(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147320
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】接続部の耐熱シール構造
(51)【国際特許分類】
F16L 21/02 20060101AFI20241008BHJP
F16J 15/10 20060101ALI20241008BHJP
F16L 13/013 20060101ALN20241008BHJP
【FI】
F16L21/02 F
F16L21/02 Z
F16J15/10 V
F16J15/10 T
F16J15/10 L
F16L13/013
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060253
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000151977
【氏名又は名称】株式会社藤井合金製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100111257
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 栄二
(74)【代理人】
【識別番号】100110504
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】北山 晃平
(72)【発明者】
【氏名】藤木 顕士
(72)【発明者】
【氏名】高田 拓矢
(72)【発明者】
【氏名】河原 裕佑
(72)【発明者】
【氏名】西川 忠良
【テーマコード(参考)】
3H015
3J040
【Fターム(参考)】
3H015BA04
3H015BB06
3H015BC08
3J040AA02
3J040AA17
3J040EA01
3J040EA25
3J040FA06
3J040FA11
3J040HA06
3J040HA15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】火災等の異常加熱により気密用シール部材が損傷しても、耐熱シール部材を設けることなく、気密性能を確保できる接続部の耐熱シール構造を提供する。
【解決手段】一方の管部材1aを他方の管部材2に回転自在に差し込んで気密用シール部材20により外周気密状態に且つ抜け止め状態に嵌合接続させる差込式の接続部であって、一方の管部材と他方の管部材とは熱膨張率の異なる異種材料からなり、熱膨張時に一方の管部材の外径が他方の管部材の内径以上となるように、一方の管部材を他方の管部材よりも熱膨張率の大きな材料から構成したこと。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の管部材を他方の管部材に差し込んで抜け止め状態に嵌合させ且つ相互に周方向に回転自在に接続させる差込式の接続部の耐熱シール構造において、
前記一方の管部材の外周面と前記他方の管部材の内周面との間の嵌合隙間は、気密用シール部材を介在させることにより外周気密状態に保持され、
前記一方の管部材と前記他方の管部材とは熱膨張率の異なる異種材料からなり、
熱膨張時に前記一方の管部材の外径が前記他方の管部材の内径以上となるように、前記一方の管部材は、他方の管部材よりも熱膨張率の大きな材料から構成されている接続部の耐熱シール構造。
【請求項2】
請求項1に記載の接続部の耐熱シール構造において、前記一方の管部材は黄銅製とし、他方の管部材は快削鋼製とした接続部の耐熱シール構造。
【請求項3】
請求項1に記載の接続部の耐熱シール構造において、前記一方の管部材の外周面の周方向全域に、気密用シール部材を収容させるための環状溝部が形成され、
前記一方の管部材を前記他方の管部材内に差し込んで抜け止め状態に接続させたとき、少なくとも前記環状溝部の開放端縁とそれが対向する前記他方の管部材の内周面との間に最小隙間部が形成されるようにした接続部の耐熱シール構造。
【請求項4】
