(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147335
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】成形品の硬度測定システム及び方法
(51)【国際特許分類】
G01M 99/00 20110101AFI20241008BHJP
B25J 15/08 20060101ALI20241008BHJP
B25J 9/06 20060101ALN20241008BHJP
【FI】
G01M99/00 Z
B25J15/08 C
B25J9/06 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060283
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000141543
【氏名又は名称】株式会社菊水製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(74)【代理人】
【識別番号】100148910
【弁理士】
【氏名又は名称】宮澤 岳志
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 宏
【テーマコード(参考)】
2G024
3C707
【Fターム(参考)】
2G024AD39
2G024BA13
2G024CA18
2G024CA23
2G024DA01
2G024FA06
3C707AS14
3C707BS15
3C707DS02
3C707ES03
3C707ET08
3C707EU04
3C707EU05
3C707HS04
3C707HS27
(57)【要約】
【課題】成形品の硬度及び硬度以外の特性の測定に要するタクトタイムをより短縮する。
【解決手段】爪部材を介して対象の成形品を把持できるグリッパと、前記グリッパにより把持した成形品を破壊せずに同成形品の硬度以外の特性を測定し、引き続きグリッパにより同成形品を把持したままでこれに力を加えて同成形品を破壊に至らしめ同成形品の硬度を測定する制御装置とを具備する成形品の硬度測定システムを構成した。本システムにより、成形品の硬度及び硬度以外の特性をともに測定でき、ピックアップアンドプレースの回数が削減され、測定に要するタクトタイムを短縮できる。成形品についての複数の特性を単一の機器で測定することから、測定用機器が占有する場所をより縮小できる。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
爪部材を介して対象の成形品を把持できるグリッパと、
前記グリッパにより把持した成形品を破壊せずに同成形品の硬度以外の特性を測定し、引き続きグリッパにより同成形品を把持したままでこれに力を加えて同成形品を破壊に至らしめ同成形品の硬度を測定する制御装置と
を具備する成形品の硬度測定システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記グリッパにより把持した成形品の外寸を測定し、それに続いてグリッパにより同成形品を把持したままで破壊に至らしめ同成形品の硬度を測定する請求項1記載の硬度測定システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記グリッパにより把持した成形品を破壊に至らしめるときに爪部材を駆動するモータに流れる電流の大きさに基づき、同成形品の硬度を推定する請求項1記載の硬度測定システム。
【請求項4】
対象の成形品が、粉体圧縮成形機により粉体を圧縮成形してなるものである請求項1記載の硬度測定システム。
【請求項5】
爪部材を介して成形品を把持できるグリッパにより把持した対象の成形品を破壊せずに同成形品の硬度以外の特性を測定するステップと、
前記ステップに引き続き前記グリッパにより前記成形品を把持したままでこれに力を加えて同成形品を破壊に至らしめ同成形品の硬度を測定するステップと
