(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147317
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】作業補助装置
(51)【国際特許分類】
B25J 11/00 20060101AFI20241008BHJP
A62B 35/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B25J11/00 Z
A62B35/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060248
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】中村 知行
(72)【発明者】
【氏名】梅沢 浩之
【テーマコード(参考)】
2E184
3C707
【Fターム(参考)】
2E184JA03
2E184KA02
2E184KA04
2E184LA23
2E184MA01
2E184MA05
3C707AS38
3C707XK02
3C707XK06
3C707XK16
3C707XK24
3C707XK42
3C707XK56
3C707XK73
3C707XK74
(57)【要約】
【課題】フルハーネス型の安全帯を着用した作業者の作業を補助することができるとともに、装着時の着心地の悪化を抑制することができる作業補助装置を提供する。
【解決手段】作業補助装置10は、作業者の左右の肩部に巻回されて、背中側で連結する左右の肩ベルトB1と、水平方向に延びて、正面側において左右の肩ベルトB2を連結する胸ベルトB1と、作業者の左右の腿部に巻回される左右の腿ベルトB5と、を有する安全帯Bとともに作業者に装着される。作業補助装置10は、背中側において、左右の肩ベルトB1と腿ベルトB5の間に介在する接続ケーブル26と、接続ケーブル26を変位させることによって肩ベルトB2と腿ベルトB5の間の距離が短くなるように変化させる駆動制御モジュール11と、作業者の正面側で安全ベルトBに係合する挟持クリップ23を有する左右の肩部連結ベルト20と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者の左右の肩部にそれぞれ巻回されて前記作業者の背中側において互いに連結する左右の肩ベルトと、水平方向に延びて前記作業者の正面側において前記左右の肩ベルトを連結する胸ベルトと、前記作業者の左右の腿部にそれぞれ巻回される左右の腿ベルトと、を有する安全帯とともに、前記作業者に装着される作業補助装置であって、
前記作業者の背中側において、前記肩ベルトと前記腿ベルトの間に介在する接続部材と、
前記作業者の背中側において、前記接続部材を変位させることによって前記肩ベルトと前記腿ベルトの間の距離が短くなるように変化させる駆動制御モジュールと、
一方の端部が前記駆動制御モジュールに取り付けられて、他方の端部が前記作業者の正面側で前記安全帯に係合する係合体を有する帯状の左右の連結部材と、を備えることを特徴とする作業補助装置。
【請求項2】
前記係合体は、前記胸ベルトの左右の端部に係合し、
前記左右の連結部材は、前記作業者の左右の肩部にそれぞれ巻回されて前記作業者の背中側において前記駆動制御モジュールを吊持することを特徴とする請求項1に記載の作業補助装置。
【請求項3】
前記係合体は、前記安全帯を挟持する一対の挟持片と、該一対の挟持片が前記安全帯を挟持した状態に規制する規制具と、を有することを特徴とする請求項1に記載の作業補助装置。
【請求項4】
前記一対の挟持片には、前記規制具を挿通可能な貫通孔が形成されており、
前記規制具は、前記貫通孔に螺合することによって前記一対の挟持片を締結する締結具であることを特徴とする請求項3に記載の作業補助装置。
【請求項5】
前記係合体は、J字形状を有する吊り具であることを特徴とする請求項1に記載の作業補助装置。
【請求項6】
前記駆動制御モジュールは、前記接続部材を巻き取る巻取器と、
前記巻取器を回転駆動する電動機と、
前記接続部材を前記巻取器に案内する案内部材と、を有することを特徴とする請求項1に記載の作業補助装置。
【請求項7】
前記巻取器は、前記作業補助装置が前記作業者に装着された際に前後方向に延びる巻取回転軸を有し、
前記案内部材は、前記巻取器と前後方向において等しい位置に配設された複数の回転体を有し、