請求項1に記載の接続部の耐熱シール構造において、前記他方の管部材の内周面の周方向全域に、気密用シール部材を収容させるための環状溝部が形成され、
前記一方の管部材を前記他方の管部材内に差し込んで抜け止め状態に接続させたとき、少なくとも前記環状溝部の開放端縁とそれが対向する前記一方の管部材の外周面との間に最小隙間部が形成されるようにした接続部の耐熱シール構造。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の接続部の耐熱シール構造において、前記一方の管部材は、せんが回動自在に収容されたせん収容部に連通するガス栓のガス流出筒部であり、
前記他方の管部材は、一端が前記ガス流出筒部に抜け止め状態に外嵌し且つ他端がガス機器のガス取入れ筒部に螺合可能な自在継手である接続部の耐熱シール構造。
【請求項6】
請求項5に記載の接続部の耐熱シール構造において、前記気密用シール部材又は前記気密用シール部材装着部の近傍域に、前記気密用シール部材の性能に影響を与えない性質の基油を使用したグリースに膨張黒鉛を混入した膨張黒鉛入りグリースを塗布した接続部の耐熱シール構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接続部の耐熱シール構造、特に、ガス栓と自在継手の接続部の耐熱シール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス機器にガス栓を自在継手を介して接続させる接続構造として、特許文献1に開示のものがある。このものでは、ガス栓のガス流出筒部に自在継手の一端を周方向に回転自在に外嵌接続させると共に、他端をガス機器のガス取入筒部に螺合接続させることにより、ガス機器に対する取付姿勢を調整しながらガス栓を接続することができる。
【0003】
上記したガス栓のガス流出筒部と自在継手との接続部のように、一方の管部材であるガス栓のガス流出筒部を、他方の管部材である自在継手内に抜け止め状態に差し込む差込式の接続部の場合、接続部の気密を確保するために、ガス栓のガス流出筒部の外周面と自在継手の内周面との間に、気密用シール部材としてのOリング(以下、気密用Oリングという)が組み込まれる。具体的には、ガス流出筒部の外周面に周方向に沿って形成される環状溝部に前記気密用Oリングを収容させた状態で、ガス流出筒部を自在継手内に挿入する。環状溝部内の気密用Oリングが、自在継手の内周面に押圧し変形状態で密着することで、前記接続部の気密が確保され、接続部からのガス漏れを防止することができる。
【0004】
また、特許文献1に示すものでは、ガス栓のガス流出筒部の外周面と自在継手の内周面との間に、気密用Oリングと共に、熱膨張率の大きな耐熱性のOリング(以下、耐熱性膨張Oリングという)が具備されており、火災時等に気密用Oリングが熱により損傷や消失した場合でも、耐熱性膨張Oリングが熱膨張することによって、前記接続部の気密性は保持可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記したような、ガス栓のガス流出筒部と自在継手との接続部のように、一方の管部材を他方の管部材に差し込んで接続させる差込式の接続部に、気密用Oリングに加えて耐熱性膨張Oリングを具備させる耐熱シール構造では、耐熱性膨張Oリングが別途必要となるため部品点数が増えると共に、耐熱性膨張Oリングを組付ける作業が必要となるため組み付け作業が煩雑になるという問題が生じる。
また、ガス栓のガス流出筒部の場合、気密用Oリング用の環状溝部の他に、耐熱性膨張Oリング用の環状溝部を別途設けなければならないため、ガス流出筒部の長さを長く設定しなければならない。これにより、ガス栓の全長が長くなるという問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、一方の管部材を他方の管部材内に差し込んで、Oリング等の気密用シール部材によって外周気密状態に接続させる接続部のシール構造に関し、火災等の異常加熱により気密用シール部材が損傷しても、耐熱シール部材を設けることなく気密性能を確保できる接続部の耐熱シール構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための技術的手段は、