を具備する成形品の硬度測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象の成形品の硬度及び硬度以外の特性を測定するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回転盤のテーブルに臼孔を設け、各臼孔の上下に上杵及び下杵をそれぞれ摺動可能に保持させておき、回転盤及び杵を共に水平回転させて、上杵及び下杵の対が上ロール及び下ロールの間を通過する際に臼孔内に充填した粉体を圧縮して成形品を得る回転式の粉体圧縮成形機(又は、打錠機。例えば、下記特許文献1を参照)が公知である。この種の成形機は、医薬品の錠剤、食品、電子部品等の製造に好適に使用される。
【0003】
現場では、成形品の寸法、重量、組成、硬度等の特性を随時検査して異常の有無を確認することが求められる。一般的には、大量生産する成形品の中から複数個をサンプリングし、その特性を測定することで成形品の品質を管理する。対象の成形品のピックアップには、グリッパ(又は、ハンド、チャック。例えば、下記特許文献2を参照)を備えたロボットアーム等がしばしば用いられる。
【0004】
成形品の硬度の測定は、破壊検査により行う。成形品が錠剤である場合、対象の錠剤を二枚の加圧板に挟み、一方の加圧板を他方の加圧板に対し相対的に一定速度で動かして、錠剤が破壊される直前の力を計測する(例えば、下記特許文献3及び下記非特許文献1を参照)。なお、この測定法により得られる硬度は、材料科学等の分野における硬度の定義(小形のプローブによる貫通や押し込みに対する表面の抵抗)とは合致しない。硬度測定の際に成形品に接する加圧板は、対象となる成形品の大きさや形状に応じて交換する必要がある(そのような測定用機器が多い)。
【0005】
また、成形品の硬度及び硬度以外の特性を測定するにあたっては、各種の測定用機器を配置した複数の場所の間で成形品を運搬することになる。その運搬の都度、ロボットアーム等により対象の成形品を把持して持ち上げ、次の場所まで移動させ、そこで成形品を降ろして手放すピックアップアンドプレースが発生する。それ故、成形品の複数の特性の検査にタクトタイムを要している。加えて、複数の特性を測定するためにそれぞれの測定用機器を配する必要上、大きな場所を占有することになる、
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-049516号公報
【特許文献2】特開2019-107739号公報
【特許文献3】特許第2771792号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】“錠剤硬度測定法”、[online]、独立行政法人医薬品医療機器総合機構、[令和5年2月1日検索]、インターネット<URL:https://www.pmda.go.jp/files/000229668.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、成形品の硬度及び硬度以外の特性の測定に要するタクトタイムをより短縮することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、爪部材を介して対象の成形品を把持できるグリッパと、前記グリッパにより把持した成形品を破壊せずに同成形品の硬度以外の特性を測定し、引き続きグリッパにより同成形品を把持したままでこれに力を加えて同成形品を破壊に至らしめ同成形品の硬度を測定する制御装置とを具備する成形品の硬度測定システムを構成した。
【0010】
グリッパにより成形品を把持して運搬するロボットアーム等は通常、成形品の破壊を伴う硬度の測定を行うことはない。対して、本発明に係るシステムでは、ロボットアーム等において、対象の成形品の硬度以外の特性を測定し、さらにその成形品を把持したまま破壊検査に移行して成形品の硬度を測定する。本発明によれば、ピックアップアンドプレースの回数を削減して、成形品の特性の測定に要するタクトタイムをより短縮することができる。
【0011】
典型的には、前記制御装置が、前記グリッパにより把持した成形品の外寸を測定し、それに続いてグリッパにより同成形品を把持したままで破壊に至らしめ同成形品の硬度を測定する。
【0012】
前記制御装置は、前記グリッパにより把持した成形品を破壊に至らしめるときに爪部材を駆動するモータに流れる電流の大きさに基づき、同成形品の硬度を推定する。