前記回転体は、前記巻取回転軸と平行に延びて、前記接続部材を案内する案内回転軸を有していることを特徴とする請求項6に記載の作業補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業補助装置に係り、特にフルハーネス型の安全帯に装着して用いられる作業補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高所作業を行う作業者は、高所からの墜落を防止するために、フルハーネス型の安全帯の着用が義務づけられている。フルハーネス型の安全帯は、肩ベルト及び腿ベルトとともに、ランヤードと呼ばれるロープ(命綱)を係留する環状金具を背中側に備えており、これによって、作業者の墜落を制止することができる。また、フルハーネス型の安全帯は、腰ベルト型の安全帯と比較して、吊り下げ状態における作業者の姿勢を安定させることができ、墜落制止効果の向上を図ることができる。
【0003】
また近年、作業者によって着用されて、作業者が重量物を持ち上げる作業を補助する作業補助装置が注目されている。特許文献1には、上体装着ベルトと、腰部ベルトと、大腿アームと、人工筋肉を有する人体サポート装置が開示されている。人体サポート装置は、人工筋肉を制御することによって着用者の上体を引き起こすとともに、大腿アームを回動させて屈曲した作業者の足が伸びるように作動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された人体サポート装置を着用することによって、重量物を持ち上げる作業が補助され、作業者の腰部の負担を軽減することができる。しかしながら、高所作業を行う作業者にとって、フルハーネス型の安全帯の上に人体サポート装置を「重ね着」するように着用する必要があり、作業者から、重ね着による着心地の悪化が報告されていた。換言すると、従来の作業補助装置は、フルハーネス型の安全帯とともに利用することを想定した検討が十分に行われていなかった。
【0006】
また、特許文献1に開示された人体サポートは、上体装着ベルト、腰部ベルト、及び大腿アームを装着する必要があった。そのため、フルハーネス型の安全帯に加えて人体サポート装置を装着する場合、装着に多くの時間と手間を要していた。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、フルハーネス型の安全帯を着用した作業者の作業を補助することができるとともに、装着時の着心地が良い作業補助装置を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、大きな時間と手間をかけることなく簡単に装着することができる作業補助装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、本発明の作業補助装置によれば、作業者の左右の肩部にそれぞれ巻回されて前記作業者の背中側において互いに連結する左右の肩ベルトと、水平方向に延びて前記作業者の正面側において前記左右の肩ベルトを連結する胸ベルトと、前記作業者の左右の腿部にそれぞれ巻回される左右の腿ベルトと、を有する安全帯とともに、前記作業者に装着される作業補助装置であって、前記作業者の背中側において、前記肩ベルトと前記腿ベルトの間に介在する接続部材と、前記作業者の背中側において、前記接続部材を変位させることによって前記肩ベルトと前記腿ベルトの間の距離が短くなるように変化させる駆動制御モジュールと、一方の端部が前記駆動制御モジュールに取り付けられて、他方の端部が前記作業者の正面側で前記安全帯に係合する係合体を有する帯状の左右の連結部材と、を備えることにより解決される。
【0009】
上記構成によれば、駆動制御モジュールは、作業者の背中側において、接続部材を変位させることによって肩ベルトと腿ベルトとの間の距離が短くなるように変化させる。このため、作業者が重量物を持ち上げる作業を支援することができる。また、駆動制御モジュールは、作業者の正面側で安全ベルトに係合する係合体を有する連結部材を備えている。換言すると、係合体を安全ベルトに係合することによって作業補助装置を装着することができるため、フルハーネス型安全帯と作業補助装置を「重ね着」する必要がない。そのため、作業補助装置を「重ね着」することによる着心地の悪化を抑制することが可能となる。また、係合体を作業者の正面側で安全ベルトに係合するだけで、大きな時間と手間をかけることなく簡単に作業補助装置を装着することが可能となる。
【0010】
また、前記係合体は、前記胸ベルトの左右の端部に係合し、前記左右の連結部材は、前記作業者の左右の肩部にそれぞれ巻回されて前記作業者の背中側において前記駆動制御モジュールを吊持するとよい。