一方の管部材を他方の管部材に差し込んで抜け止め状態に嵌合させ且つ相互に周方向に回転自在に接続させる差込式の接続部の耐熱シール構造において、
前記一方の管部材の外周面と前記他方の管部材の内周面との間の嵌合隙間は、気密用シール部材を介在させることにより外周気密状態に保持され、
前記一方の管部材と前記他方の管部材とは熱膨張率の異なる異種材料からなり、
熱膨張時に前記一方の管部材の外径が前記他方の管部材の内径以上となるように、前記一方の管部材は、他方の管部材よりも熱膨張率の大きな材料から構成されていることである。
【0009】
上記技術的手段は次のように作用する。
一方の管部材の外周面と他方の管部材の内周面との間の嵌合隙間に気密用シール部材を介在させた状態で、前記一方の管部材を前記他方の管部材内に差し込んで抜け止め状態に接続する。これにより、一方の管部材に他方の管部材が外周気密状態で且つ周方向に回転自在に外嵌接続された接続部が完成する。
なお、前記一方の管部材と他方の管部材とは熱膨張率の異なる異種材料から構成されており、火災時等によって前記接続部が異常に加熱された場合、熱膨張率の大きい材料からなる前記一方の管部材が他方の管部材よりも大きく熱膨張し、その外径が、他方の管部材の内径以上となる。これにより、前記一方の管部材の外周面の少なくとも一部は前記他方の管部材の内周面に圧接することとなり両者間の嵌合隙間は消失する。よって、気密用シール部材が熱で損傷したり消失したりしても、前記接続部の気密性は確保でき、両者間からの流体が漏れ出ることはない。
【0010】
上記接続部の耐熱シール構造において、好ましくは、前記一方の管部材は黄銅製とし、他方の管部材は快削鋼製としたことである。
快削鋼の熱膨張率よりも黄銅の熱膨張率の方が大きいことから、接続部の異常加熱時に、黄銅製の一方の管部材の方が快削鋼製の他方の管部材よりも大きく熱膨張する。これにより、前記一方の管部材の外周面と他方の管部材の内周面との嵌合隙間を確実に消失させて、気密性を確保することができる。
また、他方の管部材として快削鋼を採用することで、両方の管部材を共に黄銅製とするものよりもコストを安くできる。
【0011】
上記接続部の耐熱シール構造において、好ましくは、前記一方の管部材の外周面の周方向全域に、気密用シール部材を収容させるための環状溝部が形成され、
前記一方の管部材を前記他方の管部材内に差し込んで抜け止め状態に接続させたとき、少なくとも前記環状溝部の開放端縁とそれが対向する前記他方の管部材の内周面との間に最小隙間部が形成されるようにしたことである。
少なくとも、前記一方の管部材の外周面に形成した環状溝部の開放端縁と、それが対向する前記他方の管部材の内周面との間が最小隙間部となる寸法関係に設定しておくだけで、通常時には気密用シール部材で接続部の気密性は確保できる。火災時等の異常加熱時には、前記一方の管部材が他方の管部材よりも大きく熱膨張することにより、前記最小隙間部は容易に且つ確実に消失する。よって、気密用シール部材が消失したとしても接続部の気密性は有効となる。このように、前記一方の管部材の環状溝部の開放端縁の外径と、それが対向する前記他方の管部材の内周面の所定個所の内径を、両者間に気密用シール部材がシール状態で介在される最小隙間部が形成される寸法に設定しておくだけで、通常時及び加熱時における気密効果を変わりなく発揮させることができるから、他の箇所での特別な寸法精度を必要とせず、製造が容易となる。
【0012】
上記接続部の耐熱シール構造において、好ましくは、前記他方の管部材の内周面の周方向全域に、気密用シール部材を収容させるための環状溝部が形成され、
前記一方の管部材を前記他方の管部材内に差し込んで抜け止め状態に接続させたとき、少なくとも前記環状溝部の開放端縁とそれが対向する前記一方の管部材の外周面との間に最小隙間部が形成されるようにしたことである。
