(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147347
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】電動工具及び電動工具システム
(51)【国際特許分類】
B25F 5/00 20060101AFI20241008BHJP
B24B 23/02 20060101ALI20241008BHJP
B24B 49/12 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B25F5/00 C
B24B23/02
B24B49/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060298
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003052
【氏名又は名称】弁理士法人勇智国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 拓実
(72)【発明者】
【氏名】沼田 文年
(72)【発明者】
【氏名】矢加部 晃一
【テーマコード(参考)】
3C034
3C064
3C158
【Fターム(参考)】
3C034AA19
3C034BB93
3C034CA22
3C034CB11
3C034DD20
3C064AA01
3C064AA03
3C064AA04
3C064AA08
3C064AB01
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3C158AA02
3C158AC02
3C158BA09
3C158BC03
3C158CB04
(57)【要約】
【課題】電動工具におけるカメラの活用に関する改善を提供する。
【解決手段】電動工具は、少なくとも1つのアクセサリを取り外し可能に装着可能に構成されている。電動工具は、少なくとも1つのカメラと、判断部とを備える。少なくとも1つのアクセサリは、補助ハンドル、及び、前記電動工具に取り外し可能に装着された先端工具を少なくとも部分的に覆うカバーのうち少なくとも一方である。判断部は、少なくとも1つのカメラから出力される画像データを画像処理し、少なくとも、少なくとも1つのアクセサリが電動工具に取り付けられているか否かに基づき、少なくとも1つのアクセサリの状態が正常か否かを判断するように構成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのアクセサリを取り外し可能に装着可能な電動工具であって、
少なくとも1つのカメラと、
判断部とを備え、
前記少なくとも1つのアクセサリは、補助ハンドル、及び、前記電動工具に取り外し可能に装着された先端工具を少なくとも部分的に覆うカバーのうち少なくとも一方であって、
前記判断部は、前記少なくとも1つのカメラから出力される画像データを画像処理し、少なくとも、前記少なくとも1つのアクセサリが前記電動工具に取り付けられているか否かに基づき、前記少なくとも1つのアクセサリの状態が正常か否かを判断するように構成されていることを特徴とする電動工具。
【請求項2】
請求項1に記載の電動工具であって、
前記判断部は、機械学習による学習済みモデルに前記画像データを入力することで前記少なくとも1つのアクセサリの前記状態を推論し、前記少なくとも1つのアクセサリの状態が正常か否かを判断するように構成されていることを特徴とする電動工具。
【請求項3】
請求項2に記載の電動工具であって、
前記判断部は、プロセッサであって、
前記プロセッサは、前記学習済みモデルを記憶するメモリと共に、1つのチップとして構成されていることを特徴とする電動工具。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1つに記載の電動工具であって、
工具本体と、
前記工具本体に収容されたモータと、
使用者によって手動操作されるように構成された操作部材と、
前記操作部材に対する手動操作に応じてオンとされるように構成されたメインスイッチと、
前記メインスイッチの状態及び前記判断部の判断結果に基づいて、前記電動工具の動作を制御するように構成された制御部とを更に備え、
前記制御部は、前記メインスイッチがオンであり、且つ、前記判断部によって前記少なくとも1つのアクセサリの前記状態が正常であると判断されたときにのみ、前記モータの駆動を開始するように構成されていることを特徴とする電動工具。
【請求項5】
請求項4に記載の電動工具であって、
前記判断部は、前記モータの駆動中に、前記少なくとも1つのアクセサリの前記状態が正常か否かを定期的に判断するように構成されており、
前記制御部は、前記モータの駆動中に、前記判断部によって前記少なくとも1つのアクセサリの前記状態が正常でないと判断されるのに応じて、前記モータの駆動を停止する、又は、前記モータの回転数を低下させるように構成されていることを特徴とする電動工具。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の電動工具であって、
前記判断部と前記制御部とは、有線接続又は無線接続された別個のプロセッサであることを特徴とする電動工具。
【請求項7】
請求項1~6の何れか1つに記載の電動工具であって、
前記判断部によって前記少なくとも1つのアクセサリの前記状態が正常でないと判断されるのに応じて、異常を示す情報を報知するように構成された報知部を更に備えた電動工具。
【請求項8】
請求項1~7の何れか1つに記載の電動工具であって、
使用者の所定動作を検知するように構成された検知部を更に備え、
前記少なくとも1つのカメラ及び前記判断部は、前記検知部による前記所定動作の検知に応じて起動されるように構成されていることを特徴とする電動工具。
【請求項9】
請求項1~8の何れか1つに記載の電動工具であって、
前記少なくとも1つのアクセサリは、前記補助ハンドルであって、
前記判断部は、前記補助ハンドルが前記電動工具に取り付けられており、且つ、使用者によって前記補助ハンドルが把持されていると判断するのに応じて、前記少なくとも1つのアクセサリの前記状態が正常であると判断するように構成されていることを特徴とする電動工具。
【請求項10】
請求項1~9の何れか1つに記載の電動工具であって、
前記少なくとも1つのカメラと前記判断部とは、有線接続されていることを特徴とする電動工具。
【請求項11】
請求項1~10の何れか1つに記載の電動工具であって、
前記少なくとも1つのカメラを少なくとも部分的に覆うカメラガードを更に備えた電動工具。
【請求項12】
請求項1~11の何れか1つに記載の電動工具であって、
特定の方向から前記少なくとも1つのカメラのレンズに入射する光を遮るように構成されたレンズフードを更に備えた電動工具。
【請求項13】
請求項1~12の何れか1つに記載の電動工具であって、
前記電動工具には、前記少なくとも1つのアクセサリを装着可能な複数の装着位置が規定されており、
前記少なくとも1つのカメラは、1つのみのカメラであって、前記少なくとも1つのアクセサリが前記複数の装着位置の何れに取り付けられたときでも前記少なくとも1つのアクセサリを撮像可能な位置に配置されていることを特徴とする電動工具。
【請求項14】
請求項1~13の何れか1つに記載の電動工具であって、
前記電動工具は、グラインダであって、(i)前記モータに動作可能に連結され、前記モータの回転動力によって、前記モータの回転軸と交差する方向に延びる軸周りに回転するように構成されたスピンドルと、(ii)前記モータ及び前記スピンドルを収容する工具本体であって、前記モータの前記回転軸に沿って延びる長尺の工具本体とを備え、
前記少なくとも1つのカメラは、前記工具本体の長軸方向において、前記モータに対して前記スピンドルとは反対側に配置されていることを特徴とする電動工具。
【請求項15】
請求項14に記載の電動工具であって、
前記工具本体は、使用者によって把持されるように構成された把持部を含み、
前記少なくとも1つのカメラは、前記工具本体のうち前記把持部以外の部分に配置されていることを特徴とする電動工具。
【請求項16】
請求項14又は15に記載の電動工具であって、
前記少なくとも1つのアクセサリは、前記補助ハンドル及び前記カバーであって、
前記少なくとも1つのカメラは、1つのみのカメラであって、前記補助ハンドル及び前記カバーを撮像可能な位置に配置されていることを特徴とする電動工具。
【請求項17】
請求項1~16の何れか1つに記載の電動工具であって、
前記少なくとも1つのカメラは、前記先端工具の駆動軸からオフセットされた位置にあることを特徴とする電動工具。
【請求項18】
電動工具システムであって、
少なくとも1つのアクセサリを取り外し可能に装着可能な電動工具であって、少なくとも1つのカメラを備えた電動工具と、
前記少なくとも1つのカメラによる撮像画像の画像データを、機械学習による学習済みモデルに入力することで、前記少なくとも1つのアクセサリの状態を推論し、前記少なくとも1つのアクセサリの状態が正常か否かを判断するように構成された判断部と備えた電動工具システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アクセサリを取り外し可能に取り付け可能な電動工具、及び、アクセサリを取り外し可能に取り付け可能な電動工具を含む電動工具システムに関する。
【背景技術】
【0002】
カメラによって撮影された画像の画像データを用いて、作業対象を特定し、処理を行う電動工具が知られている。例えば、特許文献1には、カメラによる撮像画像と基準画像との比較結果に基づいて、複数の作業対象のうち撮像画像に写る作業対象を、工具がセットされた作業対象として特定することが可能な可搬型の工具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の電動工具は、作業対象の特定結果をその後の処理に活用している。しかしながら、カメラにより得られる撮像画像に関しては、更なる活用の余地がある。
【0005】
本開示は、電動工具におけるカメラの活用に関する改善を提供することを、非限定的な1つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の非限定的な1つの態様によれば、少なくとも1つのアクセサリを取り外し可能に装着可能な電動工具が提供される。この電動工具は、少なくとも1つのカメラと、判断部とを備える。本態様の少なくとも1つのアクセサリは、補助ハンドル、及び、電動工具に取り付けられた先端工具を少なくとも部分的に覆うカバーのうち少なくとも一方である。判断部は、少なくとも1つのカメラから出力される画像データを画像処理し、少なくとも、少なくとも1つのアクセサリが電動工具に取り付けられているか否かに基づき、少なくとも1つのアクセサリの状態が正常か否かを判断するように構成されている。
【0007】
