(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147324
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】蛍光X線分析装置およびそれに用いられる治具
(51)【国際特許分類】
G01N 23/223 20060101AFI20241008BHJP
G01N 23/2204 20180101ALI20241008BHJP
【FI】
G01N23/223
G01N23/2204
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060260
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中尾 隆美
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA04
2G001CA01
2G001QA02
2G001SA02
(57)【要約】
【課題】蛍光X線分析装置において、精度良く試料を分析する。
【解決手段】蛍光X線分析装置は、X線源と、検出器と、分析部と、試料台2と、治具1とを備える。検出器は、X線源から出射した一次X線L1が分析対象の試料Sに照射されることによって、試料Sから出射する蛍光X線L2を検出する。分析部は、検出器において検出された蛍光X線L2を分析する。試料台2には、試料Sが配置される。治具1は、試料台2の上面22の上に載置され、試料Sを保持する。治具1には、貫通孔10が形成される。試料Sの分析時には、試料Sを貫通孔10を覆うように配置することが可能であり、X線源から出射された一次X線L1は貫通孔10を通過して試料に照射される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線源と、
前記X線源から出射した一次X線が分析対象の試料に照射されることによって、前記試料から出射する蛍光X線を検出する検出器と、
前記検出器において検出された蛍光X線を分析する分析部と、
前記試料を配置するための試料台と、
前記試料台の上面の上に載置され、前記試料を保持するための治具とを備え、
前記治具には、貫通孔が形成され、
前記試料の分析時には、前記試料を前記貫通孔を覆うように配置することが可能であり、前記X線源から出射された一次X線は前記貫通孔を通過して前記試料に照射される、蛍光X線分析装置。
【請求項2】
前記試料台には、開口部が形成されており、
前記試料の分析時には、前記X線源から出射された一次X線は、前記開口部と前記貫通孔とを通過して、直接試料に照射される、請求項1に記載の蛍光X線分析装置。
【請求項3】
前記治具のサイズは、前記開口部のサイズより大きい、請求項2に記載の蛍光X線分析装置。
【請求項4】
前記開口部は、前記試料台の法線方向から見たときに円形を有し、
前記治具は円板状に形成され、
前記治具の直径は、前記開口部の直径より大きい、請求項3に記載の蛍光X線分析装置。
【請求項5】
前記貫通孔のサイズは、前記試料のサイズおよび前記X線源から照射される一次X線の照射範囲に対応する、請求項1または2に記載の蛍光X線分析装置。
【請求項6】
前記治具は、平板状の保持部を含み、
前記貫通孔は、前記保持部に形成され、
前記貫通孔は、前記保持部の法線方向から見たときに円形を有し、
前記貫通孔の直径は、前記試料のサイズより小さく、前記照射範囲より大きい、請求項5に記載の蛍光X線分析装置。
【請求項7】
前記貫通孔のサイズは、1mm以上10mm以下である、請求項5に記載の蛍光X線分析装置。
【請求項8】
前記治具において前記試料を設置する部分の厚みは、10~500μmである、請求項1または2に記載の蛍光X線分析装置。
【請求項9】
前記治具の前記貫通孔の周囲は、前記分析対象の前記試料から発生する分析対象の蛍光X線と同じ波長の蛍光X線を発生させない素材で形成される、請求項1または2に記載の蛍光X線分析装置。
【請求項10】
前記素材は、透明である、請求項9に記載の蛍光X線分析装置。
【請求項11】
前記素材は、ルミラー(登録商標)を含む、請求項10に記載の蛍光X線分析装置。
【請求項12】
前記治具を設置する位置を決めるための、位置決め部をさらに含む、請求項1または2に記載の蛍光X線分析装置。
【請求項13】
X線源から出射した一次X線が試料台に配置される試料に照射されることによって、前記試料から出射する蛍光X線を分析する蛍光X線分析装置において、前記試料台の上面の上に載置され、前記試料を保持するための治具であり、
前記治具は、前記試料を保持するための保持部を含み、
前記保持部には、貫通孔が形成されており、
前記蛍光X線分析装置における前記試料の分析時には、前記試料を前記貫通孔を覆うように配置することが可能であり、前記X線源から出射された一次X線を前記貫通孔を通過して前記試料に照射することが可能である、治具。
【請求項14】
前記試料台には、開口部が形成されており、