少なくとも、前記他方の管部材の内周面に形成した環状溝部の開放端縁と、それが対向する前記一方の管部材の外周面との間が最小隙間部となる寸法関係に設定しておくだけで、通常時には気密用シール部材で接続部の気密性は確保できる。火災時等の異常加熱時には、前記一方の管部材が他方の管部材よりも大きく熱膨張することにより、前記最小隙間部は容易に且つ確実に消失する。よって、気密用シール部材が消失したとしても接続部の気密性は有効となる。このように、前記他方の管部材の環状溝部の開放端縁の内径と、それが対向する前記一方の管部材の外周面の所定個所の外径を、両者間に気密用シール部材がシール状態で介在される最小隙間部が形成される寸法に設定しておくだけで、通常時及び加熱時における気密効果を変わりなく発揮させることができるから、他の箇所での特別な寸法精度を必要とせず、製造が容易となる。
【0013】
上記接続部の耐熱シール構造において、前記一方の管部材は、せんが回動自在に収容されたせん収容部に連通するガス栓のガス流出筒部であり、
前記他方の管部材は、一端が前記ガス流出筒部に抜け止め状態に外嵌し且つ他端がガス機器のガス取入れ筒部に螺合可能な自在継手であることが好ましい。
一般に、ガス栓をガス機器に接続させる場合、ガス栓のガス流出筒部とガス機器のガス取入筒部との間に自在継手が介在されている。前記一方の管部材となるガス栓のガス流出筒部の外周面と、前記他方の管部材となる自在継手の一端側の内周面との間の嵌合隙間に前記気密用シール部材を介在させた状態にて、ガス流出筒部を自在継手に差し込んで抜け止め状態に接続させる。これにより、自在継手がガス栓のガス流出筒部に、気密状態で且つ相互に回転自在に外嵌接続された状態となる。その後、ガス栓のせん収容部に連通するガス流入筒部にガス配管を接続し、ガス機器に対するガス栓の取付姿勢を調整しながら、前記自在継手の他端を、ガス機器のガス取入筒部に螺合接続させる。これにより、ガス機器へのガス栓の取り付けが完了し、せん収容部内のせんを開状態とすれば、配管からのガスが、ガス流入筒部、せん収容部内のせん、ガス流出筒部、自在継手を通って、ガス機器へ送り込まれる。
【0014】
なお、ガス栓と自在継手とは熱膨張率の異なる異種材料から構成されており、ガス栓を自在継手よりも熱膨張率の大きい材料から構成することで、ガス栓の熱膨張によりガス流出筒部の外径が拡径し、それよりも熱膨張率の小さい材料からなる前記自在継手の内周面に圧接する。これにより、接続部の気密が確保され、火災等により気密用シール部材が熱で消失してしまった場合でも、嵌合隙間を消失させることで、前記接続部の気密性を確保し、ガス等の流体の漏れを防止することができる。
【0015】
上記接続部の耐熱シール構造において、好ましくは、前記気密用シール部材又は前記気密用シール部材装着部の近傍域に、前記気密用シール部材の性能に影響を与えない性質の基油を使用したグリースに膨張黒鉛を混入した膨張黒鉛入りグリースを塗布したことである。
前記気密用シール部材又は前記気密用シール部材装着部の近傍域に膨張黒鉛入りグリースを塗布した状態で、一方の管部材を他方の管部材に差し込むと、気密用シール部材のシール性に悪影響を与えることなく、一方の管部材に他方の管部材をスムーズに外嵌させることができ、接続部の気密を確保することができる。
火災時等に前記接続部が高温にさらされて、気密用シール部材が熱により消失してしまった場合には、両管部材を構成する材料の熱膨張率の差により前記接続部の嵌合隙間が消失する上に、グリース内の耐熱性を有する黒鉛が熱膨張することから、膨張黒鉛が気密用シール部材に替わって入り込み、より高い気密性を維持することができる。よって、火災等の熱により、気密用シール部材が消失した場合でも、接続部の気密は一層確実に保持されてガス等の流体の漏れを防止することができる。また、鎮火後、接続部が冷却されても、膨張黒鉛が接続部の嵌合隙間を満たすこととなり、気密性を保持することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、上記構成であるから次の特有の効果を有する。
二つの管体を熱膨張率の異なる材料から構成し、一方の管部材を、それよりも熱膨張率の小さな他方の管部材に差し込んで、周方向に回転自在な差込式の接続部を構成する。通常時には、一方の管部材の外表面と他方の管部材の内表面との間の嵌合隙間に介在させた気密用シール部材により、前記接続部は外周気密状態に保持される。異常加熱時には、一方の管部材が他方の管部材よりも大きく熱膨張して、前記接続部の嵌合隙間を消失させることにより気密性が確保される。