なお、「アクセサリ」とは、電動工具に補助的に取り付けられて電動工具と共に使用される器具/装置をいう。補助ハンドルを取り付け可能な電動工具として、例えば、先端工具を駆動軸周りに回転駆動するいわゆる回転工具(例えば、グラインダ)や穿孔工具(例えば、ハンマドリル、ドライバドリル)がある。また、カバーとしては、例えば、グラインダに取り付けられる円板状の先端工具(例えば、砥石、ゴムパッド、ブラシ、ブレード)用のホイールカバー(ホイールガードともいう)、ハンマ、ハンマドリルに取り付けられる長尺状の先端工具用の集塵アタッチメントが挙げられる。
【0008】
電動工具に取り付け可能なアクセサリのうち、補助ハンドルや、先端工具を少なくとも部分的に覆うように構成されたカバーは、電動工具に取り付けられているか否かで、作業環境に大きな影響を与えうる。本態様の電動工具の判断部は、少なくとも1つのカメラによる撮像画像の画像データを用いて、少なくとも、補助ハンドル及び/又はカバーが取り付けられているか否かに基づき、補助ハンドル及び/又はカバーの状態が正常か否かを判断する。これにより、判断結果を、その後の適切な処理(例えば、モータの制御、使用者に対する情報報知)に活用することが可能となる。
【0009】
本開示の非限定的な別の1つの態様によれば、電動工具と判断部とを備えた電動工具システムが提供される。電動工具は、少なくとも1つのアクセサリを取り外し可能に装着可能に構成されている。また、電動工具は、少なくとも1つのカメラを備える。判断部は、少なくとも1つのカメラによる撮像画像の画像データを、機械学習による学習済みモデルに入力することで、少なくとも1つのアクセサリの状態を推論し、少なくとも1つのアクセサリの状態が正常か否かを判断するように構成されている。なお、本態様において、判断部は、電動工具に設けられていてもよい。あるいは、判断部は、電動工具とは別個の外部装置に設けられていてもよい。電動工具と外部装置とは、ネットワークを介して接続されていてもよいし、無線又は有線で直接接続されていてもよい。
【0010】
本態様の電動工具システムの判断部は、少なくとも1つのカメラによる撮像画像の画像データを用いて、少なくとも、補助ハンドル及び/又はカバーが取り付けられているか否かに基づき、補助ハンドル及び/又はカバーの状態が正常か否かを判断する。これにより、判断結果を、その後の適切な処理(例えば、モータの制御、使用者に対する情報報知)に活用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】カメラガードを介して工具本体に取り付けられたカメラ(AIユニット)の斜視図である。
【
図5】グラインダのコントローラによって実行される動作制御処理のフローチャートである。
【
図6】
図5に示す動作制御処理のフローチャートの続きである。
【
図7】推論チップによって実行される推論処理のフローチャートである。
【
図8】第2実施形態のグラインダの左側面図である。
【
図9】第3実施形態のハンマドリルの左側面図である。
【
図12】第4実施形態のハンマドリルの左側面図である。
【
図13】第5実施形態のドライバドリルの左側面図である。
【
図14】第6実施形態の電動工具システムの全体構成の説明図である。
【
図15】第7実施形態の電動工具システムの全体構成の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の非限定的な一実施形態において、判断部は、機械学習による学習済みモデルに画像データを入力することで少なくとも1つのアクセサリの状態を推論し、少なくとも1つのアクセサリの状態が正常か否かを判断するように構成されていてもよい。この実施形態によれば、予め適切な機械学習により学習済みモデルを生成しておくことで、補助ハンドル及び/又はカバーの状態が正常か否かを高精度に判断することが可能となる。なお、機械学習による学習済みモデルは、予め、電動工具において機械学習により生成されてもよい。あるいは、機械学習による学習済みモデルは、電動工具とは異なる外部装置で生成され、例えば、電動工具のメモリ/記憶装置に記憶されうる。
【0013】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、判断部は、プロセッサであって、プロセッサは、学習済みモデルを記憶するメモリと共に、1つのチップとして構成されていてもよい。この実施形態によれば、学習済みモデルを用いた推論機能を電動工具に容易に付加することができる。
【0014】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、電動工具は、工具本体と、モータと、操作部材と、メインスイッチと、制御部とを備えてもよい。モータは、工具本体に収容されていてもよい。操作部材は、使用者によって手動操作されるように構成されていてもよい。メインスイッチは、操作部材に対する手動操作に応じてオンとされるように構成されていてもよい。制御部は、メインスイッチの状態及び判断部の判断結果に基づいて電動工具の動作を制御するように構成されていてもよい。制御部は、メインスイッチがオンであり、且つ、判断部によって少なくとも1つのアクセサリの状態が正常であると判断されたときにのみ、モータの駆動を開始するように構成されていてもよい。この実施形態によれば、補助ハンドル及び/又はカバーの状態が正常でないにもかかわらず、モータの駆動が開始される可能性を低減することができる。なお、少なくとも1つのアクセサリが、補助ハンドル及びカバーである場合には、制御部は、メインスイッチがオンであり、且つ、判断部によって補助ハンドル及びカバーの状態が何れも正常であると判断されたときにのみ、モータの駆動を開始するように構成されていてもよい。
【0015】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、判断部は、モータの駆動中に、少なくとも1つのアクセサリの状態が正常か否かを定期的に判断するように構成されていてもよい。制御部は、モータの駆動中に、判断部によって補助ハンドル及び/又はカバーの状態が正常でないと判断されるのに応じて、モータの駆動を停止する、又は、モータの回転数を低下させるように構成されていてもよい。この実施形態によれば、補助ハンドル及び/又はカバーの状態が正常でなくなった場合、モータの駆動を速やかに停止させることができる。
【0016】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、判断部と制御部とは、有線接続又は無線接続された別個のプロセッサであってもよい。この実施形態によれば、制御部が画像処理をする必要がないため、制御部の処理負担を小さくすることができる。
【0017】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、電動工具は、判断部によって少なくとも1つのアクセサリの状態が正常でないと判断されるのに応じて、異常を示す情報を報知するように構成された報知部を更に備えてもよい。この実施形態によれば、使用者は、補助ハンドル及び/又はカバーが正常な状態にないことを認識し、必要な措置を取ることができる。なお、報知部により報知される情報の形態は特に限定されず、例えば、音、光、画像等による情報の報知が採用されうる。報知部は、情報の形態に応じて、例えば、ブザー、スピーカ、発光装置(例えばLED)、ディスプレイ等として具現化されうる。
【0018】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、電動工具は、使用者の所定動作を検知するように構成された検知部を更に備えてもよい。少なくとも1つのカメラ及び判断部は、検知部による所定動作の検知に応じて起動されるように構成されていてもよい。この実施形態によれば、少なくとも1つのカメラ及び判断部による消費電力を節約することができる。所定動作の検知方式は特に限定されず、検知部には、例えば、周知の構成を有する機械式のスイッチや、静電容量式、光学式、超音波式等のセンサが採用されうる。使用者による所定動作は、例えば、スイッチの操作、センサに手を近づける動作、所定位置に手を配置する動作等である。
【0019】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、少なくとも1つのアクセサリは、補助ハンドルであってもよい。判断部は、補助ハンドルが電動工具に取り付けられており、且つ、使用者によって補助ハンドルが把持されていると判断するのに応じて、少なくとも1つのアクセサリの状態が正常であると判断するように構成されていてもよい。この実施形態によれば、補助ハンドルが電動工具に取り付けられていても使用者によって把持されていない場合に、適切な処理を行うことができる。
【0020】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、少なくとも1つのカメラと判断部とは、有線接続されていてもよい。この実施形態によれば、膨大な画像データを、無線接続の場合よりも高速且つ確実に、カメラから判断部へ出力することができる。
【0021】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、電動工具は、少なくとも1つのカメラを少なくとも部分的に覆うカメラガードを更に備えてもよい。この実施形態によれば、例えば電動工具が床や地面に落下したときに、カメラガードが少なくとも1つのカメラを衝撃から保護することができる。
【0022】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、電動工具は、特定の方向から少なくとも1つのカメラのレンズに入射する光を遮るように構成されたレンズフードを更に備えてもよい。この実施形態によれば、好ましくない方向からの光を遮ることで、補助ハンドル及び/又はカバーを適切に撮影することができる。
【0023】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、電動工具には、少なくとも1つのアクセサリを装着可能な複数の装着位置が規定されていてもよい。少なくとも1つのカメラは、1つのみのカメラであって、少なくとも1つのアクセサリが複数の装着位置の何れに取り付けられたときでも少なくとも1つのアクセサリを撮像可能な位置に配置されていてもよい。この実施形態によれば、補助ハンドルの使用態様にかかわらず、最小限の数のカメラを用いて補助ハンドル及び/又はカバーの状態を判断することができる。
【0024】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、電動工具は、グラインダであってもよい。グラインダは、スピンドルと、モータ及びスピンドルを収容する工具本体とを備えてもよい。スピンドルは、モータに動作可能に連結され、モータの回転動力によって、モータの回転軸と交差する方向に延びる軸周りに回転するように構成されていてもよい。工具本体は、長尺状に形成され、モータの回転軸に沿って延びていてもよい。少なくとも1つのカメラは、工具本体の長軸方向において、モータに対してスピンドルとは反対側に配置されていてもよい。この実施形態によれば、少なくとも1つのカメラの合理的な配置が実現される。