前記試料の分析時には、前記X線源から出射された一次X線は、前記開口部と前記貫通孔とを通過して、直接試料に照射される、請求項13に記載の治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は蛍光X線分析装置およびそれに用いられる治具に関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX:Energy Dispersive X-ray Spectrometry)の用途の一つとして、宝石鑑定が知られている。宝石鑑定においては、X線源から照射された一次X線源を宝石に照射し、宝石から発生した蛍光X線を分析することにより、宝石の種類および/または産地が判別される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4398901号公報
【特許文献2】特許第4854005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、宝石は、EDXの試料台に載置するには、そのサイズが小さすぎる場合がある。このようにサイズの小さい試料を分析したい場合、特許第4398901号公報(特許文献1)に開示されるような、底部にフィルムを貼った筒状のホルダを用いることが可能である。より具体的には、底部のフィルムの上に試料を設置し、当該ホルダを試料台に載置することにより、フィルム越しに試料を分析することが可能である。
【0005】
しかしながら、フィルム越しに試料を分析した場合、試料から発生した特定の元素の蛍光X線がフィルムに吸収されてしまい、当該特定の元素の蛍光X線のピーク強度が大きく減衰し、正しく測定できない場合がある。これにより、試料の分析精度が低下するおそれがある。特に、試料が宝石の場合には、鑑定精度が低下するおそれがある。
【0006】
また、特許第4854005号公報(特許文献2)には、試料台の窓部の外周に段部を形成し、段部に嵌合する保持具を用いることにより、小さい試料を検査位置に配置する技術が開示されている。しかし、このような保持具を使用する場合、保持具の取り外しに手間がかかるおそれがある。
【0007】
本開示は、かかる課題を解決するためになされたものであり、その目的は、蛍光X線分析装置において、簡便かつ精度良く試料を分析することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、蛍光X線分析装置に関する。蛍光X線分析装置は、X線源と、検出器と、分析部と、試料台と、治具とを備える。検出器は、X線源から出射した一次X線が分析対象の試料に照射されることによって、試料から出射する蛍光X線を検出する。分析部は、検出器において検出された蛍光X線を分析する。試料台には、試料が配置される。治具は、試料台の上面の上に載置され、試料を保持する。治具には、貫通孔が形成される。試料の分析時には、試料を貫通孔を覆うように配置することが可能であり、X線源から出射された一次X線は貫通孔を通過して試料に照射される。
【0009】
本発明の他の態様は、治具に関する。治具は、X線源から出射した一次X線が試料台に配置される試料に照射されることによって、試料から出射する蛍光X線を分析する蛍光X線分析装置において、試料台の上面の上に載置され、試料を保持する。治具は、試料を保持するための保持部を含む。保持部には、貫通孔が形成されている。蛍光X線分析装置における試料の分析時には、試料を貫通孔を覆うように配置することが可能であり、X線源から出射された一次X線を貫通孔を通過して試料に照射することが可能である。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、蛍光X線分析装置において、精度良く試料を分析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る分析装置の構成を示す概略図である。
【
図2】実施形態に係る治具の使用例を示す図である。
【
図10】
図9に示した治具の断面図の、孔付近の拡大図である。
【
図13】実施形態に係る治具の別の例を示す図である。
【
図14】実施形態に係る治具のさらに別の例を示す図である。
【
図15】変形例に係る分析装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0013】
[1.蛍光X線分析装置の構成]
図1は本発明の実施の形態に従う分析装置100の構成を示す概略図である。分析装置100は、蛍光X線分析装置である。
図1の例では、分析装置100は、EDXである。分析装置100は、本体8および処理装置9を含む。
【0014】
本体8は筐体83、筐体91、試料台2および治具1を含む。筐体83は、試料台2の上面に設置される。筐体83および試料台2によって、試料室80が形成される。筐体91は、試料台2の下面に設置される。筐体91と試料台2とによって、測定室90が形成される。試料室80および測定室90は、筐体83および筐体91によって気密に囲われている。
【0015】
以下、
図1において、試料台に垂直な方向をZ軸とし、試料台の面に平行な平面をXY平面とする。一実施例において、分析装置100は、Z軸を重力方向と概ね平行となるように設置された状態で用いられる。
