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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147338
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】データ処理装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20241008BHJP
   G07C 5/00 20060101ALI20241008BHJP
   G06Q 50/08 20120101ALI20241008BHJP
   G16Y 40/10 20200101ALI20241008BHJP
   G16Y 20/20 20200101ALI20241008BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20241008BHJP
【FI】
G08G1/00 J
G07C5/00 Z
G06Q50/08
G16Y40/10
G16Y20/20
G16Y10/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060286
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】紺野 克也
(72)【発明者】
【氏名】田中 準二
(72)【発明者】
【氏名】荒木 龍治
【テーマコード(参考)】
3E138
5H181
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
3E138AA07
3E138GA03
3E138MA10
3E138MB08
3E138MC03
3E138MC12
3E138MD05
3E138MF08
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB05
5H181CC04
5H181FF10
5H181FF13
5H181FF22
5H181FF27
5H181FF35
5H181MC16
5H181MC19
5L049CC07
5L050CC07
(57)【要約】
【課題】路面の損傷把握に必要なデータの収集にかかる手間、時間、コストなどの削減を容易にすると共に、損傷の検出精度を改善すること。
【解決手段】サービス提供用サーバ40が各車両の車載システム10からのプローブデータと、車載システム10が常時記録モードで記録した映像と位置のデータをそれぞれ車載器から収集する。サービス提供用サーバ40は、車載器ユーザが映像データの利用を許諾したことに基づく利用権と、映像データとを取得し、その対価を車載器ユーザに提供する。複数の車載システム10から必要な大量の映像データを取得できるので、映像データの利用者側がパトロール車両を走らせて路面をその都度撮影する必要がなくなる。上下方向加速度の分散値の時系列データから予測した路面の損傷状況と、映像データの路面画像から検出した損傷状況の出力データを車両位置に紐付けして、道路維持管理が必要な自治体や管理業者に有償で提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも車両上の所定の車載器により走行中に撮影された映像を含む入力データと、第1のユーザが前記入力データの利用を許諾したことに基づく利用権と、を取得する外部データ取得部と、
前記外部データ取得部が取得した前記入力データを処理して、前記映像に含まれる路面の損傷状況を位置と共に検出する路面損傷検出部と、
前記路面損傷検出部の処理結果を含む出力データを、第2のユーザに対して提供するデータ出力部と、を備える、
データ処理装置。
【請求項2】
前記外部データ取得部は、車両上の第1の車載器により走行中に検出された上下方向の加速度を含む第1の入力データを前記第1の車載器から取得し、車両上の第2の車載器により走行中に検出された映像を含む第2の入力データを前記第2の車載器から取得する機能を有し、
前記路面損傷検出部は、前記第1の入力データに含まれる加速度の分散値を算出し、前記分散値の時系列変化に基づいて路面状態を予測する予測部を有し、
前記データ出力部は、前記予測部が前記分散値の時系列変化に基づいて予測した路面状態と、前記路面損傷検出部が前記映像に基づいて検出した路面の損傷状況とを車両の位置情報に紐付けし、前記出力データとして出力する、
請求項1に記載のデータ処理装置。
【請求項3】
前記外部データ取得部は、前記入力データを取得する際に、当該入力データの提供に対する所定の対価を前記第1のユーザに対して提供する、
請求項1に記載のデータ処理装置。
【請求項4】
前記外部データ取得部は、前記入力データとして、車両に搭載されたドライブレコーダが常時記録モードで記録した時系列の映像データを、車両位置の情報と共に取得する、
請求項1に記載のデータ処理装置。
【請求項5】
前記路面損傷検出部は、前記入力データの映像に基づき路面の損傷状況を複数種類の損傷度合のいずれかに分類した状態で検出する機能を有し、
前記データ出力部は、少なくとも路面の損傷を検出した箇所の損傷度合、および車両位置の情報を前記第2のユーザに対して提供する、
請求項1から4のいずれか一項に記載のデータ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば様々な道路を維持管理している自治体や、道路維持管理を請け負う事業者や、損傷した道路の補修工事を請け負う施工業者などにおいては、管理対象の各道路の状況を把握しておく必要がある。したがって、各道路の管理者等は例えば定期的にパトロールを行って、路面等の状況を目視等で確認するための作業を行うのが一般的である。また、対象となる道路上に車両を実際に走行させて、路面状態を識別する技術が提案されている(例えば、特許文献1~4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-63544号公報