【0025】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、工具本体は、使用者によって把持されるように構成された把持部を含んでもよい。少なくとも1つのカメラは、工具本体のうち把持部以外の部分に配置されていてもよい。この実施形態によれば、少なくとも1つのカメラが、工具本体の把持部(メイングリップ)を把持する邪魔になりにくい。
【0026】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、少なくとも1つのアクセサリは、補助ハンドル及びカバーであってもよい。少なくとも1つのカメラは、1つのみのカメラであって、補助ハンドル及びカバーを撮像可能な位置に配置されていてもよい。この実施形態によれば、最小限の数のカメラを用いて、補助ハンドル及びカバーの状態を判断することができる。
【0027】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、少なくとも1つのカメラは、先端工具の駆動軸からオフセットされた位置にあってもよい。一般的に、補助ハンドルは、駆動軸に近い位置で電動工具に取り付けられる。また、カバーは、先端工具を少なくとも部分的に覆うものである。この実施形態によれば、少なくとも1つのカメラを、補助ハンドル及び/又はカバーを撮影しやすい位置に配置することができる。
【0028】
以下、図面を参照して、本開示の代表的且つ非限定的な実施形態について具体的に説明する。
【0029】
<第1実施形態>
以下、
図1~
図7を参照して、第1実施形態に係る電動式のディスクグラインダ2A(以下、単にグラインダ2Aという)について説明する。グラインダ2Aは、電動工具の一例である。より詳細には、グラインダ2Aは、円板状の先端工具91(例えば、砥石、ゴムパッド、ブラシ、ブレード)を回転駆動することで加工作業(例えば、研削、研磨、切断)を行うように構成された回転工具の一例である。
【0030】
まず、グラインダ2Aの物理的構成について説明する。
【0031】
図1及び
図2に示すように、グラインダ2Aの外郭は、工具本体20Aによって形成されている。工具本体20Aは、全体として長尺状の中空体として構成されている。
【0032】
工具本体20Aには、モータ21が収容されている。モータ21は、その出力シャフト211の回転軸RXが工具本体20Aの長軸方向に延びるように配置されている。工具本体20Aの長軸方向の一端部には、スピンドル23が収容されている。スピンドル23は、モータ21の出力シャフト211に動作可能に連結されており、モータ21の回転動力によって、駆動軸DX周りに回転駆動されるように構成されている。
【0033】
スピンドル23の軸方向の一端部は、工具本体20Aから外部に突出している。この一端部は、先端工具91を取り外し可能に保持するように構成されており、工具装着部231と称される。スピンドル23は、モータ21の駆動に応じて、工具装着部231に装着された先端工具91を回転駆動する。
【0034】
工具本体20Aの長軸方向の他端部は、グラインダ2Aの電源であるバッテリ95を取り外し可能に受けるように構成されたバッテリ装着部207を備えている。周知の構成であるため、詳細な説明及び図示は省略するが、バッテリ装着部207は、バッテリ95の溝に物理的に係合可能なレールと、バッテリ95の端子に電気的に接続可能な端子とを備えている。
【0035】
なお、スピンドル23の駆動軸DXは、出力シャフト211の回転軸RXに交差する方向(より詳細には、直交する方向)に延在する。以下の説明では、便宜上、出力シャフト211の回転軸RXの延在方向(工具本体20Aの長軸方向でもある)を、グラインダ2Aの前後方向と規定する。前後方向において、スピンドル23が配置されている側を、グラインダ2Aの前側と規定し、反対側(バッテリ装着部207が配置されている側)をグラインダ2Aの後側と規定する。また、駆動軸DXの延在方向を、グラインダ2Aの上下方向と規定する。上下方向において、工具装着部231が配置されている側を、グラインダ2Aの下側と規定し、反対側をグラインダ2Aの上側と規定する。前後方向と上下方向に直交する方向を、グラインダ2Aの左右方向と規定する。
【0036】
工具本体20Aの長軸方向(前後方向)における略中央部は、使用者によって把持されるように構成された把持部203を構成する。把持部203は、使用者が把持しやすい太さに形成されており、工具本体20Aのうち、モータ21及びスピンドル23を収容する前端部201や、バッテリ装着部207を有する後端部202よりも径が小さい。なお、使用者は、後述のサイドハンドル71Aも補助的に把持することができるため、工具本体20Aの把持部203は、メイングリップであるということもできる。
【0037】
把持部203の下側には、トリガ(スイッチレバーともいう)213が設けられている。トリガ213は、使用者が把持部203を把持した状態で押圧操作可能な操作部材である。把持部203内には、モータ21の起動用のメインスイッチ214が配置されている。メインスイッチ214は、常時にはオフであり、トリガ213が押圧されている間、オンとされるように構成されている。メインスイッチ214は、後述のコントローラ25に接続されている。なお、本開示では、電気/電子部品が「接続されている」との記載は、電気的に/通信可能に接続されていることを意味する。また、特に「電線で接続されている(有線接続されている)」又は「無線接続されている」との記載がある場合を除き、有線で接続されている、及び、無線接続されている、の何れでもよいことを意味する。
【0038】
工具本体20Aの後端部202には、コントローラ25が収容されている。コントローラ25は、グラインダ2Aの動作を制御するように構成されている。コントローラ25の詳細については後述する。
【0039】
また、工具本体20Aには、サイドハンドル)71Aとホイールカバー81とを取り外し可能に装着可能である。サイドハンドル71A及びホイールカバー81は、何れも、グラインダ2Aに補助的に取り付けられてグラインダ2Aと共に使用される器具/装置(アクセサリ)の一例である。
【0040】
図2に示すサイドハンドル71Aは、把持部203(メイングリップ)に加えて補助的に把持されるハンドルであって、補助ハンドルとも称される。サイドハンドル71Aは、使用者がグラインダ2Aを両手で保持することを可能とし、使用者が、例えば先端工具91がロックされたとき工具本体20Aに生じる反動トルクに対抗する保持力を高めることができる。
【0041】
サイドハンドル71Aは、把持部711と、取付け部713とを含む。把持部711は、長尺状の部分であって、使用者によって把持されるように構成されている。取付け部713は、把持部711の一端部から突出する部分であって、工具本体20Aに取り付けられる(連結固定される)ように構成されている。本実施形態の取付け部713は、雄ネジ部として構成されている。これに対応して、工具本体20Aの前端部201には、取付け部713(雄ネジ部)を締め込み可能な雌ネジ部として構成されたハンドル取付け部206が設けられている。なお、本実施形態では、工具本体20Aのハンドル取付け部206は、左側部及び右側部に夫々設けられている。使用者は、利き手や作業環境に応じて2つのハンドル取付け部206のうち何れか一方にサイドハンドル71Aを取り付けて使用することができる。サイドハンドル71Aが工具本体20Aに取り付けられると、把持部711は、工具本体20Aから左方又は右方に突出する。
【0042】
図1に示すホイールカバー81は、加工作業で生じた加工材の破片や粉塵の飛散を抑制するとともに、先端工具91から使用者を保護するための部材であって、ホイールガードとも称される。周知の構成であるため、詳細な説明及び図示は省略するが、ホイールカバー81の取付け部811は、工具本体20Aの前端部201の下端部の周囲に、ネジ又はクランプレバーによって、取り外し可能に取り付け可能である。ホイールカバー81は、工具本体20Aに取り付けられると、スピンドル23の工具装着部231及び先端工具91を部分的に覆う。
【0043】
本実施形態のグラインダ2Aは、サイドハンドル71A及びホイールカバー81の状態を推論(判断)し、推論結果(判断結果)に応じてグラインダ2Aの動作を制御するように構成されている。このために、本実施形態のグラインダ2Aには、AIユニット10が設けられている。
【0044】
図1に示すように、本実施形態のAIユニット10は、カメラ11と、カメラ11から出力された画像データに基づき、サイドハンドル71A及びホイールカバー81の状態を推論するように構成された推論チップ13とを備えている。
【0045】
図3に示すように、カメラ11は、レンズ117と、カメラ本体110とを備える。カメラ本体110は、本体ケース111と、本体ケース111に収容された撮像素子113(
図4参照)を備えている。撮像素子113は、レンズ117から入った被写体の光を電気信号に変換し、画像データとして出力する。なお、撮像素子113の種類は特に限定されないが、例えば、CCD(Charge Coupled Device)、CMOS( Complementary Metal Oxide Semiconductor)を採用することができる。
【0046】
詳細は後述するが、本実施形態では、サイドハンドル71Aが工具本体20Aの何れか一方のハンドル取付け部206に取り付けられ、且つ、使用者によって把持されているか否かと、ホイールカバー81が取り付けられているか否かに応じて、グラインダ2Aの動作が制御される。このために、カメラ11によって撮影された画像の画像データが利用される。よって、カメラ11は、単独で、(i)工具本体20Aに取り付けられたサイドハンドル71Aの少なくとも一部と、(ii)把持部711を把持する手の少なくとも一部と、(iii)工具本体20Aに取り付けられたホイールカバー81の少なくとも一部とを、同時に撮影できることが望ましい。なお、以下では、工具本体20Aと、工具本体20Aに取り付けられたサイドハンドル71Aと、把持部711を把持する使用者の手と、工具本体20Aに取り付けられたホイールカバー81の各々を、対象物ともいう。
【0047】
図1に示すように、本実施形態では、カメラ11(詳細には、カメラ11を含むAIユニット10)は、工具本体20Aの後端部202、つまり、把持部203よりも後方にある部分の下面に、カメラ11のレンズ117が前方を向くように取り付けられている。より詳細には、カメラ11は、後端部202の後端にあるバッテリ装着部207の下面に取り付けられている。
【0048】