【0016】
試料台2には、開口部20が形成されている。試料台2には、治具1が設置される。一実施例において、開口部20を覆うように、試料台2上に治具1が載置される。治具1は、試料Sを、分析に適した位置で保持するための治具である。治具1には、X線を通過させるための貫通孔10が形成されている。分析時には、当該貫通孔10を覆うように試料Sが載置される。これにより、試料Sの測定範囲が、貫通孔10および開口部20を介して、測定室90へ露出する。一実施例において、開口部20の中心を通ってZ軸方向と平行な軸を仮想軸AXとした場合、治具1の貫通孔10の中心は仮想軸AX上に位置するように、治具1が設置される。
【0017】
測定室90には、X線管7、筐体91、シャッター93、フィルタ94、コリメータ95、駆動機構96、検出器97および撮像部98が配置される。
【0018】
X線管7および検出器97は、測定室90の壁面に設置される。X線管7は、本明細書における「X線源」の一実施例に対応する。X線管7は、熱電子を出射するフィラメントと、熱電子を所定の一次X線に変換して出射するターゲットとを有する。X線管7から出射された一次X線は、貫通孔10および開口部20を通過して、試料Sの測定範囲に照射される(
図1の一点鎖線L1参照)。試料Sから発生した二次X線(蛍光X線)は、貫通孔10および開口部20を通過して、検出器97に入射する(
図1の一点鎖線L2参照)。検出器97は、入射した蛍光X線のエネルギーおよび強度を測定する。より特定的には、X線の量は、一般に、単位時間当たりのX線光子の数で表される。X線の量は、X線の強度とも称される。X線のエネルギーは、一般に、X線の波長で表される。本明細書において、X線のエネルギーは、X線のエネルギーが所定の値を有することを強調するために、「X線のエネルギー値」とも称される場合もある。検出器97の検出結果は、典型的には、検出された蛍光X線のエネルギーと量との関係を示した蛍光X線スペクトルとして表される。X線管7から試料Sへの一次X線の光路には、シャッター93、フィルタ94およびコリメータ95がこの順で配置されている。シャッター93、フィルタ94およびコリメータ95は駆動機構96によって、スライド可能に構成されている。
【0019】
シャッター93は、鉛などのX線吸収材で形成されており、一次X線を遮蔽する必要があるときに、一次X線の光路に挿入して一次X線を遮蔽することができる。
【0020】
フィルタ94は、目的に応じて選択された金属箔によって形成されており、X線管7から発せられる一次X線のうちのバックグラウンド成分を減衰して、必要な特性X線のS/N比を向上させる一次X線フィルタである。一例では、フィルタ94は、互いに異なる種類の金属で形成された複数枚のフィルタにより構成されており、目的に応じて選択されたフィルタが駆動機構96によって一次X線の光路に挿入される。フィルタ94を通過した一次X線は、コリメータ95へ入光する。
【0021】
コリメータ95は、中央に円形状の開口を有し、試料Sを照射する一次X線のビームの大きさを決定する。コリメータ95は、鉛、黄銅などのX線吸収材により形成される。一例では、コリメータ95は、例えば、開口径が互いに異なる複数枚のコリメータにより構成されており、目的に応じて選択されたコリメータが駆動機構96によって一次X線ビームライン上に挿入される。コリメータ95を通過した一次X線ビームは、試料Sへ照射される。
【0022】
撮像部98は、測定室90の下部に設置されている。撮像部98は、試料台2に形成された開口部20を通して試料Sの測定範囲を撮像する。撮像部98は、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)またはCCD(Charge Coupled Device)など、複数の画素に区画された撮像素子を含んで構成される。蛍光X線分析を行なう測定者は、測定前において、この撮像部98により取得された画像を図示しない表示装置に表示させ、この画像を見ながら試料Sの測定範囲を調整することができる。
【0023】
処理装置9は、本開示における「分析部」の一実施例に対応する。処理装置9は、演算処理部であるCPU(Central Processing Unit)を含んで構成される。処理装置9には、例えばパーソナルコンピュータなどを利用することができる。処理装置9にはX線管7、検出器97および撮像部98が接続される。
【0024】
処理装置9は、本体8による測定を制御する。具体的には、処理装置9は、X線管7における管電圧、管電流および照射時間などを制御するとともに、シャッター93、フィルタ94およびコリメータ95の各々を駆動する。
【0025】
処理装置9は、測定時、検出器97により検出された蛍光X線のスペクトルを取得する。処理装置9は、検出器97で検出された蛍光X線のスペクトルに基づいて各元素の定量分析を行なう。蛍光X線のスペクトルには、各元素に固有のエネルギー位置に蛍光X線のピークが現れる。蛍光X線のスペクトルのピーク位置とピーク強度とを調べることにより、当該蛍光X線のエネルギーと量とが分かるので、試料Sに含まれる元素の種類および量を特定することができる。