上記構成によれば、係合体を作業者の正面側の胸ベルトに係合するだけで、駆動制御モジュールを背中側に吊持した状態で装着することができる。このため、作業者は、係合体を視認しながら胸ベルトに係合させることができ、大きな時間と手間をかけることなく簡単に作業補助装置を装着することができる。また、駆動制御モジュールは背中側に吊持されるため、作業補助装置を装着することによる作業性の悪化を抑制することが可能となる。
【0011】
また、前記係合体は、前記安全帯を挟持する一対の挟持片と、該一対の挟持片が前記安全帯を挟持した状態に規制する規制具と、を有するとよい。
上記構成によれば、挟持片によって安全帯を挟持するという簡単な操作で作業補助装置を装着することができる。また、安全帯を挟持した状態でロックすることができるため、不用意に係合体の係合が解除されてしまう事態の発生を抑制することが可能となる。
【0012】
また、前記一対の挟持片には、前記規制具を挿通可能な貫通孔が形成されており、前記規制具は、前記貫通孔に螺合することによって前記一対の挟持片を締結する締結具であるとよい。
上記構成によれば、締結具を締結するという簡単な操作によって挟持片を挟持状態にロックすることができる。そのため、大きな時間と手間をかけることなく簡単に作業補助装置を装着することが可能となる。
【0013】
また、前記係合体は、J字形状を有する吊り具であるとよい。
上記構成によれば、J字形状(J字に準ずる形状を含む)の吊り具を安全帯に係合させるだけで作業補助装置を装着することができる。そのため、作業補助装置の装着に要する時間と手間をさらに抑制することが可能となる。
【0014】
また、前記駆動制御モジュールは、前記接続部材を巻き取る巻取器と、前記巻取器を回転駆動する電動機と、前記接続部材を前記巻取器に案内する案内部材と、を有するとよい。
上記構成によれば、接続部材は、案内部材によって巻取器に案内された後に巻き取られる。そのため、作業者の姿勢にかかわらず、接続部材を安定して巻き取ることができるとともに、巻取器における「巻きずれ」の発生を抑制することが可能となる。
【0015】
また、前記巻取器は、前記作業補助装置が前記作業者に装着された際に前後方向に延びる巻取回転軸を有し、前記案内部材は、前記巻取器と前後方向において等しい位置に配設された複数の回転体を有し、前記回転体は、前記巻取回転軸と平行に延びて、前記接続部材を案内する案内回転軸を有しているとよい。
上記構成によれば、案内部材は、複数の回転体を有しているため、巻き取りの際に巻取器に加わる荷重を、複数の回転体に分散させることができる。そのため、巻取器の負担超過による損傷等を抑制することが可能となる。また、回転体は、前後方向において案内部材と等しい位置に配設されるため、「巻きずれ」の発生を効果的に抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の作業補助装置によれば、フルハーネス型の安全帯を着用した作業者の作業を補助することができるとともに、装着時の着心地を向上させることができる。
また、本発明の作業補助装置によれば、大きな時間と手間をかけることなく簡単に装着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】フルハーネス型安全帯を着用した作業者の正面図である。
【
図2】フルハーネス型安全帯を着用した作業者の背面図である。
【
図3】ランヤードと環状部を説明するための模式図である。
【
図4】作業補助装置を装着した作業者の正面図である。
【
図5】作業補助装置を装着した作業者の背面図である。
【
図6】駆動制御モジュールを着用者の背後側から見た斜視図である。
【
図7】駆動制御モジュールを着用者と当接する側から見た斜視図である。
【
図8】駆動制御モジュールの部品配置を説明するための模式図である。
【
図10】作業補助装置を装着した作業者が前屈した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、
図1から
図10を参照しながら、本発明の一実施形態(以下、本実施形態)に係る作業補助装置10について説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。つまり、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。
【0019】
本発明の作業補助装置10は、フルハーネス型の安全帯Bとともに作業者に装着されて、重量物を持ち上げる作業を補助するために用いられる。作業補助装置10により、着心地の悪化を抑制することが可能となり、また、大きな時間と手間をかけることなく装着することが可能となる。
【0020】
<フルハーネス型安全帯>
図1及び
