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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147318
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】挟持装置
(51)【国際特許分類】
   B66C 1/28 20060101AFI20241008BHJP
   B66C 1/62 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B66C1/28 C
B66C1/28 F
B66C1/62 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060249
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】中村 知行
(72)【発明者】
【氏名】梅沢 浩之
【テーマコード(参考)】
3F004
【Fターム(参考)】
3F004AA07
3F004AB14
3F004AD07
3F004EA01
3F004EA27
(57)【要約】
【課題】床パネルの敷込作業と壁パネルの建込作業の両方に利用することができ、作業者の作業負担の軽減を図ることができる挟持装置を提供する。
【解決手段】挟持装置10は、揚重機械によって吊り上げられて、施工パネルPを運搬するために用いられる。挟持装置10は、左右方向の両側で揺動し、それぞれの下端部において施工パネルPの左右方向の端面を挟持する左右の挟持アーム12と、左右方向の中央に位置し、揚重機械によって吊り上げられて昇降する昇降軸13と、左右の挟持アーム12の間に介在し、昇降軸13と挟持アーム12とを接続するリンク部材15と、を備え、左右の挟持アーム12のそれぞれは、左右方向に延びる回転軸127と、回転軸を中心に回転可能な回転挟持板126を有し、回転挟持板126には、施工パネルPの端面と当接する挟持面126aが形成されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
揚重機械によって吊り上げられて、施工パネルを運搬するために用いられる挟持装置であって、
左右方向の両側において揺動し、それぞれの下端部において前記施工パネルの左右方向の端面を挟持する左右の挟持部材と、
左右方向の中央に位置し、前記揚重機械によって吊り上げられて昇降する昇降部材と、
前記左右の挟持部材の間に介在し、前記昇降部材と前記左右の挟持部材とを接続する左右の接続部材と、を備え、
前記左右の挟持部材のそれぞれは、左右方向に延びる回転軸と、該回転軸を中心に回転可能な回転挟持板を有し、
前記回転挟持板には、前記施工パネルの前記端面と当接する挟持面が形成されていることを特徴とする挟持装置。
【請求項2】
前記左右の挟持部材は、前記施工パネルの長手方向の中心部から一方の端部に偏移した位置において前記施工パネルの前記端面を挟持し、
前記回転挟持板は、前記挟持装置が前記揚重機械によって吊り上げられた際に、前記施工パネルの前記端面を挟持するとともに、前記施工パネルの荷重によって前記回転軸を中心に回転することを特徴とする請求項1に記載の挟持装置。
【請求項3】
前記左右の挟持部材は、前記回転挟持板と左右方向に重なり合い、前記回転軸を介して前記回転挟持板を支持する固定側板を有していることを特徴とする請求項1に記載の挟持装置。
【請求項4】
前記回転軸は、前記挟持部材の前後方向の中心部から前方又は後方に偏移した位置に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の挟持装置。
【請求項5】
前記挟持部材は、前記接続部材と回転可能に接続する上部回転軸を有し、
前記上部回転軸は、前記昇降部材の上限位置よりも上方に位置することを特徴とする請求項1に記載の挟持装置。
【請求項6】
前記回転挟持板は、前記挟持部材に形成された被係合部と係合することにより前記回転軸を中心とした回転を規制する係合部を有していることを特徴とする請求項4に記載の挟持装置。
【請求項7】
前記被係合部は、前記挟持部材に形成された貫通孔であり、
