(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147323
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】糸巻取装置
(51)【国際特許分類】
B65H 67/08 20060101AFI20241008BHJP
B65H 67/06 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B65H67/08 A
B65H67/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060258
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】梅岡 利成
【テーマコード(参考)】
3F112
【Fターム(参考)】
3F112AA06
3F112CA03
3F112GA03
3F112JA03
(57)【要約】
【課題】糸巻取装置から払い出される給糸ボビンの糸引きを減らす。
【解決手段】給糸ボビン30を載置した搬送トレイ32を保持するトレイ保持部40を有し、給糸ボビン30から糸11を解舒する糸解舒部2と、給糸ボビン30から解舒された糸を巻き取りパッケージ23を形成する巻取部3と、を備えている。糸解舒部2は、さらに、給糸ボビン30の上方から下方に向かって気体を噴射する第1噴射部56を有する。トレイ保持部40は、搬送トレイ32を保持している場合に、搬送トレイ32の底面部が配置される位置に第1開口42を有する。第1開口42は、トレイ保持部40の搬送トレイ32を保持している上面側から下面側に、第1噴射部56が噴射した気体を、通過させる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給糸ボビンを載置した搬送トレイを保持するトレイ保持部を有し、前記給糸ボビンから糸を解舒する糸解舒部と、
前記給糸ボビンから解舒された糸を巻き取ってパッケージを形成する巻取部と、
を備えた糸巻取装置であって、
前記糸解舒部は、さらに、前記給糸ボビンの上方から下方に向かって気体を噴射する第1噴射部を有し、
前記トレイ保持部は、前記搬送トレイを保持している場合に、前記搬送トレイの底面部が配置される位置に第1開口を有し、
前記第1開口は、前記トレイ保持部の前記搬送トレイを保持している上面側から下面側に、前記第1噴射部が噴射した気体を、通過させる、
糸巻取装置。
【請求項2】
前記トレイ保持部は、複数の前記第1開口を有する、
請求項1に記載の糸巻取装置。
【請求項3】
前記複数の前記第1開口は、前記トレイ保持部の前記搬送トレイを保持する位置の中心から同心円状に配置される、
請求項2に記載の糸巻取装置。
【請求項4】
前記第1噴射部は、噴射した気体により前記給糸ボビンの糸の先端を前記給糸ボビン内に吹き入れる、
請求項1又は2に記載の糸巻取装置。
【請求項5】
前記トレイ保持部を操作して、前記搬送トレイに載置された前記給糸ボビンの解舒側端部の位置を調整するトレイ位置調整機構、をさらに備える、
請求項2に記載の糸巻取装置。
【請求項6】
前記トレイ位置調整機構により前記搬送トレイの位置が変化した場合であっても、前記複数の前記第1開口の少なくともいずれか1つが、前記第1噴射部が噴射した気体を通過させる、
請求項5に記載の糸巻取装置。
【請求項7】
前記第1噴射部に供給される気体が流通する第1配管と、
前記糸に抵抗を与える抵抗付与部を有し、前記糸に抵抗を付与することにより前記糸に張力を付与する張力付与装置と、
前記抵抗付与部に向けて清掃用の気体を噴射する第2噴射部と、
前記第2噴射部に供給される気体が流通する第2配管と、
をさらに備え、
前記第2配管は、気体の流通経路を分岐する分岐部を介して前記第1配管に接続されている、
請求項1又は2に記載の糸巻取装置。
【請求項8】
前記搬送トレイは、
前記給糸ボビン内に挿入され、前記給糸ボビンを前記搬送トレイに固定する突起部と、
前記突起部の上端部から前記搬送トレイの下面に貫通する第2開口と、
前記第2開口に固定され、気体が通過することを許可し、かつ、前記糸が通過することを制限する金属製の網目部材と、
を有する、
請求項1又は5に記載の糸巻取装置。
【請求項9】
前記第2開口は、前記第1噴射部が噴射した気体を、前記上端部から前記搬送トレイの下面に通過させる、
請求項8に記載の糸巻取装置。
【請求項10】
前記搬送トレイは、
前記給糸ボビン内に挿入され、前記給糸ボビンを前記搬送トレイに固定する突起部と、
前記突起部の上端部から前記搬送トレイの下面に貫通する第2開口と、
前記第2開口に固定され、気体が通過することを許可し、かつ、前記糸が通過することを制限する金属製の網目部材と、
を有し、
前記トレイ位置調整機構は、前記第1噴射部により噴射された気体が、前記第2開口及び前記第1開口を通過するよう、前記給糸ボビンの解舒側端部の位置を調整する、