図2は、フルハーネス型の安全帯Bを着用した作業者の正面図及び背面図である。
図1及び
図2に示すように、安全帯Bは、左右の肩ベルトB1と、胸ベルトB2と、胴ベルトB3と、左右の腿ベルトB5と、接続ベルトB4と、を主な構成として有している。
【0021】
肩ベルトB1は、作業者の左右の肩部に巻回される。肩ベルトB1は、ベルト本体B11と、ベルト本体B11の長さを調節するためのアジャスタB12と、肩ベルトB1の着用性を向上させるためのサポータB13と、を有している。作業者は、アジャスタB12を操作することによって、作業者の体格に適した長さに肩ベルトB1を調整することができる。
【0022】
左右の肩ベルトB1は、作業者の背部において互いに連結している(
図2を参照)。より詳細には、作業者の背中に当接する背面サポータB6が設けられており、左右の肩ベルトB1は背面サポータB6において連結されている。
また、背面サポータB6には、ランヤードLと呼ばれる係留ロープ(命綱)を係合するためのD環B8が取り付けられている。ランヤードL及びD環B8については後述する。
【0023】
図1に戻り、左右の肩ベルトB1の間には、胸ベルトB2が介在している。胸ベルトB2は、水平方向に延びて作業者の正面側において左右の肩ベルトB1を連結している。胸ベルトB2は、ベルト本体B21と、左右のベルト本体B21を連結するためのバックルB22と、を有している。
図1には図示されていないものの、胸ベルトB2は、ベルト本体B21の長さを調整するためのアジャスタを有していてもよい。胸ベルトB2は、上述した背面サポータB6を作業者の背中に密着させるために用いられる。より詳細には、胸ベルトB2は、肩ベルトB1を適度な緊張状態とし、これによって背面サポータB6が作業者の背中に当接することとなり、安全ベルトの装着性及び安全性の向上を図ることが可能となる。
【0024】
胸ベルトB2の下方には、胴ベルトB3が作業者の腰部に巻回されている。胴ベルトB3は、ベルト本体B31と、胴ベルトB3を連結させて装着状態とするためのバックルB32と、を有している。
図1には図示されていないものの、胴ベルトB3は、ベルト本体31の長さを調整するためのアジャスタを有していてもよい。
【0025】
また、左右の肩ベルトB1及び胴ベルトB3には、仮止め環B9が取り付けられており、作業工具、又はランヤードLを引っ掛けて吊り下げることができる。仮止め環B9の位置及び数は、
図1に示す位置及び数に限定されない。
【0026】
作業者の左右の腿には、腿ベルトB5が巻回されている。腿ベルトB5は、ベルト本体B51と、バックルB52と、サポータB53と、を有している。腿ベルトB5は、ベルト本体B51の長さを調整するためのアジャスタを有していてもよい。
【0027】
腿ベルトB5は、接続ベルトB4を介して胴ベルトB3と接続されている。より詳細には、接続ベルトB4は、作業者の腰部の左右において、前方接続部B41と後方接続部B42によって胴ベルトB3と腿ベルトB5を接続している。
左右の後方接続部B42の間には、座骨ベルトB43が架け渡されている。座骨ベルトB43は、後述するように、作業員がランヤードLによって宙づり状態となった際に、作業者の座骨を支持することによって作業者の肩、腰、及び腿にかかる負担を軽減する役割を担う。
【0028】
次に、
図3を参照して、ランヤードLについて説明する。ランヤードLは、高所作業を行う作業者の墜落を制止するために用いられる安全ロープである。換言すると、ランヤードLは、命綱としての役割を担う。
図3に示すように、ランヤードLは、一方の先端部にフックL1を有し、作業者の背後に配設されたD環B8に対して掛け止められる。ロープL2の他方の端部に取り付けられたフック(不図示)は、仮設足場の手摺等の構造物に対して取り付けられる。これにより、高所作業を行う作業者の墜落を制止することが可能となる。
【0029】
作業者が足を踏み外す等の理由によって墜落する危険性が生じた場合、作業者は、ランヤードLが掛け止められたD環B8を介して宙づり状態となる。このとき作業者は、上述した肩ベルトB1、胴ベルトB3、及び腿ベルトB5によって直立姿勢の状態を維持することができるとともに、座骨ベルトB43によって下方から支持される。そのため、フルハーネス型の安全帯Bは、腰ベルト型の安全帯と比較すると、救援を待つ作業者の負担を軽減することができる。
【0030】
<作業補助装置10の概要>
次に、作業補助装置10について説明する。
図4及び
図5は、作業補助装置10を装着した作業者を示している。具体的には、
図4は、安全帯Bと作業補助装置10を装着した作業者の正面図である。