【0026】
[2.従来のX線分析]
EDXは、宝石鑑定の場でも有用な装置である。具体的には、宝石に一次X線を照射し、発生する蛍光X線を分析することにより、宝石の組成を明らかにできる。これにより、宝石の種類(たとえば、ルビー、エメラルド等)および産地を判別できる。当該判別は、宝石の価値判定において非常に重要である。
【0027】
一方で、宝石は、サイズが比較的小さい場合も多い。蛍光X線分析装置において、試料台の開口部よりもサイズが小さい試料は、直接試料台に設置することができない。
【0028】
このようにサイズの小さい試料を分析するために、特許文献1に開示されるような、底部に薄いフィルムを貼った筒状のホルダが用いられていた。より具体的には、当該ホルダは、試料台に載置できるように、試料台の開口部より大きい外径を有するように形成されている。これにより、ホルダの底部にポリプロピレンフィルム(厚さ5μm)またはプロレンフィルム(厚さ4μm)を張り、これらのフィルムの上に試料を載置した状態でホルダを試料台の開口部を覆うように載置すれば、フィルム越しに試料を分析することが可能である。
【0029】
しかしながら、これらのフィルムを介してX線分析を行なうと、フッ素、ナトリウム、マグネシウム等の原子番号の小さな元素のピーク強度が大きく(たとえば1/10程度)減衰してしまう。よって、試料にこれらの元素が含まれていても、検出できなかったり、組成全体に定量誤差が生じてしまったりして、正確に分析が行なえない可能性がある。
【0030】
また、試料をこれらのフィルム上に適切に配置しても、分析前または分析中に試料が動いてしまうことにより、試料の配置がずれてしまい、正確に分析が行えない場合もある。特に、フィルムが試料の重みや、測定室の真空引きにより、下方にたわんでしまった場合、試料は動きやすくなる。また、真空引き時の風により、試料が動いてしまうこともある。さらに、複数の試料を配置可能なターレットと呼ばれる円盤に配置し、当該円板を回転させながら連続分析を行なう場合、ターレットの回転に伴い試料が動いてしまうこともある。以上のように試料が動いてしまった結果、試料が分析に不適切な位置に移動してしまったり、分析に不適切な角度になってしまったりする。試料が不適切に配置されていることに気づかずに分析を行なった場合、充分な精度のデータが得られない可能性がある。
【0031】
また、分析を開始する前に試料が不適切に配置されていることに気づいた場合も、たとえば、真空状態を通常状態に戻し、フィルム上の試料の配置を修正し、必要に応じてフィルムのたわみも修正し、再び真空引きを行なうというような煩雑な作業が必要になる。また、フィルム上の試料の配置を修正しても、再度試料が動いてしまう可能性もある。
【0032】
このようにフィルム越しの分析は分析精度の低下のおそれがあり、加えて、試料の配置の修正のためにタイムロスが生じる場合がある。
【0033】
また、特許文献2には、試料台の窓部の外周に段部を形成し、段部に嵌合する保持具を用いて、小さい試料を試料台に配置する技術が開示されている。しかしながら、このような保持具を使用する場合、試料台から保持具を取り外す作業に手間がかかるおそれがある。
【0034】
[3.実施形態に係る治具]
そこで、本実施形態に係る分析装置100においては、小さい孔があいた治具上に試料を配置し、当該治具を試料台に載置することにより、当該治具に形成された貫通孔を通して試料のX線分析を行なう。これにより、試料が分析前および分析中に動いてしまう可能性を低減し、かつ、フィルムによる蛍光X線の吸収も避けることができる。また、試料台から治具を取り外す作業も容易である。したがって、簡便かつ精度良く分析を行なうことが可能である。
【0035】
図2は実施形態に係る治具を説明するための断面図であって、
図1の治具1付近の構造の断面図である。
図3~
図12は、治具1を様々な方法で記載した図である。具体的には、
図3~
図8は、実施形態に係る治具の正面図、背面図、右側面図、左側面図、上面図および底面図である。
図9は、実施形態に係る治具の断面図である。
図10は、
図9に示した治具の断面図の、孔付近の拡大図である。
図11は、実施形態に係る治具の斜視図である。
図12は、
図11に試料Sを載せる位置を記載した図である。
【0036】
以下、
図2~
図12中の、主に
図2、
図12を参照して、治具1について説明する。治具1は、試料の一部を支持することにより、試料を保持するための保持治具である。治具1は、試料を保持するための保持部19を含む。保持部19は、典型的には平板状に形成されている。具体的には、保持部19は、下面11と上面12とを有し、貫通孔10が形成されている。治具1は、分析装置100における試料Sの分析時には、試料Sを貫通孔10を覆うように配置することが可能であるように形成される。よって、X線管7から出射された一次X線は貫通孔10を通過して直接試料Sに照射される(L1)。試料Sから出射された蛍光X線は貫通孔10を通過して直接検出器97に到達する(L2)。
【0037】