【0013】
対象の成形品は、例えば、粉体圧縮成形機により粉体を圧縮成形してなる。ここで、粉体とは、微小個体の集合体であり、いわゆる顆粒などの粒体の集合体と、粒体より小なる形状の粉末の集合体とを含む概念である。
【0014】
本発明に係る成形品の硬度測定方法は、爪部材を介して成形品を把持できるグリッパにより把持した対象の成形品を破壊せずに同成形品の硬度以外の特性を測定するステップと、前記ステップに引き続き前記グリッパにより前記成形品を把持したままでこれに力を加えて同成形品を破壊に至らしめ同成形品の硬度を測定するステップとを具備する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、成形品の硬度及び硬度以外の特性の測定に要するタクトタイムをより短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態における回転式粉体圧縮成形機の側断面図。
【
図2】同回転式粉体圧縮成形機の回転盤を示す平面図。
【
図3】同回転式粉体圧縮成形機の回転盤の回転に追随する杵の上下運動を示す展開図。
【
図4】同実施形態における成形品の搬送装置及びロボットアームを示す平面図。
【
図5】同実施形態におけるグリッパを有するロボットアーム及びこれが把持する成形品を示す斜視図。
【
図6】同ロボットアームのグリッパの爪部材及び成形品を示す平面図。
【
図7】同実施形態の硬度測定システムのハードウェア資源構成図。
【
図8】同硬度測定システムによる成形品の諸元の測定の手順例を示すフロー図。
【
図9】同実施形態におけるロボットアームのグリッパのモータを流れる電流の推移を例示する図。
【
図10】同ロボットアームのグリッパのモータを流れる電流の大きさと成形品を把持する力の大きさとの関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。はじめに、粉体を圧縮して成形品Pを製造する回転式粉体圧縮成形機Aの概要を述べる。
図1に示すように、本成形機Aのフレーム1内には、回転軸となる立シャフト2を設立し、その立シャフト2の上部に接続部21を介して回転盤3を取り付けている。
【0018】
回転盤3は、立シャフト2の軸回りに水平回転、即ち自転する。回転盤3は、テーブル(臼ディスク)31と、上杵保持部32と、下杵保持部33とからなる。
図2に示すように、テーブル31は略円板状をなしており、その外周部に回転方向に沿って所定間隔で複数の臼孔4を設けてある。臼孔4は、テーブル31を上下方向に貫通している。テーブル31は、複数のプレートに分割するものでもよい。また、テーブル31自体に直接臼孔4を穿ち形成するのではなく、テーブル31とは別体をなしテーブル31に対して着脱可能な複数個の臼部材をテーブル31に装着し、それら臼部材の各々に上下方向に貫通した臼孔を穿っている構成としてもよい。
【0019】
各臼孔4の上下には、上杵5及び下杵6を配置する。上杵5及び下杵6は、上杵保持部32及び下杵保持部33により、それぞれが個別に臼孔4に対して上下方向に摺動可能であるように保持させる。上杵5の杵先53は、臼孔4に対して出入りする。下杵6の杵先63は、常時臼孔4に挿入してある。上杵5及び下杵6は、回転盤3及び臼孔4と共に立シャフト2の軸回りに水平回転、即ち公転する。
【0020】
立シャフト2の下端側には、ウォームホイール7を取り付けている。ウォームホイール7には、ウォームギア10が噛合する。ウォームギア10は、モータ8により駆動されるギア軸9に固定している。モータ8が出力する駆動力は、ベルト11によってギア軸9に伝わり、ウォームギア10、ウォームホイール7を介して立シャフト2ひいては回転盤3及び杵5、6を回転駆動する。回転盤3及び杵5、6の回転角度及び回転速度は、ロータリエンコーダ等の角位置センサを介して検出できる。
【0021】
圧縮成形品P、例えば医薬品の錠剤等の原材料となる粉体は、粉体供給装置(図示せず)からホッパ19に供給され、ホッパ19からフィードシューXに供給される。ホッパ19は、成形機Aに対して着脱可能である。そして、粉体をフィードシューXから各臼孔4に充填する。フィードシューXの種類には、攪拌フィードシューとオープンフィードシューがあり、そのうちの何れを採用しても構わない。