図5は、安全帯Bと作業補助装置10を装着した作業者の背面図である。作業補助装置10は、安全帯Bと別体に構成されており、作業者の背中側に吊持された状態で利用される。
【0031】
図4及び
図5に示すように、作業補助装置10は、駆動制御モジュール11と、肩部連結ベルト20と、腿部連結ベルト25と、接続ケーブル26と、を主な構成として有している。
駆動制御モジュール11は、作業者の背中側において、肩ベルトB1と腿ベルトB5との間に介在する接続ケーブル26を巻き取ることにより、肩ベルトB1と腿ベルトB5との間の距離が短くなるように制御する。これにより、前屈姿勢にある作業者が、重量物を持ち上げるため起立姿勢へと姿勢を変更することを補助することが可能となる。駆動制御モジュール11の詳細については、
図6から
図8を参照して後述する。
【0032】
肩部連結ベルト20は、駆動制御モジュール11を作業者の背中側に吊持している。より詳細に説明すると、帯状の肩部連結ベルト20は、その一方の端部が駆動制御モジュール11に取り付けられて、他方の端部に配設された挟持クリップ23が、作業者の正面側で胸ベルトB2に係合した状態で作業者の左右の肩部に巻回される。そのため、駆動制御モジュール11は、作業者の背中に当接する位置において、左右の肩部連結ベルト20によって吊り下げられた状態となる。このように、駆動制御モジュール11を作業者の背中側に位置させることにより、駆動制御モジュール11を装着することによる作業性の低下を抑制することが可能となる。肩部連結ベルト20は、連結部材に相当する。
【0033】
また、駆動制御モジュール11は、D環B8と前後方向に重ならない位置で左右の肩部連結ベルト20に吊持されると好適である。これにより、作業補助装置10がD環B8及びD環B8と係合するランヤードLと干渉することが抑制されるため、安全性と作業性の両立を図ることが可能となる。
【0034】
接続ケーブル26は、作業者の背中側において、肩ベルトB1と腿ベルトB5の間に介在している。より詳細に説明すると、接続ケーブル26の一方の端部が、駆動制御モジュール11の巻取機構15に接続されており、他方の端部が腿ベルトB5に連結された腿部連結ベルト25と接続されている。そして、上述した巻取機構15が接続ケーブル26を巻き取ると、肩ベルトB1及び腿ベルトB5の間の距離を変更することができる。詳細は後述するが、肩ベルトB1と腿ベルトB5の間の距離が短くなるように変化させることによって、作業補助装置10を装着する作業者が重量物を持ち上げる作業を補助することができる。接続ケーブル26は、接続部材に相当する。
【0035】
腿部連結ベルト25は、腿ベルトB5に巻回されて、腿ベルトB5と接続ケーブル26を着脱可能に連結する。腿部連結ベルト25と接続ケーブル26は、接続ケーブル26の下端に取り付けられたカラビナ等の環状金具を介して連結されている。
【0036】
図6及び
図7は、駆動制御モジュール11の斜視図を示している。具体的には、
図6は、駆動制御モジュール11を作業者の背後側から見た斜視図である。
図7は、駆動制御モジュール11を作業者と当接する側から見た斜視図である。また、
図8は、駆動制御モジュール11を構成する部品の配置を説明するための部品配置図である。
図6及び
図7に示すように、駆動制御モジュール11は、左右に延出した形状を有している。換言すると、駆動制御モジュール11は、その上端部において、下方よりも大きな幅を有している。これにより、
図7に示すように、左右の肩部連結ベルト20と、肩部連結ベルト20の下端を連結する固定ベルト18によって駆動制御モジュール11を吊り下げて支持することが可能となる。
【0037】
次に、駆動制御モジュール11について詳細に説明する。
図6、
図7及び
図8に示すように、駆動制御モジュール11は、ベース板12と、制御装置13と、姿勢センサ14と、巻取機構15と、電池ユニット16と、を主な構成として有している。
【0038】
ベース板12は、2枚のベースプレートによって構成されている。すなわち、ベース板12は、上層を形成する第一ベースプレート12aと、下層を形成して作業者の背中に当接する第二ベースプレート12bと、を有している。第一ベースプレート12aと第二ベースプレート12bの間には、複数のスペーサ12cが介在し、第一ベースプレート12aと第二ベースプレート12bとを所定の間隔で離間させている。
【0039】
第一ベースプレート12aには、制御装置13と、姿勢センサ14と、巻取機構15を構成する電動モータ15a及び減速機15bが配設されている。第一ベースプレート12aと第二ベースプレート12bの間には、巻取機構15を構成する巻取器15c、第一案内回転体15d、第二案内回転体15e、第三案内回転体15f、及び左右の肩部連結ベルト20が配設されている(
