っ掛かってしまい安全性が低下するおそれもあった。
【0008】
さらに、特許文献1のように、作業服にファンを設ける場合には、ファンにゴミや砂等の異物が入り込み、故障するおそれがあった。
また、水の気化によって冷却する場合には、作業者の汗が蒸発し易くなることによって、身体の水分が少なくなってしまうおそれもあった。
【0009】
特許文献3に記載の作業服は、ファンやポンプ等の装置を用いることなく、作業者に冷感を与えるが、ドライアイスを収納するポケット部は、複数枚の布を重ねた積層構造であるため、十分な冷熱効果を得られないおそれがあった。
また、ポケット部が服本体部の内側に設けられるため、ドライアイスを交換するときには、作業服を着脱する必要がある。そのため、作業効率が低下したり、高所で作業服の着脱を行うことによって安全性が低下したりするおそれもあった。
【0010】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、簡易な構成で、効果的に着用者の体温を調整できる調温服を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題は、本発明の調温服は、冷却材又は発熱材を収納し、着用者の体温を調整可能な調温服であって、前記調温服の服本体部と、前記服本体部の外側に取り付けられ、前記冷却材又は前記発熱材を収納可能な収納部と、を備え、前記服本体部は、前記着用者に冷熱又は温熱を伝える第一部分と、前記第一部分と異なる位置に設けられ、前記着用者への冷熱又は温熱の伝達を抑制する第二部分と、を有し、前記収納部は、前記第二部分の外側に取り付けられ、前記第一部分は、熱伝導性を有する第1熱伝導層と、前記第1熱伝導層の外側に設けられ、外部からの熱を遮る第1遮熱層と、を有し、前記第二部分は、前記第1熱伝導層と接続し、熱伝導性を有する第2熱伝導層と、前記第2熱伝導層の内側に設けられ、断熱性を有する第2断熱層と、を有し、前記収納部は、前記第2熱伝導層と接続し、熱伝導性を有する第3熱伝導層と、前記第3熱伝導層の外側に設けられ、外部からの熱を遮る第3遮熱層と、を有し、前記調温服は、前記冷却材からの冷熱又は前記発熱材からの温熱を、前記第3熱伝導層から、前記第2熱伝導層を介して、前記第1熱伝導層へ伝達して前記着用者に伝えること、により解決される。
【0012】
上記構成により、簡易な構成で、効果的に着用者の体温を調整できる。
詳しく述べると、調温服は、断熱層によって着用者への冷熱又は温熱の伝達を抑制しつつ、熱伝導層によって冷却材からの冷熱又は前記発熱材からの温熱を着用者に伝えることができる。そのため、冷熱又は温熱を伝達したい部位(例えば、冷却効果又は保温効果が高い脇部分や首筋部分等)まで熱を逃がさず、伝達したい部位における調温効果を高めることができる。
また、冷却材又は発熱材の近傍に設けられる第二部分において、過度に冷熱又は温熱を与えないようにすることができる。
【0013】
このとき、前記第一部分は、前記着用者へ冷熱又は温熱を伝達する第一領域と、前記着用者への冷熱又は温熱の伝達を抑制する第二領域と、を有し、前記第一領域は、前記第1熱伝導層と、前記第1遮熱層と、を有し、前記第二領域は、前記第1熱伝導層と、前記第1遮熱層と、前記第1熱伝導層の内側に設けられ、断熱性を有する第1断熱層を有すると良い。
上記構成により、冷却材からの冷熱又は前記発熱材からの温熱の伝達を抑制したい部位(例えば、腹部等)において、過度に冷熱又は温熱を与えないようにすることができる。
【0014】
このとき、前記収納部は、前記第3熱伝導層と前記第3遮熱層との間に設けられ、断熱性を有する第3断熱層を有する、と良い。
上記構成により、冷却材からの冷熱又は発熱材からの温熱を外部に逃がさずに、より効果的に伝達することができる。
【0015】
このとき、前記収納部は、上部に開口が形成される収納ベース部と、前記開口を閉じて前記冷却材又は前記発熱材を保持する保持具と、を有し、前記調温服は、前記収納ベース部を外側から覆う位置において前記服本体部に取り付けられ、前記保持具で保持された前記冷却材又は前記発熱材を支持する支持部を有する、と良い。
上記構成により、保持具で開口を閉じることで冷却材又は発熱材の落下を抑制することができる。さらに、支持部によって、外側から冷却材又は発熱材を支持することで、冷却材又は発熱材の揺れや落下を一層抑制することができる。このように、支持部によって冷却材又は発熱材のがたつきを抑えることができるため、作業時にも冷却材又は発熱材を安定させて、作業性を向上できる。