【0022】
図2及び
図3に示しているように、杵5、6の立シャフト2の軸回りの公転軌道上には、杵5、6を挟むようにして上下に対をなす予圧上ロール12及び予圧下ロール13、本圧上ロール14及び本圧下ロール15がある。予圧上ロール12及び予圧下ロール13、並びに本圧上ロール14及び本圧下ロール15は、臼孔4内に充填された粉体を杵先53、63の先端面により上下から圧縮するべく、上下両杵5、6を互いに接近させる方向に付勢する。
【0023】
上杵5、下杵6はそれぞれ、ロール12、13、14、15によって押圧される頭部51、61と、この頭部51、61よりも細径な胴部52、62とを有する。回転盤3の上杵保持部32は、上杵5の胴部52を上下に摺動可能に保持し、下杵保持部33は、下杵6の胴部62を上下に摺動可能に保持する。胴部52、62の先端部位53、63は、臼孔4内に挿入可能であるように、それ以外の部位と比べて一層細く、臼孔4の内径に略等しい直径である。杵5、6の公転により、ロール12、13、14、15は杵5、6の頭部51、61に接近し、頭部51、61に乗り上げるようにして接触する。さらに、ロール12、13、14、15は上杵5を下方に押し下げ、下杵6を上方に押し上げる。ロール12、13、14、15が杵5、6上の平坦面に接している期間は、杵5、6が臼孔4内の粉体に対して一定の圧力を加え続ける。
【0024】
成形機Aの上ロール12、14には、ロール12、13、14、15が杵5、6を介して臼孔4内の粉体を圧縮する際の圧力を検出するセンサであるロードセルを設置する。ロードセルの出力信号を参照すれば、予圧ロール12、13が粉体を圧縮する圧力(予圧圧力)の大きさや、本圧ロール14、15が粉体を圧縮する圧力(本圧圧力)の大きさを計測できる。また、ロードセルの出力信号は、一組の杵5、6が一つの臼孔4の粉体を圧縮する圧力が最大となる時点でピークを迎えるようなパルス信号列の形をとる。そのパルス列の数を計数することを通じて、成形機Aにおける単位時間あたりの成形品Pの製造数量を知得できる。
【0025】
本圧上ロール14及び本圧下ロール15による加圧位置から、回転盤3及び杵5、6の回転方向に沿って先に進んだ位置に、成形品Pの受け渡し位置16が存在する。受け渡し位置16までに、下杵6の杵先63の上端面が臼孔4の上端即ちテーブル31の上面と略同じ高さとなるまで下杵6が上昇し、臼孔4内にある成形品Pを臼孔4から押し出す。臼孔4から押し出された成形品Pは、受け渡し位置16において後続する搬送装置のモジュールBに受け渡される。
【0026】
成形機Aの下流に連結した搬送装置B、C、D、E、Fは、成形機Aにおいて粉体を圧縮成形して得た成形品Pを順次搬送する。それとともに、搬送中の成形品Pに対して所望の後処理を施すことも可能である。後処理の具体例としては、成形品Pの表面に付着している粉体の除去や、成形品Pの表面への印字又は刻印、成形品Pの外観検査、表面形状検査、成形品Pに異物特に金属片等が混入した場合の当該異物の検知、成形品Pの寸法、重量、密度、硬度、組成等の特性のうち少なくとも一つの検査、等を挙げることができる。そして、そのような後処理を行うための周辺装置B、C、D、E、Fとして、粉体除去機、インクジェットプリンタやレーザマーキング装置等の印字機、レーザ加工機等の刻印機、カメラセンサ、三次元形状測定用レーザスキャナ、金属探知機、成形品Pの特性の測定又は検査装置等を、適宜のモジュールB、C、D、E、Fに分散して付設する。最下流のモジュールDには、成形品PをPTP(Press Through Pack)包装シートやESOP(Easy Seal Open Pack)包装シート等に包装する包装装置を付設することもあり得る。
図4に示すように、本実施形態では、成形機Aの下流側に複数のモジュールB、C、D、E、Fを配列しており、成形機Aによる成形品Pの製造とモジュールB、C、D、E、Fによる後処理とを一貫して連続的に実施する。
【0027】