なお、本明細書において、X線が「直接」照射される/到達するとは、X線が分析装置100中を構成する物体を透過せずに照射される/到達することを意味する。よって、たとえば、X線が、貫通孔10または他の部材(たとえばコリメータ等の絞り部材)の孔を通過して照射される/到達する場合も、「直接」照射される/到達するという表現に含まれるとする。また、貫通孔10を通過するとは、より特定的には、貫通孔10を完全に通過する(通り過ぎる)ことを示す。
【0038】
治具1は、試料台2に設置される。試料台2は、上面22と下面21とを有し、開口部20が形成される。一実施例において、治具1は、試料台2の上面22の上、かつ、試料台2の開口部20の上方に載置される。これにより、分析時の試料Sおよび治具1の位置を容易に固定することができる。
図2の例において、X線管7から出射された一次X線は試料台2の上面22に直接載置された治具1の開口部20と貫通孔10とを通過して直接試料Sに照射される(L1)。試料Sから出射された蛍光X線は貫通孔10と開口部20とを通過して直接検出器97に到達する(L2)。
【0039】
一実施例において、分析装置100から照射される一次X線の照射範囲は略円形である。これに対応して、開口部20は、試料台2の法線方向から見たときに円形を有するように形成される。また、治具1は、円板状に形成される。貫通孔10は、保持部19の法線方向から見たときに円形を有するように形成される。ただし、開口部20、治具1および貫通孔10の形状はこれに限定されない。たとえば、
図13に示すように、治具1Aの保持部19Aおよび貫通孔10Aは矩形であってもよい。また、たとえば、治具1は、試料Sの位置を固定するための構造(たとえば突起物)を含んでもよい。
【0040】
典型的には、治具1のサイズ(
図2のRj)は、開口部20のサイズ(
図2のRo)より大きい。より特定的には、治具1の最大寸法は、開口部20の最小寸法より大きい。これにより、治具1を開口部20を覆うように(開口部20の上方に)載置できる。開口部20および治具1が円形の形状を有する場合、治具1の直径は、開口部20の直径より大きい。これにより、治具1を開口部20を覆うように載置することが容易であり、かつ、開口部20から誤って治具1が測定室90内に落下する可能性を無くすことができる。
【0041】
貫通孔10のサイズ(
図2のRh)は、測定対象の試料Sのサイズ(
図2のLs)およびX線管7から出射される一次X線の照射範囲に対応して選択される。換言すると、測定対象の試料Sのサイズおよび照射範囲に応じたサイズの貫通孔10を有する治具1が分析に用いられる。
【0042】
具体的には、試料Sのサイズより小さい貫通孔10が形成された治具1が分析に用いられる。これにより、試料Sが貫通孔10を覆うように配置できる。
【0043】
また、X線管7から出射された一次X線は、設定された照射範囲の外側にも量は少ないが照射される。よって、治具1に入射する一次X線の量を低減するために、照射範囲より大きいサイズの貫通孔10が形成された治具1が用いられることが好ましい。また、試料から発生した蛍光X線が治具1に入射することなく検出器97に到達するためにも、照射範囲より大きいサイズの貫通孔10が形成された治具1が用いられることが好ましい。
【0044】
一実施例において、分析装置100においては、試料Sのサイズ(より特定的には、試料Sの測定範囲のサイズ)に基づいて、所定の直径を有する円形の照射範囲が設定される。そして、当該照射範囲に対応したサイズの円形の貫通孔10を有する治具1が用いられる。この場合、貫通孔の直径は、試料Sのサイズより小さく、前記照射範囲より大きい。
【0045】
貫通孔のサイズは、これに限定されるものではないが、たとえば約1mm以上約10mm以下であり、より特定的には、約2mm以上約8mm以下である。X線照射範囲が直径3mmの場合、たとえば直径5mmの貫通孔10を有する治具1(
図3~
図12)が使用される。X線照射範囲が直径3mmの場合、たとえば直径5mmの貫通孔10Bを有する治具1B(
図14)が使用される。なお、
図3~
図12に例示されている治具の厚みは、100μmである。
【0046】
治具1の厚みは、所定以上の剛性を有し、かつ、X線分析に問題がない厚みである。分析装置100は、通常、試料台2の開口部20を覆うように比較的サイズの大きい試料を載置して分析することが可能なように構成される。これにより、分析装置100は、試料台2の開口部20の近傍(わずかに上方)に位置する試料に対して一次X線を照射し、当該開口部20の近傍の位置から発生する蛍光X線を検出できるように構成されている。よって、治具1の厚みが厚すぎると、試料Sの位置が開口部20から離れすぎてしまい、適切に分析が行なえない可能性がある。たとえば、検出される蛍光X線の強度が低減してしまう可能性がある。一方、治具1の厚みが薄すぎると、十分な剛性が得られず、下方に撓んでしまうという問題がある。よって、治具1の厚みは、素材に応じて、所定以上の剛性を有するように適切に決定される。これにより、所定値以上の重みを有する試料(たとえば宝石)を載せても、当該試料の位置を、試料台2の開口部20の近傍に保持することができる。治具1の厚みは、これに限定されるものではないが、たとえば、約10~約500μmであり、好ましくは、約50~約150μmである。なお、治具1の厚みが一様でない場合、上記した治具1の厚みの説明は、「治具1において試料Sを設置する部分の厚み」の説明に該当する。