【0016】
このとき、前記支持部は、前記着用者に巻き付けられるベルト部を有し、前記ベルト部は、前記着用者に巻き付けられたとき、前記第二部分を覆う位置に配置されて、前記冷却材又は前記発熱材を支持する、と良い。
上記構成により、着用者に巻き付けられるベルト部によって、冷却材又は発熱材を支持することができるので、冷却材又は発熱材の揺れや落下をより一層抑制することができる。このように、支持部によって冷却材又は発熱材のがたつきを抑えることができるため、作業時にも冷却材又は発熱材を安定させて、より作業性を向上できる。
【0017】
このとき、前記第1熱伝導層、前記第2熱伝導層、及び前記第3熱伝導層は、単一の生地からなる、と良い。
上記構成により、各熱伝導層が単一の生地からなるため、熱伝導効率をさらに向上させることができる。
【0018】
このとき、前記調温服は、ハーネス型安全帯の内側に着用するものであって、前記収納部は、前記着用者の背中側において前記ハーネス型安全帯と対向しない位置に設けられる。
上記構成により、ハーネス型安全帯を調温服の上に着用した場合でも、冷却材又は発熱材を容易に交換することができる。また、例えば、凍らせた飲料容器を冷却材として用いる場合に、高所作業の途中で飲料容器を取り出し、溶けた飲料を摂取して水分補給することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の調温服によれば、簡易な構成で、効果的に着用者の体温を調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】調温服の背面図である。
図2】調温服の側面図である。
図3】調温服の断面模式図である。
図4】調温服及びハーネス型安全帯を着用した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図1図4に基づき、本発明の一実施形態(以下、本実施形態)の調温服1について説明する。本実施形態では、着用者Pがヒトである例を説明するが、他の動物、例えば、ペットや家畜等の動物に適用しても良い。
また、調温服1は、高所作業用の作業着として、ハーネス型安全帯Hの内側に着用する例を説明する。しかしこれに限らず、調温服1は、高所以外の作業現場や、スポーツ、レジャー等で用いられても良い。
なお、以下の説明中、内側、外側とは、着用者Pを中心とした内側、外側を意味する。
【0022】
<調温服>
調温服1は、図1図2に示すように、冷却材Cを収納し、着用者Pの体温を調整するものである。調温服1は、服本体部2と、冷却材Cを収納可能な収納部3と、収納部3に収納した冷却材Cを支持する支持部4と、から主に構成されている。また、図3に示すように、調温服1を構成する生地は、積層構造を有する。
なお、本実施形態の調温服1は、凍らせた飲料容器や、瞬間冷却材、保冷剤、ドライアイス等の冷却材Cを収納部3に収納し、冷熱を伝えることで着用者Pの身体を冷やす例を説明する。しかしこれに限らず、例えば、カイロや充電式ヒータ等の発熱材を収納部3に収納し、温熱を伝えることで着用者Pの身体を温めても良い。
【0023】
<服本体部>
服本体部2は、着用者Pの上半身に着用される衣服である。服本体部2は、図1図2に示すように、着用者Pの腹部及び胸部側を覆う前身頃2aと、着用者Pの背部側を覆う後身頃2bと、頭部を挿通するための襟口2cと、腕を挿通するための袖口2dと、胴部を挿通するための裾口2eと、から主に構成されている。
【0024】
服本体部2は、図1図2に示すように、例えば袖なしのベスト型であって、前身頃2aと後身頃2bのそれぞれの側縁を縫合して形成される。襟口2c及び裾口2eは、前身頃2a及び後身頃2bが縫合されることによって、環状に形成される。袖口2dは、前身頃2a及び後身頃2bの縫合部において、着用者Pの腕に相当する部分に形成される。
【0025】
服本体部2は、襟口2cに頭部を通し、袖口2dに腕を通すことで、着用可能となっている。しかしこれに限らず、例えば、服本体部2の前側又は後側が開き、ファスナーやボタン、紐等で留めることによって着用可能としても良い。
また、服本体部2は、袖なしのベスト型に限らず、袖ありのブルゾン型や、襟付きのシャツ型等であっても良い。
【0026】