バッテリ装着部207は、後端部202の最後端、つまり、前後方向においてサイドハンドル71A及びホイールカバー81から最も離れた位置にある。また、バッテリ装着部207の下端は、工具本体20Aの後端部202で最も下方に位置する。よって、カメラ11をバッテリ装着部207の下側に取り付けることで、特に広角のレンズを用いることなく、カメラ11の撮影範囲Rに対象物を収めることができる。また、上述のように、把持部203は他の部分よりも小径であり、後端部202は、把持部203よりも下方に突出している。よって、使用者がサイドハンドル71Aを握る手とは別の手で把持部203を把持しているときでも、この手が、対象物の撮影の邪魔にならない。
【0049】
図3に示すように、カメラ11(AIユニット10)は、カメラガード15に支持された状態で、工具本体20Aに固定されている。カメラガード15は、カメラ11を支持するフレーム150と、フレーム150に取り付けられた弾性体155とを含む。フレーム150は、例えばネジで工具本体20Aに取り付けられる矩形状の取付け板151と、取付け板151から下方に突出する矩形板状の2つの側板153とを含む。弾性体155は、側板153の下端の2つの角を覆うように、側板153に取り付けられている。弾性体155は、衝撃を吸収可能な部材であればよく、例えば、ゴム、合成樹脂の発泡体が採用されうる。
【0050】
カメラ11は、取付け板151と側板153とによって上方、左方、右方から囲まれた状態で、フレーム150に支持されている。カメラ11は、前後方向、上下方向、左右方向の全てにおいて、フレーム150から突出しない。よって、グラインダ2Aが床/地面に落下したときには、カメラ11ではなくカメラガード15が先に床/地面に衝突する。これにより、カメラ11の破損の可能性を低減することができる。また、フレーム150に取り付けられた弾性体155が、効果的に衝撃を吸収することができる。
【0051】
また、レンズ117には、レンズフード118が取り付けられている。レンズフード118は、カメラ11による対象物の撮影に悪影響を与えうる光(カメラ11の撮影範囲Rとは異なる方向からの光)を少なくとも部分的に遮るように構成されている。本実施形態では、レンズフード118は、レンズ117の上方及び下方から前方に突出しており、レンズ117の上方及び下方からの光がレンズ117に入射するのを妨げることができる。
【0052】
図1に示すように、本実施形態では、推論チップ13は、カメラ本体110の本体ケース111(
図3参照)に収容され、カメラ11と共にAIユニット10を構成している。詳細は後述するが、
図4に示すように、推論チップ13は、電線によって撮像素子113に接続されており、撮像素子113から出力された画像データを処理して、サイドハンドル71A及びホイールカバー81の状態を推論(判断)するように構成されている。なお、本実施形態では、撮像素子113から推論チップ13へ膨大な画像データが出力される。このため、撮像素子113と推論チップ13とを無線接続でなく有線接続することで、処理速度と正確性が担保されている。また、推論チップ13は、コントローラ25に接続されており、推論結果をコントローラ25に出力する。
【0053】
本実施形態の推論チップ13は、人工知能アプリケーションが搭載されたチップ/集積回路(いわゆるAIチップ)の一種であって、学習済みモデルを用いて推論処理を実行するものである。本実施形態の推論チップ13は、プロセッサ131と、学習済みモデル及びプロセッサ131が読みだして実行する指示(アプリケーション/プログラム)が記憶されたメモリ133とを備える。プロセッサ131としては、例えば、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)が採用されうるが、他の種類のプロセッサ/処理回路(例えば、CPU(Central Processing Unit))が採用されてもよい。メモリ133は、不揮発性のメモリである。
【0054】
学習済みモデル(トレーニング済みモデルともいう)とは、特定の種類のパターンを認識するように機械学習(トレーニング)がなされたモデルをいう。本実施形態では、学習済みモデルは、工具本体20Aに取り付けられ、使用者によって把持されているサイドハンドル71Aと、工具本体20Aに取り付けられたホイールカバー81とを認識するように、学習が行われている。本実施形態では、機械学習は、予め、グラインダ2Aとは異なる学習用の情報処理装置(不図示)において行われている。機械学習は、いかなる公知の手法で行われてもよいが、非限定的な一例として、ニューラルネットワークを用いた深層学習が好適に採用されうる。
【0055】
例えば、サイドハンドル71Aの正常な取付け・把持状態及びホイールカバー81の正常な取付け状態を示す大量の画像データ(教師データ)をモデルに提供し、深層学習させることで、学習済みモデルが生成されうる。この学習済みモデルは、画像データが入力されると、サイドハンドル71Aが正常な取付け・把持状態にあり、且つ、ホイールカバー81が正常な取付け状態にあることの確信度(確率)を出力する。推論チップ13による学習済みモデルを用いた推論処理については後で詳述する。
【0056】
なお、以下の説明では、便宜上、サイドハンドル71Aが正常な取付け・把持状態にあり、且つ、ホイールカバー81が正常な取付け状態にあるという条件を満たすことを、単に、「サイドハンドル71A及びホイールカバー81が正常状態にある」という。一方、この条件を満たさないことを、「サイドハンドル71A及びホイールカバー81が異常状態にある」という。
【0057】
本実施形態では、AIユニット10は、AIユニット起動スイッチ18の手動操作に応じて起動されるように構成されている。
図1に示すように、AIユニット起動スイッチ18は、工具本体20Aの前端部201(把持部203の前方)の上部に設けられている。AIユニット起動スイッチ18は、上述のAIユニット10(カメラ11及び推論チップ13)の起動用のスイッチである。本実施形態のAIユニット起動スイッチ18は、押しボタンスイッチであって、使用者の押圧操作に応じてオン/オフされるように構成されている。なお、AIユニット起動スイッチ18は、他の機械式スイッチであてもよい。AIユニット起動スイッチ18は、コントローラ25に接続されている。
【0058】
更に、グラインダ2Aには、AIユニット10によるサイドハンドル71A及びホイールカバー81の状態の推論結果を報知するように構成された報知部17が設けられている。本実施形態の報知部17は、光により情報を報知するように構成されている。具体的には、報知部17は、赤色LED171と、緑色LED173とを備えている(
図4参照)。報知部17は、使用者が容易に視認可能な工具本体20Aの後端部202の上部に設けられている。報知部17は、コントローラ25に接続されている。
【0059】
以下、グラインダ2Aのハードウェア構成について説明する。
【0060】
図4に示すように、グラインダ2Aは、グラインダ2Aの動作制御を司るコントローラ25を備えている。本実施形態のコントローラ25には、CPU251、ROM252、RAM253、不揮発性のメモリ254等を含むマイクロコンピュータが採用されている。但し、コントローラ25には、他の種類のプロセッサ/処理回路(例えば、GPU、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、FPGA(Field Programmable Gate Array))が採用されてもよい。
【0061】
また、コントローラ25には、駆動回路257と、メインスイッチ214と、AIユニット起動スイッチ18と、AIユニット10と、報知部17とが接続されている。
【0062】
駆動回路257は、モータ21を駆動するための回路である。メインスイッチ214は、トリガ213の押圧操作に応じてオンとされている間、コントローラ25に特定の信号を出力する。AIユニット起動スイッチ18は、オン/オフされるのに応じて、コントローラ25に特定の信号を出力する。コントローラ25は、AIユニット起動スイッチ18からの信号に応じて、AIユニット10(詳細には、カメラ11の撮像素子113及び推論チップ13)への電力供給を制御する。
【0063】
推論チップ13のプロセッサ131は、推論結果を示す信号をコントローラ25に出力する。コントローラ25は、メインスイッチ214からの信号と、推論チップ13からの信号とに基づき、駆動回路257を介してモータ21の駆動を制御する。また、コントローラ25は、推論チップ13からの信号に基づき、報知部17の赤色LED171と、緑色LED173を点灯/点滅/消灯させる。なお、本実施形態では、赤色LED171は、サイドハンドル71A及びホイールカバー81が異常状態にあるときに点灯/点滅される。緑色LED173は、サイドハンドル71A及びホイールカバー81が正常状態にあるときに点灯される。
【0064】
以下、コントローラ25(詳細には、CPU251)によって実行されるグラインダ2Aの動作制御処理について説明する。以下に説明する処理は、グラインダ2Aへの電力供給が開始されると(つまり、バッテリ95がバッテリ装着部207に装着されると)開始され、グラインダ2Aへの電力供給が停止されると(つまり、バッテリ95がバッテリ装着部207から取り外されると)終了される。この処理は、CPU251がROM252、又はメモリ254に記憶されたプログラムを読み出して実行することで実現される。なお、以下の説明および図では、処理中の各「ステップ」を「S」と簡略表記する。
【0065】
図5に示すように、処理が開始されると、CPU251は、AIユニット10の起動指示を取得するまで待機する(S101:NO、S101)。より詳細には、CPU251は、AIユニット起動スイッチ18がオンであることを示す信号を取得したか否かに応じて、AIユニット10の起動指示を取得したか否かを判断する。なお、処理開始時には、報知部17の赤色LED171及び緑色LED173は、何れも消灯された初期状態にある。使用者は、赤色LED171及び緑色LED173が何れも消灯状態であることで、AIユニット起動スイッチ18がオフであることを容易に認識することができる。
【0066】
AIユニット起動スイッチ18がオンとされ、CPU251がAIユニット10の起動指示を取得したと判断すると(S101:YES)、CPU251は、AIユニット10(撮像素子113及び推論チップ13)に電力を供給し、AIユニット10を起動する(S103)。起動後は、カメラ11は定期的に撮影を行い、撮像素子113から推論チップ13のプロセッサ131に画像データが出力される。
【0067】
推論チップ13のプロセッサ131は、撮像素子113から画像データを受け付ける度に、メモリ133に記憶された指示に従って、