【特許文献2】特開2001-287634号公報
【特許文献3】特開2020-194450号公報
【特許文献4】特開2022-155303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1~特許文献3に示されているように、走行する車両上で検出した加速度の分散値を利用することで、車両が実際に走行した道路の路面に存在する凹凸などの損傷をある程度は推定することが可能である。
【0005】
しかしながら、車両上で検出可能な上下方向の加速度は自車両の各車輪が実際に通過した領域だけの路面状況を反映するので、車輪が通過しなかった領域に存在する凹凸は損傷として検出することができない。また、路面にマンホールなどが存在する場合には、このマンホールの箇所の凹凸を損傷として誤検出する可能性がある。したがって、路面の状況を確実に把握するために、管理者等がパトロール車両で走行しながら目視で路面の損傷の有無を確認する作業も必要になる。
【0006】
また、例えば特許文献4に記載されているように、車両に搭載したカメラで撮影した画像を利用して路面の損傷を記録することも考えられる。特許文献4に記載の方法は、道路の表面所定の基準定規を配置し、この基準定規を撮影して基準定規画像を得た後、車両で道路を走行しながら撮影した路面画像と基準定規画像とを重ね合わせて、路面画像中に存在する路面の損傷の寸法を検出する。しかし、この方法においては、対象となる道路の表面に基準定規を配置して撮影する工程が少なくとも必要となるため、手間やコストがかかる。
【0007】
いずれにしても路面の損傷を確実に把握するためには、その都度パトロール車両などを用いて管理者が道路の対象区間の全域を定期的に走行し、目視で確認したり、必要なデータを走行しながら収集しなければならない。そのため、パトロールの手間、時間、コストなどを削減することが困難である。
【0008】
本発明は、上記の状況に鑑みてなされたものであり、道路の維持管理に必要な高精度データを簡便に提供可能なデータ処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するために、本発明に係るデータ処理装置は、下記を特徴としている。
少なくとも車両上の所定の車載器により走行中に撮影された映像を含む入力データと、第1のユーザが前記入力データの利用を許諾したことに基づく利用権と、を取得する外部データ取得部と、
前記外部データ取得部が取得した前記入力データを処理して、前記映像に含まれる路面の損傷状況を位置と共に検出する路面損傷検出部と、
前記路面損傷検出部の処理結果を含む出力データを、第2のユーザに対して提供するデータ出力部と、を備える、
データ処理装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明のデータ処理装置によれば、道路の維持管理に必要な高精度データを簡便に提供可能となる。
【0011】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の実施形態におけるデータ処理装置の構成例を示すブロック図である。
図2図2は、サーバが備える機能の構成例を示すブロック図である。
図3図3は、ドライブレコーダの映像データを任意のユーザから取得するための動作例を示すフローチャートである。
図4図4は、路面画像解析部の機能の概要を示すブロック図である。
図5図5は、加速度分散値のデータとこれらのデータが測定された位置を示す地図の例を示す模式図である。
図6図6は、路面状態予測部の動作例を示す模式図である。
図7図7は、サービス利用者に提供する出力データの例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に関する具体的な実施の形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
<システム主要部の構成>
本発明の実施形態におけるデータ処理装置の構成例を図1に示す。
【0014】
図1に示したデータ処理装置は、各地の道路における路面の実際の損傷状況を把握するために役立つ出力データを生成し、この出力データを道路維持管理者等のサービス利用者に対して提供するための機能を備えている。この機能の主要部は、図1に示した例ではサービス提供用サーバ40に備わっている。
【0015】
サービス提供用サーバ40は、例えば所定のデータセンタに配置され、インターネット32と接続されている。このサービス提供用サーバ40は、各地の道路における路面の実際の損傷状況を検出するために必要な入力データを、複数の車両管理者20A、20B、・・・から取得できる。尚、以下、複数の車両管理者20A、20B、・・・を車両管理者20と総称する場合がある。
【0016】
例えば、トラックなどの業務用車両を管理している運送会社等の各企業や、乗用車を所有している一般の車両ユーザが、車両管理者20A、20B、・・・として入力データをそれぞれサービス提供用サーバ40に提供可能である。本実施形態では、車両管理者20Aが、1又は複数の業務用車両を管理する運送会社等の運行管理者であり、車両管理者20Bが、乗用車のドライバーである例について説明する。
【0017】
図1に示した例では、車両管理者20Aが1又は複数の車載システム10および通信端末21Aを管理し、車両管理者20Bが車載システム10および通信端末21Bを管理している。通信端末21Aは、運送会社等の事務所に設置された事務所PCであり、汎用のコンピュータ装置で構成され、車両の運行状況を管理する。通信端末21Bは、例えばノートPC(パーソナルコンピュータ)やスマートホンのようにインターネット32を介してサービス提供用サーバ40との間でデータ通信が可能な機器である。尚、通信端末21Aは、サービス提供用サーバ40との間でデータ通信が可能な機器であればよく、通信端末21Bと同様にノートPC等であってもよい。