請求項5に記載の糸巻取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、糸巻取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
給糸ボビンから解舒された糸に対して張力を付与するとともに、糸を巻き取ってパッケージを形成する糸巻取装置が知られている。糸巻取装置は、解舒時の糸張力を安定させて糸切れを防止するために、糸解舒補助装置を有する。
【0003】
特許文献1の糸解舒補助装置は、糸の引っ掛かりを少なくし、糸引きが生じることを抑制するために、給糸ボビンに向かってエアを吹くエア吹きノズルが設けられている。特許文献2の糸仮止め装置は、糸引きが生じることを抑制するために、糸の先端を給糸ボビン内に吹き入れるエア吹きノズルが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7-133077号公報
【特許文献2】特開2018-188259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
給糸ボビンに向かって吹き付けられたエアは、給糸ボビン内側の壁面や給糸ボビンの底面部に配置される搬送トレイ等に衝突することによって流れの方向を変える。これにより、給糸ボビンの内側の空間で乱気流が発生することがある。乱気流により糸端がボビンの外側に垂れ下がった糸引き状態になると、ボビンの搬送中に糸端がコンベア上に接触してしまい、糸端がプーリ等の搬送機構に巻き付くことがある。
【0006】
本発明の目的は、糸巻取装置において、糸巻取装置から払い出される給糸ボビンの糸引きを減らすことにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
【0008】
本開示の糸巻取装置は、給糸ボビンを載置した搬送トレイを保持するトレイ保持部を有し、給糸ボビンから糸を解舒する糸解舒部と、給糸ボビンから解舒された糸を巻き取りパッケージを形成する巻取部と、を備えている。糸解舒部は、さらに、給糸ボビンの上方から下方に向かって気体を噴射する第1噴射部を有する。トレイ保持部は、搬送トレイを保持している場合に、搬送トレイの底面部が配置される位置に第1開口を有する。第1開口は、トレイ保持部の搬送トレイを保持している上面側から下面側に、第1噴射部が噴射した気体を、通過させる。
【0009】
この糸巻取装置では、第1噴射部から噴射された気体が第1開口を通過するため、気体の流れが乱れにくく、給糸ボビンの内側における乱気流の発生を抑制できる。
【0010】
トレイ保持部は、複数の第1開口を有していてもよい。
【0011】
この糸巻取装置では、搬送トレイの位置が、トレイ保持部の搬送トレイを保持する位置の中心からずれた場合であっても、より高い精度で第1噴射部が噴射した気体が第1開口を通過する。
【0012】
複数の第1開口は、トレイ保持部の搬送トレイを保持する位置の中心から同心円状に配置されていてもよい。
【0013】
第1噴射部は、噴射した気体により給糸ボビンの糸の先端を給糸ボビン内に吹き入れてもよい。
【0014】
この糸巻取装置では、第1噴射部が糸の先端を給糸ボビン内に吹き入れる。
【0015】
トレイ保持部を操作して、搬送トレイに載置された給糸ボビンの解舒側端部の位置を調整するトレイ位置調整機構、をさらに備えてもよい。
【0016】
この糸巻取装置では、給糸ボビンの解舒側端部の位置を調整することにより、より高い精度で第1噴射部が糸の先端を給糸ボビン内に吹き入れる。
【0017】
トレイ位置調整機構により搬送トレイの位置が変化した場合であっても、複数の第1開口の少なくともいずれか1つが、第1噴射部が噴射した気体を通過させればよい。
【0018】
この糸巻取装置では、搬送トレイの位置が、トレイ保持部が搬送トレイを保持する位置の中心からずれた場合であっても、第1噴射部が噴射した気体は、第1開口を通過することができる。その結果、気体の流れが乱れにくく、給糸ボビンの内側における乱気流の発生を抑制できる。
【0019】
第1噴射部に供給される気体が流通する第1配管と、張力付与装置と、第2噴射部と、第2噴射部に供給される気体が流通する第2配管と、をさらに備えてもよい。張力付与装置は、糸に抵抗を与える抵抗付与部を有し、糸に抵抗を付与することにより糸に張力を付与する。第2噴射部は、抵抗付与部に向けて清掃用の気体を噴射する。この場合、第2配管は、気体の流通経路を分岐する分岐部を介して第1配管に接続されていてもよい。
【0020】
この糸巻取装置では、第1噴射部に供給される気体が流通する第1配管と、第2噴射部に供給される気体が流通する第2配管と、が分岐部を介して接続されている。
【0021】