図7に示す推論処理を実行する。この推論処理では、プロセッサ131はまず、撮像素子113から入力された画像データを学習モデルに入力する(S211)。プロセッサ131は、学習モデルから出力された確信度(確率)が予め定められた閾値を超えるか否かを判断する(S213)。プロセッサ131は、確信度が閾値を超えると判断した場合には(S213:YES)、推論結果として、サイドハンドル71A及びホイールカバー81が正常状態にあることを示す信号(以下、正常信号という)をコントローラ25に出力し(S215)、処理を終了する。一方、プロセッサ131は、確信度が閾値以下であると判断した場合には(S213:NO)、推論結果として、サイドハンドル71A及びホイールカバー81が異常状態にあることを示す信号(以下、異常信号という)をコントローラ25に出力し(S217)、処理を終了する。
【0068】
図5に示すように、コントローラ25のCPU251は、推論チップ13から出力された推論結果(正常信号又は異常信号)を取得する(S105)。CPU251は、正常信号を取得したか否か、つまり、サイドハンドル71A及びホイールカバー81が正常状態にあるか否かを判断する(S107)。取得したのが異常信号の場合(S107:NO)、CPU251は、報知部17の緑色LED173は消灯状態のまま、赤色LED171を点灯させる(S109)。
【0069】
CPU251は、異常信号を取得し続ける間、つまり、使用者がサイドハンドル71A及びホイールカバー81をグラインダ2Aに取り付けていない、又は、サイドハンドル71Aを把持していない異常状態にある間は、S105、S107、S109の処理を繰り返す。赤色LED171の点灯により、使用者は、サイドハンドル71A及びホイールカバー81が異常状態であることを容易に認識することができる。よって、使用者は、サイドハンドル71A及びホイールカバー81を正常状態とする措置を取る(例えば、サイドハンドル71A/ホイールカバー81をグラインダ2Aに取り付ける、サイドハンドル71Aを握る)ことができる。
【0070】
CPU251は、正常信号を取得した場合(S107:YES)、赤色LED171を消灯させる/消灯状態のままとし、緑色LED173を点灯させる(S111)。緑色LED173の点灯により、使用者は、サイドハンドル71A及びホイールカバー81が正常状態であることを容易に認識することができる。
【0071】
CPU251は、使用者がトリガ213を押圧操作し、メインスイッチ214がオンとされるまで待機する(S113:NO、S113)。CPU251は、メインスイッチ214がオンとされるのに応じて、モータ21に通電を開始することで、モータ21の駆動を開始する(S113:YES、S115)。このように、CPU251は、サイドハンドル71A及びホイールカバー81が正常状態である場合に限り、モータ21の駆動を開始する。よって、使用者がサイドハンドル71A及びホイールカバー81をグラインダ2Aに取り付けていない状態や、サイドハンドル71Aを把持していない状態でモータ21が駆動される可能性が低減される。
【0072】
図6に示すように、サイドハンドル71A及びホイールカバー81が正常状態でモータ21が駆動されている間に、使用者がトリガ213の押圧を解除した場合、CPU251は、メインスイッチ214がオンでないと判断する(S121:NO)。この場合、CPU251は、モータ21の駆動を停止し(S141)、赤色LED171は消灯状態のまま、緑色LED173も消灯させ(S143)、後述するS135の処理に進む。
【0073】
CPU251は、モータ21の駆動開始後、メインスイッチ214がオンであれば(S121:YES)、推論チップ13の推論結果を取得し(S123)、正常信号が取得されたか否かの判断を行う(S125)。正常信号が取得されていれば(S125:YES)、S121の処理に戻る。よって、メインスイッチ214がオンであり、サイドハンドル71A及びホイールカバー81が正常状態である間は、モータ21の駆動状態が維持される。
【0074】
一方、モータ21の駆動中に使用者がサイドハンドル71Aから手を離すと、推論チップ13のプロセッサ131は、サイドハンドル71Aが把持されていない状態の画像の画像データに基づき、推論結果として異常信号を出力する。よって、CPU251は、異常信号が取得されたと判断し(S125:NO)、モータ21への通電を停止することで、モータ21の駆動を停止する(S127)。このように、本実施形態では、サイドハンドル71Aが異常状態となるのに応じて、モータ21の駆動が速やかに停止される。更に、CPU251は、報知部17の赤色LED171を点滅させ、緑色LED173を消灯させる(S129)。これにより、使用者は、サイドハンドル71Aから手を離したことで、モータ21の駆動が停止されたことを容易に認識することができる。なお、S127では、CPU251は、モータ21の駆動を停止するのではなく、モータ21の回転数を低下させてもよい。
【0075】
CPU251は、メインスイッチ214がオフであるか否かを判断する(S131)。使用者が、サイドハンドル71Aから手を離したまま、トリガ213を押圧し続けている場合、メインスイッチ214はオンのままであるため、CPU251は、メインスイッチ214がオフとされるまで監視する(S131:NO、S131)。つまり、本実施形態では、一旦、サイドハンドル71A及びホイールカバー81が異常状態となると、使用者がトリガ213の押圧を解除するリセット動作をしない限り、CPU251は処理を進めない。これにより、不意にモータ21の駆動が再開されることが回避される。使用者によるトリガ213の押圧が解除され、メインスイッチ214がオフとされると(S131:YES)、CPU251は、緑色LED173は消灯状態のまま、赤色LED171を点滅状態から点灯状態に変化させる(S133)。
【0076】
CPU251は、AIユニット起動スイッチ18がオフされたか否かに基づき、AIユニット10の動作停止指示を取得したか否かを判断する(S135)。AIユニット起動スイッチ18がオフされた場合(S135:YES)、CPU251は、AIユニット10への電力供給を停止し(S137)、緑色LED173は消灯状態のまま、赤色LED171も消灯させる(S139)。CPU251は、
図5のS101に戻り、AIユニット起動スイッチ18が再度オンとされるまで待機する。このように、本実施形態では、AIユニット起動スイッチ18がオンの間のみAIユニット10に電力を供給することで、無駄な電力消費が抑えられている。
【0077】
AIユニット起動スイッチ18がオンのままの場合(S135:NO)、CPU251は、
図5のS105に戻り、新たな推論結果を取得する。使用者が改めてサイドハンドル71Aを把持した場合、CPU251は正常信号を取得し、上述のように報知部17を制御し、メインスイッチ214の押圧操作に応じて、モータ21の駆動を開始する(S107:YES、S111、S113:YES、S115)。
【0078】
以上に説明したように、本実施形態のグラインダ2Aは、カメラ11による撮像画像の画像データを用いて、サイドハンドル71A及びホイールカバー81の状態が正常か否かを判断し、判断結果を、その後の適切な処理(モータ21の駆動制御及び報知部17による情報報知)に有効に活用することができる。
【0079】
また、本実施形態では、コントローラ25のCPU251が、モータ21の駆動制御を含むグラインダ2Aの動作制御を行う。また、コントローラ25とは別個の推論チップ13のプロセッサ131が、カメラ11からの画像データに基づく推論(判断)処理を実行する。これにより、コントローラ25の処理負担を軽減し、処理速度の低下を抑制することができる。また、グラインダ2Aの動作制御用の通常のコントローラ25を使用しつつ、推論チップ13もグラインダ2Aに搭載することで、学習済みモデルを用いた推論機能をグラインダ2Aに容易に付加することができる。また、推論チップ13はカメラ11と一体的なAIユニット10として構成されているため、グラインダ2Aへの付加も容易である。
【0080】
<第2実施形態>
以下、
図8を参照して、第2実施形態に係るグラインダ2Bについて説明する。なお、第1実施形態と実質的に同一の構成(形状が若干異なる場合を含む)については、同一の符号を付して説明を簡略化する、又は省略する。この点については、これより後の実施形態についても同様である。
【0081】
第2実施形態のグラインダ2Bは、第1実施形態のグラインダ2A(
図1参照)とは異なり、バッテリ95ではなく、外部交流電源から供給される電力で動作するように構成されている。このため、グラインダ2Bは、外部交流電源に接続可能な電源コード29を備えている。電源コード29は、長尺状の工具本体20Bの後端から延び出ている。
【0082】
グラインダ2Bの工具本体20Bの後端部は、他の部分よりも小径に形成されている。本実施形態では、工具本体20Bの後端部が、使用者によって把持される把持部204(メイングリップ)を構成する。把持部204の下部には、使用者が押圧操作可能なトリガ(スイッチレバー)213が設けられている。把持部204内には、メインスイッチ214が収容されている。モータ21は、工具本体20Bの前半部分内に、回転軸RXが工具本体20Bの長軸に沿って延びるように配置されている。コントローラ25は、モータ21とメインスイッチ214の間に配置されている。また、工具本体20Bのうち、把持部204よりも前方にある部分の上面には、AIユニット起動スイッチ18と報知部17とが配置されている。
【0083】
本実施形態では、AIユニット10は、工具本体20Bのうち、把持部204の前方にある部分(把持部204よりも大径の部分)の下面に取り付けられている。より詳細には、AIユニット10は、モータ21よりも後方に配置されており、前後方向において、サイドハンドル71A及びホイールカバー81から比較的離れた位置にある。よって、比較的容易にカメラ11の撮影範囲Rに対象物を収めることができる。また、使用者が把持部204を把持しているときでも、使用者の手が、対象物の撮影の邪魔にならない。
【0084】
グラインダ2Bのコントローラ25及びAIユニット10の推論チップ13によって行われる処理は、第1実施形態と実質的に同じである。
【0085】
<第3実施形態>
以下、
図9~
図11を参照して、第3実施形態に係るハンマドリル3Cについて説明する。ハンマドリル3Cは、電動工具の一例であって、長尺状の先端工具92(例えば、ハンマビット、ドリルビット)を駆動軸DXに沿って直線状に駆動するハンマ動作と、先端工具92を駆動軸DX周りに回転するドリル動作を行うことが可能である。ハンマドリル3Cは、打撃工具の一例であり、且つ、穿孔工具の一例でもある。
【0086】
まず、ハンマドリル3Cの物理的構成について説明する。
【0087】