【0047】
治具1の素材は、上記したように、所定の厚みで所望の剛性が得られる素材であることが好ましい。また、治具1の素材は、分析対象の試料から発生する分析対象の蛍光X線と同じ波長の蛍光X線を発生させない素材で形成されることが好ましい。これにより、試料Sに向けて照射された一次X線の一部が治具1に入射してしまい、治具1由来の蛍光X線が検出器97に検出されてしまっても、分析対象の蛍光X線とは区別できる。よって、試料の分析に支障がでない。たとえば、治具1の素材は、色が透明な素材である。色が透明な素材とは、より特定的には、可視光の透過率が所定値以上の素材である。色が透明な素材は、有色の素材よりも、所定の波長の光の透過率が高いので、治具1に所定の波長の光が吸収され、蛍光X線が発生し、試料Sの分析に支障が出る可能性を低減できる。なお、治具1が複数の素材により形成される場合、少なくとも貫通孔10の周囲の素材は、測定対象の試料から発生する測定対象の蛍光X線と同じ波長の蛍光X線を発生させない素材で形成されることが好ましい。
【0048】
所定以上の剛性を有し、分析に支障がない治具1は、たとえば、厚さ100μmの円盤状のルミラー(登録商標)フィルムである。たとえば、ガラス試料について、当該ルミラーフィルムを用いて測定した場合と、ルミラーフィルムを用いずに測定した場合とでは、分析のプロファイルおよび定量値等に有意差は見られない。
【0049】
[4.小括]
以上により、本実施形態に係る治具1を用いれば、治具1に保持された試料Sに対し、X線管7から発生した一次X線を試料Sに直接照射し、試料Sから発生した蛍光X線を検出器97において直接検出することが可能である。
【0050】
これにより、フィルム等による、蛍光X線の特定の波長のピーク強度の減衰を抑制できる。よって、試料に、原子番号9の元素であるフッ素、原子番号11の元素であるナトリウム、原子番号12の元素であるマグネシウム等が含まれる場合も、これらの元素のピーク強度を減衰させずに、測定することが可能である。
【0051】
上記したように、治具1は、開口部20より小さいサイズの試料Sであっても、試料台2に対して適切な高さで、換言すると、試料台2に対して略密着した状態で、試料を配置し、適切に分析することができる。しかし、治具1に対し、開口部20より大きいサイズの試料Sを設置した場合も、適切に測定できることは言うまでもない。
【0052】
一方、本実施形態に係る治具1を用いた場合、真空状態(約5~7Pa)でも、試料が治具1から外れて落下する可能性は非常に低い。これにより、分析中に試料Sが落下し、適切な分析が行なえない可能性、および、分析装置100が故障する可能性が低減できる。また、治具1を用いれば、粘土の付着および取り外しの作業が必要ないので、試料Sを傷つける可能性も低減できる。さらに、粘土由来の蛍光X線が検出される可能性もなくすことができる。
【0053】
また、治具1においては、その剛性から大きく撓むことがないので、試料Sが動きにくい。また、治具1においては、貫通孔10のエッジも、試料Sを動きにくする要因の一つとなっている。たとえば、貫通孔10のエッジと、試料Sの表面の凸凹がひっかかることによって、試料Sは動きにくくなる。分析前および分析中に試料Sの配置がずれる可能性を低減することができる。これにより、配置の修正のためのタイムロスを抑制し、かつ、試料を精度良く分析することができる。
【0054】
また、治具1をEDX(島津製作所製「EDX-7200/8100」等)のターレットに設置することにより、複数の試料の連続測定にも適用することができる。この場合、治具1の外形およびサイズを、ターレットの各試料を設置する部分に設けられた外枠(ターレットガイド)の内側の形状およびサイズに対応するように形成することが好ましい。これにより、ターレットガイドに対する治具1の位置が固定されるので、試料を適切な位置で分析することがさらに容易になる。
【0055】
図1~
図2に例示したように、本実施形態においては、試料台2の上面22にプレート上の治具1を載せているだけなので、特許文献2に開示される試料台の窓部に保持具を嵌合する構成に比べ、治具の取り外しが容易である。これにより、鉱物の測定などで治具1が汚れた場合に、新しい治具1に容易に取り替えることができる。
【0056】
一般に、治具を試料台2の上面22の上に載置する場合、一次X線が照射される試料Sの、試料台2の上面22からの高さが変化することにより、定量値の誤差が生じることが懸念される。しかしながら、実際には、100μmのルミラーフィルムを用いた場合、定量誤差およびバックグラウンドの誤差は生じないことが確認された。また、治具を試料台2の上面22の上に載置する場合、測定室90内を真空状態にする場合、および/または、所定の気体により置換する場合において、治具1の位置のずれが生じることが懸念される。しかしながら、実際には、治具1の位置のずれは生じず、問題なく試料Sの測定が行なわれることが確認された。