前記係合部は、前記回転挟持板に設けられて、前記貫通孔に貫通可能な摺動ピンであることを特徴とする請求項6に記載の挟持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、挟持装置に係り、特に施工パネルの運搬に用いられる挟持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、商業施設、工場、又は集合住宅等に用いられる建築パネルとして、耐火性、耐震性、断熱性等に優れたALCパネルの普及が進んでいる。ALCパネルは、珪石、セメント、生石灰、発泡剤のアルミ粉末を主原料とするコンクリート建材であり、その重量は、約80kgに及ぶ場合がある。そのため、建築現場に搬送されたALCパネルは、クレーン等の揚重機械を用いて揚重されて、建築物の壁又は床に取り付けられる。
【0003】
特許文献1には、移動式クレーンによって建築パネルを敷き込む際に用いられる吊り具が開示されている。特許文献1に開示された吊り具は、左右の挟持部材を有し、挟持部材によって複数枚のALCパネルの端面を、両側から挟み込む。そして、移動式クレーンのフックを吊り具に設けられた係合部に係合させることにより、複数枚のALCパネルを同時に吊り上げて運搬することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-015608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された吊り具を用いることによって、複数枚のALCパネルを同時に運搬し、敷込作業を行うことができるため、建築現場における敷込作業の作業効率が向上する。しかしながら、建築現場では、更なる改善が望まれていた。以下で、より詳細に説明する。
【0006】
特許文献1に開示された吊り具を用いることにより、床パネルとして用いられるALCパネルを水平状態で吊り上げて運搬し、敷き込み位置に敷き込む作業が可能となる。しかしながら、ALCパネルを壁パネルとして用いる場合には、上下の躯体構造物(例えば、上下の梁)にALCパネルを建て込む前に、水平状態で運搬されたALCパネルを起立させる作業が必要となり、大きな作業負担となっていた。換言すると、床パネルの敷込作業と壁パネルの建込作業の両方に利用可能な挟持装置が求められていた。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、床パネルの敷込作業と壁パネルの建込作業の両方に利用することができ、作業員の作業負担の軽減を図ることが可能な挟持装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、本発明の挟持装置によれば、揚重機械によって吊り上げられて、施工パネルを運搬するために用いられる挟持装置であって、左右方向の両側において揺動し、それぞれの下端部において前記施工パネルの左右方向の端面を挟持する左右の挟持部材と、左右方向の中央に位置し、前記揚重機械によって吊り上げられて昇降する昇降部材と、前記左右の挟持部材の間に介在し、前記昇降部材と前記左右の挟持部材とを接続する左右の接続部材と、を備え、前記左右の挟持部材のそれぞれは、左右方向に延びる回転軸と、該回転軸を中心に回転可能な回転挟持板を有し、前記回転挟持板には、前記施工パネルの前記端面と当接する挟持面が形成されていることにより解決される。
【0009】
上記構成によれば、挟持部材は、左右方向に延びる回転軸を中心に回転可能な回転挟持板を有している。したがって、床パネルを水平な状態にして敷き込む場合であっても、壁パネルを斜めに起立した状態で建て込む場合であっても、回転挟持板が回転することによって、床パネル又は壁パネルを適切な角度で挟持することができる。そのため、床パネルの敷込作業と壁パネルの建込作業の両方に利用することができ、作業員の作業負担の軽減を図ることが可能となる。
【0010】
また、前記左右の挟持部材は、前記施工パネルの長手方向の中心部から一方の端部に偏移した位置において前記施工パネルの前記端面を挟持し、前記回転挟持板は、前記挟持装置が前記揚重機械によって吊り上げられた際に、前記施工パネルの前記端面を挟持するとともに、前記施工パネルの荷重によって前記回転軸を中心に回転するとよい。
上記構成によれば、回転挟持板は、施工パネルの荷重によって自動的に回転する。そのため、作業者が回転挟持板を回転操作することなく、敷込作業と建込作業の両方に利用することができ、作業員の作業負担の軽減を図ることが可能となる。
【0011】