【0018】
図1に示した例では、車載システム10は、CPU11、加速度センサ12、車載カメラ14、記録媒体15、無線通信部17、およびアンテナ18を含んでいる。車載システム10は、映像を撮像可能なカメラ機能を有するドライブレコーダー(以下、「ドラレコ」とも称する。)であり、後述するようにデジタルタコグラフ(以下、「デジタコ」とも称する。)機能を有する。なお、各車両管理者20A、20Bの車載システム10はデジタルタコグラフ機能およびドライブレコーダ機能のいずれか一方のみを有する車載器であっても良い。
【0019】
加速度センサ12は、車体上で検出可能な少なくとも上下方向の加速度を検出する機能を備えている。したがって、例えば車両が道路を走行中に凹凸や段差のある箇所を車輪が通過する時には、加速度センサ12により検出される上下方向の加速度に凹凸や段差の影響が現れる。
【0020】
車載カメラ14は、例えば車室内の運転者の視点に近い位置に設置され、車体の前方又は後方の路面を含む車外風景を撮影できる向きで配置されている。なお、車体の前方側を撮影するカメラと後方側を撮影するカメラの両方を車載カメラ14として同時に利用しても良い。
【0021】
車載システム10は、各種イベント発生時に車載カメラ14により撮影した映像を記録するイベント記録モードに加え、常時記録モードを搭載する。常時記録モードにおいて、車載システム10は、各種イベント発生の有無とは無関係に、車載カメラ14の撮影により得られた最新の映像データを短い周期で繰り返し取得して記録媒体15に時系列の映像データとして記録することができる。また、映像データと共に、例えば複数のGPS(Global Positioning System)衛星から受信した電波に基づいて算出した車両の現在位置(緯度/経度)および現在日時の情報も記録媒体15に記録される。記録媒体15は、例えばSDカードのように着脱自在な不揮発性のメモリにより構成される。
【0022】
車載システム10が有するデジタルタコグラフ機能は、加速度センサ12が検出した加速度の他に、走行速度(km/h)など、車両位置などの運行データを周期的に取得して記録媒体15上に記録することができる。
【0023】
車載システム10に含まれる無線通信部17は、アンテナ18を利用して例えばLTE(Long Term Evolution)規格の無線通信サービスを提供する広域無線通信網31と車両上との間で無線通信を行うための通信回線を確保できる。また、広域無線通信網31はインターネット32と接続されているので、無線通信部17は広域無線通信網31およびインターネット32を経由してサービス提供用サーバ40との間でデータ通信を行うことができる。
【0024】
無線通信部17は、記録媒体15に記録した過去の車両の運行記録データや、最新の加速度、走行速度、車両位置などのプローブデータを、広域無線通信網31およびインターネット32を経由してサービス提供用サーバ40に送信することができる。
【0025】
サービス提供用サーバ40は、既存の通信サービスとして、運送会社等の各企業における各車両の運行管理サービスを行ったり、各車両を運行する乗務員の運転状況などを管理することができる。このような通信サービスを行うために、サービス提供用サーバ40は車載システム10のデジタルタコグラフ機能により出力されるプローブデータ(加速度、車速、車両位置など)を各車両から収集して蓄積し、所定のデータ処理を実施する。また、データ処理の結果を例えば日報などの形態で車両管理者20A等の企業に提供することができる。
【0026】
一方、図1に示したサービス提供用サーバ40は、上記既存の通信サービスの他に、各車両が走行する各道路の路面における損傷状況を把握する特別な機能も搭載している。具体的には、各車両管理者20A、20B、・・・が管理する各車載システム10から提供される入力データの上下方向加速度および映像に基づき、損傷の有無、損傷の種類、損傷度合のレベル、損傷が発生している場所(道路の区分、緯度/経度など)を検出する。
【0027】
サービス提供用サーバ40は、検出した路面の損傷を表す出力データを、道路の損傷を管理する必要のあるサービス利用者、すなわち各道路を維持管理している自治体、各道路の管理を委託された事業者、道路の修復を依頼された道路工事事業者などに対して有償で提供することができる。
【0028】
図1に示した構成では、自治体の管理者は、自治体側機器22の通信端末23を利用して、インターネット32を介してサービス提供用サーバ40と接続し、路面の損傷を表す出力データを有償で取得することができる。また、例えば自治体から各道路の管理を委託された事業者は事業者側機器24の通信端末25を利用して、インターネット32を介してサービス提供用サーバ40と接続し、路面の損傷を表す出力データを有償で取得することができる。また、道路の修復を依頼された道路工事事業者は、事業者側機器26の通信端末27を利用して、インターネット32を介してサービス提供用サーバ40と接続し、路面の損傷を表す出力データを有償で取得することができる。
各通信端末23、25、27は、例えばノートPCやスマートホンのようにインターネット32と通信する機能を備えた端末である。
【0029】
一方、例えば車両管理者20Aは、車載システム10のデジタルタコグラフ機能により出力されるデータを利用して、運送業者等の企業の管理下にある各車両の運行管理や乗務員の運転状況を管理する必要がある。このような管理については、サービス提供用サーバ40側の既存のデータ処理サービスを利用することで車両管理者20A側の管理に伴う処理の負担を減らすことができる。
【0030】