【0057】
以上のように、治具1を用いることにより、簡便かつ精度良く試料を蛍光X線分析することが可能である。
【0058】
[5.変形例に係る分析装置]
上記したように、蛍光X線分析において、試料Sを適切な位置に配置することは、試料を精度良く分析するために重要である。変形例に係る分析装置100Cにおいては、治具1を適切な位置に載置するための位置決め部を用いることにより、試料Sを適切な位置に配置することをさらに容易にする。
【0059】
図15は、変形例に係る分析装置100Cの構成を示す概略図である。
図16は、
図15に示す位置決め部を説明するための図である。
図15、
図16を参照して、分析装置100Cは、実施形態に係る分析装置100の構成に加えて、位置決め部6を含む。
【0060】
位置決め部6は、治具1を分析に適切な位置に配置するために用いられる。ユーザは、手動で、または、試料Sの自動設置装置等の機器を用いて、位置決め部6をガイドとして、治具1を適切な位置に容易に配置することが可能である。これにより、治具1上の試料Sも適切な位置に配置されるので、試料Sを容易に精度良く分析することができる。
【0061】
位置決め部6は、
図16の例では、治具1の外周部に対応するサイズを有する壁である。壁の高さおよび幅は、壁の内部に治具1を設置することが容易である高さおよび幅に形成される。ただし、位置決め部6の構造は、
図16の例に限定されず、たとえば、外周部の一部に接するように設けられた突起であってもよい。たとえば治具1が円形である場合、治具1の外周に沿って所定の間隔で設けられた複数の突起であってもよい。また位置決め部6は、試料台2に描かれた線状のマーキングであってもよい。この場合、分析者は、当該線に合わせて治具1を設置することができる。
【0062】
以上のように、変形例に係る分析装置100Cにおいては、実施形態に係る分析装置100と同様の効果を奏することに加えて、試料Sが設置された治具1を適切な位置に配置することがより容易になる。これにより、分析者は、さらに容易に、試料を精度良く分析することが可能になる。
【0063】
[態様]
上述した複数の例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0064】
(第1項)一態様に係る蛍光X線分析装置は、X線源と、検出器と、分析部と、試料台と、治具とを備える。検出器は、X線源から出射した一次X線が分析対象の試料に照射されることによって、試料から出射する蛍光X線を検出する。分析部は、検出器において検出された蛍光X線を分析する。試料台には、試料が配置される。治具は、試料台の上面の上に載置され、試料を保持する。治具には、貫通孔が形成される。試料の分析時には、試料を貫通孔を覆うように配置することが可能であり、X線源から出射された一次X線は貫通孔を通過して試料に照射される。
【0065】
第1項に記載の蛍光X線分析装置によれば、X線源から出射した一次X線を、治具の貫通孔を通過させて試料に直接照射することができる。また、試料から発生した蛍光X線を、貫通孔を通過させて検出器に直接入射することができる。これにより、フィルム等により蛍光X線の特定の波長が減衰することがない。また、フィルムの撓み等が原因で試料が動いて、分析に不適切な位置にずれる可能性も低減される。さらに、上記治具は、試料台からの取り外しが容易である。よって、蛍光X線分析装置において、簡便かつ精度良く試料を分析することができる。
【0066】
(第2項)第1項に記載の蛍光X線分析装置において、試料台には、開口部が形成されている。分析時には、X線源から出射された一次X線は、開口部と貫通孔とを通過して、直接試料に照射される。
【0067】
第2項に記載の蛍光X線分析装置によれば、一次X線および蛍光X線を試料台に形成された開口部に通過させることにより、治具上に保持された試料の分析が可能である。これにより、容易に、精度良く試料を分析することが可能である。
【0068】
(第3項)第1または2項に記載の蛍光X線分析装置において、治具のサイズは、開口部のサイズより大きい。
【0069】
第3項に記載の蛍光X線分析装置によれば、試料台の開口部上方に治具を設置することが容易である。よって、さらに容易に、精度良く試料を分析することが可能である。
【0070】
(第4項)第3項に記載の蛍光X線分析装置において、開口部は、試料台の法線方向から見たときに円形を有する。治具は円板状に形成される。治具の直径は、開口部の直径より大きい。
【0071】
第4項に記載の蛍光X線分析装置によれば、所定の直径を有する円形の一次X線の照射範囲に対応して、開口部および治具を機能上必要充分な直径の円形に形成できる。また、治具の直径が開口部の直径より大きいことから、治具が開口部から落下する可能性を無くすことができる。
【0072】
(第5項)第1または2項に記載の蛍光X線分析装置において、貫通孔のサイズは、試料のサイズおよびX線源から照射される一次X線の照射範囲に対応する。
【0073】
第5項に記載の蛍光X線分析装置によれば、試料のサイズより一回り大きく、かつ、X線の照射範囲より所定値だけ大きい貫通孔を有する治具を用いることができる。これにより、試料を安定的に保持し、試料の分析可能範囲を最大限に活かした分析が可能である。