図8を参照)。このように、ベース板12を2層構造とすることによって、駆動制御モジュール11の構成部品を効率的に配置することが可能となる。
ベース板12の形状は、
図4から
図8に示す形状に限定されない。また、第一ベースプレート12aと第二ベースプレート12bが、互いに異なる寸法及び形状を有していてもよい。
【0040】
制御装置13は、プロセッサと、揮発性メモリと、不揮発性メモリを有している。制御装置13は、不揮発性メモリに記憶されたプログラムを揮発性メモリにロードして、順次実行することにより、作業補助装置10の制御を司る。制御装置13によって実行される作業補助処理の詳細については後述する。
【0041】
姿勢センサ14は、作業補助装置10を装着する作業者の姿勢を検知する。より具体的には、姿勢センサ14は、重量物を持ち上げるために前屈姿勢をとる作業者の前屈角度θを検知する(
図10を参照)。姿勢センサ14は、加速度センサであるが、これに限定されない。姿勢センサ14は、ジャイロセンサであってもよい。
【0042】
巻取機構15は、接続ケーブル26を巻き取るために制御装置13によって制御される。巻取機構15は、電動モータ15aと、減速機15bと、巻取器15cと、第一案内回転体15dと、第二案内回転体15eと、第三案内回転体15fと、を主な構成として有している。
【0043】
電動モータ15aは、後述する電池ユニット16から供給される電気エネルギーを、回転エネルギーに変換し、後述する減速機15b及び巻取器15cを回転駆動する。電動モータ15aは、公知の電動機を採用することができる。
減速機15bは、減速歯車からなり、電動モータ15aの出力軸に連結されている。電動モータ15aの出力軸を減速機15bに連結することにより、大きな回転トルクを生成することができ、これにより作業者による作業の補助が可能となる。
【0044】
巻取器15cは、減速機15bの出力軸に連結されて、後述する接続ケーブル26を巻き取って変位させるために用いられる。巻取器15cは、作業補助装置10が作業者に装着された際に、前後方向に延びる巻取回転軸15c1を有し、巻取回転軸15c1を中心に回転することによって接続ケーブル26を巻き取る。
【0045】
第一案内回転体15d、第二案内回転体15e、及び第三案内回転体15fは、接続ケーブル26を巻取器15cに案内する。より具体的には、第一案内回転体15d、第二案内回転体15e、及び第三案内回転体15fは、巻取回転軸15c1と平行に延びる第一案内回転軸15d1、第二案内回転軸15e1、及び第三案内回転軸15f1を有している。また、第一案内回転体15d、第二案内回転体15e、及び第三案内回転体15fは、巻取器15cと前後方向において等しい位置に配設されている。これにより、作業者が姿勢を変化させた場合であっても、接続ケーブル26は第一案内回転体15d、第二案内回転体15e、及び第三案内回転体15fに案内されて巻取器15cによって安定して巻き取ることが可能となる。また、巻取器15cにかかる荷重を第一案内回転体15d、第二案内回転体15e、及び第三案内回転体15fに分散させることができるため、巻取器15cに大きな荷重が加えられることによる損傷を抑制することが可能となる。第一案内回転体15d、第二案内回転体15e、及び第三案内回転体15fは、案内部材に相当する。
【0046】
電池ユニット16は、駆動制御モジュール11の構成部品に対して、電気エネルギーを供給する。電池ユニット16は、二次電池であって、リチウムイオン電池又はニッケル水素電池を採用することができるが、これに限定されない。電池ユニット16は、交換可能な一次電池であってもよい。
図7において、電池ユニット16は、第二ベースプレート12bに取り付けられているが、電池ユニット16の取り付け位置は、
図7に示す位置に限定されない。電池ユニット16は、第一ベースプレート12aと第二ベースプレート12bの間に取り付けられてもよい。また、電池ユニット16は、保護材又は緩衝材によって被覆されていてもよい。
【0047】
図6及び
図7に示すように、肩部連結ベルト20は、第一肩部連結ベルト21と、第二肩部連結ベルト22と、挟持クリップ23と、を有している。
第一肩部連結ベルト21は、駆動制御モジュール11の左右両端部に取り付けられて、作業者の肩部に巻回される。第一肩部連結ベルト21は、作業者の肩部にかかる荷重を軽減するためのクッション材と、クッション材を被覆する表示材と、を有している。