成形機Aの下流に直結するモジュールBは、成形機Aにおいて成形品Pを成形した順番を維持したままで、成形機Aから成形品Pを順次取り出して搬送する。モジュールBは、成形機Aの回転盤3及びテーブル31と同期して垂直軸回りに水平回転する回転体B1により、成形品Pを移送する。回転体B1は、成形機Aのモータ8とは別個独立したモータにより回転駆動してもよいし、成形機Aの回転盤3とモジュールBの回転体B1とを歯車伝動機構や巻掛伝動機構等を介して機械的に接続して連動させてもよい。回転体B1の回転角度及び回転速度は、ロータリエンコーダ等の角位置センサを介して検出できる。
【0028】
回転体B1は略円板状をなし、その外周部に回転方向に沿って所定間隔で複数の捕捉部B2を設けている。各捕捉部B2はそれぞれ、受け渡し位置16において、成形機Aから一個の成形品Pを受け取る。つまり、一つ一つの捕捉部B2に、成形品Pが一個ずつ捕捉される。これにより、成形機Aのテーブル31の臼孔4が並ぶ順番に、換言すれば成形機Aにおいて成形品Pを圧縮成形した順番を崩さずに、各捕捉部B2に一個ずつ成形品Pを順に並べて収容することができる。しかも、成形機Aのテーブル31からモジュールBの回転体B1への成形品Pの受け渡しの過程で、成形品Pの上面と下面とが裏返ることがない。なお、回転体B1の各捕捉部B2に負圧を供給し、その負圧を用いて個々の成形品Pを各捕捉部B2に吸着することがある。
【0029】
捕捉部B2に捕捉された成形品Pは、回転体B1とともに水平回転して移動する。そして、受け渡し位置B3において後続する搬送装置のモジュールCに、その順番を崩すことなく受け渡される。
【0030】
モジュールBの下流に直結するモジュールCは、モジュールBが移送する成形品Pの順番を維持したままで、モジュールBから成形品Pを順次取り出して搬送する。モジュールCは、モジュールBの回転体B1と同期して垂直軸回りに水平回転する回転体C1により、成形品Pを移送する。回転体C1は、モジュールBのモータとは別個独立したモータにより回転駆動してもよいし、モジュールBの回転体B1とモジュールCの回転体C1とを歯車伝動機構や巻掛伝動機構等を介して機械的に接続して連動させてもよい。回転体C1の回転角度及び回転速度は、ロータリエンコーダ等の角位置センサを介して検出できる。
【0031】
回転体C1は略円板状をなし、その外周部に回転方向に沿って所定間隔で複数の捕捉部C2を設けている。各捕捉部C2はそれぞれ、受け渡し位置B3において、モジュールBから一個の成形品Pを受け取る。つまり、一つ一つの捕捉部C2に、成形品Pが一個ずつ捕捉される。これにより、成形機Aのテーブル31の臼孔4が並ぶ順番に、換言すれば成形機Aにおいて成形品Pを圧縮成形した順番を崩さずに、各捕捉部C2に一個ずつ成形品Pを順に並べて収容することができる。しかも、モジュールBの回転体B1からモジュールCの回転体C1への成形品Pの受け渡しの過程で、成形品Pの上面と下面とが裏返ることがない。なお、回転体C1の各捕捉部C2に負圧を供給し、その負圧を用いて個々の成形品Pを各捕捉部C2に吸着することがある。
【0032】
捕捉部C2に捕捉された成形品Pは、回転体C1とともに水平回転して移動する。そして、原則として、受け渡し位置C3において後続する搬送装置のモジュールDに、その順番を崩すことなく受け渡される。但し、成形品Pの一部をサンプリングすることがあり、サンプリング対象の成形品PはモジュールDには渡されず、受け渡し位置C3を越えて受け渡し位置C4まで移動し、搬送装置のモジュールEに受け渡される。
【0033】
モジュールCの下流に直結するモジュールDは、モジュールCが移送する成形品Pの順番を維持したままで、モジュールCから成形品Pを順次取り出して搬送する。モジュールDは、モジュールCの回転体C1と同期して垂直軸回りに水平回転する回転体D1により、成形品Pを移送する。回転体D1は、モジュールCのモータとは別個独立したモータにより回転駆動してもよいし、モジュールCの回転体C1とモジュールDの回転体D1とを歯車伝動機構や巻掛伝動機構等を介して機械的に接続して連動させてもよい。回転体D1の回転角度及び回転速度は、ロータリエンコーダ等の角位置センサを介して検出できる。
【0034】