搬送トレイは、突起部と、第2開口と、金属製の網目部材と、を有していてもよい。突起部は、給糸ボビン内に挿入され、給糸ボビンを搬送トレイに固定する。第2開口は、突起部の上端部から搬送トレイの下面に貫通する。金属製の網目部材は、第2開口に固定され、気体が通過することを許可し、かつ、糸が通過することを制限する。
【0022】
この糸巻取装置では、気体が、搬送トレイの突起部の上端部から搬送トレイの下面に通過することができる。また、糸が、搬送トレイの突起部の上端部から搬送トレイの下面に通過することを抑制できる。その結果、気体の流れが乱れにくく、給糸ボビンの内側における乱気流の発生を抑制できる。
【0023】
第2開口は、第1噴射部が噴射した気体を、搬送トレイの突起部の上端部から搬送トレイの下面に通過させてもよい。
【0024】
搬送トレイは、突起部と、第2開口と、金属製の網目部材と、を有していてもよい。突起部は、給糸ボビン内に挿入され、給糸ボビンを搬送トレイに固定する。第2開口は、突起部の上端部から搬送トレイの下面に貫通する。金属製の網目部材は、第2開口に固定され、気体が通過することを許可し、かつ、糸が通過することを制限する。この場合、トレイ位置調整機構は、第1噴射部により噴射された気体が、第2開口及び第1開口を通過するよう、給糸ボビンの解舒側端部の位置を調整してもよい。
【0025】
この糸巻取装置では、第1噴射部により噴射された気体が、第2開口及び第1開口を通過するよう、給糸ボビンの解舒側端部の位置を調整することができる。その結果、第1噴射部により噴射された気体は、より高い精度で糸の先端を給糸ボビン内に吹き入れることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る糸巻取装置では、糸巻取装置から払い出される給糸ボビンからの糸引きが減らされる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図4】給糸ボビンが装着された搬送トレイの側面図である。
【
図8】搬送トレイが保持されているトレイ保持部の平面図である。
【
図9】搬送トレイが保持されている糸解舒部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
1.第1実施形態
(1)糸巻取装置1の全体構成
(1-1)基本構造
第1実施形態の糸巻取装置1は、給糸ボビン30から解舒した糸11を巻取管22の表面に巻き取り、糸層を形成する装置である。巻取管22の表面に糸層を形成したものをパッケージという。糸巻取装置1は、言い換えると、パッケージ製造装置である。糸巻取装置1は、糸11を綾振りしながら巻取管22に巻き取ることができる綾振ドラム21が知られている。またトラバース幅、トラバース位置を制御可能な糸巻取装置1としてアームトラバース型の巻取装置や、ベルトトラバース型の巻取装置も知られている。本実施形態の糸巻取装置1は、綾振ドラム型の巻取装置である。
【0029】
糸巻取装置1は、
図1に示すように、給糸ボビン30から糸11を解舒する糸解舒部2と、給糸ボビン30から解舒した糸11を巻き取りパッケージ23を形成する巻取部3を備える。糸解舒部2は、下部にトレイ保持部40を有する。トレイ保持部40は、糸11を解舒する際に、搬送トレイ32に載置された給糸ボビン30を保持する位置である。巻取部3は、パッケージ形成装置20を有する。
【0030】
糸巻取装置1は、給糸ボビン30から巻取管22に向かって順に、糸解舒補助装置50と、張力付与装置80と、スプライサ装置12と、クリアラ(糸品質測定器)13と、ワキシング装置14と、クリーニングパイプ15と、パッケージ形成装置20と、を備えている。
【0031】
糸解舒補助装置50は、解舒中の糸11の膨らみ(バルーン)を規制し、解舒張力を安定させるための装置である。糸解舒補助装置50は、可動筒体51を有する。糸解舒補助装置50は、給糸ボビン30の芯管に被さる可動筒体51を給糸ボビン30からの糸11の解舒と連動して下降させることにより、給糸ボビン30からの糸11の解舒を補助するものである。可動筒体51は、給糸ボビン30から解舒された糸11の回転と遠心力によって給糸ボビン30上部に形成されたバルーンに対し接触し、当該バルーンに適切なテンションを付与することによって糸11の解舒を補助する。可動筒体51の近傍には給糸ボビン30の位置、及び、給糸ボビン30のチェス部(給糸ボビン30の糸層のうち、糸解舒側のテーパー状の端部)を検出するための検出センサ53が備えられている。検出センサ53がチェス部の下降を検出すると、それに追従して可動筒体51を例えばステッピングモータ(図略)によって下降させることができる。ステッピングモータの代わりにエアシリンダーを採用することもできる。
【0032】