また、例えば車両管理者20Aがサービス提供用サーバ40側の既存のデータ処理サービスを利用する場合には、サービス提供用サーバ40を管理する企業と車両管理者20Aの企業との間で事前にサービスの契約を行う。そして、車両管理者20Aはサービス提供用サーバ40を管理する企業に対して例えば月単位で予め定めた金額の利用料金を支払う。また、この契約を結ぶ際には、車載システム10が送信するプローブデータ(車速、位置、加速度など)をサービス提供用サーバ40側で利用する権利について車両管理者20A側が許諾することを前提とする。
【0031】
したがって、サービス提供用サーバ40は、車両管理者20Aの車載システム10から出力されるプローブデータを、提供者の利用許諾済みのデータとして常時利用することができる。本実施形態では、プローブデータに含まれる上下方向の加速度を、路面の凹凸などの損傷を予測する目的のためにサービス提供用サーバ40が使用する。
【0032】
但し、プローブデータの加速度分散値の情報から予測される損傷データだけでは、下記の理由により、必ずしも、道路管理者側が必要とする十分なデータが得られない。
(1)速度に応じて分散値が変化する。
(2)車両の車輪が通過しない箇所の損傷は加速度の分散値に反映されない。
(3)損傷の種類を区別できない。
(4)損傷度合を把握できない。
(5)マンホールのような箇所を損傷として誤検知する。
【0033】
そこで、サービス提供用サーバ40は、路面の損傷をより正確に検知するために、路面を撮影して得られる映像データも利用する。具体的には、車載システム10が常時記録モードで撮影した映像の記録データを使用できる。
【0034】
しかし、ドライブレコーダの記録データに関しては、ドライブレコーダのユーザ以外の第三者が利用することを想定していない。このため、ドライブレコーダの記録データについては、車載システム10が出力するプローブデータのように様々なユーザのデータをサービス提供用サーバ40側で自由に取得して利用することはできない。
【0035】
そのため、通常のシステム環境で映像の記録データを利用するためには、映像データを利用するユーザ自身がその都度、専用のパトロール車両を実際に目的の道路上で走らせながら車載カメラ14で撮影した路面の映像を車載システム10で記録する必要がある。したがって、必要な映像データを取得するためにかかる手間、時間、コスト等の負担が非常に大きくなる。
【0036】
そこで、本実施形態では、複数の車両管理者20A、20B、・・・から車載システム10において車載カメラ14が撮影した映像を含む記録データをサービス提供用サーバ40が取得して利用できるように特別なビジネスモデルを構築する。具体的には、サービス提供用サーバ40側が必要とする路面の映像を含む車載システム10の記録データを所有している任意の車両管理者20側機器とサービス提供用サーバ40との間で通信を行う。サービス提供用サーバ40は、対価の提供と引き替えに、映像の記録データと、それを使用する権利(利用権)と、を取得する。複数の業務用車両を管理する車両管理者20Aは、各車両に搭載された車載カメラ14により撮影された映像を含むデータの利用を、一括して許諾してもよいし、一部のデータの利用のみを許諾してもよい。すなわち、利用権は、複数の車両管理者20が車載カメラ14の記録データの利用を許諾したことに基づいて設定され、利用権を取得したサービス提供用サーバ40は、許諾された範囲内で車載カメラ14の記録データを利用できる。さらに、車両管理者20A側に、通信端末21Aと通信可能な路面画像解析部21Aaを設け、路面画像解析部21Aaが、車載カメラ14が撮影した映像のうち、サービス提供用サーバ40側が必要とする路面の映像を抽出してもよい。この構成によれば、路面画像解析部21Aaが抽出した路面の映像を、通信端末21Aにより、サービス提供用サーバ40に送信するので、車両管理者20Aとサービス提供用サーバ40との間のデータ通信量を抑制できる。路面画像解析部21Aaの機能の詳細は、後述する路面画像解析部45の機能と同様である。
【0037】
これにより、路面の最新の損傷状況を知りたい場合に、車載カメラ14を搭載した車両を利用して道路を走行している不特定の車両管理者20から必要に応じて映像の記録データを提供して貰うことが可能になる。よって、特定の管理者がその都度パトロール車両を走らせて映像の記録データを取得する必要がなくなる。
【0038】
映像データの提供者に対する対価の具体例としては、現金の支払、電子マネーの支払、金銭的価値を有するポイントの付与、サービス提供用サーバ40が提供するサービスの利用にかかる使用料金の値引きなどが想定される。
【0039】
<サービス提供用サーバの機能>
本発明を実施するためにサービス提供用サーバ40が備える主要な機能の構成例を図2に示す。図2に示したサービス提供用サーバ40について以下に説明する。
【0040】
サービス提供用サーバ40は、通信部41A、41B、ドラレコ用データ収集部42、データ対価提供部43、ドラレコ用DB44、路面画像解析部45、デジタコ用データ収集部46、デジタコ用DB47、汎用サービス処理部48、加速度分散値算出部49、路面状態予測部51、データ出力用DB52、出力データ提供部53、道路地図DB54、サービス利用者管理部55、車載器ユーザ管理部56、および車載器ユーザDB57を備えている。
【0041】
通信部41Aは、各車両管理者20A、20Bが管理する各車載システム10、又は通信端末21A、21B、・・・とサービス提供用サーバ40との間でデータ通信を行うために利用できる。また、通信部41Bは自治体側機器22の通信端末23、事業者側機器24の通信端末25、事業者側機器26の通信端末27とサービス提供用サーバ40との間でそれぞれデータ通信を行うために利用できる。
【0042】
ドラレコ(ドライブレコーダ)用データ収集部42は、不特定の車両管理者20A、20B、・・・の通信端末21A、21B、又は車載システム10との間でデータ通信を行い、所定の対価と引き替えに必要な映像データをそれを利用する権利と共に取得する機能を有する。
【0043】