回転体D1は略円板状をなし、その外周部に回転方向に沿って所定間隔で複数の捕捉部D2を設けている。各捕捉部D2はそれぞれ、受け渡し位置C3において、モジュールCから一個の成形品Pを受け取る。つまり、一つ一つの捕捉部D2に、成形品Pが一個ずつ捕捉される。これにより、成形機Aのテーブル31の臼孔4が並ぶ順番に、換言すれば成形機Aにおいて成形品Pを圧縮成形した順番を崩さずに、各捕捉部D2に一個ずつ成形品Pを順に並べて収容することができる。しかも、モジュールCの回転体C1からモジュールDの回転体D1への成形品Pの受け渡しの過程で、成形品Pの上面と下面とが裏返ることがない。なお、回転体D1の各捕捉部D2に負圧を供給し、その負圧を用いて個々の成形品Pを各捕捉部D2に吸着することがある。
【0035】
捕捉部D2に捕捉された成形品Pは、回転体D1とともに水平回転して移動する。そして、所定の回収位置において製品として回収される。
【0036】
モジュールCに隣接するモジュールEは、モジュールCが移送する成形品Pの順番を維持したままで、モジュールCからサンプリング対象の成形品Pを取り出して搬送する。モジュールEは、モジュールCの回転体C1と同期して垂直軸回りに水平回転する回転体E1により、成形品Pを移送する。尤も、成形品Pをサンプリングしない、即ち成形品Pが受け渡し位置C4まで流れてこず、サンプリング対象の成形品Pを移送する必要のないときには、回転体E1の回転を停止しておくことも許される。回転体E1は、モジュールCのモータとは別個独立したモータにより回転駆動してもよいし、モジュールCの回転体C1とモジュールEの回転体E1とを歯車伝動機構や巻掛伝動機構等を介して機械的に接続して連動させてもよい。回転体E1の回転角度及び回転速度は、ロータリエンコーダ等の角位置センサを介して検出できる。
【0037】
回転体E1は略円板状をなし、その外周部に回転方向に沿って所定間隔で複数の捕捉部E2を設けている。各捕捉部E2はそれぞれ、受け渡し位置C4において、モジュールCから一個の成形品Pを受け取る。一つの捕捉部E2に、成形品Pが二個以上捕捉されることはない。これにより、成形機Aのテーブル31の臼孔4が並ぶ順番に、換言すれば成形機Aにおいて成形品Pを圧縮成形した順番を崩さずに、各捕捉部E2に成形品Pを順に収容することができる。しかも、モジュールCの回転体C1からモジュールEの回転体E1への成形品Pの受け渡しの過程で、成形品Pの上面と下面とが裏返ることがない。なお、回転体E1の各捕捉部E2に負圧を供給し、その負圧を用いて個々の成形品Pを各捕捉部E2に吸着することがある。
【0038】
捕捉部E2に捕捉されたサンプリング対象の成形品Pは、回転体E1とともに水平回転して移動する。そして、受け渡し位置E3において後続する搬送装置のモジュールFに、その順番を崩すことなく受け渡される。
【0039】
モジュールEの下流に直結するモジュールFは、モジュールEが移送する成形品Pの順番を維持したままで、モジュールEからサンプリング対象の成形品Pを取り出して搬送する。モジュールFは、モジュールEの回転体E1と同期して垂直軸回りに水平回転する回転体F1により、成形品Pを移送する。尤も、成形品Pをサンプリングしないときには、回転体F1の回転を停止しておくことも許される。回転体F1は、モジュールEのモータとは別個独立したモータにより回転駆動してもよいし、モジュールEの回転体E1とモジュールFの回転体F1とを歯車伝動機構や巻掛伝動機構等を介して機械的に接続して連動させてもよい。回転体F1の回転角度及び回転速度は、ロータリエンコーダ等の角位置センサを介して検出できる。
【0040】
回転体F1は略円板状をなし、受け渡し位置E3においてモジュールEからサンプリング対象の成形品Pを受け取り、その上面に成形品Pを載置する。サンプリング対象の成形品Pは、回転方向に沿って延伸するレール又はガイド(図示せず)に沿って、ロボットアームRが所在する位置まで移動する。これにより、成形機Aのテーブル31の臼孔4が並ぶ順番に、換言すれば成形機Aにおいて成形品Pを圧縮成形した順番を崩さずに、成形品Pを順にピックアップすることができる。しかも、モジュールEの回転体E1からモジュールFの回転体F1への成形品Pの受け渡しの過程で、成形品Pの上面と下面とが裏返ることがない。
【0041】
搬送装置の各モジュールB、C、D、E、Fは、日本国公開特許公報である特開2020-049516号公報等を引用して構成できる。
【0042】