このように、気密用シール部材の他に、別途耐熱シール部材を設けなくても、異常加熱時における接続部の気密性と耐熱性とを確保できるようにしたから、部品点数が少なくなり、コストが安くなる。さらに、Oリングが1種類になるので間違いもなく、組み付け作業も簡略化できる。
また、耐熱シール部材の取り付けスペースは不要となるから、接続部の省スペース化を実現できる。よって、例えば、ガス栓のガス流出筒部や自在継手を小型化できる。
また、異常加熱時には、熱膨張率の差を利用して接続部の嵌合隙間をなくすことにより両管部材間の気密性を確保する構成としたから、一方の管部材に対して他方の管部材が傾く等しても、接続部に隙間ができることはなく、気密性が損なわれるおそれはない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1番目の実施の形態の接続部の耐熱シール構造を採用したガス栓と自在継手との接続状態を示す断面図である。
【
図2】本発明の第1番目の実施の形態の接続部の耐熱シール構造を採用したガス栓と自在継手との接続状態を示す要部拡大断面図である。
【
図3】本発明の第2番目の実施の形態の接続部の耐熱シール構造を採用したガス栓と自在継手との接続状態を示す要部拡大断面図である。
【
図4】本発明の第3番目の実施の形態の接続部の耐熱シール構造を採用したガス栓の要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1に示すものは、本発明の実施の形態の接続部の耐熱シール構造を、ガス栓(1)のガス流出筒部(1a)の外周面(11)と、それに外嵌させる自在継手(2)の内周面(21)とからなる差込式の接続部に実施したもので、ガス流出筒部(1a)が発明特定事項としての一方の管部材とし、自在継手(2)が発明特定事項としての他方の管部材とする。
【0019】
ガス栓(1)は全体に黄銅製とし、せん(13)が回転自在に収容するせん収容部(12)に連通するように、上流側にガス流入筒部(1b)が、下流側にガス流出筒部(1a)が同軸上に設けられている。せん(13)の上方には操作ハンドル(14)が連結されてあり、操作ハンドル(14)を操作してせん(13)をせん収容部(12)内で回動させることにより、ガス流入筒部(1b)からガス流出筒部(1a)へ至るガス流路(4)を連通或は遮断させることができる。
なお、上流側のガス流入筒部(1b)には、同図の二点鎖線に示すように、配管継手(40)を介して、ガス管としてのフレキ管(41)が接続される。
【0020】
自在継手(2)は快削鋼製の筒体からなり、上流側がガス流出筒部(1a)に対して回動自在に且つ抜け止め状態に外嵌可能であり、下流側にはガス器具(31)のガス取入筒部(3)に螺合接続可能な雌ネジ(23)が形成されている。
【0021】
ガス栓(1)のガス流出筒部(1a)の外周面(11)には、外方に開放する環状溝部(10)が周方向全域に形成されており、気密用シール部材としてのゴム製の気密用Oリング(20)が環状溝部(10)に収容可能となっている。
気密用Oリング(20)はNBR素材からなり、環状溝部(10)の環状底面(10a)に密着する内径を有すると共に、環状溝部(10)の深さ以上の線径を有する。これにより、気密用Oリング(20)を環状溝部(10)に収容させると、気密用Oリング(20)は環状溝部(10)の開放端からわずかに外方へ突出する態様となる。
【0022】
環状溝部(10)内に気密用Oリング(20)を収容させたガス栓(1)のガス流出筒部(1a)を自在継手(2)に差し込み、ガス流出筒部(1a)の先端部近傍にCリング(15)を装着させて、自在継手(2)をガス栓(1)のガス流出筒部(1a)に対して抜け止め状態に外嵌接続させる。なお、