ドラレコ用データ収集部42が各車載システム10のユーザから取得するデータは、各車載システム10が常時記録モードで記録した映像データ(ほぼ連続的に記録された時系列のデータ)の他に、該当する映像データを記録した時点の車両位置の緯度、経度、日時などの情報を含む。
【0044】
各車載システム10のユーザは、必要に応じて記録媒体15が保持している記録データを自身が管理している通信端末21で読み込んでサービス提供用サーバ40との間で通信を行い、自身が所有している映像データをその利用権と共にサービス提供用サーバ40に提供するための操作を行うことができる。また、通信端末21の代わりに車載システム10の無線通信部17を利用してサービス提供用サーバ40との間でデータ通信することも可能である。
【0045】
データ対価提供部43は、車載システム10の映像データをドラレコ用データ収集部42に提供したユーザに対してその対価を提供するための処理を実行する。具体的には、受け取ったデータ量などに応じた所定額の現金支払、電子マネー支払、ポイント付与、サービス利用料金の割引の権利付与などを対価として該当するユーザに提供する。
【0046】
ドラレコ用DB(データベース)44は、ドラレコ用データ収集部42が各ユーザから取得した車載システム10の映像データをそれを記録した時の車両位置や日時に対応付けた状態でデータベースとして所定の記録装置上に蓄積する。
【0047】
路面画像解析部45は、ドラレコ用DB44が保持している映像データを利用して、対象道路区間の路面を含む画像をフレーム毎に抽出し、各画像中の路面の中に損傷がある箇所を検出し、損傷の有無、損傷レベル、損傷の種別などを自動的に識別する。路面画像解析部45は、既存の(公知の)画像認識アルゴリズム(ソフトウェア)を利用して、路面上の損傷のパターンをそれぞれ検出する。
【0048】
デジタコ(デジタルタコグラフ)用データ収集部46は、サービス提供用サーバ40の管理業者との間で事前に契約したユーザが管理している車載システム10から、デジタルタコグラフ機能により出力されるプローブデータを広域無線通信網31およびインターネット32を経由して逐次取得する。
【0049】
デジタコ用DB47は、デジタコ用データ収集部46が各車両の車載システム10から取得したプローブデータをデータベースとしての所定の記録装置上に蓄積する。デジタコ用DB47が蓄積するプローブデータの中には、車両運行中における各時点の車体上下方向の加速度、車速、車両位置(緯度/経度)、日時などが含まれている。
【0050】
汎用サービス処理部48は、事前に契約したユーザに対して車載システム10が出力するプローブデータを利用して、車両の運行管理サービスや、各車両を運転する乗務員の運転状況を把握するためのサービスなどを提供するための既存の(公知の)処理を実行する機能を有する。
【0051】
汎用サービス処理部48が提供するサービスを利用する各ユーザ(デジタコ機能を有する車載システム10のユーザ)は、当該サービスを契約する際に、サーバのサービスを提供する業者側がプローブデータを様々な目的のために利用することを許諾しているものとする。したがって、契約したユーザが必要とするサービス以外の目的であっても、サービス提供用サーバ40はプローブデータを常時利用できる。
【0052】
加速度分散値算出部49は、処理対象の道路区間について、デジタコ用DB47が保持しているプローブデータを取得し、このプローブデータに含まれる上下方向加速度のデータの分散値を算出する機能を有する。
【0053】
路面状態予測部51は、加速度分散値算出部49が算出した分散値の時系列データを利用して、処理対象となる道路区間の各地点における路面損傷を予測したデータを生成し出力する。より具体的には、同じ道路上の同じ地点について、複数台の車両により走行速度がほぼ等しい条件で検出された加速度の分散値を平均化し、その平均値の時系列変化に基づいて損傷を予測する。
【0054】
例えば、比較的古い(測定した日付が数ヶ月前など)分散値データD12と、比較的新しい分散値データD11とを用意して、分散値データD11、D12の間の時系列変化を緯度、経度が同じ領域について検出する。例えば、古い分散値データD12において分散値が所定の閾値を超えたポイントの数と比べて、新しい分散値データD11において分散値が前記閾値を超えたポイントの数が所定以上増えている場合は、その緯度、経度の領域に新たな損傷が発生していると予測できる。このような損傷有無の予測値を路面状態予測部51が出力する。
【0055】
データ出力用DB52は、業務として道路の路面状況の把握を必要とする各ユーザ、すなわち自治体、道路管理業者、道路工事業者等に提供すべき出力データをデータベースとして所定の記憶装置上に蓄積している。図1に示した構成では、路面画像解析部45が検出したデータと、路面状態予測部51が予測したデータと、道路地図DB54から抽出した特定地域の道路地図のデータとが位置座標により互いに紐付けした状態でデータ出力用DB52に蓄積される。
【0056】
出力データ提供部53は、業務として道路の路面状況の把握を必要とする各ユーザ、すなわち自治体、道路管理業者、道路工事業者等に対してデータ通信により所望の出力データを提供するためのサービスを実施する。
【0057】
例えば、出力データ提供部53が提供するインターネット上の特定サイトに各ユーザが通信端末23、25、27でアクセスすると、出力データ提供部53はデータ出力用DB52から抽出した特定の出力データを有償で各ユーザの端末に出力できる。
【0058】
サービス利用者管理部55は、自治体、道路管理業者、道路工事業者等のように道路の路面状況の把握を必要とする事前に登録したサービス利用者を管理する。サービス利用者管理部55は、出力データ提供部53から各利用者へのデータ提供可否を制御したり、利用者毎にサービス利用実績に応じた料金の課金を行いそのデータを管理する。
【0059】