服本体部2は、着用者Pに冷熱を伝える第一部分10と、第一部分10と異なる位置に設けられ、着用者Pへ冷熱の伝達を抑制する第二部分20と、を有する。具体的には、第二部分20は、服本体部2において収納部3に対向する部分である。第一部分10は、服本体部2における第二部分20以外の部分である。
【0027】
第一部分10は、熱伝導性を有する第1熱伝導層11と、第1熱伝導層11の外側に設けられ、遮熱性を有する第1遮熱層12と、第1熱伝導層11の内側に設けられ、断熱性を有する第1断熱層13と、から主に構成される。
【0028】
第一部分10は、図1に示すように、着用者Pへ冷熱を伝達する第一領域10Aと、着用者Pへの冷熱の伝達を抑制する第二領域10Bと、を有する。
第一領域10Aは、着用者Pにとって冷却効果の高い脇部分や首筋部分に対応する領域であって、第1熱伝導層11と、第1遮熱層12と、を有する。第一領域10Aには、第1断熱層13が形成されていない。そのため、第1熱伝導層11が着用者P側に露出しており、第1熱伝導層11が着用者Pに接触する。
【0029】
第二領域10Bは、着用者Pの腹部に対応する領域であって、第1熱伝導層11と、第1遮熱層12と、第1断熱層13と、を有する。第二領域10Bには、第1断熱層13が形成されている。そのため、第1熱伝導層11が着用者P側に露出してらず、第1熱伝導層11が着用者Pに接触しないため、着用者Pへの冷熱の伝達を抑制する。
【0030】
第二部分20は、図1に示すように、外側から収納部3が縫い付けられる部分であって、熱伝導性を有する第2熱伝導層21と、第2熱伝導層21の内側に設けられ、断熱性を有する第2断熱層22と、から主に構成される。
第二部分20には、図3に示すように、外側に遮熱性を有する遮熱層が設けられていない。そのため、第2熱伝導層21が収納部3側に露出しており、第2熱伝導層21が冷却材Cに接触する。
言い換えると、第二部分20は、着用者Pの背面側において、第一部分10の第1遮熱層12の一部が切り欠かれた部分であり、外側に収納部3が設けられる。
【0031】
<収納部>
収納部3は、図1図3に示すように、着用者Pの背面側に設けられ、冷却材Cを収納する。収納部3は、第二部分20の外側に取り付けられ、冷却材Cを収納する収納ベース部30と、収納ベース部30に設けられ、冷却材Cを保持する保持具31と、を有する。
収納部3は、背中側に設けられるため、作業の邪魔にならない。また、冷却材Cからの冷熱の伝達を抑制したい部位(例えば腹部)と反対側である背中側に設けられるため、腹部に対して過度に冷熱を与えないようにすることができる。
【0032】
収納部3は、図1図2に示すように、例えば巾着型の袋状に形成される。収納ベース部30は、上部に開口30aを有しており、冷却材Cを着脱可能に収納する。そして、紐状の保持具31によって、開口30aが閉じられる。
なお、収納部3は、図4に示すように、ポケット状に形成されても良い。この場合は、蓋状の保持具31によって開口30aが閉じられても良い。
【0033】
収納部3は、巾着型の袋状、ポケット状に限らず、収納される冷却材Cの形状に合わせて適宜変更可能である。また、保持具31の形状は、紐状、蓋状に限らず、収納される冷却材Cの形状に合わせて適宜変更可能である。
【0034】
収納ベース部30は、図3に示すように、第二部分20の外側に設けられる。詳しく述べると、第二部分20の外側を覆う位置に設けられ、第二領域10Bに縫い付けられる。
収納ベース部30は、熱伝導性を有する第3熱伝導層32と、第3熱伝導層32の外側に設けられ、外部からの熱を遮る第3遮熱層33と、第3熱伝導層32と第3遮熱層33との間に設けられ、断熱性を有する第3断熱層34と、を有する。
【0035】
収納ベース部30は、冷却材Cを収納可能な大きさに形成される。本実施形態では、飲料が入ったペットボトルを凍らせた冷却材Cを用いるため、収納ベース部30は、ペットボトルを収納可能な大きさに形成される。なお、収納ベース部30の大きさは、収納される冷却材Cの大きさに合わせて適宜変更可能である。
【0036】
保持具31は、収納ベース部30の開口30aを閉じて、冷却材Cの落下を抑制するものである。保持具31は、紐31aで開口30aを絞り、留め具31bによって留めることで、冷却材Cを保持する。なお、保持具31は、留め具31bを用いらず、両絞り型の紐であっても良い。