張力付与装置80は、走行する糸11に所定の張力を付与するものである。張力付与装置80としては、例えば、固定の櫛歯81に対して可動の櫛歯82を配置するゲート式のものを用いることができる。可動側の櫛歯82は、櫛歯同士が噛み合わせ状態又は解放状態になるように、駆動部83により回動することができる。駆動部83は、例えばロータリ式に構成されたソレノイドである。この張力付与装置80によって、巻き取られる糸11に一定の張力を付与し、パッケージ23の品質を高めることができる。なお、張力付与装置80には、上記ゲート式のもの以外にも、例えばディスク式のものを採用することができる。また、ソレノイドの代わりにステッピングモータを採用することもできる。
【0033】
スプライサ装置12は、クリアラ13が糸欠点を検出して行う糸切断時、又は給糸ボビン30からの解舒中の糸切れ時等に、給糸ボビン30側の下糸と、パッケージ23側の上糸とを糸継ぎするものである。このような上糸と下糸とを糸継ぎする糸継装置としては、機械式のものや、圧縮空気等の流体を用いるもの等を使用することができる。
【0034】
クリアラ13は、クリアラヘッド17と、アナライザ(図示せず)とを備えている。クリアラヘッド17は、糸11の太さを検出するためのセンサが配置されている。アナライザは、センサからの糸太さ信号を処理する。クリアラ13は、センサからの糸太さ信号を監視することにより、スラブ等の糸欠陥を検出するように構成されている。クリアラヘッド17の近傍には、クリアラ13が糸欠点を検出したときに直ちに糸11を切断するためのカッタ16が設けられている。
【0035】
スプライサ装置12の下側には下糸案内パイプ70が、上側には上糸案内パイプ60が、設けられている。下糸案内パイプ70は、給糸ボビン30側の下糸を捕捉してスプライサ装置12に案内する。上糸案内パイプ60は、パッケージ23側の上糸を捕捉してスプライサ装置12に案内する。また、下糸案内パイプ70と上糸案内パイプ60は、それぞれ軸71、61を中心にして回動可能に構成されている。下糸案内パイプ70の先端には吸引口72が形成され、上糸案内パイプ60の先端にはサクションマウス62が備えられている。下糸案内パイプ70及び上糸案内パイプ60には適宜の負圧源がそれぞれ接続されており、吸引口72及びサクションマウス62に吸引流を発生させて、上糸及び下糸の糸端を吸引捕捉できるように構成されている。
【0036】
ワキシング装置14は、走行する糸11に対して適宜のワックスを塗布する装置である。
【0037】
クリーニングパイプ15は、走行する糸11に付着している異物を吸引して除去する装置である。クリーニングパイプ15の基端はシャッタ装置(図示せず)を介してブロワに接続され、クリーニングパイプ15の先端には吸引口が形成されている。クリーニングパイプ15の吸引口は、ワキシング装置14と綾振ドラム21との間で走行する糸11に対して近接される。
【0038】
パッケージ形成装置20は、クレードル24と、巻取管22と、綾振ドラム21とを備えている。クレードル24は、巻取管22を着脱可能に支持する。巻取管22は、紙管であってもプラスチック式の芯管であってもよい。綾振ドラム21は、巻取管22の周面又はパッケージ23の周面に接触して従動回転可能である。
【0039】
クレードル24は、回動軸25を中心に回動可能に構成されており、巻取管22への糸11の巻取に伴う糸層径の増大を、クレードル24が回動することによって吸収できるように構成されている。また、糸巻取装置1は、
図1に示すようにコーン形状のパッケージ23を形成可能に構成されている。
【0040】
(1-2)基本動作
搬送トレイ32に載置された給糸ボビン30は、払い出し機構41により糸巻取装置1に供給され、トレイ保持部40に保持される。払い出し機構41は、揺動する板状部材44と、通路パネル45と、を有する。
図4に示すように、通路パネル45は、揺動する板状部材44よりも上方に、略水平に設けられる。通路パネル45には、トレイ通路46が形成されている。トレイ通路46の幅は、搬送トレイ32の中間円柱部32cの外径とほぼ同じ幅である。搬送トレイ32の基部32aは、揺動する板状部材44と、通路パネル45に挟まりこむようにして移動する。
【0041】
給糸ボビン30がトレイ保持部40に保持されると、パッケージ形成装置20は、給糸ボビン30から解舒した糸11を巻取管22に巻き取り、パッケージ23を形成する。糸巻動作後に、給糸ボビン30は搬送トレイ32とともに払い出し機構41により払い出される。
【0042】
(1-3)制御構成
図1に示すように、糸巻取装置1は、ユニット制御部90を有する。
【0043】
ユニット制御部90は、プロセッサ(例えば、CPU)と、記憶装置(例えば、ROM、RAM、HDD、SSDなど)と、各種インターフェース(例えば、A/Dコンバータ、D/Aコンバータ、通信インターフェースなど)を有するコンピュータシステムである。ユニット制御部90は、記憶部(記憶装置の記憶領域の一部又は全部に対応)に保存されたプログラムを実行することで、各種制御動作を行う。
【0044】
ユニット制御部90は、単一のプロセッサで構成されていてもよいが、各制御のために独立した複数のプロセッサから構成されていてもよい。
【0045】