また、前記左右の挟持部材は、前記回転挟持板と左右方向に重なり合い、前記回転軸を介して前記回転挟持板を支持する固定側板を有しているとよい。
上記構成によれば、左右の回転挟持板は、固定側板と重なり合うように支持されている。そのため、施工パネルを挟持する回転挟持板の強度を、固定側板によって高めることができ、回転挟持板の強度不足により施工パネルの挟持力が低下することを抑制することが可能となる。
【0012】
また、前記回転軸は、前記挟持部材の前後方向の中心部から前方又は後方に偏移した位置に配設されているとよい。
上記構成によれば、回転挟持板は、前後方向の中心部から変位した位置で回転するため、回転挟持板の寸法を小型化することができ、これにより施工パネルの挟持力の低下を抑制することが可能となる。
【0013】
また、前記挟持部材は、前記接続部材と回転可能に接続する上部回転軸を有し、前記上部回転軸は、前記昇降部材の上限位置よりも上方に位置するとよい。
上記構成によれば、挟持部材の上端部が昇降部材の上限位置よりも上方に位置するため、施工パネルの挟持力を効果的に高めることが可能となる。
【0014】
また、前記回転挟持板は、前記挟持部材に形成された被係合部と係合することにより前記回転軸を中心とした回転を規制する係合部を有しているとよい。
上記構成によれば、回転挟持板の回転を規制することができるため、施工パネルを水平状態にして作業する際に、不用意に施工パネルが傾斜して不安定な状態となることを防止することが可能となる。
【0015】
また、前記被係合部は、前記挟持部材に形成された貫通孔であり、前記係合部は、前記回転挟持板に設けられて、前記貫通孔に貫通可能な摺動ピンであるとよい。
上記構成によれば、貫通孔、貫通孔に貫通する摺動ピンという簡単な構成で、回転挟持板の回転を抑制することができるため、規制部材を設けることによるコスト増加を抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の挟持装置によれば、床パネルの敷込作業と壁パネルの建込作業の両方に利用することでき、作業員の作業負担の軽減を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】回転挟持板が回転していない状態の挟持装置の斜視図である。
図2】回転挟持板が回転した状態の挟持装置の斜視図である。
図3】床パネルを挟持して水平状態で吊り上げた挟持装置の斜視図である。
図4】壁パネルの長手方向の一端側を挟持した挟持装置の斜視図である。
図5】壁パネルを挟持して起立状態で吊り上げた挟持装置の斜視図である。
図6】従来の挟持装置によって壁パネルを吊り上げた状態を示す図である。
図7】第二実施形態に係る挟持装置の斜視図である。
図8】挟持装置による挟持力を説明するための模式図である。
図9】壁パネルを挟持して起立状態で吊り上げた挟持装置の要部を拡大した図である。
図10】床パネルを挟持して水平状態で吊り上げた挟持装置の要部を拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図1から図6を参照しながら、本発明の一実施形態(以下、本実施形態)に係る挟持装置10について説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。つまり、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。
【0019】
本発明の挟持装置10は、クレーン車等の揚重機械によって吊り上げられて、施工用のALCパネルを運搬するために用いられる。また、本発明の挟持装置10は、ALCパネルを床パネルP1として用いて敷込作業を行う場合と、ALCパネルを壁パネルP2として用いて建込作業を行う場合の両方に利用することができる。以降の説明において、床パネルP1と壁パネルP2を特に区別する必要がない場合には、単に施工パネルPと称する。また、壁パネルP2は、外壁、又は間仕切り壁のいずれに用いられてもよい。
【0020】
また、以下の説明中、「上下方向」とは、鉛直方向であって、施工パネルPを吊り上げ、又は吊り下げる方向と一致する。「左右方向」とは、挟持装置10が施工パネルPを挟持する方向であって、施工パネルPの短手方向と一致する。「前後方向」とは、「上下方向」及び「左右方向」と直交する方向であって、後述する昇降軸13が延びる方向と一致する。
【0021】
<挟持装置10の構成>