第二肩部連結ベルト22は、第一肩部連結ベルト21と、後述する挟持クリップ23と、を連結している。第二肩部連結ベルト22は、作業補助装置10を装着する作業者の肩部に対して荷重を加えることがないため、第一肩部連結ベルト21よりも小さい幅を有するように形成されている。これにより、後述する挟持クリップ23の取り扱いが容易となる。
【0048】
挟持クリップ23は、安全帯Bの胸ベルトB2を挟持することによって安全帯Bに係合する。
図9は、挟持クリップ23の斜視図を示している。
図9に示すように、挟持クリップ23は、一対の挟持片23aと、一対の挟持片23aが胸ベルトB2を挟持した状態に規制する締結ネジ23bと、を有している。より詳細に説明すると、一対の挟持片23aは、締結ネジ23bを挿通可能な貫通孔23a1が形成されている。貫通孔23a1の内周面には、締結ネジ23bと螺合可能なネジ溝が形成されている。そのため、締結ネジ23bを貫通孔23a1に挿通して回転操作することにより、一対の挟持片23aを挟持状態にロックすることができる。また、締結ネジ23bの頭部の外周面には、ローレット加工が施されている。そのため、締結ネジ23bの頭部を回転操作することにより、挟持片23aを強固な挟持状態にロックすることが可能となる。挟持クリップ23は、係合体に相当し、締結ネジ23bは、規制具及び締結具に相当する。
【0049】
<<作業補助装置の装着方法>>
次に、作業補助装置10の装着方法を、
図4及び
図5を参照して説明する。なお、以下の説明では、作業者は、作業補助装置10の装着に先立って、安全帯Bを着用していることとする。
作業者は、最初に、安全帯Bの腿ベルトB5に腿部連結ベルト25を取り付ける。次に、作業者は、駆動制御モジュール11の下端から接続ケーブル26を引き延ばすように延伸させて、下端を腿部連結ベルト25に接続する。続いて作業者は、駆動制御モジュール11を背中側に背負うように、左右の肩部連結ベルト20を左右の肩の周囲に巻回する。次に、作業者は、肩部連結ベルト20の先端に位置する挟持クリップ23を操作して、作業者の正面側に位置する胸ベルトB2を挟持させる。最後に、作業者は、挟持クリップ23の締結ネジ23bを回転操作して、一対の挟持片23aを挟持状態にロックする。
【0050】
以上の流れによって、作業者は、一人で作業補助装置10を装着することができる。また、挟持クリップ23は、作業者の正面側であって、胸ベルトB2に係合させるため、大きな時間や手間をかけることなく、作業補助装置10を装着することが可能となる。また、挟持クリップ23の締結ネジ23bを回転操作して締結するという簡単な操作によって操作片を挟持状態にロックすることができる。
【0051】
<<作業補助処理>>
次に、駆動制御モジュール11の制御装置13によって実行される作業補助処理について説明する。制御装置13は、作業補助装置10を装着する作業者が重量物を持ち上げる際に、重量物を把持した際の前屈姿勢から、重量物を持ち上げて起立した姿勢へと変化させることを支援することによって、作業補助を行う。
【0052】
図10は、作業者が作業中において前屈した状態を示している。制御装置13は、作業者の前屈角度θをリアルタイムに取得する。具体的には、制御装置13は、姿勢センサ14が出力する前屈角度信号を取得する。そして、制御装置13は、電動モータ15aに対して制御信号を送信することによって巻取器15cを回転させて、接続ケーブル26の長さがL1+A×θとなるように変化させる。ここで、L1は作業者が起立した状態において予め取得された接続ケーブル26の長さを示している。また、Aは予め設定される係数である。
【0053】
詳細に説明すると、制御装置13は、作業者が起立した状態(θ=0度)において、接続ケーブル26の長さL1を取得する。また、制御装置13は、作業者が前屈した状態(θ>0度)において、接続ケーブル26の長さが前屈角度θに所定の係数Aを乗算して得られる長さとなるように制御する。このように、予め作業者が作業補助装置10を装着した状態で取得された長さL1に基づいて接続ケーブル26の長さが制御されるため、接続ケーブル26を、作業者の体格に応じた適切な長さに制御することが可能となる。
【0054】
また、制御装置13は、前屈角度θに基づいて、接続ケーブル26の長さが適切な長さとなるように制御する。これにより、作業者が前屈した際に、背中から腰及び腿に跨って延びる接続ケーブル26を介して、作業者が重量物を持ち上げて起立姿勢に戻ることを適切に補助することが可能となる。
【0055】
<<変形例>>