図9に示すように、ハンマドリル3Cの工具本体30Cは、第1部分301と、第2部分302と、第3部分303とを含む。第1部分301は、駆動軸DXに沿って延びる。駆動軸DXの延在方向における第1部分301の一端部には、先端工具を取り外し可能に保持するツールホルダ31が収容されている。ツールホルダ31が収容される部分は、円筒状であって、バレル部304と称される。第2部分302は、第1部分301のツールホルダ31が配置されているのとは反対側の一端部から、駆動軸DXに概ね直交する方向に延びる。第3部分303は、第2部分302の突出側の端部から、駆動軸DXに概ね平行に、ツールホルダ31から離れる方向に延びる。
【0088】
なお、以下の説明では、便宜上、駆動軸DXの延在方向を、ハンマドリル3Cの前後方向と規定する。前後方向において、ツールホルダ31が配置されている側を前側、反対側を後側と規定する。駆動軸DXに直交し、且つ、第2部分302の延在方向に対応する方向を、ハンマドリル3Cの上下方向と規定する。上下方向において、第1部分301が位置する側を上側、第3部分303が位置する側を下側と規定する。前後方向及び上下方向に直交する方向を、左右方向と規定する。
【0089】
工具本体30Cのうち、第2部分302の下部には、モータ21が収容されている。モータ21は、回転軸RXが駆動軸DXと交差するように配置されている。動力伝達経路において、モータ21とツールホルダ31の間には、周知の構成を有する駆動機構33が配置されている。また、第3部分303には、バッテリ装着部207が設けられている。第3部分303の内部には、コントローラ25が配置されている。
【0090】
工具本体30Cには、把持部351(メイングリップ)を含むメインハンドル35Cが連結されている。メインハンドル35Cの両端部は、第1部分301の後端と、第3部分303の後端部の上端に連結されている。把持部351は、第2部分302の後方において、上下方向に延在する。把持部351の上端部の前側には、使用者が指で押圧操作可能なトリガ213が設けられている。把持部351内には、メインスイッチ214が配置されている。また、メインハンドル35Cの上面には、報知部17が設けられている。
【0091】
ハンマドリル3Cには、サイドハンドル71Cを取り付け可能である。サイドハンドル71Cは、使用者がハンマドリル3Cを両手で保持することを可能とし、使用者が工具本体30Cに生じる反動トルクに対抗する保持力を高めることができる。
【0092】
図10に示すように、サイドハンドル71Cは、把持部711と、取付け部715とを含む。本実施形態の取付け部715は、把持部711の一端部から突出する部分であって、工具本体30Cのバレル部304に取り付けられる(連結固定される)ように構成されている。取付け部715は、バレル部304の外周に締め付け可能に構成されている。このような取付け部715の構成は周知であるため、詳細な説明及び図示は省略する。サイドハンドル71Cが工具本体30Cに取り付けられると、把持部711は、バレル部304から径方向外側に(駆動軸DXに直交する方向に)突出する。使用者は、利き手や作業環境に応じて、把持部711が所望の方向に向くように、サイドハンドル71Cを工具本体30Cに取り付けて使用することができる。
【0093】
本実施形態では、ハンマドリル3Cは、サイドハンドル71Cの状態を推論し、推論結果に応じてハンマドリル3Cの動作を制御するように構成されている。このため、ハンマドリル3Cは、第1実施形態と同様、カメラ11と推論チップ13を含むAIユニット10を備えている。但し、
図9に示すように、サイドハンドル71Cを確実に撮影するために、AIユニット10の数は、2つである。2つのAIユニット10は、何れもコントローラ25に接続されている。
【0094】
より詳細には、2つのAIユニット10のうち一方(以下、第1ユニット10Aという)は、工具本体30Cの第2部分302の下端部の前面に、カメラ11のレンズ117が斜め前上方を向くように取り付けられている。この位置は、上下方向において、バレル部304から実質的に最も離れており、前後方向において、バレル部304に比較的近い位置である。よって、第1ユニット10Aのカメラ11は、特に広角のレンズを用いることなく、バレル部304と、バレル部304の左右の領域を撮影範囲Rに収めることができる。
【0095】
但し、工具本体30Cの真上の領域は、このカメラ11の死角にあたる。また、レンズ117の向きに起因して、バレル部304よりも後方の領域は、カメラ11の撮影範囲Rにカバーされない。よって、把持部711がバレル部304から上方に延びており、使用者が後方から手を伸ばして、工具本体30Cの上方で把持部711を把持していると、バレル部304に取り付けられた取付け部715は撮影できても、把持部711を把持する手を確実に撮影できない可能性がある。
【0096】
そこで、2つのAIユニット10のうち他方(以下、第2ユニット10Bという)は、上述の第1ユニット10Aのカメラ11の死角にあたる領域をカバーするように配置されている。より詳細には、第2ユニット10Bは、工具本体30Cの第1部分301の後端部の上面に、レンズ117が前方を向くように取り付けられている。よって、第2ユニット10Bのカメラ11は、サイドハンドル71Cが、把持部711がバレル部304から上方に延びるように配置されているときでも、バレル部304に取り付けられたサイドハンドル71Cの少なくとも一部と、把持部711を把持する手の少なくとも一部とを撮影することができる。
【0097】
また、ハンマドリル3Cは、第1実施形態のAIユニット起動スイッチ18(
図1参照)に代えて、AIユニット起動センサ19を備えている。より詳細には、AIユニット起動センサ19は、メインハンドル35Cの把持部351の前面に取り付けられており、使用者の手による把持部351の把持を検知可能である。AIユニット起動センサ19の検知方式は特に限定されるものではないが、例えば、静電容量式、赤外線式、超音波式のセンサが採用されうる。AIユニット起動センサ19は、コントローラ25に接続されており、把持部351が把持されていることを検知している間、コントローラ25に特定の信号を出力する。
【0098】
以下、ハンマドリル3Cのハードウェア構成について説明する。
【0099】
図11に示すように、ハンマドリル3Cは、コントローラ25と、コントローラ25に接続された駆動回路257と、メインスイッチ214と、AIユニット起動センサ19と、第1ユニット10Aと、第2ユニット10Bと、報知部17とを備える。本実施形態では、コントローラ25は、AIユニット起動センサ19からの把持部351が把持されていることを示す信号に応じて、第1ユニット10A及び第2ユニット10Bに電力を供給する。第1ユニット10A及び第2ユニット10Bの推論チップ13は、夫々、推論結果を示す信号をコントローラ25に出力する。コントローラ25は、メインスイッチ214からの信号と、第1ユニット10A及び第2ユニット10Bの推論チップ13からの信号とに基づき、駆動回路257を介してモータ21の駆動を制御する。また、報知部17の赤色LED171と、緑色LED173を点灯/点滅/消灯させる。
【0100】
以下、コントローラ25(詳細には、CPU251)によって実行されるハンマドリル3Cの動作制御処理について説明する。なお、この処理のフローは、第1実施形態のグラインダ2Aで行われる処理のフローと大部分が実質的に同一であるため、以下では、第1実施形態と同じ
図5及び
図6を参照して、第1実施形態とは異なる処理についてのみ、簡単に説明する。
【0101】
図5に示すように、処理が開始されると、CPU251はまず、AIユニット起動センサ19からの信号に応じて、AIユニット10の起動指示を取得したか否かを判断する(S101)。CPU251は、AIユニット10の起動指示を取得したと判断すると(S101:YES)、2つのAIユニット10(第1ユニット10A及び第2ユニット10B)に電力を供給し、2つのAIユニット10を起動する(S103)。起動後は、各AIユニット10において、撮像素子113から推論チップ13のプロセッサ131に画像データが出力され、プロセッサ131によって推論処理が実行される(
図7参照)。
【0102】
コントローラ25のCPU251は、2つのAIユニット10の夫々の推論チップ13から出力された推論結果(正常信号又は異常信号)を取得する(S105)。上述のように、本実施形態では、2つのAIユニット10のカメラ11によって、サイドハンドル71Cの把持部711が配置されうる位置がすべてカバーされている。よって、2つのAIユニット10の少なくとも一方から正常信号を取得していれば、サイドハンドル71C及びホイールカバー81が正常状態であるといえる。そこで、CPU251は、続くS107では、2つのAIユニット10の少なくとも一方から正常信号を取得したか否かを判断する。
【0103】
その後の
図6のS123、S125でも、CPU251は、同様に、2つのAIユニット10の推論結果に基づいて処理を実行する。また、S135では、AIユニット起動センサ19からの信号を取得しない場合、CPU251は、AIユニット10の動作停止指示を取得したと判断し(S135:YES)、2つのAIユニット10への電力供給を停止する(S137)。
【0104】
以上に説明したように、本実施形態では、2つのAIユニット10のカメラ11による撮像画像の画像データを用いて、サイドハンドル71Cの状態が正常か否かを判断し、判断結果を、その後の適切な処理(例えば、モータ21の駆動制御及び報知部17による情報報知)に有効に活用することができる。
【0105】
また、本実施形態でも、AIユニット起動センサ19がオンの間のみAIユニット10に電力を供給することで、無駄な電力消費が抑えられている。通常、使用者は、加工作業を開始したいときにはメインハンドル35Cの把持部351を握る。本実施形態では、この通常動作に応じてAIユニット10が起動されるため、使用者はAIユニット10を起動するために別途特別な動作をする必要がない。よって、利便性が向上するとともに、更なる電力消費の節約が実現できる。
【0106】
<第4実施形態>
以下、
図12を参照して、第4実施形態に係るハンマドリル3Dについて説明する。なお、ハンマドリル3Dの方向については、第3実施形態のハンマドリル3C(
図9参照)の方向と同様に規定する。
【0107】
図12に示すように、第4実施形態のハンマドリル3Dの工具本体30Dは、L字状に配置された第1部分301と第2部分302とを含む。第1部分301は、ツールホルダ31を収容するバレル部304を有し、駆動軸DXに沿って前後方向に延びる。第2部分302は、第1部分301の後端部から下方に延びる。工具本体30D(第2部分302)の下端からは、外部交流電源に接続可能な電源コード29が延び出ている。モータ21は、第2部分302内に、回転軸RXが駆動軸DXと交差するように配置されている。第2部分302内のモータ21の後方には、コントローラ25が配置されている。動力伝達経路において、モータ21とツールホルダ31の間には、周知の構成を有する駆動機構33が配置されている。工具本体30D(第1部分301)の上面には、AIユニット起動スイッチ18と、報知部17とが設けられている。