最初に、挟持装置10の構成について、図1及び図2を参照して説明する。
図1及び図2は、挟持装置10の外観を示す斜視図である。図1は、回転挟持板126が回転していない状態の挟持装置10の斜視図である。図2は、回転挟持板126が回転した状態の挟持装置10の斜視図である。
図1に示すように、挟持装置10は、支持部材11と、左右の挟持アーム12と、昇降軸13と、連結軸14と、左右のリンク部材15と、を主な構成として有している。
【0022】
支持部材11は、左右方向の中心に位置し、前方側に配置された前方支持部材11aと、後方側に配置されて、前方支持部材11aと対向する後方支持部材11bと、を有している。前方支持部材11a及び後方支持部材11bの間には、前後に延びる昇降軸13及び連結軸14が介在し、前方支持部材11aと後方支持部材11bを、所定の間隔を隔てた状態で連結している。
【0023】
前方支持部材11aと後方支持部材11bは、同一の形状、寸法、及び構成を有しているため、以下の説明において、前方支持部材11aと後方支持部材11bとを特に区別する必要がない場合には、単に「支持部材11」として説明する。後述する支持部材11を構成する水平支持部111、垂直支持部112、及びリンク部材15についても、同様である。
【0024】
支持部材11は、左右方向に延びる水平支持部111と、水平支持部111から上方に延びる垂直支持部112と、を有している。水平支持部111は、長尺形状を有し、鋼製の板状体である。水平支持部111は、左右方向の両端部において、左右の挟持アーム12を揺動可能に支持している。
【0025】
垂直支持部112は、水平支持部111の左右方向の中心部から上方に延びる鋼製の板状体である。垂直支持部112の中心には、上下方向に延びる昇降軸ガイド孔112aが形成されている。昇降軸ガイド孔112aは、前方支持部材11aと後方支持部材11bとの間で前後方向に延びる昇降軸13の昇降を案内する。
【0026】
昇降軸13は、挟持装置10の左右方向の中央に位置する軸部材である。昇降軸13は、ワイヤWを介してクレーン車と連結されている。そのため、クレーン車によって吊り上げられると、昇降軸13は、上述した昇降軸ガイド孔112aに案内されて上昇する。また、昇降軸13は、後述する左右のリンク部材15の内側の端部が連結されている。したがって、昇降軸13の昇降運動は、リンク部材15を介して左右の挟持アーム12に伝達されて、左右の挟持アーム12を揺動させる。昇降軸13は、昇降部材に相当する。
【0027】
左右のリンク部材15は、長尺形状を有する鋼製の板状体である。リンク部材15は、左右の挟持アーム12の間に介在している。より詳細には、リンク部材15の内側の端部が昇降軸13と連結し、外側の端部が挟持アーム12の後述する上部回転軸121と回転可能に連結している。リンク部材15は、接続部材に相当する。
【0028】
上述した水平支持部111及び後述するリンク部材15の左右方向の両端部には、係合部材16が取り付けられている。係合部材16は、挟持アーム12と係合し、挟持アーム12の左右方向の位置を変更可能に位置決めするために用いられる。挟持アーム12の左右方向の位置を変更することにより、挟持装置10は、規格によって定められた複数の寸法を有する施工パネルPの敷込作業及び建込作業に利用することが可能となる。
【0029】
挟持アーム12は、左右方向の両側において水平支持部111に支持されて左右に揺動する。挟持アーム12は、上部回転軸121と、下部回転軸122と、前面板123と、後面板124と、固定側板125と、回転挟持板126と、回転軸127と、を主な構成として有している。
【0030】
上部回転軸121及び下部回転軸122は、前面板123と後面板124の間に介在する軸部材であって、前面板123と後面板124を、所定の間隔を隔てた状態で連結している。
上部回転軸121には、リンク部材15の外側の端部が回転可能に連結されている。また、下部回転軸122には、水平支持部111が回転可能に連結されている。これにより、上述した昇降軸13の昇降運動は、左右のリンク部材15を介して挟持アーム12の揺動運動に変換される。より詳細には、昇降軸13が上昇すると、挟持アーム12の下端に取り付けられた回転挟持板126が左右方向の内側に揺動し、施工パネルPを挟持する(挟持状態になる)。一方、昇降軸13が下降すると、回転挟持板126が左右方向の外側に揺動し、施工パネルPを解放する(解放状態となる)。