ユニット制御部90の各要素の機能は、一部又は全てが、コンピュータシステムにて実行可能なプログラムとして実現されてもよい。その他、ユニット制御部90の各要素の機能の一部は、カスタムICにより構成されていてもよい。
【0046】
図1に示すように、ユニット制御部90には、検出センサ53と、空気供給装置91と、トレイ位置調整機構92とが接続されている。ユニット制御部90には、図示しないが、糸11の位置や状態を検出するセンサ、各装置の状態を検出するためのセンサ及びスイッチ、並びに情報入力装置が接続されている。
【0047】
(2)詳細構成
(2-1)糸解舒補助装置
図2及び
図3を用いて、糸解舒補助装置50を詳細に説明する。
図2は、糸解舒補助装置50の斜視図である。
図3は、糸解舒補助装置50の断面図である。
【0048】
糸解舒補助装置50は、可動筒体51(移動筒部材の一例)と、可動筒体51を保持する保持カバー部材52と、保持カバー部材52に取り付けられた検出センサ53とを有する。
【0049】
可動筒体51は、巻取位置において直立姿勢に保持された給糸ボビン30の上方に位置する。可動筒体51は、筒軸方向に内径の変化しないストレート筒部51aと、このストレート筒部51aの下端部に形成され、下方ほど径が拡大するテーパー筒部51bとを有する。可動筒体51は、給糸ボビン30の上部を覆うように配置され、給糸ボビン30の糸層が下方に移動するに伴って下方に移動する。
【0050】
保持カバー部材52は上下に昇降可能に構成されており、これにより、可動筒体51と検出センサ53も保持カバー部材52ともに上下に移動する。検出センサ53は、給糸ボビン30のチェス部(給糸ボビン30の糸層のうち、糸解舒側のテーパー状の端部)を検知する。検出センサ53は、給糸ボビン30の両側に配置された発光素子と受光素子とを有する透過型フォトセンサである。
【0051】
糸解舒補助装置50は、さらに、固定筒体54を有する。固定筒体54は、給糸ボビン30の上方に停止して糸11の膨らみを規制するための部材である。固定筒体54は、巻取位置にある給糸ボビン30の真上に固定して配置され、上下方向に延びる部材である。言い換えると、固定筒体54及び給糸ボビン30の中心は、平面視で一致するように配置される。固定筒体54の内周面の径は、筒軸方向に一定である。つまり、固定筒体54の内周面は、ストレート形状である。固定筒体54の外径は可動筒体51の内径より小さいため、可動筒体51は、固定筒体54の外側を覆う状態で上下方向に移動可能である。固定筒体54の内径が小さいことで、チェス部から解舒される糸11のバルーン状態の変動が抑えられ、その結果、形成されるバルーンの大きさが安定する。
【0052】
図3に示すように、固定筒体54の下端は、給糸ボビン30の上端から上方に離れて配置される。固定筒体54の下端の開口部54bは、下側に向かって広がるテーパー面になっている。
【0053】
ユニット制御部90は、検出センサ53の検出結果(チェス部の検出の有無)に応じて、可動筒体51を下方に移動させる。より詳細には、次の通りである。糸層のチェス部の位置は、糸11の解舒の進行に伴って下に移動する。チェス部の位置の下降に伴って、検出センサ53によってチェス部の糸層が検出されなくなると、ユニット制御部90は、検出センサ53によってチェス部が再度検出されるまで可動筒体51をその筒軸方向に沿って下降させる。ユニット制御部90は、検出センサ53が検知するチェス部の位置と可動筒体51との距離が一定となるように可動筒体51の上下方向への移動を制御する。
【0054】
糸解舒補助装置50は、糸仮止め装置55を有する。糸仮止め装置55は、直立状態の給糸ボビン30の糸11の先端を給糸ボビン30に仮止めする装置である。糸仮止め装置55は、給糸ボビン30が払い出し機構41によって糸解舒部2から払い出される前に、糸11の先端を給糸ボビン30に仮止めする。したがって、給糸ボビン30に糸引き(糸端が給糸ボビン30の外側に垂れ下がった状態となること)が生じない。具体的には、糸仮止め装置55は、糸11の先端を給糸ボビン30内に移動させることで、給糸ボビン30に仮止めする。
【0055】
糸仮止め装置55は、第1噴射部56と、第1配管86と、を有する。第1噴射部56は、
図3に示すように、固定筒体54に斜めに固定されている。第1噴射部56は、斜め上方から、下方に向かって空気を噴出するように、固定筒体54に固定されている。糸仮止め装置55は、糸11の先端を給糸ボビン30内に吹き入れる。第1配管86は、空気供給装置91から第1噴射部56に供給される空気の通路である。
【0056】
糸仮止め装置55は、空気供給装置91から供給される空気を第1噴射部56から噴出することにより、糸11の先端を給糸ボビン30内に吹き入れる。その結果、簡単な方法で確実に糸引きを抑制できる。
【0057】