以上、本発明の一実施形態に係る作業補助装置10について説明したが、上述した実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。上述した実施形態では、肩部連結ベルト20は、締結ネジ23bを有する挟持クリップ23によって胸ベルトB2に係合することとして説明したが、これに限定されない。肩部連結ベルト20は、J字形状(略J字形状を含む)を有するJ字クリップ123を介して胸ベルトB2に係合してもよい。
【0056】
図11は、変形例に係る肩部連結ベルト20のJ字クリップ123を示している。J字クリップ123は、本体部123aと、屈曲部123bと、先端部123cと、を有している。作業者は、J字クリップ123の本体部123aを把持し、本体部123a、屈曲部123b及び先端部123cを胸ベルトB2に引っ掛けることによってJ字クリップ123を胸ベルトB2に係合させる。これにより、作業者は、作業補助装置10の装着に要する時間と手間を抑制することが可能となる。なお、J字クリップ123の形状は、純粋なJ字形状に限定されない。J字クリップ123は、本体部123aに対して屈曲部123bと先端部123cが湾曲しながら延出し、吊り具(フック部材)として機能することが可能な形状を含むこととする。J字クリップ123は、吊り具に相当する。
【0057】
また、上述した実施形態において、挟持クリップ23又はJ字クリップ123を胸ベルトB2に係合することとして説明したが、これに限定されない。挟持クリップ23又はJ字クリップ123を安全帯Bの正面側に係合させることができればよく、挟持クリップ23又はJ字クリップ123を肩ベルトB1に設けられた仮止め環B9に係合させてもよい。この場合においても、上述した実施形態と同様に、作業者は、大きな時間と手間をかけることなく作業補助装置10を装着することができる。
【0058】
また、上述した実施形態において、挟持クリップ23は、一対の挟持片23aが安全帯Bを挟持した状態にロックするために締結ネジ23bを有していることとして説明したが、これに限定されない。挟持クリップ23は、一対の挟持片23aを挟持状態にロックするためのロック片を有していてもよい。この場合においても、上述した実施形態と同様に、不用意に挟持クリップ23の係合が解除されてしまう事態の発生を抑制することが可能となる。
【0059】
また、上述した実施形態において、接続ケーブル26を巻取器15cに案内するために、第一案内回転体15d、第二案内回転体15e及び第三案内回転体15fを用いることとして説明したが、これに限定されない。接続ケーブル26が巻取回転軸15c1の軸方向に対して直交するように巻取器15cに案内することができればよく、巻取回転軸15c1に向かう接続ケーブル26の位置及び方向を規制する規制部材が用いられてもよい。これにより、接続ケーブル26が巻取回転軸15c1に対して偏った位置及び方向に巻き取られることによって生じる「巻きずれ」を防止することができる。
【0060】
また、上述した実施形態において、駆動制御モジュール11はD環B8と前後方向に重ならない位置で肩部連結ベルト20に吊持されることとして説明したが、これに限定されない。駆動制御モジュール11は、作業者の背中側において肩部連結ベルト20に吊持されていればよい。
【符号の説明】
【0061】
10 作業補助装置
11 駆動制御モジュール
12 ベース板
12a 第一ベースプレート
12b 第二ベースプレート
12c スペーサ
13 制御装置
14 姿勢センサ
15 巻取機構
15a 電動モータ
15b 減速機
15c 巻取器
15c1 巻取回転軸
15d 第一案内回転体(回転体)
15d1 第一案内回転軸(案内回転軸)
15e 第二案内回転体(回転体)
15e1 第二案内回転軸(案内回転軸)
15f 第三案内回転体(回転体)
15f1 第三案内回転軸(案内回転軸)
16 電池ユニット
18 固定ベルト
20 肩部連結ベルト(連結部材)
21 第一肩部連結ベルト
22 第二肩部連結ベルト
23 挟持クリップ(係合体)
23a 挟持片
23a1 貫通孔
23b 締結ネジ(規制具、締結具)
123 J字クリップ(係合体、吊り具)
123a 本体部
123b 屈曲部
123c 先端部
25 腿部連結ベルト
26 接続ケーブル(接続部材)
B 安全帯
B1 肩ベルト
B11 ベルト本体
B12 アジャスタ
B13 サポータ
B2 胸ベルト
B21 ベルト本体
B22 バックル
B3 胴ベルト
B31 ベルト本体
B32 バックル(着脱)
B4 接続ベルト
B41 前方接続部
B42 後方接続部
B43 座骨ベルト
B5 腿ベルト
B51 ベルト本体
B52 バックル
B53 サポータ
B6 背面サポータ
B8 D環(環状部材)
B9 仮止め環
L ランヤード
L1 フック
L2 ロープ