【0031】
より詳細に説明すると、昇降軸13を上昇させるようにワイヤWを吊り上げる吊り上げ力は、リンク部材15を介して、挟持アーム12の挟持力となる。ここで、施工パネルPとして用いられるALCパネルは、上述したように80kgに及ぶ場合があるため、ALCパネルの運搬を実現するためには、大きな挟持力が必要となる。換言すると、重量物であるALCパネルを挟持して吊り上げるために、挟持装置10は、吊り上げ力を効果的に挟持力に変換する構造を有している必要がある。吊り上げ力と挟持力の関係については、図6及び図8を参照して後述する。
【0032】
固定側板125は、前面板123及び後面板124の下端に取り付けられている。固定側板125は、金属製の板部材である。固定側板125は、側面視で長方形形状を有するとともに、前後方向の端部において、強度の向上を図るために屈曲部が形成されている。
固定側板125の下方には、左右方向に延びる回転軸127が取り付けられている。回転軸127は、固定側板125に形成された挿通孔に挿通されたボルト及びナットによって構成されている。
【0033】
回転挟持板126は、回転軸127を中心にして回転可能に固定側板125に支持されている。回転挟持板126は、金属製の板部材であって、固定側板125と左右方向に重なり合っている。そのため、回転挟持板126の強度を、固定側板125によって補強することができ、回転挟持板126の強度不足による変形が原因となって施工パネルPの挟持力が低下することを抑制することができる。
【0034】
回転挟持板126の左右方向の内側には、施工パネルPを挟持する際に施工パネルPと当接する挟持面126aが形成されている。挟持面126aは、合成ゴム製シートによって被覆されているが、これに限定されない。挟持面126aは、施工パネルPに対して高い摩擦力を生じさせることによって施工パネルPの落下を防止することができればよく、例えばウレタン製シートによって被覆されていてもよい。挟持アーム12は、挟持部材に相当する。
【0035】
図2は、回転軸127周りに回転挟持板126を回転させた状態の挟持装置10の斜視図である。このように、回転挟持板126を、左右に延びる回転軸127を中心に回転可能としたことにより、床パネルP1の敷込作業と、壁パネルP2の建込作業の両方に利用することが可能となる。
【0036】
<床パネルP1の敷込作業について>
最初に、床パネルP1の敷込作業について説明する。
図3は、床パネルP1を挟持して水平状態で吊り上げた挟持装置10の斜視図である。最初に、作業者は、挟持装置10を、床パネルP1の長手方向の中心に位置させて、左右の回転挟持板126を床パネルP1の左右の端面に当接させる。
次に、作業者は、揚重機械によってワイヤWを上方(図3の矢印Aが示す方向)に吊り上げる。これにより、昇降軸13が上昇し、リンク部材15を介して挟持アーム12の下端が左右方向の内側に揺動する。そのため、挟持装置10は、床パネルP1を水平状態としたまま吊り上げることができる。
続いて、作業者は、敷込位置まで床パネルP1を運搬し、挟持装置10を降下させる。以上により、床パネルP1の敷込作業が完了する。
【0037】
<壁パネルP2の建込作業について>
次に、壁パネルP2の建込作業について説明する。
図4は、挟持装置10が、床置きされた壁パネルP2を挟持した状態を示している。最初に、作業者は、挟持装置10を、水平な状態で床置きされた壁パネルP2の長手方向の中心部から一方の端部側に偏移させて、左右の回転挟持板126を壁パネルP2の左右の端面に当接させる。
次に、作業者は、揚重機械等によってワイヤWを上方(図4の矢印Aが示す方向)に吊り上げる。これにより、昇降軸13が上昇し、リンク部材15を介して挟持アーム12の下端が左右方向の内側に揺動する。そのため、挟持装置10は、壁パネルP2を挟持して上方に吊り上げることができる。
【0038】
図5は、挟持装置10が壁パネルP2を挟持し、起立させて吊り上げた状態を示している。図5に示すように、壁パネルP2の長手方向の中心部から偏移した位置を挟持し、挟持装置10を吊り上げると、壁パネルP2が、所定の角度で傾きながら起立した状態で吊り上げることができる。このとき、回転挟持板126は、壁パネルP2の左右の端面を挟持するとともに、壁パネルP2の荷重によって回転軸127を中心に回転する。換言すると、作業者が回転挟持板126を回転操作することなく、壁パネルP2を吊り上げることができる。