また、保持具31は、図4に示すように、蓋状に形成されても良い。このとき、保持具31は、蓋状のカバー31cで開口30aを覆い、面ファスナー31dによってカバー31cを留めることで、冷却材Cを保持する。なお、カバー31cは、面ファスナー31dに限らず、ボタンやフックによって留められても良い。
【0037】
<調温服の層構造>
第1熱伝導層11は、熱伝導性を有する層である。なお、第2熱伝導層21及び第3熱伝導層32は、第1熱伝導層11と同様の構成のため、説明を省略する。
第1熱伝導層11は、可撓性を有し、熱伝導率が高い生地であれば良い。第1熱伝導層11は、例えば、銅等の金属繊維や炭素繊維である熱伝導繊維を材料とした生地が挙げられる。なお、第1熱伝導層11は、金属繊維や炭素繊維を織り込んだ布帛であっても良く、金属繊維や炭素繊維のみで形成された編地であっても良く、熱伝導繊維を含んだ不織布であっても良い。また、第1熱伝導層11は、布帛、編物、不織布等の生地表面に、アルミニウム等の金属を蒸着させたものでも良い。
【0038】
第1遮熱層12は、遮熱性を有する層である。なお、第3遮熱層33は、第1遮熱層12と同様の構成のため、説明を省略する。
第1遮熱層12は、可撓性を有し、熱伝導性が低く、外部からの熱を遮る遮熱性の高い生地であれば良い。第1遮熱層12は、例えば、ポリエステル、ナイロン等の合成繊維や、綿、絹等の天然繊維に、金属微粒子を含んだ生地が挙げられる。
【0039】
第1断熱層13は、断熱性を有する層である。なお、第2断熱層22及び第3断熱層34は、第1断熱層13と同様の構成のため、説明を省略する。
第1断熱層13は、可撓性を有し、熱伝導性が低く、着用者Pの体温を外部へ逃がさない断熱性の高い生地であれば良い。第1断熱層13は、例えば、ポリエステル、ナイロン等の合成繊維や、綿、絹等の天然繊維を材料とした生地が挙げられる。
【0040】
調温服1は、冷却材Cからの冷熱を、第3熱伝導層32から、第2熱伝導層21を介して、第1熱伝導層11へ伝達する。そして、第1熱伝導層11は、冷却材Cからの冷熱を着用者Pに伝える。
詳しく述べると、第3熱伝導層32が第2熱伝導層21と接続することで、冷却材Cからの冷熱を第2熱伝導層21へ伝える。そして、第2熱伝導層21が第1熱伝導層11と接続することで、第2熱伝導層21からの冷熱を第1熱伝導層11へ伝える。
第一領域10Aにおける第1熱伝導層11が着用者P側に露出しているため、第1熱伝導層11からの冷熱を着用者Pへ伝える。
【0041】
第3熱伝導層32は、冷却材Cの外面を覆うように形成される。そして、第3遮熱層33によって外部からの熱を遮り、第3断熱層34によって冷却材Cの冷熱を逃さないため、冷却材Cの冷熱を効率良く第2熱伝導層21へ伝えることができる。
【0042】
第2熱伝導層21は、内側に第2断熱層22が設けられる。したがって、冷却材Cからの冷熱の伝達を抑制したい部位(例えば腰部)に対して、過度に冷熱を与えないようにすることができる。
また、第2断熱層22によって冷却材Cの冷熱を逃さないため、冷却材Cの冷熱を効率良く第1熱伝導層11へ伝えることができる。
【0043】
第二領域10Bにおける第1熱伝導層11は、第1遮熱層12と第1断熱層13との間に設けられる。したがって、冷却材Cからの冷熱の伝達を抑制したい部位(例えば腹部)に対して、過度に冷熱を与えないようにすることができる。
また、第1遮熱層12及び第1断熱層13によって冷却材Cの冷熱を逃さないため、冷却材Cの冷熱を効率良く第一領域10Aにおける第1熱伝導層11へ伝えることができる。
【0044】
第二領域10Bにおける第1熱伝導層11は、外側に第1遮熱層12が設けられる。したがって、冷却材Cからの冷熱を伝達したい部位(例えば脇部分や首筋部分)に対して、外部からの熱を遮ることができるため、冷却材Cの冷熱を効率良く着用者Pへ伝えることができる。
【0045】
第1熱伝導層11、第2熱伝導層21、第3熱伝導層32は、単一の生地からなる。したがって、各熱伝導層が単一の生地からなるため、熱伝導効率をさらに向上させることができる。
また、第1断熱層13、第2断熱層22、第3断熱層34は、単一の生地からなる。したがって、各断熱層が単一の生地からなるため、複数の生地を縫合する場合に比べて隙間が形成されず、断熱性をさらに向上させることができる。
【0046】
このように、調温服1は、熱伝導率の異なる生地を積層することで構成されるため、電気的な装置を用いずに、簡易な構成で効率よく冷却材Cの冷熱を効率良く着用者Pへ伝えることができる。