【0108】
工具本体30Dには、把持部351を含むメインハンドル35Dが連結されている。メインハンドル35Dの両端は、第1部分301の後端と、第2部分302の後端とに連結されている。メインハンドル35Dの把持部351は、工具本体30Dの後方において、上下方向に延在する。把持部351の上端部の前側には、使用者が押圧操作可能なトリガ(スイッチレバー)213が設けられている。把持部351内には、メインスイッチ214が配置されている。
【0109】
ハンマドリル3Dのバレル部304には、第3実施形態と同様に、サイドハンドル71Cを取り付け可能である。よって、ハンマドリル3Dは、2つのAIユニット10(第1ユニット10A及び第2ユニット10B)を備えている。第1ユニット10Aは、第2部分302の下端部の前面に、カメラ11のレンズ117が斜め前上方を向くように取り付けられている。第2ユニット10Bは、第1部分301の後端部の上面に、レンズ117が前方を向くように取り付けられている。よって、本実施形態でも、2つのAIユニット10のカメラ11によって、サイドハンドル71Cの把持部711が配置されうる位置がすべてカバーされている。
【0110】
ハンマドリル3Dの電気的構成は、AIユニット起動スイッチ18とAIユニット起動センサ19とが相違する点以外、第3実施形態と実質的に同一である。また、コントローラ25(詳細には、CPU251)によって実行されるハンマドリル3Dの動作制御処理についても同様である。よって、これらの説明は省略する。
【0111】
<第5実施形態>
以下、
図13を参照して、第5実施形態に係るドライバドリル4について説明する。ドライバドリル4は、電動工具の一例であって、より詳細には、長尺状の先端工具93(例えば、ドリルビット)を回転駆動することで、穿孔作業を行うように構成された穿孔工具の一例である。
【0112】
まず、ドライバドリル4の物理的構成について説明する。
【0113】
図13に示すように、ドライバドリル4の工具本体40は、駆動軸DXに沿って延在する。工具本体40の駆動軸DXの延在方向における一端部には、先端工具93を取り外し可能に保持するチャック41が設けられている。工具本体40のうち、チャック41が連結されている部分は、円筒状であって、バレル部404と称される。バレル部404には、取付け部715がバレル部304を締め付ける方式のサイドハンドル71Cを取り付け可能である。ドライバドリル4のメインハンドル45は、工具本体40の略中央部から、駆動軸DXに概ね直交する方向に突出している。
【0114】
なお、以下の説明では、便宜上、駆動軸DXの延在方向を、ドライバドリル4の前後方向と規定する。前後方向において、チャック41が配置されている側を前側、反対側を後側と規定する。駆動軸DXに直交し、且つ、メインハンドル45の延在方向に対応する方向を、ドライバドリル4の上下方向と規定する。上下方向において、メインハンドル45の突出方向を下方向、反対方向を上方向と規定する。前後方向及び上下方向に直交する方向を、左右方向と規定する。
【0115】
モータ21は、工具本体40の後部に収容されている。モータ21の回転軸RXは、駆動軸DXと実質的に同軸上にある。動力伝達経路において、モータ21とチャック41の間には、周知の構成を有する駆動機構43が配置されている。
【0116】
メインハンドル45は、使用者によって把持される把持部451を含む。把持部451の上端部の前側には、使用者が押圧操作可能なトリガ213が設けられている。把持部451内には、メインスイッチ214が配置されている。メインハンドル45の下端部455は、矩形箱状に形成されており、バッテリ装着部207を備えている。また、メインハンドル45の下端部455には、コントローラ25が収容されている。
【0117】
ドライバドリル4は、サイドハンドル71Cの状態を推論し、推論結果に応じてドライバドリル4の動作を制御するように構成されている。このため、ドライバドリル4は、第1実施形態と同様、カメラ11と推論チップ13を含むAIユニット10を備えている。また、下端部455の上面には、AIユニット起動スイッチ18と、報知部17とが設けられている。
【0118】
本実施形態では、AIユニット10は、メインハンドル45の下端部455の前面に、カメラ11のレンズ117が上方を向くように取り付けられている。この位置は、上下方向において、バレル部404から実質的に最も離れており、前後方向において、バレル部404と概ね同じ位置である。よって、カメラ11は、特に広角のレンズを用いることなく、バレル部404と、バレル部404の左右の領域を撮影範囲Rに収めることができる。なお、第3実施形態と同様、工具本体40の真上の領域は、カメラ11の死角にあたる。しかしながら、ドライバドリル4では、サイドハンドル71Cが、把持部711がバレル部404から上方に延びる向きで取り付けられる可能性が比較的低いことから、AIユニット10は、1つのみとされている。但し、第3実施形態と同様、工具本体40の後端部の上面に、AIユニット10がもう1つ取り付けられていてもよい。
【0119】
ドライバドリル4の電気的構成と、コントローラ25(詳細には、CPU251)によって実行されるドライバドリル4の動作制御処理は、第1実施形態と実質的に同一である。よって、これらの説明は省略する。
【0120】
<第6実施形態>
以下、
図14を参照して、第6実施形態に係る電動工具システム5Fについて説明する。
【0121】
図14に示すように、本実施形態の電動工具システム5Fは、グラインダ2Fと、ネットワーク50を介してグラインダ2Fに接続された情報処理装置6とを含む。
【0122】
グラインダ2Fは、ネットワーク50に接続可能な通信装置27を備える点と、推論チップ13を備えない点においてのみ、第1実施形態のグラインダ2A(
図1参照)とは異なる。通信装置27は、無線又は有線によりネットワーク50(例えば、携帯電話通信網、無線LAN(Local Area Network)、インターネット)に接続可能である。通信装置27は、予め定められた規格に従って、ネットワーク50を介して外部装置との間で通信を行うことができれば、いかなる周知の構成を有してもよい。通信装置27は、コントローラ25に接続されている。グラインダ2Fの後端部202の下端には、AIユニット10に代えて、カメラ11が取り付けられている。カメラ11の撮像素子113は、コントローラ25に接続されている。
【0123】
情報処理装置6は、例えば周知のコンピュータとしての構成を有し、演算処理を実行する演算装置61と、情報を記憶する記憶装置63と、無線又は有線によりネットワーク50に接続可能な通信装置65を少なくとも備える。
【0124】
演算装置61は、演算処理が可能ないかなる周知の装置であってもよい。演算装置61は、例えば、CPU、ROM、RAMを含むマイクロコンピュータとして構成される。但し、マイクロコンピュータに代えて、他の種類のプロセッサ/処理回路(例えば、GPU、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、FPGA(Field Programmable Gate Array))が採用されてもよい。
【0125】
記憶装置63は、いかなる周知の記憶装置であってもよく、例えば、半導体メモリ装置及び磁気ディスク装置等の記憶媒体を含む。本実施形態では、第1実施形態で説明した機械学習は、情報処理装置6で行われる。記憶装置63には、少なくとも、機械学習で得られた最新の学習済みモデルが記憶されている。演算装置61のCPUによって実行されるプログラムは、ROMに記憶されていても、記憶装置63に記憶されていてもよい。
【0126】
通信装置65は、グラインダ2Fの通信装置27と同様、予め定められた規格に従って、ネットワーク50を介して外部装置との間で通信を行うことができれば、いかなる周知の構成を有してもよい。
【0127】
以下、本実施形態の電動工具システム5Fにおける処理を簡単に説明する。
【0128】
グラインダ2Fのカメラ11は、例えばコントローラ25によって起動されると、定期的に撮影を行う。撮像素子113は、コントローラ25に画像データを出力する。グラインダ2Fのコントローラ25(CPU251)は、撮像素子113から画像データを取得すると、通信装置27とネットワーク50を介して、情報処理装置6に画像データを送信する。
【0129】
情報処理装置6の演算装置61のCPUは、記憶装置63に記憶された学習済みモデルを用いて、グラインダ2Fから送信された画像データに基づき、サイドハンドル71A及びホイールカバー81の状態の推論処理を実行する。この推論処理(
図7参照)は、第1実施形態の推論チップ13のプロセッサ131による推論処理と実質的に同じでよい。演算装置61は、更に、通信装置65とネットワーク50を介して、グラインダ2Fに推論結果を示すデータを送信する。
【0130】
グラインダ2FのCPU251は、第1実施形態で説明したのと同様に、グラインダ2Fの動作を制御する。具体的には、
図5のS105において、CPU251は、情報処理装置6から送信された推論結果を取得する。その後の処理は、第1実施形態で説明した通りである。
【0131】
以上に説明したように、本実施形態の電動工具システム5Fは、カメラ11を備えたグラインダ2Fと、ネットワーク50を介してグラインダ2Fに接続された情報処理装置6とを含む。グラインダ2Fは、カメラ11から出力された画像データを情報処理装置6に送信し、情報処理装置6の演算装置61によるサイドハンドル71A及びホイールカバー81の状態の推論結果を受信して、その後の適切な処理(モータ21の駆動制御及び報知部17による情報報知)に有効に活用することができる。
【0132】
<第7実施形態>
以下、第7実施形態に係る電動工具システム5Gについて説明する。
図15に示すように、電動工具システム5Gは、第6実施形態の電動工具システム5F(
図14参照)の変形例であって、グラインダ2Gと、ネットワーク50を介してグラインダ2Gに接続された情報処理装置6とを含む。
【0133】
本実施形態でも、第6実施形態と同様、機械学習は、情報処理装置6で行われ、記憶装置63には、少なくとも、機械学習で得られた学習済みモデルが記憶されている。一方、第6実施形態では、推論処理が情報処理装置6で実行されるのに対し、本実施形態では、推論処理は、グラインダ2Gで実行される。よって、本実施形態のグラインダ2Gは、第1実施形態と同様、カメラ11と共にAIユニット10を構成する推論チップ13を備えている。
【0134】
以下、本実施形態の電動工具システム5Gにおける処理を簡単に説明する。
【0135】
本実施形態では、情報処理装置6に記憶されている最新の学習済みモデルがグラインダ2Gに送信され、グラインダ2Gの推論チップ13は、最新の学習済みモデルを用いて推論処理を実行する。このために、例えば、グラインダ2Gのコントローラ25(CPU251)は、