ロボットアームRは、グリッパ(又は、ハンド、チャック)R1を備え、サンプリング対象の成形品Pを一個ずつピックアップして運搬する。
図5及び
図6に示すように、グリッパR1は、複数本の爪部材R2を介して成形品Pを把持する。図示例では、対向する二本の爪部材R2の間に成形品Pを挟持しているが、三本以上の爪部材により成形品Pを把持する構造であってもよい。
【0043】
図7に示すように、グリッパR1は、爪部材R2を駆動するモータR11と、モータR11に必要な電流を印加してモータR11及び爪部材R2を制御するコントローラ又はサーボドライバR12と、爪部材R2の変位量を検出するエンコーダR13とを有する、既知の電動式のものである。モータR11は、ステッピングモータやサーボモータである。モータR11と爪部材R2とは、ラックピニオン、ウォームギア等の歯車電動機構等を介して機械的に接続する。エンコーダR13は、モータR11の回転角度を検出するロータリエンコーダ等の角位置センサであることがある。
【0044】
成形機A、搬送装置B、C、D、E、F、ロボットアームR(グリッパR1を含む)及び測定用機器等の制御を司る上位コントローラである制御装置0は、プロセッサ、メインメモリ及び補助記憶デバイス(例えば、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ等)、入出力インタフェース等を有してなるマイクロコンピュータシステム、パーソナルコンピュータ又はワークステーション、あるいはプログラマブルロジックコントローラである。制御装置0は、入出力インタフェースを介して、有線又は無線接続している成形機A、搬送装置B、C、D、E、F、ロボットアームR及び測定用機器等に対して必要な制御信号を入力でき、また、それらから出力される各種信号を受信できる。制御装置0は、予め補助記憶デバイスに格納されているプログラムをメモリを介してプロセッサに読み込み、プロセッサにおいて解読して、成形機A、搬送装置B、C、D、E、F、ロボットアームR等の諸々の制御を遂行する。
【0045】
制御装置0は、ロボットアームRによりピックアップしたサンプリング成形品Pの種々の特性(諸元)を測定する。
図8に示すように、本実施形態のシステムでは、対象の成形品Pの厚み寸法の測定(ステップS1)、成分組成の測定(ステップS2)、外径寸法の測定(ステップS3)、硬度の測定(ステップS4)を順次行う。
【0046】
成形品Pの厚みは、
図6に示す成形品Pの外径dの方向と直交する厚み(上下)方向に沿った外寸である。成形品Pの外径dは、
図6上段に示す平面視真円若しくは略真円形状の成形品Pであればその直径、
図6下段に示す平面視オーバル(楕円、長円若しくはこれに近い)形状の成形品Pであればその長軸方向に沿った長径である。勿論、平面視オーバル形状の成形品Pの短軸方向に沿った短径を測定しても構わない。
【0047】
ステップS1及びステップS3の寸法の測定は、ロボットアームRのグリッパR1により成形品Pを把持した状態で行うことができる。グリッパR1のモータR11に電流を印加すると、爪部材R2が変位して成形品Pの外表面に接近し、やがて当接する。その過程で、
図9に示すように、モータR11を流れる電流が変動する。即ち、爪部材R2が成形品Pに当接してそれ以上変位できなくなると、モータR11を流れる電流が増加し、同時に爪部材R2が成形品Pを押圧する力fが増大する。制御装置0は、コントローラ又はサーボドライバR12の出力信号を参照してモータR11を流れる電流の大きさを常時監視しており、その電流値が閾値I
0を超えて大きくなったときに、爪部材R2が成形品Pを完全に把持したと判断する。そして、エンコーダR13の出力信号を参照して、そのときの爪部材R2の位置(複数本の爪部材R2間の距離)、ひいては成形品Pの寸法を知得する。
【0048】
因みに、ロボットアームR又はグリッパR1にロードセル等の重量検出手段が付随している場合には、ステップS1又はステップS3にて、把持している成形品Pの重量を測定することができる。
【0049】