また、糸仮止め装置55は、カッタ58を有する。カッタ58は、固定筒体54の上方に配置され、給糸ボビン30から上方に延びる糸11を切断可能である。例えば、給糸ボビン30の糸の品質が悪く、これ以上その給糸ボビン30の糸をパッケージ23に巻き続けるのが好ましくないと判断した場合、カッタ58が糸11を切断する。カッタ58が糸11を切断する瞬間の前又は同時に第1噴射部56が固定筒体54の内部に斜め下方に空気を吹き付けることで、糸11の先端が給糸ボビン30内に挿入される。
【0058】
第1噴射部56はカッタ58に近接して設けられているので、糸11の先端を給糸ボビン30内に確実に誘導できる。
【0059】
上述のように第1噴射部56が噴出を開始するタイミングは、カッタ58が糸11を切断する瞬間の前又は同時である。言い換えると、カッタ58が糸11を切断する瞬間には第1噴射部56が空気を噴出しているので、糸11の先端は給糸ボビン30内に確実に入り込む。しかしながら、第1噴射部56が噴出を開始するタイミングは、上述のタイミングに限らない。例えば、過大なテンションが付加されることにより糸11が破断してしまった場合、破断した糸11の給糸ボビン30側の糸である下糸の長さ不足のため、下糸案内パイプ70が、下糸を捕捉してスプライサ装置12に案内することができない場合がある。この場合も、ユニット制御部90は、第1噴射部56から空気を噴出して糸11の先端を給糸ボビン30内に挿入した後、給糸ボビン30を糸巻取装置1から排出する。その際の第1噴射部56が噴出を開始するタイミングは、糸切れ発生検知後、下糸案内パイプ70が下糸を捕捉できないことが確認された後である。
【0060】
(2-2)搬送トレイ及び給糸ボビン
図4~
図6を用いて搬送トレイ32及び給糸ボビン30を説明する。
図4は、給糸ボビン30が装着された搬送トレイ32が搬送される際の側面図である。
図5は、搬送トレイ32の斜視図である。
図6は、搬送トレイ32の断面図である。搬送トレイ32は、給糸ボビン30の搬送に用いられる搬送体である。搬送トレイ32は、
図4及び
図5に示すように、円盤状の基部32aと、その上面中央から上向きに突出する円柱状の装着部32bとを有する。搬送トレイ32は、基部32aと装着部32bとの間に、中間円柱部32cを有する。中間円柱部32cは、給糸ボビン30が着座する着座面33と、外周面34とを有する。搬送トレイ32は、装着部32bに給糸ボビン30が差し込まれた状態で、給糸ボビン30を搬送する。
【0061】
図4に示すように、給糸ボビン30は、糸11が外周面に巻かれるための円筒状の部材であり、貫通状の軸孔31が形成されている。給糸ボビン30の底部が搬送トレイ32の装着部32bに差し込まれ、着座面33に着座することにより、給糸ボビン30が搬送トレイ32にセットされる。
【0062】
図6を用いて、搬送トレイ32の内部構造を説明する。搬送トレイ32は、糸11が巻装された給糸ボビン30が装着される部材であって、トレイ本体35と、金属製の網目部材37とを有する。トレイ本体35は、前述のように、基部32aと、給糸ボビン30内に挿入されて給糸ボビン30を立たせる装着部32bと、凹部38とを有する。トレイ本体35には、上端部から下面に貫通する第2開口36が形成されている。具体的には、第2開口36は、基部32a及び装着部32bを貫通している。凹部38の径は網目部材37の径より大きい。
【0063】
網目部材37は、第2開口36内に固定され、空気の通過を許容するが糸11の通過を制限する。そのため、糸端がトレイ本体35の第2開口36を通って下方に移動した場合でも、糸端が搬送トレイ32を貫通して下方に通過することを抑制できる。
【0064】
網目部材37は、金属線同士が焼結によって互いに溶着されているものでもよいし、ロール圧延装置などにより圧延加工(カレンダー加工)することにより、金属線同士を圧延し、金属線の交差部が互いに噛み込むように変形させたものでもよい。
【0065】
(2-3)トレイ保持部
図7は、トレイ保持部40の平面図である。トレイ保持部40は、搬送トレイ32を移動させるための可動の支持部材(図示せず)を有する。支持部材は、例えば、搬送トレイ32の中間円柱部32cの外周面34と接触することで搬送トレイ32を支持する。搬送トレイ32に載置された給糸ボビン30が払い出し機構41によってトレイ保持部40に供給されると、トレイ位置調整機構92(後述)は、ステッピングモータ(図示せず)を適宜制御することにより支持部材を駆動し、搬送トレイ32に載置された給糸ボビン30の位置を調整する。調整された位置に搬送トレイ32を保持することにより、搬送トレイ32に載置されている給糸ボビン30から、糸11を適切に解舒することができる。
【0066】
トレイ保持部40は、搬送トレイ32を保持する位置の中心43(固定筒体54の中心から鉛直下方の位置にあるトレイ保持部40)から同心円状に複数の第1開口42を有する。第1開口42は、搬送トレイ32を保持している上面側から下面側に貫通する開口である。