【0039】
ここで、挟持装置10の挟持力について説明する。
図6は、従来の挟持装置100によって壁パネルP2を挟持して吊り上げた状態を示している。図6に示すように、挟持装置100は、回転挟持板126を有していない。そのため、壁パネルP2を挟持してワイヤWを吊り上げ、壁パネルP2が起立した際に、挟持アーム101は、十分な挟持力を発揮することが困難となる。より詳細に説明すると、上述したように、挟持アーム101の挟持力は、吊り上げ力に伴って発生する。ここで、図6に示すように、壁パネルP2が傾いた状態でワイヤWが上方(矢印Aが示す方向)に吊り上げられた場合、ワイヤWの吊り上げ方向(矢印Aが示す方向)と、昇降軸102の変位方向(矢印A1が示す方向)は、一致しない。より詳細には、壁パネルP2が吊り上げられて起立するにつれて、昇降軸102が矢印A1で示す方向に向かう力は、矢印Aで示す方向の吊り上げ力に対して、相対的に小さくなる。そのため、挟持アーム101は、壁パネルP2の重量に対して、十分な挟持力を発揮することが困難となる。
【0040】
一方、本発明の挟持装置10は、上述したように、挟持アーム12の下端部において回転可能な回転挟持板126を有している。そのため、図5に示すように、壁パネルP2が傾きながら起立した場合、回転挟持板126は、壁パネルP2の起立とともに回転する。そのため、ワイヤWを吊り上げる方向(矢印Aが示す方向)は、昇降軸13が変位する方向と一致する。これにより、本発明の挟持装置10は、挟持アーム12の挟持力を十分に発揮させた状態で壁パネルP2を挟持することができる。
【0041】
また、回転挟持板126は、左右方向において固定側板125と重なり合っている。したがって、固定側板125が回転挟持板126を補強する役割を果たし、回転挟持板126の強度不足による変形が原因となって壁パネルP2の運搬中に不用意に落下させてしまう事態の発生を抑制することができる。
【0042】
続いて、作業者は、建込位置の付近まで壁パネルP2を運搬し、挟持装置10を降下させる。そして最後に、作業者は、壁パネルP2を躯体構造物(例えば、梁)に対して固定する。以上により、壁パネルP2の建込作業が完了する。
【0043】
<第二実施形態>
以上、本発明の一実施形態に係る挟持装置10について説明したが、上述した実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。以下では、図7から図10を参照しながら、第二実施形態に係る挟持装置10Aについて説明する。
図7は、第二実施形態に係る挟持装置10Aの斜視図である。図7に示すように、第二実施形態に係る挟持装置10Aの固定側板125Aには、回転軸127A及び貫通孔129Aが設けられている。回転軸127A及び貫通孔129Aは、固定側板125Aの前後方向の中央部を挟んで、互いに離間した位置に設けられている。これにより、上述した第一実施形態と同様に、回転挟持板126Aが回転軸127Aを中心に回転するため、挟持装置10Aを、床パネルP1の敷込作業と、壁パネルP2の建込作業の両方に利用することが可能となる。また、第一実施形態の挟持装置10と比べて、回転挟持板126Aの挟持力を高めることが可能となる。以下、回転挟持板126Aの挟持力について詳細に説明する。
【0044】
図8は、挟持装置10Aの正面図である。上述したように、挟持装置10Aは、ワイヤWを上方に吊り上げた場合に、昇降軸13が上昇する。昇降軸13の上昇は、左右のリンク部材15を介して挟持アーム12の揺動運動に変換される。換言すると、挟持力は、吊り上げ力とともに発生する。ここで、挟持力Foは、以下の関係式(1)によって示すことができる。
Fo=(a/2b)×tanθ×Fi (1)
ここで、aは上部回転軸121と下部回転軸122(図7を参照)の間の上下方向の距離である。また、bは、下部回転軸122と回転挟持板126Aの下端の間の上下方向の距離である。θは、図8に示すよう、に鉛直方向とリンク部材15が延びる方向がなす角度である。Fiは、施工パネルPを挟持した状態の挟持装置10を吊り上げるために必要な力であって、吊り上げ力である。
【0045】
(1)式に示すように、挟持力Foは、aの値が大きく、bの値が小さいときに、大きな値をとることができる。そのため、第二実施形態の挟持装置10Aの上部回転軸121は、昇降軸13の上限位置よりも上方に位置している。換言すると、上部回転軸121は、昇降軸13の昇降を案内する昇降軸ガイド孔112aの上端部112bよりも上方に位置している。これにより、挟持装置10Aが大型化することを抑制しつつ、(1)式におけるaを大きな値とし、挟持装置10Aの挟持力の向上を図ることが可能となる。