また、調温服1は、電気的な装置を用いないため、装置及び装置に設けられたケーブル等を取り外す手間をかけずに洗濯することができる。
【0047】
<支持部>
支持部4は、収納ベース部30を外側から覆う位置において服本体部2に取り付けられ、収納部3に収納された冷却材Cを支持するものである。支持部4は、図1図2図4に示すように、着用者Pの腰部に巻き付けられるベルト部40と、ベルト部40を服本体部2に固定する固定具41と、を有する。
【0048】
ベルト部40は、弾性を有する長尺のゴムであって、一端部が服本体部2に取り付けられ、他端部に固定具41が取り付けられる。ベルト部40は、着用者Pに巻き付けられて、固定具41によって固定される。
固定具41は、服本体部2及び収納部3の外周部分に巻き付けてベルト部40を固定するものであり、例えば面ファスナーやボタン等が挙げられる。
【0049】
なお、ベルト部40は、服本体部2及び収納部3の外周部分に巻き付けて固定具41によって固定される。しかしこれに限らず、服本体部2にベルトループを取り付け、服本体部2とは別体のベルト部40をベルトループに挿通して、服本体部2及び収納部3の外周部分にベルト部40を巻き付けても良い。
また、支持部4は、服本体部2における収納ベース部30の両側部に紐状部材を取り付け、収納ベース部30を外側から覆う位置で紐状部材を互いに結ぶことで、冷却材Cを支持しても良い。
【0050】
ベルト部40は、図2に示すように、着用者Pに巻き付けられたとき、第二部分20を覆う位置に配置され、冷却材Cを支持する。詳しく述べると、ベルト部40は、収納ベース部30を外側から覆う位置において服本体部2に取り付けられており、保持具31で保持された冷却材Cを外側から支持する。
このように、保持具31で開口30aを閉じることで冷却材Cの落下を抑制することができる。さらに、支持部4のベルト部40によって、外側から冷却材Cを支持することで、冷却材Cの揺れや落下を一層抑制することができる。支持部4によって、冷却材Cが収納部3内でがたついてしまうことを抑えることができるため、作業時にも冷却材Cを安定させて、作業性を向上できる。
【0051】
ベルト部40で冷却材Cを支持すると、第二部分20において、着用者Pに冷却材Cからの冷熱が伝わり易くなる。本実施形態では、着用者Pに冷却材Cからの冷熱が伝わり易い第二部分20において、第2熱伝導層21の内側に第2断熱層22を設けるため、より一層、冷却材Cからの冷熱の伝達を抑制したい部位に対して過度に冷熱を与えないようにすることができる。
【0052】
<ハーネス型安全帯の着用>
図4は、ハーネス型安全帯Hの内側に調温服1を着用した状態を示す。図4では、収納部3を4つ設けた調温服1を例示するが、収納部3を1つ~3つ、又は5つ以上設けた調温服1であっても良い。また、図4は、カバー31cによって収納ベース部30の開口30aを閉じる収納部3を例に説明するが、紐31aによって収納ベース部30の開口30aを閉じる収納部3であっても良い。
【0053】
調温服1は、ハーネス型安全帯Hの内側に着用するものである。ハーネス型安全帯Hの内側に調温服1を着用する場合、高所作業におけるハーネス型安全帯Hの取り付け、取り外しを行い易いので、安全性が高まる。
【0054】
収納部3は、図4に示すように、着用者Pの背中側においてハーネス型安全帯Hと対向しない位置に設けられる。
したがって、ハーネス型安全帯Hを調温服1の上に着用した場合でも、冷却材Cを容易に交換することができる。例えば、凍らせた飲料容器を冷却材Cとして用いる場合に、高所作業の途中で飲料容器を取り出し、溶けた飲料を摂取して水分補給することができる。
【0055】
上記実施形態では、主として本発明に係る調温服に関して説明した。
ただし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0056】
1 調温服
2 服本体部
2a 前身頃
2b 後身頃
2c 襟口
2d 袖口
2e 裾口
3 収納部
4 支持部
10 第一部分
10A 第一領域
10B 第二領域
11 第1熱伝導層
12 第1遮熱層
13 第1断熱層
20 第二部分
21 第2熱伝導層
22 第2断熱層
30 収納ベース部
31 保持具
31a 紐
31b 留め具
31c カバー
31d 面ファスナー
32 第3熱伝導層
33 第3遮熱層
34 第3断熱層
40 ベルト部
41 固定具
P 作業者
H ハーネス型安全帯
C 冷却材
図1
図2
図3
図4