図7では、搬送トレイ32を保持する位置の中心43から同心円状に120°毎に、3つの第1開口42が形成されている。異なる方向に3つ以上の第1開口42が形成されていれば、1つの開口が塞がれても2つの開口から空気の流れが確保されるので好ましい。ただし、あまり多くの開口が形成されると、トレイ保持部40の強度に問題が生じる場合もあるので、第1開口42の数は5以下が好ましい。
【0067】
図8は、搬送トレイ32がトレイ保持部40に保持されている場合の、トレイ保持部40の平面図である。第1開口42は搬送トレイ32の基部32aにより覆われる。
【0068】
その結果、第1噴射部56から噴出した空気は、給糸ボビン30の内部、装着部32bの第2開口36、網目部材37、凹部38を順に通過した後、第1開口42からトレイ保持部40の下面部に流れる。本実施形態においては、このように、第1噴射部56から噴出した空気が、給糸ボビン30の解舒側端部30aからトレイ保持部40の下面側に流れるパスが確保されている。これにより、給糸ボビン30の内側で行き場をなくした空気が給糸ボビン30の解舒側端部30aから噴出することを抑制できる。その結果、糸端が給糸ボビン30の内側に導かれた状態で保持されるので、給糸ボビン30の外側に垂れ下がる糸引き状態を容易に回避できる。
【0069】
さらに本実施形態では、糸巻取装置1はトレイ位置調整機構92を有しており、搬送トレイ32の位置をトレイ保持部40に対して水平面上で移動させる。この場合、搬送トレイ32の基部32aの下面が、トレイ保持部40の第1開口42を塞いでしまう恐れがある。しかしながら、本実施形態では、トレイ保持部40の中心43から異なる方向に複数の第1開口42が形成されているため、いずれかの第1開口42は塞がれることが無く、トレイ保持部40の上方から下方への空気のパスは確保される。
【0070】
(2-4)張力付与装置
図1を用いて、張力付与装置80を詳細に説明する。
【0071】
張力付与装置80は、抵抗付与部88と、駆動部83と、を有する。抵抗付与部88は、固定の櫛歯81と、可動の櫛歯82を有する。駆動部83は、ユニット制御部90からの運転信号を受けて、可動の櫛歯82を駆動することによって、櫛歯同士が噛み合わせられた状態と解放された状態とを切り替えることができる。
【0072】
張力付与装置80は、さらに、第2噴射部84と、空気供給装置91から第2噴射部84に供給される空気の通路である第2配管85と、を有する。糸巻取の際、糸11に適度な張力を付与するため、抵抗付与部88において、糸11は固定の櫛歯81と可動の櫛歯82との間に挟まれる。糸11が固定の櫛歯81及び可動の櫛歯82に接触するため、抵抗付与部88では、風綿が発生しやすい。風綿が固定の櫛歯81や可動の櫛歯82に絡みつくと、各種装置に障害が発生したり、パッケージ23の品質が劣化するおそれがある。本実施形態における糸巻取装置1では、抵抗付与部88から風綿を除去するため、第2噴射部84から清掃用の空気を噴出する。
【0073】
例えば、糸切れ発生検知後、下糸案内パイプ70が下糸を捕捉できないことが確認され、さらに、固定の櫛歯81と可動の櫛歯82との間が開いた状態となったときに、第2噴射部84は清掃用空気を噴出する。上記タイミングは張力付与装置80に糸11が存在しないため、糸11が清掃用空気により張力付与装置80から外れるおそれがない。もしくは、カッタ58が糸11を切断する瞬間の前又は同時に、第2噴射部84は清掃用空気を噴出してもよい。上記タイミングは、第1噴射部56が糸仮止めのために空気の噴出を開始するタイミングである。
【0074】
本実施形態では、空気供給装置91から第1噴射部56に供給される空気が流通する第1配管86と、空気供給装置91から第2噴射部84に供給される空気が流通する第2配管85とが、分岐部87を介して接続されている。第1噴射部56と第2噴射部84から空気が噴出するタイミングが同じであるため、特別な制御は必要なく、コストを低減することができる。
【0075】
なお、空気供給装置91が供給する気体は、空気に限定されるものではなく、窒素ガス等の不活性ガスを使用してもよい。
【0076】
(2-5)トレイ位置調整機構
図9は、搬送トレイ32が保持されている糸解舒部2の側面図である。可動筒体51及び固定筒体54の中心軸線の延長線を中心線4とする。トレイ位置調整機構92は、トレイ保持部40の支持部材を駆動することにより、給糸ボビン30の解舒側端部30aの中心が可動筒体51及び固定筒体54の真下に位置に配置される方向に、搬送トレイ32を移動させる。
【0077】