図2(A)に示すように、ガス流出筒部(1a)の外周面(11)と自在継手(2)の内周面(21)との間に、僅かな嵌合隙間(30)を生じさせておくことで、自在継手(2)はガス流出筒部(1a)に対して回動自在となっている。通常時には、同図に示すように、環状溝部(10)内の気密用Oリング(20)が、自在継手(2)の内周面(21)に押圧し変形状態で密着する。これにより、自在継手(2)の内周面(21)とガス流出筒部(1a)の外周面(11)との間の嵌合隙間(30)は気密用Oリング(20)によって外周気密状態が確保された状態となる。
【0023】
自在継手(2)は、ガス流入筒部(1b)に配管継手(40)を介してフレキ管(41)が接続されたガス栓(1)を、ガス器具(31)のガス取入筒部(3)に接続させる際に、ガス取入筒部(3)とガス流出筒部(1a)との間に介在させるもので、フレキ管(41)が接続されたガス栓(1)がガス機器に対して所定の取付姿勢となるように調整しながら、自在継手(2)の雌ネジ(23)をガス器具(31)のガス取入筒部(3)に螺合接続させる。
これにより、ガス栓(1)は、自在継手(2)を介して、ガス機器(31)に所定の姿勢で接続され、操作ハンドル(14)を操作して、せん収容部(12)内のせん(13)を開状態とすれば、フレキ管(41)からのガスが、配管継手(40)、ガス栓(1)のガス流入筒部(1b)、せん収容部(12)内のせん(13)、ガス流出筒部(1a)、そして、自在継手(2)を通って、ガス取入れ筒部(3)からガス機器(31)内へ送り込まれる。
【0024】
なお、ガス流出筒部(1a)と自在継手(2)は、少なくとも、環状溝部(10)の開放端縁(11a)とそれが対向する自在継手(2)の内周面(21)との間を最小隙間部とし、その最小隙間部の寸法は気密用Oリングの一般的なシール関係寸法にしておけばよいので、特別な寸法精度を必要としない。
【0025】
火災発生時等にて、ガス栓(1)及び周辺機器との接続部が高温にさらされると、ガス栓(1)を構成している黄銅の方が、自在継手(2)を構成している快削鋼よりも熱膨張率が大きいことから、ガス流出筒部(1a)が自在継手(2)よりも熱膨張し、
図2(B)に示すように、ガス流出筒部(1a)の外周面(11)が自在継手(2)の内周面(21)に圧接し、前記最小隙間部を含む両者間の嵌合隙間(30)は消失する。
火災時等に、環状溝部(10)内の気密用Oリング(20)が熱により消失してしまっても、ガス流出筒部(1a)の外周面(11)と自在継手(2)の内周面(21)間に嵌合隙間(30)がなくなることで両者間の気密性は確保される。よって、ガス流出筒部(1a)と自在継手(2)との接続部からのガス漏れを防止することができる。
【0026】
図3に示すものは、本発明に係る第2番目の実施の形態の接続部の耐熱シール構造を示す要部拡大断面図であり、気密用Oリング(20)を収容させる環状溝部(22)を自在継手(2)の内周面(21)に内方に開放するように設けたものである。
このものも、ガス栓(1)は黄銅製とし、自在継手(2)は快削鋼製とする。
【0027】
気密用Oリング(20)は、環状溝部(22)の環状底面(22a)に密着する外径を有すると共に、環状溝部(22)の深さ以上の線径を有するものが採用可能であり、気密用Oリング(20)を環状溝部(22)に収容させると、気密用Oリング(20)は環状溝部(22)の開放端からわずかに内方へ突出する態様となる。
【0028】
図3(A)に示すように、自在継手(2)をガス流出筒部(1a)に外嵌させた状態で、自在継手(2)が回動自在となるように、自在継手(2)の内周面(21)とガス流出筒部(1a)の外周面(11)との間にはわずかな嵌合隙間(30)を生じさせているが、環状溝部(22)の開放端縁(21a)とそれが対向するガス流出筒部(1a)の外周面(11)との間を最小隙間部としておくことで、通常時にて、環状溝部(22)内に収容させた気密用Oリング(20)はガス流出筒部(1a)の外周面(11)に押圧し変形状態で密着することとなり、自在継手(2)の内周面(21)とガス流出筒部(1a)の外周面(11)との間を外周気密状態に保持可能となる。
【0029】
火災時等の異常加熱時に気密用Oリング(20)が熱で消失したとしても、ガス栓(1)のガス流出筒部(1a)が自在継手(2)よりも大きく熱膨張することにより、