出力データ提供部53が各利用者に提供するデータの種類やデータ量に応じて利用料金を変更しても良い。例えば、プローブデータに基づいて路面状態予測部51が予測した損傷データについては、出力データ提供部53が無償で各利用者に提供しても良い。また、映像データに基づいて路面画像解析部45が検出した損傷データや路面の画像などの情報は、データ量に応じて課金する有償データとして扱ったり、利用者のクリック入力を検出する毎に一定金額を課金するように処理してもよい。
【0060】
車載器ユーザ管理部56は、汎用サービス処理部48が提供するサービスを利用する車載器ユーザ(車載システム10のユーザ)に対するサービス利用料金などの情報を管理する。また、車載器ユーザ管理部56は、ドラレコ用データ収集部42に対して映像データを提供する車載器ユーザ(車載システム10のユーザ)毎に、データ提供実績や付与した対価の実績などの情報を管理する。
【0061】
車載器ユーザ管理部56が管理する情報は、車載器ユーザDB57上のデータベースとして所定の記録装置に保持される。
例えば図1に示した車両管理者20Aのように、車載システム10がドライブレコーダの機能に加えデジタルタコグラフの機能を有する場合には、同じユーザを、デジタルタコグラフのユーザとドライブレコーダのユーザとして紐付けして車載器ユーザ管理部56で管理することができる。
【0062】
したがって、車載システム10の映像データを提供した特定の車載器ユーザに付与した対価を利用して、同じ車載器ユーザが汎用サービス処理部48のサービスを利用する際の料金を割引することも可能になる。
【0063】
<映像データを取得する際の動作例>
サービス提供用サーバ40が車載システム10の映像データを任意のユーザから取得する際の動作例を図3に示す。図3の動作について以下に説明する。
【0064】
サービス提供用サーバ40のドラレコ用データ収集部42は、損傷を検出する必要のある管理対象の道路、区間、日時などをS11で特定する。
【0065】
例えば、図1に示した車両管理者20Aがドラレコユーザとして通信端末21Aからサービス提供用サーバ40のドラレコ用データ収集部42にアクセスした場合には、ドラレコ用データ収集部42はS12からS13の処理に進む。
【0066】
ドラレコ用データ収集部42は、取得が必要な映像データの道路、区間、日時等(S11で特定した内容)の情報をアクセス元のドラレコユーザの通信端末21Aに対して送信する(S13)。これにより、ドラレコユーザはドラレコ用データ収集部42側が必要としている映像データの区分を把握できる。
【0067】
また、ドラレコ用データ収集部42は、ドラレコユーザの映像データ提供に対する対価の情報をS14で提示する。対価の金額等は取得するデータ量の大きさに応じて変更する。また、現金、電子マネー、ポイント、料金割引などの複数種類の対価を利用できる場合には、ドラレコ用データ収集部42が対価の種類の選択肢を提示してユーザに選択入力を求める。
【0068】
ドラレコ用データ収集部42が提示した条件と一致する映像データをドラレコユーザが通信端末21Aから送信した場合には、ドラレコ用データ収集部42がその映像データを利用権と共に取得し、同時に対価を該当するドラレコユーザに提供する(S15)。
【0069】
ドラレコ用データ収集部42がS15でドラレコユーザから取得した映像データおよびその利用権の情報はドラレコ用DB44に登録される。また、各ドラレコユーザがS15で提供した映像データの送信実績、および該当するドラレコユーザに付与した対価の実績は、ユーザ毎に車載器ユーザDB57に登録され管理される。尚、映像データの利用権の取得は、必ずしも映像データの取得と同時に行われなくてもよい。例えば、ドラレコユーザが、提供を許可する映像データの地域、期間等を指定することにより、予め、包括的に利用権を許諾し、車載器ユーザ管理部56にて利用権の許諾状況を管理してもよい。
【0070】
<路面画像解析部の機能>
路面画像解析部45の機能の概要を図4に示す。図4に示すように、路面画像解析部45は公知の画像認識アルゴリズムを実装した画像パターン認識部45aを例えばソフトウェアとして備えている。
【0071】
この画像パターン認識部45aは、事前に用意された所定の教師データ45bを用いて学習することにより、処理対象の映像データ45cから路面上の損傷パターンを認識する機能を実現する。
【0072】
教師データ45bは、損傷の種類毎、損傷度合のレベル毎にそれぞれ個別に1つ又は複数のデータが用意される。各教師データ45bの内容は、所定の損傷パターンを含む基準映像データを、例えば人間が関与して検証し、あるいは自動的なデータ処理により検証し、損傷の種類や損傷度合のレベルを正しく特定できた結果を表している。
【0073】
したがって、画像パターン認識部45aは、入力される映像データ45cのフレーム毎に、損傷の有無を識別すると共に、学習した教師データ45bの損傷パターンに尤も近い損傷種類、および損傷度合を検知し、その結果を検出データ45dとして出力することができる。
【0074】
画像パターン認識部45aが検出する損傷の種類は、路面のひび割れや穴を含む。また、画像パターン認識部45aが検出する複数の損傷度合は、ひび割れの大きさや、穴の深さなどの違いを反映したものとする。
【0075】
<加速度分散値の具体例>
加速度分散値のデータとこれらのデータが測定された位置を示す地図の例を図5に示す。
図5に示した3組の分散値データD11~D13は、地図M1の道路Rm1上で位置座標P01から位置座標P02までの範囲を車両で走行した際に実測された上下方向加速度の分散値の分布状態を表している。
【0076】
3組の分散値データD11~D13は、それぞれ互いに異なる日時(例えば数ヶ月のずれがある)に走行した車両により実測された加速度から求めた分散値のデータである。また、ほぼ同じ速度で走行した複数台の車両により同じ位置で実測された複数の分散値の平均値を採用している。
【0077】