【0046】
また、図9に示すように、回転軸127Aは、挟持アーム12の前後方向の中心部Cから前方又は後方に偏移した位置に配設されている。回転軸127Aを前後方向に偏移させることにより、回転挟持板126Aの寸法を小型化することができる。より詳細に説明すると、回転軸127Aから壁パネルP2の後方側の面までの距離をL1とし、中心部Cから壁パネルP2の後方側の面までの距離をL2とすると、L2からL1を差し引いた寸法だけ、回転挟持板126Aの寸法を小型化することができる。これにより、(1)式におけるbを小さな値とすることができ、挟持装置10Aの挟持力の向上を図ることが可能となる。
【0047】
また、回転挟持板126Aは、スライドピン128Aを有している。スライドピン128Aは、固定側板125Aに形成された貫通孔129Aに嵌合して係合し、これにより回転挟持板126Aの回転を規制する。詳細に説明すると、スライドピン128Aは、回転挟持板126Aの挟持面126aと直交する方向に突出する突出状態と、突出しない非突出状態との間で変位可能に構成されている。したがって、スライドピン128Aを突出状態として貫通孔129Aに嵌合させることにより、回転挟持板126Aの回転を規制することが可能となる。一方、スライドピン128Aを非突出状態とすることにより、回転挟持板126Aの規制を解除することが可能となる。スライドピン128Aは、摺動ピンに相当する。
【0048】
図10は、床パネルP1を水平状態で吊り上げた挟持装置10Aの要部の拡大図である。図10に示すように、スライドピン128Aを突出状態として貫通孔129Aに嵌合して係合させることにより、回転挟持板126Aの回転を規制することができる。そのため、床パネルP1を吊り上げた際に、回転挟持板126Aが不用意に回転してしまうことを防止することができ、床パネルP1の運搬中における作業員の安全性の向上を図ることが可能となる。
一方、スライドピン128Aを非突出状態として貫通孔129Aに対する係合を解除することにより、挟持装置10Aを用いて壁パネルP2の運搬作業と建込作業を行うことが可能となる。
【0049】
上記の説明において、回転挟持板126Aの回転規制手段として、スライドピン128A及び貫通孔129Aについて説明したが、回転規制手段はこれに限定されない。回転挟持板126Aの下方側に、固定側板125Aの前後方向の端部と係合するロック片を設けてもよい。このような構成により、ロック片(係合部)が固定側板125Aの前後方向の端部(被係合部)と係合することにより、回転挟持板126Aの回転を規制することができる。
【0050】
また、上記の説明において、回転軸127は、ボルト及びナットによって構成されていることとして説明したが、これに限定されない。回転軸127は、挿通孔を挿通する回転シャフトと、回転シャフトを軸支する軸受けによって構成されていてもよい。これにより、回転挟持板126は、より安定して円滑に回転することが可能となる。
【0051】
また、上述した実施形態では、床パネルP1及び壁パネルP2としてALCパネルを例示したが、本発明はこれに限定されず、その他のパネル(例えば、コンクリート製パネル)の敷込作業及び建込作業を行う場合に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0052】
10、10A 挟持装置
11 支持部材
11a 前方支持部材
11b 後方支持部材
111 水平支持部
112 垂直支持部
112a 昇降軸ガイド孔
112b 上端部
12 挟持アーム(挟持部材)
121 上部回転軸
122 下部回転軸
123 前面板
124 後面板
125、125A 固定側板
126、126A 回転挟持板
126a 挟持面
127、127A 回転軸
128A スライドピン(摺動ピン)
129A 貫通孔
13 昇降軸(昇降部材)
14 連結軸
15 リンク部材(接続部材)
16 係合部材
100 挟持装置
101 挟持アーム
102 昇降軸
P 施工パネル
P1 床パネル
P2 壁パネル
W ワイヤ
C 中心部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10