ステップS2の組成の測定は、ロボットアームRとは別に制御装置0に接続している測定用機器を使用して行う。測定用機器は、例えば、成形品Pを撮影して画像解析用の画像データを得るカメラセンサや、成形品Pに電磁波若しくは光波(特に、近赤外光)を照射してその透過光又は反射光を受光し分析する分析装置(近赤外分光分析(Near-InfraRed Spectroscopy)装置)等である。ステップS2にて、ロボットアームRは、グリッパR1により把持した対象の成形品Pを測定用機器まで運搬し、その場で爪部材R2を開放して対象の成形品Pを手放す。測定用機器による測定が完了したら、再度同成形品Pをピックアップ、即ち爪部材R2を介して把持し持ち上げて、測定用機器の外に運搬する。しかして、その把持した成形品Pに対して、ステップS3の測定を行う。
【0050】
ステップS1ないしS3が非破壊検査であるのに対し、ステップS4の硬度測定は破壊検査である。ステップS3にて、ロボットアームRのグリッパR1により把持している成形品Pの外寸d(や重量)の計測を完了した後、その成形品PをグリッパR1から手放さず把持したまま、ステップS4の硬度測定へと移行する。ステップS4では、ステップS3で既に把持している成形品Pに加える把持力fを強めてゆくように、モータR11に印加する電流を逓増させる。把持力fを加える位置及び方向は、ステップS3にて測定する外寸dの位置及び方向と同一である。
【0051】
把持力fが巨大となり、把持している成形品Pが破壊されると、破壊直前まで爪部材R2からモータR11に作用していた負荷が急減し、それに伴いモータR11を流れる電流の大きさも急落する。制御装置0は、その急落直前のモータ電流の極大値I
1を基に、対象の成形品Pの硬度を推定する。
図10に示すように、モータR1に印加する電流の大きさと、爪部材R2から成形品Pに加わる力fの大きさとの間には、概ね線形的な関係が成立する。要するに、モータ電流が大きいほど把持力fが大きい。制御装置0は、
図10に示すような検量線のデータ又は関数式を予めメモリに記憶保持しており、成形品Pの破壊時のモータ電流の極大値I
1を、当該成形品Pが破壊に至る力f、つまり当該成形品Pの硬度に換算する。
【0052】
本実施形態では、爪部材R2を介して対象の成形品Pを把持できるグリッパR1と、前記グリッパR1により把持した成形品Pを破壊せずに同成形品Pの硬度以外の特性(外寸dや重量)を測定し、引き続きグリッパR1により同成形品Pを把持したままでこれに力fを加えて同成形品Pを破壊に至らしめ同成形品Pの硬度を測定する制御装置0とを具備する成形品Pの硬度測定システムを構成した。
【0053】
本実施形態によれば、成形品Pの硬度及び硬度以外の特性をともに測定するにあたって、ピックアップアンドプレースの回数を削減でき、測定に要するタクトタイムを短縮できる。成形品Pについての複数の特性を単一の機器で測定することから、測定用機器が占有する場所をより縮小できる。
【0054】
また、従前の硬度測定のように成形品Pの大きさや形状に応じた加圧板を用意する必要がなく、加圧板の交換作業の手間が省かれ、それでいて多種多様な成形品Pの測定を遂行できる。
【0055】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。グリッパR1を備えるのはロボットアームRに限らず、例えば(いわゆるクレーンゲーム等に用いられている)XYZ軸で駆動するクレーンのようなものでもよいし、グリッパR1単体で成形品Pの硬度を測定するものとしてもよい。
【0056】
サンプリング用モジュールFの回転体F1に代えて、成形品Pを直線的に搬送する搬送体を設置してもよい。また、回転移動も直線移動もしない固定盤を設置してもよく、その盤上にサンプリングされた成形品Pを(図示しないレール又はガイド等に沿って順次押し出されるようにして)整列させ、グリッパR1による把持まで待機させてもよい。
【0057】
爪部材R2の変位量を検出するエンコーダR13は、ポテンショメータでもよい。
【0058】
その他、各部の具体的構成や実行する処理の手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0059】
0…制御装置
d…成形品の外寸
f…成形品に加わる力
A…粉体圧縮成形機
B、C、D、E、F…搬送装置
P…成形品
R…ロボットアーム
R1…グリッパ
R11…モータ
R13…エンコーダ
R2…爪部材