図5に示す例では、道路Rm1上の位置(緯度PL)毎に、分散値データD11~D13の間で時系列の変化が現れている。このような分散値の時系列変化は、路面に新たに発生した損傷のような凹凸や段差の影響を反映していると考えられる。したがって、路面の損傷の存在を図5に示すような分散値データD11~D13からある程度予測することが可能であり、予測した各損傷の存在位置も特定できる。
【0078】
<路面状態予測部の動作例>
路面状態予測部51の動作例を図6に示す。
路面状態予測部51は、例えば図5に示すような分散値データD11~D13を利用することで、図6に示すように損傷のない平坦な基準路面SR0の状態から、予測損傷領域ADが存在する損傷予測路面SR1の状態を予測できる。
【0079】
つまり、車体の上下方向の加速度の分散値が大きくなる位置に、凹凸や段差により平坦でないことが明らかな表面形状の領域、すなわち損傷が存在することを予測できる。
但し、車両の車輪が実際に通過していない箇所の損傷の影響は加速度に反映されないので、実際に路面に存在する損傷を予測できない場合もある。また、加速度の分散値だけを利用する場合には、損傷の種類や損傷の度合も区別できない。
【0080】
<サービス利用者に提供する出力データの例>
サービス提供用サーバ40の出力データ提供部53が各サービス利用者に提供する出力データの例を図7に示す。
【0081】
図7に示した例では、ドラレコで撮影した映像データに基づいて路面画像解析部45が損傷を検出した結果を反映した出力データD01、D02、およびD03を出力データ提供部53が各サービス利用者に提供する場合を想定している。サービス利用者は、自治体や道路維持管理事業者等を含む。
【0082】
図7の出力データD01は、処理した各映像データの記録開始日時、秒数、カメラ番号、緯度、経度、車両コード、検出した損傷のパターン(種類)、および損傷度合の分類レベルの一覧を表している。
【0083】
図7の出力データD02においては、道路地図上の対象道路の各位置に重畳した状態で、処理した映像データのうち、当該位置で取得された損傷検出結果データの存在を示すマークが表示されている。マークは、例えばピン状で表される。また、検出結果の損傷の種類や、損傷度合の違いが、マークの形状、大きさ、表示色等の表示態様を異ならせることにより表現されてもよい。
【0084】
図7の出力データD03においては、検出された損傷の検出に用いた映像データの1フレーム画像の路面SR2に重ねた状態で、検出結果の各損傷検出領域AD1、AD2を囲む矩形パターンの情報が付加してある。
【0085】
出力データ提供部53は、事前に契約した複数ユーザの車載システム10から取得したプローブデータの加速度に基づき算出した分散値の分布状況(図5参照)や、予測損傷領域ADのデータ(図6参照)をデータ出力用DB52から抽出して各サービス利用者に提供できる。
【0086】
また、出力データ提供部53は、複数の車載システム10のユーザから取得した映像データに基づき検出した図7のような出力データD01~D03をデータ出力用DB52から抽出して各サービス利用者に提供できる。
【0087】
また、出力データ提供部53は図5に示す分散値データD11~D13や、図6に示す各予測損傷領域ADのデータや、図7に示す出力データD01~D03を同じサービス利用者に対して同時に提供することができる。
【0088】
ここで、各分散値データD11~D13、各予測損傷領域ADのデータ、各出力データD01~D03は、道路上の位置(緯度/経度)により互いに紐付け可能な状態でデータ出力用DB52に登録されている。よって、出力データ提供部53は複数のデータを互いに紐付けして同じ場所のデータをサービス利用者に同時に提供することができる。
【0089】
例えば、サービス利用者が入力操作により図7中の出力データD03における損傷検出領域AD1を選択した場合に、同じ位置を図7中の出力データD02における地図上の注目位置の表示に反映したり、該当するデータを図7中の出力データD01の中から選択して強調表示することができる。更に、同じ場所にある図6中の予測損傷領域ADの箇所を表示したり、図5の分散値データD11~D13中の同じ緯度PLの箇所を強調表示することもできる。
【0090】
また、路面状態予測部51が予測した図6のような各予測損傷領域ADを、図5の地図M1上に重畳した状態で明示するように生成したデータを出力データ提供部53が出力することもできる。
【0091】
また、路面の損傷について施工業者が修繕工事を実施した場合には、その工事の修繕工法などを表す工事の実績情報を緯度、経度に対応付けてデータ出力用DB52に登録しておくことができる。データ出力用DB52に修繕工事の実績情報が存在する場合には、出力データ提供部53は、路面状態予測部51が予測した損傷データと、路面画像解析部45が検出した損傷データと、同じ位置の修繕工事の実績情報とを同時に、道路維持管理データとして各サービス利用者に提供できる。
【0092】
<補足説明>
ここで、上述した本発明の実施形態に係るデータ処理装置の特徴をそれぞれ以下[1]~[5]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 少なくとも車両上の所定の車載器(車載システム10)により走行中に撮影された映像を含む入力データと、第1のユーザ(複数の車両管理者20)が前記入力データの利用を許諾したことに基づく利用権と、を取得する外部データ取得部(ドラレコ用データ収集部42)と、
前記外部データ取得部が取得した前記入力データを処理して、前記映像に含まれる路面の損傷状況を位置と共に検出する路面損傷検出部(路面画像解析部45)と、
前記路面損傷検出部の処理結果を含む出力データを、第2のユーザ(自治体、道路管理事業者、道路工事事業者等)に対して提供するデータ出力部(出力データ提供部53)と、を備える、
データ処理装置(サービス提供用サーバ40)。
【0093】