具体的には、搬送トレイ32に載置された給糸ボビン30が払い出し機構41によって糸巻取装置1に供給されると、検出センサ53は、給糸ボビン30の解舒側端部30aを検知する。ユニット制御部90は、検出センサ53の検出結果(給糸ボビン30の解舒側端部30aの検出の有無)に基づいて、解舒側端部30aの位置を算出する。ユニット制御部90は、算出した解舒側端部30aの位置が中心線4からずれていると判断すると、算出した解舒側端部30aの位置に基づいて、搬送トレイ32を移動させる距離及び方向等を算出し、搬送トレイ32が該距離及び該方向に移動するよう、トレイ位置調整機構92を制御する。言い換えると、ユニット制御部90は、可動筒体51及び固定筒体54と、給糸ボビン30の中心が平面視で一致する方向に搬送トレイ32が移動するよう、トレイ位置調整機構92を制御する。トレイ位置調整機構92は、ユニット制御部90からの指示に応じて、ステッピングモータ(図示せず)を適宜制御することにより支持部材を駆動し、搬送トレイ32を移動させる。
【0078】
その結果、
図9に示すように、給糸ボビン30が搬送トレイ32に対して斜めに刺さっている場合であっても、給糸ボビン30を糸11の解舒に適切な位置に移動させることができる。また、第1噴射部56から噴出する空気が給糸ボビン30の内部に吹き込まれる精度が上がる。また、トレイ保持部40の中心43から異なる方向に複数の第1開口42が形成されているため、いずれかの第1開口42は塞がれることが無く、第1噴射部が噴射した空気をトレイ保持部40の上方から下方へ通過させる。
【0079】
2.実施形態の特徴
本実施形態の糸巻取装置1は、糸解舒部2と、巻取部3を備えている。糸解舒部2は、給糸ボビン30を載置した搬送トレイ32を保持するトレイ保持部40を有し、給糸ボビン30から糸11を解舒する。巻取部3は、給糸ボビン30から解舒された糸11を巻き取ってパッケージ23を形成する。
【0080】
糸解舒部2は、給糸ボビン30の上方から下方に向かって空気を噴射する第1噴射部56を有する。トレイ保持部40は、搬送トレイ32を保持している場合に、搬送トレイ32の底面部が配置される位置に第1開口42を有する。第1開口42は、トレイ保持部40の搬送トレイ32を保持している上面側から下面側に、第1噴射部56が噴射した空気を、通過させる。
【0081】
この糸巻取装置1では、第1噴射部56が噴射した空気が、第1開口42を通過して、搬送トレイ32の上面側から下面側に流通する。よって、給糸ボビン30の内側で行き場をなくした空気が給糸ボビン30の解舒側端部30aから噴出することを抑制できる。このため、糸端が給糸ボビン30の内側に導かれ、給糸ボビン30の外側に垂れ下がる糸引きを減らすことができる。
【0082】
さらに本実施形態では、糸巻取装置1はトレイ位置調整機構92を有している。トレイ位置調整機構92は、搬送トレイ32の位置をトレイ保持部40に対して水平面上で移動させる。これによって、搬送トレイ32に載置された給糸ボビン30の解舒側端部30aの位置を、糸解舒補助装置50に対して調整することができる。その結果、給糸ボビン30が搬送トレイ32に装着される位置が変動しても、給糸ボビン30からの糸11の解舒位置を適切に保つことができ、第1噴射部56から噴出する空気が給糸ボビン30の内部に吹き込まれる精度が上がる。
【0083】
さらに、本実施形態のトレイ保持部40は、複数の第1開口42を有する。搬送トレイ32の位置が、トレイ保持部40に対して水平面上で移動した場合、いずれかの第1開口42を、搬送トレイ32によって、塞いでしまう恐れがある。このよう場合であっても、他の第1開口42によって、トレイ保持部40の上方から下方への空気の流れは確保され、糸端が給糸ボビン30の内側に導かれ、給糸ボビン30の外側に垂れ下がる糸引きを起こす可能性を低く抑えられる。
【0084】
3.他の実施形態
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本開示の糸巻取装置は、複数の糸巻取装置を並べて利用する自動ワインダに適用できる。また、本開示の糸巻取装置は、幅広い繊維を製造する繊維機械に適用できる。
【符号の説明】
【0086】
1 糸巻取装置
2 糸解舒部
3 巻取部
11 糸
12 スプライサ装置
13 クリアラ
14 ワキシング装置
15 クリーニングパイプ
16 カッタ
17 クリアラヘッド
20 パッケージ形成装置
21 綾振ドラム
22 巻取管
23 パッケージ
24 クレードル
25 回転軸
30 給糸ボビン
32 搬送トレイ
32a 基部
32b 装着部
32c 中間円柱部
37 網目部材
40 トレイ保持部
41 払い出し機構
42 第1開口
44 板状部材
45 通路パネル
46 トレイ通路
50 糸解舒補助装置
51 可動筒体
52 保持カバー部材
53 検出センサ
54 固定筒体
55 糸仮止め装置
56 第1噴射部
58 カッタ
60 上糸案内パイプ
61 軸
62 サクションマウス
70 下糸案内パイプ
71 軸
72 吸引口
80 張力付与装置
81 固定の櫛歯
82 可動の櫛歯
83 駆動部
84 第2噴射部
85 第2配管
86 第1配管
87 分岐部
88 抵抗付与部
90 ユニット制御部
91 空気供給装置
92 トレイ位置調整機構