図3(B)に示すように、最小隙間部を含む嵌合隙間(30)は確実に消失することにより、自在継手(2)の内周面(21)とガス流出筒部(1a)の外周面(11)との接続部の気密性は確保され、ガス流出筒部(1a)と自在継手(2)との接続部からのガス漏れを防止することができる。
【0030】
図4に示すものは、本発明に係る第3番目の実施の形態の接続部の耐熱シール構造を示す要部拡大断面図であり、
図4(A)に示すように、黄銅製のガス栓(1)のガス流出筒部(1a)の外周面(11)に周方向全域に環状溝部(10)を外方に開放するように形成し、環状溝部(10)内に気密用Oリング(20)を収容すると共に、気密用Oリング(20)の上から膨張黒鉛入りグリース(33)を塗布したものである。膨張黒鉛入りグリース(33)としては、NBR製の気密用Oリング(20)の性能に悪影響を与えることのない、鉱物油、合成油、シリコンオイル、又はこれらの混合したものとし、これに、膨張黒鉛を混入させたものが採用可能である。
【0031】
上記したように、環状溝部(10)内に収容させた気密用Oリング(20)の上から、膨張黒鉛入りグリース(33)を塗布したガス栓(1)のガス流出筒部(1a)を、快削鋼製の自在継手(2)に差し込む。
すると、
図4(B)に示すように、ガス流出筒体(1a)の外周面(11)上にはみ出している膨張黒鉛入りグリース(33)は自在継手(2)の内周面(21)で押されて、ガス流出筒部(1a)の外周面(11)と自在継手(2)の内周面(21)との嵌合隙間(30)に流れ込むように移動する。
これと同時に、気密用Oリング(20)は、自在継手(2)の内周面(21)に押圧し変形状態で密着する。これにより、通常時には、ガス流出筒体(1a)は自在継手(2)内にて周方向に回転自在に接続された状態にて、両者間の気密は確保可能となる。
【0032】
火災発生時等にて前記接続部が異常加熱されて、気密用Oリング(20)が熱で消失しても、優れた耐熱性を有する黒鉛を含有させた膨張黒鉛入りグリース(33)は消失せずに熱膨張すると共に、黄銅製のガス栓(1)が快削鋼製の自在継手(2)よりも大きく熱膨張することにより、ガス栓(1)のガス流出筒部(1a)の外周面(11)が、自在継手(2)の内周面(21)に膨張黒鉛入りグリース(33)を介して圧接する態様となり、接続部においては、より高い気密性が確保され、接続部からのガス漏れを一層確実に防止することができる。
【0033】
鎮火後に接続部が冷却されても、
図4(C)に示すように、気密用Oリング(20)に替わって、膨張黒鉛入りグリース(33)が環状溝部(10)内に充満して接続部の嵌合隙間(30)を満たすこととなるため、自在継手(2)の内周面(21)とガス流出筒部(1a)の外周面(11)との接続部の気密性を保持することができる。
【0034】
上記した各実施の形態のように、自在継手(2)を快削鋼製としたものでは、自在継手(2)もガス栓(1)も黄銅製のものに比べて、コストが安くなる。また、耐熱性膨張Oリングを必要としないので、部品点数が少なくなり、その分コストダウンを図れると共に、Oリングは、気密用Oリング(20)の1種類だけとなるから間違えることもなく、取り付け作業も容易となる。
【0035】
さらに、気密用Oリング(20)を収容するための環状溝部(10)のみを設けておけば良いから、ガス栓(1)のガス流出筒部(1a)や自在継手(2)の全長を短くでき、接続部の省スペース化を実現できる。
また、ガス栓(1)と自在継手(2)とは熱膨張率の異なる異種材料製とすることで、異常加熱時には、ガス栓(1)のガス流出筒部(1a)の外周面(11)が自在継手(2)の内周面(21)に圧接することにより嵌合隙間(30)をなくして気密を確保する構成としたから、ガス機器(31)のガス取入筒部(3)に螺合接続させている自在継手(2)が傾くなどしても、ガス栓(1)と自在継手(2)との間に隙間が生じることはなく、ガス栓(1)と自在継手(2)間の気密は保持される。
【符号の説明】
【0036】
(1a)・・・ガス流出筒部(一方の管部材)
(2) ・・・自在継手(他方の管部材)
(20)・・・気密用Oリング(気密用シール部材)