【0074】
(第6項)第5項に記載の蛍光X線分析装置は、治具は、平板状の保持部を含む。貫通孔は、保持部に形成される。貫通孔は、保持部の法線方向から見たときに円形を有する。貫通孔の直径は、試料のサイズより小さく、照射範囲より大きい。
【0075】
第6項に記載の蛍光X線分析装置によれば、所定の直径を有する円形の一次X線の照射範囲に対応して、貫通孔を機能上必要充分な直径の円形に形成できる。貫通孔の直径は試料のサイズより小さいことから、試料が貫通孔から落下する可能性は低い。貫通孔の直径が一次X線の照射範囲より大きいことから、治具に一次X線および蛍光X線が入射する可能性を低減できる。
【0076】
(第7項)第5項に記載の蛍光X線分析装置において、貫通孔のサイズは、1mm以上10mm以下である。
【0077】
第7項に記載の蛍光X線分析装置によれば、所定のサイズを有する一次X線の照射範囲に対応して、最適なサイズの貫通孔を有する治具を用いることができる。
【0078】
(第8項)第1または2項に記載の蛍光X線分析装置において、治具において試料を設置する部分の厚みは、10~500μmである。
【0079】
第8項に記載の蛍光X線分析装置によれば、試料の位置を、試料台の開口部の近傍に保持することができる。
【0080】
(第9項)第1または2項に記載の蛍光X線分析装置において、治具の貫通孔の周囲は、分析対象の試料から発生する分析対象の蛍光X線と同じ波長の蛍光X線を発生させない素材で形成される。
【0081】
第9項に記載の蛍光X線分析装置によれば、試料に向けて照射された一次X線の一部が治具に入射してしまい、治具由来の蛍光X線が検出器に検出されてしまっても、分析対象の蛍光X線とは区別できる。よって、試料の分析に支障が出にくい。
【0082】
(第10項)第9項に記載の蛍光X線分析装置において、素材は透明である。
第10項に記載の蛍光X線分析装置は、有色の素材で形成された治具を用いる場合よりも、所定の波長の光の透過率が高いので治具に所定の波長の光が吸収され、蛍光X線が発生し、試料の分析に支障が出る可能性を低減できる。
【0083】
(第11項)第10項に記載の蛍光X線分析装置は、素材は、ルミラー(登録商標)を含む。
【0084】
ルミラーは、透明度が高く、試料(宝石等)から発生する分析対象の蛍光X線と同じ波長の蛍光X線を発生する可能性が低く、剛性も高い。よって、第11項に記載の蛍光X線分析装置によれば、適切な分析を行なうことが容易である。
【0085】
(第12項)第1または2項に記載の蛍光X線分析装置は、治具を設置する位置を決めるための、位置決め部をさらに含む。
【0086】
第1または2項に記載の蛍光X線分析装置によれば、第1項に係る蛍光分析装置と同様の効果を奏することに加えて、試料が設置された治具を適切な位置に配置することがより容易である。
【0087】
(第13項)他の態様に係る治具は、X線源から出射した一次X線が試料台に配置される試料に照射されることによって、試料から出射する蛍光X線を分析する蛍光X線分析装置において、試料台の上面の上に載置され、試料を保持するための治具である。治具は、試料を保持するための保持部を含む。保持部には、貫通孔が形成されている。蛍光X線分析装置における試料の分析時には、試料を貫通孔を覆うように配置することが可能であり、X線源から出射された一次X線を貫通孔を通過して試料に照射することが可能である。
【0088】
第13項に記載の治具によれば、X線源から出射した一次X線を、治具の貫通孔を通過させて試料に直接照射することができる。また、試料から発生した蛍光X線を、貫通孔を通過させて検出器に直接入射することができる。これにより、フィルム等により蛍光X線の特定の波長が減衰することがない。また、フィルムの撓み等が原因で試料が動いて、分析に不適切な位置にずれる可能性も低減される。さらに、上記治具は、試料台からの取り外しが容易である。よって、蛍光X線分析装置において、簡便かつ精度良く試料を分析することができる。
【0089】
(第14項)第13項に治具を用いる蛍光X線分析装置の試料台には、開口部が形成されている。試料の分析時には、X線源から出射された一次X線は、開口部と貫通孔とを通過して、直接試料に照射される。
【0090】
第14項に記載の治具によれば、一次X線および蛍光X線を試料台に形成された開口部に通過させることにより、治具上に保持された試料の分析が可能である。これにより、容易に、精度良く試料を分析することが可能である。
【0091】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0092】
1 治具、2 試料台、6 位置決め部、7 X線管、8 本体、9 処理装置、10,10A,10B 貫通孔、11,21 下面、12,22 上面、19,19A 保持部、20 開口部、80 試料室、83,91 筐体、90 測定室、93 シャッター、94 フィルタ、95 コリメータ、96 駆動機構、97 検出器、98 撮像部、100,100C 分析装置、S 試料。