上記[1]の構成のデータ処理装置によれば、路面の損傷把握に必要なデータの収集にかかる手間、時間、コストなどの削減が容易になり、損傷の検出精度の改善も容易になる。すなわち、外部データ取得部は車載器により走行中に撮影された映像を含む入力データと、その利用権とを取得する。よって、データを利用する管理者自身が車両を用いたパトロール走行によりデータを収集することなく、例えば不特定多数のユーザのそれぞれが個別に車両で走行中に収集し保有している多数の映像データを必要に応じて取得できる。このため、映像を取得するための作業の手間、時間、コストなどを大幅に削減できる。また、複数のユーザから映像データを取得可能にすることで、様々な道路における最新の路面状況を表す映像データを容易に入手できる。そのため、路面の損傷状況を表す解析後のデータを頻繁に更新し、顧客(第2のユーザ)に提供するデータの更新頻度を上げることも容易になる。第2のユーザとしては、例えば、自治体、道路管理業者、道路工事業者等、道路を管理するユーザが想定される。また、映像に基づいて損傷を検知するので、車両の各車輪が通過しない箇所の損傷も検出可能になる。また、マンホールのような特徴的なパターンは、映像に対するパターン認識により損傷と容易に区別できるので、誤検出を防止できる。
【0094】
[2] 前記外部データ取得部は、車両上の第1の車載器(車載システム10)により走行中に検出された上下方向の加速度を含む第1の入力データを前記第1の車載器から取得し、車両上の第2の車載器(車載システム10)により走行中に検出された映像を含む第2の入力データを前記第2の車載器から取得する機能を有し、
前記路面損傷検出部は、前記第1の入力データに含まれる加速度の分散値を算出し、前記分散値の時系列変化に基づいて路面状態を予測する予測部(路面状態予測部51)を有し、
前記データ出力部は、前記予測部が前記分散値の時系列変化に基づいて予測した路面状態と、前記路面損傷検出部が前記映像に基づいて検出した路面の損傷状況とを車両の位置情報に紐付けし、前記出力データとして出力する、
上記[1]に記載のデータ処理装置。
【0095】
上記[2]の構成のデータ処理装置によれば、自治体や道路管理事業者のように道路の損傷状況の把握を必要とするユーザは、前記出力データを取得することで、加速度の分散値から予測された路面の損傷状況と、映像から検出された損傷状況との両方の情報を同時に入手できる。よって、より正確な状況の把握が可能になる。また、前記予測部が前記分散値の時系列変化に基づいて路面状態を予測するので、新たに発生した損傷の検出や、補修工事前後の損傷状況の変化の把握が容易になる。
【0096】
[3] 前記外部データ取得部(データ対価提供部43)は、前記入力データを取得する際に、当該入力データの提供に対する所定の対価を前記第1のユーザに対して提供する(S14、S15)、
上記[1]又は[2]に記載のデータ処理装置。
【0097】
上記[3]の構成のデータ処理装置によれば、前記第1のユーザは映像を含む前記入力データを利用権と共に提供することでその対価を得ることができる。したがって、積極的に入力データを提供するユーザの数を増やすことが可能であり、路面の損傷を検知するために利用可能な大量のデータを必要に応じて収集することが容易になる。
【0098】
[4] 前記外部データ取得部は、前記入力データとして、車両に搭載されたドライブレコーダが常時記録モードで記録した時系列の映像データを、車両位置の情報と共に取得する(S15)、
上記[1]から[3]のいずれか一に記載のデータ処理装置。
【0099】
上記[4]の構成のデータ処理装置によれば、常時記録モードで動作するドライブレコーダは車両の走行中に自車両前方または後方の路面をほぼ連続的に撮影した時系列の映像データを記録できる。よって、このデータ処理訴追によれば、この映像データを車両位置の情報と共に取得することで、路面のほぼ全域を対象として損傷を検出しその損傷位置を特定するために利用可能なデータが得られる。
【0100】
[5] 前記路面損傷検出部は、前記入力データの映像に基づき路面の損傷状況を複数種類の損傷度合のいずれかに分類した状態で検出する機能(画像パターン認識部45a)を有し、
前記データ出力部は、少なくとも路面の損傷を検出した箇所の損傷度合、および車両位置の情報を前記第2のユーザに対して提供する、
上記[1]から[4]のいずれか一に記載のデータ処理装置。
【0101】
上記[5]の構成のデータ処理装置によれば、検出したそれぞれの損傷の損傷度合を把握できるので、良好な道路の路面状況を維持するために補修工事が必要な箇所の損傷と、補修工事が不要な箇所の損傷とを区別することが容易になる。
【符号の説明】
【0102】
10 車載システム
11 CPU
12 加速度センサ
14 車載カメラ
15 記録媒体
17 無線通信部
18 アンテナ
20,20A,20B 車両管理者
21,21A,21B 通信端末
22 自治体側機器
23,25,27 通信端末
24,26 事業者側機器
31 広域無線通信網
32 インターネット
40 サービス提供用サーバ
41A,41B 通信部
42 ドラレコ用データ収集部
43 データ対価提供部
44 ドラレコ用DB
45 路面画像解析部
45a 画像パターン認識部
45b 教師データ
45c 映像データ
45d 検出データ
46 デジタコ用データ収集部
47 デジタコ用DB
48 汎用サービス処理部
49 加速度分散値算出部
51 路面状態予測部
52 データ出力用DB
53 出力データ提供部
54 道路地図DB
55 サービス利用者管理部
56 車載器ユーザ管理部
57 車載器ユーザDB
AD 予測損傷領域
AD1,AD2 損傷検出領域
D11,D12,D13 分散値データ
D01,D02,D03 出力データ
M1 地図
P01,P02 位置座標
PL 緯度
Rm1 道路
SR0 基準路面
SR1 損傷予測路面
SR2 路面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7