図5の処理が開始されるとまず、情報処理装置6に最新の学習モデルを要求し、情報処理装置6の演算装置61は、この要求に応じて、最新の学習済みモデルをグラインダ2Gに送信すればよい。グラインダ2Gのコントローラ25(CPU251)は、受信した学習済みモデルを、不揮発性のメモリ254又は推論チップ13のメモリ133(
図4参照)に記憶させる。その後の処理は、第1実施形態で説明した通りである。
【0136】
また、CPU251は、通信装置27とネットワーク50を介して、推論の対象とされた画像データと推論結果とを対応付けて情報処理装置6に送信してもよい。推論結果と画像データは、推論結果を取得する度、又は、所定の条件に従って(例えば、モータ21の駆動開始直前の推論結果と画像データのみ)送信されればよい。情報処理装置6では、グラインダ2Gから送信された画像データと推論結果を用いた機械学習が行われ、学習済みモデルが更新される。
【0137】
以上に説明したように、本実施形態では、電動工具システム5Gにおいて、推論チップ13は、いわゆるエッジAIとして機能するように構成されている。処理負担の大きい機械学習は情報処理装置6で行われる一方、グラインダ2Gで最新の学習済みモデルを用いた推論処理が行われるため、処理効率と推論の正確性に優れたシステムを実現することができる。
【0138】
上記実施形態の各構成要素(特徴)と本開示又は発明の各構成要素(特徴)の対応関係を以下に示す。但し、実施形態の各構成要素は、単なる一例であって、本開示又は本発明の各構成要素を限定するものではない。
【0139】
グラインダ2A、2B、2F、2G、ハンマドリル3C、3D、ドライバドリル4の各々は、「電動工具」の一例である。サイドハンドル71A、71Cの各々は、「アクセサリ」及び「補助ハンドル」の一例である。ホイールカバー81は、「アクセサリ」及び「カバー」の一例である。カメラ11は、「カメラ」の一例である。推論チップ13のプロセッサ131は、「判断部」、「プロセッサ」の一例である。メモリ133は、「メモリ」の一例である。推論チップ13は、「チップ」の一例である。工具本体20A、20B、30C、30D、40の各々は、「工具本体」の一例である。モータ21は、「モータ」の一例である。トリガ(スイッチレバー)213は、「操作部材」の一例である。メインスイッチ214は、「メインスイッチ」の一例である。コントローラ25のCPU251は、「制御部」の一例である。報知部17は、「報知部」の一例である。AIユニット起動スイッチ18、AIユニット起動センサ19の各々は、「検知部」の一例である。カメラガード15は、「カメラガード」の一例である。レンズフード118は、「レンズフード」の一例である。スピンドル23は、「スピンドル」の一例である。把持部203、204の各々は、「把持部」の一例である。電動工具システム5F、5Gの各々は、「電動工具システム」の一例である。
【0140】
なお、本開示に係る電動工具及び電動工具システムは、上記実施形態の例示に限定されるものではない。例えば、以下に説明する非限定的な変更のうち少なくとも1つが、上記実施形態に例示された電動工具、電動工具システム、及び各請求項に記載された特徴の少なくとも1つと組み合わされて採用されうる。
【0141】
例えば、本開示に係る電動工具の他の非限定的な例として、電動ハンマ等の打撃工具、電動ドリル、震動ドリル等の穿孔工具が挙げられる。また、電動工具に取り外し可能に取り付け可能なアクセサリ(補助ハンドル、電動工具に取り外し可能に装着された先端工具を少なくとも部分的に覆うカバー)の他の非限定的な例として、(i)グラインダ用の集塵カバー(シュラウド)、(ii)ハンマドリル/ハンマに取り付けられ、先端工具(ハンマビット、ドリルビット等)の周囲を少なくとも部分的に覆うように構成された集塵アタッチメント(集塵カップ、ダストカバー等)が挙げられる。
【0142】
カメラ11の構成、位置、数は、適宜変更されうる。例えば、カメラ11は、電動工具の工具本体の外部に取り付けられるのではなく、工具本体の内部に配置され、工具本体に設けられた開口を通じて対象物を撮影してもよい。
【0143】
カメラガード15は、カメラ11を衝撃から保護可能であれば、その形状、素材等は適宜変更されうる。例えば、カメラガード15は、全体が弾性体で形成され、カメラ本体110とレンズ117の周囲を覆っていてもよい。また、カメラガード15は、電動工具の工具本体とは別個の部材ではなく、工具本体の一部で形成されていてもよい。
【0144】
レンズフード118は、対象物との関係で、特定の方向からの光を遮ることができる限り、その形状、位置等は適宜変更されうる。また、レンズフード118は、レンズ117から取り外し可能であってもよいし、光を遮る方向を変更できるように、レンズ117の光軸周りに回動可能であってもよい。
【0145】
上記実施形態では、グラインダ2A等の各種電動工具の動作制御を行うコントローラ25とは別個に、カメラ11からの画像データに基づく推論(判断)処理を実行する推論チップ13が設けられている。しかしながら、例えば、電動工具の動作制御を実行するコントローラ25のCPU251(又は他の種類のプロセッサ/処理回路)が、画像データに基づく推論(判断)処理も実行してもよい。あるいは、推論処理を実行するプロセッサ131は、コントローラ25のCPU251とは別個のチップに搭載されるのではなく、CPU251と同じ基板に搭載されていてもよい。これらの変形例では、学習済みモデル及び推論処理用のプログラムは、例えば、不揮発性のメモリ254又は別の記憶装置に記憶されればよい。また、推論処理を実行するプロセッサ131は、必ずしも上記実施形態のようにカメラ11と一体化される必要はなく、カメラ11とは別個に設けられてもよい。プロセッサ131とカメラ11とは、必ずしも上記実施形態のように一対一の対応関係である必要はなく、例えば、1つのみのプロセッサ131が、複数のカメラ11から出力される画像データを処理してもよい。
【0146】
第1実施形態では、サイドハンドル71Aが、工具本体20Aに取り付けられており、且つ、使用者によって把持されていると判断された場合、サイドハンドル71Aの状態が正常であると判断される。しかしながら、サイドハンドル71A、71Cのような補助ハンドルについては、画像データに基づく推論(判断)処理において、補助ハンドルが電動工具の工具本体に取り付けられているか否かのみに応じて、補助ハンドルの状態が判断されてもよい。
【0147】
上記実施形態では、使用者によるAIユニット起動スイッチ18押圧動作がAIユニット起動スイッチ18によって検知されるのに応じて、又は使用者による把持部351(メイングリップ)の把持動作がAIユニット起動センサ19によって検知されるのに応じて、AIユニット10が起動される。しかしながら、AIユニット10は、電動工具に電源が投入されるのに応じて(つまり、バッテリ95がバッテリ装着部207に装着されるのに応じて、又は、電源コード29が交流電源に接続されるのに応じて)起動されてもよい。あるいは、AIユニット10は、メインスイッチ214がオンされるのに応じて(つまり、トリガ213が押圧されるのに応じて)起動されてもよい。
【0148】
更に、本発明及び上記実施形態の趣旨に鑑み、以下の態様が構築される。以下の態様のうち何れか1つのみ、あるいは複数が、実施形態の構成及びその変形例、あるいは各請求項に記載された発明と組み合わされて採用されうる。
[態様1]
前記少なくとも1つのアクセサリは、前記補助ハンドル及び前記カバーであって、
前記判断部は、前記補助ハンドル及び前記カバーが前記電動工具に取り付けられており、且つ、使用者によって前記補助ハンドルが把持されていると判断するのに応じて、前記少なくとも1つのアクセサリの前記状態が正常であると判断するように構成されている。
[態様2]
前記少なくとも1つのアクセサリは、前記カバーであって、
前記判断部は、前記カバーが前記電動工具に取り付けられていると判断するのに応じて、前記少なくとも1つのアクセサリの前記状態が正常であると判断するように構成されている。
[態様3]
前記チップは、前記少なくとも1つのカメラと一体化され、1つのユニットを構成する。
[態様4]
前記カメラガードは、少なくとも部分的に弾性体で形成されている。
[態様5]
前記少なくとも1つのカメラは、前記工具本体の前記長軸方向において、前記モータと前記把持部の間に配置されている。
[態様6]
前記制御部は、前記判断部によって前記少なくとも1つのアクセサリの前記状態が正常でないと判断されるのに応じて、前記報知部に、異常を示す前記情報を報知させるように構成されている。
[態様7]
前記制御部は、前記検知部による検知結果に応じて、前記少なくとも1つのカメラ及び前記判断部への電力供給を制御するように構成されている。
[態様8]
前記電動工具は、グラインダであって、
前記少なくとも1つのアクセサリは、前記補助ハンドル及び前記カバーであって、
前記判断部は、少なくとも、前記補助ハンドル及び前記カバーが前記電動工具に取り付けられていると判断するのに応じて、前記補助ハンドル及び前記カバーの前記状態が正常であると判断するように構成されている。
【符号の説明】
【0149】
2A、2B、2F、2G:ディスクグラインダ(グラインダ)、20A、20B:工具本体、201:前端部、202:後端部、203:把持部、204:把持部、206:ハンドル取付け部、207:バッテリ装着部、21:モータ、211:出力シャフト、213:トリガ、214:メインスイッチ、23:スピンドル、231:工具装着部、25:コントローラ、251:CPU、252:ROM、253:RAM、257:駆動回路、254:不揮発性メモリ、27:通信装置、29:電源コード、3C、3D:ハンマドリル、30C、30D:工具本体、301:第1部分、302:第2部分、303:第3部分、304:バレル部、31:ツールホルダ、33:駆動機構、35C、35D:メインハンドル、351:把持部、4:ドライバドリル、40:工具本体、404:バレル部、41:チャック、43:駆動機構、45:メインハンドル、451:把持部、455:下端部、5F、5G:電動工具システム、50:ネットワーク、6:情報処理装置、61:演算装置、63:記憶装置、65:通信装置、71A、71C:サイドハンドル、711:把持部、713:取付け部、715:取付け部、81:ホイールカバー、811:取付け部、91:先端工具、92:先端工具、93:先端工具、95:バッテリ、10:AIユニット、10A:第1ユニット、10B:第2ユニット、11:カメラ、110:カメラ本体、111:本体ケース、113:撮像素子、117:レンズ、118:レンズフード、13:推論チップ、131:プロセッサ、133:メモリ、15:カメラガード、150:フレーム、151:取付け板、153:側板、155:弾性体、17:報知部、171:赤色LED、173:緑色LED、18:AIユニット起動スイッチ、19:AIユニット起動センサ